(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
炭素材料、特に黒鉛は、高電気伝導性、高熱伝導性、耐薬品性、自己潤滑性等の特異な性質を有しているので、冶金用、電気・電子製品用、機械用等の材料として各種の用途に広く使用されている。最近は、高温で熱処理をして黒鉛結晶を発達させ、熱伝導性を向上させたものが、ヒートシンクや放熱基板として、また、リチウムイオン二次電池の負極材等として使用されている。
【0003】
黒鉛は、フェノール、フラン等の樹脂、コークス、メソカーボン等の原料を、例えば2000〜3200℃で熱処理することで得られる。
【0004】
特開2002−69757号公報には、炭素繊維及びその製造方法並びにその装置が開示されている。特許第2744617号には、気相成長炭素繊維の連続黒鉛化処理方法及び装置が開示されている。
【0005】
特許第3787241号には、円筒状の黒鉛管を複数本連接して加熱管を形成し、この加熱管の内部に、黒鉛原料を搬送する搬送トレイを配した黒鉛製造装置が開示されている。この装置では、搬送トレイによって、黒鉛原料が加熱管の内部を順次移動する。この構成によれば、黒鉛原料を連続的に熱処理することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した黒鉛化処理装置、黒鉛製造装置の構成では、原料から揮発した不純物が再び原料に付着することがある。
【0008】
本発明の目的は、純度の高い炭素材料を製造することができるルツボの構成を得ることである。
【0009】
本発明の他の目的は、純度の高い炭素材料を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここに開示するルツボは、熱処理に用いられるルツボであって、円筒状の胴部と、胴部の一端を覆う底部とを含むルツボと、円筒部と、円筒部の一端を覆う円板部とを含むフタとを備える。胴部の外周面には、雄ネジが形成され、円筒部の内周面には、雄ネジと締結される雌ネジが形成される。
【0011】
上記のルツボの構成によれば、容器の胴部の外周に雄ネジが形成され、フタの円筒部の内周に雌ネジが形成されている。そのため、雄ネジと雌ネジとの摺動によって発生する粉塵が、容器の内部に入り込まない。これによって、容器の内部に収納される原料に異物が混入することを抑制できる。
【0012】
好ましくは、円板部は、貫通口を有する。この構成によれば、内圧の上昇速度が大きい場合でも、貫通口から揮発分が排出されるため、フタの破損を防止することができる。
【0013】
ここに開示する炭素材料の製造方法は、ルツボに原料を収納する工程と、軸方向が水平になるように配置された黒鉛管を加熱する工程と、黒鉛管の内部に、原料が収納されたルツボを、胴部の軸方向が黒鉛管の軸方向と平行になるように装入する工程とを備える。貫通口は、円板部の中心からオフセットされた位置に形成され、ルツボは、貫通口が真上の位置になるように配置される。
【0014】
上記の製造方法よれば、ルツボを、貫通口が真上になるように黒鉛管に装入する。これによって、貫通口から揮発分が排出される際の原料の噴出を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、純度の高い炭素材料を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施の形態]
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化又は模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0018】
[全体の構成]
図1は、本発明の一実施形態による熱処理装置1の概略構成を示す平面図である。
図2は、
図1のII−II線に沿った断面図である。熱処理装置1は、ヒータ20、トラフ30、40、炉壁50、及びチャンバ60、70を備えている。
【0019】
熱処理装置1は、内部に原料が収納されたルツボ10を、円筒状のヒータ20(黒鉛管)の内部で軸方向に沿って移動させ、連続的に熱処理する。ヒータ20は、熱処理装置1の炉芯管の役割を兼ねている。
【0020】
ヒータ20は、複数の黒鉛管21A、21B、・・・、21Fから構成されている。黒鉛管21A、21B、・・・、21Fは、それぞれの端面を付き合わせて同軸に配置されている。黒鉛管21A、21B、・・・、21Fの接続部分には、黒鉛製の接続リング22が嵌められ、径方向の位置が規制されている。
