(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778384
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】エスモロール処方物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/216 20060101AFI20150827BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20150827BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20150827BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
A61K31/216
A61K47/02
A61K47/12
A61P9/00
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2009-252474(P2009-252474)
(22)【出願日】2009年11月2日
(62)【分割の表示】特願2002-574961(P2002-574961)の分割
【原出願日】2002年1月2日
(65)【公開番号】特開2010-24249(P2010-24249A)
(43)【公開日】2010年2月4日
【審査請求日】2009年11月2日
【審判番号】不服2013-8860(P2013-8860/J1)
【審判請求日】2013年5月15日
(31)【優先権主張番号】09/759,547
(32)【優先日】2001年1月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10/016,260
(32)【優先日】2001年10月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591013229
【氏名又は名称】バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジ リュー
(72)【発明者】
【氏名】サティッシュ ケイ. ペジャバー
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ オウー
【合議体】
【審判長】
村上 騎見高
【審判官】
辰己 雅夫
【審判官】
前田 佳与子
(56)【参考文献】
【文献】
特表平3−500658号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-33/44
CA(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓状態の処置のための、注入による非経口投与に適した水性のそのまま使える薬学的組成物であって、該薬学的組成物はオートクレーブで滅菌されており、密閉容器中にパッケージングされ、3.5と6.5との間のpHを有し、そして以下:
a.0.1〜100mg/ml 塩酸メチル−3−[4−(2−ヒドロキシ−3−イソプロピルアミノ)プロポキシ]フェニルプロピオン酸塩(塩酸エスモロール);
b.0.01〜0.5M 緩衝剤;および、
c.1〜100mg/ml 浸透圧調整剤、
を含み、該浸透圧調整剤は、塩化ナトリウムである、薬学的組成物。
【請求項2】
前記pHが4.5と5.5との間である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の薬学的組成物であって、ここで、
前記緩衝剤が、少なくとも1つの酢酸塩、グルタミン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、リン酸塩およびグリシンを含む、薬学的組成物。
【請求項4】
前記密閉容器が熱滅菌された容器である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬学的組成物であって、該薬学的組成物が、約5のpHを有し、そして約1〜20mg/mlの塩酸エスモロール、0.01〜0.5Mの緩衝剤および1〜100mg/mlの浸透圧調整剤を含む、薬学的組成物。
【請求項6】
プロピレングリコールおよびエタノールを本質的に含まない、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
