(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電源ユニットにおけるハウジング部材の内容積に対する前記テーパー部の占める容積の割合が25〜40%であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の可搬型ガス検知器。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば地下の工事現場や坑道、その他の人が立ち入る場所や作業領域などにおいて、その環境の空気中に一酸化炭素ガスや硫化水素ガスなどの危険性ガスが含有されるおそれがある場合や、空気中の酸素ガス濃度が低下しているおそれがある場合など、環境雰囲気の空気が危険な状態となっている可能性あるいは危険な状態となる可能性がある場合が少なくない。
そして、環境雰囲気の空気において、含有される危険性ガスの濃度が高いことにより、または酸素ガス濃度が低いことにより、人に対して危険な状態となったときには、そのことを直ちに知ることが必要であり、このような要請から、ガスセンサによって検知対象ガスが検知されたときに作動する警報用ブザーからの警報音による警報報知機構を具えてなる可搬型ガス検知器が広く使用されている。このような可搬型ガス検知器においては、例えば可充電電池が駆動用電源として内蔵されている。
【0003】
而して、このような可搬型ガス検知器においては、可燃性のガスや蒸気を含む爆発性雰囲気の存在により、引火、爆発が発生し得る環境で使用されるため、可搬型ガス検知器それ自体が着火源とならない構成、いわゆる防爆仕様の規格を満足する構成であることが必要とされており、例えば、電源部については、可充電電池が例えば事故等により短絡した時において、可充電電池の表面温度が一定温度以上に上昇しないこと、内部の電解液が漏れないことなどが要求される。
【0004】
電源部の防爆構造として、例えば、各々、一端に正極端子が形成されると共に他端に負極端子が形成された複数本の棒状のニッケル・カドミウム蓄電池を隣り合うものの正極および負極が互いに逆方向を向く状態で平行に並ぶよう配置して直列に接続し、電池間に絶縁スペーサを介装して、ニッケル・カドミウム蓄電池および絶縁スペーサの全体をシリコーンゴムにより覆う構成とする技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年においては、可搬型ガス検知器の駆動用電源として、例えばリチウムイオン電池などの高容量の可充電電池(二次電池)を用いることが期待されている。
しかしながら、リチウムイオン電池などの高容量の可充電電池は、例えば事故による短絡時の温度上昇の程度が大きく、また、電解液の漏れなどが発生することがあることから、防爆仕様とされることが求められる可搬型ガス検知器に用いることが困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、高容量の可充電電池および回路基板が樹脂に埋設されてなる電源ユニットを具えてなり、当該電源ユニットについて、充填される樹脂の量が低減されて軽量化が図られたものでありながら、信頼性の高い防爆構造の得られる可搬型ガス検知器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の可搬型ガス検知器は、ガス検知器本体と、当該ガス検知器本体に着脱自在に装着される電源ユニットとを具えており、
当該電源ユニットは、一方が開口する、互いに対向する2つの側壁およびこれらの側壁を連結する2つの扁平壁により形成される矩形筒状のハウジング部材と、当該ハウジング部材の内部における一方の側壁側領域に当該一方の側壁に沿って当該ハウジング部材の軸方向に延びるよう配設された円柱状の可充電電池と、当該ハウジング部材の内部における他方の側壁側領域の一方の扁平壁に近接した位置において、当該一方の扁平壁に沿って当該ハウジング部材の軸方向に延びるよう配設された回路基板とを具え、当該可充電電池および当該回路基板が当該ハウジング部材の内部に充填された熱硬化性樹脂に埋設されて構成されており、
前記ハウジング部材の内部における他方の側壁側領域には、他方の扁平壁の内面に、当該ハウジング部材の開口端側から当該ハウジング部材の軸方向奥側に向かって内方に傾斜するテーパー部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の可搬型ガス検知器においては、前記可充電電池としてリチウムイオン電池が用いられた構成とすることができる。
【0010】
