(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
真空チャンバーの内部に設置された試料に蒸着源から所定の蒸着材料を照射し、前記蒸着源によって前記試料に形成された薄膜に電子銃から電子線を発射し、前記薄膜に入射した電子線のうちの該薄膜表面において反射した反射電子から生成される反射電子像回析パターンを蛍光スクリーンに映し出すことで、前記試料に形成された薄膜の結晶構造を観察する反射高速電子回析方法において、
前記真空チャンバーが、その周壁の外側に突出する観察窓を有し、前記観察窓が、真空チャンバーの周壁から外側に延びる筒状の周壁と、前記周壁の基端部に開口する円形の基端開口部と、前記周壁の先端部に開口する円形の先端開口部とから形成され、
前記反射高速電子回析方法が、前記蛍光スクリーンの直前に配置されて前記反射電子を電流増幅するマイクロチャンネルプレートと、前記マイクロチャンネルプレートの直前に位置して該マイクロチャンネルプレートへの蒸着材料の付着を防止する開閉可能な蒸着防止シャッターと、前記蛍光スクリーンの直後に配置されて該蛍光スクリーンから放射される放射線を遮断する放射線遮蔽ガラスとを含み、
前記反射高速電子回析方法では、前記蒸着防止シャッターと前記マイクロチャンネルプレートと前記蛍光スクリーンと前記放射線遮蔽ガラスとがその順で前記観察窓の内部であって該観察窓の基端開口部から先端開口部までの間に収納下に設置され、前記蒸着防止シャッターが前記観察窓の基端開口部の近傍に設置され、前記放射線遮蔽ガラスが前記観察窓の先端開口部に着脱可能に設置され、1〜1000nAの範囲のエミッション電流値の電子線を前記電子銃から前記薄膜に向かって発射し、前記マイクロチャンネルプレートによって電流増幅された前記反射電子を蛍光スクリーンに入射させ、前記反射電子から生成される反射電子像回析パターンを蛍光スクリーンに映し出すことを特徴とする反射高速電子回析方法。
前記反射高速電子回析方法では、前記電子銃から発射される電子線を収束させるための該電子銃に印加されるバイアス電圧を所定の範囲において調整することによって、前記電子銃から発射される電子線のビーム径を調節するとともに、前記蛍光スクリーンに映し出される反射電子像回析パターンの鮮明度を調節する請求項1に記載の反射高速電子回析方法。
前記反射高速電子回析方法では、前記電子銃のフィラメント電圧を0.1〜5Vの範囲において調節し、前記フィラメント電圧を調節することによって前記電子銃から発射される電子線のエミッション電流値を1〜1000nAの範囲において調節する請求項1ないし請求項3いずれかに記載の反射高速電子回析方法。
前記反射高速電子回析方法では、前記蒸着材料が有機物であり、前記蒸着材料が無機物である場合と比較して前記電子銃から発射される電子線のエミッション電流値が小さい請求項1ないし請求項4いずれかに記載の反射高速電子回析方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に開示のエネルギー損失スペクトル計測方法は、マルチチャンネルプレートを設置してはいるが、エミッション電流値がnA(ナノアンペア)のレベルの電子線を電子銃から発射することはないから、nAレベルのきわめて小さいエミッション電流値の電子線を薄膜の表面に照射することはできず、nAレベルのエミッション電流値の電子線を利用して反射電子像回析パターン(RHEEDパターン)を生成することはできない。エネルギー損失スペクトル計測方法は、電子銃に印加するバイアス電圧を調節することはなく、電子銃から発射される電子線のビーム径(収束度)を調節することができないから、最適なビーム径の電子線を薄膜の表面に照射することができず、蛍光スクリーンに映し出される反射電子像回析パターンの鮮明度を調節することができない。
【0006】
エネルギー損失スペクトル計測方法は、蛍光スクリーンに映し出される反射電子像回析パターンの鮮明度を調節することができないから、反射電子像回析パターンが蛍光スクリーンに不鮮明な状態で映し出されてしまう場合がある。また、このエネルギー損失スペクトル計測方法は、試料に形成された薄膜の蒸着材料が有機物である場合、電子銃から薄膜の表面に必要以上に高いエミッション電流値を有する電子線(必要以上に多くの数の電子線)を照射すると、薄膜が破壊されてしまう場合がある。
【0007】
本発明の目的は、nAレベルのきわめて小さいエミッション電流値の電子線を利用して反射電子像回析パターンを生成することができる反射高速電子回析方法を提供することにある。本発明の他の目的は、電子銃から薄膜に発射される電子線のビーム径(収束度)を調節することができ、最適なビーム径の電子線を薄膜表面に照射することで、蛍光スクリーンに鮮明な反射電子像回析パターンを映し出すことができる反射高速電子回析方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、蒸発物が有機物であったとしても、試料に形成された薄膜を破壊することなく、蛍光スクリーンに反射電子像回析パターンを映し出すことができる反射高速電子回析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための本発明の前提は、真空チャンバーの内部に設置された試料に蒸着源から所定の蒸着材料を照射し、蒸着源によって試料に形成された薄膜に電子銃から電子線を発射し、薄膜に入射した電子線のうちの薄膜表面において反射した反射電子から生成される反射電子像回析パターンを蛍光スクリーンに映し出すことで、試料に形成された薄膜の結晶構造を観察する反射高速電子回析方法である。
【0009】
前記前提における本発明の特徴は、
真空チャンバーが、その周壁の外側に突出する観察窓を有し、観察窓が、真空チャンバーの周壁から外側に延びる筒状の周壁と、周壁の基端部に開口する円形の基端開口部と、周壁の先端部に開口する円形の先端開口部とから形成され、反射高速電子回析方法が、蛍光スクリーンの直前に配置されて反射電子を電流増幅するマイクロチャンネルプレート
と、マイクロチャンネルプレートの直前に位置してマイクロチャンネルプレートへの蒸着材料の付着を防止する開閉可能な蒸着防止シャッターと、蛍光スクリーンの直後に配置されて蛍光スクリーンから放射される放射線を遮断する放射線遮蔽ガラスとを含み、反射高速電子回析方法では、
蒸着防止シャッターとマイクロチャンネルプレートと蛍光スクリーンと放射線遮蔽ガラスとがその順で観察窓の内部であって観察窓の基端開口部から先端開口部までの間に収納下に設置され、蒸着防止シャッターが観察窓の基端開口部の近傍に設置され、放射線遮蔽ガラスが観察窓の先端開口部に着脱可能に設置され、1〜1000nAの範囲のエミッション電流値の電子線を電子銃から薄膜に向かって発射し、マイクロチャンネルプレートによって電流増幅された反射電子を蛍光スクリーンに入射させ、反射電子から生成される反射電子像回析パターンを蛍光スクリーンに映し出すことにある。
【0010】
本発明の一例として反射高速電子回析方法では、電子銃から発射される電子線を収束させるための電子銃に印加されるバイアス電圧を所定の範囲において調整することによって、電子銃から発射される電子線のビーム径を調節するとともに、蛍光スクリーンに映し出される反射電子像回析パターンの鮮明度を調節する。
【0011】
本発明の他の一例として反射高速電子回析方法では、バイアス電圧を0.1〜500Vの範囲において調節する。
【0012】
本発明の他の一例として反射高速電子回析方法では、電子銃のフィラメント電圧を0.1〜5Vの範囲において調節し、フィラメント電圧を調節することによって電子銃から発射される電子線のエミッション電流値を
1〜1000nAの範囲において調節する。
