(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【実施例1】
【0011】
図面を参照して本発明に係るアスファルト抽出装置の実施例を説明する。
図1はアスファルト抽出装置の開閉扉を閉めた状態の正面図、
図2はアスファルト抽出装置の一部省略した平面図、
図3は
図2のIII−III’線に沿った縦断面図、
図4はアスファルト抽出装置の一部を省略及び破断した左側面図、
図5はアスファルト抽出装置の上部空間の一部省略した平面図、
図6はアスファルト抽出装置の下部空間の一部省略した平面図、
図7はアスファルト抽出装置の上部空間に装備されたアスファルト抽出装置の主要部の概略構成図、
図8は
図7の遠心分離容器の各部の断面図、
図9は遠心分離容器の蓋を閉じて一体化した状態を示す断面図、
図10は遠心分離容器と回転軸の連結機構の説明図である。
なお、アスファルト抽出装置は建物内の分析室に設置されているものとする。
【0012】
図1乃至
図6において、101はアスファルト抽出装置の密閉構造の筐体、102は筐体を構成する上下3段の枠体であり、この枠体102の前面側の中段に透明窓を有する観音開き形の開閉扉103、前面側の下段に片開き形の開閉扉104が装備されており、これらの開閉扉103、104を除く筐体101の前面、背面、左右側面がパネル105により閉塞されている。筐体101の底面と天面は各々、底板106と天板107が装着されて閉塞されている。筐体101の下段と中段の間は仕切り板108が装着されており、筐体101の内部が下部空間109と上部空間110に分割されている(
図3参照)。筐体101の中段と上段の間には後述する溶剤タンク、フードを設置するための支持板111が装着されている。仕切り板108の上側には一回り小さい基台112が装備されており、仕切り板108と基台112の間には四隅に配設された4つの防振ゴム113が介装されている。筐体101の底面の下側四隅にはキャスター114が備えられている。
【0013】
底板106の中央やや後ろ寄りには、筐体外部からエアを強制的に下部空間109に給気する強制給気手段としての給気ファン115が装備されている。仕切り板108の左右側部には網付の長方形状の開口部116、117が形成されており(
図6参照)、下部空間109のエアが開口部116、117を通って上部空間110へ流入可能になている。支持板111の左右側部の下側に排気フード118、119が備えられており、これらの排気フード118、119はフレキシブルチューブ120、121を介して角管状の排気集合部122の左右に対象に設けられた第1、第2の吸入口123、124と接続されている。排気集合部122は基台112の上に立設されている。排気集合部122の第3の吸入口125には第1の開閉弁としての電磁弁126を介して後述する抽出液回収容器のスリーブ(
図7の符号30、32参照)と接続されたフレキシブルチューブ127が接続されている。天板107の上側には強制排気手段としての排気ブロア128が装備されている。排気ブロア128の吸入口129には天板107を貫通して配設されたフレキシブルチューブ130を介して排気集合部122の排気口131と接続されている。排気ブロア128の排気口132は外部排気流路としての ダクト133により室外を経由して建物外部に設けられた排気塔(図示せず)と接続されている。
排気フード118、119、フレキシブルチューブ120、121、排気集合管122、フレキシブルチューブ130により上部空間排気流路が形成されている。
【0014】
図1乃至
図7において、1は上部空間110の開閉扉103の内側に配設されたアスファルト混合物と溶剤を収納可能な遠心分離容器であり、高速回転されることによりアスファルト成分の抽出液がろ紙(
図8の符号11参照)でろ過されながら側面から半径方向外側に噴出するようになっている。遠心分離容器1は
