(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778534
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】コイルばねで固定された環状フィルタ要素を備えた油圧バルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 51/00 20060101AFI20150827BHJP
F16K 11/07 20060101ALI20150827BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20150827BHJP
F01M 11/03 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
F16K51/00 B
F16K11/07 Z
F16K31/06 305Z
F01M11/03 B
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-199012(P2011-199012)
(22)【出願日】2011年9月13日
(65)【公開番号】特開2013-60998(P2013-60998A)
(43)【公開日】2013年4月4日
【審査請求日】2014年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】511223235
【氏名又は名称】フスコ オートモーティブ ホールディングス エル・エル・シー
【氏名又は名称原語表記】HUSCO Automotive Holdings LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100070002
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108017
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 貞男
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】カート エヌ スティーブンス
【審査官】
加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−041349(JP,A)
【文献】
特開2004−257454(JP,A)
【文献】
特開2007−232127(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0065138(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 51/00
F16K 3/24−3/26
F16K 11/07
F16K 31/06
F01M 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)バルブ本体と、(b)前記バルブ本体内に設けられた長手方向ボアと、(c)前記長手方向ボアに設けられていて、流体ポートが貫通して開口された内周面を有する、環状リセスと、(d)前記環状リセスの内周面に当接するように設けられていて、複数のアパーチャが貫通して設けられた、フィルタ・バンドと、(e)互いに離隔された複数の渦巻き部を有していて、前記フィルタ・バンドと係合するように構成された、コイル状保持スプリングと、(f)前記流体ポートを通る流体の流れを制御するために前記長手方向ボア内に移動可能に収容されたバルブ要素と、を有する油圧バルブであって、前記フィルタ・バンドを前記環状リセスの内周面に当接させた状態が、前記コイル状保持スプリングによって維持されていることを特徴とする油圧バルブ。
【請求項2】
前記コイルばねが、前記フィルタ・バンドを前記内周面に当接させる半径方向力を前記フィルタ・バンドに及ぼすように、構成されていることを特徴とする請求項1に記載の油圧バルブ。
【請求項3】
前記フィルタ・バンドが、対向する両端部を有するシートで構成され、かつ、前記シートが、その対向する両端部が互いに重ね合わされて筒状とされていることを特徴とする請求項1に記載の油圧バルブ。
【請求項4】
前記環状リセスが、前記内周面の対向する両側部において2つの側面を有していて、前記コイルばねが、前記両側部と係合されていることを特徴とする請求項1に記載の油圧バルブ。
【請求項5】
