(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電動モータと、蓄電デバイスとしてのキャパシタと、前記電動モータと前記キャパシタとの間に設けたインバータ及び直流電圧変換器と、前記直流電圧変換器と前記キャパシタとの間に設けたリレーとを備え、前記電動モータと前記キャパシタとの間で電力の授受を可能とした建設機械において、
前記直流電圧変換器の前記リレー側に前記直流電圧変換器の一次側電圧を検知する電圧センサと、
前記リレーにより前記直流電圧変換器と前記キャパシタとが接続されてからの前記電圧センサの検出電圧の変化率を演算し、この変化率を用いて前記直流電圧変換器及び前記キャパシタを含む電気系部品の故障を判定する故障判定手段とを備え、
前記故障判定手段は、前記リレーにより前記直流電圧変換器と前記キャパシタが接続されてから所定時間経過後の前記電圧センサの検出電圧の変化率を算出する変化率算出手段と、
前記直流電圧変換器及び前記キャパシタを含む電気系部品の故障時における前記直流電圧変換器の一次側電圧の変化率を予め記憶した記憶手段と、
前記変化率算出手段で算出した変化率と前記記憶手段における変化率とを比較することにより前記直流電圧変換器及び前記キャパシタを含む電気系部品の故障を判定する判定部とを備えた
ことを特徴とする建設機械。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、建設機械として油圧装置と電動機とを備えたハイブリッド油圧ショベルを例にとって本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。なお、本発明は、建設機械全般(作業機械を含む)に適用が可能であり、本発明の適用は油圧ショベルに限定されるものではない。
図1は本発明の建設機械の一実施の形態を示す側面図、
図2は本発明の建設機械の一実施の形態を構成する主要電動・油圧機器のシステム構成図、
図3は本発明の建設機械の一実施の形態を構成する主要電動システムのパワー回路図である。
【0019】
図1において、ハイブリッド式油圧ショベルは走行体10と、走行体10上に旋回可能に設けた旋回体20及びショベル機構30を備えている。
【0020】
走行体10は、一対のクローラ11a,11b及びクローラフレーム12a,12b(
図1では片側のみを示す)、各クローラ11a,11bを独立して駆動制御する一対の走行用油圧モータ13、14及びその減速機構等で構成されている。
【0021】
旋回体20は、旋回フレーム21と、旋回フレーム21上に設けられた、原動機としてのエンジン22と、エンジン22により駆動されるアシスト発電モータ23と、旋回電動モータ25及び旋回油圧モータ27と、アシスト発電モータ23及び旋回電動モータ25に接続される電気二重層のキャパシタ24と、旋回電動モータ25と旋回油圧モータ27の回転を減速する減速機構26等から構成されている。旋回電動モータ25と旋回油圧モータ27の駆動力は、減速機構26を介して旋回体20(旋回フレーム21)に伝達されるので、旋回体20(旋回フレーム21)は走行体10に対して旋回駆動する。
【0022】
また、旋回体20にはショベル機構(フロント装置)30が搭載されている。ショベル機構30は、旋回体フレーム21に俯仰動可能に設けたブーム31と、ブーム31を駆動するためのブームシリンダ32と、ブーム31の先端部近傍に回転自在に軸支されたアーム33と、アーム33を駆動するためのアームシリンダ34と、アーム33の先端に回転可能に軸支されたバケット35と、バケット35を駆動するためのバケットシリンダ36等で構成されている。
【0023】
さらに、旋回体20の旋回フレーム21上には、上述した走行用油圧モータ13,14、旋回油圧モータ27、ブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36等の油圧アクチュエータを駆動するための油圧システム40が搭載されている。油圧システム40は、油圧を発生する油圧源となる油圧ポンプ41(
図2)及び各アクチュエータを駆動制御するためのコントロールバルブ42(
図2)を含み、油圧ポンプ41はエンジン22によって駆動される。
【0024】
次に、油圧ショベルの主要電動・油圧機器のシステム構成について概略説明する。