また、本発明の可搬型ガス検知器においては、前記電源ユニットにおけるハウジング部材の内容積に対する前記テーパー部の占める容積の割合が25〜40%である構成とされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の可搬型ガス検知器によれば、ガス検知器本体に着脱自在に装着される電源ユニットが、ハウジング部材の他方の扁平壁の内面における他方の側壁側領域に、ハウジング部材の開口端側からハウジング部材の軸方向奥側に向かって内方に傾斜するテーパー部が形成された構成とされていることにより、ハウジング部材の内部に熱硬化性樹脂を充填しやすくなるので、可充電電池および回路基板が熱硬化性樹脂に埋設された状態を確実に得ることができると共に、充填される熱硬化性樹脂の量が低減されて軽量化が図られたものでありながら、所期の防爆性を確実に得ることができる。
また、比較的に高価な熱硬化性樹脂の量を低減することができてコスト的に有利に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の可搬型ガス検知器の一例における構成を示す正面図、
図2は、
図1におけるA−A線断面図、
図3は、
図1におけるB−B線断面図、
図4は、
図3における一部を拡大して示す拡大断面図、
図5は、
図1に示す可搬型ガス検知器の一部を省略して示す分解斜視図である。
この可搬型ガス検知器は、例えば警報音および発光による警報報知機能を具えた可搬型ガス警報器として構成されており、ガス検知器本体10と、このガス検知器本体10に対して着脱自在に装着される、可充電電池90を具えた可充電電池電源ユニット85とにより構成されている。
ガス検知器本体10の正面には、中央領域に表示部11が形成されていると共に表示部11の下方領域に操作部12が形成されている。また、ガス検知器本体10の正面における表示部11の上方領域およびこれに続く上面の正面側領域、並びに、ガス検知器本体10の両側面の正面側領域には、警報用発光部13が形成されている。
【0014】
ガス検知器本体10は、一方向に長尺な平板状のメイン基板21の長さ方向における一端側部分に、ガス検知動作に係る機能部材がまとめられて配置されてなる基板アセンブリ20が、ケーシング内において、メイン基板21がケーシングの正面および裏面と平行に延びるよう配設されて、構成されている。ここに、機能部材としては、ガスセンサ41、ガスセンサ41に被検ガスを供給するポンプユニット35、警報用発光素子23および警報用ブザー30等の警報報知機構、ガス検知結果が表示される表示機構を含む。
【0015】
基板アセンブリ20を構成するメイン基板21の正面には、パネル状表示機構22が一端側部分の中央位置に設けられていると共に、複数の警報用発光素子が設けられている。例えば、メイン基板21の正面における一端縁部分の互いに幅方向に離間した位置に3つの警報用発光素子23が設けられており、また、メイン基板21の正面における両側縁部分のパネル状表示機構22とメイン基板21との間の位置にそれぞれ2つずつ警報用発光素子(
図5においては一の警報用発光素子のみが示されている。)が設けられている。
また、メイン基板21の正面における他端側部分には、複数のスイッチ素子24が配置されている。
【0016】
メイン基板21の背面における一端縁部分の幅方向に並んだ位置には、警報用ブザー30およびポンプユニット35が配置されている。
警報用ブザー30は、一方に開口する放音口31Aを有するケース31内に圧電振動子32が配置されてなる、背の低い円柱状のものであって、放音口31Aがメイン基板21に形成された開口21Aと対向するよう配置されている。
ポンプユニット35は、例えばモータ駆動によるダイヤフラムポンプを具えており、例えば、0.75リットル/min以上の流量の環境雰囲気の空気を供給することができる性能を有するものである。
【0017】
警報用ブザー30の背面側には、平板状のセンサ基板40がメイン基板21と平行に軸方向に延びるよう設けられており、このセンサ基板40の背面側に、互いに検知対象ガスの種類または検知レベルの異なる複数(この例では5つ)のボタン型のガスセンサ41が設けられている。各々のガスセンサ41は、センサホルダー42におけるセンサ保持部内に一部が収容された状態で、面状パッキング43を介して、ケーシング本体51に螺子止めされて固定されるセンサキャップ44が設けられて保持されている。センサキャップ44の内部には、ガスセンサ41の配置パターンに沿って延びるガス流通路が形成されている。
【0018】
