特許第5778336号(P5778336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5778336電子ビームおよびイオンビームを用いた仕上げ装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778336
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】電子ビームおよびイオンビームを用いた仕上げ装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 15/00 20060101AFI20150827BHJP
   H01J 37/30 20060101ALI20150827BHJP
   H01J 37/305 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   B23K15/00 502
   H01J37/30 A
   H01J37/305 A
   B23K15/00 508
【請求項の数】18
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-509257(P2014-509257)
(86)(22)【出願日】2012年10月4日
(65)【公表番号】特表2014-514163(P2014-514163A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】KR2012008031
(87)【国際公開番号】WO2013058487
(87)【国際公開日】20130425
【審査請求日】2013年10月31日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0107953
(32)【優先日】2011年10月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509272609
【氏名又は名称】韓国生産技術研究院
【氏名又は名称原語表記】Korea Institute of Industrial Technology
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(72)【発明者】
【氏名】カン ウン グ
(72)【発明者】
【氏名】イ ソク ウ
(72)【発明者】
【氏名】チェ ヨン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】イ ドン ユン
【審査官】 青木 正博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−132920(JP,A)
【文献】 特開平06−268037(JP,A)
【文献】 特開2011−124035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 15/00
H01J 37/317
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物が設けられたステージと、
前記ステージを取り囲み、内部が真空状態に維持されたチャンバと、
前記チャンバの一側に設けられ、前記被処理物に電子ビームを照射する電子ビーム発生装置と、
前記電子ビームが照射された前記被処理物にイオンビームを照射して表面処理を行うイオンビーム発生装置と、を含む仕上げ装置であって、
前記被処理物の表面粗度値を測定するために、前記チャンバの一側に電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)が設けられ
前記仕上げ装置は、さらに電圧パルスを供給して前記電子ビーム発生装置を駆動する駆動部を含み、前記駆動部は前記被処理物の表面粗度値に応じて電圧パルスの大きさを調節する仕上げ装置
【請求項2】
前記電圧パルスの大きさは前記被処理物の表面粗度値が大きくなるほど大きくなる請求項1記載の仕上げ装置。
【請求項3】
被処理物が設けられたステージと、
前記ステージを取り囲み、内部が真空状態に維持されたチャンバと、
前記チャンバの一側に設けられ、前記被処理物に電子ビームを照射する電子ビーム発生装置と、
前記電子ビームが照射された前記被処理物にイオンビームを照射して表面処理を行うイオンビーム発生装置と、を含む仕上げ装置であって、
