特許第5778342号(P5778342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5778342アルミノホウケイ酸ガラスを原料とするA型ゼオライトの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778342
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】アルミノホウケイ酸ガラスを原料とするA型ゼオライトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/18 20060101AFI20150827BHJP
【FI】
   C01B39/18
【請求項の数】16
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2014-520012(P2014-520012)
(86)(22)【出願日】2013年6月4日
(86)【国際出願番号】JP2013065493
(87)【国際公開番号】WO2013183646
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2014年2月21日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2012/073447
(32)【優先日】2012年9月13日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-127980(P2012-127980)
(32)【優先日】2012年6月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小橋 正
(72)【発明者】
【氏名】辻口 雅人
(72)【発明者】
【氏名】神原 潤二
(72)【発明者】
【氏名】内海 康彦
(72)【発明者】
【氏名】柿森 伸明
(72)【発明者】
【氏名】沖 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】中平 敦
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−126720(JP,A)
【文献】 特開2012−041251(JP,A)
【文献】 辻口 雅人 他,ガラスを用いたゼオライト合成と評価,粉体粉末冶金協会講演概要集平成二十四年度春季大会,2012年 5月22日,第31頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20−39/54
WPI
JSTPlus/JST7580(JDreamII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミノホウケイ酸ガラスを原料として、表層部をゼオライト化することによるA型ゼオライト材料の製造方法であって、
Si/Alモル比が0.1以上2.0以下となるようにアルミニウム化合物を添加する調合工程と、
アルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液との混合物を加熱処理する合成工程を含むことを特徴とするA型ゼオライト材料の製造方法。
【請求項2】
前記調合工程の前に、アルミノホウケイ酸ガラスを酸性溶液と接触させ、アルミノホウケイ酸ガラスの表層に、アルミノホウケイ酸ガラスの他の領域と比較してカルシウム含有量が少ない領域を形成させる酸処理工程をさらに含む、請求項1に記載のA型ゼオライトの製造方法。
【請求項3】
前記合成工程はアルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液との混合物を水熱処理により加熱処理することを特徴とする請求項2に記載のA型ゼオライト材料の製造方法。
【請求項4】
前記酸処理工程と合成工程の間にアルミノホウケイ酸ガラスをアルカリ溶液と接触させるアルカリ処理工程を含むことを特徴とする、請求項3に記載のA型ゼオライト材料の製造方法。
【請求項5】
前記合成工程の前に、アルミノホウケイ酸ガラスを酸性溶液と接触させ、アルミノホウケイ酸ガラスの表層に、アルミノホウケイ酸ガラスの他の領域と比較してSiO含有比率が高い領域を形成させる酸処理工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のA型ゼオライト材料の製造方法。
【請求項6】
前記合成工程は、アルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液との混合物を加熱処理し、アルミノシリケートゲルを生成させアルミノシリケートゲルをガラス表層へ接触した状態で加熱保持することを特徴とする請求項1に記載のA型ゼオライト材料の製造方法。
【請求項7】
前記調合工程において、Si/Alモル比が1以下となるようにアルミニウム化合物を添加する、請求項4に記載のA型ゼオライト材料の製造方法。
【請求項8】
前記酸処理工程は、塩酸および硝酸から選ばれた少なくとも1種を含む濃度が0.1〜10Nの酸性溶液を用い、1時間以上処理する工程であることを特徴とする請求項2に記載のA型ゼオライト材料の製造方法。
【請求項9】
前記酸処理工程は、塩酸および硝酸から選ばれた少なくとも1種を含む濃度が0.1〜10Nの酸性溶液を用い、5時間以上処理する工程であることを特徴とする請求項4に記載のA型ゼオライト材料の製造方法。
【請求項10】
前記アルミノホウケイ酸ガラスを50〜700μmに粉砕したものを原料とすることを特徴とする、請求項4に記載のA型ゼオライト材料の製造方法。
【請求項11】
前記合成工程は、0〜3Nの濃度のアルカリ溶液を用いる工程であることを特徴とする請求項1に記載のA型ゼオライト材料の製造方法。
【請求項12】
前記合成工程は、0.2〜3Nの濃度のアルカリ溶液を用いる工程であることを特徴とする請求項4に記載のA型ゼオライト材料の製造方法。
【請求項13】
前記合成工程は、75〜150℃で、24時間以上加熱処理を行なう工程であることを特徴とする請求項1に記載のA型ゼオライト材料の製造方法。
【請求項14】
前記合成工程は、80〜110℃で、24時間以上加熱処理を行なう工程であることを特徴とする請求項4に記載のA型ゼオライト材料の製造方法。
【請求項15】
前記アルミノホウケイ酸ガラスが、SiO:50重量%以上、Al:10〜20重量%の組成を有することを特徴とする請求項4に記載のA型ゼオライト材料の製造方法。
【請求項16】
前記アルミノホウケイ酸ガラスが、液晶パネルから回収したアルミノホウケイ酸ガラスであることを特徴とする請求項4に記載のA型ゼオライト材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミノホウケイ酸ガラスを原料とするA型ゼオライトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルを用いた液晶テレビなどの家電製品、パソコン、携帯端末などの製品が急速に普及している。ここで、上述した「液晶パネル」とは、貼り合せた2枚のガラス基板の内側に液晶材料を注入、封入し、各ガラス基板の外側に偏光板(樹脂)を貼り付けたものを指す。液晶パネルを用いた製品の普及に伴い、液晶パネルの廃棄物(廃液晶パネル)の数量も急激に増加しているが、環境との共存が期待される循環型社会の形成の中、廃液晶パネルについてもリサイクルし資源を有効に利用することが要望されている。
【0003】
現在、家電製品や情報機器などの廃棄物に含まれる液晶表示装置や液晶パネルは、廃棄物の量としては少ないこともあって、廃棄物の処理施設にて製品ごとに破砕された後、プラスチックを多量に含むシュレッダーダストと共に、埋め立て処理あるいは焼却処理されている。
【0004】
液晶パネルの製造工場から排出される不良の廃液晶パネル、ならびに、家電製品、情報機器などの廃棄物に含まれる液晶表示装置、液晶パネルの処理方法として、特開2000−84531号公報(特許文献1)には、液晶パネルの製造工場や廃棄物の処理施設にて製品ごと破砕後、非鉄精錬炉に投入し珪石の代替材料として処理する方法が開示されており、一部で実施されている。この方法では、液晶パネル中のガラス成分は、スラグ中へ入り込む。
【0005】