ガスセンサ41の組み合わせの一例を示すと、定電位電解式ガスセンサよりなる硫化水素ガス検知用ガスセンサ、接触燃焼式ガスセンサよりなる、炭化水素ガスなどの可燃性ガスを%LEL(爆発下限界濃度)の測定レンジで検知するための第1の可燃性ガスセンサ、定電位電解式ガスセンサよりなる一酸化炭素ガス検知用ガスセンサ、熱伝導式ガスセンサよりなる、炭化水素ガスなどの可燃性ガスを体積%の測定レンジで検知するための第2の可燃性ガスセンサ、ガルバニ電池式ガスセンサよりなる酸素ガス検知用ガスセンサを例示することができる。
【0019】
ケーシングは、ケーシング本体51およびトップカバー70が、ケーシング本体51とトップカバー70との対接面の全周にわたって配設されたリング状パッキング80よりなるシール部材を介して着脱可能に連結固定されて構成されている。トップカバー70はケーシング本体51に対して複数例えば4つの固定用螺子81により固定されている。
【0020】
ケーシング本体51は、例えば透明な樹脂材料よりなり、接合部を有さない一体物として構成されている。具体的には、ケーシング本体51は、
図6に示すように、基板アセンブリ20の、機能部材が配置された一端側部分が内部に収容される、一方(
図6において上方)が開口する有底の第1筒状部60と、正面を構成する扁平面に垂直な方向の寸法が第1筒状部60の当該寸法より小さい扁平な有底の第2筒状部61とを有し、この第2筒状部61は、3方の周面すなわち正面および両側面がそれぞれ第1筒状部60の正面および両側面と連続面を形成する状態で、第1筒状部60を画成する底壁部54の外面に軸方向外方に延びるよう連続している。
【0021】
第1筒状部60の内部空間と第2筒状部61の内部空間は互いに連通しており、第2筒状部61を画成する底壁部55の内面には、基板アセンブリ20におけるメイン基板21の他端縁部を挟持して保持するメイン基板保持部56が形成されている。また、ケーシング本体51の両側壁53における第2筒状部61を画成する側壁部分の内面には、基板アセンブリ20におけるメイン基板21の両側縁が被ガイド部として案内される受容案内部57が軸方向他端側に向かって延びるよう形成されている。ここに、受容案内部57の、メイン基板21の正面側のガイド面57Aは、軸方向一端側から他端側に向かうに従って内方に傾斜するテーパー部57Bを介してメイン基板保持部56に連続している。
【0022】
ケーシング本体51(第1筒状部60)の開口端面51Aは、側面視で、軸方向における一端側から他端側に向かうに従って正面側に傾斜しており、このような構成とされていることにより、基板アセンブリ20の一部(例えばメイン基板21の一端縁から開口21Aが形成された位置までの領域)がケーシング本体51の外部に露出された状態とされるので、基板アセンブリ20のケーシング本体51に対する着脱を容易に行うことができてメンテナンス性を向上させることができる。
【0023】
ケーシング本体51の前壁52における他端側部分(第2筒状部61を画成する前壁部分)には、基板アセンブリ20におけるスイッチ素子24の各々に対向する位置(スイッチ素子24の直上の位置)に、その表面と直角方向に弾性的に変位するスイッチ素子駆動用ボタン25が装着される孔52Aが形成されている。
そして、ケーシング本体51の略正面全域には、透明な可変形性を有する保護用フィルム材68が貼着されており、この保護用フィルム材68には、各々のスイッチ素子駆動用ボタン25を覆う部分にスイッチの種類を示す表示があり、これにより、操作部12が構成されている。
また、保護用フィルム材68により覆われる、ケーシング本体51の前壁52における上端側部分(第1筒状部60を画成する前壁部分およびこれに連続する第2筒状部61を画成する前壁部分の一部)が、基板アセンブリ20におけるパネル状表示機構22を保護する保護用窓として機能し、これにより、表示部11が構成されている。すなわち、ケーシング本体51自体に開口部を形成して当該開口部に別個の保護用窓部材を設けることにより表示部11が形成される構成のものに比して可搬型ガス検知器自体を堅牢な構造を有するものとして構成することができる。
【0024】
ケーシング本体51における第2筒状部61の背面側には、第1筒状部60および第2筒状部61の両者の、正面に垂直な方向の寸法差により形成される軸方向に延びる空間部によって電源ユニット装着部65が形成されており、この電源ユニット装着部65に対して、可充電電池電源ユニット85が着脱可能に装着される。なお、この電源ユニット装着部65には、可充電電池電源ユニット85と共通の外形形状を有する、乾電池を具えた乾電池電源ユニットを、可充電電池電源ユニット85に替えて装着することもできる。
【0025】
