(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る同期回転機の四分の一の部分横断面を模式的に示した図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る同期回転機を説明するための図であって、界磁巻線の結線図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る同期回転機を説明するための図であって、電機子巻線の結線図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る同期回転機を説明するための図であって、回転速度N=240min
−1で定速運転したときの無負荷飽和曲線と三相短絡曲線を示した図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る同期回転機を説明するための図であって、回転速度N=240min
−1、界磁電流I
f=3.5Aのときの電機子電流I
aに対する誘導電圧Vと出力Pの変化を示した図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る同期回転機を説明するための図であって、回転速度N=240min
−1で定速運転しながら界磁電流I
f=3.5Aとしたときの無負荷時における誘導電圧Vの実測波形を示した図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る同期回転機を説明するための図であって、回転速度N=240min
−1で定速運転しながら界磁電流I
f=3.5Aとしたときの負荷(出力P=2.6kW)時における誘導電圧Vの実測波形を示した図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る同期回転機を説明するための図であって、回転速度N=240min
−1で定速運転しながら界磁電流I
f=3.5Aとしたときの無負荷時における界磁電流I
fの実測波形を示した図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係る同期回転機を説明するための図であって、回転速度N=240min
−1で定速運転しながら界磁電流I
f=3.5Aとしたときの負荷(出力P=2.6kW)時における界磁電流I
fの実測波形を示した図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態に係る同期回転機を説明するための図であって、可変速運転しながら界磁電流I
fを1.5A、2.5A、3.5Aと調整した場合の回転速度Nに対する最大出力P
maxの変化を示した図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係る同期回転機の四分の一の部分横断面を模式的に示した図である。
【
図12】本発明の他の実施形態に係る同期回転機を説明するための表であって、p
f,p
a,p
rの組み合わせを示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るリラクタンス式の多相同期回転機について説明する。
【0011】
まず、本実施形態に係るリラクタンス式の多相同期回転機の構造について、
図1および
図2を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る同期回転機の四分の一の部分横断面を模式的に示した図である。
図2は、界磁巻線の結線図である。
図3は、電機子巻線の結線図である。
【0012】
本実施形態に係るリラクタンス式の多相同期回転機(以下、単に「同期回転機」という。)は、例えば三相同期発電機である。同期回転機は、ハウジング(図示しない。)の内部に、回転子10および固定子40を有している。
【0013】
回転子10は、界磁巻線60が巻回されていない突極形回転子であって、主軸20および回転子鉄心30を有している。
【0014】
主軸20は、回転軸と同軸的に延びていて、ハウジングに設けられた軸受(図示しない。)によって、回転可能に軸支されている。
【0015】
回転子鉄心30は、複数枚の珪素鋼板が回転軸方向に積層されてなり、主軸20の外周に固定されていて、回転軸と同軸的に延びている。回転子鉄心30の外周には、互いに周方向に等間隔に配列された凸状(例えば、横断面が略長方形状)の40個の突極部32が形成されている。すなわち、隣接する突極部32間には、凹溝34が形成されている。
【0016】
本実施形態においては、回転子鉄心30は、回転軸方向の長さが50mm、外側半径(回転軸中心から突極部32の先端面までの距離)が255mmに形成されている。
【0017】
固定子40は、固定子鉄心50、複数極の界磁巻線60、および、複数極の三相の電機子巻線70を有している。
【0018】