【0013】
本発明の他の一例として反射高速電子回析方法では、蒸着材料が有機物であり、蒸着材料が無機物である場合と比較して電子銃から発射される電子線のエミッション電流値が小さい。
【0014】
本発明の他の一例としては、マイクロチャンネルプレートが試料の側に位置する第1マイクロチャンネルプレートと第1マイクロチャンネルプレートの直後に位置する第2マイクロチャンネルプレートとから形成され、反射高速電子回析方法が、第1および第2マイクロチャンネルプレートに所定の電圧を印加し、それらマイクロチャンネルプレートに入射する反射電子を加速する第1電源と、蛍光スクリーンに所定の電圧を印加し、第1電源によって加速されて蛍光スクリーンに入射する反射電子をさらに加速する第2電源とを含む。
【0015】
本発明の他の一例として反射高速電子回析方法では、第1および第2マイクロチャンネルプレートに印加する第1電源の電圧を500V〜2kVの範囲において調節し、蛍光スクリーンに印加する第2電源の電圧を500V〜4kVの範囲において調節する。
【0016】
本発明の他の一例としては、反射高速電子回析方法が蛍光スクリーンに映し出された反射電子像回析パターンを撮影する撮影機器を含み、撮影機器が観察窓の先端部に着脱可能に設置されている。
【0017】
本発明の他の一例としては、反射高速電子回析方法が蛍光スクリーンに映し出された反射電子像回析パターンを撮影する撮影機器を含み、撮影機器が観察窓の先端部に着脱可能に設置されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかる反射高速電子回析方法によれば、エミッション電流値がnA(ナノアンペア)のレベルの電子線を電子銃から薄膜表面に向かって発射することで、nAレベルのきわめて小さいエミッション電流値の電子線において反射電子像回析パターン(RHEEDパターン)を生成することができる。この反射高速電子回析方法は、蛍光スクリーンの直前にマイクロチャンネルプレートを配置し、そのマイクロチャンネルプレートによって電流増幅された反射電子を蛍光スクリーンに入射させ、電流増幅された反射電子から生成された反射電子像回析パターンを蛍光スクリーンに映し出すから、nAレベルのエミッション電流値の電子線を利用するとともに、マイクロチャンネルプレートを利用し、薄膜表面において反射した反射電子の電流値がきわめて小さい場合(反射電子の数がきわめて少ない場合)であっても、鮮明な反射電子像回析パターン(RHEEDパターン)を蛍光スクリーンに映し出すことができる。
【0019】
電子銃から発射される電子線を収束させるための電子銃に印加されるバイアス電圧を所定の範囲において調整することによって、電子銃から発射される電子線のビーム径を調節するとともに、蛍光スクリーンに映し出される反射電子像回析パターンの鮮明度を調節する反射高速電子回析方法は、電子銃に印加するバイアス電圧を所定の範囲において調節することによって、電子銃から薄膜に発射される電子線のビーム径(収束度)を調節することができるから、最適なビーム径の電子線を薄膜表面に照射することができる。反射高速電子回析方法は、最適なビーム径の電子線を薄膜表面に照射しつつ、マイクロチャンネルプレートによって電流増幅された反射電子を蛍光スクリーンに入射させるから、蛍光スクリーンに明るい鮮明な反射電子像回析パターンを映し出すことができる。この反射高速電子回析方法は、バイアス電圧を調整することで蛍光スクリーンに映し出される反射電子像回析パターンの鮮明度を調節することができるとともに、明るい鮮明な反射電子像回析パターンを蛍光スクリーンに映し出すことができるから、試料に形成された薄膜の結晶構造を高い精度で観察かつ分析することができる。
【0020】
バイアス電圧を0.1〜500Vの範囲において調節する反射高速電子回析方法は、バイアス電圧を前記範囲において調整することで、電子銃から薄膜表面に発射される電子線のビーム径(収束度)を調節することができ、最適なビーム径の電子線を薄膜表面に照射することができる。反射高速電子回析方法は、最適なビーム径の電子線を薄膜表面に照射しつつ、マイクロチャンネルプレートによって電流増幅された反射電子を蛍光スクリーンに入射させるから、蛍光スクリーンに明るい鮮明な反射電子像回析パターンを映し出すことができる。この反射高速電子回析方法は、バイアス電圧を調整することによって蛍光スクリーンに映し出される反射電子像回析パターンの鮮明度を調節することができるとともに、明るい鮮明な反射電子像回析パターンを蛍光スクリーンに映し出すことができるから、試料に形成された薄膜の結晶構造を高い精度で観察かつ分析することができる。
【0021】
電子銃のフィラメント電圧を0.1〜5Vの範囲において調節し、フィラメント電圧を調節することによって電子銃から発射される電子線のエミッション電流値をnAのレベルにおいて調節する反射高速電子回析方法は、電子銃のフィラメント電圧を前記範囲において調節することで、エミッション電流値がnA(ナノアンペア)のレベルの電子線を電子銃から薄膜表面に向かって発射することができ、nAレベルのきわめて小さいエミッション電流値の電子線において反射電子像回析パターン(RHEEDパターン)を生成することができる。反射高速電子回析方法は、蛍光スクリーンの直前にマイクロチャンネルプレートが設置され、そのマイクロチャンネルプレートによって電流増幅された反射電子を蛍光スクリーンに入射させ、電流増幅された反射電子から反射電子像回析パターンを生成するから、nAレベルのエミッション電流値の電子線を利用するとともに、薄膜表面において反射した反射電子の電流値がきわめて小さい場合(反射電子の数がきわめて少ない場合)であっても、鮮明な反射電子像回析パターン(RHEEDパターン)を蛍光スクリーンに映し出すことができる。この反射高速電子回析方法は、電子銃のフィラメントに低いフィラメント電圧を印加するにもかかわらず、蛍光スクリーンに明るい鮮明な反射電子像回析パターンを映し出すことができ、試料に形成された薄膜の結晶構造を高い精度で観察かつ分析することができる。
【0022】
蒸着材料が有機物であり、蒸着材料が無機物である場合と比較して電子銃から発射される電子線のエミッション電流値が小さい反射高速電子回析方法は、マイクロチャンネルプレートによって反射電子を電流増幅するとともに、電子銃のバイアス電圧を調節することで電子銃から薄膜に発射される電子線のビーム径(収束度)を最適に保持するから、電子銃から発射される電子線のエミッション電流値を大幅に小さくしたとしても、明るい鮮明な反射電子像回析パターンを蛍光スクリーンに映し出すことができる。反射高速電子回析方法は、電子銃から発射される電子線のエミッション電流値を小さくすることができるにもかかわらず、蛍光スクリーンに明るい鮮明な反射電子像回析パターンを映し出すことができ、試料に形成された有機物の薄膜の結晶構造を高い精度で観察かつ分析することができる。この反射高速電子回析方法は、電子銃から薄膜表面に低いエミッション電流値の電子線(少ない数の電子線)を発射するから、必要以上に高いエミッション電流値の電子線が薄膜表面に入射することはなく、蒸着材料が有機物であったとしても、試料に形成された有機物の薄膜の結晶構造に悪影響を与えることなく、電子線による薄膜の破壊を防ぐことができる。
【0023】
反射高速電子回析方法は、