図8に示す如く、皿形の容器本体2と円盤状の蓋3を含む。容器本体2は中央が断面山形に盛り上がるとともに、外側が斜め上方に立ち上がって縁4の上面5に同心円状の凹凸部6が形成されている。蓋3は縁7の下面8に同心円状の凹凸部9が形成されており、容器本体2の上に中心を合わせて載せたとき、互いの凹凸部6、9が噛合するようになっている。このリング状の噛合面10にはリング状のろ紙11が挟まれて、抽出液のフィラー成分がろ過されるようになっている。蓋3の中央部には円柱状の穴12の空いたボス部13が固着されている。蓋3のボス部13の外側には複数の空気抜き孔14が開けられており、溶剤の注入が円滑に行なわれるようになっている。容器本体2の中央部には外面に段差部15を有し、上端から下端近くまでボス部13の穴12と連続する円柱状の穴16が開けられるとともに容器本体2の下面より下方に突出した回転軸連結部17が螺着されている。回転軸連結部17の上端は蓋3を容器本体2にセットしたとき、ボス部13の下端に接する。回転軸連結部17の上段の下部には穴16と遠心分離容器1の内部空間を連通する横向きの溶剤吐出用の小穴18が放射状に複数個設けられている。回転軸連結部17の穴16の下端部は径が小さくなって雌ネジ部19が形成されている。回転軸連結部17の下端部の側面には横向きのピン穴20が開けられており、後述する固定ピンを差し込めるようになっている。
図9に示す如くボス部13の穴12、回転軸連結部17の穴16に棒状の溶剤導入金具21を密接的に挿入し、溶剤導入金具21の先端部を雌ネジ部19に螺合することで、蓋3を容器本体2に一体化可能になっている。
【0015】
溶剤導入金具21は、上下方向の中央部分から下端にかけて、外形が穴12、穴16、雌ネジ部19と略同形の挿入部22を有し、挿入部22の上側にボス部13に当接する段差部23が形成され、内部に漏斗形の溶剤注入穴24が設けられている。挿入部22の下端部は雄ネジ部25であり、雌ネジ部19と着脱自在に螺合する。溶剤注入穴24の下端部に相当する挿入部22の外周は径が一段細くなって段差部26となっており、雄ネジ部25を回転軸連結部17の雌ネジ部19に螺合したときの段差部26と穴16の間の隙間27に相当する個所の回転軸連結部17に小穴18が開けられている。挿入部22の段差部26には溶剤注入穴24の下端と隙間27を連通する横向きの溶剤吐出用の穴28が放射状に複数個設けられている。
遠心分離容器1は溶剤導入金具21を外した状態で、蓋3を開けて検査対象であるアスファルト混合物を容器本体2に所定量収納し、容器本体2と蓋3の噛合面10にろ紙11を挟みながら蓋3を被せ、溶剤導入金具21を穴12、16に挿入して雄ネジ部25を雌ネジ部19に螺合することにより、一体化される(
図9参照)。
【0016】
図1乃至
図7に戻って、30は遠心分離容器1の周囲(上下面及び側面)を囲繞する抽出液回収容器であり、内部が抽出室Sを形成する。抽出液回収容器30は基台112の上側に装備されている。抽出液回収容器30はアルミ製の底部容器31と上壁及び側壁を有する略円筒状のステンレス製のスリーブ32からなり、スリーブ32は前面下部の取っ手33を掴んで昇降自在に形成されている。すなわち、スリーブ32の背面から後方へ平行に突設された二つの支持部材34にスライダ35が固着されており、このスライダ35が基台112から上方へ延設されたリニアガイド36に対し上下方向に摺動自在に嵌合されている(
図5参照)。また、スリーブ32の左右側面から側方へ板状のアーム37が延設されており、このアーム37の先端部にスライド軸受け38が嵌着されている。一方、スリーブ32の左右両脇の基台112の上側に支持部材39が立設されており、この支持部材39から上方に延設された円柱状のガイド棒40にスライド軸受け38が摺動自在に嵌合されている。スリーブ32の上端近くから左右側方へ突設された一対の耳状部材41が装着されており、各耳状部材41に左右一対のワイヤ42の一端が結合されている。各耳状部材41の真上に当たる天板107の下面に左右一対のガイドローラ43が装着されており、このガイドローラ43の後方の天板107の下面にも左右一対のガイドローラ44が装着されている。左側のワイヤ42の他端側は左側のガイドローラ43、44に巻回されたあと下方に垂下されており、下端に左側のカウンタバランサ45が吊持されている(