【0021】
ヒータ20の両端は、トラフ30、40にそれぞれ接続されている。トラフ30、40は、ヒータ20と同様に、黒鉛等の導電性耐熱部材で形成されている。トラフ30、40は、ヒータ20と同じ内径を有する円筒状の形状を有している。
【0022】
ヒータ20の全体、及びトラフ30、40の一部は、耐火ブロック等で構成された炉壁50に囲まれている。炉壁50に囲まれた空間には、断熱材51が充填されている。断熱材51は、例えば黒鉛粉等がある。
【0023】
トラフ30、40にはそれぞれ、炉壁50から露出した部分に、電極31、41が形成されている。電極31、41には、図示しない電源装置から電力が供給される。電極31、41は、トラフ30、40を介してヒータ20と電気的に接続されている。熱処理装置1は、ヒータ20に電流を流すことによって、ヒータ20を加熱する。
【0024】
炉壁50の内側には、ヒータ20の周面に接するように、複数の測温筒52が配置されている。ヒータ20の温度は、複数の放射温度計53(
図2)によって測定されている。
【0025】
トラフ30、40にはそれぞれ、ガス導入口30a、40aが形成されている。炉壁50の内側には、トラフ30の内側に連通するように形成されたガス排気筒54が配置されている。ヒータ20の内部には、ガス導入口30a、40aから、窒素、アルゴン等の不活性ガスが導入される。導入された不活性ガスは、熱処理によって揮発する不純物とともに、ガス排気筒54から排出される。
【0026】
トラフ30、40はそれぞれ、チャンバ60、70に接続されている。
図1に示すように、チャンバ60は、シャッタ61を備えている。チャンバ70は、シャッタ71を備えている。熱処理装置1は、コンベア62、72、押込装置63、及び方向反転装置64をさらに備えている。また、チャンバ60、70にはそれぞれ、ガス導入口60a、70aが形成されている。ガス導入口60a、70aからも不活性ガスが導入される。
【0027】
ヒータ20の内部には複数のルツボ10が、互いに接しあった状態で装入されている。熱処理装置1は、チャンバ60側にあるルツボ10を押込装置63によって内部に押し込む。これによって、ヒータ20内の複数のルツボ10が、チャンバ70へ向かって移動する。
【0028】
熱処理装置1は、シャッタ61及びコンベア62を駆動して、未処理のルツボ10をチャンバ60に搬入する。熱処理装置1は、シャッタ71及びコンベア72を駆動して、熱処理されたルツボ10をチャンバ70から搬出する。熱処理装置1は、これらの動作を繰り返すことで、ルツボ10を連続的に熱処理することができる。
【0029】
方向反転装置64は、コンベア62の搬送経路上に設置されている。方向反転装置64は例えば、機械式のアームであり、コンベア62の上方からルツボ10を掴んで回転させる。方向反転装置64は、ルツボ10を、フタがチャンバ70側になるように回転させる。フタをチャンバ70側にすることによって、フタが押込装置63の押圧で破損するのを防止することができる。
【0030】
[ルツボ10の構成]
図3は、ルツボ10の概略構成を示す斜視図である。
図4は、
図3のIV−IV線に沿った断面図である。ルツボ10は、容器11と、フタ12とを備えている。
【0031】
容器11は、円筒状の胴部111と、胴部111の一端を覆う底部112とを含んでいる。
図2に示すように、胴部111は、胴部1111〜1113を含んでいる。胴部1111〜1113は、容器11の開口側(底部112の反対側)から、胴部1111、胴部1113、胴部1112の順番で形成されている。すなわち、胴部1112は胴部1111と底部112との間に形成され、胴部1113は胴部1111と胴部1112との間に形成されている。
【0032】
フタ12は、円筒部121と、円筒部121の一端を覆う円板部122とを含んでいる。
【0033】
容器11の胴部1111の外周には、雄ネジ1111aが形成されている。フタ12の円筒部121の内周には、雌ネジ121aが形成されている。雄ネジ1111aと雌ネジ121aとを締結させることで、フタ12を容器11に固定することができる。
【0034】
フタ12の外径R1は、容器11の外径R2と等しい。そのため、ルツボ10は、フタ12を容器11に固定した状態では、円柱状の形状になる。
【0035】
胴部1112の内径R4は、胴部1111の内径R3よりも大きい。胴部1113の内径は、胴部1111から胴部1112に向かって徐々に大きくなっている。なお、
図4では、胴部1113の内径は直線的に変化しているが、曲線的に変化していても良い。
