(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも二酸化マンガンを含有する正極合剤の成形体からなる正極、亜鉛粒子または亜鉛合金粒子を含有する負極、セパレータおよびアルカリ電解液を、外装缶、封口板および樹脂製ガスケットからなる電池容器内に収容してなる扁平形アルカリ電池であって、
前記正極合剤が、更に顆粒状の酸化銀を含有しており、
前記正極合剤における二酸化マンガンの含有量が40質量%以上であり、かつ顆粒状の酸化銀の含有量が2〜45質量%であり、
前記正極合剤の含有する二酸化マンガンの比表面積が、15〜30m2/gであることを特徴とする扁平形アルカリ電池。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の扁平形アルカリ電池に係る正極は、正極合剤の成形体からなるものであり、前記正極合剤は、二酸化マンガンを正極活物質として含有している。
【0012】
本発明では、正極合剤に係る二酸化マンガンに、比表面積が30m
2/g以下のものを使用する。アルカリ電池の正極活物質として使用されている二酸化マンガンは、例えば、特許文献1の比較例(段落[0061]表1)で使用されているもののように、通常、比表面積が、35m
2/g程度や、それによりも大きいものである。本発明の扁平形アルカリ電池では、通常のアルカリ電池で採用されている二酸化マンガンよりも比表面積の小さいものを使用して、正極合剤の成形体の体積あたりの容量を高め、高容量化を図っている。
【0013】
ただし、正極合剤に係る二酸化マンガンの比表面積が小さすぎると、二酸化マンガン粒子内の反応面積が減って、その反応性が低下する。よって、本発明における正極合剤に係る二酸化マンガンの比表面積は、15m
2/g以上であり、25m
2/g以上であることが好ましい。
【0014】
本明細書でいう二酸化マンガンの比表面積は、多分子層吸着の理論式であるBET式を用いて、表面積を測定、計算したもので、二酸化マンガンの表面と微細孔の比表面積である。具体的には、窒素吸着法による比表面積測定装置(Mountech社製「Macsorb HM modele−1201」)を用いて、BET比表面積として得た値である。
【0015】
前記特定の比表面積を有する二酸化マンガンは、例えば、電解法によって二酸化マンガンを合成する際の電解条件(電流値など)を調整することで製造することができる。
【0016】
正極合剤における前記二酸化マンガンの含有量は、電池の高容量化と生産性向上とを図る観点から、40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましい。なお、正極合剤には、後述するように導電助剤や酸化銀、銀−ニッケル複合酸化物などを含有させることが好ましく、正極合剤中の前記二酸化マンガンの量が多すぎると、これらの二酸化マンガン以外の成分の量が少なくなって、これらの使用による効果が十分に確保できない虞がある。よって、正極合剤における前記二酸化マンガンの含有量は、97質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることが更に好ましい。
【0017】
本発明に係る正極の正極合剤は、酸化銀(酸化第一銀、酸化第二銀など)を含有していることが好ましい。酸化銀も、二酸化マンガンと同様に正極活物質として機能する他、正極合剤の成形体の成形剤としても機能する。よって、正極合剤が酸化銀を含有している場合には、後述する樹脂製バインダーを用いなくても正極合剤の成形体の形状を良好に維持できるため、正極合剤には樹脂製バインダーを含有させなくてもよい。
【0018】
正極合剤に使用する酸化銀は、例えば、通常流通している径が0.1〜5μmの微粉末状のものでもよいが、このような微粉末の酸化銀を造粒して得られる顆粒状のものがより好ましい。顆粒状の酸化銀を用いると、微粉末の状態で用いた場合よりも抵抗が低くなるため、扁平形アルカリ電池の負荷特性をより向上させることができる。
【0019】
顆粒状酸化銀の粒径としては、50μm以上であることが好ましく、75μm以上であることがより好ましく、また、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。更に、顆粒状酸化銀のかさ密度は、1.5g/cm
3以上であることが好ましく、1.8g/cm
3以上であることがより好ましく、3.5g/cm
3以下であることが好ましく、2.6g/cm
