特許第5778573号(P5778573)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778573
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】ストレッチャー
(51)【国際特許分類】
   A61G 1/02 20060101AFI20150827BHJP
   A61G 1/00 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   A61G1/02 501
   A61G1/00 504
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-283938(P2011-283938)
(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2013-132373(P2013-132373A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】506267145
【氏名又は名称】ファーノ・ジャパン・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100094226
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 裕
(72)【発明者】
【氏名】荻野 治造
【審査官】 増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−099952(JP,A)
【文献】 特開2005−144070(JP,A)
【文献】 特開昭53−145388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 1/02
A61G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人を載せるベッド部と、
前記ベッド部に折り畳み自在に取り付けられ、前記ベッド部の上昇に伴って展開し、前記ベッド部の下降に伴って折り畳まれる前脚及び後脚と、
前記前脚及び後脚にそれぞれ取り付けられる前輪及び後輪と、を具備し、
前記前輪及び後輪の内の少なくとも何れか一方を旋回キャスターとし、
前記旋回キャスターは、車輪と、車輪の回転軸を支持する支持アームと、支持アームの基部を脚に連結すると共にこの基部を旋回軸を中心に旋回自在に軸支する軸支部とを有して構成され、
さらに前記軸支部の内部を旋回軸方向に向けてスライド自在に貫通し且つ付勢手段によって車輪の外周面から離れる方向に向けて付勢され、前記付勢力に抗してスライド移動した際に前記車輪の外周面に直接又は他の部材を介して間接に当接して車輪にブレーキをかけるブレーキロッドと、
前記ブレーキロッドを前記車輪にブレーキをかける位置と解放する位置とに移動させてそれぞれの位置に保持するマニュアルブレーキレバーと、
前記ベッド部が最下部まで下降した際にベッド部に設置した押圧部によって押圧されて前記ブレーキロッドをブレーキをかける位置に移動させ、ベッド部を最下部から上昇した際に前記押圧部による押圧が解除されて前記付勢手段の付勢力によってブレーキロッドを解放位置に自動復帰させる自動ブレーキレバーと、を設置したことを特徴とするストレッチャー。
【請求項2】
請求項1に記載のストレッチャーであって、
前記マニュアルブレーキレバーは、前記ブレーキロッドの上端部に当接するカム状当接面を有することで、車輪にブレーキをかける位置と解放する位置とに前記ブレーキロッドを移動してその位置に保持することを特徴とするストレッチャー。
【請求項3】
請求項2に記載のストレッチャーであって、
前記自動ブレーキレバーは、前記マニュアルブレーキレバー近傍の脚に設置した回転軸に回転自在に取り付けられ、前記ベッド部の押圧部によって押圧されこの押圧力を回転力に変換する押圧部当接部と、前記ブレーキロッドに連結され前記回転力を前記ブレーキロッドのスライド移動力に変換するブレーキロッド駆動部とを具備して構成されていることを特徴とするストレッチャー。
【請求項4】
請求項3に記載のストレッチャーであって、
前記旋回キャスターを取り付ける脚は後脚であり、その折り畳み状態にかかわらず前記旋回キャスターの旋回軸が常に略垂直方向を向いた状態を保つようにリンク機構によって構成され、
一方前記マニュアルブレーキレバーは、前記ブレーキロッドの真上の位置にその操作面を露出して設置され、且つ前記自動ブレーキレバーの押圧部当接部は前記マニュアルブレーキレバーの操作面よりも前方の位置に設置されていることを特徴とするストレッチャー。