前記被処理物の表面粗度値を測定するために、前記チャンバの一側に電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)が設けられ
前記仕上げ装置は、さらに電圧パルスを供給して前記電子ビーム発生装置を駆動する駆動部を含み、前記駆動部は前記被処理物の表面粗度値に応じて電圧パルスのデューティ比を調節する仕上げ装置
【請求項4】
前記電圧パルスのデューティ比は前記被処理物の表面粗度値が大きくなるほど小さくなる請求項記載の仕上げ装置。
【請求項5】
被処理物が設けられたステージと、
前記ステージを取り囲み、内部が真空状態に維持されたチャンバと、
前記チャンバの一側に設けられ、前記被処理物に電子ビームを照射する電子ビーム発生装置と、
前記電子ビームが照射された前記被処理物にイオンビームを照射して表面処理を行うイオンビーム発生装置と、を含む仕上げ装置であって、
前記被処理物の表面粗度値を測定するために、前記チャンバの一側に電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)が設けられ
前記仕上げ装置は、さらに電圧パルスを供給して前記電子ビーム発生装置を駆動する駆動部を含み、前記駆動部は前記被処理物の表面粗度値に応じて電圧パルスの幅を調節する仕上げ装置。
【請求項6】
前記電圧パルスの幅は前記被処理物の表面粗度値が大きくなるほど広くなる請求項記載の仕上げ装置。
【請求項7】
被処理物が設けられたステージと、
前記ステージを取り囲み、内部が真空状態に維持されたチャンバと、
前記チャンバの一側に設けられ、前記被処理物に電子ビームを照射する電子ビーム発生装置と、
前記電子ビームが照射された前記被処理物にイオンビームを照射して表面処理を行うイオンビーム発生装置と、を含む仕上げ装置であって、
前記被処理物の表面粗度値を測定するために、前記チャンバの一側に電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)が設けられ
前記被処理物の粗度分布値によって前記電子ビーム発生装置及び/又は前記イオンビーム発生装置が選択的に駆動される仕上げ装置。
【請求項8】
前記被処理物の表面粗度分布値がしきい値以上である場合、前記電子ビーム発生装置と前記イオンビーム発生装置がともに作動し、前記被処理物の表面粗度分布値が前記しきい値未満である場合は、前記イオンビーム発生装置のみが作動する請求項記載の仕上げ装置。
【請求項9】
前記イオンビームが照射された前記被処理物の領域は、前記電子ビームが照射された前記被処理物の領域を含む 請求項1記載の仕上げ装置。
【請求項10】
被処理物の表面情報を収集する段階と、
前記被処理物の表面情報のしきい値によって電子ビーム及び/又はイオンビームを選択的に照射して表面処理を行う段階と、を含む仕上げ方法。
【請求項11】
前記被処理物の表面情報は、被処理物の表面粗度分布値である請求項10記載の仕上げ方法。
【請求項12】
前記被処理物の表面に電子ビーム及びイオンビームを時間的に同時に照射する請求項10記載の仕上げ方法。
【請求項13】
前記被処理物の表面粗度値が基準標準粗度値以上である場合、前記電子ビームの強度を上げる請求項11記載の仕上げ方法。
【請求項14】
被処理物の全体表面粗度分布値を測定する段階と、
前記測定された表面粗度分布値と既設定された前記被処理物の表面粗度しきい分布値とを比較する段階と、
前記測定された表面粗度分布値が前記表面粗度しきい分布値より大きい場合、前記電子ビームおよびイオンビームをともに前記被処理物に照射する段階と、
前記測定された表面粗度分布値が前記表面粗度しきい分布値より小さい場合、前記イオンビームを前記被処理物に照射する段階と、を含む表面処理方法。
【請求項15】
前記被処理物に電子ビームを照射する時、前記被処理物の材質による基準表面粗度値によって前記電子ビームの強度を調節する請求項14記載の表面処理方法。
【請求項16】
前記電子ビームの強度は、前記電子ビームの駆動電圧パルスの大きさに応じて調節される請求項15記載の表面処理方法。
【請求項17】
前記電子ビームの強度は、前記電子ビームの駆動電圧パルスのデューティ比に応じて調節される請求項15記載の表面処理方法。
【請求項18】