3以下であることがより好ましい。このような形態の酸化銀であれば、粉末状のものに比較して流動性がよく、秤量性および成形性が向上し、抵抗が低下して反応性が向上するため、より負荷特性に優れたものとなり、また、製造される正極(ひいては扁平形アルカリ電池)個々の特性が安定化する。本明細書でいう顆粒状酸化銀の粒径は、Honeywell社製のマイクロトラック粒度分布計「9320−X100」を用いて、レーザー光の散乱により、粒子個数nおよび各粒子の直径dを測定し、算出した数平均粒子径である。また、本明細書でいう顆粒状酸化銀のかさ密度は、JIS R 1628に規定のかさ密度測定方法に準じて、所定量の顆粒状酸化銀を容器に入れ、かさ密度測定装置を用いて求めた値である。
【0020】
正極合剤に酸化銀を含有させる場合、正極合剤における酸化銀の含有量は、その使用による前記の効果をより良好に確保する観点から、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。ただし、前記の通り、酸化銀は二酸化マンガンよりも高価であるため、正極合剤における酸化銀の量を多くしすぎると、前記二酸化マンガンを使用することによる電池の生産性の向上効果が小さくなる虞がある。よって、正極合剤における酸化銀の含有量は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることが更に好ましい。
【0021】
また、本発明に係る正極の正極合剤は、銀−ニッケル複合酸化物を含有していることも好ましい。銀−ニッケル複合酸化物も、酸化銀と同様に、正極合剤の成形体の成形剤として機能する。よって、正極合剤が銀−ニッケル複合酸化物を含有している場合には、後述する樹脂製バインダーを用いなくても正極合剤の成形体の形状を良好に維持できるため、正極合剤には樹脂製バインダーを含有させなくてもよい。
【0022】
また、銀−ニッケル複合酸化物は、水素ガスを吸収する機能を有している。例えば、後述するように、扁平形アルカリ電池の負極として使用される亜鉛粒子などには、環境負荷軽減の観点から、無水銀タイプのものを使用することが好ましいが、無水銀タイプの亜鉛粒子などを使用した電池では、内部で水素ガスが発生しやすく、これが電池の膨れの原因となる虞がある。しかし、銀−ニッケル複合酸化物を含有する正極合剤の成形体を有する扁平形アルカリ電池では、無水銀タイプの亜鉛粒子などを使用した場合でも、内部で発生する水素ガスを銀−ニッケル複合酸化物が吸収するため、かかる水素ガスに起因する電池の膨れの発生も良好に抑制できる。
【0023】
銀−ニッケル複合酸化物としては、AgNiO
2や、一般式Ag
XNi
YO
2で表され、X/Yが1より大きく1.9以下であるものが挙げられる。これらの中でも、一般式Ag
XNi
YO
2で表され、X/Yが1より大きく1.9以下であるものがより好ましい。前記一般式で表される銀−ニッケル複合酸化物は、銀−ニッケル複合酸化物として汎用されているAgNiO
2よりもAgが結晶中に過剰に取り込まれている。そのため、AgNiO
2を用いる場合よりも、正極の導電性および成形性を向上させることができる。
【0024】
一般式Ag
XNi
YO
2で表され、X/Yが1より大きく1.9以下である銀−ニッケル複合酸化物は、例えば、無機酸のAg塩と無機酸のNi塩とを、酸化性のアルカリ水溶液中で反応させることにより製造することができる。
【0025】
具体的には、例えば、無機酸のAg塩および無機酸のNi塩を、アルカリ金属の水酸化物と水中で中和反応させ、該中和反応前、該中和反応途中、または該中和反応後に、反応液中に酸化剤を添加して酸化処理を行う。酸化剤の添加は、前記の中和反応前、中和反応途中または中和反応後において、複数回行うことが好ましい。
【0026】
無機酸のAg塩としては、塩酸銀、硝酸銀、硫酸銀、リン酸銀などが挙げられる。また、無機酸のNi塩としては、塩酸ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、リン酸ニッケルなどが挙げられる。更に、アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。また、酸化剤としては、KMnO
4、K
2S
2O
8、NaOCl、Na
2S
2O
8、H
2O
2、オゾンなどが挙げられる。
【0027】