電源ユニット装着部65において、ケーシング本体51の第2筒状部61の背面における幅方向の両側の各々には、第1筒状部60を画成する底壁部54の外面より軸方向下端側に向かって延びる薄板状の電源ユニット案内部66が形成されており、この電源ユニット案内部66の内面には、可充電電池電源ユニット85の側面に形成された溝部86F(
図7参照。)に挿入される突条66Aが軸方向に延びるよう形成されている。
また、電源ユニット装着部65において、第1筒状部60を画成する底壁部54の外面には、基板アセンブリ20における接点端子が露出されて接続用コネクタ部(図示せず)が形成されている。
【0026】
トップカバー70には、基板アセンブリ20が配設される内部空間と連通口73Aを介して連通するよう区画された共鳴空間Sが正面側領域に形成されている。
具体的には、トップカバー70における前壁71には、正面方向に開口する幅方向に延びる内部空間を有する凹所72が形成されており、この凹所72を区画する底壁部73における正面中央位置より一方の側壁方向に変位した位置、すなわち、基板アセンブリ20における警報用ブザー30のケース31における放音口31Aと対向する位置に、連通口73Aが形成されている。そして、前壁71の正面における凹所72の周囲を囲むよう形成された筒状の突縁部71A内にブザーキャップ75が設けられ、これにより、共鳴空間(反響空間)Sが形成されている。
凹所72を区画する底壁部73の内面には、例えばポリプロピレンにより構成された防塵・防水フィルタ83が連通口73Aを覆うよう設けられている。
【0027】
ブザーキャップ75は、上縁における中央部に幅方向に延びる切り欠き部76を有し、これにより、共鳴空間Sを外部に開放する警報音放音用開口部77が形成されている。従って、警報音放音用開口部77は凹所72を区画する底壁部73に形成された連通口73Aに対して軸方向上方に変位して位置されており、警報用ブザー30による警報音が所定の方向に高い指向性で放出され、十分に高い音圧レベルの警報音が得られる。
また、ブザーキャップ75には、連通口73Aに対向しないよう幅方向における他方の側壁側に変位した位置に、複数のブザー音調整孔78が形成されている。これによりブザー音の音圧向上効果を一層確実に得ることができる。
【0028】
而して、上記の可搬型ガス検知器は、一体物として構成されたケーシング本体51、基板アセンブリ20、トップカバー70および可充電電池電源ユニット85が組み立てられて構成されている。すなわち、基板アセンブリ20は、ケーシング本体51の第1筒状部60の開口から挿入されて(
図5における白抜きの矢印が挿入方向を示す。)メイン基板21の他端側部分が第2筒状部61の受容案内部57によって案内され、メイン基板21の一端側部分が第1筒状部60の内部に収容された状態において、センサ基板40の他端部が第1筒状部60を画成する底壁部54の内面に設けられたセンサ基板保持部54Aに挟持されて保持されると共にメイン基板21の他端部が第2筒状部61を画成する底壁部55の内面に形成されたメイン基板保持部56によって挟持保持されている。そして、トップカバー70がケーシング本体51の開口部に装着されることにより、メイン基板21の一端部およびセンサ基板40の一端部がそれぞれトップカバー70の上壁74の内面に設けられた対応する片状の基板支持部74A,74Bによって支持され、この状態において、固定用螺子81によってトップカバー70がケーシング本体51に気密にシールされた状態で固定される。さらに、センサキャップ44がケーシング本体51の背面に形成された、基板アセンブリ20におけるガスセンサ配置領域を外部に露出させるセンサキャップ装着用開口部59に装着され、これにより、ガス検知器本体10が構成される。そして、このガス検知器本体10における電源ユニット装着部65に対して、可充電電池電源ユニット85がガス検知器本体10を構成するケーシング本体51における第2筒状部61の背面に沿ってスライド係合されて装着される。
【0029】
この可搬型ガス検知器における、ガス検知器本体10(ケーシング本体51およびトップカバー70)、および、可充電電池電源ユニット85の各々には、例えば帯電防止性樹脂(制電性樹脂)よりなるプロテクトカバー18が一体に装着されており、プロテクトカバー18が装着された状態においては、外部に露出される樹脂表面部分の大きさが所定の大きさ以下に規制され、これにより、静電気対策が十分で信頼性の高い防爆性を有するものとなる。また、プロテクトカバー18を構成する材料それ自体の耐衝撃性によって、可搬型ガス検知器の緩衝材(保護材)としても機能するので、落下等により可搬型ガス検知器が故障または破損することを回避することができる。
