メディアが載置されるフラットベッドの上方において第一の方向に延在し、インク液滴を吐出するヘッドユニットを前記第一の方向に移動可能に保持すると共に、前記フラットベッドに対して前記第一の方向に直交する第二の方向に移動可能に保持されるYバーを備えるプリンタであって、
駆動機構の駆動制御を行う駆動制御装置と、
前記Yバーを前記第二の方向に搬送する駆動機構と、
前記フラットベッドに対する前記Yバーの移動量を直接計測する計測装置と、
を備え、
前記駆動機構は、前記Yバーの第一の方向における一方端部を搬送する第一の駆動機構と、前記Yバーの第一の方向における他方端部を搬送する第二の駆動機構とを有し、
前記駆動制御装置は、Yバーの第一の方向における一方端部の移動量を計測する第一の計測装置と、前記Yバーの第一の方向における他方端部の移動量を計測する第二の計測装置とを有し、
前記駆動制御装置は、前記第一の計測装置および前記第二の計測装置により計測された前記Yバーの前記移動量に基づいて、前記駆動機構の制御量を補正すると共に、前記Yバーの第一の方向における一方端部と、前記Yバーの第一の方向における他方端部とを独立して搬送するように前記駆動機構の駆動制御を行った後に、前記ヘッドユニットを前記第一の方向に移動させてインク液滴を吐出させ、
前記ヘッドユニットが前記インク液滴を吐出しながら第一の方向に移動することと、前記ヘッドユニットが前記Yバーの移動に伴って第二の方向に移動することと、を交互に繰り返すことによって、前記メディアに画像を印刷するようになっていることを特徴とするプリンタ。
メディアが載置されるフラットベッドの上方において第一の方向に延在し、インク液滴を吐出するヘッドユニットを前記第一の方向に移動可能に保持すると共に、前記フラットベッドに対して前記第一の方向に直交する第二の方向に移動可能に保持されるYバーを備えるプリンタの制御方法であって、
前記Yバーを前記第二の方向に搬送する搬送ステップと、
前記フラットベッドに対する前記Yバーの移動量を直接計測する計測ステップと、
前記計測ステップにより計測された前記Yバーの移動量に基づいて、前記搬送ステップにより搬送する前記Yバーの制御量を補正する補正ステップと、
を有し、
前記搬送ステップは、
前記Yバーの第一の方向における一方端部と、前記Yバーの第一の方向における他方端部とを、独立して搬送し、
前記計測ステップは、
前記Yバーの第一の方向における一方端部の移動量と、前記Yバーの第一の方向における他方端部の移動量とを、独立して計測した後、前記ヘッドユニットを前記第一の方向に移動させてインク液滴を吐出させ、
前記ヘッドユニットが前記インク液滴を吐出しながら第一の方向に移動することと、前記ヘッドユニットが前記Yバーの移動に伴って第二の方向に移動することと、を交互に繰り返すことによって、前記メディアに画像を印刷するようになっていることを特徴とするプリンタの制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、大型のフラットベッド型インクジェットプリンタでは、Yバーが長大化するため、Yバーを搬送方向に移動させると、機械的なバックラッシ、駆動ベルトの伸縮、Yバーの捩れなどが発生する。特に、Yバーの長さが4mを越えるような大型のフラットベッド型インクジェットプリンタでは、その影響が顕著に発生する。
【0006】
このため、従来のインクジェットプリンタでは、Yバーの移動量を間接的に算出しているため、モータ軸に取り付けられたエンコーダにより算出されたYバーの移動量と、実際のYバーの移動量とに誤差が生じ、Yバーの搬送精度が低下するという問題があった。
【0007】
そして、Yバーの搬送精度が低下すると、Yバーに保持されたヘッドユニットの位置決め精度が低下するため、ヘッドユニットから吐出されたインク液滴の着弾位置精度が低下し、印刷画質が低下してしまう。
【0008】
