特許第5778387号(P5778387)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5778387高負荷武器、砲身用ブランク、並びにこれらを装備した武器のための鍛造鋼の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778387
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】高負荷武器、砲身用ブランク、並びにこれらを装備した武器のための鍛造鋼の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20150827BHJP
   C21D 9/12 20060101ALI20150827BHJP
   C22B 9/18 20060101ALI20150827BHJP
   C22C 38/46 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   C22C38/00 301Z
   C21D9/12
   C22B9/18 Z
   C22C38/46
【請求項の数】6
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2009-512451(P2009-512451)
(86)(22)【出願日】2007年5月18日
(65)【公表番号】特表2009-538983(P2009-538983A)
(43)【公表日】2009年11月12日
(86)【国際出願番号】EP2007004443
(87)【国際公開番号】WO2007137714
(87)【国際公開日】20071206
【審査請求日】2010年5月13日
【審判番号】不服2014-876(P2014-876/J1)
【審判請求日】2014年1月17日
(31)【優先権主張番号】102006025241.1
(32)【優先日】2006年5月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505190046
【氏名又は名称】ラインメタル バッフェ ムニツィオン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100113918
【弁理士】
【氏名又は名称】亀松 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100140121
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 朝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(72)【発明者】
【氏名】アレンブレヒト,ボルフガンク
(72)【発明者】
【氏名】グリム,バルター
【合議体】
【審判長】 木村 孔一
【審判官】 鈴木 正紀
【審判官】 井上 猛
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2002/124716(US,A1)
【文献】 特開2000−124716(JP,A)
【文献】 特開平8−120400(JP,A)
【文献】 特開2002−540374(JP,A)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口径範囲25〜50mmの機関砲のための砲身用ブランクの製造方法であって、
0.25〜0.50%の炭素
最大0.6%のケイ素
最大1.00%のマンガン
最大0.010%のリン
最大0.010%の硫黄
1.00〜1.40%のクロム
2.00〜4.00%のニッケル
0.30〜0.70%のモリブデン
0.10〜0.30%のバナジウム
最大0.05%のアルミニウム
及び鉄と不可避的不純物とから成る残部
を有する鋼から成る該機関砲のための砲身用ブランクの製造方法であって、
棒に鍛造後のブランクが再溶解鋼製であっても開放溶解鋼製であっても純度を保証し、該純度に伴う組織均質性が、鉛直浸漬方向の油又は水冷却によって行われる焼入硬化の基礎となるように、該鋼を、エレクトロ・スラグ再溶解法(ESR)によって、鍛造前に鋳造状態で再溶解し、
該再溶解の後に、該鍛造および該焼入硬化を順次行い、
該焼入硬化の際に、該棒をその軸を中心として永続的に回転させるか、又はその軸を中心として機械的に回転させる
ことを特徴とする機関砲のための砲身用ブランクの製造方法。
【請求項2】
該鋼が、
0.30〜0.35%の炭素
最大0.40%のケイ素
0.4〜0.70%のマンガン
最大0.005%のリン
最大0.005%の硫黄
1.00〜1.40%のクロム
2.50〜3.3%のニッケル
0.50〜0.60%のモリブデン
0.10〜0.20%のバナジウム
最大0.03%のアルミニウム、
及び鉄と不可避的不純物とから成る残部
から成ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該鍛造後に該焼入硬化した後のブランクを、鉛直方向の液体調質によって降伏点>1000N/mm2まで焼き戻すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法によって製造された、機関砲の砲身のためのブランク。
【請求項5】
該鋼のマルテンサイト組織による靭性潜在能力を有する、請求項4に記載のブランクから製造された砲身。
【請求項6】
1050N/mmの高い降伏強度を有する、請求項5に記載の砲身。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に口径範囲25〜50mmの機関砲のための砲身ブランクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような高負荷機関砲のための標準材料は、30mm機関砲のために従来よく使用されている鋼32 CrMoV 12−10、すなわちStahl-Eisen-Liste(Verlag Stahleisen, Duesseldorf)に記載の材料番号1.7765のような、耐熱性CrMoV合金熱調質鋼である。このような材料は、砲身の十分に高い寿命を達成するための、450℃までの高い耐熱性(最小550N/mm2)と共に高い降伏点(最小950N/mm2)という要件特徴を満たしている。