前記の中和反応においては、反応液中のアルカリ度をより高くすることが好ましく、例えば、無機酸のAg塩中のAgのモル量と、無機酸のNi塩中のNiのモル量との合計量に対して、アルカリ金属の水酸化物のモル量を5倍程度とすることが望ましい。また、酸化剤の使用量は、酸化、すなわち金属イオンの価数変化に対して、等量以上とすることが好ましく、2倍等量程度とすることがより好ましい。
【0028】
中和反応および酸化処理時の温度は、例えば、室温から100℃の間(より好ましくは30〜50℃)とすることが好ましい。また、中和反応および酸化処理は、反応液を攪拌しながら行うことが好ましい。
【0029】
酸化処理後は、生成した反応沈殿物を反応液から分離し、回収した反応沈殿物を水洗、乾燥して、必要に応じて解砕するなどし、前記一般式で表される銀−ニッケル複合酸化物を得る。
【0030】
正極合剤に銀−ニッケル複合酸化物を含有させる場合、正極合剤における銀−ニッケル複合酸化物の含有量は、その使用による前記の効果をより良好に確保する観点から、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。ただし、正極合剤における銀−ニッケル複合酸化物の量が多すぎると、前記二酸化マンガンを使用することによる電池の高容量化の効果が小さくなる虞がある。よって、正極合剤における銀−ニッケル複合酸化物の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、4.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0031】
また、本発明に係る正極の正極合剤は、導電助剤を含有していることが好ましい。導電助剤としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、黒鉛などの炭素質材料などが挙げられる。
【0032】
正極合剤における導電助剤の含有量は、1質量%以上であることが好ましい。なお、正極合剤中の導電助剤量を前記のように多くすることで、正極(正極合剤の成形体)内での導電性を向上させて、電池の負荷特性をより高めることができるため、正極合剤における導電助剤の含有量は、3質量%以上であることがより好ましく、4質量%以上であることが更に好ましい。ただし、導電助剤として例えば炭素質材料を使用する場合、そのかさ密度が小さいため、これらをあまり多量に正極合剤に添加すると、正極活物質の充填量を高めることが困難となる。よって、正極合剤における導電助剤の含有量は、7質量%以下であることが好ましく、6質量%以下であることがより好ましい。
【0033】
また、本発明に係る正極の正極合剤には、成形体の形状維持などの観点から、樹脂製バインダーを含有させることもできる。樹脂製バインダーの具体例としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴムなどが挙げられる。
【0034】
正極合剤に樹脂製バインダーを使用する場合、正極合剤における樹脂製バインダーの含有量は、例えば、2〜7質量%とすることが好ましい。
【0035】
なお、前記の通り、正極合剤に酸化銀や銀−ニッケル複合酸化物を含有させる場合には、正極合剤に樹脂製バインダーを含有させてもよいが、酸化銀や銀−ニッケル複合酸化物が成形体の成形剤として機能するため、正極合剤に樹脂製バインダーを含有させなくてもよい。本発明に係る正極の正極合剤は、酸化銀と銀−ニッケル複合酸化物の両者を含有していることがより好ましい。
【0036】
正極合剤の成形体の密度は、3.2g/cm
3以上であることが好ましく、3.3g/cm
3以上であることがより好ましい。正極合剤の成形体の密度を前記のようにすることで、正極活物質をより多く充填して電池の容量を高めることができる。ただし、正極合剤の成形体の密度の増加に伴って、正極合剤の成形体中の空隙が少なくなってアルカリ電解液が浸透し難くなって電池の高容量化の効果が小さくなる虞があり、また、密度の大きな正極合剤の成形体は成形自体が困難となることから、正極合剤の成形体の密度は、7.0g/cm
3以下であることが好ましく、6.0g/cm
3以下であることがより好ましい。
【0037】
正極合剤の成形体の密度は、投影機を用いて算出された正極合剤の成形体の面積と、マイクロメーターを用いて測定された正極合剤の成形体の厚みとから正極合剤の成形体の体積を算出し、この体積と別途測定しておいた正極合剤の成形体の質量とを用いて求められる。なお、扁平形アルカリ電池内の正極合剤の成形体の場合、電池内から正極合剤の成形体を取り出し、必要に応じて洗浄、乾燥などの工程を経てアルカリ電解液成分を除去して正極合剤の成形体の質量を測定し、前記の方法により密度を求める。