そこで、本発明は、Yバーの搬送精度を向上させて印刷画質を向上させることができるプリンタ及びプリンタの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るプリンタは、メディアが載置されるフラットベッドの上方において第一の方向に延在し、インク液滴を吐出するヘッドユニットを前記第一の方向に移動可能に保持すると共に、前記フラットベッドに対して前記第一の方向に直交する第二の方向に移動可能に保持されるYバーを備えるプリンタであって、駆動機構の駆動制御を行う駆動制御装置と、前記Yバーを前記第二の方向に搬送する駆動機構と、前記フラットベッドに対する前記Yバーの移動量を直接計測する計測装置と、を備え、前記駆動機構は、前記Yバーの第一の方向における一方端部を搬送する第一の駆動機構と、前記Yバーの第一の方向における他方端部を搬送する第二の駆動機構とを有し、前記駆動制御装置は、Yバーの第一の方向における一方端部の移動量を計測する第一の計測装置と、前記Yバーの第一の方向における他方端部の移動量を計測する第二の計測装置とを有し、前記駆動制御装置は、前記第一の計測装置および前記第二の計測装置により計測された前記Yバーの前記移動量に基づいて、前記駆動機構の制御量を補正すると共に、前記Yバーの第一の方向における一方端部と、前記Yバーの第一の方向における他方端部とを独立して搬送するように前記駆動機構の駆動制御を行った後に、前記ヘッドユニットを前記第一の方向に移動させてインク液滴を吐出させ
、前記ヘッドユニットが前記インク液滴を吐出しながら第一の方向に移動することと、前記ヘッドユニットが前記Yバーの移動に伴って第二の方向に移動することと、を交互に繰り返すことによって、前記メディアに画像を印刷するようになっていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るプリンタによれば、ヘッドユニットを第一の方向に移動させながらヘッドユニットからインク液滴を吐出させるとともに、Yバーを第二の方向に移動させることで、フラットベッドに載置されたメディアに画像を印刷することができる。このとき、フラットベッドに対するYバーの移動量を直接計測することで、駆動機構の制御量に対するYバーの実際の移動量を求めることができる。そこで、計測装置によって直接計測されたYバーの移動量に基づいて駆動機構の制御量を補正することで、Yバーの搬送精度を向上させることができる。これにより、ヘッドユニットから吐出されたインク液滴の着弾位置精度を向上させることができるため、印刷画質を向上させることができる。
【0011】
また、第一の駆動機構と第二の駆動機構とによりYバーの第一の方向における両端部を独立して搬送することで、Yバーの傾きを調整することができる。これにより、Yバーが第一の方向に長くなったとしても、Yバーの第一の方向における両端部の移動量を均一にして、Yバーの傾きを抑制することができる。
【0012】
また、第一の計測装置及び第二の計測装置により、Yバーの一方端部と他方端部とを独立して計測することで、Yバーの傾きをより高精度に検出することができ、Yバーの傾きを高精度に補正することができる。
【0013】
また、計測装置は、フラットベッドに取り付けられたリニアスケールと、Yバーに取り付けられてリニアスケールを検出するリニアエンコーダと、を備えることが好ましい。このように、リニアスケールとリニアエンコーダとを用いることで、フラットベッドに対するYバーの移動量を高精度に検出することができる。
【0014】
また、第一の駆動機構及び第二の駆動機構は、第二の方向に沿って配列される駆動プーリ及び従動プーリと、駆動プーリ及び従動プーリに掛け渡されて、Yバーに連結されるタイミングベルトと、駆動プーリを回転させるモータと、を備えることが好ましい。通常、ボールねじなどの高剛性な部材を用いてYバーを搬送しているが、このような部材は高価であるためコスト的に満足できるものでは無い。そこで、このように、第一の駆動機構及び第二の駆動機構として、駆動プーリ、従動プーリ、タイミングベルト及びモータという簡易な構成を採用することで、ボールねじなどの部材に比べて安価な部材を用いることができるため、Yバーの第一の方向における両端部を確実に第二の方向に搬送しつつ、コストを低減することができる。
【0015】
本発明に係るプリンタの制御方法は、メディアが載置されるフラットベッドの上方において第一の方向に延在し、インク液滴を吐出するヘッドユニットを前記第一の方向に移動可能に保持すると共に、前記フラットベッドに対して前記第一の方向に直交する第二の方向に移動可能に保持されるYバーを備えるプリンタの制御方法であって、前記Yバーを前記第二の方向に搬送する搬送ステップと、前記フラットベッドに対する前記Yバーの移動量を直接計測する計測ステップと、前記計測ステップにより計測された前記Yバーの移動量に基づいて、前記搬送ステップにより搬送する前記Yバーの制御量を補正する補正ステップと、を有し、前記搬送ステップは、前記Yバーの第一の方向における一方端部と、前記Yバーの第一の方向における他方端部とを、独立して搬送し、前記計測ステップは、前記Yバーの第一の方向における一方端部の移動量と、前記Yバーの第一の方向における他方端部の移動量とを、独立して計測した後、前記ヘッドユニットを前記第一の方向に移動させてインク液滴を吐出させ
