(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のように、インホイールモータ駆動装置101においては、モータ部103や減速部105の固定部材と、車輪ハブ軸受部104の固定輪もしくは固定輪に一体結合される部材とを何らかの方法で締結する必要があり、ボルト締結する場合には、モータ部103や減速部105のハウジング107は、軽量化のために、通常、アルミ合金によって形成されているため、強度を確保する観点から、ボルト締結するためのねじ穴を鋼材に比べ、長く設定する必要がある。
【0008】
特許文献1に示されたインホイールモータユニットにおいても、ボルト締結部は比較的長めに設定されており、他の壁部よりも肉が厚く形成されている。
【0009】
そして、ボルト締結部の肉厚だけを厚くできない場合には、インホイールモータユニットの軸長が伸びてしまうため、全体の重量アップにつながるという問題が生じる。
【0010】
さらに、ボルト締結部のねじ穴を内部に貫通させることは、油漏れの観点から好ましくないため、ねじ穴を内部に貫通させないようにすると、肉厚がより厚くなるという問題も生じる。
【0011】
また、車輪ハブ軸受部は、頻度は少ないが交換するパーツであるため、締結ボルトの取付け、取り外しを行う必要があり、ねじ穴がアルミ合金であるというのは、耐久性の点で好ましくない。
【0012】
そこで、この発明は、アルミ合金等の軽金属で形成されたインホイールモータユニットのモータ部や減速部のハウジングと、車輪ハブ軸受部の固定輪もしくは固定輪に一体結合される部材とをボルト締結しても、十分な耐久性が得られるようにし、しかも、ボルト締結部分の肉厚を最小限に抑えることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題を解決するために、この発明は、ハブベアリングの固定輪もしくは固定輪に一体結合される部材と、インホイールモータユニットのハウジングとを
、雄部材と雌部材からなるボルト締結部材によって締結したインホイールモータ駆動装置において、前記モータユニットのハウジングを軽金属製によって構成し、ボルト締結部材を構成する
雌部材を鉄製材料によって形成し、前記ハウジングに
、非貫通の雌部材を抜け止め且つ回り止め状態に配置し
、前記雌部材が配置される周方向位置よりも内径側に、内部オイル封止用のシール部材を配置したことを特徴とするものである。
【0014】
前記鉄製材料によって形成された雄部材又は雌部材は、前記ハウジングを鋳造する際に、鋳込み成型によりインサートすることが好ましい。
【0015】
前記ハウジングに配置される雄部材又は雌部材は、ボルト締結する際に、抜け出したり、共回りしたりしないように、ハウジングに対して抜け止め又は回り止め手段を設けておくことが好ましい。
【0016】
前記ハウジングに配置される雄部材又は雌部材は、周方向に一体化されたリング状部材に形成してもよい。
【0017】
前記リング状部材は、鋳物又はプレス加工品を使用することができる。
【0018】
前記雄部材又は雌部材に形成されるねじ部は、鋳込み前に加工していてもよいし、鋳込み後に加工してもよい。
【0019】
前記雌部材は、ナット、特に、袋ナットで構成することができる。
【0020】
前記雄部材は、ボルトで構成することができる。
【0021】
前記ボルトは、ハウジングに軸部材を鋳込み、その後に、ねじ加工して形成してもよい。
【0022】
前記雄部材又は雌部材が配置される周方向位置よりも内径側のハウジングに、内部オイル封止用のシール部材を配置してもよい。
【0023】
前記シール部材としては、Oリングを使用することができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明は、以上のように、軽金属製のハウジングに、ボルト締結部材を構成する鉄製材料からなる雄部材又は雌部材を配置しているので、ボルト締結の際の耐久性が良好で、ボルト締結部分の肉厚も最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
この発明の一実施形態に係るインホイールモータ駆動装置を備えた電気自動車11は、