電子銃から発射される電子線の電流値が1〜1000nAの範囲にあり、マイクロチャンネルプレートによって反射電子を電流増幅するとともに、電子銃のバイアス電圧を調節することで電子銃から薄膜表面に発射される電子線の収束度を最適に保持するから、電子銃から発射される電子線のエミッション電流値(電子線の数)を前記範囲のように大幅に小さくしたとしても、明るい鮮明な反射電子像回析パターンを蛍光スクリーンに映し出すことができる。反射高速電子回析方法は、電子銃から発射される電子線のエミッション電流値が小さいにもかかわらず、蛍光スクリーンに明るい鮮明な反射電子像回析パターンを映し出すことができ、試料に形成された薄膜の結晶構造を高い精度で観察かつ分析することができる。この反射高速電子回析方法は、電子銃から薄膜表面に低いエミッション電流値の電子線(少ない数の電子線)を発射するから、必要以上に高いエミッション電流値の電子線が薄膜表面に入射することはなく、蒸発物が有機物であったとしても、試料に形成された有機物の薄膜の結晶構造に悪影響を与えることなく、電子線による薄膜の破壊を防ぐことができる。
【0024】
マイクロチャンネルプレートが第1および第2マイクロチャンネルプレートから形成され、第1および第2マイクロチャンネルプレートに所定の電圧を印加してそれらマイクロチャンネルプレートに入射する反射電子を加速する第1電源と、蛍光スクリーンに所定の電圧を印加して蛍光スクリーンに入射する反射電子を加速する第2電源とを含む反射高速電子回析方法は、第1および第2電源によって反射電子を加速し、加速した状態の反射電子をマイクロチャンネルプレートによって電流増幅するとともに、さらに加速した状態の反射電子を蛍光スクリーンに入射させるから、蛍光スクリーンに明るい鮮明な反射電子像回析パターンを映し出すことができ、試料に形成された薄膜の結晶構造を高い精度で観察かつ分析することができる。
【0025】
第1および第2マイクロチャンネルプレートに印加する第1電源の電圧を500V〜2kVの範囲において調節し、蛍光スクリーンに印加する第2電源の電圧を500V〜4kVの範囲において調節する反射高速電子回析方法は、第1電源から第1および第2マイクロチャンネルプレートに前記範囲の電圧を印加するとともに、第2電源から蛍光スクリーンに前記範囲の電圧を印加することで、反射電子を確実に加速し、加速した状態の反射電子をマイクロチャンネルプレートによって電流増幅するとともに、さらに加速した状態の反射電子を蛍光スクリーンに入射させるから、蛍光スクリーンに明るい鮮明な反射電子像回析パターンを映し出すことができ、試料に形成された薄膜の結晶構造を高い精度で観察かつ分析することができる。
【0026】
反射高速電子回析方法は、
真空チャンバーの周壁からチャンバーの外側に突出した観察窓が形成され、蛍光スクリーンとマイクロチャンネルプレートとが観察窓の内部に収納下に設置され、チャンバーの周壁から外側に突出する観察窓が障壁となることで、蒸着源から発生する蒸着材料のマイクロチャンネルプレートへの進入を防ぐことができるから、蒸着材料のマイクロチャンネルプレートへの不必要な付着を防ぐことができ、蒸着材料がマイクロチャンネルプレートに付着することによるプレートの機能低下を防ぐことができる。反射高速電子回析方法は、マイクロチャンネルプレートの機能が低下することはなく、マイクロチャンネルプレートにおいて反射電子を確実に電流増幅し、電流増幅した反射電子から反射電子像回析パターンが生成されるから、反射電子のエミッション電流値が小さい場合(反射電子の数が少ない場合)であっても、明るい鮮明な反射電子像回析パターンを蛍光スクリーンに映し出すことができる。この反射高速電子回析方法は、マイクロチャンネルプレートに蒸着材料が付着することがないから、薄膜結晶の蒸着過程(結晶薄膜の成長過程)の反射電子像回析パターンを蛍光スクリーンに映し出すことができ、試料における薄膜結晶の蒸着過程を観察かつ分析することができる。
【0027】
反射高速電子回析方法は、
マイクロチャンネルプレートの直前に位置してマイクロチャンネルプレートへの蒸着材料の付着を防止する開閉可能な蒸着防止シャッターを含み、蒸着防止シャッターが観察窓の内部に収納下に設置されており、蒸着材料の試料への蒸着中に蒸着防止シャッターを閉めることで、マイクロチャンネルプレートへの蒸着材料の付着を防止することができるから、蒸着源から発生する蒸着材料のマイクロチャンネルプレートへの不必要な付着を防ぐことができ、蒸着材料がマイクロチャンネルプレートに付着することによるプレートの機能低下を防ぐことができる。反射高速電子回析方法は、マイクロチャンネルプレートの機能が低下することはなく、マイクロチャンネルプレートにおいて反射電子を確実に電流増幅し、電流増幅した反射電子から反射電子像回析パターンが生成されるから、反射電子のエミッション電流値が小さい場合(反射電子の数が少ない場合)であっても、明るい鮮明な反射電子像回析パターンを蛍光スクリーンに映し出すことができる。
【0028】
反射高速電子回析方法は、
蛍光スクリーンから放射される放射線を遮断する放射線遮蔽ガラスを含み、放射線遮蔽ガラスが観察窓の先端部に着脱可能に設置されており、蛍光スクリーンから有害な放射線が放射されたとしても、その放射線が放射線遮蔽ガラスによって遮蔽されるから、蛍光スクリーンに映し出された反射電子像回析パターンを観察者が観察窓から直接観察したとしても、観察者が放射線に曝露されることはなく、放射線による観察者への悪影響を防ぐことができる。
【0029】
蛍光スクリーンに映し出された反射電子像反射電子像回析パターンを撮影する撮影機器を含み、撮影機器が観察窓の先端部に着脱可能に設置されている反射高速電子回析方法は、撮影機器を介して試料の表面に蒸着された薄膜結晶構造を観察することができ、観察者が観察窓を直視する必要はなく、試料に蒸着された薄膜結晶構造や試料における薄膜結晶の蒸着過程(結晶薄膜の成長過程)を他の場所において観察かつ分析することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
一例として示す反射高速電子回析装置10の概略構成図である
図1等の添付の図面を参照し、本発明にかかる反射高速電子回析方法の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、
図2は、観察窓22にCCDカメラ32を取り付けた状態で示す反射高速電子回析装置10の概略構成図であり、
図3は、電子銃15の稼動状態の一例を示す図である。
図4は、電子銃15の稼動状態の他の一例を示す図であり、
図5は、拡大して示す観察窓22の概略斜視図である。
図6は、マイクロチャンネルプレート17a,17bや蛍光スクリーン18の拡大概略図である。
図1,2では、試料11の表面12に形成された薄膜の図示を省略している。
図3,4では、電子銃15から電子線28が発射されている状態で示す。
【0032】
反射高速電子回析方法は、薄膜の表面において反射した反射電子から生成される反射電子像回析パターン(RHEEDパターン)により、試料11の表面12に形成された有機物(蒸着材料)の薄膜の結晶構造を観察かつ分析するとともに、試料11の表面12に形成される有機物の薄膜結晶の蒸着過程(成長過程)を観察かつ分析する。
【0033】
反射高速電子回析方法は、反射高速電子回析装置10を使用して後記する各工程を実施することにより、薄膜の反射電子像回析パターンを取得する。反射高速電子回析装置10は、真空チャンバー13、蒸着源14a〜14c、電子銃15、蒸着防止シャッター16、第1および第2マイクロチャンネルプレート17a,17b、蛍光スクリーン18、放射線遮蔽ガラス19から形成されている。なお、有機物には、クォテリレンやペンタセン、テリレン、フタロシアニン等があるが、試料11に蒸着可能な有機物であれば、その種類に特に限定はない。
【0034】