図4参照)。右側のワイヤ42の他端側は右側のガイドローラ43、44に巻回されたあと下方に垂下されており、下端に右側のカウンタバランサ45が吊持されている(
図3参照)。作業者が取っ手33を持ち上げると、スライダ35がリニアガイド36に案内されるとともに、アーム37がガイド棒40に案内されてスリーブ32が鉛直に上昇して抽出液回収容器30が開く。ここで作業者が手を離すと、左右のカウンタバランサ45によりスリーブ32が上昇した位置を保持する。反対に上昇状態から取っ手33を下げると、スライダ35がリニアガイド36に案内されるとともに、アーム37がガイド棒40に案内されてスリーブ32が鉛直に下降して抽出液回収容器30が閉じる。
【0017】
スリーブ32は円筒状のスリーブ本体46の下端近くに段状のツバ部47を装着した構造を有し、スリーブ本体46の下端部の外径が底部容器31の後述する凹部(
図7の符号75参照)の内径と略同一に形成されており、スリーブ32が下降状態にあるとき、スリーブ本体46の下端部が凹部75の中に入り込むようになっている。また、底部容器31の周縁の上端にはリング状のパッキン48が嵌着されており、スリーブ32を最下降させたとき、ツバ部47の下面がパッキン48に密接して抽出室Sを密閉するようになっている。
スリーブ32の上面の中央には溶剤供給ノズル50が固定されている。スリーブ32が下降状態にあるとき、溶剤供給ノズル50の先端は遠心分離容器1の溶剤導入金具21の溶剤注入穴23の中に遊挿される。スリーブ32の上方の支持板111の上側には溶剤タンク51が設置されており、フレキシブルな溶剤供給パイプ52を介して溶剤供給ノズル50と接続されている。溶剤供給パイプ52の途中には電磁弁53が設けられており、溶剤の供給を制御可能となっている。
スリーブ32の上面の右側には上部空間110のエアを抽出室Sに導くための給気管54、左側には抽出室Sのエアを外部に排気するための排気管55が連結されている。給気管54の途中には第2の開閉弁としての電磁弁56が設けられており、開閉制御可能となっている。排気管55はフレキシブルチューブ127を介して排気集合部122の第3の吸入口125に連結された電磁弁126と接続されている。
給気管54、電磁弁56により抽出液回収容器給気流路が形成されている。排気管55、フレキシブルチューブ127、電磁弁126、排気集合管122、フレキシブルチューブ130により抽出液回収容器排気流路が形成されている。
【0018】
60は遠心分離容器1を回転する回転軸であり、
図9に示す如く上端の連結部61の中に遠心分離容器1の回転軸連結部17が挿入可能になっている。回転軸60は後述するモータ(
図3の符号67参照)の回転駆動力を遠心分離容器1に伝達する機能を有する。連結部61には回転軸連結部17を挿入したときのピン穴20と直線的に対向するピン穴62と、ピン穴62の入り口の外側に装着された円筒状のガイド63が設けられている。
図10(1)、(2)に示す如くガイド63にはL字状の溝64が刻設されており、固定ピン65には溝64に遊挿可能な突起66が突設されている。固定ピン65を用いて遠心分離容器1と回転軸60を連結する際、突起66を溝64に嵌めながら固定ピン65をガイド63に挿入して先端部をピン穴62と20に差し込み(
図10(1)参照)、最後に固定ピン65を溝64に沿って回して係合させる(
図10(2)参照)。
【0019】
回転軸60は底部容器31、基台112、仕切り板108を貫通して下方に延設されており、下端に回転駆動手段としてのインバータ式のモータ67が結合されている。モータ67は支持部材68を介して基台112の下面に装着されている。支持部材68は仕切り板108に穿設されたバカ穴(図示せず)に遊挿されている。回転軸60は底部容器31の中央に上下方向に向けて密閉装着された円筒状の軸受69により回転自在に軸支されている。軸受69は上下端部近くにボールベアリング70、71を内蔵している。また、軸受69の上端には回転軸60との隙間をシーリングするオイルシール72が装着されている。軸受69の下端には円筒状の蓋73が装着されており、この蓋73と回転軸60との隙間をシーリングするオイルシール74が装着されている。軸受69は基台112、仕切り板108の各々に形成されたバカ穴(図示せず)に遊挿されることにより、これらの基台112、仕切り板108を貫通して下方に延設されている。
