【実施例】
【0026】
以下に本発明を実施例などにより更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。尚、本発明で用いられる特性値の測定法を以下に示す。
(1)セルロース繊維表面の筋状溝の状態
走査型電子顕微鏡(日立製作所製、形式S−3500N)を用いて、サンプル布帛のセルロース繊維表面を1800倍に拡大し、任意に5ヶ所写真撮影し、スケールゲージをもとに、筋状溝の幅、長さを及び数を測定し、繊維長50μmあたりの数(個)を算出して平均値を求めた。
【0027】
(2)洗濯条件
JIS L−0217 103法に従って、50回行った。尚、洗剤は、花王製アタック 1g/Lを用いた。
(3)水滴消失時間
JIS L−1097 滴下法に従って水滴消失時間を評価した。サンプル毎に5回測定を行い、平均水滴消失時間を求めた。尚、このときの水滴1滴の平均量は0.039mlであった。
【0028】
(4)乾燥性
サンプル布帛(10cm角)に水を0.2ml滴下、拡散後、布帛の重量を測定し、水分量を算出し、温度20℃で相対湿度65%の環境下で、布帛の水分量が2%(乾いたと感じる水分量)となるまでの時間(分)を測定した。
【0029】
(5)吸水拡散面積
サンプル布帛を直径15cmの刺繍用用丸枠に取り付け、布帛表面に水溶性青染料溶液(C.I.アシッドブルー62を0.005wt%含有)を0.1ml滴下し、3分後に濡れ拡がった吸水拡散面積を次式より求める。
吸水拡散面積(cm
2)=[縦の直径(cm)×横の直径(cm)]×π÷4
サンプル毎に測定を5回行い、平均吸水拡散面積を求めた。
【0030】
(6)風合い評価
検査者(30人)の感触によって染色品の洗濯10回後の布帛を次の基準で相対評価した。
○ : しなやか感がよい
△ : しなやか感はやや劣る
× : しなやか感がない
【0031】
(7)汗アルカリ堅牢度
染色品について、JIS−L−0848−A法に準じて汗アルカリ人工汗液を用いて評価した。試験片の変褪色と添付白布片の汚染の程度をそれぞれ変褪色用グレースケール、汚染用グレースケールと比較して判定した。
【0032】
(8)色の鮮明性(彩度)
染色布帛を分光光度計(グレタグマクベス社製、形式;CE−7000A、D65光源)にて、Lab表色系にて、a、b値を測定し、下記式にて彩度を算出した。この値が大きい程、彩度が高く、色が鮮明であり、値が小さい程、彩度が低く、色がくすんでいることを表す。
彩度=√(a
2+b
2)
【0033】
[実施例1〜3]
撚り係数(K)が1720(S撚り)の84dtex/45fのキュプラ(旭化成せんい製ベンベルグ)を経糸に用い(経糸密度130本/インチ)、撚り係数(K)が1720(SZ撚り)の84dtex/45fのキュプラを緯糸に用い(緯糸密度80本/インチ)、平織物を製織した。
得られた織物をオープンソーパー型連続精練機を用いて、30℃の3.15wt%水酸化ナトリウム水溶液(5°ボーメ水溶液)に浸漬した後、80℃の湯洗及び水洗を繰り返し、脱水した後、120℃のシリンダー乾燥機を用いて乾燥させた。
【0034】
次にこの織物を拡布状で下記に示す酵素溶液に浸漬し、マングルで絞り、シワのでないように拡布状でロールに巻き込んだ後、シートを被せ、ゆっくり回転させながら表1に示す減量率となるように処理時間を調整し、減量処理を行った。
酵素処理条件:
酵素溶液:pH=4.5(酢酸と酢酸ナトリウムにて調整)の水溶液にセルラーゼT(天野エンザイム社製、エンド+エキソ型セルラーゼ)を10%溶解
マングルの絞り率:70%
処理温度:45℃
【0035】
処理後は、80℃で15分間の失活処理を行い、水洗した後、下記条件にて染色し仕上げた。
染料として、反応染料(レマゾール ターコイズ ブルー G:1.3%omf)を用い、水酸化ナトリウム10g/リットルを含む染料溶液に浸漬し、マングルで絞り、コールド・バッチ法にて、25℃で15時間エイジングを行い、次いで、オープンソーパー型連続水洗機を用いて、80℃の湯洗及び水洗を繰り返し、脱水した後、120℃のシリンダー乾燥機を用いて乾燥を行い、ペーパーカレンダー処理して青色の染色布帛を得た。
【0036】
仕上げた染色布帛の水滴消失時間、吸水拡散面積、乾燥性、風合、汗アルカリ堅牢度、色の鮮明性の評価結果を表1に示す。
得られた染色布帛を電子顕微鏡にて1800倍の倍率にて観察したときの、セルロース繊維表面の筋状溝の形状を表1に示す。