【0003】
性能向上、品質改善、及び安全基準向上という枠内で、材料に対する要件も、そして鍛造ブランクの品質に対する要件も高まっている。これらの要件は、新しい弾薬コンセプトによるガス圧負荷の上昇、疲労寿命の改善のために砲身内壁を液圧式に拡張することによる残留応力の導入、新しい弾薬の初速の上昇による目標精度に対するより大きな要件、より良好なクロムめっき可能性、及び射撃時のクロム層の耐久性、及び温度範囲−50℃〜+80℃の脆性破壊に対するより高い安全性潜在能力、のような開発の特徴から生じる。
【0004】
使用される鋼、すなわち鋼種32 CrMoV 12−10は、なるほど新しい30mm機関砲に対する強度要件を満たすための十分な潜在能力を有してはいるものの、所要靱性値に関する目標規定値には達していない。従来の材料のさらに不十分な点は、大気開放式溶融時の純度が僅かであり、また、射撃時に一定の方向に負荷がかかることにより砲身が湾曲する顕著な傾向があることである。
【0005】
独国特許第101 11 304号明細書から、重砲のための砲身の製造方法が知られている。種々異なる組成で製造される熱調質鋼が焼き入れられ、そして焼き戻され、続いて穿孔され、次いで仕上げ加工される。これにより、最大限の直線性が達成され、またこのように完成された砲身は、従来対象とされた砲身と比べて質的に勝っている。しかしながら周知のように、大口径用ブランクには、中口径ブランクとは別の要件が課せられる。中口径の武器は、大口径の武器よりも高い連射テンポに曝される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような方法に基づいて、本発明は、より高い連射テンポ(カデンツ)を有する中口径範囲の砲身のための製造方法、並びに、新しい要件にも見合う相応の砲身を示すことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1、7並びに10の特徴によって解決される。有利な構成は従属請求項に示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の根底を成す考えは、大口径範囲の砲身に類似するように、砲身材料及びその構成部分に変更を加え、また、大口径砲身からは既に公知であるが、中口径砲身用に特別に適合させた製造方法を提供することである。中口径のための砲身が、機能上の使用条件として、大口径の場合に知られているよりも高い定常負荷に曝されることを考慮するべきではあるが、さらに考えてゆくと、中口径武器もしくは速射武器のいわゆる第1弾が実地で必要な命中精度をもたらすべきであるという、これらの中口径武器に対する要件もともに生じる。従って、砲身材料を選択する際には、単発のための武器砲身と同時に高連射テンポ(高カデンツ)のための武器砲身を構成することも考慮しなければならない。これに対して提案するのは、用いられることになる新しい材料コンセプトを、エレクトロ・スラグ再溶解され、そして懸吊回転式に熱調質されたNiCrMoV鋼に基づいて開発することである。このようなコンセプトはそればかりか、この鋼に、大口径武器に関して知られている鋼種35NiCrMoV 12−5、材料番号1.6959を十分に適応する。このような鋼は従来、高連射テンポ作業式の機関砲のためには、特に砲身に対する高い耐熱性要件が課せられるため、使用されなかった。
【0009】
実地において、このような鋼は改変された形態で、高められた熱調質強度と相俟って、所要の耐熱性値に対応することがさらに示された。同時に、このような新しいNiCrMoV鋼は、ベイナイト系CrMoVではなくマルテンサイト系組織であることに基づき、著しく高められた靱性潜在能力を有する。靱性が高いことにより、−50℃までの所要安全性要件を満たすことができる。
【0010】
新しい方法で製造された砲身は、より高い降伏点が達成される(約1050N/mm2)ことによって際立っている。さらに、砲身は、−50℃までの十分に高い切欠き衝撃靭性・破壊靱性を有し、そして+50℃までの十分に高い耐熱性を有する。高い純度(K0値、最大約12)は更なる利点である。砲身ブランクの製造は、残留応力の付与なしに行われる。すなわち熱調質は、後続の付与作業なしに行われる。
【0011】
好ましくは口径範囲25〜50mmの機関砲のための砲身ブランクを製造するための方法は、下記組成、すなわち:
0.25〜0.50%の炭素
最大0.6%のケイ素
最大1.00%のマンガン
最大0.010%のリン
最大0.010%の硫黄
1.00〜1.40%のクロム
2.00〜4.00%のニッケル
0.30〜0.70%のモリブデン
0.10〜0.30%のバナジウム
最大0.05%のアルミニウム
及び鉄と通常(不可避)の不純物とから成る残部
から成る組成
を有することによって際立っており、
ブランクは、再溶解鋼又は大気開放式溶解鋼から高い純度で製造される。
【0012】
熱調質鋼の次の組成が有利であることが判っている:
0.30〜0.35%の炭素
最大0.40%のケイ素
0.4〜0.70%のマンガン
最大0.005%のリン
最大0.005%の硫黄
1.00〜1.40%のクロム
2.50〜3.3%のニッケル
0.50〜0.60%のモリブデン
0.10〜0.20%のバナジウム
最大0.03%のアルミニウム、
及び鉄と通常の不純物とから成る残部。
【0013】
純度に対する高い要件を保証するために、鋼は有利には、ESU法(エレクトロ・スラグ再溶解法(ESR:electro-slag remelting)によって鋳造状態で再溶解される。これと結びついた高い組織均質性(より良好な溶離による)は、鉛直浸漬方向の油又は水冷却によって行われる遅延の少ない熱調質の基礎となる。棒として鍛造されたブランクは、このときに、鉛直方向の液体調質によって降伏点>1000N/mm2まで焼き戻される。熱調質処理の間、ロッドはそれらの軸を中心として永続的に回転するか、又はそれらの軸を中心として機械的に永続的に回される。機械的処理は、従来の方向性を持った作業なしに行われる。
【0014】
中口径のための新しい鋼によって、さらに、より良好な自己緊縮法(autofrettage)が可能になる(砲身は500℃までの耐熱性が高まる)。これにより、砲身はそれ自体、より良好な残留応力を持つことができ、これにより砲身の圧力吸収能力が高められる。