(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年、GST omegaの重要性も次第に実証され、アドリアマイシンエトポシドプラチウム(adriamycin etoposide platium)類抗癌薬物を初めて、GST Omega 1‐1に緊密に関連付けた。GST Omega 1‐1が欠乏する癌は、三酸化ヒ素、シスプラチン(cisplatium)、daunorubin及びエトポシドに対して薬物耐性を生じることができない。現在、癌の薬物耐性の問題を取り扱う、GST omega 1に対する抑制剤は、まだ開発されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明の一態様は、下記の一般式(I)に示す構造を有するグルタチオンS‐転移酵素omega 1の活性抑制用化合物を提供する。
【化1】
【0008】
式中、A環は、p‐キノール環であり、Rは、下記一般式(Ia)及び一般式(Ib)からなる群より選ばれるものであり、一般式(Ia)におけるnは1又は2であり、一般式(Ib)におけるmは0又は1であり、R
1はH又はアリールメチル基(ArCH
2-)であり、R
2はアルキル基(Alkyl
-)又はアリール基(Aryl
-)である。
【化2】
【0009】
本発明の別の態様は、一般式(I)に示す構造を有する有効量の化合物、及び薬学的に許容可能なキャリヤーを含むグルタチオンS‐転移酵素omega 1の活性抑制用医薬組成物を提供する。
【0010】
本発明のさらに他の態様は、グルタチオンS‐転移酵素omega 1の活性抑制用化合物の調製方法を提供する。この調製方法は、2,6‐ジメトキシナフタレンにフリーデル−クラフツ(Friedel‐Craft)アセチル化反応を行わせ、ハロゲン含有試薬を加えて2つのメトキシ基を除去する工程と、第1保護基含有の中間物を形成し、第2保護基含有p‐ヒドロキシベンズアルデヒドとクライゼン−シュミット(Claisen‐Schmidt)縮合反応を行い、更にハロゲン触媒及び酸溶液で第1保護基を除去する工程と、ハロゲン含有不飽和炭素鎖を加え、第2保護基を除去し、更に超原子価ヨウ素化合物を加えて酸化反応を行って、一般式(Ia)に示す構造を有する化合物を得る工程と、を含む。
【0011】
本発明の一実施例によると、用いられるハロゲン含有試薬は、三臭化ホウ素(Boron tribromide)である。
【0012】
本発明の別の実施例によると、用いられる第1保護基は、メトキシメチル基(Methoxymethyl;MOM)であり、第2保護基は、ベンジル基である。
【0013】
本発明の一実施例によると、ハロゲン触媒は、ヨウ素であり、酸溶液は、濃塩酸である。
【0014】
本発明の別の実施例によると、ハロゲン含有不飽和炭素鎖は、臭化ゲラニル(Geranyl bromide)である。
【0015】
本発明の別の実施例によると、超原子価ヨウ素化合物は、ビストリフルオロアセトキシヨードベンゼンである。
【0016】
上記によると、本発明の実施例に係る一般式(I)に示す構造を有する化合物はGST Omega 1を抑制することに用いることができ、その調製方法としては、化学的方法で全合成して異なる側鎖の誘導体を生じるものであり、大量生産のメリットを有する。一般式(I)に示す構造を有する化合物は、エーテル結合によって接続されたイソペンタンモノマーにより誘導された側鎖(Ia)、又は2‐ナフチル側鎖を含有するジアミド類の側鎖(Ib)を有するβ‐ナフトフラボン類(Protoapigenone)誘導体である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の実施例に係る一般式(I)に示す構造を有する化合物の標的であるGST Omega 1は、新しい抗癌標的となり、長期に開発すると、多種の抗癌薬物の併用治療試薬とすることができ、極めて高い発展潜在力がある。