図2に示すように、エンジン22の駆動力は油圧ポンプ41に伝達されている。コントロールバルブ42は、図示しない旋回用の操作レバー装置からの旋回操作指令(油圧パイロット信号)に応じて、旋回油圧モータ27に供給される圧油の流量と方向を制御する。また、コントロールバルブ42は、旋回以外の操作レバー装置からの操作指令(油圧パイロット信号)に応じて、ブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36及び走行用油圧モータ13,14に供給される圧油の流量と方向を制御する。
【0025】
主要電動システムは、上述したアシスト発電モータ23、旋回電動モータ25、これらを駆動制御する電気部品からなるパワーコントロールユニット55、メインコントローラ80、及び電気二重層のキャパシタ24を有し、キャパシタ24とパワーコントロールユニット55との電気的接続を制御するリレー等を備えるキャパシタユニット56とを備えている。
【0026】
キャパシタ24からの直流電力は直流電圧変換器(チョッパ)51によって所定の母線電圧に昇圧されて、旋回電動モータ25を駆動するためのインバータ52、アシスト発電モータ23を駆動するためのインバータ53に入力される。平滑コンデンサ54は、母線電圧を安定化させるために設けられている。旋回電動モータ25と旋回油圧モータ27の回転軸は連結されており、減速機構26を介して旋回体20を駆動する。アシスト発電モータ23及び旋回電動モータ25の駆動状態(力行しているか回生しているか)によって、キャパシタ24は充放電されることになる。
【0027】
コントローラ80は、マイコン及び電気回路から構成される制御装置であり、エンジンキースイッチ(図示せず)によって起動し、操作指令信号、圧力信号及び回転速度信号等の
図2に示されない信号を用いて、コントロールバルブ42、パワーコントロールユニット55、キャパシタユニット56に対する制御指令を生成し、油圧、電動システム、及びエンジン22の運転制御を行う。また、後述するように、ハイブリッド油圧ショベル始動時に、キャパシタ24を含む電気系部品の故障の発生および故障部位を、自動的かつ速やかに判別する故障診断を実行する故障判定手段81(
図4参照)を備えている。故障判定手段81により判別された電気系部品の故障の発生および故障部位は、報知装置82によりオペレータに報知されると共に、無線通信端末100にも出力される。無線通信端末100は、コントローラ80が収集する機器データや上述した電気系部品の故障の発生および故障部位をホストコンピュータ等に対して無線送信する。また、電磁比例バルブ75は、メインコントローラ80からの電気信号を油圧パイロット信号に変換するものであって、この油圧パイロット信号によって、コントロールバルブ42が制御される。
【0028】
次に、本発明の建設機械の一実施の形態を構成する主要電動システムのパワー回路を
図3を用いて説明する。
図3において、
図1及び
図2に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
キャパシタユニット56には、キャパシタ24の正極と直流電圧変換器51の一次側の正極との間の電気的接続を開閉する開閉スイッチとして正側リレー57bが、キャパシタ24の負極と直流電圧変換器51の母線の負極との間の電気的接続を開閉する開閉スイッチとして負側リレー57cが、それぞれ設けられている。また、突入電流防止回路が、正側リレー57bの接点をバイパスするように、突入電流防止リレー57aと突入電流防止抵抗58とで構成されている。具体的には、突入電流防止リレー57aの一方の固定接点が、正側リレー57bのキャパシタ24側の固定接点と接続され、突入電流防止リレー57aの他方の固定接点が突入電流防止抵抗58の一端と接続され、突入電流防止抵抗58の他端が、正側リレー57bの直流電圧変換器51側の固定接点と接続されている。
【0029】
突入電流防止回路は、直流電圧変換器51内の平滑コンデンサ88が充電されていない状態において、直流電圧変換器51とキャパシタ24を接続する時に流れる過大な電流の発生を防止するものである。具体的には、正側リレー57bが閉動作する前に、突入電流防止リレー57aを閉動作させて、突入電流防止回路の経路で電流を制限して直流電圧変換器51内のコンデンサ88を充電する。
【0030】
直流電圧変換器51は、85,86で示す2個のパワートランジスタ1IGBTと2IGBTと、リアクトル87と、平滑コンデンサ88とを備えている。
【0031】