、前記ヘッドユニットが前記インク液滴を吐出しながら第一の方向に移動することと、前記ヘッドユニットが前記Yバーの移動に伴って第二の方向に移動することと、を交互に繰り返すことによって、前記メディアに画像を印刷するようになっていることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るプリンタの制御方法によれば、ヘッドユニットを第一の方向に移動させながらヘッドユニットからインク液滴を吐出させるとともに、Yバーを第二の方向に移動させることで、フラットベッドに載置されたメディアに画像を印刷することができる。このとき、フラットベッドに対するYバーの移動量を直接計測することで、Yバーの実際の移動量を求めることができる。そこで、計測ステップにおいて直接計測されたYバーの移動量に基づいて、Yバーを搬送させる制御量を補正することで、Yバーの搬送精度を向上させることができる。これにより、ヘッドユニットから吐出されたインク液滴の着弾位置精度を向上させることができるため、印刷画質を向上させることができる。
【0017】
また、Yバーの第一の方向における両端部を独立して搬送することで、Yバーの傾きを調整することができる。このため、Yバーが第一の方向に長くなったとしても、Yバーの第二の方向における両端部の移動量を均一にして、Yバーの傾きを抑制することができる。
【0018】
また、Yバーの一方端部と他方端部とを独立して計測することで、Yバーの傾きをより高精度に検出することができ、Yバーの傾きを高精度に補正することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、Yバーの搬送精度を向上させて印刷画質を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明に係るインクジェットプリンタの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
【0022】
図1は、実施形態に係るインクジェットプリンタを示す概略斜視図であり、
図2は、
図1に示すインクジェットプリンタの機能構成を示す概略平面図である。
図1及び
図2に示すように、インクジェットプリンタ1は、印刷対象のメディア(不図示)が載置固定されるフラットベッド10と、インク液滴を吐出するヘッドユニット20が搭載されるYバー30と、を主構成要素としている。そして、このインクジェットプリンタ1は、メディアをフラットベッド10に載置固定した状態で、ヘッドユニット20を走査方向に移動させると共に、Yバー30を走査方向に直交する搬送方向に搬送することで、メディアに画像を印刷するものである。そこで、以下に、インクジェットプリンタ1の構成について詳細に説明する。なお、以下の説明では、走査方向をY軸方向、搬送方向をX軸方向とする。
【0023】
フラットベッド10は、フレーム構成の基台部11により所定高さに支持されており、その上面にメディアを載置して吸着固定するものである。このため、フラットベッド10の上面は、平面上に形成されており、吸引装置(不図示)により吸引される複数の吸引孔(不図示)が形成されている。
【0024】
そして、フラットベッド10には、Yバー30が載置されてYバー30をX軸方向移動可能に保持する一対のレール12と、Yバー30をX軸方向に搬送するための駆動機構40が設けられている。
【0025】
図2に示すように、一対のレール12は、フラットベッド10のY軸方向における一方端部(
図2において左側端部)に設けられた第一レール12aと、フラットベッド10のY軸方向における他方端部(
図2において右側端部)とに設けられた第二レール12bと、により構成されている。すなわち、Yバー30は、フラットベッド10のY軸方向における両端部において、第一レール12aと第二レール12bとにより保持されている。
【0026】