心臓状態の処置のための、静脈内投与に適した水性の滅菌薬学的組成物を調製する方法であって、該方法は、密閉された容器内に3.5と6.5との間のpHを有し、0.1〜100mg/mlの塩酸メチル−3−[4−(2−ヒドロキシ−3−イソプロピルアミノ)プロポキシ]フェニルプロピオン酸塩(塩酸エスモロール)、0.01〜0.5Mの緩衝剤、および1〜100mg/mlの浸透圧調整剤を含む水性の組成物を形成する工程、および該組成物を滅菌するのに十分な時間の期間、オートクレーブする工程、を包含し、該浸透圧調整剤は、塩化ナトリウムである、方法。
【請求項8】
前記薬学的組成物が4.5と5.5との間のpHを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
オートクレーブする工程が、115℃〜130℃の範囲の温度で5〜40分の範囲の時間の期間、実施される、請求項7または8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
塩酸エスモロールは、哺乳動物における心臓障害の処置または予防のために使用される短時間作用のβ遮断剤である。現今利用可能なβ遮断剤のほとんどは、安定な薬物であり、この薬物は、比較的長い時間の期間、心臓病の患者に投与され得る。しかし、心臓の働きを速やかに弱めるか、または心臓病の発症の間(例えば、心筋梗塞の間、またはその直後)にリズムを改善することに対して重大なケアがしばしば所望される。従来のβ遮断剤は、このような処置のために使用され得るが、その作用の長い持続が、所望されない副作用を導き得る。
【0002】
塩酸エスモロールは、エステル官能基を含み、そして典型的なβアドレナリン作用性の遮断活性を有する。しかし、塩酸エスモロールが、エステル基の存在のためにインビボで短い持続時間を有する点で従来のβ遮断化合物とは異なる。従って、塩酸エスモロールは、その独特の短い作用活性のために従来のβ遮断剤と比較して有利である。しかし、塩酸エスモロールのエステル基は、その加水分解性の分解に対して非常に感受性であるため水性の環境下で不安定であることが見出される。
【0003】
水におけるエスモロールの安定性は、置換活性脂肪族のメチルエステル基の酸/塩基加水分解の速度によって媒介される。従来、塩酸エスモロールの分解速度は、緩衝液として酢酸塩を使用し、できるだけ5.0に近いpHで維持し、溶液中のエスモロールの濃度を最小にし、そして使用される緩衝液の濃度を最小にすることによって減少している。先行技術の処方物は、妥当に長い貯蔵寿命を維持するが、オートクレーブによる痛烈な分解を欠点として持つ。結果として、先行技術の処方物は、無菌的に調製される。特許文献1および特許文献2を参照のこと。特許文献1は、水性の緩衝溶液中にエスモロールを含むバイアルパッケージングに適したそのまま使える(ready−to−use)処方物を開示する。特許文献3は、エスモロールの溶解度を増加するために添加されるプロピレングリコールおよびエタノールと共に、水性の緩衝溶液中にエスモロールを含むアンプルパッケージングに適切な濃縮処方物を開示する。投与の前に、このアンプル処方物は、等張溶液(例えば、デキストロース、乳酸加リンガー液、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムを含む溶液)を用いて適切な投薬量レベルまで希釈される。
しかし、希釈/無菌操作の間に生成物の微生物学的汚染は、バイアル体裁およびアンプル体裁共に、あり得る。従って、最終滅菌(terminal sterilization)が、微生物学的バーデンを減少する方法として、規制当局によって典型的に好まれ、そして最終の生成物の安全性を確実にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,857,552号明細書
【特許文献2】米国特許第5,107,609号明細書
【特許文献3】米国特許第5,107,609号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の簡単な要旨)
本発明は、心臓状態の処置のための、非経口投与に適した水性の滅菌薬学的組成物に関する。この組成物は、塩酸メチル−3−[4−(2−ヒドロキシ−3−イソプロピルアミノ)プロポキシ]フェニルプロピオン酸塩(塩酸エスモロール)、緩衝剤および浸透圧調整剤を含む。さらに本発明は、容器内でのその製造方法に関する。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1) 心臓状態の処置のための、非経口投与に適した水性の滅菌薬学的組成物であって、該組成物は、3.5と6.5との間のpHを有し、以下:
a.0.1〜500mg/ml 塩酸メチル−3−[4−(2−ヒドロキシ−3−イソプロピルアミノ)プロポキシ]フェニルプロピオン酸塩(塩酸エスモロール);
b.0.01〜2M 緩衝剤;および、
c.1〜500mg/ml 浸透圧調整剤、
を含む、薬学的組成物。
(項目2) 前記pHが4.5と5.5との間である、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目3) 項目1または2に記載の薬学的組成物であって、ここで、
前記緩衝剤が、少なくとも1つの酢酸塩、グルタミン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、リン酸塩およびグリシンを含み、そして前記浸透圧調整剤が、少なくとも1つの塩化ナトリウム、デキストロース、炭酸水素ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、乳酸ナトリウム、リンガー液および乳酸加リンガー液を含む、薬学的組成物。
(項目4) 前記組成物が熱滅菌容器に提供される、項目1〜3のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
(項目5) 項目1〜4のいずれか1項に記載の薬学的組成物であって、該薬学的組成物が、約5のpHを有し、そして約1〜20mg/mlの塩酸エスモロール、0.01〜0.5Mの緩衝剤および1〜100mg/mlの浸透圧調整剤を含む、薬学的組成物。
(項目6) 項目1〜4のいずれか1項に記載の薬学的組成物であって、該薬学的組成物が、約5のpHを有し、そして約100〜250mg/mlの塩酸エスモロールおよび0.5〜2Mの緩衝剤および50〜500mg/mlの浸透圧調整剤を含む、薬学的組成物。
(項目7) プロピレングリコールおよびエタノールを本質的に含まない、項目1〜6のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
(項目8) 心臓状態の処置のための、静脈内投与に適した水性の滅菌薬学的組成物を調製する方法であって、該方法は、密閉された容器内に3.5と6.5との間のpHを有し、0.1〜500mg/mlの塩酸メチル−3−[4−(2−ヒドロキシ−3−イソプロピルアミノ)プロポキシ]フェニルプロピオン酸塩(塩酸エスモロール)、0.01〜2Mの緩衝剤、および1〜500mg/mlの浸透圧調整剤を含む水性の組成物を形成する工程、および該組成物を滅菌するのに十分な時間の期間、オートクレーブする工程、を包含する、方法。
(項目9) 前記組成物が4.5と5.5との間のpHを有する、項目8に記載の方法。
(項目10) オートクレーブする工程が、115℃〜130℃の範囲の温度で5〜40分の範囲の時間の期間、実施される、項目8または9に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(発明の詳細な説明)
本発明は、安定な非経口組成物を提供する。この組成物は、塩酸エスモロールならびに薬学的に受容可能な緩衝剤および溶液の張度を調整する浸透圧調整剤を含む。この組成物は、密閉された容器にパッケージングされ、そしてオートクレーブを介して最終滅菌に供されて、処方物の微生物学的バーデンを減少する。先行技術の塩酸エスモロール処方物は、オートクレーブに耐え得ることができない。本発明は、加水分解的な分解および他の有害な化学反応に安定であり、そして薬学的に受容可能な貯蔵寿命を有する。
【0007】
本願の文脈で使用される場合、「安定に」とは、患者への投与に適切な状態または状況を維持することをいう。本発明に従う処方物は、室温で少なくとも12か月間維持される場合、安定であることが見出され、そして一般的に室温で12〜24か月間安定である。
【0008】
本願の文脈で使用される場合、「滅菌」組成物とは、滅菌の状態にもたらされており、そして引き続いて微生物学的汚染に曝されていない(つまり、この滅菌組成物を保管する容器が汚されていない)組成物をいう。滅菌組成物は、一般的に、米国食品医薬品局の現行のGood Manufacturing Practice(「cGMP」)規制に従って医薬製造業者によって調製される。
【0009】