前記電子ビームの強度は、前記電子ビームの駆動電圧パルスの幅に応じて調節される請求項15記載の表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビームおよびイオンビームを用いた仕上げ装置に関し、より詳しくは、精密機械類の部品又は金型などの表面処理において、電子ビームおよびイオンビームを用いて被処理物の表面を処理する仕上げ装置およびこれについての方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に精密機械の部品は一般機械の部品とは異なり、部品の完成後、表面仕上げ工程(Finishing Process)により部品の精密度および特性を向上させる。
【0003】
仕上げ工程は、材料の表面を滑らかにする研磨工程(Polishing Process)および部品のエッジ部に突出した箇所を除去するデバリング工程(Deburring Process)を含む。
【0004】
このような仕上げ工程は大きく分けて、物理的衝突により表面粗度或いはバリ(Burr)を除去する機械的な仕上げ工程と、電気化学的分解により表面粗度或いはバリを除去する電解仕上げ工程の2つに分かれる。
【0005】
しかし、機械的な研磨およびデバリングによって仕上げを行った場合、砥粒液体の廃液処理および洗浄の問題が生じ、加工材料による砥粒液体の選定が困難であり、仕上げ条件の最適化および自動化が難しいという短所がある。
【0006】
また、電解仕上げを行った場合は、強酸液体の廃液処理、作業環境による作業者の危険露出、作業後製品の洗浄問題、さらに機械的な仕上げと同様に、最適の仕上げ条件の選定が非常に難しいという短所がある。
【0007】
特に高精度が求められる機械部品の場合は、表面仕上げ処理に不良があれば、部品の寿命短縮、騒音及び発熱などの様々な問題が発生する。
【0008】
最近、かかる問題を解決するためにイオンビームを用いて仕上げ工程を行っているが、実質的に収率が低下し、最適な条件で仕上げを行うためには様々な問題が残っていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、表面仕上げの際、汚染物質を排出しない清浄工程により、複雑かつ微細な形状を有する被処理物の表面を容易に仕上げるとともに、表面の粗度やデバリング特性を向上することができる仕上げ装置を提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の仕上げ装置は、被処理物が設けられたステージと、該ステージを取り囲み、内部が真空状態に維持されたチャンバと、該チャンバの一側に設けられ、被処理物に電子ビームを照射する電子ビーム発生装置と、電子ビームが照射された被処理物にイオンビームを照射して表面処理を行うイオンビーム発生装置と、を含む。
【0011】
イオンビーム発生装置は、被処理物に照射される垂直電子ビームに対して勾配を有して被処理物に照射されるようにチャンバの一側に設けられる。
【0012】
電子ビーム発生装置から照射される垂直電子ビームとイオンビーム発生装置から照射される垂直イオンビームとの間の角度は45°〜55°である。
【0013】
さらに被処理物の表面粗度値を測定するために、チャンバの一側に電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)が設けられる。
【0014】
さらに電圧パルスを供給して電子ビーム発生装置を駆動する駆動部を含み、駆動部は被処理物の表面粗度値に応じて電圧パルスの大きさを調節する。
【0015】
電圧パルスの大きさは被処理物の表面粗度値が大きくなるほど大きくなる。
【0016】
さらに電圧パルスを供給して電子ビーム発生装置を駆動する駆動部を含み、駆動部は被処理物の表面粗度値に応じて電圧パルスのデューティ比を調節する。
【0017】
電圧パルスのデューティ比は被処理物の表面粗度値が大きくなるほど小さくなる。
【0018】
さらに電圧パルスを供給して電子ビーム発生装置を駆動する駆動部を含み、駆動部は被処理物の表面粗度値に応じて電圧パルスの幅を調節する。
【0019】
電圧パルスの幅は被処理物の表面粗度値が大きくなるほど広くなる。
【0020】
被処理物の粗度分布値によって電子ビーム発生装置及び/又はイオンビーム発生装置が選択的に駆動される。
【0021】
被処理物の表面粗度分布値がしきい値以上である場合、電子ビーム発生装置とイオンビーム発生装置がともに作動し、被処理物の表面粗度分布値がしきい値未満である場合は、イオンビーム発生装置のみが作動する。
