(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、長短2種類のパルス幅の超音波送信パルスを使用するため、その分の回路構成が必要となり、また、長短のパルス幅の超音波送信パルスの送波、すなわち2回の送波で1回の探知動作に相当するため、その分、探知効率は低下することとなる。
【0006】
ところで、1周波の超音波送信信号に対する受信信号から、その立ち上がり及び立ち下がりを抽出して単体魚を検出するものも知られている。この検出方法は、例えば、受信信号を高速でサンプリングし、サンプリングされた信号から立ち上がり及び立ち下がりを検出する方法や、高速サンプリングより遅い速度で各サンプリング期間内の受信信号の平均値を求め、又は最大値を抽出し、これらの信号を用いて立ち上がり及び立ち下がりを検出する方法である。しかしながら、高速サンプリングしたデータの量が甚大となって高速処理の障壁となっている。また、平均値処理や最大値処理によって加工されたデータを用いて立ち上がり及び立ち下がりを検出する場合、データの加工方法及び加工データの利用方法から、単体魚の検出精度には一定の限界があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、受信信号を所定の期間毎にその期間内の最大値及び最小値を抽出し、この最大値と最小値との差から得られる勾配に基づいて単体魚等の物標を高精度で検出可能にする物標探知装置及び物標探知方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、探知パルスを外方に送信し、帰来した受信信号から物標の検出を行う物標探知装置において、所定のサンプリング周期でサンプリングされた前記受信信号に対し、前記サンプリング周期よりも低速に設定されたピークホールド周期毎にそのピークホールド周期内の最大値を抽出する第1のピークホールド手段と、前記サンプリングされた受信信号に対し、前記ピークホールド周期毎にそのピークホールド周期内の最小値を抽出する第2のピークホールド手段と、或るピークホールド周期において抽出された前記最小値と、前記或るピークホールド周期よりも後の時間
で隣接あるいは数個置き程度の離間間隔で設定された別のピークホールド周期において抽出された前記最大値との間の勾配
が立ち上がり判定用閾値を超えている場合に前記物標を示す信号の立ち上がり
と判定する物標判定手段とを備えたことを特徴とするものである。
また、この発明では、物標判定手段は、或るピークホールド周期において抽出された前記最大値と、前記或るピークホールド周期よりも後の時間
で隣接あるいは数個置き程度の離間間隔で設定された別のピークホールド周期において抽出された前記最小値との間の勾配
が立ち下がり判定用閾値を超えている場合に前記物標を示す信号の立ち下がり
と判定するものであることを特徴とするものである。
【0009】
この発明は、探知パルスを外方に送信し、帰来した受信信号から物標の判定を行う物標探知方法において、所定のサンプリング周期でサンプリングされた前記受信信号に対し、前記サンプリング周期よりも低速に設定されたピークホールド周期毎にそのピークホールド周期内の最大値を抽出する第1のピークホールド工程と、前記サンプリングされた受信信号に対し、前記ピークホールド周期毎にそのピークホールド周期内の最小値を抽出する第2のピークホールド工程と、或るピークホールド周期において抽出された前記最小値と、前記或るピークホールド周期よりも後の時間
で隣接あるいは数個置き程度の離間間隔で設定された別のピークホールド周期において抽出された前記最大値との間の勾配
を前記深度方向に沿って前記或るピークホールド周期の位置を変えながら順に取得し、該勾配が立ち上がり判定用閾値を超えている場合に前記物標を示す信号の立ち上がり
と判定する物標判定工程とを備えたことを特徴とするものである。
また、この発明では、前記物標判定工程は、或るピークホールド周期において抽出された前記最大値と、前記或るピークホールド周期よりも後の時間
で隣接あるいは数個置き程度の離間間隔で設定された別のピークホールド周期において抽出された前記最小値との間の勾配
を前記探知パルスの送信方向である深度方向に沿って前記或るピークホールド周期の位置を変えながら順に取得し、該勾配が立ち下がり判定用閾値を超えている場合に前記物標を示す信号の立ち下がり