また、特開2000−351664号公報(特許文献2)には、ガラス廃棄物と、粘土と、セラミックス廃棄物を原料として、タイル、レンガや各種ブロックなどのセラミックス製品を製造する方法が開示されている。この特許文献2に記載された方法は、粉砕したガラス廃棄物50〜80重量%と、粘土10〜45重量%と、粉砕したセラミックス廃棄物5〜40重量%より合計100重量%の組成物を調整し、成形、乾燥後1000〜1200℃で焼成する方法である。
【0006】
また、特開2002−308646号公報(特許文献3)には、ソーダ石灰ガラス微粉末とCaOを含む化合物の微粉末とBを含む化合物の微粉末とを原料とする低温焼成ガラスセラミックスの製造方法が記載されている。この特許文献3に記載された方法は、上記化合物を混合し、該混合物を所要形状にプレス成形し、該成形物を825〜900℃の温度範囲にて焼成することを特徴とするガラスセラミックスの製造方法である。
【0007】
また、特開昭59−35019号公報(特許文献4)には、石炭の流動床式燃焼炉から生成される石炭灰を原料としてゼオライトを製造する方法が開示されている。この特許文献4に記載された方法は、原料にアルミナ源、アルカリ源、水を、シリカ/アルミナ、水/アルカリ、アルカリ/アルミナ比が所定のモル比になるように添加、配合して得た原料成分混合物を用いて水熱条件下で合成するゼオライトの合成方法である。
【0008】
また、特開昭64−24014号公報(特許文献5)には、石炭炊きボイラーの燃料残渣であるフライアッシュを原料としてゼオライト組成物を製造する方法が開示されている。この特許文献5に記載された方法は、原料に0.5N乃至3NのNaOH溶液に配合混練し、3.0kg/cm以上の圧力でオートクレーブ処理してゼオライト組成物を製造する方法である。
【0009】
また、特開昭58−120512号公報(特許文献6)には、水砕スラグ粉末を原料としてゼオライト組成物を製造する方法が開示されている。この特許文献6に記載された方法は、水砕スラグ粉末を無機酸水溶液に溶解した後、アンモニアガスを吹き込んでpHを4〜9に調整して得た沈殿物(シリカ、アルミナが主成分、カルシウム分は濾液側)をろ別し、沈殿物にアルカリ金属水酸化物を添加して水熱合成しゼオライトを合成する方法である。
【0010】
また、特開2007−131502号公報(特許文献7)には、陶器、コンクリート、がれき屑、ガラスおよびこれらの混合物を原料としてゼオライトを製造する方法が開示されている。この特許文献7に記載された方法は、原料に固体状塩基を添加・混合して得られた混合物を加熱溶融してSi、Alが水に対して易溶化した粉末を生成させ、ここで得られた粉末を水に添加し、20〜200℃の反応温度で反応させるゼオライトの製造方法である。
【0011】
また、特開2006−45042号公報(特許文献8)には、高温に加熱したシリカ原料とアルミニウム塩の水溶液を直接大気中で反応させることにより、表面がゼオライト化した多孔質で微細な粒状体を製造する方法が開示されている。シリカ原料としてその処理が問題となっている廃ソーダ石灰ガラス、鉄鋼スラグや水砕スラグなどを使用し、加熱高温状態にして、これにゼオライト成分として不足する成分を水溶液の形で加えたものを噴霧して急冷すると共に反応させて、該原料の粒度を小さくして表面積を大きくすると共に、その全体ではなく、その表面をゼオライト化する製造方法である。
【0012】
また、特開平1−148771号公報(特許文献9)には、モノリシックセラミック支持体の表面にゼオライトを結晶化する方法が開示されている。45−75重量%のシリカ、8−45重量%のアルミナおよび7−20重量%のマグネシアから成る酸化物組成を有するモノリシックセラミック(コージライト)支持体を酸化ナトリウムまたは水酸化ナトリウム、アルミナ、そして随意に活性シリカを含む水溶液と共に所望のゼオライトを支持体表面に結晶化するのに十分な温度で十分な時間、熱水処理する。または、モノリシックセラミック支持体を、活性シリカの層でコーティングし(コーティングはこのコーティングされた支持体の1−45重量%である)、この活性シリカを所望のゼオライトに結晶化して支持体の表面にゼオライトを与えるため、酸化ナトリウムまたは水酸化ナトリウムとアルミナを含む水溶液と共に熱水処理する。または、多孔性セラミック物質およびセラミック物質内に埋め込まれた全体重量の1−40%の活性シリカを含む焼結モノリシック体を、酸化ナトリウムまたは水酸化ナトリウムと随意にアルミナを含む水溶液と共に熱水処理して所望のゼオライトをモノリシック体の表面で結晶化させる製造方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000−84531号公報
【特許文献2】特開2000−351664号公報
【特許文献3】特開2002−308646号公報
【特許文献4】特開昭59−35019号公報
【特許文献5】特開昭64−24014号公報
【特許文献6】特開昭58−120512号公報
【特許文献7】特開2007−131502号公報
【特許文献8】特開2006−45042号公報
【特許文献9】特開平1−148771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
液晶パネルは、省電力・省資源に貢献できる表示装置であるので、今後、高度情報化社会の進展に伴って、急激に生産量が増大するとともに、その表示面積も大型化することが予測され、これに伴って、今後、廃液晶パネルも、数・量ともに急激に増大すると予想される。したがって、液晶パネルの重量の大半を占めるガラス(液晶パネルガラス)についても、廃棄物の低減と資源を大切にする観点から、再生利用することが好ましい。しかしながら特許文献1に開示された方法では、セメント材料として再利用することを意図しているため、液晶パネルガラスはスラグとなり、ガラス自体として再生利用することはできない。
【0015】
資源有効利用の観点からは、回収された液晶パネルガラスを液晶パネルガラス自体として再びマテリアルリサイクルすることが望ましい。しかしながら、液晶パネルガラス表面に付着している不純物、ガラス組成の異なる数多くの品種が存在することなどの理由で、光学的特性、熱特性の厳しい仕様が求められる液晶パネルガラスにリサイクルすることは、技術的に確立されていない。そのため、回収した液晶パネルガラスの、液晶パネルガラス以外の高付加価値製品としての用途開発が課題となっている。
【0016】
なお、液晶パネルガラスにはアルミノホウケイ酸ガラスと呼ばれるガラスが通常用いられている。アルミノホウケイ酸ガラスは、液晶パネルの製造工程に適合するように作られた特殊なガラスであり、その歪点は650℃以上である。これに対し、びんガラス、建築用窓ガラス、ガラス繊維、食器ガラスなど幅広くガラス製品に用いられているソーダライムガラスの歪点は、550℃以下である。このように、100℃以上歪点が異なるため、一般的にガラス製品に使用されるソーダライムガラスの溶融加工設備で、再生利用のためのアルミノホウケイ酸ガラスの溶融加工を行なうことは、加熱設備の性能、設備全般の耐熱性などの点で非常に困難である。また溶融温度の高いアルミノホウケイ酸ガラスを、通常はソーダライムガラスを原料として使用する建築用窓ガラス、ガラス繊維、食器ガラスなどの汎用的な製品へ使用することは、エネルギー消費の観点からも不利となる。このように、通常のソーダライムガラス製品の原料としての用途に用いる方法は技術的に確立されていないのが現状である。このため、不要となった液晶パネルガラスの用途として、現状の製造工程の温度と比較し加工温度が上昇しない用途に用いる再資源化方法が望まれている。
【0017】
上述した特許文献2に記載された方法は、粉砕したガラス廃棄物を主原料とし、これに粉砕したセラミックス廃棄物を原料として使用し、1000〜1200℃の高温で加熱焼成する方法である。しかしながら、この特許文献2に開示された方法は、高温焼成の工程を経るため、再資源化方法としては、多大なエネルギーを消費するといった課題がある。そのため、エネルギーコストおよび設備コストが高くなり、得られたセラミックス製品は高価となる。
【0018】
上述した特許文献3に記載された方法は、粉砕したソーダ石灰ガラス廃棄物を主原料とした化合物の混合物を825〜900℃で焼成する方法である。しかしながら、この特許文献3に開示された方法は、ソーダ石灰ガラス廃棄物を対象とし、それに応じた組成へ調合し結晶化させセラミックス材料を作成する方法であり、アルミノホウケイ酸ガラスへの適用については記載がされていない。
【0019】