【0037】
[比較例1、2]
比較例1として、実施例1の織物をセルロース分解酵素による処理を施さずに、実施例1と同様の条件にて染色し仕上げた。比較例2として、減量率が9.3%となるようにセルロース分解酵素による減量処理を行う以外は、実施例1と全く同様の条件で染色し仕上げた。
得られた染色品の水滴消失時間、吸水拡散面積、乾燥性、風合、汗アルカリ堅牢度、色の鮮明性の評価結果を表1に示す。比較例についても実施例1と同様に電子顕微鏡にて1800倍の倍率にて観察したときの筋状溝の形状を表1に示す。
【0038】
【表1】
表1の結果より、本発明の実施例1〜3で得られた染色布帛は、比較例1および2に比べ、吸水速乾性能の洗濯耐久性に優れておりかつしなやかな風合を有し、色の鮮明性が高く、商品価値の高い染色布帛が得られることがわかる。
【0039】
[実施例4、5]
84dtex/45fのキュプラ(旭化成せんい製ベンベルグ)を経糸に用い(経糸密度153本/インチ)、綿糸40番手を緯糸に用い(緯糸密度80本/インチ)、ツイル織物を製織した(キュプラ糸の混率は50.4%)。
得られた織物を実施例1と同様にオープンソーパー型連続精練機を用いて、30℃の3.15wt%水酸化ナトリウム水溶液(5°ボーメ水溶液)に浸漬した後、80℃の湯洗及び水洗を繰り返し、脱水した後、120℃のシリンダー乾燥機を用いて乾燥させた。
【0040】
得られた織物を実施例1と同様のやり方にて、表2に示す減量率となるように処理時間を調整し、セルロース分解酵素による減量処理を行い、80℃で15分間失活処理を行った後、水洗を行い、実施例1と同様のやり方にて染色仕上を行い、青色の染色布帛を得た。
仕上げた染色布帛の水滴消失時間、乾燥性、吸水拡散面積、風合、汗アルカリ堅牢度、色の鮮明性の評価結果を表2に示す。得られた染色布帛を電子顕微鏡にて1800倍の倍率にて観察したときの、セルロース繊維表面の筋状溝の形状を表2に示す。
【0041】
[比較例3]
比較例3として実施例4の織物をセルロース分解酵素による減量処理を施さずに同様の条件にて染色し仕上げた。仕上げた染色品の水滴消失時間、吸水拡散面積、乾燥性、風合、汗アルカリ堅牢度、色の鮮明性の評価結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
表2の結果より、本発明の実施例4、5で得られた染色布帛は、比較例3に比べ、吸水速乾性の洗濯耐久性に優れておりかつしなやかな風合を有し、色の鮮明性が高く、商品価値の高い染色布帛が得られることがわかる。
【0043】
[実施例6、7]
実施例4と同様の織物を用い、オープンソーパー型連続精練機を用いて、30℃の3.15wt%水酸化ナトリウム水溶液(5°ボーメ水溶液)に浸漬した後、80℃の湯洗及び水洗を繰り返し、脱水した後、120℃のシリンダー乾燥機を用いて乾燥させた。
得られた織物を下記に示す酵素処理条件を用い、表3に示す減量率となるように液流染色機を用い処理時間を調整し、減量処理を行った。
酵素処理条件:
酵素溶液:セルラーゼT(天野エンザイム社製、エンド+エキソ型セルラーゼ)8%omf
pH:4.5(酢酸と酢酸ナトリウムにて調整)
処理温度:45℃
【0044】
処理後は、80℃で15分間の失活処理を行い、水洗した後、下記条件にて染色した。
染色条件:
反応染料:レマゾール ターコイズ ブルー G:1.3%omf)
炭酸ナトリウム:10g/リットル
芒硝:30g/リットル
染色温度、時間:60℃、60分
染色後は、80℃の湯洗及び水洗を繰り返し、脱水した後、120℃のシリンダー乾燥機を用いて乾燥を行い、ペーパーカレンダー処理して青色の染色布帛を得た。
仕上げた染色布帛の水滴消失時間、吸水拡散面積、乾燥性、風合、汗アルカリ堅牢度、色の鮮明性の評価結果を表3に示す。得られた染色布帛を電子顕微鏡にて1800倍の倍率にて観察したときの、セルロース繊維表面の筋状溝の形状を表3に示す。
【0045】
[比較例4]
比較例4として、セルロース分解酵素による減量処理を施さずに、実施例6および7と同様の条件にて染色し仕上げた。仕上げた染色品の水滴消失時間、吸水拡散面積、乾燥性、風合、汗アルカリ堅牢度、色の鮮明性の評価結果を表3に示す。
【0046】
【表3】
表3の結果より、本発明の実施例6、7で得られた染色布帛は、比較例4に比べ、吸水速乾性の洗濯耐久性に優れておりかつしなやかな風合を有し、色の鮮明性が高く、商品価値の高い染色布帛が得られることがわかる。