【0030】
可充電電池電源ユニット85は、
図7乃至
図9に示すように、一方が開口する、互いに対向する2つの側壁86A,86Bおよびこれらの側壁86A,86Bを連結する2つの扁平壁86C,86Dにより形成される矩形筒状のハウジング部材86と、このハウジング部材86の開口部に装着されてハウジング部材86の内部に密閉された空間を形成する蓋部材89とを具えており、ハウジング部材86における正面を構成する他方の扁平壁(以下、「正面側扁平壁」という。)86Dの外面における下端縁部には、ガス検知器本体10を構成するケーシング本体51の第2筒状部61を画成する底壁部55の外面に形成された係合部58に対してスライド係合される被係合部86Eが形成されている。
【0031】
ハウジング部材86の内部には、円柱状の可充電電池90が一方の側壁86A側領域に形成された電池支持部87によって一方の側壁86Aに沿ってハウジング部材86の軸方向に延びるよう支持されて配設されていると共に、平板状の回路基板91が他方の側壁86B側領域の背面を構成する一方の扁平壁(以下、「背面側扁平壁」という。)86Cに近接した位置において、背面側扁平壁86Cに沿ってハウジング部材86の軸方向に延びるよう配設されており、可充電電池90および回路基板91は、ハウジング部材86の内部に充填された例えばエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂よりなる樹脂ブロック92に埋設されている。ここに、可充電電池90としては、例えばリチウムイオン電池などの高容量の二次電池が用いられる。
【0032】
回路基板91には、制限抵抗素子(図示せず)を介してガス検知器本体10に給電する給電用回路と、この給電用回路が形成された領域と互いに離間した位置に形成された充電用回路と、過充電・過放電防止用の制御回路(保護回路)とが形成されており、給電用回路が形成された領域と充電用回路が形成された領域との離間距離は、防爆上の理由から、例えば2.0mm以上の大きさとされていることが好ましい。
【0033】
而して、ハウジング部材86の正面側扁平壁86Dにおける他方の側壁側領域は、ハウジング部材86の開口端側からハウジング部材86の軸方向奥側に向かって内方(背面側)に傾斜するようテーパー状に形成されており、従って、ハウジング部材86の内部における他方の側壁86B側領域には、正面側扁平壁86Dの内面に、ハウジング部材86の開口端側からハウジング部材86の軸方向奥側に向かって内方に傾斜するテーパー部88が形成されている。
そして、正面側扁平壁86Dにおけるテーパー状部分の外面には、幅方向に離間して並んだ位置において、その表面に垂直な方向に延びる複数の板状の補強用リブ88Aが互いに対向してハウジング部材86の軸方向に延びるよう形成されている。各々の補強用リブ88Aの外端面は、ハウジング部材86の正面が位置される平面レベルと同等の平面レベルに位置されている。また、隣接する補強用リブ88A間の間隙には、プロテクトカバー18を形成する制電性樹脂材料が充填されており、これにより、正面の一部が構成されている。従って、可充電電池電源ユニットの正面の形状を余計な凹凸を有さない実質的にフラットなものとすることができてガス検知器本体10に対する着脱が容易になると共に外観上の体裁を損なうことがない。
【0034】
可充電電池電源ユニット85におけるハウジング部材86の内容積に対するテーパー部88の占める容積の割合は、例えば25〜40%であることが好ましい。当該割合が過大である場合には、所期の防爆性を得ることが困難となり、当該割合が過小である場合には、充填される熱硬化性樹脂の量を低減させることができなくなるので可充電電池電源ユニット85の十分な軽量化を図ることができなくなる。
【0035】
蓋部材89の外面には、ガス検知器本体10を構成するケーシング本体51の第1筒状部60を画成する底壁部54に形成された接続用コネクタ部に電気的に接続されるコネクタ部89Aが形成されており、従って、可充電電池電源ユニット85が電源ユニット装着部65に対してスライド係合されて装着されることにより、可充電電池電源ユニット85のコネクタ部89Aがガス検知器本体10の電源ユニット装着部65における接続用コネクタ部に対して電気的に接続される。
【0036】
このような可充電電池電源ユニット85は、ハウジング部材86の内部における所定の位置に可充電電池90および回路基板91を配置した状態において、ハウジング部材86の開口から熱硬化性樹脂を注入して当該熱硬化性樹脂を硬化させ、その後、蓋部材を装着固定することに作製することができる。
【0037】