と判定することを特徴とするものである。
【0010】
これらの発明によれば、探知パルスが外方に向けて送信されると、探知対象である物標が有れば、当該物標で反射し、帰来してきた信号が受信され、この受信信号に基づいて物標の判定が行われる。すなわち、受信信号に対し、所定周期毎にその周期内の最大値が抽出され、また、同様にして、その周期内の最小値が抽出される。そして、互いに異なるピークホールド位置、例えば互いに隣接した位置あるいは何個か置きまでの離間位置で抽出された最小値と最大値との間の勾配が求められる。次いで、求められた勾配が物標を示す信号の立ち上がり及びその立ち下がりか否かが判定される。立ち上がりと立ち下がりとの組で物標として検出されたことになる。このように、物標の判断に、従来の発想にない処の最小値を採用し、しかも、この最小値から最大値までの差分を利用して物標を示す信号の立ち上がりの判断を行い、最大値から最小値までの差分を利用して物標を示す信号の立ち下がりの判断を行うことで、従来のように、高速サンプリングで取得した膨大な受信データで判断する場合と同程度で判断が可能となり、また、前記所定周期に相当する周期で得た平均値を用いた判定や最大値を用いた判定に比して高い判定精度が得られる。
【0011】
この発明では、前記物標判定手段は、予め設定された1又は複数の前記所定周期分だけ離間したピークホールド位置同士の最小値と最大値とから前記勾配を算出するものであ
る。この構成によれば、最小値と最大値との差分を利用して、差分をより顕在化させることで、物標を示す信号の立ち上がり、立ち下がりを精度良く検出することが可能となる。
【0012】
この発明では、前記物標判定手段は、前記立ち上がりにおける勾配を求める最小値から最大値への差分を立ち上がり判定用閾値と比較し、前記差分が前記立ち上がり判定用閾値を超えた場合に物標を示す信号の立ち上がりと判定するものであることを特徴とする。この構成によれば、立ち上がり判定用閾値と比較して立ち上がりか否かを判定するので、立ち上がりを安定的かつ精度良く検出することが可能となる。
【0013】
この発明では、前記物標判定手段は、前記立ち下がりにおける勾配を求める最大値から最小値への差分を立ち下がり判定用閾値と比較し、前記差分が前記立ち下がり判定用閾値を超えた場合に物標を示す信号の立ち下がりと判定するものであることを特徴とする。この構成によれば、立ち下がり判定用閾値と比較して立ち下がりか否かを判定するので、立ち下がりを安定的かつ精度良く検出することが可能となる。
【0014】
この発明では、前記第1、第2のピークホールド手段は、設定される探知レンジに対応して前記
ピークホールド周期を変更するものであることを特徴とする。この構成によれば、探知画像を表示する場合に、表示するべき信号の個数が表示部の表示画素(ピクセル)数に対応するので、その分表示処理が容易となる。
【0015】
この発明は、前記探知パルスは水中に送信される超音波パルスであり、前記物標は単体魚であり、前記物標判定手段は単体魚判定手段であ
り、前記単体魚判定手段は、前記水中の深度方向における前記立ち上がりと判定した位置と、前記受信信号を用いて立ち下がりと判定した位置との距離から前記単体魚の判定をおこなうものであることを特徴とする。この構成によれば、水中の単体魚に対する探知が高精度で行われる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、探知対象である物標を高精度で検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明に係る物標探知装置が適用される水中探知装置の一実施形態を示すブロック図である。水中探知装置10は、船底等に装備され、1又は所定数の超音波振動子が配置された送受波器11を備えている。送受波器11は、超音波の送信方向が所定の下方向、好ましくは直下に、例えば、数°〜略10°(度)の狭指向性を備えた超音波ビームを送信するように構成されている。送信回路12は、送受波器11を構成する超音波振動子を励振させるための所定のパルス幅を有する駆動信号を生成するものである。なお、送受波器11が複数の超音波振動子から構成されている態様では、各超音波振動子の励振信号にウエイト付けや位相制御を施して所要の指向幅が得られるようにすればよい。送受切替器13は、送信回路12からの駆動信号を送受波器11に導くと共に、送信直後からの、送受波器11で受信された信号を受信回路14に導くものである。