反射高速電子回析方法は、真空チャンバー13に設置された試料11に蒸着源14a〜14cから所定の有機物を照射する蒸着材料照射工程を実施し、試料11の表面12に有機物から作られた薄膜を形成する薄膜形成工程を実施する。反射高速電子回析方法は、電子銃15から発射される電子線28を収束させるためのバイアス電圧を電子銃15に印可するバイアス電圧印可工程を実施し、バイアス電圧を調節することによって、電子線28のビーム径(収束度)を調節するビーム径調節工程を実施する。反射高速電子回析方法は、バイアス電圧を調整することによって、蛍光スクリーン18に映し出される反射電子像回析パターンの鮮明度を調節する鮮明度調節工程を実施する。
【0035】
反射高速電子回析方法は、電子銃15のフィラメント電圧を調節することによって、電子銃15から発射される電子線28のエミッション電流値をnA(ナノアンペア)のレベル(1nA〜1000nA)に設定するエミッション電流値調節工程を実施する。反射高速電子回析方法は、nA(ナノアンペア)のレベルに調節された電子線28を電子銃15から試料11の表面12に形成された薄膜に発射する電子線発射工程を実施する。反射高速電子回析方法は、マイクロチャンネルプレート17a,17bに所定の電圧を印加してプレート17a,17bに入射する反射電子を加速する反射電子第1加速工程を実施し、蛍光スクリーン18に所定の電圧を印加してスクリーン18に入射する反射電子を加速する反射電子第2加速工程を実施する。
【0036】
反射高速電子回析方法は、薄膜に入射した電子線28のうちの薄膜表面において反射した反射電子をマイクロチャンネルプレート17a,17bによって電流増幅する反射電子増幅工程を実施し、チャンネルプレート17a,17bによって電流増幅された反射電子を蛍光スクリーン18に入射させる反射電子入射工程を実施する。反射高速電子回析方法は、反射電子から生成される反射電子像回析パターンを蛍光スクリーン18に映し出すパターン投影工程を実施する。
【0037】
真空チャンバー13は、所定の容積の内部空間20を有し、真空を利用して内部空間20に位置する試料11(基板)の表面12に有機物を蒸着させ、試料11に有機物から作られた薄膜を形成する。真空チャンバー13は、ステンレスから作られているが、ステンレスの他に、アルミやジュラルミンのうちのいずれかから作られていてもよい。真空チャンバー13には、X−Y−Zステージ21と真空計(図示せず)とが設置されている。
【0038】
X−Y−Zステージ21の先端部には、治具(図示せず)が取り付けられ、その治具に試料11が着脱可能に保持される。X−Y−Zステージ21は、その先端部の治具に保持された試料11をX軸、Y軸、Z軸に移動させることができ、チャンバー13の内部空間20における試料11の姿勢を3次元に動作させ、試料11の姿勢を調節する。なお、
図1,2では、X−Y−Zステージ21の治具に保持された試料11を1つだけ図示しているが、複数のX−Y−Zステージ21が存在し、それらステージ21に保持された複数の試料11が存在する場合がある。
【0039】
真空チャンバー13の周壁には、チャンバー13の外側に突出する観察窓22が形成されている。なお、図示はしていないが、真空チャンバー13の内部空間20を視認して試料11の姿勢を観察することができる少なくとも1つの観察窓がチャンバー13の周壁に形成されている。観察窓22は、
図6に示すように、真空チャンバー13の周壁から外側に延びる筒状の周壁(図示せず)と、周壁の基端部に開口する円形の基端開口部23と、周壁の先端部に開口する円形の先端開口部24とから形成されている。
【0040】
観察窓22の内部(観察窓22の基端開口部23から先端開口部24までの間)には、蒸着防止シャッター16、マイクロチャンネルプレート17a,17b、蛍光スクリーン18、放射線遮蔽ガラス19が設置されている。観察窓22の内部では、基端開口部23から先端開口部24に向かって蒸着防止シャッター16、マイクロチャンネルプレート17a,17b、蛍光スクリーン18、放射線遮蔽ガラス19の順に並んでいる。
【0041】
真空チャンバー13には、図示はしていないが、真空排気ユニットが着脱可能に接続されている。真空排気ユニットは、ターボ分子ポンプ(主真空ポンプ)と、ターボ分子ポンプの下流側に配置された粗引きポンプ(補助真空ポンプ)と、制御装置とから形成されている。真空排気ユニットは、第1排気管を介して真空チャンバー13に着脱可能に連結される。真空チャンバー13に設置された真空計は、インターフェイスを介して制御装置に接続されている。真空計は、真空チャンバー13の内部空間20の真空度を計測し、計測した真空度を制御装置に出力する。
【0042】
ターボ分子ポンプは、第1排気管を介して真空チャンバー13に接続されている。ターボ分子ポンプは、タービン翼を有するロータを高速で回転させることで、気体分子を圧縮して排気する。ターボ分子ポンプは、真空チャンバー13の内部空間20の真空引きに使用される。ターボ分子ポンプは、インターフェイスを介して制御装置に接続されている。粗引きポンプは、第2排気管を介してターボ分子ポンプに接続されている。粗引きポンプは、ターボ分子ポンプが大気圧まで圧縮できない点をカバーし、第2排気管の排気圧を所定圧に保持する。粗引きポンプには、ロータリーポンプ、高真空ダイヤフラムポンプ、ドライ真空ポンプ等を使用することができる。粗引きポンプは、インターフェイスを介して制御装置に接続されている。
【0043】
制御装置は、ターボ分子ポンプや粗引きポンプを起動させ、真空チャンバー13の内部空間20をあらかじめ設定された真空度(真空チャンバー13を使用する場合のあらかじめ設定された真空度)(たとえば、1×10
−7〜1×10
−13Paの超真空)に減圧する。制御装置は、真空計から出力された真空度を参照しつつ、真空チャンバー13の内部空間20の真空度を設定真空度に保持するように、それらポンプの出力を調節する。
【0044】
蒸着源14a〜14cは、複数個のそれら(第1蒸着源14a〜第3蒸着源14c)が真空チャンバー13に設置されている。第1蒸着源14a〜第3蒸着源14cは、電源から供給される電力によって有機物を溶融する。それら蒸着源14a〜14cでは、異なる種類の有機物が溶融される。それら蒸発源14a〜14cでは、溶融した有機物を吐出する吐出口25が試料11に向かっている。第1蒸着源14a〜第3蒸着源14cの吐出口25には、シャッター(図示せず)が取り付けられており、有機物が十分に溶融した後、シャッターが開かれる。それら蒸着源14a〜14cでは、試料11との位置関係、吐出圧力、供給電力、蒸着時間があらかじめ設定されている。蒸着源14a〜14cは、有機物(蒸着材料)を蒸発させ、試料11の表面12に有機物から作られる薄膜(被膜)を蒸着(成膜)する。
【0045】
それら蒸着源14a〜14cには、電気抵抗体を利用して有機物を蒸発させる抵抗加熱蒸着源やKセルを使用することができる。なお、
図1では3個の第1〜第3蒸着源14a〜14cを図示しているが、蒸着源は3個に限定されず、真空チャンバー13に1個、2個、または、4個以上の蒸着源が設置されていてもよい。
【0046】
電子銃15(RHEED用電子銃)は、真空チャンバー13の内部空間20が設定真空度に保持された状態において加速かつ収束した電子線28を試料11に形成された薄膜の表面に向かって発射する。電子銃15は、インターフェイスを介してコントローラ26に接続されている。電子銃15には、電源(図示せず)が接続されている。反射高速電子回析装置10では、電子銃15の試料11に対する角度をコントローラ26によって変えることができ、試料11に対する電子線28の入射角度を0.1〜5°の範囲で調節することができる。
【0047】