駆動機構40は、フラットベッド10のY軸方向における一方端部に設けられた第一駆動機構40aと、フラットベッド10のY軸方向における他方端部とに設けられた第二駆動機構40bと、により構成されている。
【0027】
第一駆動機構40aは、X軸方向に沿って配列される駆動プーリ41a及び従動プーリ42aと、駆動プーリ41a及び従動プーリ42aとに掛け渡されたタイミングベルト43aと、駆動プーリ41aの回転軸に連結されて駆動プーリ41aを回転駆動する駆動モータ44aとを備えている。そして、タイミングベルト43aは、Yバー30のY軸方向において一方端部(
図2において左側端部)に連結されている。このタイミングベルト43aは、カーボンを主構成要素とした高剛性のタイミングベルトを採用しており、伸縮率が低く抑えられている。また、駆動モータ44aと駆動プーリ41aとは、所定の減衰比を有する減衰器(不図示)を介して連結されている。
【0028】
そして、第一駆動機構40aは、駆動モータ44aを回転駆動させると、駆動モータ44aの駆動軸に連結された駆動プーリ41aが回転し、この駆動プーリ41aと従動プーリ42aとに掛け渡されたタイミングベルト43aが回転することにより、Yバー30の一方端部がX軸方向に牽引される。
【0029】
第二駆動機構40bは、X軸方向に沿って配列される駆動プーリ41b及び従動プーリ42bと、駆動プーリ41b及び従動プーリ42bとに掛け渡されたタイミングベルト43bと、駆動プーリ41bの回転軸に連結されて駆動プーリ41bを回転駆動する駆動モータ44bとを備えている。そして、タイミングベルト43bは、Yバー30のY軸方向において他方端部(
図2において右側端部)に連結されている。このタイミングベルト43bは、カーボンを主構成要素とした高剛性のタイミングベルトを採用しており、伸縮率が低く抑えられている。また、駆動モータ44bと駆動プーリ41bとは、所定の減衰比を有する減衰器(不図示)を介して連結されている。
【0030】
そして、第二駆動機構40bは、駆動モータ44bを回転駆動させると、駆動モータ44bの駆動軸に連結された駆動プーリ41bが回転し、この駆動プーリ41bと従動プーリ42bとに掛け渡されたタイミングベルト43bが回転することにより、Yバー30の他方端部がX軸方向に牽引される。
【0031】
このように、第一駆動機構40aと第二駆動機構40bとは、同一の構成であって、フラットベッド10のY軸方向における中心を通りX軸方向に延びる中心線に対して線対称に構成されている。これにより、Yバー30をY軸方向においてバランスよく保持しながらX軸方向に搬送することが可能となっている。
【0032】
さらに、フラットベッド10には、第一駆動機構40aのタイミングベルト43aに沿って配置されるリニアスケール50aと、第二駆動機構40bのタイミングベルト43bに沿って配置されるリニアスケール50bと、が取り付けられている。
【0033】
リニアスケール50aは、フラットベッド10のY軸方向における一方端部に取り付けられており、後述するYバー30に搭載される光学式リニアエンコーダ51aによりYバー30のY軸方向における一方端部の移動量を計測するためのスケールである。このため、リニアスケール50aは、X軸方向に延在する長尺の帯状に形成されており、数〜数十μmのピッチでスリットが形成されている。
【0034】
リニアスケール50bは、フラットベッド10のY軸方向における他方端部に取り付けられており、後述するYバー30に搭載される光学式リニアエンコーダ51bによりYバー30のY軸方向における他方端部の移動量を計測するためのスケールである。このため、リニアスケール50bは、X軸方向に延在する長尺の帯状に形成されており、数〜数十μmのピッチでスリットが形成されている。
【0035】
このように、リニアスケール50aとリニアスケール50bとは、同一の構成であって、フラットベッド10のY軸方向における中心線に対して線対称に構成されている。これにより、Yバー30のY軸方向における両端部の移動量を、略同条件で計測することが可能となっている。
【0036】
Yバー30は、フラットベッド10の第一レール12a及び第二レール12bにより、X軸方向に移動可能に支持されており、ヘッドユニット20をY軸方向に搬送すると共に、フラットベッド10に対してX軸方向に搬送されるものである。このため、Yバー30には、第一レール12aに案内されてX軸方向に転がる第一ローラ31aと、第二レール12bに案内されてX軸方向に転がる第二ローラ31bと、ヘッドユニット20をY軸方向に移動可能に支持するスライダー軸32と、ヘッドユニット20をスライダー軸32に沿ってY軸方向に搬送するヘッドユニット駆動機構33と、が設けられている。