【0019】
受信回路14は、送受波器11で受信された水中物標で反射し、帰来する受信信号に対して水中伝搬に伴う超音波の吸収減衰を補償するTVG増幅処理や信号中の不要なノイズ信号を遮断するフィルタリング処理を行う回路である。受信回路14は、増幅処理やフィルタリング処理された信号に検波処理を施して出力するようにしている。AD変換器15は、受信回路14から出力される、検波後の受信信号を所定のサンプリング周期(周波数で言えば、数十KHz〜百数十KHzで、例えば100KHz)でデジタルの受信データに変換するものである。
【0020】
信号処理部16は、サンプリングされた受信データに対して所定の処理を実行するものである。ここに、所定の処理とは、ピークホールド処理、単体魚判別処理、魚体計量処理、及び表示処理等であり、詳細は後述する。
【0021】
水中探知装置10は、所定の筐体を備え、この筐体に操作部17及び表示部18が備えられている。操作部17は、種々のキーやボタン等の各種操作部材を備え、探知レンジ等の探知条件の設定や、表示に関する種々の条件の設定を指示するものである。表示部18は、画面181の縦横に所要数のピクセル(表示画素)を備えた表示部材、例えば液晶パネル等から構成され、受信信号を所定の表示態様で画像表示するものである。
【0022】
表示部18の画面181には、信号処理部16によって探知画像の表示が行われる。
図5は、探知画像の表示態様の一例を示す図である。画面181において、縦方向に深度方向が設定され、横方向に探知回数(経時方向)が設定される。1回の探知画像は、所定の狭い幅を有する縦方向の、例えば1列分のピクセルからなる1ライン上に描画される。受信信号は、モノトーンが図で表示を行う場合には受信強度に応じた輝度に変換されて、またカラー画像が表示可能な場合には受信強度に応じた色に変換されて表示される。画面181は、超音波送信パルスの送信毎に、1ラインだけ経時方向(
図5の左方)にスクロールされ、最新の探知画像が右端の1ラインに描画される。画面181内には、海底画像S1、単体魚画像S2、干渉波等の不要画像S3その他が表示されている。
【0023】
図2は、
図1に示す信号処理部16の一実施形態を示すブロック図である。信号処理部16は、マイクロコンピュタ等から構成される制御部160、及び制御部160に接続されたROM16a及びRAM16bを備えている。ROM16aは、信号処理のための動作プログラムやそのための所定のデータやパラメータ類等が記憶されている。RAM16bは、処理途中のデータを一時的に保存するものである。RAM16bは、表示部18の画面181を構成するピクセルの個数に対応した記憶容量を有するビデオRAM部160bを備えている。
【0024】
制御部160は、ROM16aに保持された動作プログラムを実行することによって、AD変換によって取得された受信データに対して所定の周期でピークホールド処理を実行するピークホールド処理部161、単体魚の候補を一次的に判定する単体魚一次検出処理部162、一次候補内から他の条件によって単体魚の絞り込み処理を行う単体魚二次検出処理部163、反射強度TS(Target Strength)から魚体長L等を算出する魚体計量処理部164、及び受信信号の画像及び処理後の情報等を表示部18へ表示する処理を行う表示処理部165として機能する。
【0025】
ピークホールド処理部161は、所定の周期(以下、ピークホールド周期という)毎にその期間内の最大値(Max)を抽出するマックスピークホールド部1611と、前記ピークホールド周期毎にその期間内の最小値(Min)を抽出するミニピークホールド部1612とを備えている。ピークホールド処理は、本実施形態ではAD変換器15でサンプリングされた受信データを利用して、後述する単体魚判定のためのデータを生成する処理である。
【0026】