反射高速電子回析装置10では、コントローラ26によって電子銃15の加速電圧をDC10kV〜50kVの範囲において調節することができ、コントローラ26によって電子銃15のフィラメント電圧をDC0.1V〜5Vの範囲において調節することができる。なお、電子銃15の稼働時における実際のフィラメント電圧はDC2V以下が好ましく、フィラメント電流は2A以下が好ましい。フィラメント27は、φ0.1のタングステンが使用されている。電子銃15は、そのビームスポットがφ90μm〜φ100μmの範囲にあり、そのビーム平行度がφ90μm/m〜φ100μm/mの範囲にある。
【0048】
電子銃15には、それから発射される電子線28を収束させるためのバイアス電圧(V)が印加される。反射高速電子回析装置10では、電子銃15に印加されるバイアス電圧をコントローラ26によって調節することができる。バイアス電圧は、
図3,4に示すように、電子銃15のフィラメント27とウェーネルト34との間に印加され、フィラメント27から飛び出す電子線28を所定のビーム径に収束させ、所定のビーム径に収束した電子線28を試料11の表面12に形成された薄膜に向かって発射させる。
【0049】
バイアス電圧は、DC0.1V〜500Vの範囲において調節することができる。反射高速電子回析装置10では、バイアス電圧を前記範囲において調節することで、電子銃15から発射される電子線のビーム径(収束度)を調節可能、かつ、蛍光スクリーンに映し出される反射電子像回析パターンの鮮明度を調節可能である。
【0050】
電子銃15においてバイアス電圧を調節できない場合、
図3に示すように、フィラメント27から発射された電子線28を収束させることができず、収束した電子線28を試料11の表面12に形成された薄膜に入射させることができない場合がある。また、バイアス電圧の電圧値によっては電子線28が拡散し、電子線28を最適なビーム径(収束度)に収束させることができず、最適なビーム径の電子線28を試料11の表面12に形成された薄膜に入射させることができない場合がある。
【0051】
反射高速電子回析方法は、電子銃15のバイアス電圧を前記範囲において調節することができ、バイアス電圧を前記範囲において調節することにより、
図5に示すように、電子銃15のクロスオーバーポイント35におけるレンズ効果によって電子銃15から発射される電子線28を所定のビーム径に収束させることができる。反射高速電子回析方法は、電子銃15のフィラメント27から最適なビーム径に収束した電子線28を発射することができ、最適に収束した電子線28を試料11の表面12に形成された薄膜に入射させることができる。反射高速電子回析方法は、電子銃15のバイアス電圧を調節することにより、薄膜に入射する電子線28のビーム径を調節することができるから、薄膜に入射する電子線28のビーム径を最適に保持することができる。
【0052】
この反射高速電子回析方法は、有機物の種類によって薄膜に発射する電子線28の最適な電流値が異なったとしても、バイアス電圧を調節することにより、電子銃15から発射される電子線28の電流値を前記範囲において調節することができるから、有機物の種類に応じて電子線28の電流値を任意に変更することができ、電子線28の電流値を有機物の種類に対応した最適なそれにすることができる。また、反射高速電子回析方法は、有機物の種類によって薄膜に発射する電子線28の最適な収束度が異なったとしても、バイアス電圧を調節することにより、電子銃15から発射される電子線28の収束度を調節することができるから、有機物の種類に応じて電子線28の収束度を任意に変更することができ、電子線28の収束度を有機物の種類に対応した最適なそれにすることができる。
【0053】
反射高速電子回析方法では、フィラメント電圧をDC0.1〜5Vの範囲において調節することによって、電子銃15から発射される電子線のエミッション電流値をnAのレベルにおいて調節することができる。具体的には、フィラメント電圧を調節することによって、電子銃15から発射される電子線27のエミッション電流値を1nA〜1000nAの範囲にすることができる。反射高速電子回析方法は、蒸着材料が無機物である場合と比較し、電子銃15から発射される電子線28のエミッション電流値がnA(ナノアンペア)ときわめて小さい。
【0054】
反射高速電子回析方法は、有機物の種類によって薄膜に発射する電子線28の最適なエミッション電流値が異なったとしても、フィラメント電圧を調節することにより、電子銃15から発射される電子線28のエミッション電流値を前記範囲において調節することができるから、有機物の種類に応じて電子線28のエミッション電流値を任意に変更することができ、電子線28のエミッション電流値を有機物の種類に対応した最適なそれにすることができる。また、反射高速電子回析方法は、有機物の種類によって薄膜に発射する電子線28の最適なビーム径(収束度)が異なったとしても、バイアス電圧を調節することにより、電子銃15から発射される電子線28のビーム径を調節することができるから、有機物の種類に応じて電子線28のビーム径を任意に変更することができ、電子線28のビーム径を有機物の種類に対応した最適なそれにすることができる。
【0055】
蒸着防止シャッター16は、マイクロチャンネルプレート17a,17bの直前であって観察窓22の基端開口部23の近傍に配置され、観察窓22の内部に収納下に設置されている。蒸着防止シャッター16は、観察窓22に着脱可能に取り付けられる。蒸着防止シャッター16は、マイクロチャンネルプレート17a,17bへの有機物の付着を防止する。蒸着防止シャッター16は、円形の金属板から作られている。蒸着防止シャッター16の周縁部には、長手方向へ延びる旋回軸(図示せず)が取り付けられている。蒸着防止シャッター16は、旋回軸を中心として観察窓22の周り方向へ旋回可能であり、その旋回によって観察窓22の基端開口部23を開閉する。
【0056】
マイクロチャンネルプレート17a,17bは、蒸着防止シャッター16の直後であって蛍光スクリーン18の直前(蒸着防止シャッター16と蛍光スクリーン18との間)に配置され、観察窓22の内部に収納下に設置されている。マイクロチャンネルプレート17a,17bは、
図7に示すように、蒸着防止シャッター16(試料)の側に位置する第1マイクロチャンネルプレート17aと、第1マイクロチャンネルプレート17aの直後に位置する第2マイクロチャンネルプレート17bとから形成されている。第1および第2マイクロチャンネルプレート17a,17bは、観察窓に着脱可能に取り付けられる。
【0057】
第1および第2マイクロチャンネルプレート17a,17bは、直径約10〜12μmの複数の電子倍増管を外径約2インチの円板状に配列したものであり、反射電子を2次元的に電流増幅する(増幅率:10〜10
4)。第1および第2マイクロチャンネルプレート17a,17bは、インターフェイスを介してコントローラ29に接続されている。第1および第2マイクロチャンネルプレート17a,17bには、それらプレート17a,17bに所定の電圧を印可し、それによってそれらプレート17a,17bに入射する反射電子を加速する第1電源30が接続されている。反射高速電子回析装置10では、第1電源からそれらマイクロチャンネルプレート17a,17bに印加する電圧をコントローラ29によって調節することができる。プレート17a,17bに印加する電圧は、DC500V〜2kVの範囲において調節可能である。
【0058】
第1および第2マイクロチャンネルプレート17a,17bは、入力側および出力側の電極に第1電源30から所定の電圧を印可すると、チャンネル方向に電位勾配が発生し、その状態において入射した反射電子が入力側の電子倍増管の内壁に当たると、アバランシェ効果によって複数の二次電子が放出される。それら二次電子は電位勾配によって加速され、初速度によって決まる放射線軌道を画き、反対側に内壁に衝突して再びアバランシェ効果によって二次電子を放出する。このようにして電子がチャンネルの内壁に複数回衝突しつつ出力側へ進み、その結果、指数関数的に倍増された反射電子が出力側から出射する。