【0037】
ヘッドユニット駆動機構33は、上述した第一駆動機構40aや第二駆動機構40bと同様な構成であり、Y軸方向に沿って配列される駆動プーリ34及び従動プーリ35と、この駆動プーリ34及び従動プーリ35に掛け渡されてヘッドユニット20に連結されたタイミングベルト36と、駆動プーリ34を回転駆動する駆動モータ37と、により構成されている。
【0038】
そして、ヘッドユニット駆動機構33は、駆動モータ37を回転駆動させると、駆動モータ37の駆動軸に連結された駆動プーリ34が回転し、この駆動プーリ34と従動プーリ35とに掛け渡されたタイミングベルト36が回転することにより、ヘッドユニット20がY軸方向に牽引される。
【0039】
さらに、Yバー30には、リニアスケール50aに対向する上方位置に配置された光学式リニアエンコーダ51aと、リニアスケール50bに対向する上方位置に配置された光学式リニアエンコーダ51bと、が設けられている。
【0040】
光学式リニアエンコーダ51aは、リニアスケール50aに形成されたスリットを検出するエンコーダ(計測器)であり、このスリットをカウントすることで、リニアスケール50aに対する光学式リニアエンコーダ51aの移動量を計測するものである。例えば、光学式リニアエンコーダ51aから赤外線を発光し、リニアスケール50aから反射された赤外線の波形を分析することで、リニアスケール50aのスリットを検出すると共に、このスリットをカウントすることができる。そして、リニアスケール50aはフラットベッド10のY軸方向における一方端部に取り付けられるとともに、光学式リニアエンコーダ51aはYバー30のY軸方向における一方端部に取り付けられているため、光学式リニアエンコーダ51aは、リニアスケール50aに形成されたスリットをカウントすることで、フラットベッド10に対するYバー30のY軸方向における一方端部の移動量を直接計測するものである。
【0041】
光学式リニアエンコーダ51bは、リニアスケール50bに形成されたスリットを検出するエンコーダ(計測器)であり、このスリットをカウントすることで、リニアスケール50bに対する光学式リニアエンコーダ51bの移動量を計測するものである。例えば、光学式リニアエンコーダ51bから赤外線を発光し、リニアスケール50bから反射された赤外線の波形を分析することで、リニアスケール50bのスリットを検出すると共に、このスリットをカウントすることができる。そして、リニアスケール50bはフラットベッド10のY軸方向における他方端部に取り付けられるとともに、光学式リニアエンコーダ51bはYバー30のY軸方向における他方端部に取り付けられているため、光学式リニアエンコーダ51bは、リニアスケール50bに形成されたスリットをカウントすることで、フラットベッド10に対するYバー30のY軸方向における他方端部の移動量を直接計測するものである。
【0042】
そして、このインクジェットプリンタ1には、印刷制御を行う制御部60が設けられている。
【0043】
制御部60は、ヘッドユニット20と、ヘッドユニット駆動機構33の駆動モータ37と、第一駆動機構40aの駆動モータ44aと、第二駆動機構40bの駆動モータ44bと、光学式リニアエンコーダ51aと、光学式リニアエンコーダ51bと、電気的に接続されている。そして、制御部60は、ヘッドユニット20、駆動モータ37、駆動モータ44a及び駆動モータ44bを制御して、フラットベッド10に載置されたメディアに画像を印刷する印刷制御を行う。更に、制御部60は、光学式リニアエンコーダ51a及び光学式リニアエンコーダ51bの計測結果に基づいて、駆動モータ44a及び駆動モータ44bの制御量を補正する。
【0044】
図3は、制御部の機能構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、制御部60は、ヘッド駆動制御部61、インク吐出制御部62、Yバー駆動制御部63、及び制御量補正部64として機能する。なお、制御部60は、例えば、CPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されている。そして、以下に説明する制御部60の各機能は、CPUやRAM上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませ、CPUの制御のもとで動作させることで実現される。