【0020】
底部容器31の上面には回転軸60を中心としてリング状に形成された凹部75が設けられており、遠心分離容器1の側面の内、噛合面10から半径方向外側へ噴出し、抽出室Sの中に飛び散った抽出液が溜まるようになっている。底部容器31には凹部75の底から底部容器31の下面まで抽出液排出穴76が設けられており、この抽出液排出穴76には抽出液排出パイプ77を介して溶剤再生系80が接続されている。溶剤再生系80は底板106の上に設置されて抽出液排出パイプ77と接続された溶剤・アスファルト分離装置81、溶剤・アスファルト分離装置81の頂部に装着された凝集器82、凝集器82と接続パイプ83で接続された再生溶剤タンク84を有している(
図3、
図4、
図6参照) 。
抽出液排出パイプ77から送られた抽出液は溶剤・アスファルト分離装置81の図示しないヒータで加熱されて気化した溶剤成分が凝集器82に送られ、残ったアスファルト成分が溶剤・アスファルト分離装置81の下部に溜まる。溜まったアスファルト成分はコック85を開けて外部に取り出すことができる。気化した溶剤成分は凝集器82で水冷により凝集されて液化し、接続パイプ83を介して再生溶剤タンク84に送られて貯液される。再生溶剤タンク84に貯液された再生溶剤はポンプ87により送液パイプ88を介して筐体1の上部の溶剤タンク51に送液されて再利用されるようになっている。
【0021】
底部容器31には加熱用のヒータ90、水冷用の冷却パイプ91なども設けられている。
図6に示す如く、筐体101の下端近くの底板106の上の左奥側には、給水口栓200と排水口栓201が設けられており、給水口栓201の入り口側には外部から水道水を筐体101に導く水道管202、排水口栓201の出口側には筐体101の外部へ排水を導く排水管203が接続されている。給水口栓200の出口側(下部空間側)は2系統に分岐した給水パイプ204、205が接続されており、各系統に独立して設けられた電磁弁206、207を介して凝集器82の給水口と底部容器31の冷却パイプ91の給水口に接続されている。凝集器82の排水口と底部容器31の冷却パイプ91の排水口は2系統が合流するように形成された排水パイプ208、209を介して排水口栓201の入り口側と接続されている。なお、上記した水道水の給排水系は、
図6以外では省略している。
筐体101の前面で支持板111の上部に相当する上段には装置の起動、停止などの操作を行う操作盤300が設けられている。また、筐体101の空きスペースには装置各部を制御するマイコン構成の制御部(図示せず)が装備されており、制御部の内蔵メモリに記憶された制御プログラムに基づき、操作盤300での操作に応じた制御がなされる。
【0022】
図11は制御部による制御処理の手順を示すフローチャート、
図12乃至
図14はアスファルト抽出装置の動作説明図であり、以下、これらの図を参照して上記した実施例の作用を説明する。
なお、予め、全ての電磁弁が閉、上部空間110と下部空間109の開閉扉103と104が閉、溶剤・アスファルト分離装置81のコック85が閉、給水口栓200と排水口栓201が閉になっているものとする。
作業者が1回分の抽出作業をしたい場合、まず、給水口栓200と排水口栓201を開とし、操作盤300で換気系の稼動操作をする。すると図示しない制御部が給気ファン115、排気ブロア128の稼動を開始させる。給気ファン115の稼動で筐体101の底板106の下方から筐体外部の新鮮なエアが強制的に下部空間109に給気され、下部空間109を通って仕切り板108に設けられた左右の開口116、117から上部空間110に入り、上部空間110を通過して左右の排気フード118、119からフレキシブルチューブ120、121、排気集合管122、フレキシブルチューブ130を経て筐体1の天板109の上に導かれる。更に排気ブロア128によりダクト133を介して建物外部の図示しない排気塔へ送出される(
図11のステップS1、S2、