上述した特許文献4に記載された方法は、石炭の流動床式燃焼炉から出る灰分を原料とするものである。石炭の燃焼により生成した灰分は、石炭中に含まれた無機成分が焼成された状態で残留したもので、AlとSiOを主成分としており、Al/SiO比は、2〜5の範囲となっている。このため、特許文献4に開示された方法では、原料の石炭灰に不純物が多く含まれるためゼオライトの合成率が低く、原料石炭の産地などによって原料組成のばらつきにより合成率にばらつきが生じるため、その都度組成を調合する操作が必要である。
【0020】
上述した特許文献5に記載された方法は、石炭炊きボイラーの燃料残渣であるフライアッシュを原料としてゼオライト組成物を製造する方法である。しかしながら、フライアッシュは、ボイラー内で溶融後に急冷され、ガラス化した石炭灰であり、融点が高く、硬く安定であるため、反応しにくいといった課題があり、反応性を高めるため、アルカリで溶融し高温で溶融するなどの前処理が必要となり、効率が悪くなる。
【0021】
上述した特許文献6に記載された方法は、水砕スラグを原料としてゼオライトを生成する方法である。しかしながら、特許文献6に開示された方法のようにスラグを原料とする場合、スラグがゼオライト化を阻害するCa分を多く含むため、酸処理などCa分を除去する処理が必要となり、効率が悪くなる。
【0022】
上述した特許文献7に記載された方法は、原料を固体状塩基と混合し、200〜1000℃に加熱溶解し、水に対して易溶化した後、20〜200℃で水熱合成を施すゼオライトの製造方法である。しかしながら、この特許文献7に開示された方法は、1000℃付近の高温での加熱が必要であり、多大なエネルギーを消費する。
【0023】
上述した特許文献8に記載された方法は、表面がゼオライト化した粒状体を製造する方法である。しかしながら、水溶液を噴霧して反応させるため、ゼオライト生成量(割合)が少なくなり、イオン交換能が0.3〜1meq/gと低くなることが課題である。また、570〜1000℃付近の高温での加熱が必要であり、多大なエネルギーを消費する。
【0024】
上述した特許文献9に記載された方法は、モノリシックセラミック支持体の表面にゼオライトを結晶化する方法である。しかしながら、セラミックの表面をゼオライト化するため、水熱合成時に水溶液中に活性シリカを加える、あるいはモノリシックセラミック支持体に活性シリカをコーティングする必要がある。また、実施形態により、セラミックに活性シリカを均一に混合し、所望の形状に成形した後、500〜850℃で焼結させる必要があるため、複雑な工程となる。
【0025】
廃棄物からゼオライトを合成する方法および廃棄物から合成したゼオライト材料が開示されているが、いずれの方法も安定的にA型ゼオライト単相を得ることは困難であり、複数のゼオライトの混在か原料の結晶構造が残存してしまうという課題がある。また、液晶パネルから回収したアルミノホウケイ酸ガラスを原料としたゼオライト合成方法や合成したゼオライト材料は開示されていない。また、他相が混在してしまうことにより純度の高いA型ゼオライトと比較した場合に、A型ゼオライトの特長であるイオン交換性能が低下してしまうという課題がある。また、石炭灰、焼却灰、スラグなどから合成したゼオライトは、原料の石炭、鉱石などに由来する重金属を含むことから、ゼオライトを合成した場合に重金属の溶出が課題となる。
【0026】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、不要となり回収された無アルカリガラスを多大エネルギーを消費せず効率的に資源として有効利用する方法を提供し、さらに、イオン交換能に優れ、水質浄化材、触媒材料などに利用可能で、重金属の溶出がないA型ゼオライト材料の製造方法を提供することである。また、効率的で、容易に反応制御可能なA型ゼオライト材料の製造方法を提供することもその目的とする。また、本発明によれば、原料であるアルミノホウケイ酸ガラス粒子を基材とし、表面のみがゼオライトとなった材料を得ることができ、比較的粒径が大きい材料を提供することができる。これにより、カラムなどに充填した際に、通水性に優れ、土壌改質剤として使用した際に雨水などにより流失することが無いゼオライト材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、アルミノホウケイ酸ガラスを原料として、表層部をゼオライト化することによるA型ゼオライト材料の製造方法であって、アルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液との混合物を加熱処理する合成工程を含むことを特徴とするA型ゼオライト材料の製造方法である。
【0028】
本発明のA型ゼオライト材料の製造方法において、前記合成工程の前に、アルミノホウケイ酸ガラスを酸性溶液と接触させ、アルミノホウケイ酸ガラスの表層に、アルミノホウケイ酸ガラスの他の領域と比較してカルシウム含有量が少ない領域を形成させる、および/または、アルミノホウケイ酸ガラスの他の領域と比較してSiO含有比率が高い領域を形成させる酸処理工程を含むことが好ましい。
【0029】
本発明のA型ゼオライト材料の製造方法において、前記合成工程はアルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液との混合物を水熱処理により加熱処理することが好ましい。
【0030】
本発明のA型ゼオライト材料の製造方法において、前記酸処理工程と合成工程の間にアルミノホウケイ酸ガラスをアルカリ溶液と接触させるアルカリ処理工程を含むことが好ましい。
【0031】
本発明のA型ゼオライト材料の製造方法において、記合成工程は、アルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液との混合物を加熱処理し、アルミノシリケートゲルを生成させアルミノシリケートゲルをガラス表層へ接触した状態で加熱保持することが好ましい。
【0032】
本発明のA型ゼオライト材料の製造方法において、Si/Alモル比が0.1以上2.0以下(さらに好ましくは1以下)となるようにアルミニウム化合物を添加する調合工程を、前記酸処理工程と前記合成工程との間にさらに含むことが、好ましい。
【0033】
本発明のA型ゼオライト材料の製造方法において、前記酸処理工程は、塩酸および硝酸から選ばれた少なくとも1種を含む濃度が0.1〜10Nの酸性溶液を用い、1時間以上(さらに好ましくは5時間以上)処理する工程であることが、好ましい。
【0034】
本発明のA型ゼオライト材料の製造方法において、前記アルミノホウケイ酸ガラスを50〜700μmに粉砕したものを原料とすることが好ましい。
【0035】
本発明のA型ゼオライト材料の製造方法において、前記合成工程は、0〜3N(さらに好ましくは0.2〜3N)の濃度のアルカリ溶液を用いる工程であることが好ましい。
【0036】
本発明のA型ゼオライト材料の製造方法において、前記合成工程は、75〜150℃(さらに好ましくは80〜110℃)で、24時間以上加熱処理を行なう工程であることが好ましい。
【0037】
本発明のA型ゼオライト材料の製造方法において、前記アルミノホウケイ酸ガラスが、SiO:50重量%以上、Al:10〜20重量%の組成を有することが好ましい。
【0038】
本発明のA型ゼオライト材料の製造方法において、前記アルミノホウケイ酸ガラスが、液晶パネルから回収したアルミノホウケイ酸ガラスであることが好ましい。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、不要となった液晶パネルなどから回収されたアルミノホウケイ酸ガラスを高付加価値なゼオライト材料へと有効に利用することが可能となる。本発明より、高温溶融などを施すことなく、不要となったアルミノホウケイ酸ガラスを用いたゼオライトを製造できるため、低環境負荷、かつ、低コストな製造方法が提供される。また、簡単な処理でゼオライトを製造することが可能となり、安価なゼオライト材料を得ることができる。さらに、本発明によれば、所定の処理を経ることで反応を制御でき、イオン交換能に優れ、吸着剤などに利用可能な、表層がA型ゼオライト単相となったゼオライト材料を合成することが可能となるA型ゼオライト材料の製造方法を提供することができる。
【0040】