図9に示すように、シャーシ12と、操舵輪としての前輪13と、駆動輪としての後輪14と、左右の後輪14それぞれに駆動力を伝達するインホイールモータ駆動装置21とを備える。後輪14は、
図10に示すように、シャーシ12のホイールハウジング12aの内部に収容され、懸架装置(サスペンション)12bを介してシャーシ12の下部に固定されている。
【0027】
懸架装置12bは、左右に伸びるサスペンションアームによって後輪14を支持すると共に、コイルスプリングとショックアブソーバとを含むストラットによって、後輪14が地面から受ける振動を吸収してシャーシ12の振動を抑制する。さらに、左右のサスペンションアームの連結部分には、旋回時等に車体の傾きを抑制するスタビライザーが設けられる。なお、懸架装置12bは、路面の凹凸に対する追従性を向上し、駆動輪の駆動力を効率良く路面に伝達するために、左右の車輪を独立して上下させることができる独立懸架式とするのが望ましい。
【0028】
この電気自動車11は、ホイールハウジング12a内部に、左右の後輪14それぞれを駆動するインホイールモータ駆動装置21を設けることによって、シャーシ12上にモータ、ドライブシャフト、およびデファレンシャルギヤ機構等を設ける必要がなくなるので、客室スペースを広く確保でき、かつ、左右の駆動輪の回転をそれぞれ制御することができるという利点を備えている。
【0029】
一方、この電気自動車11の走行安定性を向上するために、ばね下重量を抑える必要がある。また、さらに広い客室スペースを確保するために、インホイールモータ駆動装置21の小型・軽量化が求められる。
【0030】
インホイールモータ駆動装置21は、
図1に示すように、駆動力を発生させるモータ部Aと、モータ部Aの回転を減速して出力する減速部Bと、減速部Bからの出力を駆動輪14に伝える車輪ハブ軸受部Cとを備え、モータ部Aと減速部Bとは、モータ部ハウジング22aと減速部ハウジング22bに収納されて、
図10に示すように電気自動車11のホイールハウジング12a内に取り付けられる。
【0031】
モータ部Aは、モータ部ハウジング22aに固定されるステータ23と、ステータ23の内側に径方向の隙間を空けて対向する位置に配置されるロータ24と、ロータ24の内側に固定連結されてロータ24と一体回転するモータ側回転部材25とを備えるラジアルギャップモータである。ロータ24は、フランジ形状のロータ部24aと円筒形状の中空部24bとを有し、転がり軸受36a、36bによってモータ部ハウジング22aに対して回転自在に支持されている。
【0032】
モータ側回転部材25は、モータ部Aの駆動力を減速部Bに伝達するためにモータ部Aから減速部Bにかけて配置され、減速部B内に偏心部25a、25bを有する。このモータ側回転部材25は、ロータ24の中空部24bに嵌合固定されて、ロータ24と一体回転する。さらに、2つの偏心部25a、25bは、偏心運動による遠心力を互いに打ち消し合うために、180°位相を変えて設けられている。
【0033】
減速部Bは、偏心部25a、25bに回転自在に保持される公転部材としての曲線板26a、26bと、減速部ハウジング22b上の固定位置に保持され、曲線板26a、26bの外周部に係合する外周係合部材としての複数の外ピン27と、曲線板26a、26bの自転運動を車輪側回転部材28に伝達する運動変換機構と、偏心部25a、25bに隣接する位置にカウンタウェイト29とを備える。また、減速部Bには、減速部Bに潤滑油を供給する減速部潤滑機構が設けられている。
【0034】
車輪側回転部材28は、フランジ部28aと軸部28bとを有する。フランジ部28aの端面には、車輪側回転部材28の回転軸心を中心とする円周上の等間隔に内ピン31を固定する穴が形成されている。また、軸部28bはハブ輪32に嵌合固定され、減速部Bの出力を車輪14に伝達する。車輪側回転部材28のフランジ部28aとモータ側回転部材25とは、転がり軸受36cによって回転自在に支持されている。
【0035】
曲線板26a、26bは、
図8に示すように、外周部にエピトロコイド等のトロコイド系曲線で構成される複数の波形を有し、一方側端面から他方側端面に貫通する複数の貫通孔30aを有する。貫通孔30aは、曲線板26a、26bの自転軸心を中心とする円周上に等間隔に複数個設けられており、後述する内ピン31を受入れる。また、貫通孔30bは、曲線板26a、26bの中心に設けられており、偏心部25a、25bに嵌合する。