下記図面の説明は、本発明の前記または他の目的、特徴、メリット、実施例をより分かりやすくするためのものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施例に係る一般式(I)に示す構造を有する誘導体は、グルタチオンS‐転移酵素omega 1の活性を抑制可能な構造として考案されたものであり、将来、潜在力のある癌細胞毒性剤となることができる。
【0020】
<試験例1>
従って、以下、一般式(I)の構造を有する化合物及び他の構造類似体の癌細胞に対する成長抑制作用(In Vitro Growth Inhibition(GI
50、μM))によって、その癌細胞毒殺活性を評価した。本発明の実施例においては、被験対象として、ヒト口腔上皮癌細胞株KB、多剤耐性鼻咽頭癌細胞株KB‐Vin、ヒト肺腺癌細胞株A549及び前立腺癌細胞株DU145を選用し、癌細胞毒性剤であるパクリタキセル(Paclitaxel)のGI
50投与量を対照とした。試験結果を下記の表1に示した。
【0022】
表1における化合物の何れも一般式(I)に示す構造を有する誘導体であり、主体構造は下記の化学式で示される。Rは、番号1-19に示すようなものであり、番号1-19に示す側鎖の左端が上記主体構造に接続されて、一般式(I)に示す化合物を形成する。
【化3】
【0023】
表1に示すように、他の側鎖構造を有する化合物に比べて、番号11及び番号12の側鎖構造を有する化合物は、被験の4つの癌細胞株の何れに対しても、毒殺作用を有するものであった。
【0024】
中でも、番号11の側鎖構造を有する化合物は、1つのエーテル結合によって接続されたイソペンタンモノマーを有し、被験の4つの癌細胞株に対するGI
50は、それぞれ0.2μM、0.269μM、0.382μM、0.231μMであり、細胞を毒殺する能力が明らかに好適であった。
【0025】
番号12の側鎖構造を有する化合物は、側鎖に2つのイソペンタンモノマーを有し、被験の4つの癌細胞株に対するGI
50は、それぞれ0.067μM、0.335μM、0.233μM、0.065μMであり、ヒト口腔上皮癌細胞株KB及び前立腺癌細胞株DU145に対してより著しい毒殺効果を有するものであった。
【0026】
注意すべきなのは、側鎖のイソペンタンモノマーが続けて3つまで延びる場合、例えば、番号13の構造は、癌細胞に対する毒殺効果が大幅に低下したことである。これより、好適な癌細胞毒殺効果を達成するには、その側鎖にイソペンタンモノマーの特異性の立体構造を必要とするだけでなく、イソペンタンモノマーの数(側鎖の長さ)も非常に大事であることが証明された。
【0027】
<試験例2>
以下、更に番号11及び12の側鎖構造を有する化合物を例にして、本発明の実施例の一般式(I)を有する化合物の癌細胞に対する毒殺効果がグルタチオンS‐転移酵素omega 1の活性の抑制に関連するかどうかを検証するために、酵素活性分析を行った。
【0028】
GSTO1の酵素活性分析は、Bachovchin等によって2009年に発表された方法で、GSTO1基質(S‐(4‐ニトロフェナシル)グルタチオン;4NPG)によって行われた。分析方法としては、UV透過可能な96穴プレートに、緩衝液(100mMのTris(pH8.0)、1.5mMのEDTA、10mMの2‐メルカプトエタノール)に混合された100μlのGSTO1(2nM)を加え、また、100μlの緩衝液を空白対照群とした。
【0029】
被験の番号11及び12の側鎖構造を有する化合物を、以下、化合物(I)及び化合物(II)と略称する。また、化合物A及び化合物Bを対照群とした。化合物Aは、本発明の実施例の主体構造を有しなく、化合物Bは、本発明の主体構造にメチル側鎖を加えたものである。化合物(I)、化合物(II)、化合物A、及び化合物Bの構造は、下記の通りである。
【0030】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【0031】
化合物(I)、化合物(II)、化合物A、化合物B、薬物溶媒ジメチルスルホキシドを穴プレートに加えて、25℃で30分間反応させた。その後、最終濃度が0.5mMとなるように基質4NPGを加えた。
【0032】