【0038】
正極は、正極活物質である前記二酸化マンガンおよび必要に応じて使用される前記の各成分などを混合して調製した正極合剤を、常法に従って加圧成形して製造することができる。
【0039】
なお、この場合、以下の製法を採用することがより好ましい。まず、前記二酸化マンガンと必要に応じて使用される前記の各成分などとを乾式混合して正極合剤を調製し、これを常法に従い加圧成形する。次に得られた成形体を破砕処理してフレークなどの状態とし、これを更に常法に従って加圧成形して、正極を得る。このような製造方法によれば、正極合剤の成形体内での導電助剤の分散を良好にし、また、前記のような高密度の正極合剤の成形体とすることができる。
【0040】
本発明に係る負極は、亜鉛粒子または亜鉛合金粒子(以下、両者を纏めて「亜鉛系粒子」という場合がある)を含有するものであり、これら粒子中の亜鉛が活物質として作用する。亜鉛合金粒子の合金成分としては、例えば、水銀(例えば、含有量が1〜5質量%)、インジウム(例えば、含有量が50〜500質量ppm)、ビスマス(例えば、含有量が50〜500質量ppm)などが挙げられる(残部は亜鉛および不可避不純物である)。負極の有する亜鉛系粒子は、1種単独でもよく、2種以上を有していてもよい。
【0041】
亜鉛系粒子としては、例えば、全粉末中、粒径が100〜200μmの粉末の割合が、50体積%以上、より好ましくは90体積%以上であるものが挙げられる。なお、ここでいう亜鉛などの粉末における粒径が100〜200μmの粉末の体積割合は、前述の「顆粒状酸化銀」の粒径測定法と同じ測定方法および測定装置で測定したものである。
【0042】
負極に使用する亜鉛系粒子は、前記の形態を有していてもよいが、電池の負荷特性をより高める観点からは、例えば、全粒子のうち、200メッシュの篩い目を通過し得るものが、50質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。このように、負極の有する亜鉛系粒子が小さい場合には、負極全体の比表面積を大きくできることから、負極での反応を効率よく進めることができ、電池の負荷特性(特に重負荷特性)が良好となる。
【0043】
負極の有する亜鉛系粒子のサイズを小さくして、負極での反応効率をより高める観点からは、更に、負極の有する亜鉛系粒子のうち、330メッシュの篩い目を通過し得るものの割合が、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることが更に好ましく、また、440メッシュの篩い目を通過し得るものの割合が、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましい。なお、負極の有する亜鉛系粒子のサイズがあまりに小さすぎると、取り扱い性が低下するため、例えば、負極が有する亜鉛系粒子の最小サイズは、1μm程度であることが望ましい。
【0044】
また、亜鉛系粒子は、水銀を含有しないものや、鉛を含有しないものであることが、より好ましい。このような亜鉛系粒子を使用している電池であれば、例えば、口から飲み込み、一定時間体内を観察した後、体外に排出して取り出すタイプの内視鏡カメラの電源用途に用いた場合などに、人体内において電池内部の亜鉛などが漏れ出した場合においても、人体への悪影響を最小限に抑えることができ、また、電池の廃棄による環境汚染も抑制できる。
【0045】
負極には、例えば、前記の亜鉛系粒子の他に、必要に応じて添加されるゲル化剤(ポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルロースなど)を含み、これにアルカリ電解液を加えることで構成される負極剤(ゲル状負極)が適用できる。負極中のゲル化剤の量は、例えば、0.5〜1.5質量%とすることが好ましい。
【0046】
また、負極は、前記のようなゲル化剤を実質的に含有しない非ゲル状の負極とすることもできる(なお、非ゲル状負極の場合、亜鉛系粒子近傍に存在するアルカリ電解液が増粘しなければ構わないので、「ゲル化剤を実質的に含有しない」とは、アルカリ電解液の粘度への影響がない程度に含有していてもよい、という意味である)。ゲル状負極の場合には、亜鉛系粒子の近傍に、ゲル化剤と共にアルカリ電解液が存在しているが、ゲル化剤の作用によってこのアルカリ電解液が増粘しており、アルカリ電解液の移動、ひいてはアルカリ電解液中のイオンの移動が抑制されている。このため、負極での反応速度が抑えられ、これが電池の重負荷特性向上を阻害しているものと考えられる。これに対し、負極を非ゲル状として、亜鉛系粒子近傍に存在するアルカリ電解液の粘度を増大させずにアルカリ電解液中のイオンの移動速度を高く保つことで、負極での反応速度を高めて、重負荷特性の向上を図ることができる。