リアクトル87は、一端が端子91と接続ケーブル92と正側リレー57bとを介してキャパシタ24の正極に接続され、他端が1IGBT85のソース及び2IGBT86のドレインに接続されている。1IGBT85のドレインは、主平滑コンデンサ54の一端、アシスト発電モータ用インバータ53、及び電動旋回モータ用インバータ52の一端に接続されている。2IGBT86のソースは、負側リレー57cを介してキャパシタ24の負極、主平滑コンデンサ54の他端、アシスト発電モータ用インバータ53、及び電動旋回モータ用インバータ52の他端に接続されている。また、リアクトル87の一端には、平滑コンデンサ88の一端が接続され、平滑コンデンサ88の他端は、2IGBT86のソースに接続されている。
【0032】
コントローラ80からの指令を受けて1IGBT85,2IGBT86を交互に開閉させることにより、キャパシタ24の電圧を所定の母線電圧に昇圧させ、母線電圧を所定の一定値付近に制御する動作を行う。
【0033】
直流電圧変換器51のキャパシタ側端子の電圧(一次側電圧)V1を計測する電圧検出手段である電圧センサ89と、直流電圧変換器51の母線側端子の電圧(二次側電圧)V2を計測する電圧検出手段である電圧センサ90とが、直流電圧変換器51の一次側と二次側にそれぞれ設けられている。電圧センサ89,90によって計測された各電圧値V1,V2は、ハイブリッド油圧ショベルの始動時の電気系部品の故障の発生及び故障部位を判定する為にコントローラ80にそれぞれ入力されている。コントローラ80には、後述する故障判定手段81(
図4参照)が設けられている。
【0034】
主平滑コンデンサ54は直流電圧を平滑する。アシスト発電モータ用インバータ53及び電動旋回モータ用インバータ52は、一方に直流電圧変換器51及び主平滑コンデンサ54が接続され、他方にはアシスト発電モータ23と電動旋回モータ25とがそれぞれ接続されている。
【0035】
アシスト発電モータ用インバータ53及び旋回電動モータ用インバータ52は、例えばIGBTのようなスイッチング素子6個からなるブリッジ回路で構成されている。アシスト発電モータ用インバータ53及び旋回電動モータ用インバータ52は、双方向に電力変換を行う。
【0036】
アシスト発電モータ23及び旋回電動モータ25を駆動する場合には、コントローラ80からの指令を受けて、電流のON/OFFを繰り返し、パルス幅を変動させることで直流電力変換器51の二次側の母線から三相交流を生成する力行制御を行う。一方、アシスト発電モータ23及び旋回電動モータ25からの電力をキャパシタ24へ充電する場合には、コントローラ80からの指令を受けて、電流のON/OFFを繰り返し、パルス幅を変動させることで三相交流から直流電力変換器51の二次側の母線に直流電力を生成して回生制御する。この直流電力を供給することでキャパシタ24を充電する。
【0037】
次に、コントローラ80で実行するハイブリッド油圧ショベル始動時の電気系部品の故障の発生および故障部位を判別する故障判定手段について
図4乃至
図6を用いて説明する。
図4は本発明の建設機械の一実施の形態を構成する故障判定手段の構成を示す機能ブロック図、
図5は本発明の建設機械の一実施の形態を構成する故障判定手段における各故障部位のキャパシタ電圧の特性を示す特性図、
図6は本発明の建設機械の一実施の形態を構成する故障判定手段におけるキャパシタ電圧の変化率と故障部位との関係を示す表図である。
図4乃至
図6において、
図1乃至
図3に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0038】
故障判定手段81は、
図4に示すように、記憶手段81aと、変化率算出手段81bと、電圧比較手段81cと、変化率比較手段81dと、判定部81eとを備えている。また、故障判定手段81には、電圧センサ89が検出した直流電圧変換器51の一次側電圧V1と、電圧センサ90が検出した直流電圧変換器51の二次側電圧V2が入力されている。さらに、故障判定手段81からは、無線通信端末100と報知装置82へ、電気系部品の故障の発生および故障部位を報知する信号が出力されている。
【0039】
記憶手段81aには、後述する直流電圧変換器51の一次側電圧V1の変化率の閾値KV1SL1,KV1SL2と、直流電圧変換器51の二次側電圧V2の閾値KV2SLと、直流電圧変換器51の一次側電圧V1の閾値KVIG1Sとが記憶されている。
【0040】