図12の矢印a〜i、a’〜i’、j、k参照)。
これにより、抽出作業が全て完了するまでの間に溶剤成分が溶剤再生系80や抽出液回収容器30から下部空間109や上部空間110に洩れ出ても建物外部に排出されることになり、装置周りの作業環境を人体に有害な化学成分で汚染するのを極力抑制することができる。
【0023】
次に、作業者は上部空間110の開閉扉103を開け、取っ手33を持ち上げてスリーブ32を上昇させて抽出室Sを開け、所定量のアスファルト混合物を収納した遠心分離容器1を回転軸60に連結する。取っ手33を下げてスリーブ32を下降させて抽出室Sを閉じ、更に開閉扉103を閉じて筐体101の内部を密閉する。
筐体101の下部空間109に下方から室内のエアが強制的に取り込まれて上部空間110に送られ、更に上部空間110の上部から筐体101の上方を経て建物外部に換気されているので、開閉扉103を開けたとき、開けた開閉扉103から筐体101に室内のエアが流入する。従って、スリーブ32を上昇させて開けた抽出室Sから残留溶剤成分が上部空間110に出たり、溶剤再生系80から溶剤成分が下部空間109に漏れ出ていても、開けた開閉扉103から室内に溶剤成分が洩れることは殆どない。
【0024】
開閉扉103を閉じたあと操作盤300で抽出開始操作をすると、制御部は換気系が非稼動状態であれば給気ファン115、排気ブロア128を稼動させたあと(ステップS3、S4、S5)、溶剤注入パイプ52に設けた電磁弁53を制御して溶剤供給ノズル50から所定量の溶剤を遠心分離容器1の中に供給させ、一定時間静置して浸漬処理をし、溶剤にアスファルト成分を溶出させる(ステップS6)。
次に、溶剤・アスファルト分離装置81の図示しないヒータを通電して発熱させるとともに、電磁弁207を開制御して冷却用の水道水を凝集器82に送出させ、溶剤再生系80を稼動状態とする(ステップS7)。
このあと、モータ67を回し遠心分離容器1を毎分約3000回転で高速回転させ、遠心分離容器1の側面側のろ紙11でフィラー成分をろ過しながら、噛合面10から半径方向外側へアスファルト成分の溶けた抽出液を噴出させる。この際、電磁弁53を制御して追加溶剤を一定流量で溶剤供給ノズル50から遠心分離容器1に供給させる(ステップS8)。抽出室Sに噴出された抽出液はスリーブ32の内壁に当たって落下し、底部容器31の凹部75に溜まる(
図13の矢印A〜D、A’〜D’参照)。
【0025】
底部容器31の凹部75に溜まった抽出液は溶剤排出孔76、溶剤排出パイプ77を介して溶剤再生系80の溶剤・アスファルト分離装置81に送られる。溶剤・アスファルト分離装置81の図示しないヒータで加熱されて気化した溶剤成分が凝集器82に送られ、残ったアスファルト成分が溶剤・アスファルト分離装置81の下部に溜まる。なお、溜まったアスファルト成分は、抽出作業完了後に、開閉扉104を開け、コック85を開けて排出口86から図示しない容器に排出させて外部に取り出すことができる。気化した溶剤成分は凝集器82で水冷により凝集されて液化し、接続パイプ83を介して再生溶剤タンク84に送られて貯液される。制御部は抽出中に随時、再生溶剤タンク84に貯液された再生溶剤をポンプ87により送液パイプ88を介して筐体101の上部の溶剤タンク51に送液させて再利用させる。
【0026】
制御部は遠心分離容器1に溶剤を一定量追加した所で電磁弁53を閉じて追加を止め、暫く高速遠心分離を継続させた後(ステップS9)、一定時間低速回転状態としながら底部容器31のヒータ90を通電し、抽出室Sを加熱することで遠心分離容器1を加熱して遠心分離容器1の中に残った溶剤成分の気化回収を促す(ステップS10)。
このようにして、抽出作業が行われている間、溶剤成分が溶剤再生系80や抽出液回収容器30から下部空間109や上部空間110に洩れ出ても建物外部に排出されることになり、装置周りの作業環境を人体に有害な化学成分で汚染するのを極力抑制することができる(
図13の矢印a乃至i、a’乃至i’j、k参照)。
【0027】