【0036】
曲線板26a、26bは、転がり軸受41によって偏心部25a、25bに対して回転自在に支持されている。この転がり軸受41は、偏心部25a、25bの外径面に嵌合し、その外径面に内側軌道面を有する内輪部材と、曲線板26a、26bの貫通孔30bの内径面に直接形成された外側軌道面と、内側軌道面および外側軌道面の間に配置される複数の円筒ころ44と、隣接する円筒ころ44の間隔を保持する保持器(図示省略)とを備える円筒ころ軸受である。
【0037】
外ピン27は、モータ側回転部材25の回転軸心を中心とする円周軌道上に等間隔に設けられる。曲線板26a、26bが公転運動すると、曲線形状の波形と外ピン27とが係合して、曲線板26a、26bに自転運動を生じさせる。ここで、外ピン27は、針状ころ軸受によって減速部ハウジング22bに対して回転自在に支持されている。これにより、曲線板26a、26bとの間の接触抵抗を低減することができる。
【0038】
カウンタウェイト29は、円板状で、中心から外れた位置にモータ側回転部材25と嵌合する貫通孔を有し、曲線板26a、26bの回転によって生じる不釣合い慣性偶力を打ち消すために、各偏心部25a、25bに隣接する位置に偏心部と180°位相を変えて配置される。
【0039】
運動変換機構は、車輪側回転部材28に保持された複数の内ピン31と、曲線板26a、26bに設けられた貫通孔30aとで構成される。内ピン31は、車輪側回転部材28の回転軸心を中心とする円周軌道上に等間隔に設けられており、その軸方向一方側端部が車輪側回転部材28に固定されている。また、曲線板26a、26bとの摩擦抵抗を低減するために、曲線板26a、26bの貫通孔30aの内壁面に当接する位置に針状ころ軸受が設けられている。
【0040】
貫通孔30aは、複数の内ピン31それぞれに対応する位置に設けられ、貫通孔30aの内径寸法は、内ピン31の外径寸法(「針状ころ軸受を含む最大外径」を指す。以下同じ。)より所定分大きく設定されている。
【0041】
減速部潤滑機構は、減速部Bに潤滑油を供給するものであって、潤滑油路25cと、潤滑油給油口25dと、潤滑油排出口22cと、潤滑油貯留部22dと、回転ポンプ51と、循環油路22gとを備える。
【0042】
潤滑油路25cは、モータ側回転部材25の内部を軸線方向に沿って延びている。また、潤滑油供給口25dは、潤滑油路25cからモータ側回転部材25の外径面に向かって延びている。なお、この実施形態において、潤滑油供給口25dは、偏心部25a、25bに設けられている。
【0043】
また、減速部Bの位置における減速部ハウジング22bの少なくとも1箇所には、減速部B内部の潤滑油を排出する潤滑油排出口22cが設けられている。また、潤滑油排出口22cと潤滑油路25cとを接続する循環油路22gがモータ部ハウジング22aの内部に設けられている。そして、潤滑油排出口22cから排出された潤滑油は、循環油路22gを経由して潤滑油路25cに還流する。
【0044】
さらに、減速部潤滑機構は、循環油路22gを通過する潤滑油を冷却する冷却手段をさらに有する。この実施形態における冷却手段は、モータ部ハウジング22bに設けられた冷却水路22eを備え、冷却手段は、潤滑油のみならず、モータ部Aの冷却にも寄与する。
【0045】
車輪ハブ軸受部Cは、車輪側回転部材28に固定連結された車輪14を取付けるハブ輪32と、ハブ輪32を減速部ハウジング22bに対して回転自在に保持する固定輪33とを備える。ハブ輪32は、円筒形状の中空部32aとフランジ部32bとを有する。フランジ部32bにはボルト32cによって車輪14が固定連結される。また、車輪側回転部材28の軸部28bの外径面にはスプラインおよび雄ねじが形成されている。また、ハブ輪32の中空部32aの内径面にはスプライン穴が形成されている。そして、ハブ輪32の内径面に車輪側回転部材28を螺合し、先端をナット32dでとめることによって、両者を締結している。
【0046】
ハブ輪32は、中空部32aの外面に車輪取付けフランジ32bが一体形成されている。中空部32aの車両アウター側の外径面には、アウター側軌道面が一体に形成され、中空部32aの車両インナー側の外径面に、外面にインナー側軌道面を有する内輪32cを嵌合している。
