(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778509
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】ジョイントコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20150827BHJP
H01R 31/08 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
H01R13/42 B
H01R31/08 Z
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-157793(P2011-157793)
(22)【出願日】2011年7月19日
(65)【公開番号】特開2013-25937(P2013-25937A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年6月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】濱井 強
(72)【発明者】
【氏名】中岸 巧
(72)【発明者】
【氏名】長吉 富彦
【審査官】
竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−110534(JP,A)
【文献】
特開平07−161419(JP,A)
【文献】
特開2002−343512(JP,A)
【文献】
特開平09−102345(JP,A)
【文献】
特開2011−065931(JP,A)
【文献】
実開平07−008976(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/04
H01R 13/11
H01R 13/42
H01R 31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子収容室を有するコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングに固定され、前記端子収容室に配置されたジョイント端子と、前記端子収容室に挿入によって収容され、前記ジョイント端子に弾性接触子の弾性変形によって接触する端子と、前記端子収容室に収容された前記端子と前記ジョイント端子を係止し、前記端子を固定する係止手段とを備えたジョイントコネクタであって、前記係止手段は、前記ジョイント端子に設けられた係止溝と、前記端子の前記弾性接触子を支持する壁部に設けられた係止爪とを有し、
前記係止溝は、前記端子の挿入方向に対しシフトした位置の両端部に一対設けられ、
前記係止爪は、一対の前記壁部で、且つ、前記端子の挿入方向に対しシフトした位置に一対設けられ、
一対の前記係止溝は、前記端子の挿入方向に対しシフトした位置の両端面より切り込まれて形成され、一対の前記係止溝の切り込みが最も深い面同士が前記端子の挿入方向に対して重ならない位置に配置されていることを特徴とするジョイントコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば各電線に接続された複数の接続端子間を導通させるジョイントコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来のジョイントコネクタとして、特許文献1に開示されたものが提案されている。このジョイントコネクタ50は、
図9及び
図10に示すように、2つの端子収容室52を有するコネクタハウジング51と、このコネクタハウジング51に固定され、各端子収容室52に配置された2つのジョイント端子61と、各端子収容室52に挿入によって収容され、各ジョイント端子61に弾性接触子71の弾性変形によって接触する2個の接続端子70とを備えている。
【0003】
2つのジョイント端子61は、一体の連結部62を介して導通されている。各ジョイント端子61には、係止孔61aが形成されている。各接続端子70は、弾性接触子71を有する。各接続端子70は、この弾性接触子71の弾性変形によってジョイント端子61に接触する。弾性接触子71には、切り起しによって係止爪71aが設けられている。つまり、ジョイント端子61の係止孔61aと接続端子70の係止爪71aによって係止手段53が構成されている。
【0004】
上記構成において、接続端子70を端子収容室52に挿入すると、弾性接触子71がジョイント端子61に接触する。この状態より接続端子70を挿入完了位置まで挿入すると、弾性接触子71の係止爪71aの位置とジョイント端子61の係止孔61aの位置が一致し、弾性接触子71の弾性復帰方向への変移によって係止爪71aが係止孔61aに係止される。これで、接続端子70の装着が完了する。このようにして2つの接続端子70を各端子収容室52に装着すれば、装着された2つの接続端子70間が導通状態とされる。
【0005】
接続端子70は、係止手段53によってジョイント端子61に係止されるため、仮に接続端子70に引っ張り力等が作用しても接続端子70が端子収容室52の引き抜き方向に移動して接触不良等を引き起こさない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−329569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来のジョイントコネクタ50では、接続端子70に引っ張り力が作用すると、その引っ張り力が弾性接触子71の係止爪71aとジョイント端子61の係止孔61aの内面に作用する。弾性接触子71は、引っ張り力によって変形する恐れがある。特に、弾性接触子71は、弾性変形し易い部位であり、上記引っ張り力によって変形し易い。弾性接触子71が変形すると、接触信頼性が低下する。