変化率算出手段81bには、電圧センサ89が検出した直流電圧変換器51の一次側電圧V1が入力される。変化率算出手段81bは、後述する演算方法によりこの一次側電圧V1の変化率を算出する。算出された変化率は変化率比較手段81dに出力される。
【0041】
電圧比較手段81cには、電圧センサ89が検出した直流電圧変換器51の一次側電圧V1と、電圧センサ90が検出した直流電圧変換器51の二次側電圧V2と、記憶手段81aからの閾値KV2SLとKVIG1Sとが入力される。電圧比較手段81cは、これらの入力信号を比較演算して、その結果を判定部81eに出力する。
【0042】
変化率比較手段81dには、変化率算出手段81bからの出力信号と、記憶手段81aからの閾値KV1SL1とKV1SL2とが入力される。変化率比較手段81dは、これらの入力信号を比較演算して、その結果を判定部81eに出力する。
【0043】
判定部81eには、電圧比較手段81cからの出力信号と、変化率比較手段81dからの出力信号とが入力される。判定部81eは、これらの入力信号から電気系部品の故障の発生および故障部位を判定し、この判定信号を無線通信端末100と報知装置82へ出力する。
【0044】
次に、故障判定手段81の処理内容について説明する。
本発明の建設機械の一実施の形態の油圧ショベルにおける始動は、まず、図示しないイグニッションキーをオンからスタート位置にして、エンジン22、油圧ポンプ41を起動させる。この後に、コントローラ80によるキャパシタ24の初期充放電制御が実行される。キャパシタ24の初期充放電制御は、パワーコントロールユニット55を起動し、インバータ52,53及び主平滑コンデンサ54の初期充電処理とリレー57a〜cの接続処理を行い、キャパシタ24の初期充電等を行うものである。
【0045】
このキャパシタ24の初期充放電制御におけるリレー57a〜cの接続処理後の直流電圧変換器51の一次側電圧V1の挙動をコントローラ80の故障判定手段81で監視することで、キャパシタ24を含む電気系部品の故障の発生および故障部位を判別することができる。
【0046】
図5において、横軸は時間を示していて、縦軸は直流電圧変換器51の一次側電圧V1を示している。また、特性線の実線(a)〜(c)は、キャパシタユニット56等の電気部品等が正常である場合の直流電圧変換器51の一次側電圧V1の特性を、点線は、キャパシタユニット56内のケーブル、リレーの断線や、キャパシタユニットへの接続ケーブル92の断線、端子91の接触不良等いわゆるキャパシタユニット側断線が生じている場合の直流電圧変換器51の一次側電圧V1の特性を、一点鎖線(a’)〜(c’)は、直流電圧変換器51の1IGBT85、およびリアクトル87が断線している場合、または直流電圧変換器51の2IGBT86が短絡している場合の直流電圧変換器51の一次側電圧V1の特性をそれぞれ示している。また、時刻T1は突入電流防止リレー57aを接続し、直流電圧変換器51の1IGBT85をゲートオンした時刻を示す。
【0047】
まず、直流電圧変換器51、キャパシタユニット56等の電気系部品およびこれらの接続が正常である場合について説明する。時刻T1において、突入電流防止リレー57aを接続し、直流電圧変換器51の1IGBT85をゲートオンするので、キャパシタ24から直流電圧変換器51の平滑コンデンサ88に電流が急激に流入する。このことにより、直流電圧変換器51の一次側電圧V1は実線(a)〜(c)のようにキャパシタ24の電圧(初期電圧)まで直ちに上昇する。この初期電圧はキャパシタ24の充電状態により異なる。実線(a)はキャパシタ24の充電量が多い場合の特性を、実線(b)はキャパシタ24の充電量が少ない場合の特性を、実線(c)はキャパシタ24の充電量がほとんどない場合の特性をそれぞれ示している。
【0048】
直流電圧変換器51の一次側電圧V1が初期電圧まで上昇した後は、アシスト発電モータ23からの電力が、アシスト発電モータ用インバータ53と直流電圧変換器51とを介してキャパシタ24に流入し、キャパシタ24を充電する。このため、直流電圧変換器51の一次側電圧V1は初期電圧から徐々に上昇する。このときの直流電圧変換器51の一次側電圧V1の変化率は、キャパシタ24の静電容量とキャパシタ24への充電電流によって定まる。
【0049】