【請求項5】
請求項4に記載のストレッチャーであって、
前記自動ブレーキレバーの押圧部当接部は上方向に向かって突出しており、一方前記ベッド部の押圧部は下方から上方に斜め後方に向かって傾斜する押圧面を有し、この押圧面に前記押圧部当接部を当接することでベッド部の押圧部の上下動を自動ブレーキレバーの回転運動に変換することを特徴とするストレッチャー。
【請求項6】
請求項4に記載のストレッチャーであって、
前記後脚を構成するリンク機構は、上端がベッド部に回転自在に取り付けられる第1後脚部と、上端がベッド部に回転自在に取り付けられ且つ下端が第1後脚部の中途部に回転自在に取り付けられる第2後脚部と、前端が第1後脚部の下端に回転自在に取り付けられ且つ後端に前記旋回キャスターを取り付ける第3後脚部と、下端が第3後脚部の旋回キャスターを取り付けた位置よりも前方に回転自在に取り付けられ且つ上端が第2後脚部の中途部又はベッド部に回転自在に取り付けられる第4後脚部とを有し、
前記第3後脚部の前記第4後脚部の下端を回転自在に取り付けた回転軸と、前記自動ブレーキレバーの回転軸とを一致させたことを特徴とするストレッチャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はストレッチャーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、傷病者を救急車に搬送したり、救急車から病院内に搬送したりする場合に、折り畳み自在な脚を備えたストレッチャーが使用されている。この種のストレッチャーは、傷病者を乗せるベッド部と、折り畳み自在な脚と、脚の先端に取り付けられる車輪とを具備して構成されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
そして例えば救急隊員は、傷病者が倒れている救急現場にストレッチャーを搬送した後、脚を折り畳み、ベッド部を地面付近にまで下降させ、傷病者をベッド部に乗せる。その後ベッド部を持ち上げると、ベッド部の上昇に伴って脚は自重により自動的に展開してゆき、さらにベッド部を上昇していくと脚は開き切った状態でロックされ、ストレッチャーは起立した状態に保持される。
【0004】
上述のようにストレッチャーの4本の脚(前脚と後脚)の先端にはそれぞれ車輪(前輪と後輪)が取り付けられているが、一般に一対の後脚に取り付けられる一対の後輪は垂直軸に対して旋回自在となるようにキャスター(旋回キャスター)が取り付けられ、一方一対の前脚に取り付けられる一対の前輪は前方方向のみを向くように固定されたキャスター(固定キャスター)が取り付けられ、これによってストレッチャーをその後部から押して搬送してゆく際に直進性を有し、且つ左右への方向転換が容易且つ確実に行えるようにしている。
【0005】
ところで傷病者をベッド部に乗せるために、ストレッチャーの脚を折り畳んでベッド部を最下位置にセットした際は、マニュアルのブレーキ機構(フットブレーキ機構)とは別の自動のブレーキ機構によって自動的に車輪にブレーキをかけ、その動きを停止させることが求められる場合がある。このような自動ブレーキ機構を設けておけば、傷病者をベッド部に乗せる際にストレッチャーが移動せずその載置作業がスムーズに行え、また傷病者を乗せたストレッチャーが水平でない地面上を急に動き出したりすることも防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−36089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら従来の自動ブレーキ機構とマニュアルブレーキ機構は1つの車輪に対して別々に独立して設置されていたので、構造が複雑になるばかりか、部品点数が増加し、低コスト化が阻害されていた。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、自動ブレーキ機構とマニュアルブレーキ機構の両者を、簡単な構造で低コストに構成できるストレッチャーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかるストレッチャーは、人を載せるベッド部と、前記ベッド部に折り畳み自在に取り付けられ前記ベッド部の上昇に伴って展開し前記ベッド部の下降に伴って折り畳まれる前脚及び後脚と、前記前脚及び後脚にそれぞれ取り付けられる前輪及び後輪と、を具備し、前記前輪及び後輪の内の少なくとも何れか一方を旋回キャスターとし、