ガラスは粉砕粒径を変えること、また発泡ガラスなどの任意の形状に溶融加工し、ゼオライト支持体とすることができるので、流水中における水質浄化用途にも使用することが可能である。また、粒径が大きなガラスの表面をゼオライト化することにより、粉体のゼオライトと比較し、通水性の良い材料として利用可能であり、土壌改質剤などへの利用に適した材料を提供することができる。また、粉砕粒径を小さくする必要がないため、粉砕コスト、粉砕時間を抑え、低コスト、かつ、短時間で製造可能なゼオライト材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明のA型ゼオライト材料の製造方法の好ましい一例を示すフローチャートである。
図2】本発明のA型ゼオライト材料の製造方法に好適に用いられるアルミノホウケイ酸ガラスを備える典型的な一例の液晶パネル1を模式的に示す断面図である。
図3】実施例1で得られたA型ゼオライト材料のX線回折の一例を示すグラフである。
図4】実施例1で得られたA型ゼオライト材料の一例を示すSEM写真である。
図5】実施例2で得られたA型ゼオライト材料のX線回折の一例を示すグラフである。
図6】実施例2で得られたA型ゼオライト材料の一例を示すSEM写真である。
図7】実施例3で得られたA型ゼオライト材料のX線回折の一例を示すグラフである。
図8】実施例3で得られたA型ゼオライト材料の一例を示すSEM写真である。
図9】実施例4で得られたA型ゼオライト材料のX線回折の一例を示すグラフである。
図10】実施例4で得られたA型ゼオライト材料の一例を示すSEM写真である。図10(a)、(b)、(c)はそれぞれ酸処理を3、96、168時間行ったガラスから合成した場合のゼオライト材料のSEM写真である。
図11】実施例5で得られたA型ゼオライト材料のX線回折の一例を示すグラフである。
図12】実施例5で得られたA型ゼオライト材料の一例を示すSEM写真である。図12(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ合成を48、96、168、336時間行った場合のゼオライト材料のSEM写真である。
図13】実施例6で得られたA型ゼオライト材料のX線回折の一例を示すグラフである。
図14】実施例6で得られたA型ゼオライト材料の一例を示すSEM写真である。図14(a)、(b)はそれぞれ、0.5、1.0MのNaOH溶液中で合成した場合のゼオライト材料のSEM写真である。
図15】実施例7および比較例1で得られたゼオライト材料のX線回折の一例を示すグラフである。
図16】実施例8および比較例2で得られたゼオライト材料のX線回折の一例を示すグラフである。
図17】実施例9で得られたA型ゼオライト材料のX線回折の一例を示すグラフである。
図18】実施例10で硝酸処理したガラスから得られたアルミノシリケートゲルを含むろ液の外観の一例である。
図19】実施例10においてアルミノシリケートゲルを水熱処理することにより得られた生成物のX線回折の一例である。
図20】実施例11で得られたA型ゼオライト材料のX線回折の一例を示すグラフである。
図21】比較例3で硝酸処理していないガラスから得られたろ液の外観の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明のアルミノホウケイ酸ガラスを用いたA型ゼオライト材料の製造方法は、基本的には、アルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液との混合物を加熱処理する合成工程を含むことを特徴とする。
【0043】
本発明により製造されるゼオライト材料は、粉砕されたアルミノホウケイ酸ガラスを支持体とし、表層部がA型ゼオライト化していることを特徴とする。
【0044】
このような本発明のA型ゼオライト材料の製造方法によれば、高温での溶融処理を施すことなく、アルミノホウケイ酸ガラスを原料として用いてゼオライト材料(好適にはA型ゼオライト)を製造することができる。これにより、不要となった液晶パネルなどに用いられているアルミノホウケイ酸ガラスを、低環境負荷のプロセスで、資源として有効に利用することが可能となる。また、本来不要となったアルミノホウケイ酸ガラスを原料とし、かつ、原料ガラスを高温溶融しないため、エネルギー消費量が少なく、設備コストおよびエネルギーコストが低く抑えられ安価なゼオライト材料を得ることができる。また、反応を制御することにより、アルミノホウケイ酸ガラス表層に、不純相の混ざっていない、A型ゼオライト単相を合成できるため、高性能な水浄化剤、乾燥剤、分子ふるい、触媒などに使用できるゼオライト材料を製造することが可能となる。
【0045】
本発明におけるアルミノホウケイ酸ガラスは、SiO:50重量%以上、Al:10〜20重量%の組成を有することが、好ましい。これにより、SiO/Alがモル比で4.24であり、すなわちSi/Alモル比が1以上の範囲にあり、FAU型ゼオライト(Si/Alモル比:1.5〜3)やA型ゼオライト(Si/Alモル比:1)の原料として好適である。なお、アルミノホウケイ酸ガラスがこのような組成を有することは、たとえば蛍光X線分析を用いた組成分析により確認することができる。
【0046】
液晶表示装置に使用されているアルミノホウケイ酸ガラスを再資源化するため、本発明において原料となるアルミノホウケイ酸ガラスは、液晶表示装置に搭載される液晶パネルガラスとして使用されているアルミノホウケイ酸ガラス組成範囲である、SiO:50重量%以上、Al:10〜20重量%、B:5〜20重量%、MgO+CaO+ZnO+SrO+BaO:5〜20重量%の範囲であることがより好ましい。SiOおよびAl組成、すなわち上述したSi/Alモル比の観点から、このような組成のアルミノホウケイ酸ガラスは、ゼオライトの原料として好適に使用される。
【0047】
本発明においては、原料となるアルミノホウケイ酸ガラスが上述した組成を有することで、不要となった液晶パネルなどから回収したアルミノホウケイ酸ガラスを原料として好適に使用できるため資源有効利用が可能となる。このように液晶パネル用のアルミノホウケイ酸ガラスを用いることで、石炭灰、フライアッシュ、スラグなどを用いた場合と異なり、原料組成のばらつきが少ないため、効率的に、反応制御性が良く、ゼオライトを製造することが可能となる。
【0048】
さらに、アルミノホウケイ酸ガラスは、従来、加工温度が高く、再溶融する場合に多大なエネルギーを消費するため、環境負荷およびエネルギーコストの面から、ほとんどリサイクルがなされていなかった。本発明によれば、従来リサイクルされておらず、今後急激に増加すると予測される不要となったアルミノホウケイ酸ガラスを資源として有効に利用することが可能となるといった効果が奏される。
【0049】
ここで、図1は、本発明のA型ゼオライト材料の製造方法の好ましい一例を示すフローチャートである。上述したように、本発明のA型ゼオライト材料の製造方法は、合成工程(図1中、ステップS7)を有していればよいが、前記合成工程の前に、アルミノホウケイ酸ガラスを酸性溶液と接触させ、アルミノホウケイ酸ガラスの表層に、アルミノホウケイ酸ガラスの他の領域と比較してカルシウム含有量が少ない領域を形成させる、および/または、アルミノホウケイ酸ガラスの他の領域と比較してSiO含有比率が高い領域を形成させる酸処理工程(図1中、ステップS4)を含むことが好ましい。また、合成するA型ゼオライト材料の構造を調整するため、その前に、所定のAl/SiO比となるようにアルミニウム化合物を添加する調合工程(図1中、ステップS5)と、アルミノホウケイ酸ガラスを任意の形状に成形する成形加工工程(図1中、ステップS3)とをさらに有していることが好ましい。また図1に示す例のように、調合工程と合成工程との間に、アルミノホウケイ酸ガラスをアルカリ溶液と接触させるアルカリ処理工程(図1中、ステップS6)を含むことが、好ましい。図1に示す例のフローチャートは、さらに、アルミノホウケイ酸ガラス回収工程(図1中、ステップS1)および粉砕工程(図1中、ステップS2)を有する場合を示している。以下、図1に示す例のフローチャートに沿って、本発明のA型ゼオライト材料の製造方法を詳細に説明する。
【0050】
〔1〕アルミノホウケイ酸ガラス回収工程
図1に示す例では、まず、アルミノホウケイ酸ガラス回収工程(ステップS1)として、たとえば、液晶パネルからアルミノホウケイ酸ガラスを回収する。ここで、図2は、典型的な一例の液晶パネルを模式的に示す断面図である。図2には、TFT(Thin Film Transistor)などのアクティブ素子(図示せず)を備えた液晶パネルを示している。図2に示す例の液晶パネルは、たとえば、対向配置された2枚のパネルガラス(カラーフィルタ側パネルガラス2a、TFT側パネルガラス2b)を備える。これらパネルガラス(ガラス基板)2a,2bは、対向配置された側(内面側)に、周縁部に沿ってシール樹脂体(シール材)3が設けられ、互いに貼り合わされてなる。また、これらパネルガラス2a,2bとシール樹脂体3とによって密封された領域には、液晶が封入され、液晶層4が形成されている。