次に、制御部は抽出後の処理として、ヒータ90の通電を止め、電磁弁206を開いて底部容器31の水冷パイプ91に冷水を回して抽出室Sと遠心分離容器1を冷やす。また、電磁弁56、126を開き上部空間110のエアを抽出室Sに流入させるとともに抽出室Sの溶剤成分の混ざったエアをフレキシブルチューブ127を介して排気集合管122に導き、、排気フード118、119からのエアとともにフレキシブルチューブ130、排気ブロア128、ダクト133を介して建物外部に排気させる(ステップS11、
図14の矢印m、n、o、j、k参照)。
これにより、後で遠心分離容器1を取り出すために抽出室Sを開けたとき、作業者が溶剤成分を吸い込むのを防止できる。
制御部は一定時間、抽出室Sと遠心分離容器1の水冷及び抽出室Sの換気をしたあと、電磁弁206、56、126を閉じて抽出液回収容器30の水冷と換気を止める(ステップS12)。更に、溶剤・アスファルト分離装置81のヒータの通電を止め、電磁弁207を閉じ、溶剤再生系80の稼動を停止する(ステップS13)。
【0028】
作業者は、開閉扉103を開け、スリーブ32を上昇させて抽出室Sを開け、遠心分離容器1を装置外に取り出し、開閉扉103を閉じる。抽出室Sが予め換気済みなので、抽出室Sを開けても作業者が残留溶剤成分を吸う恐れはない。
最後に、操作盤300で換気停止操作をすると、制御部が給気ファン115、排気ブロア128の稼動を停止する(ステップS14、S15)。
遠心分離容器1の中に骨材成分、ろ紙11にフィラー成分が残るので、予め、サンプルを計量しておけば、アスファルト成分量がわかる。
なお、引き続き他のサンプルの抽出を行う場合は、換気停止操作をする代わりに、新たなサンプルを入れた遠心分離容器1を回転軸60に連結し、抽出室Sと開閉扉103を閉じたあと、抽出開始操作をすれば良い。制御部の制御で2回目の抽出処理がなされる(ステップS16、S4、S6以降)。
【0029】
この実施例によれば、装置の換気系の稼動中、開閉扉103、104を閉じた状態としておけば、溶剤再生系80から漏れ出た溶剤成分が筐体101の下部空間109の中に強制給気されたエアとともに仕切り板108の開口116、117から上部空間110に入り、抽出液回収容器30から漏れ出た溶剤成分とともに、更に上部空間110から筐体101の上の排気ブロア128に導かれ、建物外部に排気されるので、装置周りの作業環境の空気が溶剤成分で汚染されるのを防止することができる。
また、抽出中は電磁弁56、126を閉じることで、抽出液回収容器30の中の抽出液滴が上部空間110に漏れないようにする一方、抽出後は、電磁弁56、126を開いて抽出液回収容器30の中に残った溶剤成分を建物外部に排気できるので、その後、遠心分離容器1を取り出すために作業員が抽出液回収容器30を開けたとき溶剤成分を吸い込まないようにできる。
【0030】
なお、上記した実施例では、上部空間の排気フードを支持板の下側に装備したが、天板の下側に装備しても良い。
また、仕切り板の左右の開口の各々の下側にも排気フードを装備するようにしても良い。
また、上記した実施例では、1つの筐体内に遠心分離容器、抽出液回収容器、回転駆動手段を1組だけ装備した一連式のアスファルト抽出装置を例に挙げて説明したが、本発明は何らこれに限定されず、1つの密閉型の筐体内に遠心分離容器、抽出液回収容器、回転駆動手段を2組、3組など複数組装備した二連式、三連式などの多連式のアスファルト抽出装置としても良いのは勿論である。
【解決手段】 密閉型の筐体101 を仕切板により下部空間109 と上部空間110 に仕切り、上部空間に遠心分離容器1、抽出液回収容器30、溶剤タンク51から遠心分離容器1に溶剤を注入する溶剤注入手段、開閉扉103 を備え、遠心分離容器1に連結した回転軸60を仕切り板より下方に延設し、下部空間に、回転軸を駆動するモータ67、抽出液回収容器30で回収された抽出液からアスファルトと溶剤を分離し、溶剤成分を再生して再生溶剤タンクに貯液する溶剤再生系80を備え、筐体下部に外気を強制給気する給気ファン115 を設け、仕切板に開口116 、117 を形成し、筐体外部に建物外へダクト133 を介して強制排気を行う排気ブロア128 を装備し、筐体上部から排気ブロア128 へ上部空間のエアを排気する排気流路を形成した。