【0059】
蛍光スクリーン18は、第2マイクロチャンネルプレート17bの直後であって放射線遮蔽ガラス19の直前(プレート17bと放射線遮蔽ガラス19との間)に配置され、観察窓22の内部に収納下に設置されている。蛍光スクリーン18は、円形のガラスに蛍光塗料が塗布されたものであり、観察窓22に着脱可能に取り付けられる。蛍光スクリーン18は、インターフェイスを介してコントローラ29に接続されている。
【0060】
蛍光スクリーン18には、それに所定の電圧を印可し、第1電源30によって加速されてスクリーン18に入射する反射電子をさらに加速する第2電源31が接続されている。反射高速電子回析装置10では、第2電源から蛍光スクリーン18に印加する電圧をコントローラ29によって調節することができる。第2電源から蛍光スクリーン18に印加する電圧は、DC500V〜4kVの範囲において調節可能である。放射線遮蔽ガラス19は、蛍光スクリーン18の直後に配置され、観察窓22の先端開口部24に着脱可能に設置されている。放射線遮蔽ガラス19は、鉛ガラスであり、蛍光スクリーン18から放射線(X線)が放射された場合、その放射線を遮断する。
【0061】
図2に示す反射高速電子回析装置10は、
図1に示すそれの構成に加え、観察窓22の先端部(放射線遮蔽ガラス19の外側)にCCDカメラ32(撮影機器)が取り付けられ、そのCCDカメラ32がディスプレイ33を備えたコンピュータ34に接続されている。
図2の反射高速電子回析装置10は、蛍光スクリーン18に映し出された反射電子像回析パターンがCCDカメラ32によって撮影され、その画像がコンピュータ34に入力される。コンピュータ34では、CCDカメラ32から送信された画像(反射電子像回析パターン)をメモリに格納するとともに、その画像をディスプレイ33に表示する。
【0062】
反射高速電子回析方法は、真空チャンバー13の周壁からチャンバー13の外側に突出した観察窓22が形成され、第1および第2マイクロチャンネルプレート17a,17bが観察窓22の内部に収納下に設置されているから、チャンバー13の周壁から外側に突出する観察窓22が障壁となるから、それら蒸着源14a〜14cから発生する有機物のそれらマイクロチャンネルプレート17a,17bへの進入を防ぐことができる。反射高速電子回析方法は、蒸着源14a〜14cから発生する有機物のマイクロチャンネルプレート17a,17bへの不必要な付着を防ぐことができ、有機物がマイクロチャンネルプレート17a,17bに付着することによるプレート17a,17bの機能低下を防ぐことができる。
【0063】
また、反射高速電子回析方法は、第1および第2マイクロチャンネルプレート17a,17bへの有機物の付着を防止する開閉可能な蒸着防止シャッター16が観察窓22に設置され、有機物の試料11への蒸着中に蒸着防止シャッター16を閉めることで、それらマイクロチャンネルプレート17a,17bへの有機物の付着を防止することができるから、それら蒸着源14a〜14cから発生する有機物のマイクロチャンネルプレート17a,17bへの不必要な付着を防ぐことができ、有機物がマイクロチャンネルプレート17a,17bに付着することによるプレート17a,17bの機能低下を防ぐことができる。この反射高速電子回析方法は、マイクロチャンネルプレート17a,17bの機能が低下することはなく、プレート17a,17bにおいて反射電子を確実に電流増幅することができる。
【0064】
反射高速電子回析方法は、放射線を遮断する放射線遮蔽ガラス19が観察窓22に設置され、蛍光スクリーン18から有害な放射線が放射されたとしても、その放射線が放射線遮蔽ガラス19によって遮蔽されるから、蛍光スクリーン18に映し出された反射電子像回析パターンを観察者が観察窓22から直接観察したとしても、観察者が放射線に曝露されることはなく、放射線による観察者への悪影響を防ぐことができる。反射高速電子回析方法は、蛍光スクリーン18に映し出された反射電子像反射電子像回析パターンを撮影するCCDカメラ32が観察窓22に設置され、CCDカメラ32を介して試料11の表面12に形成された薄膜の結晶構造を観察することができるから、観察者が観察窓22を直視する必要はなく、試料11に形成された薄膜の結晶構造や試料における薄膜の蒸着過程(薄膜結晶の成長過程)を装置10を設置した場所とは異なる場所(研究室や教室等)において観察することができる。
【0065】
図1,2に示す反射高速電子回析装置10を使用した反射高速電子回析方法の実施手順(薄膜結晶構造の観察手順)の一例を説明すると、以下のとおりである。X−Y−Zステージ21の先端部に取り付けられた治具に試料11を保持させ、ステージ21によって試料11の姿勢を調節した後、真空排気ユニットおよび第1〜第3蒸着源14a〜14cを起動させる。制御装置は、ターボ分子ポンプと粗引きポンプとを稼動させ、それらポンプによって真空チャンバー13の内部空間20を設定真空度(設定真空圧)にする。制御装置は、真空計から出力された真空度と設定真空度とを比較しつつ、フィードバック制御を行って真空チャンバー13の内部空間20の真空度を設定真空度に保持する。
【0066】
真空チャンバー13の内部空間20が設定真空度になった後、起動した第1蒸着源14aにおいて第1有機物(たとえば、クォテリレン、ペンタセン、テリレン、フタロシアニン等のうちの1種類)の溶融が完了すると、第1蒸着源14aの吐出口25のシャッターが開かれ、第1蒸着源14aから蒸発した第1有機物が試料11(基板)に向かって照射される(蒸着材料照射工程)。第1蒸着源14aにおいて第1有機物の蒸着時間(設定時間)が経過すると、第1蒸着源14aのシャッターが閉じられる。試料11の表面12には、第1蒸着源14aから照射された第1有機物が蒸着し、第1有機物による所定厚みの第1薄膜が形成される(薄膜形成工程)。
【0067】
第1薄膜の蒸着過程において、第1薄膜が形成されるまでの間(蒸着時間が終了するまでの間)、蒸着防止シャッター16が閉じられる場合がある。この場合は、第1薄膜が完成した後、蒸着防止シャッター16が開けられ、完成した第1薄膜の薄膜結晶構造を反射高速電子回析装置10によって観察かつ分析する。また、第1薄膜の蒸着過程において、第1薄膜が形成されるまでの間、蒸着防止シャッター16が開かれている場合がある。この場合は、第1薄膜が完成するまでの間、蒸着防止シャッター16が開けられ、第1薄膜の蒸着過程(薄膜成長過程)における薄膜結晶構造を反射高速電子回析装置10によって観察かつ分析する。
【0068】
完成した第1薄膜の薄膜結晶構造を観察かつ分析する場合、または、第1薄膜の成長過程において薄膜結晶構造を観察かつ分析する場合、電子銃15が起動し、電子銃15から試料11の表面12(第1薄膜の表面)に向かって電子線28が発射される。反射高速電子回析方法では、電子銃15の電子線28の入射角度が調整されて試料11に対する電子線28の入射角度が略1°〜略2°に保持される。
【0069】
反射高速電子回析方法では、電子銃15のフィラメント電圧がDC0.1〜5V以下(好ましくは、フィラメント電圧2V以下、フィラメント電流2A以下)に調節され、フィラメント電圧を調節することによって、電子線28のエミッション電流値がnA(ナノアンペア)のレベル(1nA〜1000nA)に設定(調節)される(エミッション電流値調節工程)。
【0070】