前記コイルばねが、対向する両端部を有し、かつ、前記両端部のそれぞれにおいて、閉じられた渦巻き部を有していることを特徴とする請求項1に記載の油圧バルブ。
【請求項6】
前記コイルばねが、2つの渦巻き部が互いに当接された端部を有していることを特徴とする請求項1に記載の油圧バルブ。
【請求項7】
前記コイルばねが、2つの渦巻き部が互いに当接された第1の端部と、他の2つの渦巻き部が互いに当接された第2の端部とを有していることを特徴とする請求項1に記載の油圧バルブ。
【請求項8】
前記バルブ要素を前記長手方向ボア内において複数の異なる位置に移動させるように、該バルブ要素に連結されたアクチュエータが備えられていることを特徴とする請求項1に記載の油圧バルブ。
【請求項9】
(a)バルブ本体と、(b)前記バルブ本体に設けられたボアと、(c)前記ボアに設けられた第1の内周面を有する第1の環状リセスおよび第2の内周面を有する第2の環状リセスと、(d)前記第1の流体ポートおよび第2の流体ポートを選択的に接続および切断するために、前記バルブ本体の前記ボア内において複数の異なる位置に移動可能とされたバルブ要素と、(e)前記バルブ要素を前記複数の異なる位置のいずれかに移動させるために該バルブ要素に連結されたアクチュエータと、
が設けられた油圧バルブであって、
(イ)前記バルブ本体には、前記第1の内周面を貫通している第1のポート開口と、前記第2の内周面を貫通している第2のポート開口とが設けられ、
(ロ)前記第1の環状リセスには、複数のアパーチャが貫通して設けられた第1のフィルタ・バンドが、前記第1の内周面に当接して配置され、
(ハ)前記第1のフィルタ・バンドが、前記第1の内周面を貫通している前記第1のポートの開口にわたって延在され、
(ニ)前記第1のフィルタ・バンドには、互いに離隔された複数の渦巻き部を有する第1のコイルばねが係合され、かつ、
(ホ)前記第1のコイルばねによって、前記第1のフィルタ・バンドが前記第1の内周面に対して保持されている
ことを特徴とする油圧バルブ。
【請求項10】
前記コイルばねが、前記フィルタ・バンドを前記内周面に当接させる半径方向力を前記フィルタ・バンドに及ぼすように、構成されていることを特徴とする請求項9に記載の油圧バルブ。
【請求項11】
前記フィルタ・バンドが、対向する両端部を有する金属で構成されたストリップで構成され、かつ、前記ストリップが、その対抗する両端部を重ね合わされて筒状とされていることを特徴とする請求項9に記載の油圧バルブ。
【請求項12】
前記環状リセスが、前記内周面の対向する両側部において2つの側面を有していて、前記コイルばねが、前記両側部と係合されていることを特徴とする請求項9に記載の油圧バルブ。
【請求項13】
前記コイルばねが、対向する両端部を有し、かつ、前記両端部のそれぞれにおいて、閉じられた渦巻き部を有していることを特徴とする請求項9に記載の油圧バルブ。
【請求項14】
前記コイルばねが、2つの渦巻き部が互いに当接された端部を有していることを特徴とする請求項9に記載の油圧バルブ。
【請求項15】
前記コイルばねが、2つの渦巻き部が互いに当接された第1の端部と、他の2つの渦巻き部が互いに当接された第2の端部とを有していることを特徴とする請求項9に記載の油圧バルブ。
【請求項16】
(イ)前記第2の環状リセスには、複数のアパーチャが貫通して設けられた第2のフィルタ・バンドが、前記第2の内周面に当接して配置され、
(ロ)前記第2のフィルタ・バンドが、前記第2の内周面を貫通している前記第2のポートの開口にわたって延在され、
(ハ)前記第2のフィルタ・バンドには、互いに離隔された複数の渦巻き部を有する第2のコイルばねが係合され、かつ、
(ニ)前記第2のコイルばねによって、前記第2のフィルタ・バンドが前記第2の内周面に対して保持されている
ことを特徴とする請求項9に記載の油圧バルブ。
【請求項17】
前記第1のコイルばねが、半径方向力を前記第1のフィルタ・バンドに及ぼすように構成され、かつ、前記第2のコイルばねが、半径方向力を前記第2のフィルタ・バンドに及ぼすように構成されていることを特徴とする請求項16に記載の油圧バルブ。
【請求項18】
前記第1のフィルタ・バンドと前記第2のフィルタ・バンドとが、それぞれ、対向する両端部を有する金属で構成されたストリップで構成され、かつ、前記ストリップが、その対抗する両端部を重ね合わされて筒状とされていることを特徴とする請求項16に記載の油圧バルブ。
【請求項19】
前記第1の環状リセスが、前記第1の内周面の対向する両側部において、第1の側部と第2の側部とを有していて、前記第1のコイルばねが、前記第1の側部および第2の側部と係合されるように構成され、かつ、