ピークホールド周期は、AD変換器15に設定されたサンプリング周期に比して同等乃至は低速であり、その設定方法として種々の方法が考えられるが、本実施形態では、探知レンジ等に対応して変更される。より具体的には、ピークホールド周期は、水中探知装置10に設定された、例えば最短の探知レンジを基準とし、この基準に比して探知レンジが例えば2倍に設定された場合には、表示部18の画面181の縦方向のピクセル1個分の受け持つ単位距離が2倍になり、その結果、ピークホールド周期は2倍に変更される。この場合、最短の探知レンジにおける、すなわち基準となるピークホールド周期を、AD変換器15におけるサンプリング周期と一致させてもよい。
【0027】
ピークホールド処理部161は、操作部17で設定された探知レンジの情報に従って、ピークホールド周期を設定し、AD変換器15からの受信データに対して、設定されたピークホールド周期で、ピークホールド処理を繰り返す処理を行う。より具体的には、マックスピークホールド部1611は、AD変換器15で得られた受信データを、サンプリングの順に取り込み、直前の取り込みデータと今回の取り込みデータとの大小を比較して、大きい方のデータを順次格納する処理を、ピークホールド周期内で行うことでピークホールド1周期分のマックスピークデータの抽出が可能となる。ピークホールド1周期毎に抽出されたマックスピークデータはRAM16bに順次格納される。同様にして、ミニピークホールド部1612によってピークホールド1周期毎のミニピークデータが抽出され、抽出されたミニピークデータは、同一のピークホールド位置のマックスピークデータと対応付けられてRAM16bに順次格納される。
【0028】
図3は、サンプリングされた受信データ及びマックスピークホールドデータとミニピークホールドデータとの関係の一例を示すデータ図の一部である。
図3において、縦軸は信号強度を示し、横軸は深度方向(AD変換器15によるサンプリングのカウント値)を示している。横軸のドット(dot)値は、AD変換器15によるサンプリング回数を示すカウント値で、
図3では、カウント値“2200”から“2500”までのデータである。
【0029】
例えば、AD変換器15のサンプリング周波数を100KHzとし、水中音速を1500m/sとするとき、カウント値“1”当たりの探知距離は、“0.75cm”となる。そうすると、
図3に示すカウント値“2200”から“2500”に対応する探知距離は、“16.5m”から“18.75m”に相当することになる。
【0030】
また、
図3に示される信号S0は、AD変換器15でサンプリングして得られた受信データを示し、信号Smaxは、マックスピークホールド部1611で抽出されたマックスピークホールドデータを示し、信号Sminは、ミニピークホールド部1612で抽出されたミニピークホールドデータを示している。この例では、横軸(深度方向)のカウント値8個当たり、すなわちサンプリングデータ8個当たりで、1個のピークホールドデータ(ミニピークホールドデータも同じ)が設定されている。従って、
図3に示す探知レンジでは、ピークホールド処理によって、受信データが1/8に間引きされていることとなる。
【0031】
次に、単体魚の検出について説明する。単体魚検出処理は、単体魚一次検出処理部162と単体魚二次検出処理部163とで行われる。単体魚一次検出処理部162は、ピークホールドデータから単体魚の一次候補を検出するものである。単体魚一次検出処理部162は、単体魚の立ち上がりを検出する立ち上がり検出処理部1621と単体魚の立ち下がりを検出する立ち下がり検出処理部1622とを備えている。
【0032】
立ち上がり検出処理部1621は、ピークホールド処理で得られたマックスピークホールドデータとミニピークホールドデータとを用いて受信データの立ち上がりを算出し、算出結果を閾値と比較することで単体魚候補か否かを判定する。より具体的には、あるピークホールド位置(第1のピークホールド位置とする)におけるミニピークホールドデータと、この第1のピークホールド位置より所定深度だけ深い側に相当する第2のピークホールド位置(例えば第1のピークホールド位置に隣接するピークホールド位置)におけるマックスピークホールドデータとの差分を算出し、深度方向に対する勾配を算出するものである。そして、算出された勾配と立ち上がり判定用閾値との大小を比較して、算出した勾配の方が立ち上がり判定用閾値を超えている場合、単体魚の立ち上がりと判断する。
【0033】