前記旋回キャスターは車輪と車輪の回転軸を支持する支持アームと支持アームの基部を脚に連結すると共にこの基部を旋回軸を中心に旋回自在に軸支する軸支部とを有して構成され、さらに前記軸支部の内部を旋回軸方向に向けてスライド自在に貫通し且つ付勢手段によって車輪の外周面から離れる方向に向けて付勢され前記付勢力に抗してスライド移動した際に前記車輪の外周面に直接又は他の部材を介して間接に当接して車輪にブレーキをかけるブレーキロッドと、前記ブレーキロッドを前記車輪にブレーキをかける位置と解放する位置とに移動させてそれぞれの位置に保持するマニュアルブレーキレバーと、前記ベッド部が最下部まで下降した際にベッド部に設置した押圧部によって押圧されて前記ブレーキロッドをブレーキをかける位置に移動させベッド部を最下部から上昇した際に前記押圧部による押圧が解除されて前記付勢手段の付勢力によってブレーキロッドを解放位置に自動復帰させる自動ブレーキレバーと、を設置したことを特徴とする。これによって、マニュアルブレーキレバーと自動ブレーキレバーの2つのブレーキレバーが、1つのブレーキロッドを兼用して車輪にブレーキをかけるので、2つのブレーキ機構の構造を簡素化できる。つまり自動ブレーキ機構とマニュアルブレーキ機構の両者を簡単な構造で低コストに構成できる。
【0010】
また本発明にかかるストレッチャーは、前記マニュアルブレーキレバーが、前記ブレーキロッドの上端部に当接するカム状当接面を有することで、車輪にブレーキをかける位置と解放する位置とに前記ブレーキロッドを移動してその位置に保持することを特徴とする。このようにブレーキロッドの上端部に当接するカム状当接面を用いたマニュアルブレーキレバーなので、構造が簡単であると同時に、車輪にブレーキをかける位置と解放する位置とにブレーキロッドを確実に保持することができる。
【0011】
また本発明にかかるストレッチャーは、前記自動ブレーキレバーが、前記マニュアルブレーキレバー近傍の脚に設置した回転軸に回転自在に取り付けられ、前記ベッド部の押圧部によって押圧されこの押圧力を回転力に変換する押圧部当接部と、前記ブレーキロッドに連結され前記回転力を前記ブレーキロッドのスライド移動力に変換するブレーキロッド駆動部とを具備して構成されていることを特徴とする。上述のようにマニュアルブレーキレバーによってブレーキロッドの上端面を押圧するように構成した場合、この上端面を押圧するように自動ブレーキレバーを設置することができないが、この発明によれば、自動ブレーキレバーをマニュアルブレーキレバーの側方に容易に併設することが可能になる。
【0012】
また本発明にかかるストレッチャーは、前記旋回キャスターを取り付ける脚が後脚であり、その折り畳み状態にかかわらず前記旋回キャスターの旋回軸が常に略垂直方向を向いた状態を保つようにリンク機構によって構成され、一方前記マニュアルブレーキレバーは、前記ブレーキロッドの真上の位置にその操作面を露出して設置され、且つ前記自動ブレーキレバーの押圧部当接部は前記マニュアルブレーキレバーの操作面よりも前方の位置に設置されていることを特徴とする。このようにマニュアルブレーキレバーをブレーキロッドの真上の位置にその操作面を露出して設置し、しかも自動ブレーキレバーの押圧部当接部をマニュアルブレーキレバーの操作面よりも前方の位置に設置したので、脚の折り畳み位置がどの位置であっても、マニュアルブレーキレバーの操作の際に自動ブレーキレバー等が妨げになることはなく、その後方からの操作が容易に行える。
【0013】
また本発明にかかるストレッチャーは、前記自動ブレーキレバーの押圧部当接部が上方向に向かって突出しており、一方前記ベッド部の押圧部は下方から上方に斜め後方に向かって傾斜する押圧面を有し、この押圧面に前記押圧部当接部を当接することでベッド部の押圧部の上下動を自動ブレーキレバーの回転運動に変換することを特徴とする。このように構成すれば、ベッド部の押圧部による上下動を容易且つスムーズに自動ブレーキレバーの回転運動に変換することが可能になる。
【0014】