【0008】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、接続端子をジョイント端子に係止するものにあって、接触信頼性の向上を図ることができるジョイントコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、端子収容室を有するコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングに固定され、前記端子収容室に配置されたジョイント端子と、前記端子収容室に挿入によって収容され、前記ジョイント端子に弾性接触子の弾性変形によって接触する端子と、前記端子収容室に収容された前記端子と前記ジョイント端子を係止し、前記端子を固定する係止手段とを備えたジョイントコネクタであって、前記係止手段は、前記ジョイント端子に設けられた係止溝と、前記端子の前記弾性接触子を支持する壁部に設けられた係止爪とを有し、前記係止溝は、前記端子の挿入方向に対しシフトした位置の両端部に一対設けられ、前記係止爪は、一対の前記壁部で、且つ、前記端子の挿入方向に対しシフトした位置に一対設けられ
、一対の前記係止溝は、前記端子の挿入方向に対しシフトした位置の両端面より切り込まれて形成され、一対の前記係止溝の切り込みが最も深い面同士が前記端子の挿入方向に対して重ならない位置に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接続端子への引っ張り力は、弾性接触子を支持する壁部の係止爪とジョイント端子の係止溝の内面に作用し、弾性接触子に直接作用せず、弾性接触子が容易に変形することがない。従って、接続端子をジョイント端子に係止するものにあって、接触信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態を示し、ジョイントコネクタの斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態を示し、
図1の反対側から見たジョイントコネクタの斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態を示し、(a)は接続端子の装着時のジョイントコネクタの縦断面図、(b)は接続端子の装着時のジョイントコネクタの横断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態を示し、
図3(b)のA部拡大図である。
【
図5】本発明の一実施形態を示し、(a)はジョイント用バスバーの斜視図、(b)はジョイント端子の要部平面図、(c)は左右の係止溝を同一位置に設けた場合を示すジョイント端子の要部平面図である。
【
図6】本発明の一実施形態を示し、接続端子の斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態を示し、(a)は接続端子の装着途中のジョイントコネクタの縦断面図、(b)は接続端子の装着途中のジョイントコネクタの横断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態の変形例に係る接続端子の斜視図である。
【
図9】従来例を示し、ジョイントコネクタの斜視図である。
【
図10】従来例を示し、接続端子の装着時のジョイントコネクタの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1〜
図7は本発明の一実施形態を示す。
図1〜
図3に示すように、ジョイントコネクタ1は、複数の端子収容室3を有するコネクタハウジング2と、このコネクタハウジング2に圧入等によって固定されたジョイント用バスバー10と、各端子収容室3に挿入によって収容される複数の接続端子20とを備えている。
【0015】
端子収容室3は、水平方向に4つ配列され、これが上下2段配置されている。
【0016】
ジョイント用バスバー10は、
図5(a)に詳しく示すように、導電性金属材より一体に形成されている。ジョイント用バスバー10は、8つのジョイント端子11と、これらを連結する連結プレート部14と、連結プレート部14に延設された取付プレート部15とから構成されている。各ジョイント端子11が各端子収容室3に突出状態で配置されている。各ジョイント端子11は、タブ端子形状である。各ジョイント端子11の先端部には、
図5(b)に詳しく示すように、一対の係止溝12,13が設けられている。一対の係止溝12,13は、接続端子20の挿入方向Sに対しシフトした位置の両端面より切り込まれて形成されている。つまり、一対の係止溝12,13は、
図5(c)に示すように、同一位置の両端面より切り込まれた場合には、ジョイント端子11の最小幅(剪断面積)W2が小さくなる。一方、本発明では、
図5(b)に示すように、シフトした位置の両端面から切り込まれることによってジョイント端子11の最小幅(剪断面積)W1が大きくなっている。
【0017】
図5(b)に詳しく示すように、各係止溝12,13は、傾斜内面12a,13aと
、垂直内面12b,13b
と傾斜内面12a,13aと垂直内面12b,13bの間に配置された最も深い面12c,13cとから構成されている。
図4に詳しく示すように、傾斜内面12a,13aは、接続端子20の挿入方向S
の先端側の面で、徐々に切り込みを変化させている。傾斜内面12a,13aによって下記する係止爪の進入(係止)を可能と
する。垂直内面12b,13bは、接続端子20の挿入方向Sの後端側の面で、接続端子20の引き抜き方向の移動に対し係止爪25,26が係止し、垂直内面12b,13bによって係止爪25,26が係止解除できないようになっている。
一対の係止溝12,13の切り込みが最も深い面12c,13c同士が接続端子20の挿入方向Sに対して重ならない位置に配置されている。一対の係止溝12,13同士は、接続端子20の挿入方向Sに対して一方の切り込みが最も深い面12cと他方の傾斜内面13bが重なり合う位置に配置されている。
【0018】
取付プレート部15は、コネクタハウジング2の後面から突出している。取付プレート部15は、コネクタハウジング2の底面と同一高さに設定されている。取付プレート部15には、ボルト挿通孔15aが設けられている。例えば、接続端子20に接続された電線Wをアース電位とする場合には、取付プレート部15をアース経路となる部位に固定する。