前記第2の環状リセスが、前記第2の内周面の対向する両側部において、第3の側部と第4の側部とを有していて、前記第2のコイルばねが、前記第3の側部および第4の側部と係合されるように構成されている
ことを特徴とする請求項16に記載の油圧バルブ。
【請求項20】
前記第1のコイルばねと第2のコイルばねコイルばねとが、それぞれ、2つの渦巻き部が互いに当接された第1の端部と、他の2つの渦巻き部が互いに当接された第2の端部とを有していることを特徴とする請求項16に記載の油圧バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧バルブに関するものであり、特に、前記バルブを流れる流体のための一体型フィルタを有するスプール型バルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
様々な機械には、油圧アクチュエータによって動作する移動可能部材が設けられている。例えば、内燃機関には、クランクシャフトと機械的に連結されて該クランクシャフトと連動して回転し、シリンダの吸気弁および排気弁を開閉するカムシャフトを有している。これまで、カムシャフトのタイミングは、エンジンの動作条件すべてにおいて最善の動作を生み出す設定に固定されていた。しかしながら、バルブのタイミングがエンジン速度、エンジン負荷その他のファクターの関数として変動すればエンジンパフォーマンスが改善されることが知られるようになっている。そこで、エンジンによっては油圧アクチュエータを用いてカムシャフトとクランクシャフトとの連結関係を変化させることが行われている。電磁弁(ソレノイドバルブ)は、加圧流体の供給を制御して油圧アクチュエータを動作させるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
時間の経過とともに、機械を流れる油圧油は、エンジン構成部品に由来する金属片などの小さな粒子を運ぶようになる。これらの粒子によってバルブにおけるオリフィスが閉塞されることもあり、詰まりが生じてバルブ構成部品の動作を妨げることも考えられる。また、粒子は油圧システムの他の構成部の動作に悪影響を及ぼすこともある。従来のバルブによっては、小さな粒子がバルブに進入するのを防止するための「ふるい(screen)」を設けているものもある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係るバルブ構造は、長手方向ボアが内部に設けられた本体を備えており、この長手方向ボアには、内側環状リセスが形成されている。前記環状リセスには、流体ポートが貫通して開口された内周面が設けられている。複数のアパーチャが貫通されたフィルタ・バンドが、前記環状リセスの内周面に当接されている。前記フィルタ・バンドは、前記環状リセスに開口する流体ポートの開口全体にわたって延在されている。好ましくは、前記フィルタ・バンドは、リング状に構成され、特に、例えば、屈曲され、両端部を互いに重ねて筒状とされた、ストリップ材で構成されてもよい。
【0005】
コイルばねが、前記フィルタ・バンドを前記内周面に対して保持するように前記環状リセス内に配置されている。前記コイルばねには、互いに離隔された複数の渦巻き部が設けられており、これらの渦巻き部は、前記フィルタ・バンドと係合されて、前記フィルタ・バンドが前記内周面に当接した状態を維持する半径方向外側への力を及ぼすように構成されている。
【0006】
例えば、スプールなどのバルブ要素は、長手方向ボアにスライド可能に収容されて、流体ポートからの流体の流量を制御するように構成されている。
【0007】
一実施形態に係る前記バルブ構造において、前記環状リセスは、前記内周面の対向する両側において2つの側面を有しており、前記コイルばねは、前記側面の両方と係合する。例えば、前記コイルばねは、2つの複数の渦巻き部が互いに当接する第1の端部と、この第1の端部の反対側において、他の一対の渦巻き部が互いに当接する対向する第2の端部と、を有していてもよい。前記スプリングの第1の端部および第2の端部は、前記環状リセスの2つの両側部と係合し、したがって、前記スプリングは、前記環状リセスの全幅にわたって延在されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係るフィルタ組立体を実装した電気油圧式バルブの長手方向断面図である。
【
図2】