立ち上がり検出処理部1621は、かかる勾配算出処理を、第1のピークホールド位置が初回のピークホールド位置(最浅部)の時点から順番に深度方向に繰り返し実行し、条件を満たす単体魚の立ち上がり信号とその位置とを検出する。また、立ち上がりをより高精度に検出するため、立ち上がり検出処理部1621は、第1、第2のピークホールド位置が隣同士となる場合の勾配を利用するのみならず、第1、第2のピークホールド位置が1つ置きの場合、2つ置きの場合のように、所要の離間位置までの勾配を採用する態様でもよい。立ち上がり判定用閾値は、第1、第2のピークホールド位置が何個置きかに応じてそれぞれ準備しておけばよい。
【0034】
立ち下がり検出処理部1622は、ピークホールド処理で得られたマックスピークホールドデータとミニピークホールドデータとを用いて受信データの立ち下がりを算出し、算出結果を閾値と比較することで単体魚候補か否かを判定する。より具体的には、あるピークホールド位置(第1のピークホールド位置とする)におけるマックスピークホールド値と、この第1のピークホールド位置より所定深度だけ深い側に相当する第2のピークホールド位置(例えば第1のピークホールド位置に隣接するピークホールド位置)におけるミニピークホールド値との差分を算出し、深度方向に対する勾配を算出するものである。そして、算出された勾配と立ち下がり判定用閾値との大小を比較して、算出した勾配の方が立ち下がり判定用閾値を超えている場合、単体魚の立ち下がりと判断する。
【0035】
立ち下がり検出処理部1622は、かかる勾配算出処理を、第1のピークホールド位置が初回のピークホールド位置(最浅部)の時点から順番に深度方向に繰り返し実行し、条件を満たす単体魚の立ち下がり信号とその位置とを検出する。また、立ち下がりをより高精度に検出するため、立ち下がり検出処理部1622は、第1、第2のピークホールド位置が隣同士となる場合の勾配を利用するのみならず、第1、第2のピークホールド位置が1つ置きの場合、2つ置きの場合のように、所要の離間位置までの勾配を採用する態様でもよい。立ち下がり判定用閾値は、第1、第2のピークホールド位置が何個置きかに応じてそれぞれ準備しておけばよい。
【0036】
単体魚一次検出処理部162は、勾配算出のための第1、第2のピークホールド位置が設定される毎に、立ち上がり検出処理部1621と立ち下がり検出処理部1622とを同時並行的に実行させて、単体魚の立ち上がりと立ち下がりを検出する。
【0037】
図4は、勾配算出方法を説明するための図で、
図3の一部拡大図である。横軸は、
図3のサンプリング位置D1〜D2に相当している。
図4は、第1、第2のピークホールド位置が隣接する場合を示している。すなわち、立ち上がり勾配の算出に際しては、ピークホールド位置iのミニピークホールドデータに対して、深い方向に隣接するピークホールド位置(i+1)のマックスピークホールドデータがどの程度大きくなったかの差分を計算し、深度方向の位置差、ここでは1{=(i+1)−i}を用いて勾配を算出する。
【0038】
また、隣接位置の場合の立ち上がり判定用閾値を15(dB:デシベル)と設定した場合、差分は、
図4より、約35dB{=約50dB(位置(i+1)のマックスピークホールドデータ)−約15dB(位置iのミニピークホールドデータ)}であり、単体魚候補と判断される。
【0039】
また、立ち下がり勾配の算出に際しては、ピークホールド位置i’のマックスピークホールドデータに対して、深い方向に隣接するピークホールド位置(i’+1)のミニピークホールドデータがどの程度小さくなったかの差分を計算し、深度方向の位置差、ここでは1{=(i’+1)−i’}を用いて勾配を算出する。
【0040】
また、隣接位置の場合の立ち下がり判定用閾値を12dBと設定した場合、差分は、
図4より、約28dB{=約63dB(位置i’のマックスピークホールドデータ)−約35dB(位置(i’+1)のミニピークホールドデータ)}であり、単体魚候補と判断される。ピークホールド位置iは、1,2,3,…の順で順次設定され、最後は探知レンジに相当するピークホールド位置となる。
【0041】