この生成物は、注入のために滅菌、そのまま使える処方物の形態を取り得る。このことが、注入前に、濃縮されたエスモロールの低容量非経口処方物を注入希釈剤に希釈する不便さを防止し、そして無菌操作の間の微生物学的汚染、および任意の潜在的な計算または希釈エラーの危険を排除する。濃縮物から調製されないこのような処方物は、本質的にプロピレングリコールおよびエタノールが存在しない。この生成物はまた、投与の前に希釈されなければならない濃縮処方物の形態を取り得る。
【0010】
本発明の水性の滅菌薬学的組成物は、患者への非経口投与に適する。例えば、この組成物は、ボーラス注射または静脈内注入の形態で投与され得る。非経口投与に適した経路としては、静脈内、皮下、真皮内、筋肉内、関節内、および鞘内が挙げられる。本発明のそのまま使える処方物は、好ましくは、静脈内注入によって投与される。
【0011】
本発明に従う適切な容器は、当該分野で公知である。容器としては、バイアル体裁、注射器体裁、バッグ体裁、ボトル体裁およびアンプル体裁が挙げられる。容器は、ガラスから、またはポリマー材料から製造され得る。そのまま使える処方物は、代表的にバイアル、注射器、バッグおよびボトルにパッケージングされ、一方濃縮された処方物は、代表的にアンプルにパッケージングされる。
【0012】
組成物のpHはその安定性に非常に影響を及ぼす。pHは、3.5と6.5との間、好ましくは、4.5と5.5との間、より好ましくは約5.0であるべきである。pHは、当該分野で公知のように水酸化ナトリウムまたは塩酸の添加によって調整され得る。
【0013】
塩酸エスモロールは、0.1〜500mg/mlの範囲の量で本発明の組成物中に存在する。そのまま使える処方物は、0.1〜100mg/ml、好ましくは1〜20mg/ml、より好ましくは1〜10mg/mlを含み得る。濃縮された処方物は、100〜500mg/ml、好ましくは100〜250mg/mlを含み得る。
【0014】
適切な緩衝剤は、当該分野で公知であり、そして、0.01〜2Mの範囲の濃度でこの組成物中に存在する。そのまま使える処方物は、代表的に0.01〜0.5M、好ましくは0.02〜0.1Mの緩衝剤濃度を有する。濃縮された処方物は、代表的に0.5〜2Mの緩衝剤濃度を有する。緩衝剤としては、酢酸塩、グルタミン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、リン酸塩およびグリシンが挙げられる。好ましい緩衝剤は、酢酸ナトリウムおよび氷酢酸の組合せを含む。
【0015】
適切な浸透圧調整剤は、当該分野で公知であり、1〜500mg/mlの範囲の量でこの組成物に存在する。浸透圧調整剤としては、塩化ナトリウム、デキストロース、炭酸水素ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、乳酸ナトリウム、リンガー液および乳酸加リンガー液が挙げられる。好ましいものは、塩化ナトリウムおよびデキストロースである。そのまま使える処方物は、1〜100mg/mlの浸透圧調整剤;好ましくは4〜60mg/mlの塩化ナトリウム、より好ましくは4〜10mg/mlの塩化ナトリウム;または塩化ナトリウムを含むか、または含まない25〜60mg/mlの範囲の量のデキストロースを含み得る。デキストロースは、好ましくは、塩化ナトリウムと組み合わせて5%(重量/重量)より大きくないレベルで本発明の組成物に存在する。濃縮された処方物は、50〜500mg/mlの浸透圧調整剤を含み得る。
【0016】
本発明に従う組成物は、低容量非経口(SVP)投薬量形態および高容量非経口(LVP)投薬量形態に調製され得る。この投薬量形態は、任意の適切な容器に保管され得る。適切な容器としては、例えば、1mlから500mlの範囲のサイズを有するガラスバイアルもしくはポリマーバイアル、アンプル、注射器またはバッグが挙げられる。SVPそのまま使える溶液は、代表的に1〜100mL体裁でアンプルおよびバイアルへ充填される。さらに、注射器は、そのまま使えるSVPのための容器として使用され得る。これは、「予め充填された注射器(pre−filled syring)」として販売される。LVP体裁は、バッグまたはボトルに含まれ得る。
【0017】
ポリマー容器は、好ましくは、可撓性であり、そしてポリ塩化ビニル(PVC)を含み得るかまたは含み得ない。好ましい容器は、PVCを含まない(例えば、米国特許第5,849,843号および同第5,998,019号に開示される容器)。ポリマー容器は、第2のパッケージングシステムとしてさらに湿気防壁と共に提供されて、貯蔵の間の水分の損失を防止し、そして処方物の安定性をさらに確実にし得る。好ましい湿気防壁は、アルミニウム外袋(overpouch)である。