【0036】
フタ12の円板部122には、円板部122の中心からオフセットされた位置に形成され、円板部122を厚さ方向に貫通する貫通口122aが形成されている。
【0037】
[炭素材料の製造方法]
以下、ルツボ10を用いて熱処理されて製造される炭素材料の製造方法の一例を説明する。ただし、ルツボ10を用いた炭素材料の製造方法は、これに限定されない。ここでは、製造される炭素材料が黒鉛である場合を説明するが、製造される炭素材料は、黒鉛に限定されない。
【0038】
図5は、炭素材料の製造方法の一例を示すフロー図である。この製造方法は、ルツボ10に黒鉛原料を収納する工程(ステップS1)と、ヒータ20を加熱する工程(ステップS2)と、黒鉛原料が収納されたルツボ10をヒータ20に装入する工程(ステップS3)とを備えている。
【0039】
まず、ルツボ10に黒鉛原料を収納する(ステップS1)。黒鉛原料は例えば、フェノール、フラン等の樹脂、コークス、メソカーボン等の粉体である。黒鉛原料を容器11に投入した後、フタ12を容器11に固定する。上述のとおり、雄ネジ1111aと雌ネジ121aとを締結させることで、フタ12を容器11に固定することができる。
【0040】
次に、ヒータ20を加熱する(ステップS2)。上述のように、熱処理装置1では、電極31、41(
図1)からヒータ20に通電することによって、ヒータ20を加熱することができる。加熱温度は、例えば2000〜3200℃、好ましくは2200〜3000℃である。
【0041】
次に、黒鉛原料が収納されたルツボ10をヒータ20に装入する(ステップS3)。このとき、ルツボ10を、容器11の胴部111の軸方向(
図3におけるz方向)と、ヒータ20の軸方向(
図2におけるx方向)とが平行になるように挿入する。
【0042】
上述のとおり、熱処理装置1は、コンベア62及び押込装置63等を備えている。本実施形態では、ルツボ10はコンベア62によって搬送され、所定のタイミングでヒータ20に装入される。これによって、ルツボ10の内部の黒鉛原料が黒鉛化し、黒鉛が得られる。
【0043】
図6は、熱処理装置1をヒータ20の軸方向から見た正面図(
図1のx方向プラス側から見た正面図)である。
図6に示すように、ルツボ10は、フタ12の貫通口122aが、真上(最上又は時計の12時の位置)になるようにヒータ20に装入されることが好ましい。
【0044】
上述のように、ルツボ10は、フタ12がチャンバ70側になるように装入されることが好ましい。本実施形態では、方向反転装置64(
図1)によって、フタ12がチャンバ70側になるようにルツボ10を回転させる。この構成によれば、方向反転装置64よりもコンベア62の搬送方向の上流では、ルツボ10はフタ12がコンベア62の図上左側にある。そのため、例えば作業者をコンベア62の図上左側にしか配置できない場合であっても、貫通口122aの位置を確認しながら作業することができる。
【0045】
なお、上記の例では、ヒータ20を加熱した後にルツボ10をヒータ20に装入する場合を説明した。しかし、ルツボ10をヒータ20に装入した後、ヒータ20を加熱しても良い。
【0046】
[本実施形態の効果]
以上、熱処理装置1の構成、ルツボ10の構成、及びこれらを用いた黒鉛の製造方法を説明した。本実施形態によれば、黒鉛原料は、ルツボ10に収納されて熱処理される。ルツボ10では、容器11の開口は、フタ12によって塞がれている。熱処理に伴って、黒鉛原料から不純物が揮発する。揮発した不純物は、ルツボ10の内圧が高くなると、容器11とフタ12との隙間及び貫通孔20aから排出される。一方、排出された不純物がルツボ10の内部に入ることはない。そのため、黒鉛原料から揮発した不純物が再び黒鉛原料に付着することがない。これによって、純度の高い黒鉛が得られる。
【0047】
本実施形態によれば、容器11の胴部1111の外周に雄ネジ1111aが形成され、フタ12の円筒部121の内周に雌ネジ121aが形成されている。この構成の効果を、仮想的な比較例を参照して説明する。
【0048】
図7は、仮想的な比較例によるルツボ90の概略構成を示す断面図である。ルツボ90は、容器91と、フタ92とを備えている。容器91は、円筒状の胴部911と、胴部911の一端を覆う底部912とを含んでいる。フタ92は、円柱部921と、円柱部921の一端に形成された円板部922とを含んでいる。ルツボ90では、容器91の胴部911の内周に雌ネジ911aが形成され、フタ92の円柱部921の外周に雄ネジ921aが形成されている。
【0049】