【0047】
固定輪33は、内周面に、ハブ輪32のアウター側軌道面とインナー側軌道面に対向するアウター側軌道面とインナー側軌道面を有し、外周面に、固定用フランジ33aを有する。
【0048】
ハブ輪32と固定輪33の対向するアウター側軌道面とインナー側軌道面間には、複列の玉34が収容されている。
【0049】
固定輪33の固定用フランジ33aと減速部ハウジング22bとは、ボルト締結部材によって締結されている。
【0050】
ボルト締結部材は、鉄製材料によって形成された雄部材61と雌部材62とによって構成され、
図1及び
図2の実施形態では、雄部材61としてボルトを採用し、ボルトを固定用フランジ33aに形成したボルト挿通孔に挿通し、ボルトの端部を、減速部ハウジング22bに配置した雌部材62にねじ込んで、固定輪33の固定用フランジ33aと減速部ハウジング22bとを締結している。
【0051】
図1及び
図2の実施形態で採用している雌部材62は、
図3に示すように、ねじ穴を有する筒部62aと、筒部62aの端部外周に形成されたフランジ部62bとからなり、減速部ハウジング22bをアルミ合金によって鋳造する際に、鋳込み成型により減速部ハウジング22bにインサートされている。
【0052】
図3に示す雌部材62は、ボルト締結時に軸方向に抜け出さないように、筒部62aの端部外周に、フランジ部62bを形成している。また、この雌部材62の筒部62aの外形は、ボルト締結時に共回りしないように、単純円筒ではなく、D形に形成している。
【0053】
ボルト締結時の回り止め手段としては、上記D形の他に、例えば、花びら形状、楕円形状にすることもできる。また、外形をローレット加工してもよいし、ボルト締結時の抜け止め手段として、軸方向に段差を付けてもよい。
【0054】
上記雌部材62は、減速部ハウジング22bに、ボルトの本数に対応して、ボルトと同数を個別に配置してもよいが、
図4に示すように、リング状部材63を減速部ハウジング22bにインサートし、リング状部材63に必要な数のねじ穴64を形成するようにしてもよい。
【0055】
リング状部材63は、ねじ穴64以外の部分は、軽量化のために、薄肉部65にしておくことが望ましい。
【0056】
次に、
図5の実施形態は、雌部材62として、鉄製のナットを使用した例である。
【0057】
また、
図6の実施形態は、雌部材62として、鉄製の袋ナットを使用した例である。
【0058】
また、
図7の実施形態は、雄部材61として鉄製のボルトを使用し、このボルトの頭部を減速部ハウジング22bにインサートし、雌部材62としてのナットを、固定輪33の固定用フランジ33aに配置した例を示している。
【0059】
このボルトを減速部ハウジング22bにインサートする実施形態では、鋳込み時に、ねじ加工していない軸部材をインサートし、インサート後に、軸部材にねじ加工を施すようにしてもよい。
【0060】
以上の実施形態では、固定輪33の固定用フランジ33aと減速部ハウジング22bとの間の突き合わせ面の密封性を向上させて、内部からのオイル漏れを防止するために、締結ボルトが配置される周方向位置の内径側にシール部材66を配置している。
【0061】
シール部材66としては、Oリングを使用することができる。
【0062】
以下、インホイールモータ駆動装置21の作動原理について説明する。
モータ部Aは、例えば、ステータ23のコイルに交流電流を供給することによって生じる電磁力を受けて、永久磁石または磁性体によって構成されるロータ24が回転する。これにより、ロータ24に接続されたモータ側回転部材25が回転すると、曲線板26a、26bはモータ側回転部材25の回転軸心を中心として公転運動する。このとき、外ピン27が、曲線板26a、26bの曲線形状の波形と係合して、曲線板26a、26bをモータ側回転部材25の回転とは逆向きに自転運動させる。
【0063】
貫通孔30aに挿通する内ピン31は、曲線板26a、26bの自転運動に伴って貫通孔30aの内壁面と当接する。これにより、曲線板26a、26bの公転運動が内ピン31に伝わらず、曲線板26a、26bの自転運動のみが車輪側回転部材28を介して車輪ハブ軸受部Cに伝達される。