而して、上記構成の可搬型ガス検知器によれば、可充電電池電源ユニット85が、ハウジング部材86の正面側扁平壁86Dの内面における他方の側壁86B側領域に、ハウジング部材86の開口端側からハウジング部材86の軸方向奥側に向かって内方に傾斜するテーパー部88が形成された構成とされていることにより、ハウジング部材86の内部に熱硬化性樹脂を充填しやすくなるので、可充電電池90および回路基板91が熱硬化性樹脂に埋設された状態を確実に得ることができると共に、充填される熱硬化性樹脂の量が低減されて軽量化が図られたものでありながら、所期の防爆性を確実に得ることができる。すなわち、熱硬化性樹脂による樹脂ブロック92を十分な大きさの熱容量を有するものとして構成することができるので、可充電電池90、例えばリチウムイオン電池が短絡してリチウムイオン電池が発熱した場合であっても、当該熱が熱硬化性樹脂による樹脂ブロック92により吸収されることとなるので、リチウムイオン電池の表面温度の上昇の程度を小さく抑制することができ、また、また、リチウムイオン電池および回路基板91が樹脂ブロック92に埋設された構造とされていることにより、リチウムイオン電池および回路基板91がガス雰囲気に晒されることがないので、それ自体が着火源となることを確実に回避することができ、従って、電源部について信頼性の高い防爆構造が得られる。
また、比較的に高価な熱硬化性樹脂の量を少なく抑制することができてコスト的に有利に製造することができる。
【0038】
さらにまた、上記構成の可搬型ガス検知器によれば、以下に示すような効果が得られる。
(1)基板アセンブリ20の実質的に全体が収容される内部空間を形成するガス検知器本体10のケーシング本体51が、基板アセンブリ20のガス検知動作に係る機能部材が配置された一端側部分が内部に収容される第1筒状部60およびこの第1筒状部60を画成する底壁部54の外面に連続して第1筒状部60の軸方向外方に延びる、基板アセンブリ20におけるメイン基板21の他端側部分が収容される第2筒状部61を有する、接合部のない一体物として構成されていることにより、可搬型ガス検知器それ自体を堅牢な構造を有するものとして構成することができるので、所期の防爆性および所期の防水性を有するものとして構成することができる。
【0039】
(2)また、ケーシング本体51が、透明な樹脂材料により構成されていることにより、表示部11を形成するための開口部をケーシング本体51に形成する必要がなく、ケーシング本体51の正面における一部を基板アセンブリ20におけるパネル状表示機構22の保護用窓として機能させることができるので、この点においても、可搬型ガス検知器それ自体を堅牢な構造を有するものとして確実に構成することができる。さらにまた、ガス検知器本体10と独立して可充電電池90および乾電池の一方を具えた電源ユニットが構成されているので、例えばリチウムイオン電池などの可充電電池および乾電池の両方を利用することができる構成のものでありながら、ケーシング本体51に乾電池用の電池装填室あるいは電池挿入口を形成する必要がない構成とされている点においても、堅牢性を向上させることができる。
【0040】
(3)さらにまた、基板アセンブリ20を単にケーシング本体51に対して挿入することによって基板アセンブリ20が保持固定され、しかも、トップカバー70がケーシング本体51に装着されて固定用螺子18により固定された状態においては、トップカバー70に形成された共鳴空間Sと基板アセンブリ20が収容される内部空間とを連通させる連通口73Bに対して、警報用ブザー30における放音口31Aが適正に位置決めされた状態の得られる構成とされているので、煩雑な作業を伴うことなく、可搬型ガス検知器を極めて容易に作製すること(組み立てること)ができると共に、故障等が生じた場合には、基板アセンブリ20全体をケーシング本体51から引き抜いて必要な機能部材の交換を行うことができるので高いメンテナンス性を得ることができる。なお、ガスセンサ41の交換は、トップカバー70を取り外すことなく、センサキャップ44をケーシング本体51より取り外すことにより行うことができる。
【0041】
(4)さらにまた、ケーシング本体51とトップカバー70との接合面において形成されるシール部が比較的小さい領域であるので、リング状パッキング80の本来の性能が確実に発現されて信頼性の高いシール構造を形成することができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、可充電電池電源ユニットにおける、可充電電池および回路基板の配置位置、並びに、テーパー部の形成位置等は、上記実施例に係る構成に限定されるものではない。