図1中の2−2線に沿う前記バルブの断面図である。
【
図3】入力ポートがバルブボアに開口しかつフィルタ組立体がその位置にある領域を示す
図1の部分拡大図である。
【
図4】前記フィルタ組立体の構成部品としてのフィルタ・シートを示した図である。
【
図5】前記バルブに挿入されると生じる、前記フィルタ・シートが屈曲してバンドとなる状態を示した図である。
【
図6】前記フィルタ・バンドを前記バルブの定位置に保持するために用いられる保持スプリングを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1および
図2に示す例示的な電気油圧式バルブ10の文脈で本発明を説明するものとするが、本発明を他の形式のバルブとともに実施することができることに留意すべきである。
【0010】
電気油圧式バルブ(electrohydraulic valve)10は、使用状態において、マニホールド24に設けられたアパーチャ22に挿入される管状のバルブ本体20を備えている。この管状のバルブ本体20には、複数のポートが開口された長手方向ボア21が設けられている。また、マニホールド24内には、ポンプその他の供給源からの加圧流体をバルブ本体20に設けられた複数のインレットポート28へ送給するための供給通路26が設けられている。
【0011】
図2に示す例示的な電気油圧式バルブ10には6つのインレットポート28が設けられているけれども、ポート数はこれに限らない。各インレットポート28は、内周面27を貫通して設けられており、バルブ本体20の長手方向ボア21の湾曲表面に設けられた第1の環状リセス29に開口している。また、管状のバルブ本体20には、複数の第1のワークポート30および第2のワークポート32が設けられており、これらのワークポート30,32により長手方向ボア21とマニホールド通路34,36との間の流体流路が構成されている。そして、これらのマニホールド通路34,36は、流体によって駆動される油圧アクチュエータに接続されている。
【0012】
第1のワークポート30および第2のワークポート32は、長手方向ボア21の湾曲表面において、第2の環状リセス31および第3の環状リセス33にそれぞれ開口されている。インレットポートと同様に、長手方向ボア21の半径方向に離隔して設けられた複数の第1のワークポート30と複数の第2のワークポート32を設けてもよい。油圧システムのタンクに流体を送給し戻すために、マニホールド24のアパーチャ22の内側端部には戻り流路25が設けられており、この戻り流路25はバルブ本体20に設けられたアウトレットポート35と連通されている。
【0013】
バルブ本体20の長手方向ボア21内には、バルブスプール44として構成されたバルブ要素がスライド可能に収容されており、このバルブスプール44には外側環状ノッチ46が形成されている。前記外側環状ノッチ46は、複数のバルブスプール位置の選択に対応して、インレットポート28、アウトレットポート35および2つのワークポート30,32の間の流体経路(したがって、対応するマニホールド通路間)を提供している。
【0014】
図1に示すバルブスプール44の運動距離における中間位置では、インレットポート28は第1のワークポート30および第2のワークポート32の両方に対して閉じており、また、第1のワークポート30および第2のワークポート32もまたバルブスプール44上のランド部分によってブロックされている。中央通路48は、対向する両端部47,49の間においてバルブスプール44を貫通して延在されており、左寄りバルブスプール位置において第1のワークポート30とアウトレットポート35との間に通路が提供されるようになっている。また、バルブスプール44の外側端部49からヘッド部54が突出されており、このヘッド部54には、その内部を貫通してアパーチャ53が設けられている。さらに、バルブスプリング50は、前記アウトレットポート35が設けられたバルブ本体20の端部をなす前金具52から遠ざかる方向にバルブスプール44の内側端部を付勢するように構成されている。
【0015】