固定子鉄心50は、複数枚の珪素鋼板が回転軸方向に積層されてなり、回転子10の外周に回転子10と間隔(エアギャップ)を空けて配設されている。固定子鉄心50の内周には、互いに周方向に等間隔に配列された凸状(例えば、横断面が略長方形状)の48個のティース52が形成されている。すなわち、隣接するティース52間には、スロット54が形成されている。
【0019】
本実施形態においては、固定子鉄心50は、回転軸方向の長さが50mm、外径が315mm、径方向の厚み(ティース52の先端面から固定子鉄心50の外周面までの距離)が59.5mmに形成されている。また、固定子鉄心50は、エアギャップの距離(突極部32の先端面からティース52の先端面までの距離)が0.5mmとなるように配設されている。
【0020】
界磁巻線60は、銅線等の導線が、絶縁物を介して、48個のティース52毎に径方向に垂直に巻回(いわゆる「集中巻き」)されてなる。隣接したティース52に巻回された界磁巻線60は、互いに逆向きに巻回されていて、
図1および
図2に示したように、互いに直列に接続されている。界磁巻線60には、直流電源(図示しない。)より、界磁電流が供給される。そのため、本実施形態においては、界磁巻線60の極数p
fは、ティース52の数と同一の48極となっている。なお、界磁巻線60の巻き数は、9216巻きである。
【0021】
三相の電機子巻線70は、銅線等の導線が、絶縁物を介して、48個のティース52毎に径方向に垂直に巻回(いわゆる「集中巻き」)されてなる。三相の電機子巻線70は、界磁巻線60より径方向の内方の位置で、界磁巻線60と絶縁されるように巻回されていて、隣接したティース52に巻回された電機子巻線70は、互いに同一の向きに巻回されている。電機子巻線70は、
図1および
図3に示したように、互いにY結線された三相(U相,V相,W相)の巻線により構成されていて、周方向に形成された48個のティース52には、U相の巻線、V相の巻線、W相の巻線が周方向に順に巻回されている。そのため、本実施形態においては、電機子巻線70の極数p
aは、(48÷3×2=)32極となっている。なお、三相の電機子巻線70の巻き数は、各相につき528巻きである。
【0022】
本実施形態に係るリラクタンス式の多相同期回転機の動作について、発電機を例にして説明する。
【0023】
まず、リラクタンス式の多相同期回転機の動作原理について説明する。界磁巻線60を界磁電流I
fにより直流励起すると、固定子40にp
f極(48極)の静止磁界が形成される。ここで、回転子10を同期回転機の外部に設けられた原動機によって回転速度N[min
−1]で駆動すると、この静止磁界がp
r極((p
f+p
a)/2=40極)の回転子10によって磁気変調されて、エアギャップにp
a極(32極)の回転磁界が発生する。その結果、三相の電機子巻線70に式(1)に示した発電周波数f[Hz]の三相交流電圧が誘導される。
【0024】
f={(p
f+p
a)/120}×N ・・・式(1)
なお、電機子巻線70に誘導される誘導電圧Vは、界磁巻線60に供給する界磁電流I
fを調整することにより、容易に制御される。
【0025】
次に、本実施形態に係る同期回転機の動作の有限要素解析(FEA)および実験による検証結果について、
図4ないし
図10を用いて説明する。
【0026】
図4は、回転速度N=240min
−1で定速運転したときの無負荷飽和曲線と三相短絡曲線を示した図である。
図5は、回転速度N=240min
−1,界磁電流I
f=3.5Aのときの電機子電流I
aに対する誘導電圧Vと出力Pの変化を示した図である。
【0027】
図4および
図5には、有限要素解析の結果と実験による実測値を同時に示した。両図において、実測値は、有限要素解析の結果とほぼ一致しているため、有限要素解析の妥当性が確認できた。また、
図4および
図5から分かるように、本実施形態に係る同期回転機は、電機子巻線70が回転子10側に巻回された、一般的な界磁巻線式の三相同期回転機と類似の特性を得ることができた。
【0028】
また、
図6は、回転速度N=240min
−1で定速運転しながら界磁電流I
f=3.5Aとしたときの無負荷時における誘導電圧Vの実測波形を示した図である。
図7は、回転速度N=240min
−1で定速運転しながら界磁電流I
f=3.5Aとしたときの負荷(出力P=2.6kW)時における誘導電圧Vの実測波形を示した図である。
【0029】
図7に示したように、三相の電機子巻線70が集中巻きされているにもかかわらず、負荷時の誘導電圧Vがほぼ正弦波の平衡三相交流になっている。また、発電周波数f=160Hzであり、式(1)を満たしているため、80極((p
f+p
a)極)の三相同期発電機として動作していることが確認できた。
【0030】
一方、
図8は、回転速度N=240min
−1で定速運転しながら界磁電流I
f=3.5Aとしたときの無負荷時における界磁電流I
fの実測波形を示した図である。
図9は、回転速度N=240min