【0022】
イオンビームが照射された被処理物の領域は、電子ビームが照射された被処理物の領域を含むことができる。
【0023】
本発明による仕上げ方法は、被処理物の表面情報を収集する段階と、被処理物の表面情報のしきい値によって電子ビーム及び/又はイオンビームを選択的に照射して表面処理を行う段階と、を含む。
【0024】
被処理物の表面情報は、被処理物の表面粗度分布値である。
【0025】
被処理物の表面に電子ビーム及びイオンビームを時間的に同時に照射することができる。
【0026】
被処理物の表面粗度値が基準標準粗度値以上である場合、電子ビームの強度を上げることができる。
【0027】
本発明による他の仕上げ方法は、被処理物の全体表面粗度分布値を測定する段階と、該測定された表面粗度分布値と既設定された被処理物の表面粗度しきい分布値とを比較する段階と、測定された表面粗度分布値が表面粗度しきい分布値より大きい場合、電子ビームおよびイオンビームをともに被処理物に照射する段階と、測定された表面粗度分布値が表面粗度しきい分布値より小さい場合、イオンビームを被処理物に照射する段階と、を含む。
【0028】
被処理物に電子ビームを照射する時、被処理物の材質による基準表面粗度値によって電子ビームの強度を調節する。
【0029】
電子ビームの強度は、電子ビームの駆動電圧パルスの大きさに応じて調節される。
【0030】
電子ビームの強度は、電子ビームの駆動電圧パルスのデューティ比に応じて調節される。
【0031】
電子ビームの強度は、電子ビームの駆動電圧パルスの幅に応じて調節される。
【発明の効果】
【0032】
この発明によれば、最適な条件で被処理物の表面仕上げを行い、表面改質の特性を向上させることができる。
【0033】
また、工程短縮および表面仕上げの自動化が可能であり、生産収率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の一実施形態による仕上げ装置の概略図。
図2】本発明の一実施形態による仕上げ工程において、電子ビームによる表面処理方法を示す図。
図3】本発明の一実施形態による仕上げ工程において、電子ビームによる表面処理方法を示す図。
図4】本発明の一実施形態による仕上げ工程において、電子ビームによる表面処理方法を示す図。
図5】本発明の一実施形態による仕上げ装置の作動方法を示す図。
図6】被処理物の粗度分布値を示す図。
図7】本発明の一実施形態による仕上げ工程のメカニズムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、上記目的を具体的に実現できる本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、実施形態の説明において、同一または相当部分は同一名称および符合を付してその説明を省略する。
【0036】
図1は本発明の一実施形態による仕上げ装置の概略図である。
【0037】
図1に示すように、仕上げ装置100は、被処理物Pが設けられたステージ101と、ステージ101を取り囲み、内部が真空状態に維持されたチャンバ110と、被処理物に電子ビームを照射する電子ビーム発生装置120と、電子ビームが照射された被処理物にイオンビームを照射するイオンビーム発生装置130と、電子ビーム発生装置120及びイオンビーム発生装置130に電源を供給して駆動させる駆動部140と、被処理物の表面情報を収集する電子顕微鏡150(SEM;Scanning Electron Microscope)と、電子顕微鏡150から被処理物の表面情報を受けて駆動部140を制御する主制御部160と、を有する。
【0038】
ステージ101は、その上に載置される被処理物P、例えば、鉄、金属、アルミニウム合金、超軽合金などのような被処理物に電子ビーム或いはイオンビームを照射時、被処理物の位置が変化しない固定構造からなっている。
【0039】
図示していないが、ステージ101は、下側にローラのような構造物が設けられて、被処理物が前後左右方向に移動可能な移動構造である。
【0040】
チャンバ110は、ステージ101を取り囲み、内部が真空状態に維持されている。図示していないが、チャンバの排気及び真空を行うために、チャンバの一側に真空排気装置が設けられている。
【0041】