基質4NPGは、GSTO1と特異的な結合を行うが、本発明の実施例の化合物(I)、化合物(II)は、4NPGと酵素結合位を競い合うことができるような構造に設計されている。そのため、波長305nmで、1分間おきに検出された吸光度を記録し、穴プレートにおけるサンプルの吸光度を検出し、コントロール群を基準として吸光度の低下速度を得ることで、化合物(I)、化合物(II)の酵素と基質との結合に対する干渉効果を理解することができた。
【0033】
図1は、異なる側鎖を有する化合物のGSTO1の酵素活性に対する影響の分析結果である。
図1から、対照群の2つの化合物、即ち主体構造を有しない化合物A、主体構造を有するがイソペンタンモノマーを有しない化合物Bは、酵素と基質との結合に対する干渉能力が低い。一方、本発明の実施例の化合物(I)及び化合物(II)は、酵素と基質との結合に対する干渉能力が明らかに良く、側鎖が延びるにつれて、効果が向上する傾向となることが判明した。この結果は、表1の癌細胞毒殺試験の結果と一致した。
【0034】
上記によると、本発明の実施例の化合物(I)及び化合物(II)の癌細胞毒殺試験に対する効果は、他の構造のものより明らかに優れ、その構造により、GSTO1の基質4NPGと酵素結合位を競い合って、GSTO1酵素活性を抑制する効果を達成できることが実証された。
【0035】
そのため、有効量の本発明のグルタチオンS‐転移酵素omega 1の活性抑制用化合物及び薬学的に許容可能なキャリヤーを含む医薬組成物は、確かに新しい抗癌標的となり、長期に開発すると、多種の抗癌薬物の併用治療試薬とすることができ、極めて高い発展潜在力がある。
【0036】
<合成例>
本発明のグルタチオンS‐転移酵素omega 1の活性抑制用化合物は、常法によって製造してよい。例えば、2,6‐ジメトキシナフタレンにフリーデル−クラフツ(Friedel‐Craft)アセチル化反応を行わせて、ハロゲン含有試薬を加えて2つのメトキシ基を除去した。第1保護基含有の中間物を形成し、第2保護基含有p‐ヒドロキシベンズアルデヒドとクライゼン−シュミット(Claisen‐Schmidt)縮合反応を行い、また、ハロゲン触媒及び酸溶液で第1保護基を除去した。ハロゲン含有不飽和炭素鎖を加えて第2保護基を除去し、超原子価ヨウ素化合物を加えて酸化反応を行って、一般式(I)に示す構造を有する化合物を得た。
【0037】
以下、本発明の化合物(II)を例にして、その化合物の調製方法を説明する。化合物(II)の合成反応式は、以下のように示される。
【化8】
【0038】
まず、窒素で2,6‐ジメトキシナフタレン含有無水ベンゼン溶液に、1.6当量の四塩化スズを緩やかに加え、攪拌した。更に、1.5当量の塩化アセチルを一滴ずつ反応溶液に加えた。室温で一夜おき攪拌した後、ベンゼンを減圧濃縮で除去し、ジクロロメタン/水で抽出を行った。ジクロロメタンを減圧濃縮で除去した後、n‐ヘキサン/酢酸エチルでカラムクロマトグラフィーを行ったところ、収率86.5%で、1‐アセチル‐2,6‐ジメトキシナフタレンが得られた。
【0039】
次に、この化合物を無水ジクロロメタンに溶解させ、窒素及び−78℃で6当量の三臭化ホウ素を加えて、ナフタレン環上の2つのメトキシ基を除去し、2時間攪拌し続けた後、水を加えて残りの三臭化ホウ素を除去した。ジクロロメタン/水で抽出した後、減圧濃縮で有機溶剤を除去し、n‐ヘキサン/酢酸エチルでカラムクロマトグラフィーを行ったところ、収率93%で、1‐アセチル‐2,6‐ジヒドロキシナフタレンが得られた。
【0040】
得られた化合物を再び無水ジクロロメタンに溶解させ、反応溶液が澄むようになるまで、氷浴で2当量のN,N‐ジイソプロピルエチルアミンを加えた。次に、ジクロロメタンで希釈されたクロロメチルメチルエーテル溶液(約40倍に希釈した)を一滴ずつ反応溶液に加え、約2時間攪拌し続けた。減圧濃縮で全ての有機溶媒を取り除き、n‐ヘキサン/酢酸エチルでカラムクロマトグラフィーを行ったところ、収率47.3%で、化合物1(第1保護基であるメトキシメチル基を含む)が得られた。
【0041】