【0045】
ヘッド駆動制御部61は、駆動モータ37の駆動制御を行い、ヘッドユニット20をY軸方向に搬送するものである。
【0046】
インク吐出制御部62は、ヘッド駆動制御部61によりヘッドユニット20がY軸方向に搬送されている際に、ヘッドユニット20のインク吐出制御を行い、ヘッドユニット20からインク液滴を吐出させるものである。
【0047】
Yバー駆動制御部63は、ヘッド駆動制御部61による駆動モータ37の駆動制御と、インク吐出制御部62によりヘッドユニット20のインク吐出制御とにより、1パス分の画像印刷が終了すると、駆動モータ44aの駆動制御と、駆動モータ44bの駆動制御とを行い、Yバー30をX軸方向に1パス分搬送するものである。
【0048】
制御量補正部64は、光学式リニアエンコーダ51a及び光学式リニアエンコーダ51bの計測結果を分析することで、駆動モータ44a及び駆動モータ44bの制御量を補正し、Yバー30のY軸方向における一方端部と他方端部との移動量を調整するものである。
【0049】
次に、
図4を参照しながら、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1の処理動作について説明する。
図4は、制御部の処理を示すフローチャートである。なお、以下に説明するインクジェットプリンタ1の処理動作は、制御部60の制御により行われる。すなわち、制御部60において、CPUなどで構成される処理部(不図示)が、ROMなどの記憶装置に記録されたプログラムに従い、ヘッド駆動制御部61、インク吐出制御部62、Yバー駆動制御部63、制御量補正部64などの機能を統括管理することで、以下の処理が行われる。
【0050】
制御部60は、外部装置からインクジェットプリンタ1に印刷データ(作図コマンド)が転送されることにより、以下の処理を開始する。
【0051】
図4に示すように、まず、制御部60は、ヘッドユニット20をY軸方向に移動させながら、ヘッドユニット20からインク液滴を吐出させる(ステップS1)。すなわち、ステップS1では、駆動モータ37の駆動制御を行うと共に、ヘッドユニット20のインク吐出制御を行い、ヘッドユニット20をY軸方向に移動させながら、ヘッドユニット20からインク液滴を吐出させる。これにより、フラットベッド10の上面に吸着固定されたメディアに、1パス分の画像が印刷される。
【0052】
次に、制御部60は、Yバー30をX軸方向に1パス分搬送する(ステップS2)。すなわち、ステップS2では、Yバー30を1パス分搬送するために必要な制御量で駆動モータ44a及び駆動モータ44bの駆動制御を行う。このとき、後述するステップS4で補正された制御量に基づいて、駆動モータ44a及び駆動モータ44bの駆動制御が行われる。すると、駆動モータ44aの回転駆動が駆動プーリ41aに伝達され、駆動プーリ41a及び従動プーリ42aに掛け渡されたタイミングベルト43aが回転し、Yバー30のY軸方向における一方端部がX軸方向に1パス分牽引される。同様に、駆動モータ44bの回転駆動が駆動プーリ41bに伝達され、駆動プーリ41b及び従動プーリ42bに掛け渡されたタイミングベルト43bが回転し、Yバー30のY軸方向における他方端部がX軸方向に1パス分牽引される。これにより、Yバー30全体が、X軸方向に1パス分搬送される。なお、このとき、Yバー30に取り付けられた光学式リニアエンコーダ51a及び光学式リニアエンコーダ51bは、フラットベッド10に取り付けられたリニアスケール50a及びリニアスケール50bのスリットを検出すると共に、その数をカウントしている。
【0053】
次に、制御部60は、Yバー30の移動量を直接計測する(ステップS3)。すなわち、ステップS3では、ステップS2においてYバー30をX軸方向に1パス分搬送する際に、光学式リニアエンコーダ51a及び光学式リニアエンコーダ51bがカウントしたリニアスケール50a及びリニアスケール50bのスリットのカウント値を取得する。そして、光学式リニアエンコーダ51aから取得したカウント値に基づいて、フラットベッド10に対するYバー30のX軸方向における一方端部の移動量を測定する。同様に、光学式リニアエンコーダ51bから取得したカウント値に基づいて、フラットベッド10に対するYバー30のX軸方向における他方端部の移動量を測定する。このとき、Yバー30の捩れや機械的な誤差などにより、Yバー30のX軸方向における一方端部の移動量と他方端部の移動量とは必ずしも一致するとは限らない。