また本発明にかかるストレッチャーは、前記後脚を構成するリンク機構が、上端がベッド部に回転自在に取り付けられる第1後脚部と、上端がベッド部に回転自在に取り付けられ且つ下端が第1後脚部の中途部に回転自在に取り付けられる第2後脚部と、前端が第1後脚部の下端に回転自在に取り付けられ且つ後端に前記旋回キャスターを取り付ける第3後脚部と、下端が第3後脚部の旋回キャスターを取り付けた位置よりも前方に回転自在に取り付けられ且つ上端が第2後脚部の中途部又はベッド部に回転自在に取り付けられる第4後脚部とを有し、前記第3後脚部の前記第4後脚部の下端を回転自在に取り付けた回転軸と、前記自動ブレーキレバーの回転軸とを一致させたことを特徴とする。このように構成すれば、第3後脚部と第4後脚部間を回転自在に連結する回転軸と、自動ブレーキレバーの回転軸とを共用できるので、部品点数を削減でき、構造の簡素化・低コスト化が図れる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ストレッチャーに設置する自動ブレーキ機構とマニュアルブレーキ機構の両者を、簡単な構造で低コストに構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ストレッチャー1が展開した状態での側面図である。
図2】ストレッチャー1が折り畳まれて最下部に位置した状態での側面図である。
図3】押圧部20を示す拡大斜視図である。
図4】後脚61が展開した状態での旋回キャスター120近傍部分の要部拡大概略断面図である。
図5】後脚61が折り畳まれた状態でのマニュアルブレーキレバー140等の近傍部分の要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態を用いて構成されたストレッチャー1が展開した状態での側面図、図2はストレッチャー1が折り畳まれて最下部に位置した状態での側面図である。これらの図に示すようにストレッチャー1は、傷病者等の人を載せるベッド部11と、ベッド部11に折り畳み自在に取り付けられる脚41とを具備している。なお以下の説明で、人の頭部を載せる側(図1,2の左側)を前(前側)、足を載せる側(図1,2の右側)を後(後側)という。
【0018】
ベッド部11は、フレーム(枠部材)13を矩形状(長方形状)に連結して構成されている。即ち長手方向(紙面左右方向)を向く2本の平行なフレーム部材の両端を、短手方向(紙面奥方向)に向かう2本の平行なフレーム部材で連結して長方形状のフレーム13を構成している。フレーム13の内側(内部)には、補強フレームを取り付けてもよい。ベッド部11上には図示しない担架が載置・固定されて使用される。なおこのストレッチャー1ではベッド部11と担架とを別々に構成しているが、ベッド部11自体に担架の機能を持たせた一体構造としても良い。
【0019】
フレーム13の長手方向を向く2本のフレーム部材の下面側の後端部近傍部分には、それぞれ押圧部20が取り付けられている。図3は押圧部20を単独で示す拡大斜視図である。同図に示すように押圧部20は、略矩形状の基部21と、基部21の後側の側面から突出する押圧面形成部23と、基部21及び押圧面形成部23の上部から突出する板状のブラケット25とを具備して構成されている。押圧面形成部23の下面側には押圧面27が形成されている。押圧面27は下方から上方に向けて、後方に向かって張り出してゆくように傾斜する傾斜面となっている。ブラケット25には2つの取付孔29が設けられている。押圧部20はこれら取付孔29を用いてブラケット25の部分を図1に示すフレーム13の長手方向を向く2本のフレーム部材に固定し、これによってその押圧面27が下方及び後方を向くようにしている。
【0020】
図1に戻って脚41は、一対ずつの前脚43と後脚61とからなっている。前脚43は1本の長尺な第1前脚部45と、第1前脚部45の中途部に回転自在に連結される第2前脚部47とを具備して構成されている。第1前脚部45の下端にはキャスター200が取り付けられ、キャスター200の一部を構成する車輪(以下「前輪」という。)201は回転軸203を中心に回転自在に構成されている。第1前脚部45の上端はフレーム13に回転自在且つフレーム13の長手方向に向かってスライド移動自在に取り付けられている。第2前脚部47の上端はフレーム13に回転自在に取り付けられている。
【0021】
後脚61は1本の長尺な第1後脚部67と、第1後脚部67の中途部に回転自在に連結される第2後脚部69と、先端側に前記第1後脚部67の下端が回転自在に取り付けられる第3後脚部71と、上端が第2後脚部69の中途部に回転自在に連結され下端が第3後脚部71の中途位置に回転自在に連結される第4後脚部73とを具備して構成されている。後脚61の下端(具体的には第3後脚部71の後端近傍位置)には、旋回キャスター120が取り付けられ、旋回キャスター120の一部を構成する車輪(以下「後輪」という。)80は回転軸81を中心に回転自在で且つ旋回軸Lを中心に旋回自在に構成されている。
【0022】