ルツボ90の構成の場合、雌ネジ911aと雄ネジ921aとを締結する際、雌ネジ911aと雄ネジ921aとの摺動によって発生する粉塵が、容器91の内部に入り込む可能性がある。
【0050】
これに対し、本実施形態によるルツボ10の構成によれば、雄ネジ1111aと雌ネジ121aとの摺動によって発生する粉塵が、容器11の内部に入り込まない。これによって、黒鉛原料、及び黒鉛に異物が混入することを抑制できる。
【0051】
本実施形態によれば、フタ12の外径R1は、容器11の外径R2と等しい。この構成によれば、ルツボ10は、フタ12を容器11に固定した状態では、円柱状の形状になる。本実施形態では、ルツボ10を、胴部111の軸方向とヒータ20の軸方向とが平行になるように配置する。このとき、ルツボ10が円柱状の形状であることによって、ルツボ10をヒータ20に安定に配置することができる。また、ルツボ10をスムーズに移動させることができる。なお、フタ12の外径R1と容器11の外径R2とを厳密に等しくする必要はなく、実質的に等しければ良い。
【0052】
図4に示すように、容器11に雄ネジ1111aを形成し、フタ12に雌ネジ121aを形成し、かつ、外径R1と外径R2とを等しくすると、胴部1111の外径がフタ12の外径R1よりも小さくなる。本実施形態によれば、胴部1112の内径R4は、胴部1111の内径R3よりも大きい。換言すれば、容器11は、底部112側において、内径が大きくなっている。この構成によれば、胴部1111の外径を小さくしても、容器11の内容量を大きくすることできる。
【0053】
本実施形態によれば、胴部1113の内径は、胴部1111から胴部1112に向かって徐々に大きくなる。この構成によれば、容器11から黒鉛を取り出す際、黒鉛が胴部1111と胴部1112との段差に引っかかることを防止できる。これによって、黒鉛をスムーズに取り出すことができる。
【0054】
上述のように、ルツボ10の内圧が高まると、揮発分は容器11とフタ12との隙間から排出される。しかし、黒鉛原料が揮発分を多く含む場合や、特定の温度域で多量の揮発分が発生する場合等には、排気が間に合わず、フタ12が破損する可能性がある。本実施形態によれば、フタ12の円板部122は、貫通口122aを有する。この構成によれば、内圧の上昇速度が大きい場合でも、貫通口122aから揮発分が排出されるため、フタ12等の破損を防止することができる。
【0055】
貫通口122aは、円板部122の中心からオフセットされた位置に形成されている。本実施形態では、ルツボ10を、貫通口122aが真上になるようにヒータ20に装入する。この構成によれば、貫通口122aから揮発分が排出される際の黒鉛原料の噴出を抑制することができる。なお、貫通口122aは厳密に真上になる必要はなく、実質的に真上になるように装入されていれば良い。
【0056】
[その他の実施形態]
以上、本発明についての実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態のみに限定されず、発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0057】
上記の実施形態では、ヒータ20が、炉芯管の役割を兼ねている場合を説明した。しかし熱処理装置1は、炉芯管とは別に加熱用のヒータを備えていても良い。また、上記ではヒータ20を通電加熱する場合を説明したが、ヒータ20は、誘導加熱されても良い。
【0058】
上記の実施形態では、熱処理装置1が、チャンバ60、70を備えている場合を説明した。しかし、熱処理装置1は、チャンバ60、70のいずれか又は両方を備えず、トラフ30の入口側、又はトラフ40の出口側にシャッタを備える構成としても良い。また、コンベア62、72はなくても良い。あるいは、コンベア62、72に代えて、スロープ等が形成されていても良い。
【0059】
上記の実施形態で例示したように、ルツボ10は、軸方向が水平になるように配置されたヒータ20を備える熱処理装置1に対して好適に用いることができる。ただし、ルツボ10を処理する熱処理装置の構成はこれに限定されず、種々の熱処理装置を用いることができる。
【解決手段】ルツボ10は、熱処理に用いられるルツボであって、円筒状の胴部111と、胴部111の一端を覆う底部112とを含む容器11と、円筒部121と、円筒部121の一端を覆う円板部122とを含むフタ12とを備える。胴部111の外周面には、雄ネジ1111aが形成され、円筒部121の内周面には、雄ネジ1111aと締結される雌ネジ121aが形成される。