ここで、直流電圧変換器51の一次側電圧V1が初期電圧まで上昇した後の時刻をT2とし、時刻T2から所定の時間経過後の時刻をT3と設定している。ここで、時刻T2は変化率を求める際の電圧下限値を規定する時刻であって、時刻T2と時刻T1との時間ΔT1は、例えば10msとする。
【0050】
また、時刻T3は変化率を求める際の電圧上限値を規定する時刻であって、キャパシタユニット56内のケーブルが断線した状態における一次側電圧V1の変化特性が飽和する前の時刻とする。時刻T3と時刻T2との時間ΔT2は、例えば、50msとする。
【0051】
一方、キャパシタユニット56内のケーブル、リレー57a〜cの断線や、キャパシタユニット56への接続ケーブル92の断線、端子91の接触不良等いわゆるキャパシタユニット側断線が生じている場合には、突入電流防止リレー57aを接続し、直流電圧変換器51の1IGBT85をゲートオンする時刻T1の後に、アシスト発電モータ23からの電流はキャパシタ24に流入せず、直流電圧変換器51の平滑コンデンサ88のみに流入する。この直流電圧変換器51の平滑コンデンサ88の静電容量はキャパシタ24の静電容量に比べて十分に小さいので、直流電圧変換器51の一次側電圧V1は点線(d)で示すように0から急速に上昇する。
【0052】
また、直流電圧変換器51の1IGBT85、およびリアクトル87が断線している場合には、突入電流防止リレー57aを接続し、直流電圧変換器51の1IGBT85をゲートオンすると、直流電圧変換器51の一次側電圧V1は一点鎖線(a’)〜(c’)のようにキャパシタ24の電圧(初期電圧)まで直ちに上昇するが、その後は、アシスト発電モータ23からの電流がキャパシタ24に流入しないので、それぞれの初期電圧から変化しないことになる。一点鎖線(a’)はキャパシタ24の充電量が多い場合の特性を、一点鎖線(b’)はキャパシタ24の充電量が少ない場合の特性を、一点鎖線(c’)はキャパシタ24の充電量がほとんどない場合の特性をそれぞれ示している。
【0053】
さらに、直流電圧変換器51の2IGBT86が短絡している場合には、直流電圧変換器51の一次側電圧V1は一点鎖線(c’)のように0のままになる。
【0054】
したがって、突入電流防止リレー57aを接続し、直流電圧変換器51の1IGBT85をゲートオンする時刻T1の後の時刻T2から時刻T3における直流電圧変換器51の一次側電圧V1の変化率を監視することで、電気系部品の故障の発生および故障部位を判別することができる。本実施の形態においては、故障判定手段81の変化率算出手段81bにおいて、時刻T2から時刻T3における時間ΔT2における直流電圧変換器51の一次側電圧V1の変化率を演算し、その変化率を変化率比較手段81dにおいて、記憶手段81aに記憶された例えば
図6に示すキャパシタ電圧の変化率と故障部位との関係を示す表図と比較することで、故障部位を判定することができる。
【0055】
図6において、KV1SL1は予め定めた変化率の閾値であって、電気系部品が正常であるときの最大値を示し、KV1SL2は予め定めた変化率の閾値であって、電気系部品が正常であるときの最小値を示す。これらの値は記憶手段81aに記憶されている。変化率比較手段81dにおいて、変化率算出手段81bから出力された変化率がKV1SL1を超過すれば、判定部81eはキャパシタユニット56側断線と判別し、同様に変化率算出手段81bから出力された変化率がKV1SL2未満であれば、判定部81eは直流電圧変換器51内部故障と判別する。変化率算出手段81bから出力された変化率がKV1SL1以下KV1SL2以上であれば、判定部81eは電気系部品が正常であると判別する。
【0056】
記憶手段81aに
図6で示す表図を記憶テーブルの形式でデータ化して記憶させ、変化率算出手段81bにおいて、予め設定された時刻T2,T3における電圧センサ89が検出した直流電圧変換器51の一次側電圧V1に応じた変化率を算出し、変化率比較手段81dにおいて、記憶手段81aのデータと比較演算し、判定部81eにおいて故障部位を判別する。
【0057】
次に、本発明の建設機械の一実施の形態において、故障判定手段における故障診断フローについて
図7を用いて説明する。
図7は本発明の建設機械の一実施の形態を構成する故障判定手段における故障診断のフローチャート図である。
図6において、
図1乃至
図6に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0058】
まず、