つまり後脚61は第1,第2,第3,第4後脚部67,69,71,73によってリンク機構が構成されており、それぞれを回転自在に連結する4つの回転軸a1,a2,a3,a4が四辺形を形成している。第1後脚部67の上端はフレーム13に回転自在に取り付けられている。第2後脚部69の上端はフレーム13に回転自在且つフレーム13の長手方向に向かってスライド移動自在に取り付けられている。
【0023】
図4は後脚61が展開した状態での旋回キャスター120近傍部分の要部拡大概略断面図、図5は後脚61が折り畳まれた状態でのマニュアルブレーキレバー140等の近傍部分の要部拡大斜視図である。これらの図に示すように旋回キャスター120は、後輪80と、後輪80の回転軸81を支持する支持アーム90と、支持アーム90の基部91を第3後脚部71に連結すると同時にこの基部91を旋回軸Lを中心に旋回自在に軸支する軸支部100とを具備して構成されている。
【0024】
後輪80は車輪部83の中心に回転軸81を設けて構成されている。支持アーム90は車輪部83の両側に車輪部83を挟むように配置される一対のフォーク93と、両フォーク93を車輪部83の上部において連結する基部91とを有して構成されている。両フォーク93の先端には、前記後輪80の回転軸81がベアリングを介して取り付けられている。つまり支持アーム90は前方又は後方から見て略コ字状に形成され、その間に後輪80が設置されて回転自在に取り付けられている。基部91の下面にはブレーキ板95が取り付けられている。ブレーキ板95は弾性を有する板材で構成され、その一端側を基部91の下面の固定部97に固定し、その他端側を下記するブレーキロッド160によって押圧される被押圧部101とし、その中間部分の下面を後輪80の外周面85に当接して後輪80にブレーキをかけるブレーキ部103としている。ブレーキ板95は、これに負荷がかけられていないときは、そのブレーキ部103は後輪80の外周面85から離れている。
【0025】
軸支部100は、旋回キャスター120側に固定されるキャスター側固定部材105と、第3後脚部71側に固定される脚側固定部材107の間を、ベアリング109を介して連結して構成されている。軸支部100の中央には、上下に貫通するロッド挿通孔111が形成されており、ロッド挿通孔111の下部は下記するブレーキロッド160の先端側部分を上下動自在に貫通するロッドガイド部113となり、ロッド挿通孔111の上部はロッドガイド部113よりも内径寸法の大きい付勢手段収納部115となっている。第3後脚部71の前記軸支部100の上部の位置には、下記するブレーキロッド160をガイドしながら挿通するロッド挿通孔131が形成されており、さらにロッド挿通孔131の上部にはロッド挿通孔131よりも内径の大きいロッド先端収納部133が形成されている。
【0026】
ブレーキロッド160は棒状に形成され、その下端部は球面状に形成された車輪押圧部161となっており、上端部は球面状に形成されたレバー押圧部163となっている。ブレーキロッド160の下部は上部よりも外径寸法が小さくなっており、外径が変更される部分は段部となっていてこの部分をバネ座165としている。ブレーキロッド160の上部近傍の側部からはピンからなるレバー係合部167が水平方向(旋回軸Lに垂直な方向)に突出している。バネ座165とキャスター側固定部材105の付勢手段収納部115の底面との間には、付勢手段としてコイルスプリング169が設置され、ブレーキロッド160は上方向(旋回キャスター120から離れる方向)に押し上げられている。
【0027】
第3後脚部71のロッド先端収納部133の上部には、マニュアルブレーキレバー140が旋回軸Lに垂直な回転軸141を中心に回転自在に設置されている。マニュアルブレーキレバー140はその上面が略水平方向を向く操作面142になっており、またその下面側は前記ブレーキロッド160のレバー押圧部163に当接するカム状当接面143になっている。カム状当接面143は、マニュアルブレーキレバー140の回転位置に応じて、ブレーキロッド160を上昇してその車輪押圧部161をブレーキ板95から離した位置(図4の位置)、即ちブレーキを開放する位置に保持すると共に、ブレーキロッド160を押圧して下降させてその車輪押圧部161をブレーキ板95に押し付けてブレーキ板95を後輪80の外周面85に押し付ける位置、即ちブレーキをかける位置に保持する形状に形成されている。
【0028】