反射高速電子回析方法では、電子銃15のフィラメント27とウェーネルト34との間にバイアス電圧が印加されており(バイアス電圧印可工程)、そのバイアス電圧がDC0.1V〜500Vの範囲において調節される。反射高速電子回析方法では、バイアス電圧を調節することによって、電子線28のビーム径(収束度)が最適なそれに設定(調節)される(ビーム径調節工程)。また、電子銃15の加速電圧がDC10kV〜50kVの範囲(好ましくは、DC30kV)において調節される。なお、X−Y−Zステージ21によって試料11の姿勢を調整することができる。
【0071】
電子銃15のフィラメント電圧やバイアス電圧を前記範囲において調節しつつ、電子線28を収束させて最適なビーム径を有する電流値10nA〜1000nAの電子線28を第1薄膜の表面に発射する(電子線発射工程)。第1薄膜の表面に入射した電子線28は、第1薄膜の表面において反射し、反射電子として第1および第2マイクロチャンネルプレート17a,17bに向かう。電子は波動性があり、電子線28が結晶表面に入射すると、結晶表面近傍の電子に束縛された電子との相互作用によって錯乱される。錯乱された電子は、結晶表面の原子が周期的に配列していることを反映し、結晶表面の電子分布を反映した反射電子像回析パターン(RHEEDパターン)を生成する。
【0072】
第1および第2マイクロチャンネルプレート17a,17bには第1電源30から所定の電圧(DC500V〜2kVの範囲で調節された電圧)が印可されており、それらマイクロチャンネルプレート17a,17bに入射する反射電子が加速されるとともに(反射電子第1加速工程)、それらマイクロチャンネルプレート17a,17bに入射した反射電子がそれらプレート17a,17bによって電流増幅される(反射電子増幅工程)。蛍光スクリーン18には第2電源31から所定の電圧(DC500V〜4kVの範囲で調節された電圧)が印可されており、それらプレート17a,17bによって電流増幅された反射電子がさらに加速され(反射電子第2加速工程)、加速された状態の反射電子が蛍光スクリーン18に入射する(反射電子入射工程)。蛍光スクリーン18には、反射電子が生成した反射電子像回析パターンが映し出される(パターン投影工程)。なお、電子銃15のバイアス電圧を調節することで、蛍光スクリーン18に映し出される反射電子像回析パターンの鮮明度を調節する(鮮明度調節工程)。
【0073】
観察窓22の放射線遮蔽ガラス19の外側から蛍光スクリーン18に映し出された第1薄膜の反射電子像回析パターンを視認することができる他、観察窓22にCCDカメラ32が取り付けられている場合、蛍光スクリーン18に映し出された第1薄膜の反射電子像回析パターンがCCDカメラ32によって撮影され、その画像(反射電子像回析パターン)がコンピュータ34のメモリに格納されるとともに、その画像がディスプレイ33に表示される。
【0074】
第1薄膜の反射電子像回析パターンを観察かつ分析した後、電子銃15の稼動が停止し、第2蒸着源14bのシャッターが開かれ、第2蒸着源14bから蒸発した第2有機物(たとえば、クォテリレン、ペンタセン、テリレン、フタロシアニンのうちの他の1種類)が試料11(基板)に向かって照射される(蒸着材料照射工程)。なお、制御装置によって真空チャンバー13の内部空間20が設定真空度に保持されている。第2蒸着源14bにおいて第2有機物の蒸着時間(設定時間)が経過すると、第2蒸着源14bの吐出口25のシャッターが閉じられる。試料11の表面12(第1薄膜の表面)には、第2蒸着源14bから照射された第2有機物が蒸着し、第2有機物による所定厚みの第2薄膜が第1薄膜の上に形成される(薄膜形成工程)。
【0075】
第2薄膜の蒸着過程において、第2薄膜が形成されるまでの間(蒸着時間が終了するまでの間)、蒸着防止シャッター16が閉じられる場合がある。この場合は、第2薄膜が完成した後、蒸着防止シャッター16が開けられ、完成した第2薄膜の薄膜結晶構造を反射高速電子回析装置10によって観察かつ分析する。また、第2薄膜の蒸着過程において、第2薄膜が形成されるまでの間、蒸着防止シャッター16が開かれている場合がある。この場合は、第2薄膜が完成するまでの間、蒸着防止シャッター16が開けられ、第2薄膜の蒸着過程(薄膜成長過程)における薄膜結晶構造を反射高速電子回析装置10によって観察かつ分析する。
【0076】
完成した第2薄膜の薄膜結晶構造を観察かつ分析する場合、または、第2薄膜の成長過程において薄膜結晶構造を観察かつ分析する場合、電子銃15が再び起動し、電子銃15から試料11の表面12(第2薄膜の表面)に向かって電子線28が発射される。反射高速電子回析方法では、電子銃15の電子線28の入射角度が調整されて試料11に対する電子線28の入射角度が略1°〜略2°に保持される。電子銃15のフィラメント電圧がDC0.1〜5V以下に調節され、フィラメント電圧を調節することによって、電子線28のエミッション電流値がnA(ナノアンペア)のレベル(1nA〜1000nA)に設定(調節)される(エミッション電流値調節工程)。
【0077】
電子銃15のフィラメント27とウェーネルト34との間には、バイアス電圧が印加されている(バイアス電圧印可工程)。バイアス電圧は、DC0.1V〜500Vの範囲において調節される。バイアス電圧を調節することによって、電子線28のビーム径(収束度)が最適なそれに設定(調節)される(ビーム径調節工程)。また、電子銃15の加速電圧がDC10kV〜50kV(好ましくは、DC30kV)の範囲において調節される。
【0078】
電子銃15のフィラメント電圧やバイアス電圧を前記範囲において調節しつつ、電子線28を収束させて最適なビーム径を有する電流値10nA〜1000nAの電子線28を第2薄膜の表面に発射する(電子線発射工程)。第2薄膜の表面に入射した電子線28は、第2薄膜の表面において反射し、反射電子として第1および第2マイクロチャンネルプレート17a,17bに向かう。
【0079】
反射電子は、それらマイクロチャンネルプレート17a,17bに向かって加速されるとともに(反射電子第1加速工程)、それらプレート17a,17bによって電流増幅される(反射電子増幅工程)。それらプレート17a,17bによって電流増幅された反射電子は、蛍光スクリーン18に向かって加速されるとともに(反射電子第2加速工程)、加速された状態の反射電子が蛍光スクリーン18に入射する(反射電子入射工程)。蛍光スクリーン18には、反射電子が生成した反射電子像回析パターンが映し出される(パターン投影工程)。なお、電子銃15のバイアス電圧を調節することで、蛍光スクリーン18に映し出される反射電子像回析パターンの鮮明度を調節する(鮮明度調節工程)。
【0080】
観察窓22の放射線遮蔽ガラス19の外側から蛍光スクリーン18に映し出された第2薄膜の反射電子像回析パターンを視認することができる他、観察窓22にCCDカメラ32が取り付けられている場合、蛍光スクリーン18に映し出された第2薄膜の反射電子像回析パターンがCCDカメラ32によって撮影され、その画像(反射電子像回析パターン)がコンピュータ34のメモリに格納されるとともに、その画像がディスプレイ33に表示される。
【0081】
第2薄膜の反射電子像回析パターンを観察かつ分析した後、電子銃15の稼動が停止し、第3蒸着源14cのシャッターが開かれ、第3蒸着源14cから蒸発した第3有機物(たとえば、クォテリレン、ペンタセン、テリレン、フタロシアニンのうちの他の1種類)が試料11(基板)に向かって照射される(蒸着材料照射工程)。なお、制御装置によって真空チャンバー13の内部空間20が設定真空度に保持されている。第3蒸着源14cにおいて第3有機物の蒸着時間(設定時間)が経過すると、第3蒸着源14cの吐出口25のシャッターが閉じられる。試料11の表面12(第2薄膜の表面)には、第3蒸着源14cから照射された第3有機物が蒸着し、第3有機物による所定厚みの第3薄膜が第2薄膜の上に形成される(薄膜形成工程)。