【0064】
このとき、モータ側回転部材25の回転が減速部Bによって減速されて車輪側回転部材28に伝達されるので、低トルク、高回転型のモータ部Aを採用した場合でも、駆動輪14に必要なトルクを伝達することが可能となる。
【0065】
なお、上記構成の減速部Bの減速比は、外ピン27の数をZA、曲線板26a、26bの波形の数をZBとすると、(ZA−ZB)/ZBで算出される。
図8に示す実施形態では、ZA=12、ZB=11であるので、減速比は1/11と、非常に大きな減速比を得ることができる。
【0066】
このように、多段構成とすることなく大きな減速比を得ることができる減速部Bを採用することにより、コンパクトで高減速比のインホイールモータ駆動装置21を得ることができる。また、外ピン27および内ピン31に針状ころ軸受を設けたことにより、曲線板26a、26bとの間の摩擦抵抗が低減されるので、減速部Bの伝達効率が向上する。
【0067】
上記の実施形態に係るインホイールモータ駆動装置21を電気自動車11に採用することにより、ばね下重量を抑えることができる。その結果、走行安定性に優れた電気自動車11を得ることができる。
【0068】
また、上記の実施形態においては、潤滑油供給口25dを偏心部25a、25bに設けた例を示したが、これに限ることなく、モータ側回転部材25の任意の位置に設けることができる。ただし、転がり軸受41に安定して潤滑油を供給する観点からは、潤滑油供給口25dは偏心部25a、25bに設けるのが望ましい。
【0069】
また、上記の実施形態においては、減速部Bの曲線板26a、26bを180°位相を変えて2枚設けたが、この曲線板の枚数は任意に設定することができ、例えば、曲線板を3枚設ける場合は、120°位相を変えて設けるとよい。
【0070】
また、上記の実施形態における運動変換機構は、車輪側回転部材28に固定された内ピン31と、曲線板26a、26bに設けられた貫通孔30aとで構成される例を示したが、これに限ることなく、減速部Bの回転を車輪ハブ32に伝達可能な任意の構成とすることができる。例えば、曲線板に固定された内ピンと、車輪側回転部材に形成された穴とで構成される運動変換機構であってもよい。
【0071】
なお、上記の実施形態における作動の説明は、各部材の回転に着目して行ったが、実際にはトルクを含む動力がモータ部Aから駆動輪に伝達される。したがって、上述のように減速された動力は高トルクに変換されたものとなっている。
【0072】
また、上記の実施形態における作動の説明では、モータ部Aに電力を供給してモータ部Aを駆動させ、モータ部Aからの動力を駆動輪14に伝達させたが、これとは逆に、車両が減速したり坂を下ったりするようなときは、駆動輪14側からの動力を減速部Bで高回転低トルクの回転に変換してモータ部Aに伝達し、モータ部Aで発電しても良い。さらに、ここで発電した電力は、バッテリーに蓄電しておき、後でモータ部Aを駆動させたり、車両に備えられた他の電動機器等の作動に用いたりしてもよい。
【0073】
また、上記の各実施形態においては、モータ部Aにラジアルギャップモータを採用した例を示したが、これに限ることなく、任意の構成のモータを適用可能である。例えばハウジングに固定されるステータと、ステータの内側に軸方向の隙間を空けて対向する位置に配置されるロータとを備えるアキシアルギャップモータであってもよい。
【0074】
また、上記の各実施形態においては、減速部Bにサイクロイド減速機構を採用したインホイールモータ駆動装置21の例を示したが、これに限ることなく、任意の減速機構を採用することができる。例えば、遊星歯車減速機構や平行軸歯車減速機構等が該当する。また、この発明は、減速機がないインホイールモータユニット(モータダイレクト駆動)においても適用可能である。
【0075】
さらに、
図9に示した電気自動車11は、後輪14を駆動輪とした例を示したが、これに限ることなく、前輪13を駆動輪としてもよく、4輪駆動車であってもよい。なお、本明細書中で「電気自動車」とは、電力から駆動力を得る全ての自動車を含む概念であり、例えば、ハイブリッドカー等をも含むものとして理解すべきである。
【0076】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。