第3後脚部71の第4後脚部73の下端を回転自在に取り付けた回転軸a3には、自動ブレーキレバー170が回転自在に取り付けられている。つまり回転軸a3と自動ブレーキレバー170の回転軸175とは一致している。自動ブレーキレバー170は、略L字形状を有し、略垂直上方を向く押圧部当接部171と、略水平方向を向くブレーキロッド駆動部173と、両者の中間(屈曲部分近傍)に位置し前記第3後脚部71に回転自在に連結される回転軸175とを具備して構成されている。つまりこの実施形態では回転軸175は前記回転軸a3と一致する同一軸である。押圧部当接部171の先端は略円弧状に形成されている。ブレーキロッド駆動部173の先端近傍には横長(水平方向に長い)の貫通孔からなるロッド係合部177が設けられている。ロッド係合部177は、前記ブレーキロッド160のレバー係合部167を略ぴったり挿入する上下方向の幅を有し、且つレバー係合部167が横方向にスライド移動自在となるように形成されている。
【0029】
以上のように構成されたストレッチャー1において、図1に示すように脚41を展開した状態からベッド部11に設けた図示しないロック解除レバーを操作することで脚41のロックを解除すると、脚41の折り畳みが可能になり、ストレッチャー1の自重により前脚43の第1前脚部45の上端部が後方に向かってスライド移動し、同時に後脚61の第2後脚部69の上端部が後方に向かってスライド移動し、図2に示すように脚41が折り畳まれてベッド部11が下降する。
【0030】
このとき前述のように後脚61は第1,第2,第3,第4後脚部67,69,71,73によって4つの回転軸a1,a2,a3,a4が四辺形を形成するリンク機構を構成しているので、展開された状態から折り畳まれていく際に、その折り畳み状態にかかわらず旋回キャスター120の旋回軸Lは常に略垂直方向を向いた状態を保つ。このため旋回キャスター120は常に正常に動作し、ストレッチャー1移動時の方向転換を正常に行うことができ、その操作性が向上する。
【0031】
一方マニュアルブレーキレバー140の操作面142を、図4の矢印A方向に足などで押圧すると、マニュアルブレーキレバー140が回転してカム状当接面143がブレーキロッド160のレバー押圧部163を押圧して前記コイルスプリング169の付勢力に抗してこれを下降し、車輪押圧部161をブレーキ板95の被押圧部101に押し付けこれを下降してそのブレーキ部103を後輪80の外周面85に押し付け、ブレーキがかかる。前記マニュアルブレーキレバー140の操作面142を元の位置に戻すように足などで逆回転すれば、コイルスプリング169の付勢力によってブレーキロッド160は元の位置に自動復帰し、前記ブレーキは解除される。
【0032】
ところでマニュアルブレーキレバー140は、ブレーキロッド160の真上の位置にその操作面142を露出して設置され、且つ自動ブレーキレバー170の押圧部当接部171は前記マニュアルブレーキレバー140の操作面142よりも前方の位置に設置されている。このため後脚61の折り畳み位置がどの位置であっても、ストレッチャー1の後側からマニュアルブレーキレバー140を操作する際に、自動ブレーキレバー170等が妨げになることはなく、その操作が容易に行える。
【0033】
一方前述のように、脚41を折り畳んで図2に示すようにベッド部11を最下位置まで下降したとき、ベッド部11に取り付けた押圧部20の押圧面27が、自動ブレーキレバー170の押圧部当接部171を押圧する。これによって自動ブレーキレバー170には回転軸175を中心に回転する回転力が働き、自動ブレーキレバー170は図4に点線で示すように回転する。このときブレーキロッド駆動部173のロッド係合部177とブレーキロッド160のレバー係合部167の係合によって、前記回転力はブレーキロッド160の下降する力に変換され、前記コイルスプリング169の付勢力に抗してブレーキロッド160は下降し、その車輪押圧部161はブレーキ板95の被押圧部101に押し付けられこれを下降してそのブレーキ部103を後輪80の外周面85に押し付け、ブレーキをかける。前記ベッド部11を上昇すれば、前記押圧部20による押圧部当接部171の押圧が解除され、コイルスプリング169の付勢力によってブレーキロッド160及び自動ブレーキレバー170は元の位置に自動復帰し、前記ブレーキは解除される。
【0034】