化合物1を4‐ベンジルオキシベンズアルデヒドとクライゼン−シュミット縮合反応を行わせた。化合物1を含有するエタノール溶液に3当量の4‐ベンジルオキシベンズアルデヒドを加え、攪拌した後でエタノール溶液と等量の50%水酸化カリウム水溶液を加え、55℃で1.5時間攪拌した後、減圧濃縮を行って溶媒を除去し、更にn‐ヘキサン/酢酸エチルでカラムクロマトグラフィーを行ったところ、収率92.6%で、カルコン化合物2(第2保護基であるベンジル基を含む)が得られた。
【0042】
化合物2を適量なピリジンに溶解させ、2当量のヨウ素を加えた。一夜おき加熱還流した後、チオ硫酸ナトリウムを加え酢酸エチル/水で抽出し、有機層を減圧濃縮した後、カラムクロマトグラフィー分離により、収率65%で、β‐ナフトフラボン化合物3が得られた。
【0043】
化合物3が溶解された適量なジクロロメタン溶液に、約1:10の割合で濃塩酸/イソプロパノール溶液を加えた。室温で一夜おき攪拌した後、沈殿物を濾過して第1保護基が除去された化合物4を得た。窒素及び氷浴で、反応溶液が赤色に変色するまで、2当量の水素化ナトリウムを含有する無水ジメチルホルムアミド溶液に、化合物4を含有するジメチルホルムアミド溶液を一滴ずつ加え、更に2当量の臭化ゲラニル溶液を加えた。氷浴を取り除き、室温で2時間攪拌した後で水を加え、酢酸エチルで抽出した。減圧濃縮によって有機溶媒を取り除いた後、ジクロロメタン/メタノールでカラムクロマトグラフィー分離を行ったところ、収率94%で、化合物5が得られた。
【0044】
化合物5を酢酸エチルに溶解させ、240mg/原料1mmolの割合で、10%のパラジウム炭素を加えた。水素による触媒で一夜おき反応させ、パラジウム炭素を濾過して除去した後、溶液に対して減圧濃縮を行ったところ、収率40%で、第2保護基(すなわちベンジル基)が除去された化合物6が得られた。
【0045】
最後に、化合物6を約15:1の割合のアセトニトリル/水溶液に溶解させ、2当量のビストリフルオロアセトキシヨードベンゼン([bis(trifluoroacetoxy)iodo]benzene)を加えて酸化反応を行ったところ、収率49%で、化合物(II)に示すイソペンタンダイマー側鎖を有する最終生成物が得られた。
【0046】
化合物(II)を核磁気共鳴分光計によって核磁気共鳴(NMR)分光分析を行ったところ、下記のデータが得られた。
1H NMR(400MHz,CDCl
3) δ= 9.78(d, J= 9.2Hz, 1H), 7.90(d, J= 9.2Hz, 1H), 7.37(dd, J=9.2Hz, 2.8Hz, 1H), 7.31(d, J= 8.8 Hz, 1H), 7.18(d, J= 2.4Hz, 1H), 7.03-7.00(m,3H), 6.41(d, J=10.0Hz, 2H), 5.47(bs,1H), 4.16-4.07(m, 2H),
1.94-1.86(m,1H), 1.73-1.61(m,2H), 1.59-1.49(m,1H), 1.40-1.14(m, 6H),
0.98(d, J= 6.4Hz, 3H), 0.87 (d, J =6.8Hz, 6H) ppm;
13C NMR(100MHz, CDCl
3) δ= 185.4, 180.9, 164.0, 158.0, 156.5, 146.7, 135.2, 132.7, 130.0, 128.6, 124.7, 121.2, 117.8, 117.4, 111.6, 108.6, 69.9, 66.7, 39.5, 37.5, 36.3, 30.1, 28.2, 24.9, 22.9, 22.8, 19.9 ppm;
IR(KBr)(cm
-1): 3294, 2954, 2927, 2869, 1644, 1599, 1514, 1465, 1427, 1410, 1385, 1367, 1245, 1176, 1129, 1058, 1009;
HRESI-MS: C29H33O5, calcd. 461.2323, found 461.2328.
【0047】
本発明の実施例を前述の通り開示したが、これは本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、多様の変更や修正を加えることができる。従って、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載した内容を基準とする。