電子ビーム発生装置120は、プラズマ状態で電子ビームを抽出する抽出部121と、抽出された電子ビームを集束および偏向させる制御部123とを有する。抽出部121は一般的に電子ビームを発生させる電子銃である。電子銃はカソード電極121a、アノード電極121c及びバイアス電極121bを含み、駆動部140によってカソード電極121a及びバイアス電極121bに負電圧が印加され、アノード電極121cに正電圧が印加されると、カソード電極121aから電子ビーム(e−beam)が発生する。
【0042】
電子ビームは制御部123により集束及び偏向されて被処理物に照射される。制御部123は、電磁場(Electromagnetic Field)によって形成されたレンズにより抽出部121で抽出された電子ビームを集束する集束手段123aと、集束した電子ビームを所望の方向に偏向する偏向手段123bとを有する。
【0043】
イオンビーム発生装置130はイオン銃131(ion gun)を有し、イオン銃131から放出されたアルゴンイオンArが加速されて、ステージ101上に載置された被処理物Pの表面に照射される。
【0044】
この時、アルゴンイオンは、被処理物の表面との引力(attraction force)又は斥力(repulsive force)によって電荷の変形が起き、被処理物の表面の組成および模様が改質される。
【0045】
電子顕微鏡150は、被処理物の表面情報を観察及び分析して主制御部160に伝達する。この時、被処理物の表面情報は表面粗度である。
【0046】
主制御部160は、電子顕微鏡150から得た表面情報に基づいて表面粗度値に応じて駆動部140を制御するための制御信号Es、Eiを発生する。
【0047】
駆動部140は、主制御部160の制御信号Es、Eiによって電子ビーム発生装置120或いはイオンビーム発生装置130を駆動し、被処理物の表面粗度値の大きさによって電子ビーム発生装置に印加される電圧パルスを調節する。
【0048】
被処理物の仕上げ工程において、イオンビームのみを使用すれば、研磨及びデバリングのような仕上げ工程の収率が落ちる。これは、被処理物にイオンビームを照射して仕上げ工程を行うとき、十分なエネルギーで長時間の間、被処理物の表面処理を行う必要があるためである。
【0049】
したがって、この実施形態では電子ビームを使用することによりイオンビームによる表面処理時の収率の向上を図っている。
【0050】
即ち、仕上げ工程において、まず、イオンビームの照射前に被処理物の特定領域に電子ビームを照射する。電子ビームは被処理物の表面にフォノンを発生させ、このフォノンは熱エネルギーに代替されて電子ビームが照射されていない隣接する領域に転移される。この後、被処理物の特定領域だけではなく、電子ビームが照射されていない隣接する領域にイオンビームを照射すると、既に存在する熱エネルギーとイオンビームによって被処理物の表面処理が容易になる。
【0051】
この実施形態において、被処理物の表面処理時の収率向上のために、イオンビームの照射前又はイオンビームの照射と同時に、熱エネルギーを供給するために電子ビームを照射したが、化学的エネルギーを供給するためにチャンバ内のガス雰囲気を調節することができる。
【0052】
電子ビーム及びイオンビームを照射して収率を向上することができるが、収率の向上或いは表面処理特性の向上により、表1に示すように、電子ビーム及びイオンビームを時間的に互いに独立的、順次的及び並列的のうちのいずれかの方法で照射することができる。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示すように、被処理物の表面粗度の特性よりも表面処理収率の特性が優先になった場合、電子ビーム発生装置およびイオンビーム発生装置を同時に並列的に作動させる。これにより、被処理物の表面処理速度が速く収率が向上するが、被処理物の粗度特性は電子ビームおよびイオンビームの独立的照射或いは順次的照射より落ちる。
【0055】
一方、被処理物の表面粗度の特性が表面処理収率の特性よりも優先になった場合は、まず電子ビーム発生装置を駆動して被処理物に電子ビームを照射し、その後、時間的間隔をおいて電子ビームによって転移された熱エネルギーが完全になくなった後にイオンビームを照射する。結局、このような表面処理方法は、従来のイオンビームのみによる表面処理方法と同様であり、収率が低い。
【0056】