なお、立ち上がり判定処理及び立ち下がり判定処理が同時並行的に行われている態様では、ピークホールド位置iと(i+1)とにおける立ち上がり判定処理と同時に、ピークホールド位置iのマックスピークホールドデータからピークホールド位置(i+1)のミニピークホールドデータの差分を求め、立ち下がり判定処理を実行する。この場合、
図4の例からは、−8dB(=約36dB−約28dB)となり、立ち下がり判定用閾値12dBを満たしておらず、単体魚の立ち下がりではないと判断される。同様にして、ピークホールド位置i’と(i’+1)における立ち下がり判定処理と同時に、立ち上がり判定処理も実行されている態様では、
図4の例から、−25dB(=約35dB(ピークホールド位置(i’+1)の値)−約60dB(ピークホールド位置i’の値))となり、立ち上がり判定用閾値12dBを満たしておらず、単体魚の立ち上がりではないと判断される。また、同一位置では、立ち上がりと立ち下がりが原則併存することはないことから、一方の処理で単体魚候補と判断された場合、他方の処理を中止してもよい。また、検出精度を高める上で、立ち上がり、立ち下がり判断用の他の条件として、立ち上がり検出時にはミニピークホールドデータの値に対する制限を、立ち下がり検出時には、マックスピークホールドデータの値に対する制限を、それぞれ設定するようにしてもよい。ここに制限とは、ピークホールドデータ自身が対応する閾値を超える値であることである。
【0042】
また、2つ置きのピークホールド位置を用いた場合の勾配算出処理は、
図4に示すように、ピークホールド位置iと(i+2)とのデータの差分(あるいはi’と(i’+2)とのデータの差分)を用いればよく、この場合の勾配は、差分/2である。
【0043】
そして、単体魚一次検出処理によって単体魚の立ち上がり及び立ち下がりと判断された、互いに隣接するデータは、一組の情報、すなわち一次候補の単体魚信号とされて、順次、組毎にRAM16bに格納される。
【0044】
単体魚二次検出処理部163は、単体魚一次検出処理部162で検出され、RAM16bに格納された一次候補の単体魚信号内から他の条件によって単体魚の絞り込み処理を行うもので、魚体高判定部1631、ビーム中心判定部1632及び追尾処理部1633を備えている。魚体高判定部1631は、一次候補として検出された単体魚の立ち上がりのピークホールド位置から立ち下がりのピークホールド位置までの深度方向の距離が、予め設定された値、例えば一般的な魚体寸法の数倍、例えば3倍程度に相当する距離を超えた場合には、単体魚から除外するものである。また、かかる判定処理によって、干渉信号等の比較的長幅の不要信号が、結果的(乃至は効果的)に単体魚として誤判断されなくなる。
【0045】
ビーム中心判定部1632は、必要に応じて採用されるもので、ピークホールド処理及び単体魚一次検出処理を行うための受信信号を得るための、比較的高周波の超音波信号を送受波する送受波器11とは別に、相対的に、低周波で広指向性(例えば20°程度)を有する超音波信号を送受波する低周波用送受波器を備えた態様において実行される。高周波の超音波信号と低周波の超音波信号とは、対応する各送受波器から例えば交互に送信され、交互に反射信号が受信される。ビーム中心判定部1632は、単体魚の受信強度の精度の適否を判断するものである。ビーム中心判定部1632は、送受波器11の指向範囲内に単体魚が位置したか否か、より具体的は送受波器11から送信された超音波信号の送波方向の略中央に単体魚が位置した状態で、反射信号が受信されたか否か、すなわち反射強度が単体魚の大きさを高精度で算出できるか否かを判断するものである。
【0046】
ビーム中心判定部1632は、高周波の超音波信号で受信された、単体魚候補に該当するピークホールドデータと、低周波の超音波信号で受信され、サンプリングされた同一深度位置の受信データの一つ(又は平均値でもよい)との比率を算出し、比率が所定の閾値と比較して所定の範囲内にあれば、適正位置で探知された単体魚と判断し、そうでなければ単体魚から除外するものである。比率が所定の範囲内にない場合とは、単体魚が低周波超音波信号の広指向性内では探知できた一方、高周波超音波信号の狭指向性では探知できず、あるいは中心からずれて探知された場合をいい、その結果、高周波側のピークホールドデータの方が、正常探知した場合に比して相対的に小さくなったために、比率が適正範囲外となった場合である。
【0047】