【0051】
また、典型的な液晶パネルでは、図2に示すように、各パネルガラス2a,2bの対向配置された側とは反対側(外面側)には、偏光板5が粘着剤により貼着されている。典型的な液晶パネルでは、図2に示すように、カラーフィルタ側パネルガラス2aの内面側に、反射防止膜6、カラーフィルタ7、透明導電膜8および配向膜9が形成されている。また、典型的な液晶パネルでは、図2に示すように、TFT側パネルガラス2bの内面側に、画素電極10、バス電極11、絶縁膜12、透明導電膜8および配向膜9が形成されている。前記反射防止膜6、カラーフィルタ7、透明導電膜8、配向膜9、画素電極10、バス電極11および絶縁膜12の膜厚は、前記2枚のパネルガラス2a,2bの厚みと比較して、十分に薄い。以下、図2に示す例の液晶パネルよりアルミノホウケイ酸ガラスを得る手順を説明するが、本発明において原料となるアルミノホウケイ酸ガラスを回収する手順はこれに限定されるものではなく、また、液晶パネルから回収されたものにも限定されない。
【0052】
まず、液晶テレビなど、液晶パネルを備えた表示装置などから取り出された、たとえば図2に示すような構造の液晶パネル1から偏光板5を除去する。偏光板5の除去は、公知の機械的な方法を利用する。次に、貼り合わされたガラス基板2a,2bを、2枚に分離する。具体的には、ガラス基板におけるシール樹脂体3よりも内側の四辺を、該シール樹脂体3に沿って、ダイヤモンドソーやガラスカッターなどの切断工具を用いて矩形状に切断する。その後、必要に応じて外力を加えることにより、元の大きさよりも一回り小さい大きさのガラス基板を、液晶パネルから切断して取り外す。ガラス基板が取り外されると、封入されていた液晶層4が開封され、液晶は、ガラス基板に付着した状態で露出する。次に、液晶が露出したガラス基板から樹脂性のスキージを用いてかき取ることによって液晶を除去する。
【0053】
液晶パネルなどから回収されたアルミノホウケイ酸ガラスには、通常、カラーフィルタに使用される有機物薄膜、TFT(Thin Film Transistor)に使用される金属薄膜および無機物薄膜などの不純物が付着している。このような不純物は、たとえばサンドブラスト、回転研磨などの従来公知の機械的手法、ならびに、たとえば酸性溶液、有機溶媒によるエッチングなどの従来公知の化学的手法を適宜組み合わせることで、除去することができる。このように使用済み液晶テレビから取り出した液晶パネルからアルミノホウケイ酸ガラスが回収される。
【0054】
〔2〕粉砕工程
図1に示す例では、続く粉砕工程(ステップS2)において、原料として使用するアルミノホウケイ酸ガラスを粉砕する。ここで、アルミノホウケイ酸ガラスの粉砕のサイズとしては、50〜700μmの範囲内であることが好ましい。アルミノホウケイ酸ガラスを50〜700μmに粉砕したものを原料とすることで、表層でのゼオライト化反応が生じるとともに、粒のコア部分にアルミノホウケイ酸ガラスを残すことができる。粒径が50μmより小さくなると、粒のコア部分にアルミノホウケイ酸ガラスが残らずに全体がゼオライト化してしまう。一方、粒径が700μmを超えると、粉砕形状が扁平になるため、用途が限定されてしまう。また、用途に合わせた粒径とすることで、かつ、表層はA型ゼオライト化した材料とすることで、各用途での粒径サイズによる不具合が生じず、イオン交換能などの性能が高い材料が製造できるという利点がある。また、アルミノホウケイ酸ガラス内部まで反応が進行し、濃度のゆらぎが減少し、構造のばらつきが少ない、均一なゼオライト構造をもったゼオライト材料を得ることが可能となる。
【0055】
粉砕の方法としては、従来公知のせん断方式の破砕機、ハンマーミル、ロールミル、カッターミル、ボールミル、ジェットミルなどを用いて粉砕することができる。また、複数段処理を行ない、粉砕することもできる。ハンマーミルなどを用い、粗破砕した後、ボールミルなどで微粉砕すると効率よく粉砕することができる。たとえば、上述の液晶パネルから回収された液晶パネル画面サイズのアルミノホウケイ酸ガラスを、ハンマーミルなどで処理し、5mm以下のサイズに粗破砕したものを、さらに、ボールミルを用い1mm以下に粉砕し、アルミノホウケイ酸ガラスの原料として用いる。
【0056】
〔3〕成形加工工程
図1に示す例では、続く成形加工工程(ステップS3)において、粉砕したアルミノホウケイ酸ガラスに溶融、焼成を行ない、成形加工を施す。たとえば、粉砕したアルミノホウケイ酸ガラスを溶融、焼成することにより、発泡ガラスや板ガラス、多孔質ガラスなどの任意の形状に成形し、アルミノホウケイ酸ガラスをゼオライトの支持体とすることができる。また、成形加工により、発泡ガラスや多孔質ガラスの場合では、ガラスの表面積が増大し、ガラス表層部のゼオライトの生成量も増加するため、ゼオライトがもつイオン交換能や吸着能を向上させることが可能である。
【0057】
発泡ガラスの成形法としては、粉砕した上述のアルミノホウケイ酸ガラスに対して、任意の発泡剤を添加し、この混合物を600〜1200℃にまで加熱した後に急冷することによって発泡ガラスを得ることが可能である。
【0058】
板ガラスの成形法としては、粉砕したアルミノホウケイ酸ガラスを600〜1200℃にまで加熱することにより溶融させ、板状に成形することにより得ることが可能である。
【0059】
多孔質ガラスの成形法としては、粉砕したアルミノホウケイ酸ガラスを100〜900℃の間で焼成することにより得ることが可能である。中でも特に、気孔率の大きい多孔質ガラスを製造する場合には、粉砕したアルミノホウケイ酸ガラスを500〜900℃の間で焼成することにより得ることが可能である。
【0060】
成形加工せずに、粉砕したアルミノホウケイ酸ガラスで、そのまま用途に適用可能な形状であれば、成形加工工程を省略することができる。
【0061】
〔4〕酸処理工程
図1に示す例では、続いて、酸処理工程(ステップS4)において、上述のアルミノホウケイ酸ガラス粉体と、酸性溶液とを混合し、酸処理を施す。当該酸処理工程は、本発明のゼオライト材料の製造方法に必須の工程ではないが、図1に示す例のように、成形加工工程と調合工程との間に、当該酸処理工程を行うことが好ましい。これにより、アルミノホウケイ酸ガラス中の、例えばAl、B、MgO、CaO、ZnO、SrO、BaOなど、SiO以外の成分を酸性溶液に溶解させ、分離除去することによって、A型ゼオライトの生成を促進することが可能となる。
【0062】
このようにアルミノホウケイ酸ガラスを酸性溶液と接触させることで、アルミノホウケイ酸ガラスの表層に、アルミノホウケイ酸ガラスの他(表層以外)の領域と比較してカルシウム含有比率が少ない領域を形成させることができる。これにより、アルミノホウケイ酸ガラスの表層に、アルミノホウケイ酸ガラスの他の領域と比較してSiO含有比率が高い領域が形成される。SiO含有比率が高い領域からは、後述の合成工程におけるアルカリ溶液中での加熱処理により、アルミノホウケイ酸ガラスのままの状態に比べ、SiOが溶出しやすく、アルミノシリケートゲルの生成に有効に働く。すなわち、酸処理を施すことにより、アルミノホウケイ酸ガラス表層にA型ゼオライトが生成しやすくなるといった効果が生じる。
【0063】
酸性溶液としては、たとえば、塩酸、硝酸などの酸性物質を含む溶液を用いることができる。溶液はこれらの酸性物質を2種以上含んでいてもよい。塩酸、硝酸を含む溶液を用いることにより、低コストで、効率的にCa分の除去が可能となる。
【0064】
酸処理工程における処理温度は、5〜100℃が好ましく、40〜100℃がより好ましく、60〜80℃が特に好ましい。酸処理工程において処理温度が100℃を超えると、酸性物質が気化し、安全上の問題が生じ、設備の腐食も発生してしまう虞がある。酸処理工程において処理温度が5℃未満である場合には、溶解反応が極めて遅くなり、効率が悪くなってしまう。
【0065】
また酸処理工程における処理時間は、1時間以上が好ましく、5時間以上がより好ましく、80時間以上が特に好ましい。酸処理工程において攪拌時間が1時間未満になると、酸性溶液とアルミノホウケイ酸ガラスの十分な反応が得られず、アルミノホウケイ酸ガラス中のCa成分がそのまま残ってしまいゼオライトの合成割合が低くなってしまう。
【0066】