最後に、被処理物の表面粗度の特性と収率の特性を同時に満足させるために、被処理物に電子ビームを照射した直後にイオンビームを照射すると、電子ビームにより形成された熱エネルギーを一定部分用いることができるので、表面処理時間をある程度短縮することができる。但し、この時の表面粗度の特性はイオンビームのみによる表面処理より落ちる。
【0057】
このように、この実施形態では電子ビーム及びイオンビームを選択的に使用することができるので、最適の条件で被処理物の仕上げ処理を行うことができる。
【0058】
図2ないし図4は、本発明の一実施形態による仕上げ工程において、電子ビームによる表面処理方法を示す図である。
【0059】
まず、図2に示すように、仕上げ装置は被処理物の表面情報、例えば、被処理物の表面粗度値R1が電子顕微鏡150で測定され、この表面粗度情報は主制御部160に伝送される。
【0060】
主制御部160では、既設定された表面粗度値と測定された表面粗度値とを比較して、測定された表面粗度値R1が被処理物の材質による基準表面粗度値Cより小さい場合、駆動部140が基準電圧V1パルスを電子ビーム発生装置120に供給する。
【0061】
反面、測定された表面粗度値R1が被処理物の材質による基準表面粗度値C以上である場合は、駆動部140は基準電圧V1より高い電圧V2のパルスを電子ビーム発生装置120に供給する。
【0062】
即ち、被処理物の表面粗度値が大きくなるほど被処理物に印加される電子ビームの強度が大きくなるように電圧発生装置に供給する電圧パルスの大きさを調節する。
【0063】
図3では図2と同様に、被処理物の表面情報、例えば、被処理物の表面粗度値が電子顕微鏡150で測定され、この表面粗度情報が主制御部160に伝送される。
【0064】
主制御部160では、既設定された表面粗度値と測定された表面粗度値とを比較して、測定された表面粗度値R1が被処理物の材質による基準表面粗度値Cより小さい場合、駆動部140は基準デューティ比T1を有する基準電圧V1パルスを電子ビーム発生装置120に供給する。
【0065】
反面、測定された表面粗度値R1が被処理物の材質による基準表面粗度値C以上である場合は、駆動部140は基準電圧パルスのデューティ比T1より小さいデューティ比T2を有する基準電圧V1のパルスを電子ビーム発生装置120に供給する。
【0066】
即ち、被処理物の表面粗度値が大きくなるほど被処理物に印加される電子ビームの強度が大きくなるように電圧発生装置に供給する電圧パルスのデューティ比を調節する。
【0067】
図4では図2と同様に、被処理物の表面情報、例えば、被処理物の表面粗度値が電子顕微鏡150で測定され、この表面粗度情報が主制御部160に伝送される。
【0068】
主制御部160では、既設定された表面粗度値と測定された表面粗度値とを比較して、測定された表面粗度値R1が被処理物の材質による基準表面粗度値Cより小さい場合、駆動部140は基準パルス幅W1を有する電圧V1のパルスを電子ビーム発生装置120に供給する。
【0069】
反面、測定された表面粗度値R1が被処理物の材質による基準表面粗度値C以上である場合は、駆動部140は基準パスル幅W1より広い幅W2を有する電圧V1のパルスを電子ビーム発生装置120に供給する。
【0070】
即ち、被処理物の表面粗度値が大きくなるほど被処理物に印加される電子ビームの強度が大きくなるように電圧発生装置に供給する電圧パルスの幅を調節する。
【0071】
このように被処理物に電子ビームを照射する際、被処理物の表面粗度値によって電圧パルスを調節して供給すると、次のイオンビームによる被処理物の表面処理速度を向上させることができる。
【0072】
一方、この実施形態による仕上げ装置では、被処理物の表面に電子ビームおよびイオンビームをともに照射して表面処理を行ったが、被処理物の表面粗度分布値によって電子ビームイオン及び/又はイオンビームのみを選択的に照射することもできる。
【0073】
図5はこの実施形態による仕上げ装置の作動方法を示す図であり、図6は被処理物の粗度分布値を示す図である。
【0074】
図5に示すように、電子顕微鏡150を用いて被処理物の表面粗度分布値Rdを測定し、測定された表面粗度分布値Rdがしきい値C1以上である場合、主制御部160は電子ビーム発生装置120を駆動するための第1駆動信号Esを駆動部140に供給し、イオンビーム発生装置130を駆動するための第2駆動振動Eiを駆動部140に供給して、電子ビーム発生装置120及びイオンビーム発生装置130をともに作動させる。
【0075】