−1で定速運転しながら界磁電流I
f=3.5Aとしたときの負荷(出力P=2.6kW)時における界磁電流I
fの実測波形を示した図である。
【0031】
図8および
図9に示したように、界磁電流I
fは、負荷の有無にかかわらず、ほぼ時間的に変化しない直流電流となっていて、界磁巻線60には、交流電圧が誘導されていないことが確認できた。したがって、容易に界磁制御できる。
【0032】
図10は、可変速運転しながら界磁電流I
fを1.5A、2.5A、3.5Aと調整した場合の回転速度Nに対する最大出力P
maxの変化を示した図である。
【0033】
図10に示したように、界磁電流I
fを調整することにより、可変速で出力Pを任意に制御できることが確認できた。
【0034】
本実施形態に係るリラクタンス式の多相同期回転機の効果について説明する。
【0035】
本実施形態によれば、ティース52毎に界磁巻線60および三相の電機子巻線70を巻回(集中巻き)しているため、巻線60,70の巻回作業が容易になる。また、巻線の配置が単純であるため、巻回作業においてミスが低減し、メンテナンス等も容易になる。
【0036】
また、集中巻きを採用した本実施形態に係る同期回転機は、分布巻きを採用した従来の回転機に比べて、巻線60,70の周長を短縮できるため、製造コストが低減し、かつ、巻線抵抗の低減により出力および効率が向上する。
【0037】
また、本実施形態による多極の同期回転機によれば、分布巻きを採用した従来の少極の回転機に比べて、低速回転が可能となる。その結果、風力発電システム等の種々の用途において、ギアレス(ダイレクトドライブ)システムを実現でき、騒音の低減および保守の省力化を図ることができる。
【0038】
また、界磁巻線60が回転子10側に巻回されているのではなく、固定子40側に巻回されているため、ブラシやスリップリング等の回転子10側の給電装置が不要となり、製造コストや組立工数を低減することができる。
【0039】
さらに、上述したように、本実施形態に係る同期回転機によれば、界磁電流I
fを調整することにより、容易に界磁制御が可能であり、出力Pを任意に制御できる。
【0040】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係るリラクタンス式の多相同期回転機について、
図11を用いて説明する。
図11は、本実施形態に係る同期回転機の四分の一の部分横断面を模式的に示した図である。なお、本実施形態は、第1の実施形態の変形例であって、第1の実施形態と同一部分または類似部分には、同一符号を付して、重複説明を省略する。
【0041】
本実施形態では、固定子鉄心50は、周方向に48個に分割された分割コア56を組み合わせることによって構成されていて、各分割コア56の内周には、それぞれ1個のティース52が形成されている。
【0042】
本実施形態に係る同期回転機は、まず、各分割コア56のティース52に対して界磁巻線60および三相の電機子巻線70を巻回した後、48個の分割コアを組み合わせて、その後、各ティース52に巻回した巻線60,70同士を接続して、製造される。
【0043】
本実施形態によれば、巻線60,70の巻回作業が容易になり、特に、大容量の大型同期回転機においては、この効果が顕著となる。
【0044】
[他の実施形態]
第1および第2の実施形態は、単なる例示であって、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0045】
第1および第2の実施形態では、p
f/p
a=48/32=1.5となっているが、p
f/p
a=1.2あるいは1.125でも良い。さらに、
図12に示したように、p
f/p
a=1.5,1.2,1.125を満たすようなp
f,p
a,p
rの組み合わせは、多数存在し、これらのどの組み合わせを採用しても構わない。なお、p
f/p
a=1.5,1.2,1.125を満たすようなp
f,p
a,p
rの組み合わせは、個々のティース52に界磁巻線60および電機子巻線70を集中巻した単純な構造であり、界磁巻線60の極数と電機子巻線70の極数とを異にし、電機子巻線70を三相巻線、界磁巻線を直流巻線として動作させることができる。
【0046】
また、第1および第2の実施形態では、三相の電機子巻線70の結線には、Y結線が採用されているが、Δ結線が採用されても良い。
【0047】
また、第1および第2の実施形態では、電機子巻線70が界磁巻線60より径方向の内方の位置で巻回されているが、電機子巻線70が界磁巻線60より径方向の外方の位置で巻回されていても良い。
【0048】
また、第2の実施形態では、各分割コア56の内周には、それぞれ1個のティース52が形成されているが、各分割コア56の内周に、それぞれ2個以上のティース52が形成されていても良い。
【0049】
さらに、第1および第2の実施形態では、三相同期発電機を例にして説明したが、本発明は、多相の電動機または調相機にも適用できる。