【0018】
容器内に本発明の組成物を充填する手順およびその後の処理は、当該分野で公知である。これらの手順が使用されて、しばしば健康管理に必要とされる滅菌薬学的薬物生成物を生成する。このような処理技術は、好ましくは、滅菌処理を使用して、調製後にエスモロール処方物に存在し得る任意の微生物を破壊するかまたは除去する。例えば、最終滅菌が使用されて、エスモロール処方物を含む最終の密閉されたパッケージ内の全ての生存している微生物を破壊し得る。オートクレーブは、一般的に使用されて、最終パッケージング中の薬物生成物の最終熱滅菌を達成する。
【0019】
製薬産業における最終生成物の最終滅菌を達成するための代表的なオートクレーブサイクルは、121℃で15分間である。本発明の塩酸エスモロール組成物は、115〜130℃の範囲の温度で5〜40分の範囲の時間の期間、受容可能な安定度でオートクレーブされ得る。オートクレーブは、好ましくは119℃〜122℃の範囲の温度で、10〜36分の範囲の時間の期間で実施される。
【0020】
あるいは、本発明に従う滅菌薬学的組成物は、無菌処理技術を使用して調製され得る。無菌充填が通常使用されて、熱滅菌に耐えられない薬物生成物を調製するが、成分の全てが無菌である。滅菌は、滅菌材料および制御された作業環境を使用することによって維持される。全ての容器および装置は、充填前に好ましくは熱滅菌によって、滅菌される。次いで、この容器(例えば、バイアル、アンプル、バッグ、ボトル、または注射器)が、無菌条件下で充填される。
【0021】
以下の実施例は、さらに本発明を説明するが、もちろん、とにかく、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
以下は、10mg/mlの塩酸エスモロール溶液を含む本発明のそのまま使える注入バッグの調製物を記載する。この組成物の各成分の濃度は以下である:
【0023】
【表1】
混ぜる、濾過する、そして充填するための器具およびガラス製品を、適切に洗浄し、そして脱熱する。フィルターアセンブリ(チューブアセンブリを充填している)および他の部品および器具を滅菌する。
【0024】
最終容量の80%の注射用冷却水を、較正された混合タンクに収集する。塩化ナトリウムをこのタンクに加え、そして溶液を塩化ナトリウムが溶解するまで撹拌する。次いで、氷酢酸および酢酸ナトリウムをこのタンクに加える。この溶液をさらに、全ての賦形剤が溶解するまで撹拌する。このタンクを注射用水で最終容量の90%まで調整し、そして混合する。約2Lのこの溶液(緩衝溶液)を、スラリー溶液の調整に使用するために取り除く。塩酸エスモロールを計量して、そして2Lのこの緩衝溶液に加えてスラリー溶液を形成する。次いでこのスラリーを、混合タンクに加え、そしてこの溶液を混合する。次いで、この溶液を1Nの水酸化ナトリウムまたは塩酸を用いてpH5.0に調整する。この溶液を、注射用水で最終容量にし、そして混合する。
【0025】
次いで、この溶液を、250mlの非PVC可撓性バッグ(Baxter Healthcare Corporationから市販される、IntraVia
TM可撓性プラスチック容器(PL2408−3 非PVC多層プラスチックフィルム)(1つの標準的なPL146(登録商標)PVC膜チューブ、1つのPL 2409−3多層プラスチック同時押し出し投与ポートチューブ、1つのPL141 PVC青色先端の閉止具(投与ポート保護具)を備える容器)に充填する。これらのバッグを、アルミニウムフォイル外袋内に密閉する。次いでこの生成物を、オートクレーブ滅菌器内に装填し、そして121℃で36分間滅菌する。
【0026】
この滅菌生成物を、検査および関連試験に供する。上で調製したこのバッグ生成物を、選択して、そして安定性試験に出す。各安定性時間で、各溶液のバッグを、pH、効力、浸透圧重量モル濃度、物理的外観および粒子状物体について試験する。薬物の濃度を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法によって決定する。この結果を、以下のようにまとめる:
【0027】
【表2】
(実施例2)
実施例1を以下の処方で繰り返す:
【0028】
【表3】
(実施例3)
実施例1を以下の処方で繰り返す:
【0029】
【表4】
本明細書中で引用される全ての参考文献(公報、特許出願、および特許を含む)は、各参考文献が、個々にそして特に参考として援用されることを示し、本明細書中にその全体が示されるように、同程度に参考として本明細書によって援用される。