酸性溶液の濃度は、酸の種類、ゼオライトの種類などに応じて適宜選択することができるが、0.1〜10Nが好ましく、0.1〜5Nがより好ましい。酸性溶液の濃度が0.1N未満になると、アルミノホウケイ酸ガラスと酸性溶液の反応が小さくなり、効率的なゼオライト合成ができなくなるからである。また、酸性溶液の濃度が10Nを超える場合には、廃液処理が困難となり、効率が悪くなる虞がある。
【0067】
粉砕したアルミノホウケイ酸ガラスと酸性溶液との混合比(体積比)は、アルミノホウケイ酸ガラス粉体/酸性溶液=1/1000〜1が好ましい。混合比(体積比)が1/1000より小さくなると、必要な酸性溶液が多くなりすぎ、処理効率が悪くなってしまう。混合比(体積比)が1より大きくなると、アルミノホウケイ酸ガラス粉体と酸性溶液の接触面積が小さくなり、溶解反応が十分に進まなくなる。
【0068】
また、酸処理の際撹拌してもよい。撹拌する具体的な方法としては、従来公知の撹拌機を用いることができる。たとえば、マグネチックスターラー、インペラ式撹拌機、バレル式撹拌機などを用いることができる。
【0069】
得られた粉砕したアルミノホウケイ酸ガラスと酸性溶液との混合物をろ過し、アルミノホウケイ酸ガラス粉体と酸性溶液を分離する。
【0070】
〔5〕調合工程
図1に示す例では、続く調合工程(ステップS5)において、アルミニウム化合物を添加し、粉体中のSiO/Alモル比の調整を行なう。たとえば、アルミノホウケイ酸ガラス中に含まれるSiOと、アルミノホウケイ酸ガラス中に含まれるAlと、添加したアルミニウム化合物に含まれるAlとを考慮したSiO/Alモル比に関し、好ましくはSi/Alモル比が0.1以上2以下(SiO/Alモル比が0.2以上4以下)、より好ましくはSi/Alモル比が1以下(SiO/Alモル比が2以下)となるようにアルミニウム化合物を添加することにより、A型ゼオライトの合成が可能となる。
【0071】
添加するアルミニウム化合物としては、たとえば、NaAlO、Al(OH)、AlClなどを用いることができる。NaAlO、Al(OH)、AlClを用いることにより、反応性が高く、効率的に反応を進行させることができる。
【0072】
アルミニウム化合物の形態としては、粉体が好ましい。これにより後述のアルカリ処理工程において、均一に混合撹拌することが可能となる。
【0073】
〔6〕アルカリ処理工程
図1に示す例では、次に、アルカリ処理工程(ステップS6)において、上述のアルミノホウケイ酸ガラスと、アルカリ溶液とを混合し、撹拌する。当該アルカリ処理工程は、本発明のA型ゼオライト材料の製造方法に必須の工程ではないが、図1に示す例のように、調合工程と合成工程との間に、当該アルカリ処理工程を行うことが好ましい。混合し、撹拌する具体的な方法としては、従来公知の撹拌機を用いる。たとえば、マグネチックスターラー、インペラ式撹拌機、バレル式撹拌機などを用いることができる。これにより、アルミノホウケイ酸ガラスがアルカリ溶液に溶解し、ヒドロゲルの状態となる。
【0074】
アルカリ処理工程における撹拌温度は、5〜100℃が好ましい。アルカリ処理工程において攪拌温度が100℃を超えると、アルカリ溶液が気化し、安全上の問題が生じる虞がある。また、アルカリ処理工程における攪拌温度が5℃未満になると、溶解反応が極めて遅くなり、効率が悪くなってしまう場合がある。
【0075】
またアルカリ処理工程における撹拌時間は、1秒〜100時間が好ましい。アルカリ処理工程において攪拌時間が1秒未満になると、アルカリ溶液とアルミノホウケイ酸ガラスの十分な反応が得られず、アルミノホウケイ酸ガラスがそのまま残ってしまいゼオライトの合成割合が低くなってしまう虞がある。また、アルカリ処理工程において撹拌時間が100時間を超えると反応の進行が極端に遅くなり効率が悪くなってしまう場合がある。
【0076】
アルカリ処理工程に用いるアルカリ溶液としては、特に制限されないが、反応性、廃液処理の観点および取り扱いの容易性の観点から、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ物質を含む溶液が好ましい。溶液はこれらのアルカリ物質を2種以上を含んでいてもよい。なお、強アルカリ溶液であり反応性が極めて高く、安価であることから、またNa型のゼオライトが製造されることから、上記中でも、水酸化ナトリウムをアルカリ溶液として用いることが好ましい。
【0077】
アルカリ処理工程に用いるアルカリ溶液の濃度は、アルカリの種類、ゼオライトの種類などに応じて適宜選択することができるが、0〜3Nが好ましく、0.2〜3Nがより好ましく、0.5〜1Nが特に好ましい。3Nを超えるアルカリ溶液を用いた場合には、A型ゼオライト以外のヒドロキシソーダライトが多量に生成し、ゼオライトの純度が低くなってしまう虞がある。またアルカリ溶液の濃度が0.2N未満になると、アルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液の反応が小さくなり、ガラス相の残存が多く効率的なゼオライト合成がなくなる虞がある。
【0078】
粉砕したアルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液との混合比(体積比)は、粉砕したアルミノホウケイ酸ガラス/アルカリ溶液=1/1000〜1/2が好ましく、アルミノホウケイ酸ガラス粉体/アルカリ溶液=1/1000〜1/10がより好ましい。混合比(体積比)が1/1000より小さくなると、必要なアルカリ溶液が多くなりすぎ、処理効率が悪くなってしまう場合がある。混合比(体積比)が1/2より大きくなると、粉砕したアルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液の接触面積が小さくなり、溶解反応が十分に進まなくなる虞がある。
【0079】
〔7〕合成工程
図1に示す例では、次に、本発明のA型ゼオライト材料の製造方法において必須の工程である合成工程(ステップS7)において、アルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液との混合物を加熱処理する。
【0080】
加熱処理は、バッチ式または連続式のいずれによっても行なうことができ、たとえば耐圧容器または反応器にアルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液との混合物を導入し、好ましくは75〜150℃、より好ましくは80〜110℃に加熱する。当該加熱処理においては、アルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液との混合物を水熱処理により加熱処理することが、好ましい。アルミノホウケイ酸ガラスを加熱することにより、Si成分がアルカリ溶液中に溶出し、あらかじめアルミン酸ナトリウムとして添加し溶液中に存在するAlと反応し、アルミノシリケートゲルが生成する。アルミノシリケートゲルは加熱保持することにより、結晶化しゼオライトとなる。アルミノシリケートゲルは、Si成分がアルミノホウケイ酸ガラスから溶出した直後に生成する、すなわちアルミノホウケイ酸ガラスとアルカリ溶液界面で局所的に生成する。そのため、アルミノシリケートゲルはガラス表層を覆うように形成される。この状態で加熱保持することにより、アルミノホウケイ酸ガラス表層にゼオライトが生成する。
【0081】
これにより、従来のセラミックス材料として焼成する方法と異なり、さらに低温でのゼオライトの合成が可能となり、ボイラーなどの廃熱を利用できる温度範囲であり、省エネルギーに貢献できる方法となる。なお、合成工程における温度が75℃未満である場合には、合成反応速度が極めて遅くなり、効率が悪くなり、ゼオライトの生成が遅くなりガラス相が残存しやすいという傾向にある。また、150℃を超える場合には、ヒドロキシソーダライトなどのA型ゼオライト以外の相が生成してしまい、A型ゼオライトの純度が低くなる場合があるためである。
【0082】
合成の圧力はその温度での飽和蒸気圧とし、1〜10気圧となるように、反応容器内に導入する液体、固体の量を設定し、反応容器内の空間の体積を調整する。
【0083】
合成時間は、好ましくは12時間以上、より好ましくは24〜96時間、特に好ましくは48〜96時間とする。合成時間が24時間未満である場合は、十分にゼオライトが生成しない場合がある。合成時間が96時間以上ではヒドロキシソーダライトなどが多量に生成し、A型ゼオライトの純度が低下してしまう。
【0084】