【0082】
第3薄膜の蒸着過程において、第3薄膜が形成されるまでの間(蒸着時間が終了するまでの間)、蒸着防止シャッター16が閉じられる場合がある。この場合は、第3薄膜が完成した後、蒸着防止シャッター16が開けられ、完成した第3薄膜の薄膜結晶構造を反射高速電子回析装置10によって観察かつ分析する。また、第3薄膜の蒸着過程において、第3薄膜が形成されるまでの間、蒸着防止シャッター16が開かれている場合がある。この場合は、第3薄膜が完成するまでの間、蒸着防止シャッター16が開けられ、第3薄膜の蒸着過程(薄膜成長過程)における薄膜結晶構造を反射高速電子回析装置10によって観察かつ分析する。
【0083】
完成した第3薄膜の薄膜結晶構造を観察かつ分析する場合、または、第3薄膜の成長過程において薄膜結晶構造を観察かつ分析する場合、電子銃15が再び起動し、電子銃15から試料11の表面12(第3薄膜の表面)に向かって電子線28が発射される。反射高速電子回析方法では、電子銃15の電子線28の入射角度が調整されて試料11に対する電子線28の入射角度が略1°〜略2°に保持される。電子銃15のフィラメント電圧がDC0.1〜5V以下に調節され、フィラメント電圧を調節することによって、電子線28のエミッション電流値がnA(ナノアンペア)のレベル(1nA〜1000nA)に設定(調節)される(エミッション電流値調節工程)。
【0084】
電子銃15のフィラメント27とウェーネルト34との間には、バイアス電圧が印加されている(バイアス電圧印可工程)。バイアス電圧は、DC0.1V〜500Vの範囲において調節される。バイアス電圧を調節することによって、電子線28のビーム径(収束度)が最適なそれに設定(調節)される(ビーム径調節工程)。また、電子銃15の加速電圧がDC10kV〜50kV(好ましくは、DC30kV)の範囲において調節される。
【0085】
電子銃15のフィラメント電圧やバイアス電圧を前記範囲において調節しつつ、電子線28を収束させて最適なビーム径を有する電流値10nA〜1000nAの電子線28を第3薄膜の表面に発射する(電子線発射工程)。第3薄膜の表面に入射した電子線28は、第3薄膜の表面において反射し、反射電子として第1および第2マイクロチャンネルプレート17a,17bに向かう。
【0086】
反射電子は、それらマイクロチャンネルプレート17a,17bに向かって加速されるとともに(反射電子第1加速工程)、それらプレート17a,17bによって電流増幅される(反射電子増幅工程)。それらプレート17a,17bによって電流増幅された反射電子は、蛍光スクリーン18に向かって加速されるとともに(反射電子第2加速工程)、加速された状態の反射電子が蛍光スクリーン18に入射する(反射電子入射工程)。蛍光スクリーン18には、反射電子が生成した反射電子像回析パターンが映し出される(パターン投影工程)。なお、電子銃15のバイアス電圧を調節することで、蛍光スクリーン18に映し出される反射電子像回析パターンの鮮明度を調節する(鮮明度調節工程)。
【0087】
観察窓22の放射線遮蔽ガラス19の外側から蛍光スクリーン18に映し出された第3薄膜の反射電子像回析パターンを視認することができる他、観察窓22にCCDカメラ32が取り付けられている場合、蛍光スクリーン18に映し出された第3薄膜の反射電子像回析パターンがCCDカメラ32によって撮影され、その画像(反射電子像回析パターン)がコンピュータ34のメモリに格納されるとともに、その画像がディスプレイ33に表示される。
【0088】
図7は、ディスプレイ33に表示された反射電子像回析パターン(RHEEDパターン)の一例を示す図であり、
図8は、ディスプレイ33に表示された反射電子像回析パターンの他の一例を示す図である。
図9は、ディスプレイ33に表示された反射電子像回析パターンの他の一例を示す図であり、
図10は、ディスプレイ33に表示された反射電子像回析パターンの他の一例を示す図である。
【0089】
図7の反射電子像回析パターンが示す薄膜結晶構造は、単結晶の体心立方格子であって凹凸な表面を有する結晶構造を表している。
図8の反射電子像回析パターンが示す薄膜結晶構造は、単結晶の面心立方格子であって凹凸な表面を有するが結晶構造を表している。
図9の反射電子像回析パターンが示す薄膜結晶構造は、単結晶の体心立方格子であって平坦な表面を有する結晶構造を表している。
図10の反射電子像回析パターンが示す薄膜結晶構造は、単結晶の面心立方格子であって平坦な表面を有するが結晶構造を表している。なお、単結晶の場合、試料11の表面12に入射した電子線28に対して結晶方位を変化させると、回析パターンの現れ方が変化する。
【0090】
図11は、ディスプレイ33に表示された反射電子像回析パターンの他の一例を示す図であり、
図12は、ディスプレイ33に表示された反射電子像回析パターンの他の一例を示す図である。
図11の反射電子像回析パターンが示す薄膜結晶構造は、多結晶の体心立方格子の結晶構造を表している。
図12の反射電子像回析パターンが示す薄膜結晶構造は、多結晶の面心立方格子の結晶構造を表している。多結晶の場合、一つの原子面からの回析線が円錐状になり、多数の円錐状の回析線が現れる。このような回析線は蛍光スクリーンにおいて多数の同心円となって観察される。多結晶の場合、あらゆる方位を持つ結晶粒が存在するから、試料11の表面12に入射した電子線28に対して結晶方位を変化させたとしても、回析パターンの現れ方は変化しない。
【0091】
反射高速電子回析方法は、電子銃15から発射される電子線28のエミッション電流値をnA(ナノアンペア)のレベルで調節するためのフィラメント電圧を所定の範囲において調節するとともに、電子銃15から発射される電子線28を収束させるためのバイアス電圧を所定の範囲において調節し、それらによって電子銃15から発射される電子線28のエミッション電流値を1nA〜1000nAのレベルにおいて調節することができるとともに、電子線28のビーム径(収束度)を最適にすることができるから、nAレベルのきわめて小さいエミッション電流値の電子線28において反射電子像回析パターン(RHEEDパターン)を生成することができる。
【0092】
反射高速電子回析方法は、蛍光スクリーン18の直前にマイクロチャンネルプレート17a,17bが設置され、それらマイクロチャンネルプレート17a,17bによって反射電子が電流増幅され、電流増幅された反射電子を蛍光スクリーン18に入射させ、その反射電子から反射電子像回析パターンが生成されるから、nAレベルのエミッション電流値の電子線28を利用するとともに、試料11の表面12において反射した反射電子の電流値がきわめて小さい場合(反射電子の数がきわめて少ない場合)であっても、明るい鮮明な反射電子像回析パターン(RHEEDパターン)を蛍光スクリーン18に映し出すことができる。
【0093】
反射高速電子回析方法は、電子銃15に印加するバイアス電圧を所定の範囲において調節することによって、電子銃15から薄膜に発射される電子線28のビーム径を調節することができるから、最適なビーム径の電子線28を試料11の表面12に形成された薄膜表面に照射することができる。反射高速電子回析方法は、最適なビーム径の電子線28を試料11の表面12に形成された薄膜に照射しつつ、マイクロチャンネルプレート17a,17bによって電流増幅された反射電子を蛍光スクリーン18に入射させるから、蛍光スクリーン18に明るい鮮明な反射電子像回析パターンを映し出すことができる。この反射高速電子回析方法は、明るい鮮明な反射電子像回析パターンが蛍光スクリーン18に映し出されるから、試料11に形成された有機物(蒸着材料)の薄膜の結晶構造を高い精度で観察かつ分析することができる。