また、電気油圧式バルブ10には、バルブ本体20の反対端部に取り付けられたリニアアクチュエータ51が備えられている。このリニアアクチュエータ51には、非磁性のボビン60に巻かれたソレノイドコイル58を包囲するように金属で構成されたアウタハウジング55が設けられている。2つの導磁性の磁極片64,66は、前記ボビン60の対向する両端部内に延在されており、いずれも、その内部を貫通して延在された中央アパーチャを有している。アクチュエータプランジャ70は、前記複数の磁極片64,66およびその複数の中央アパーチャ内に、したがって、前記ソレノイドコイル58の中央開口内に、スライド可能に収容されている。このアクチュエータプランジャ70には、強磁性物質で構成された筒状電機子(アーマチャ)72と、この電機子72を貫通するアパーチャ内に固定された管状の押し部材74とが設けられている。押し部材74は、前記リニアアクチュエータ51から外側へ突出して、バルブスプール44のヘッド部54に当接している。
【0016】
前記ソレノイドコイル58に電流が印加されると、電機子72と押し部材74とをバルブスプール44方向へ駆動させる電磁場が生成される。この動作が、バルブスプール44をバルブスプリング50の付勢力に抗して移動させ、それにより、バルブスプール44をバルブ本体20の長手方向ボア21内でスライドさせる。ソレノイドコイル58は、例えば、従来の態様にしたがって変化するデューティサイクルを有するパルス幅変調(PWM)電気信号によって駆動されることができ、それによりバルブスプール44をバルブ本体20内における異なる所望のバルブスプール位置に移動させることができる。PWM信号はコネクタ57を介してリニアアクチュエータ51に供給される。
【0017】
引き続き
図1を参照すると、セパレート型のフィルタ80が、バルブ本体20の長手方向ボア21内における各環状リセス29,31,33内に配置されており、インレットポート28、第1のワークポート30および第2のワークポート32を流れる流体をフィルタするように構成されている。具体的に
図4を参照すると、各フィルタ80は、薄型の(例えば厚さ0.1ミリ)の矩形の金属製ストリップ81で構成されており、このストリップ81には、その2つの大きめ表面の間に複数のアパーチャ84が設けられている。例えば、標準的なフォトリソグラフィ技術を用いたエッチング処理を用いることで、好ましからざる粒子が進入して前記電気油圧式バルブ10の動作に悪影響を及ぼすのを防止するのに十分小さなサイズを有するアパーチャを形成することができる。
【0018】
前記ストリップ81は、第1の端部86が第2の端部88と重なるカーブ状に屈曲され、それにより、
図5に具体的に示すように、環状フィルタ・バンド82をなしている。
【0019】
図1に示すように、セパレート型のフィルタ・バンド82は、コイル状保持スプリング(コイルばね)90によって、各環状リセス29,31,33の湾曲した内周面27に対して保持されている。複数設けられた前記コイル状保持スプリング90の1つが
図6に詳細に記載されている。コイルばね90のらせん形状の中央の渦巻き部あるいは旋回部92は、離隔して延在しているが、コイルばね90のらせん形状の各端部における2つの渦巻き部94,96は、互いに対して当接しており、これにより略平らな端面97,98をそれぞれなしている。最も外側の渦巻きは閉じられている、すなわち、スプリングをなすワイヤの端部99は、最も外側の渦巻き部の開始部分に近接して当該ワイヤに接触されており、中央の渦巻き部92とは異なり離隔されていない。代替的には、各平らな端面97,98は、一重巻きの(single closed)渦巻き部のみによって構成されてもよいであろう。
【0020】
さらに
図1、
図2および
図3を参照すると、前記コイル状保持スプリング90が前記環状リセス29,31,33のいずれかに設置されると、平らな端部が、当該環状リセスの内周面27の対向する両側部において環状側壁95と係合される。この結果、コイル状保持スプリング90は、前記各環状リセス29,31,33の全幅にわたって延在されて、対応するフィルタ・バンド82の端部を内周面27に対して保持する。したがって、前記環状リセス29,31,33に開口された、インレットポート28またはワークポート30もしくはワークポート32の開口は、それぞれ、前記フィルタ・バンド82によってしっかりと覆われる。
【0021】
前記コイル状保持スプリング90によって前記フィルタ・バンド82を拘束することで、各ポートからの流体の圧力および流れによって前記フィルタ・バンド82が内周面27から遠ざかる方向につぶれてしまい前記フィルタ80の周囲において流体流路が開いてしまうことが防止される。また、前記コイル状保持スプリング90は、流体の圧力および流れがフィルタ・バンド82を部分的に各リセス29,31,33の外へ、さらには環状ノッチ46内へと移動させてしまいフィルタ・バンドがバルブスプール44のスライド運動に干渉してしまうことを防止する。コイル状保持スプリング90によるかかる保持は、フィルタ・バンド82の全幅にわたって均質に力を及ぼすコイル状保持スプリング90の複数の渦巻き部によって実現される。さらに、環状リセスの内周面27の対向する両側における環状側壁95と係合する前記コイル状保持スプリング90の平らな端部によって、前記コイル状保持スプリング90がフィルタ・バンド82の幅方向にわたってスライドしてしまうことが防止される。