追尾処理部1633は、連続する送信トリガに基づく受信によって、所定回数連続して、例えば2回続けて同一深度位置に単体魚の存在が検出された(同一の単体魚の)場合を除いて、単体魚から除外するものである。これは、送信トリガの周期(探知周期)にも依存するが、魚の一般的な遊泳速度と探知周期、超音波信号の指向幅とから、1回だけの単発的な受信では、単体魚でなく、例えば干渉信号その他の不要信号の可能性が高いことによる。単体魚二次検出処理部163は、単体魚一次検出処理部162で検出され、RAM16bに格納された一次候補の単体魚のデータから、除外された単体魚に関するデータを消去する。
【0048】
魚体計量処理部164は、単体魚一次検出処理部162及び単体魚二次検出処理部163によって最終的に検出された全ての単体魚の深度位置に対応するピークホールド位置におけるマックスピークホールドデータを用いて魚体長の算出を行う。魚体計量処理部164は、該当するマックスピークホールドデータのレベルから、まず反射強度TSを計算し、続いて反射強度TSから魚体長Lを演算する処理を行う。反射強度TSは、(1)式により算出されることが知られている。
【0049】
TS=20log
10(SIG)−G+TVG−SL−Me−kD …(1)
ここに、SIGは単体魚の受信信号のレベル、Gは受信ゲイン、TVGはターゲットまでの距離に応じて変化する可変時間ゲイン、SLは送信信号のレベル、Meは受波音圧感度である。反射強度TSが求まると、周知である(2)式に示す反射強度TSと魚体長Lとの間の関係式から魚体長Lが算出される。
【0050】
TS=20logL+20logA …(2)
ここに、Aは信号周波数と魚種により決まる係数である。魚種の係数Aは、一律でもよいし、例えば、海域、深度、時期、水温その他のうちの所要の情報を用いて対応する値(魚種毎、あるいは何通りか分)を予め記憶しておいた記憶部から読み出して(2)式に設定するようにしてもよい。
【0051】
複数回の探知に亘って検出された同一の単体魚に対して算出された各魚体長Lのうち、例えば最大値が当該単体魚の魚体長Lとして決定され、RAM16bの適所領域に格納される。
【0052】
表示処理部165は、受信信号から得られる探知画像及び処理後の情報等を表示部18へ表示するものである。画面181に表示される探知画像は、例えばピークホールド周期で取得されたマックスピークホールドデータを、レベルに対応した形に変換等して生成されたものである。表示処理部165は、ビデオRAM部160bに1画面分の画像情報を探知周期毎に繰り返し展開しつつ、所定周期で表示部18へ繰り返し読み出すことで、画面181上に、例えば
図5に示すような静止画像を描画する。また、表示処理部165は、送信トリガが発せられる毎に1ラインのスクロール表示を実行するべく、ビデオRAM160bの内容を1ライン分のアドレスだけ移動して更新書き込みすると共に、最新の受信情報をスクロールによって空いたアドレス位置に書き込む。さらに、表示処理部165は、必要に応じて単体魚画像S2(
図5参照)の表示位置に対応する位置、例えば直ぐ横に例えば当該単体魚の魚体長Lを数値表示するようにしてもよい。
【0053】
表示処理部165は、また、設定されている探知レンジにおけるマックスピークホールドデータの個数と深度方向のピクセルの個数とから、1個のピクセルに表示するデータをマックスピークホールドデータから求める。例えば、探知レンジが大きくなる程、ピークホールド周期を比例的に遅くする態様では、マックスピークホールドデータを常に一定の比率で拡縮してビデオRAM160bに書き込めばよい。
【0054】
また、単体魚が検出された深度位置に所定の単体魚画像を描画する態様でもよく、この場合、さらに魚体長情報を読み出して、魚体長情報に応じて表示画像の大きさを変えたり、輝度を変えたり、あるいはカラー表示可能な表示部18では表示色を変えたりする等してもよい。この場合には、受信データやマックスピークホールドデータは表示用の画像としては使用しなくてもよく、表示には別に処理したデータを用いればよい。
【0055】
なお、本発明は、以下の態様を採用することが可能である。
【0056】