【0019】
各接続端子20は、
図6等に示すように、各電線Wの端部にそれぞれ固定されている。各接続端子20は、導電性金属材の所定形状のプレートを折曲加工して形成されている。各接続端子20は、電線接続部21と相手端子接触部22とから構成されている。
【0020】
電線接続部21は、二箇所に加締め部21a,21bを有する。そのうちの一箇所の加締め部21bには、ゴム栓30が付設されている。ゴム栓30内に電線Wを通し、電線接続部21の各加締め部21a,21bを加締めて電線Wを固定する。電線Wの加締め固定で同時にゴム栓30も加締め固定される。
【0021】
相手端子接触部22は、下面壁部23a、上面壁部23b及び左右一対の側面壁部23cによって形成された方形箱部23と、下面壁部23aと上面壁部23bより方形箱部23内に向かってそれぞれ延設された一対の弾性接触子24とを有する。一対の弾性接触子24は、方形箱部23の前面より後方に向かって徐々に間隔を狭め、後側では互いにほぼ接触している(
図7参照)。
【0022】
端子収容室3に接続端子20が装着された状態では、接続端子20の一対の弾性接触子24がジョイント端子11を弾性復帰力によって挟持している。これによって、接続端子20は、ジョイント端子11に安定接触する。
【0023】
左右一対の側面壁部23cには、方形箱部23の内側への切り起しによって一対の係止爪25,26が設けられている。この一対の係止爪25,26は、一対の係止溝12,13と同様に、接続端子20の挿入方向Sに対しシフトした位置にそれぞれ配置されている。端子収容室3に接続端子20が装着された状態では、接続端子20の一対の係止爪25,26がジョイント端子11の一対の係止溝12,13に係止している。つまり、接続端子20の一対の係止爪25,26とジョイント端子11の一対の係止溝12,13によって係止手段4が構成されている。
【0024】
上記構成において、
図7(a)、(b)に示すように、接続端子20を端子収容室3に挿入する。すると、接続端子20の一対の弾性接触子24の間にジョイント端子11が入り込み、一対の弾性接触子24がジョイント端子11に接触する。この状態より接続端子20を更に奥に挿入すると、一対の弾性接触子24が互いの間隔を広げる方向に弾性変形し、ジョイント端子11の挿入が許容される。接続端子20の挿入が進むと、次に、接続端子20の一対の係止爪25,26がジョイント端子11に接触する。この状態より接続端子20を更に奥に挿入すると、一対の係止爪25,26が弾性変形し、接続端子20の挿入が許容される。そして、接続端子20を挿入完了位置まで挿入すると、
図3(a)、(b)に示すように、接続端子20の一対の係止爪25,26の位置とジョイント端子11の一対の係止溝12,13の位置が一致し、一対の係止爪25,26の弾性復帰変形によって一対の係止溝12,13に係止される。挿入完了位置では、接続端子20の一対の弾性接触子24にジョイント端子11が挟み込まれ、適正な接触状態となる。挿入完了位置では、ゴム栓30の挿入前部が端子収容室3内に圧入された状態となる。これで、接続端子20の装着が完了する。
【0025】
このような挿入作業で所定数の接続端子20を各端子収容室3に装着すれば、装着された全ての接続端子20間がジョイント用バスバー10を介して導通状態とされる。例えば、ジョイント用バスバー10がアース経路に接続されている場合には、全ての接続端子20の各電線Wがアースされる。そして、各接続端子20は、係止手段4によってジョイント端子11に係止されるため、仮に接続端子20に引っ張り力等が作用しても接続端子20が端子収容室3の引き抜き方向に移動して接触不良等を引き起こさない。
【0026】
その上、係止手段4は、ジョイント端子11に設けられた係止溝12,13と、接続端子20の弾性接触子24を支持する側面壁部23cに設けられた係止爪25,26とより構成されている。従って、接続端子20への引っ張り力は、弾性接触子24を支持する側面壁部23cの係止爪25,26とジョイント端子11の係止溝12,13の内面に作用し、弾性接触子24に直接作用しないため、弾性接触子24が容易に変形しない。以上より、接続端子20をジョイント端子11に係止するものにあって、接触信頼性の向上を図ることができる。
【0027】
係止溝12,13は、ジョイント端子11で、且つ、接続端子20の挿入方向Sに対しシフトした位置の両端部に一対設けられ、係止爪25,26は、接続端子20の一対の側面壁部23cで、且つ、接続端子20の挿入方向Sに対しシフトした位置に一対設けられている。つまり、接続端子20への引っ張り力が左右2箇所の係止爪25,26に分割して作用する。これにより、引っ張り力によって接続端子20が傾斜するのを極力防止できる。又、ジョイント端子11の左右のシフトした位置に一対の係止溝12,13が設けられている。これにより、左右の同一位置に設けた場合に較べて、ジョイント端子11の最小の幅寸法(剪断面積)が大きくなるため、引っ張り力による最大剪断応力を小さく抑えることができ、端子保持力が向上する。
【0028】
電線Wの外周に装着されたゴム栓30が端子収容室3に圧入されるため、端子収容室3への水分等の浸入を確実に防止できる。
【0029】
図8は、変形例に係る接続端子20Aの斜視図である。
図8に示すように、接続端子20Aは、ゴム栓なしのものである。他の構成は、前記実施形態のものと同様であるため、図面の同一構成箇所に同一符号を付して説明を省略する。
【0030】
この変形例の接続端子20Aを使用しても、防水性能を除いて前記実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【符号の説明】
【0031】
1 ジョイントコネクタ
2 コネクタハウジング
3 端子収容室
4 係止手段
11 ジョイント端子
12,13 係止溝
20 接続端子
24 弾性接触子
25,26 係止爪