図7のステップ(S101)では、エンジン22が始動しているか否かが判断される。具体的には、例えば、図示しないイグニッションキーがスタート位置に操作されたか否かで判断する。エンジン22が始動していればYESと判断され、ステップ(S102)に進み、エンジン始動していなければNOと判断されて、ステップ(S101)へ戻る。
【0059】
ステップ(S102)では、エンジン22の回転速度信号が所定の設定値KNE以上か否かが判断される。具体的には、コントローラ80に取込んだエンジン22の回転速度信号と記憶部に予め記憶された設定値KNEとを比較する。設定値KNEは、アシスト発電モータ23からの電力がキャパシタ24を充電し得るエンジン回転数であって、例えばアイドル回転数である800回転に設定する。エンジン22の回転数が設定値KNE以上であればYESと判断され、ステップ(S103)に進み、エンジン22の回転数が設定値KNE未満であればNOと判断されて、ステップ(S101)へ戻る。
【0060】
ステップ(S103)では、アシスト発電モータ23によるパワーコントロールユニット55の母線電圧の制御が実行されているか否かが判断される。具体的には、コントローラ80がアシスト発電モータ用インバータ53を回生制御しているか否かで判断する。ステップ(S102)とステップ(S103)とがYESと判断されれば、アシスト発電モータ23によりキャパシタ24を充電するのに必要な電力が得られると判定することができる。コントローラ80がアシスト発電モータ用インバータ53を回生制御していればYESと判断され、ステップ(S104)に進み、回生制御していなければNOと判断されて、ステップ(S101)へ戻る。
【0061】
ステップ(S104)では、パワーコントロールユニット55の母線電圧である直流電圧変換器51の二次側電圧V2が所定の閾値KV2SL以上か否かが判断される。具体的には、故障判定手段81の電圧比較手段81cにおいて、電圧センサ90が検出した直流電圧変換器51の二次側電圧V2と記憶手段81aに予め記憶された閾値KV2SLとを比較する。閾値KV2SLは、アシスト発電モータ23からの電力がキャパシタ24を充電し得る母線電圧であって、例えば300Vに設定する。直流電圧変換器51の二次側電圧V2が閾値KV2SL以上であればYESと判断され、ステップ(S106)に進み、直流電圧変換器51の二次側電圧V2が閾値KV2SL未満であればNOと判断されて、ステップ(S105)へ進む。
【0062】
ステップ(S105)では、アシスト発電モータ23又はアシスト発電モータ用インバータ53が異常と判定部81eが判定する。ステップ(S104)において直流電圧変換器51の二次側電圧V2が所定の閾値以上となっていなければ、正常に発電が行われていないためである。故障判定手段81の判定部81eは、例えば、モニタ画面等の報知装置82によりオペレータへ異常の報知を行うと共に故障部位を表示し、これらの情報を無線通信端末100を介してホストコンピュータ等へ無線送信する。
【0063】
ステップ(S106)では、直流電圧変換器51の一次側電圧V1が所定の閾値KVIG1S以下か否かが判断される。故障判定手段81の電圧比較手段81cにおいて、電圧センサ89が検出した直流電圧変換器51の一次側電圧V1と記憶手段81aに予め記憶された閾値KVIG1Sとを比較する。このタイミングにおいては、リレー57a〜cは不接続で直流電圧変換器51の1IGBT85もゲートオンしていないので、正常であれば、直流電圧変換器51の一次側電圧V1は大略0Vである。したがって、閾値KVIG1Sは、例えば、ノイズ電圧等から想定される最小電圧であって、例えば20Vに設定する。直流電圧変換器51の一次側電圧V1が閾値KVIG1S以下であればYESと判断され、ステップ(S108)に進み、直流電圧変換器51の一次側電圧V1が閾値KVIG1S超過であればNOと判断されて、ステップ(S107)へ進む。
【0064】
ステップ(S107)では、直流電圧変換器51の1IGBT85が短絡または、キャパシタユニット56のリレー57a〜57cの短絡と判定部81eが判定する。ステップ(S106)において、直流電圧変換器51の一次側電圧V1が所定の閾値以下となっていなければ、異常な回路が構成されて電圧が発生しているためである。故障判定手段81の判定部81eは、例えば、モニタ画面等の報知装置82によりオペレータへ異常の報知を行うと共に故障部位を表示し、これらの情報を無線通信端末100を介してホストコンピュータ等へ無線送信する。
【0065】