【0047】
本発明の扁平形アルカリ電池では、アルカリ性の水溶液からなる電解液、すなわちアルカリ電解液を使用する。アルカリとしては、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなど)などが好適に用いられ、水酸化カリウムが特に好ましい。電解液の濃度は、例えば、水酸化カリウムの水溶液の場合、水酸化カリウムが20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であって、40質量%以下、より好ましくは38質量%以下であることが望ましく、水溶液の濃度をこのような値に調整することで、導電性に優れた電解液とすることができる。
【0048】
アルカリ電解液には、前記の各成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて公知の各種添加剤を添加しても良い。例えば、負極に用いる亜鉛系粒子の腐食(酸化)を防止するために、酸化亜鉛を添加するなどしてもよい。
【0049】
本発明の扁平形アルカリ電池におけるセパレータについては特に制限はなく、例えば、ビニロンとレーヨンを主体とする不織布、ビニロン・レーヨン不織布(ビニロン・レーヨン混抄紙)、ポリアミド不織布、ポリオレフィン・レーヨン不織布、ビニロン紙、ビニロン・リンターパルプ紙、ビニロン・マーセル化パルプ紙などを用いることができる。また、親水処理された微孔性ポリオレフィンフィルム(微孔性ポリエチレンフィルムや微孔性ポリプロピレンフィルムなど)とセロファンフィルムとビニロン・レーヨン混抄紙のような吸液層(電解液保持層)とを積み重ねたものをセパレータとしてもよい。
【0050】
本発明の扁平形アルカリ電池の構造を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の扁平形アルカリ電池の一例を模式的に示す側面図であり、
図2は、
図1の要部断面図である。
【0051】
図1および
図2に示す扁平形アルカリ電池は、正極3およびセパレータ5を内填した外装缶1の開口部に、負極4を内填した封口板2が、断面L字状で環状の樹脂製ガスケット6を介して嵌合しており、外装缶1の開口端部が内方に締め付けられ、これにより樹脂製ガスケット6が封口板2に当接することで、外装缶1の開口部が封口されて電池内部が密閉構造となっている。すなわち、
図1および
図2に示す扁平形アルカリ電池では、外装缶1、封口板2および樹脂製ガスケット6からなる電池容器内の空間(密閉空間)に、正極3、負極4およびセパレータ5を含む発電要素が装填されており、更にアルカリ電解液(図示しない)が注入されている。そして、外装缶1は正極端子を兼ね、封口板2は負極端子を兼ねている。正極3は、前記の通り、活物質である二酸化マンガンと必要に応じて使用される前記の各成分などとを含む正極合剤の成形体である。また、負極4は、前記の通り、亜鉛系粒子を含むゲル状負極でもよく、また、亜鉛系粒子が粒子のままで存在するものでもよい。
【0052】
外装缶1には、例えば、鉄にニッケルメッキを施したものや、ステンレス鋼などが使用できる。
【0053】
封口板2としては、例えば、負極4と接する面は銅または黄銅などの銅合金で構成され、その本体部分はステンレス鋼で構成され、外面側、すなわち、負極4と接する面と反対側の面はニッケルで構成されたものが好適である。この封口板2において、負極4と接する面を銅または銅合金で構成するのは、亜鉛との局部電池の形成を抑制するためであるが、本体部分をステンレス鋼で構成することや外面側をニッケルで構成することは必須ではなく、他の材料で構成してもよいし、負極4と接する面も亜鉛と局部電池を形成しないものであれば、銅または銅合金でなくてもよい。また、樹脂製ガスケット6としては、例えば、ナイロン66などを素材とするものが推奨される。
【0054】
本発明の扁平形アルカリ電池の平面視での形状は、円形でもよく、四角形(正方形・長方形)などの多角形であってもよい。また、多角形の場合には、その角を曲線状としていてもよい。
【0055】
図3に、本発明の扁平形アルカリ電池の他の例を模式的に表した要部断面図を示す。