上述したような本発明のA型ゼオライト材料の製造方法によれば、上述した原料から直接的にゼオライト材料(A型ゼオライト)を得ることができる。すなわち、合成の条件を適当に選択することにより、高価な合成装置などを必要とせず、不純相の混入していない高純度のゼオライト材料(A型ゼオライト)を直接的に得ることができる。
【0085】
なお、本発明のA型ゼオライト材料の製造方法は、好ましくは110℃以下の温度域で加熱し、作製するものであり、この場合にはボイラーの廃熱などを利用することができる温度域であり、省エネルギーに貢献することができる。
【0086】
本発明の方法によって、不純相の混入していないA型ゼオライトを得ることができる。A型ゼオライトは、数あるゼオライトの中でもイオン交換能が最も高い。本発明の方法によって得られたゼオライトは、このA型ゼオライトが高純度であるため、イオン交換性能を利用した高性能な水質浄化剤、土壌改良剤などに利用することができる。
【0087】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0088】
<参考例1>
市販の液晶パネル用ガラスについて波長分散型蛍光エックス線分析によりガラスのSiOおよびAlの組成を求めた結果、SiOが62質量%、Alが18質量%であった。
【0089】
<実施例1>
中心径20μmに粉砕したアルミノホウケイ酸ガラス10gを250mLの5M HNOに加え室温にて3時間攪拌した後、吸引ろ過、乾燥を経て硝酸処理廃ガラスを得た。14mLの1.0M NaOHに硝酸処理した廃ガラス1.0gを加え、さらに、1.3gのNaAlOと混合した。NaOH原料は、キシダ化学製特級水酸化ナトリウムペレットを用い、NaAlO原料は、関東化学株式会社製鹿1級アルミン酸ナトリウムを用いた。このとき、Si/Alモル比は0.75となっている。10分間攪拌した後に95℃で48時間の条件で合成を行なった。合成の完了後、吸引ろ過により合成物をろ別し、乾燥を経てゼオライト材料の試料を得た。
【0090】
得られた試料のX線回折測定を行ない、合成物質の同定を行なった結果を図3に示す。図3より分かるように、A型ゼオライトのみのピークが見られ、A型ゼオライト単相が得られた。
【0091】
得られた試料のSEM観察結果を図4に示す。図4から分かるように、A型ゼオライト特有のキューブ状の粒子が見られ、X線回折の結果と併せると、原料のガラス粒子全体がA型ゼオライトとなっていることが確認できた。
【0092】
<実施例2>
中心径64μmに粉砕したアルミノホウケイ酸ガラス10gを250mLの5M HNOに加え室温にて3時間攪拌した後、吸引ろ過、乾燥を経て硝酸処理廃ガラスを得た。14mLの1.0M NaOHにそれぞれ硝酸処理した廃ガラス1.0gを加え、さらに、1.3gのアルミン酸ナトリウム(NaAlO、関東化学工業製鹿一級)と混合した。このとき、Si/Alモル比は0.75となっている。10分間攪拌した後に95℃で48時間の条件で合成を行なった。合成の完了後、吸引ろ過により合成物をろ別し、乾燥を経てゼオライト材料の試料を得た。
【0093】
得られた試料のX線回折測定を行ない、合成物質の同定を行なった結果を図5に示す。図5より分かるように、A型ゼオライトのみのピークが見られ、A型ゼオライト単相が得られた。
【0094】
得られた試料のSEM観察結果を図6に示す。図6から分かるように、ガラス粒子表面に、A型ゼオライト特有のキューブ状の粒子が見られ、X線回折の結果と併せると、表層がA型ゼオライトとなっていることが確認できた。
【0095】
<実施例3>
中心径158μmに粉砕したアルミノホウケイ酸ガラス10gを250mLの5M HNOに加え室温にて3時間攪拌した後、吸引ろ過、乾燥を経て硝酸処理廃ガラスを得た。14mLの1.0M NaOHにそれぞれ硝酸処理した廃ガラス1.0gを加え、さらに、それぞれ1.3gのNaAlOと混合した。このとき、Si/Alモル比は0.75となっている。10分間攪拌した後に95℃で48時間の条件で合成を行なった。合成の完了後、吸引ろ過により合成物をろ別し、乾燥を経てゼオライト材料の試料を得た。
【0096】
95℃で48時間の合成処理により得られた試料のX線回折測定を行ない、合成物質の同定を行なった結果を図7に示す。図7から分かるように、A型ゼオライトと若干のヒドロキシソーダライト、不純物相のピークが見られ、A型ゼオライトとヒドロキシソーダライト、未同定相の混相が得られた。
【0097】
得られた試料のSEM観察結果を図8に示す。図8から分かるように、ガラス粒子表面に、A型ゼオライト特有のキューブ状の粒子が見られ、X線回折の結果と併せると、ガラス表層がA型ゼオライトとなっていることが確認できた。また、A型ゼオライトとガラス基材との界面が連続的となっており、固相反応か、若しくは固相液相の界面でのゼオライトの生成が生じているため、ゼオライトとガラスの界面が強固な結合となっている。
【0098】
<実施例4>
中心径318μmに粉砕したアルミノホウケイ酸ガラス10gを250mLの5M HNOに加え室温にて96、168時間攪拌した後、吸引ろ過、乾燥を経て硝酸処理廃ガラスを得た。14mLの1.0M NaOHに硝酸処理の時間が異なる廃ガラスをそれぞれ1.0gずつを加え、さらに、それぞれに1.3gのNaAlOを加えた。このとき、Si/Alモル比は0.75となっている。10分間攪拌した後に95℃で48時間の条件で合成を行なった。合成条件を表1に示した。合成の完了後、吸引ろ過により合成物をろ別し、乾燥を経てゼオライト材料の試料を得た。
【0099】
得られた試料のX線回折測定を行ない、合成物質の同定を行なった結果を図9に示す。図9から分かるように、酸処理3時間でA型ゼオライト、ヒドロキシソーダライト、不純物相のピークが見られた。酸処理時間96時間および168時間はA型ゼオライトの単相が得られた。粒径が大きな廃ガラスからゼオライトを合成する場合には、酸処理時間を長くすることにより、廃ガラス中のSiO以外の成分を溶出させることがA型ゼオライトの単相を得るために必要であることを示している。
【0100】
得られた試料のSEM観察結果を図10に示す。図から分かるように、酸処理時間96、168時間では、A型ゼオライト特有のキューブ状の粒子が見られ、X線回折の結果と併せると、ガラス表層がA型ゼオライトとなっていることが確認できた。
【0101】
【表1】
【0102】
<実施例5>
中心径318μmに粉砕したアルミノホウケイ酸ガラス10gを250mLの5M HNOに加え室温にて96時間攪拌した後、吸引ろ過、乾燥を経て硝酸処理廃ガラスを得た。14mLの1.0M NaOHにそれぞれ硝酸処理した廃ガラス1.0gを加え、さらに、1.3gのNaAlOと混合した。このとき、Si/Alモル比は0.75となっている。10分間攪拌した後に95℃で48、96、168、336時間の条件で合成を行なった。合成条件を表2に示した。合成の完了後、吸引ろ過により合成物をろ別し、乾燥を経てゼオライト材料の試料を得た。
【0103】
95℃で48、96、168、336時間の合成処理により得られた試料のX線回折測定を行ない、合成物質の同定を行なった結果を図11に示す。図11から分かるように、合成時間48時間でA型ゼオライトの単相が得られた。また、ブロードなハローが現れているため、ガラス粒内部ではガラスが残っており、ガラス表面のみがゼオライト化していることを示している。合成時間が96、168、336時間ではA型ゼオライトとヒドロキシドーダライト、未同定相の混合物が得られた。一方で、合成時間が96、168、336時間と長くなるにつれて、A型ゼオライトの割合が減少していき、ヒドロキシソーダライトや不純物相の割合が上昇した。
【0104】
得られた試料のSEM観察結果を図12に示す。図12(a)から分かるように、95℃で48時間の合成処理により得られた生成物では、A型ゼオライト特有のキューブ状の粒子が見られ、X線回折の結果と併せると、ガラス表層がA型ゼオライトとなっていることが確認できた。図12(b)〜(c)から分かるように、合成時間が96、168、336時間では、キューブ状の粒子とその他の形状の粒子が混在していた。合成時間が96、168、336時間と長くなるにつれて、A型ゼオライト特有のキューブ状結晶の割合が減少しており、X線回折の結果と併せると、ヒドロキシソーダライトや不純物相が増えていることが分かった。
【0105】
【表2】
【0106】
<実施例6>