【0054】
次に、制御部60は、ステップS3により直接計測したYバー30のX軸方向における一方端部の移動量と他方端部の移動量とに基づいて、ステップS2において駆動モータ44aを駆動するための制御量と駆動モータ44aを駆動するための制御量とを補正する(ステップS4)。すなわち、ステップS4では、ステップS3において直接計測したYバー30のX軸方向における一方端部の移動量及び他方端部の移動量が、ステップS2において制御部60によりYバー30が1パス分であるかどうかを判定する。そして、ステップS3により直接計測したYバー30のX軸方向における一方端部の移動量が、ステップS2において搬送する1パス分でない場合は、その差分を補正値として算出し、ステップS2において駆動モータ44aを駆動するための制御量を補正する。同様に、ステップS3により直接計測したYバー30のX軸方向における他方端部の移動量が、ステップS2において搬送する1パス分でない場合は、その差分を補正値として算出し、ステップS2において駆動モータ44bを駆動するための制御量を補正する。
【0055】
すると、次サイクルのステップS2では、ステップS4により補正された制御量により、駆動モータ44aと駆動モータ44bとが駆動制御されるため、Yバー30のY軸方向における一方端部及び他方端部が正確に1パス搬送され、Yバー30のY軸方向における一方端部の移動量と他方端部の移動量とのズレが解消または低減される。
【0056】
次に、制御部60は、外部装置から転送された印刷データを全て印刷したか否かを判定する(ステップS5)。
【0057】
そして、印刷データを全て印刷していないと判定すると(ステップS5:NO)、制御部60は、ステップS1に戻り、再度上述したステップS1〜ステップS4を繰り返す。
【0058】
一方、印刷データを全て印刷したと判定すると(ステップS5:YES)、制御部60は、印刷処理を終了する。
【0059】
このように、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1によれば、ヘッドユニット20をY軸方向に移動させながらヘッドユニット20からインク液滴を吐出させるとともに、Yバー30をX軸方向に移動させることで、フラットベッド10に載置されたメディアに画像を印刷することができる。このとき、フラットベッド10に対するYバー30の移動量を直接計測することで、第一駆動機構40a及び第二駆動機構40bの制御量に対するYバー30の実際の移動量を求めることができる。そこで、光学式リニアエンコーダ51a及び光学式リニアエンコーダ51bによって直接計測されたYバー30の移動量に基づいて第一駆動機構40a及び第二駆動機構40bの制御量を補正することで、Yバー30の搬送精度を向上させることができる。これにより、ヘッドユニット20から吐出されたインク液滴の着弾位置精度を向上させることができるため、印刷画質を向上させることができる。
【0060】
この場合、第一駆動機構40aと第二駆動機構40bとのダブル駆動によりYバー30のY軸方向における両端部を独立して搬送することで、Y軸方向に対するYバー30の傾きを調整することができる。これにより、インクジェットプリンタ1の大型化に伴いYバー30がY軸方向に長くなったとしても、Yバー30のY軸方向における両端部の移動量を均一にして、Yバー30の傾きを抑制することができる。
【0061】
そして、光学式リニアエンコーダ51a及び光学式リニアエンコーダ51bにより、Yバー30のY軸方向における一方端部と他方端部とを独立して計測することで、Yバー30の傾きをより高精度に検出することができ、Yバー30の傾きを高精度に補正することができる。
【0062】
また、フラットベッド10に対するYバー30の移動量の計測を、リニアスケール50aと光学式リニアエンコーダ51a、リニアスケール50bと光学式リニアエンコーダ51bとにより行うことで、フラットベッド10に対するYバー30の移動量を高精度に検出することができる。
【0063】