(1)本実施形態では、AD変換器15でサンプリングして受信データを生成し、この受信データに対してピークホールド処理を施すようにしたが、AD変換器15によるサンプリングを経ることなく、直接、探知レンジに連動した所要の周期でピークホールド処理するようにしてもよい。なお、AD変換器15によって受信データを取得しておけば、受信データを他の処理に用いたり、探知レンジを切り替えた時に画面181内の経時方向を含めた画像全体を一括して切り替え後の探知レンジに対応するように書き換えて表示したりすることが可能となる。
【0057】
(2)本実施形態では、探知レンジの大小に比例させてピークホールド周期を長短変更し、ピークホールドデータの個数を深度方向のピクセルの個数に対応(個数が一致、あるいは比率が一定)させるようにした、例えば探知レンジが2倍になるとピークホールド周期を2倍にして、ピークホールドデータの個数が深度方向のピクセルの個数に対応するようにした。しかし、ピークホールド周期は探知レンジの切り替えと必ずしも対応させなくてもよい。例えば、ピークホールド周期は、所定の周期に予め設定しておき、得られたピークホールドデータを用いてピークホールド処理、単体魚検出処理及び魚体計量処理を実行する一方、表示に関しては、表示処理部165は、取得されたピークホールドデータの個数と画面181の深度方向のピクセルの個数との比率から、1ピクセルに対応するピークホールドデータ数を算出し、比率が1以上であれば、比率に応じた個数のピークホールドデータを例えば平均化して1個のピクセルに対する表示用のデータとして作成し、逆に、比率が1未満であれば、比率に応じた数だけ同一のデータを表示させるようにすればよい。例えば、ピークホールドデータ数がピクセル個数の2倍であれば、深度方向の2個ずつのピークホールドデータの平均値を求めて1つのピクセルに表示させ、逆に、ピークホールドデータ数がピクセル個数の1/2倍であれば、1つのピークホールドデータを深度方向の2つのピクセルに表示させる処理を行えばよい。
【0058】
(3)本実施形態では、魚体計量処理部164で魚体長Lを算出するようにしたが、これに限定されず、また、魚体長Lに加えて種々の計量を実行する態様でもよい。
【0059】
(4)本実施形態では、一般的な超音波ビームの送受信で水中探知を行う例で説明したが、本出願人が特開2005−249398号公報で提案した超音波ビームを採用してもよい。すなわち、送信信号として周波数が時間的に変化(チャープ)するFM信号を用い、受信時の相関処理によって帰来信号から所定の信号だけを取り出すようにしたものである。このようにすることで、送信時には、送信信号の時間幅(パルス幅)を長くして探知距離を長くとることができるとともに、受信時には、短い時間幅(パルス幅)の受信信号が取り出せるので、パルス圧縮によりエコーの分解能が向上し、単体魚の検出精度を高めることが可能となる。より具体的には、相関処理は典型的にはマッチドフィルタ(Matched Filter)を用いて実行される。マッチドフィルタは、送受波器で受信された受信信号と基準信号との一致度を、基準信号と受信信号との位相を少しずつずらしながら、各時点での受信信号レベルと基準信号レベルとの等積和演算を施し、その算出結果に基づいて相関出力の高い短時間幅の受信信号を抽出するものである。
【0060】
(5)本実施形態では、単体魚を示す信号の立ち上がり及びその立ち下がりか否かをミニピークホールドデータとマックスピークホールドデータとを用いてが判定したが、これに限定されず、例えば、立ち上がり及び立ち下がりの一方、好ましくは立ち上がりについては本実施形態のようにして判定し、一方、立ち下がりについては、他の判断方法、立ち上がり判定中における処理であることから、好ましくはより簡易な方法を採用してもよい。例えばマックス(あるいはミニ)ピークホールドデータが信号なしと判断する設定レベルまで低下したか否か、あるいは立ち上がり判定で用いた最小値と同等のレベルまでマックス(あるいはミニ)ピークホールドデータが低下したか否かで判断してもよい。
【0061】
(6)本実施形態では、探知パルスとして超音波パルスを使用して、水中の単体魚を検出する処理を例にして説明したが、本発明は、単体魚の検出に限定されず、水中の他の物標を探知対象とした場合にも適用可能である。また、探知パルスとして、レーダアンテナから放射(送信)されるレーダ(マイクロ波)パルスを用い、海上の船舶等の検出にも適用することが可能である。