中心径318μmに粉砕したアルミノホウケイ酸ガラス10gを250mLの5M HNOに加え室温にて96時間攪拌した後、吸引ろ過、乾燥を経て硝酸処理廃ガラスを得た。0.5、1.0、2.0、3.0M NaOH水溶液それぞれに硝酸処理した廃ガラス1.0gを加え、さらに、1.3gのNaAlOと混合した。このとき、NaOH水溶液の量、Si/Alモル比は表3のとおりとした。10分間攪拌した後に95℃で48時間の条件で合成を行なった。合成の完了後、吸引ろ過により合成物をろ別し、乾燥を経てゼオライト材料の試料を得た。
【0107】
0.5、1.0、2.0、3.0M NaOH溶液中で、95℃で48時間の合成処理により得られた試料のX線回折測定を行ない、合成物質の同定を行なった結果を図13に示す。図13から分かるように、0.5〜1.0M NaOH溶液中では、A型ゼオライトの単相が得られた。2.0〜3.0MでA型ゼオライトとヒドロシキソーダライトの混合物が得られた。
【0108】
また、0.5M NaOH溶液中で95℃、48時間合成を行った際の生成物のSEM写真を図14(a)に、1M NaOH溶液中で95℃、48時間合成を行った際の生成物のSEM写真を図14(b)に示す。図14(a)および(b)から分かるように、A型ゼオライト特有のキューブ形状が生成しており、ガラス表面がゼオライト化されていることが確認された。
【0109】
【表3】
【0110】
<実施例7>
中心径318μmに粉砕したアルミノホウケイ酸ガラス10gを250mLの5M HNOに加え室温にて96時間攪拌した後、吸引ろ過、乾燥を経て硝酸処理廃ガラスを得た。14mLのNaOH水溶液それぞれに硝酸処理した廃ガラス1.0gを加え、さらに、所定量のNaAlOと混合し、Si/Alモル比を0.4、0.5、0.75、1、1.4、1.9、2.3とした。NaOH水溶液濃度は表4に示したとおりとした。10分間攪拌した後に95℃で24時間の条件で合成を行なった。合成の完了後、吸引ろ過により合成物をろ別し、乾燥を経てゼオライト材料の試料を得た。
【0111】
得られた試料のX線回折測定を行ない、合成物質の同定を行なった結果を図15に示す。図15から分かるように、Si/Alモル比が0.4でA型ゼオライトとヒドロキシソーダライトの混合物、Si/Alモル比が0.5〜2.3では、A型ゼオライト単相が得られた。
【0112】
【表4】
【0113】
<実施例8>
中心径318μmに粉砕したアルミノホウケイ酸ガラス10gを250mLの5M HNOに加え室温にて96時間攪拌した後、吸引ろ過、乾燥を経て硝酸処理廃ガラスを得た。2.8、14、20、28、50mLの0.5M NaOH水溶液それぞれに硝酸処理した廃ガラス1.0gを加え、液(体積、mL)/ガラス(質量、g)比を2.8、14、20、28、49とした。さらに、所定量のNaAlOと混合し、Si/Alモル比を1.85、0.75、0.58、0.44、0.27とした。10分間攪拌した後に95℃で24時間の条件で合成を行なった。合成条件を表5に示した。合成の完了後、吸引ろ過により合成物をろ別し、乾燥を経てゼオライト材料の試料を得た。
【0114】
得られた試料のX線回折測定を行ない、合成物質の同定を行なった結果を図16に示す。図16から分かるように、液/ガラス比が2.8〜14で、A型ゼオライト単相が得られ、20〜49でA型ゼオライトとヒドロキシソーダライトの混合物が得られた。
【0115】
【表5】
【0116】
<実施例9>
中心径318μmに粉砕したアルミノホウケイ酸ガラス10gを250mLの5M HNOに加え室温にて96時間攪拌した後、吸引ろ過、乾燥を経て硝酸処理廃ガラスを得た。14mLの1M NaOH水溶液それぞれに硝酸処理した廃ガラス1.0gを加え、さらに、所定量のNaAlOと混合し、Si/Alモル比を0.75とした。NaOH水溶液濃度は表に示したとおりとした。10分間攪拌した後に75、95、150℃で48時間の条件で合成を行なった。合成条件を表6に示した。合成の完了後、吸引ろ過により合成物をろ別し、乾燥を経てゼオライト材料の試料を得た。
【0117】
得られた試料のX線回折測定を行ない、合成物質の同定を行なった結果を図17に示す。図17から分かるように、合成温度75、95℃では、A型ゼオライト単相が得られた。合成温度150℃ではA型ゼオライトとヒドロキシソーダライトの混合物が得られた。
【0118】
【表6】
【0119】
<実施例10>
中心径318μmに粉砕したアルミノホウケイ酸ガラス10gを250mLの5M HNOに加え室温にて96時間攪拌した後、吸引ろ過、乾燥を経て硝酸処理廃ガラスを得た。14mLの1.0M NaOHに硝酸したガラスを1.0g加え、さらに、それぞれに1.3gのNaAlOを加えた。このとき、Si/Alモル比は0.75となっている。10分間攪拌した後に95℃で2時間保持した。その後、100μmのメッシュのフィルターを用いてろ過したところ、ろ液中に図18に示すような白色のアルミノシリケートゲルが生成した。メッシュ上にはガラス粒子が得られた。
【0120】
また、硝酸処理していないガラスを1.0g加え、さらに、それぞれに1.3gのNaAlOを加えた。このとき、Si/Alモル比は0.75となっている。10分間攪拌した後に95℃で2時間保持した。その後、100μmのメッシュのフィルターを用いてろ過したところ、図19に示すようにろ液は透明であり白色のアルミノシリケートゲルは生成しなかった。
【0121】
さらにアルミノシリケートゲルとガラス粒子とをそれぞれろ液中でさらに95℃で24時間加熱保持した。アルミノシリケートゲルからの生成物とガラス粒子からの生成物のX線回折を図19に示す。アルミノシリケートゲルからはA型ゼオライトが生成した。ガラス粒は、非晶質のままであった。
【0122】
<実施例11>
中心径318μmに粉砕したアルミノホウケイ酸ガラスを14mLの1M NaOH水溶液に加え、さらに、1.3gのNaAlOと混合し、Si/Alモル比を0.75とした。NaOH水溶液濃度は表4に示したとおりとした。10分間攪拌した後に95℃で24時間の条件で合成を行なった。合成の完了後、吸引ろ過により合成物をろ別し、乾燥を経てゼオライト材料の試料を得た。
【0123】
得られた試料のX線回折測定を行ない、合成物質の同定を行なった結果を図20に示す。図20から分かるように、酸処理工程を経ていないガラスからは、A型ゼオライト、ヒドロキシソーダライト、未同定相の混合物が得られ、A型ゼオライトが合成できた。
【0124】
<比較例1>
実施例6と同様の方法にて硝酸処理廃ガラスを得た。5.0M NaOH水溶液に硝酸処理した廃ガラス1.0gを加え、さらに、1.3gのNaAlOと混合した。このとき、NaOH水溶液の量、Si/Alモル比は表3のとおりとした。実施例6と同様の合成工程処理を行った。
【0125】
得られた試料のX線回折測定を行ない、合成物質の同定を行なった結果を図13に示す。図13から分かるように、5.0M NaOH溶液中では、ヒドロキシソーダライトの単相が得られた。A型ゼオライトは得られなかった。
【0126】
<比較例2>
実施例7と同様の方法にて硝酸処理廃ガラスを得た。14mLのNaOH水溶液それぞれに硝酸処理した廃ガラス1.0gを加え、さらに、所定量のNaAlOと混合し、Si/Alモル比を2.9とした。NaOH水溶液濃度は表4に示したとおりとした。実施例7と同様の合成工程処理を行った。
【0127】
得られた試料のX線回折測定を行ない、合成物質の同定を行なった結果を図15に示す。図15から分かるように、Si/Alモル比が2.9では、P型ゼオライトが得られ、A型ゼオライトは生成しなかった。
【0128】
<比較例3>
中心径318μmに粉砕したアルミノホウケイ酸ガラスを酸処理せずにそのまま実施例10と同様の加熱処理を行った。具体的には14mLの1.0M 粉砕しただけのガラスを1.0g加え、さらに、それぞれに1.3gのNaAlOを加えた。このとき、Si/Alモル比は0.75となっている。10分間攪拌した後に95℃で2時間保持した。その後、100μmのメッシュのフィルターを用いてろ過したところ図21に示すようにアルミノシリケートゲルは生成せず、透明な液体が得られた。
【0129】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0130】
1 液晶パネル、2a カラーフィルタ側パネルガラス、2b TFT側パネルガラス、3 シール樹脂体、4 液晶層、5 光学フィルム、6 反射防止膜、7 カラーフィルタ、8 透明導電膜、9 配向膜、10 画素電極、11 バス電極、12 絶縁膜。
図1
図2
図3
図5
図7
図9
図11
図13
図15
図16
図17
図19
図20
図4
図6
図8
図10
図12
図14
図18
図21