また、第一駆動機構40a及び第二駆動機構40bとして、駆動プーリ41a及び駆動プーリ41b、従動プーリ42a及び従動プーリ42b、タイミングベルト43a及びタイミングベルト43b、駆動モータ44a及び駆動モータ44bという簡易な構成を採用することで、ボールねじなどの部材に比べて安価な部材を用いることができるため、Yバー30のY軸方向における両端部を確実にX軸方向に搬送しつつ、コストを低減することができる。
【0064】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態において、Yバー30のX軸方向への移動と、ヘッドユニット20のY軸方向への移動は、駆動プーリと、従動プーリと、タイミングベルトと、駆動モータとを備えるベルト駆動により行うものとして説明したたが、例えば、ボールねじと、Yバー30又はヘッドユニット20に連結されたボール軸受けと、ボールねじを回転駆動する駆動モータとを備えるボールねじ機構などにより行うものであってもよい。
【0065】
また、上記実施形態において、Yバー30のX軸方向の移動量の計測は、リニアスケールと、光学式リニアエンコーダとにより行うものとして説明したが、例えば、ロータリーエンコーダ、磁気式計測装置、測距レーダなどにより行うものであってもよい。ロータリーエンコーダを用いる場合は、Yバー30にロータリーエンコーダ冶具であるホイールをY軸方向周りに回転可能に取り付け、このホイールをフラットベッド10に接触させる。なお、ホイールの外周面は、摩擦係数の高い素材を用いて、フラットベッド10に対して滑らないようにする。そして、Yバー30をX軸方向に移動させると、Yバー30に取り付けられたホイールがフラットベッド10上を転がるため、このホイールの回転量を検出することで、Yバー30のX軸方向の移動量を直接計測することができる。また、磁気式計測装置を用いる場合は、メモリなどのマークが記録された磁気テープをフラットベッド10に貼り付け、Yバー30にこの磁気テープの記録情報を読み取る磁気ヘッドを取り付ける。そして、Yバー30をX軸方向に移動させると、Yバー30に取り付けられた磁気ヘッドによりフラットベッド10に貼り付けられた磁気テープの記録情報が読み取られるため、この記録情報を検出することで、Yバー30のX軸方向の移動量を直接計測することができる。
【0066】
また、上記実施形態において、Yバー30のX軸方向への搬送は、第一搬送機構40aと第二搬送機構40bの左右独立駆動方式を採用するものとして説明したが、第1搬送機構40aの駆動プーリ41aと、第二搬送機構40bの駆動プーリ41bとを、一軸の駆動シャフトで連結し、この駆動シャフトを単一の駆動モータで回転駆動する連動駆動方式を採用するものであってもよい。
【0067】
また、上記実施形態において、Yバー30のX軸方向の移動量を直接計測するものとして説明したが、例えば、Yバー30のX軸方向の移動位置を直接計測し、この直接計測した移動位置からYバー30のX軸方向の移動量を算出するものとしてもよい。
【0068】
また、上記実施形態において、Yバー30のX軸方向の移動量を直接計測するものとして説明したが、例えば、Yバー30のX軸方向の移動位置を直接計測し、この直接計測した移動位置からYバー30のX軸方向の移動量を算出するものとしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態において、Yバー30を1回で搬送する1パスの搬送量は固定的なものとして説明したが、例えば、メディアの種類やインクの種類などによって1パスの搬送量が適宜変更されるものとしてもよい。
【0070】
また、上記実施形態において、リニアスケール50a,50bにはスリットが形成されるものとして説明したが、このスリットの代わりに山型の刻みを形成するものとしてもよい。この場合、光学式リニアエンコーダ51a,51bは、リニアスケール50a,50bに形成された山型の刻みの数をカウントすることで、リニアスケール50a,50bに対する光学式リニアエンコーダ51a,51bの移動量を計測することができる。これにより、フラットベッド10に対するYバー30のY軸方向における一方端部の移動量を直接計測することができる。
【0071】
また、上記実施形態において、タイミングベルト43a,43bは、カーボンを主構成要素としたものを例に説明したが、高剛性の材質であれば如何なるものであってもよく、例えば、スチールベルト、鉄芯入りのベルトであってもよい。