図3の扁平形アルカリ電池では、外装缶1の内側底面と樹脂製ガスケット6との間に正極(正極合剤の成形体)3の外周部が配置された所謂底敷構造を採用している。
【0056】
図2に示す扁平形アルカリ電池では、樹脂製ガスケット6が外装缶1の底にまで到達している所謂中入れ構造を採用しているため、電池内容積のうち、発電に関与しない樹脂製ガスケット6の占有容積分が大きい。これに対し、
図3に示す扁平形アルカリ電池では、底敷構造を採用することで、電池内における正極の充填量(正極活物質の充填量)をより高めており、これにより更なる高容量化を図ることができる。
【0057】
本発明の扁平形アルカリ電池は、従来から知られている扁平形アルカリ電池(二酸化マンガンや酸化銀を正極活物質とする扁平形電池)と同様の用途に適用することができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
【0059】
実施例1
BET比表面積が26m
2/gの二酸化マンガン65質量%と、顆粒化酸化第一銀33質量%と、黒鉛2質量%とを乾式混合して正極合剤とし、この正極合剤120mgを、充填密度3.95g/cm
3で、直径6.3mm、高さ0.98mmの円板状に加圧成形することによって、正極合剤の成形体を作製した。
【0060】
負極には、60メッシュの篩い目を通過し得る粒子の割合が100質量%で、平均粒径が150μmの、水銀を含有しない亜鉛粒子37mgを用いた。
【0061】
アルカリ電解液には、酸化亜鉛を5質量%溶解した36質量%水酸化カリウム水溶液を用いた。また、正極缶は、SUS319J1(クロム含量23質量%)を用いて作製した。更に負極端子板は、銅−ステンレス鋼−ニッケルクラッド板を用いて作製した。更に、セパレータには、株式会社ユアサメンブレンシステムの「YG9132」を用いた。このセパレータは、厚みが20μmのセロハンフィルムと、厚みが30μmのグラフトフィルムとを積層してなるものであり、該グラフトフィルムは、ポリエチレン主鎖にアクリル酸をグラフト共重合させた構造を有するグラフト共重合体で構成されている。また、電解液保持層として、厚みが200μmのビニロン−レーヨン混抄紙を用いた。セパレータおよび電解液保持層は、直径6.30mmの円形に打ち抜いて用いた。
【0062】
前記の正極合剤の成形体、負極、アルカリ電解液、外装缶、封口板、セパレータおよび電解液保持層を用い、更にナイロン66製の環状ガスケットを用いて、
図3に示す構造で、外径6.8mm、厚さ2.6mmの扁平形アルカリ電池を作製した。
【0063】
実施例2
二酸化マンガン65質量%と、顆粒化酸化第一銀29質量%と、銀−ニッケル複合酸化物(AgNiO
2)4質量%と、黒鉛2質量%とを乾式混合して正極合剤とし、この正極合剤120mgを、充填密度3.88g/cm
3、直径6.3mm、高さ0.99mmの円板状に加圧成形することによって、正極合剤の成形体を作製した。
【0064】
そして、前記の正極合剤の成形体を用いた以外は、実施例1と同様にして扁平形アルカリ電池を作製した。
【0065】
比較例1
正極合剤に使用する二酸化マンガンを、BET比表面積が35m
2/gのものに変更した以外は、実施例1と同様にして正極合剤の成形体を作製し、この正極合剤の成形体を用いた以外は、実施例1と同様にして扁平形アルカリ電池を作製した。
【0066】
比較例2
正極合剤に使用する二酸化マンガンを、BET比表面積が13m
2/gのものに変更した以外は、実施例1と同様にして正極合剤の成形体を作製し、この正極合剤の成形体を用いた以外は、実施例1と同様にして扁平形アルカリ電池を作製した。
【0067】
実施例1、2および比較例1、2の扁平形アルカリ電池各10個について、20℃で、15kΩの抵抗値で終止電圧を1.2Vとして放電させて放電容量を測定した。そして、各実施例・比較例とも、10個の電池での放電容量の平均値を算出した。
【0068】
これらの結果を表1に示す。なお、表1には、各実施例・比較例の電池10個における放電容量の最小値および最大値も併記する。
【0069】
【表1】
【0070】
表1に示す通り、適正な比表面積の二酸化マンガンを含有する正極合剤によって形成された成形体を有する実施例1、2の扁平形アルカリ電池は、比表面積が不適な二酸化マンガンを含有する正極合剤によって形成された成形体を有する比較例1、2の電池に比べて、放電容量が高い。
【0071】
また、実施例1の電池は、高価な酸化銀の使用量を低減しつつ前記のような高容量化を達成できており、生産コストが低く、高い生産性を有している。