このとき、電子ビーム発生装置120及びイオンビーム発生装置130の作動は、被処理物の表面粗度分布値Rdのうち特定領域における表面粗度値R1によって、上述した図2ないし図4の作動方法に基づいて行われる。
【0076】
ここで、被処理物の表面粗度分布値Rdとは、被処理物の全表面にかけて分布された粗度値の散布を示し、これを数学的にレベリングした値であり、表面粗度値R1は被処理物の全表面のうち、特定領域においての粗度値を示すものである。
【0077】
即ち、図6(a)、図6(b)及び図6(c)において、図6(b)が被処理物の表面粗度分布値Rdが標準になるしきい値である場合、図6(a)は表面粗度分布値Rdが標準しきい値より大きい場合を、図6(c)は表面粗度分布値Rdが標準しきい値より小さい場合を示す。
【0078】
測定された表面粗度分布値Rdが図6(c)のようにしきい値未満である場合は、主制御部160は第1駆動信号Esを供給せず、イオンビーム発生装置130のみが作動するように第2駆動信号Eiを駆動部140に供給する。
【0079】
このように電子ビーム発生装置及びイオンビーム発生装置を同時に駆動させるか、或いはイオンビーム発生装置のみを駆動させる理由は、被処理物の表面粗度分布値が基準となる表面粗度分布値よりも大きい場合、電子ビーム発生装置及びイオンビーム発生装置をともに用いて被処理物の表面を処理することが好適であり、被処理物の表面粗度分布値が基準となる表面粗度分布値よりも小さい場合は、イオンビーム発生装置のみを用いて被処理物の表面を処理することが好適であるためである。
【0080】
図7は本発明の一実施形態による仕上げ工程のメカニズムを示す図である。
【0081】
図7(a)に示すように、印加された電子ビームの加速電圧が約40Kvであると、電子ビーム発生装置で発生した電子ビームは10μm〜100μm程度の深さで被処理物の表面を浸透して原子の周りにフォノン(phonon)を発生させ、このフォノンは熱に代替される。
【0082】
この熱は、図7(b)に示すように、電子ビームが照射された被処理物の特定領域に矢印方向の隣接する領域に転移される。この時、被処理物を構成する複数の原子(●)は電子ビームによって被処理物の表面からスパッタ(sputter)される。
【0083】
その後、図7(c)に示すように、電子ビームが照射された被処理物の特定領域を含む隣接する領域にアルゴン(Ar)のようなイオンビームが照射されると、フォノンによる熱エネルギーによって被処理物が容易に表面処理される。
【0084】
この時、図7(d)に示すように、被処理物の表面で低エネルギーの2次電子や2次イオンが発生し、被処理物の原子が表面からスパッタされる。
【0085】
また、イオンビームの加速力によって被処理物内に移植される。
【0086】
一方、被処理物の表面処理特性を向上させるために被処理物に電子ビーム及びイオンビームを入射するとき、電子ビームとイオンビームが所定の角度をなして被処理物に照射されることが好ましい。
【0087】
即ち、被処理物に照射された電子ビームと平行にイオンビームが照射されると、スパッタの際に被処理物の原子の移動経路が長くなり、実質的に表面処理特性や収率特性が落ちる。
【0088】
また電子ビームとイオンビームの間のビーム角度が大きすぎると、イオンビームが被処理物の表面を深く浸透しないため、スパッタの特性が低くなり、つまり表面処理特性が落ちる。
【0089】
したがって、電子ビームとイオンビームが互いに所定の角度をなして被処理物に照射されるように、即ちイオンビーム発生装置は、電子ビーム発生装置から照射される垂直電子ビームに対して勾配を有してイオンビームが照射されるようにチャンバの一側に設けられることが好ましい。さらに、電子ビーム発生装置から照射された垂直電子ビームとイオンビーム発生装置から照射された垂直イオンビームの間が45°〜55°の角度をなすように設けられることが好ましい。
【0090】
以上、本発明を好ましい実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に多様な変更を加えることが可能であることは本発明が属する分野の通常の知識を有する者にとっては明らかであり、このような変更を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが請求範囲の記載から明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7