ステップ(S108)では、突入電流防止リレー57aを接続し、直流電圧変換器51の1IGBT85をゲートオンする。具体的には、コントローラ80からキャパシタユニット56の突入電流防止リレー57aに閉指令が出力され、パワーコントロールユニット55の直流電圧変換器51の1IGBT85にゲートオン信号が出力される。このことにより、キャパシタ24への充電が開始される。
【0066】
ステップ(S109)では、直流電圧変換器51の一次側電圧V1の変化率を測定する。具体的には、故障判定手段81の変化率算出手段81bにおいて、
図5で示す直流電圧変換器51の1IGBT85をゲートオンする時刻T1の後の時刻T2から時刻T3における時間ΔT2における直流電圧変換器51の一次側電圧V1の変化率を演算して算出する。
【0067】
ステップ(S110)では、ステップ(S109)で算出した直流電圧変換器51の一次側電圧V1の変化率が所定の閾値KV1SL1超過か否かが判断される。具体的には、故障判定手段81の変化率比較手段81dにおいて、変化率算出手段81bが算出した直流電圧変換器51の一次側電圧V1の変化率と記憶手段81aに予め記憶された閾値KV1SL1とを比較する。直流電圧変換器51の一次側電圧V1の変化率が閾値KV1SL1超過であればYESと判断され、ステップ(S111)に進み、直流電圧変換器51の一次側電圧V1の変化率が閾値KV1SL1以下であればNOと判断されて、ステップ(S112)へ進む。
【0068】
ステップ(S111)では、キャパシタユニット56側断線と判定部81eが判定する。故障判定手段81の判定部81eは、例えば、モニタ画面等の報知装置82によりオペレータへ異常の報知を行うと共に故障部位を表示し、これらの情報を無線通信端末100を介してホストコンピュータ等へ無線送信する。
【0069】
ステップ(S112)では、ステップ(S109)で算出した直流電圧変換器51の一次側電圧V1の変化率が所定の閾値KV1SL2未満か否かが判断される。具体的には、故障判定手段81の変化率比較手段81dにおいて、変化率算出手段81bが算出した直流電圧変換器51の一次側電圧V1の変化率と記憶手段81aに予め記憶された閾値KV1SL2とを比較する。直流電圧変換器51の一次側電圧V1の変化率が閾値KV1SL2未満であればYESと判断され、ステップ(S113)に進み、直流電圧変換器51の一次側電圧V1の変化率が閾値KV1SL2以上であればNOと判断されて、正常で故障部位なしとして、ENDへ進む。
【0070】
ステップ(S113)では、直流電圧変換器51の内部故障と判定部81eが判定する。故障判定手段81の判定部81eは、例えば、モニタ画面等の報知装置82によりオペレータへ異常の報知を行うと共に故障部位を表示し、これらの情報を無線通信端末100を介してホストコンピュータ等へ無線送信する。
【0071】
以上の故障診断フローにより電気系部品の故障部位を速やかかつ確実に判定することができる。なお、ステップ(S111)でキャパシタユニット56側断線と判定された場合には、キャパシタユニット56またはその接続ケーブル92の修理または交換を行えば良い。また、ステップ(S113)で直流電圧変換器51の内部故障と判定された場合には、直流電圧変換器51を修理するか直流電圧変換器51を含むパワーコントロールユニット55を交換すれば良い。
【0072】
上述した本発明の建設機械の一実施の形態によれば、アシスト発電モータ23,電動旋回モータ25と蓄電装置としてキャパシタ24とを備えた建設機械において、キャパシタ24や直流電圧変換器51等を含む電気系部品の故障の発生および故障部位を、機械の起動時に速やかかつ確実に判別することができるので、修理や部品交換等のメンテナンス性が向上する。また、これに伴い、機械の停止時間を短くすることができるので、作業能力を高めることができて、生産性が向上する。
【0073】
なお、本発明の実施の形態においては、故障判定手段81から無線通信端末100と報知装置82へ、電気系部品の故障の発生および故障部位を報知する信号が出力されているが、これに限るものではない。無線通信端末100と報知装置82のいずれか一方に出力されていても良い。
【0074】
なお、本発明の実施の形態においては、油圧装置と電動機とを備えたハイブリッド油圧ショベルを例にとって説明したが、これに限るものではない。電動モータとキャパシタとを有する建設・作業機械全般に対して適用が可能である。