【0022】
前記複数のフィルタ80は、バルブスプール44を長手方向ボア21内に配置するのに先立って、バルブ本体20内に1つずつ挿入される。この挿入工程のためにファンネル状の挿入工具を用いてもよいであろう。かかる挿入工具は、前記チューブの開放端が、前記フィルタ80が内部に配置されるところの前記特定のリセス29,31,33に隣接して位置づけられた状態で、長手方向ボア21内に挿入される長尺なチューブを有している。筒状のフィルタ・バンド82は、前記ファンネルに挿入されて挿入工具のチューブの内側へ押され、それにより、前記フィルタ・バンド82の直径を縮小させて、フィルタ・バンド82が前記チューブを通ってスライドすることが可能となる。最終的には、フィルタ・バンド82は、挿入工具の端部より押し出されて、長手方向ボア21における環状リセス内へ押し出される。この時、フィルタ・バンド82の可撓性によって、フィルタ・バンド82が湾曲した内周面27に接して配置されるまで当該環状リセス内へ直径が拡大されることが引き起こされる。そして、同様の工程を用いて、コイル状保持スプリング90を同一の環状リセス内に配置する。前記コイル状保持スプリング90が前記挿入工具を出て直径的に拡大されると、前記らせんをなす各渦巻き部の外周端部が、フィルタ・バンド82に対して半径方向外側への力を作用させて、前記環状リセスの湾曲した内周面27に対してバンドを保持する。
【0023】
このようにして設置されたコイル状保持スプリング90の平らな端部は、環状リセスの対向する環状側壁95とそれぞれ係合して、環状リセス内においてコイル状保持スプリング90を中央に位置づける。設置された状態において、コイル状保持スプリング90の端部における当接する複数の渦巻き部94,96が、フィルタ・バンド82の端部を前記リセスの内周面27に対して固定する。かかる固定力によって、各ポートにおける圧力がフィルタ・バンド82を内周面27から遠ざかる方向に屈曲させてしまうことが防止される。
【0024】
以上、本発明に係るフィルタ・バンドは、電気油圧スプールバルブにおける使用という文脈において説明されたけれども、このフィルタ・バンドは他のタイプのバルブにおいて使用することもできることが理解されるべきである。さらに、バルブについては、バルブ本体の長手方向ボアにおけるポート数、したがってリセス数は上述したものより多くてもよく、少なくてもよいであろう。
【0025】
上述した説明は、本発明の好ましい実施形態との関連において本発明を説明したものである。本発明の範囲内における様々な代替的形態についても焦点をあてたけれども、本発明の属する技術分野における知識を有する者であれば、本発明の実施形態の開示内容によって明らかとなるところの追加的な代替的形態を想起しうるものと想定される。したがって、本発明の範囲は、後続するところの請求項によって画定されるべきであって前記開示内容によって限定されるものではない。
【符号の説明】
【0026】
10 電気油圧式バルブ
20 バルブ本体
21 長手方向ボア
22 アパーチャ
24 マニホールド
25 戻り流路
26 供給通路
27 内周面
28 インレットポート
29 第1の環状リセス
30 第1のワークポート
31 第2の環状リセス
32 第2のワークポート
33 第3の環状リセス
34 マニホールド通路
35 アウトレットポート
36 マニホールド通路
44 バルブスプール(バルブ要素)
46 外側環状ノッチ
47 両端部
48 中央通路
49 両端部
50 バルブスプリング
51 リニアアクチュエータ
52 前金具
53 アパーチャ
54 ヘッド部
55 アウタハウジング
57 コネクタ
58 ソレノイドコイル
60 ボビン
64 磁極片
66 磁極片
70 アクチュエータプランジャ
72 電機子(アーマチャ)
74 押し部材
80 フィルタ
81 ストリップ
82 フィルタ・バンド
84 アパーチャ
86 第1の端部
88 第2の端部
90 コイル状保持スプリング(コイルばね)
92 渦巻き部
94 渦巻き部
96 渦巻き部
97 端面
98 端面