以上説明したように上記ストレッチャー1は、人を載せるベッド部11と、ベッド部11に折り畳み自在に取り付けられベッド部11の上昇に伴って展開しベッド部11の下降に伴って折り畳まれる前脚43及び後脚61と、前脚43及び後脚61にそれぞれ取り付けられる前輪201及び後輪80とを具備し、後輪80を旋回キャスター120とし、旋回キャスター120は後輪80と後輪80の回転軸81を支持する支持アーム90と支持アーム90の基部91を後脚61に連結すると共にこの基部91を旋回軸Lを中心に旋回自在に軸支する軸支部100とを有して構成し、さらに軸支部100の内部を旋回軸L方向に向けてスライド自在に貫通し且つコイルスプリング169によって後輪80の外周面から離れる方向に向けて付勢されこの付勢力に抗してスライド移動した際に後輪80の外周面85にブレーキ板95を介して間接に当接して後輪80にブレーキをかけるブレーキロッド160と、ブレーキロッド160を後輪80にブレーキをかける位置と解放する位置とに移動させてそれぞれの位置に保持するマニュアルブレーキレバー140と、ベッド部11が最下部まで下降した際にベッド部11に設置した押圧部20によって押圧されてブレーキロッド160をブレーキをかける位置に移動させ、ベッド部11を最下部から上昇した際に押圧部20による押圧が解除されてコイルスプリング169の付勢力によってブレーキロッド160を解放位置に自動復帰させる自動ブレーキレバー170とを設置して構成されている。このように構成することによりストレッチャー1は、マニュアルブレーキレバー140と自動ブレーキレバー170の2つのブレーキレバーが、1つのブレーキロッド160を兼用して後輪80にブレーキをかけるので、2つのブレーキ機構の構造を簡素化できる。つまり自動ブレーキ機構とマニュアルブレーキ機構の両者を簡単な構造で低コストに構成できる。
【0035】
また上記マニュアルブレーキレバー140は、ブレーキロッド160の上端部に当接するカム状当接面143を有することで、後輪80にブレーキをかける位置と解放する位置とにブレーキロッド160を移動してその位置に保持する構成としたので、構造が簡単であると同時に、後輪80にブレーキをかける位置と解放する位置とにブレーキロッド160を確実に保持させることができる。
【0036】
一方上記自動ブレーキレバー170は、マニュアルブレーキレバー140近傍の後脚61に設置した回転軸175に回転自在に取り付けられ、ベッド部11の押圧部20によって押圧されこの押圧力を回転力に変換する押圧部当接部171と、ブレーキロッド160に連結され前記回転力を前記ブレーキロッド160のスライド移動力に変換するブレーキロッド駆動部173とを具備して構成されている。マニュアルブレーキレバー140によってブレーキロッド160の上端面を押圧するように構成した場合、この上端面を押圧するように自動ブレーキレバー170を設置することはできないが、この自動ブレーキレバー170はマニュアルブレーキレバー140の側方に容易に併設することが可能になる。
【0037】
また上記ストレッチャー1において、旋回キャスター120を取り付ける後脚61は、その折り畳み状態にかかわらず旋回キャスター120の旋回軸Lが常に略垂直方向を向いた状態を保つようにリンク機構によって構成され、一方マニュアルブレーキレバー140は、ブレーキロッド160の真上の位置にその操作面142を露出して設置され、且つ自動ブレーキレバー170の押圧部当接部171はマニュアルブレーキレバー140の操作面142よりも前方の位置に設置されている。これによって後脚61の折り畳み位置がどの位置であっても、マニュアルブレーキレバー140の操作の際に自動ブレーキレバー170等が妨げになることはなく、その操作が容易に行える。
【0038】
また上記ストレッチャー1において、自動ブレーキレバー170の押圧部当接部171は上方向に向かって突出しており、一方ベッド部11の押圧部20は下方から上方に斜め後方に向かって傾斜する押圧面27を有し、この押圧面27に押圧部当接部171を当接することでベッド部11の押圧部20の上下動を自動ブレーキレバー170の回転運動に変換するように構成しているので、ベッド部11の押圧部20による上下動を容易且つスムーズに自動ブレーキレバー170の回転運動に変換することが可能になる。
【0039】
また上記ストレッチャー1においては、後脚61を構成するリンク機構は、上端がベッド部11に回転自在に取り付けられる第1後脚部67と、上端がベッド部11に回転自在に取り付けられ且つ下端が第1後脚部67の中途部に回転自在に取り付けられる第2後脚部69と、前端が第1後脚部67の下端に回転自在に取り付けられ且つ後端に旋回キャスター120を取り付ける第3後脚部71と、下端が第3後脚部71の旋回キャスター120を取り付けた位置よりも前方に回転自在に取り付けられ且つ上端が第2後脚部69の中途部に回転自在に取り付けられる第4後脚部73とを有し、前記第3後脚部71の第4後脚部73の下端を回転自在に取り付けた回転軸a3と、自動ブレーキレバー170の回転軸175とを一致させている。これによって回転軸a3と回転軸175とを共用できるので、部品点数を削減でき、構造の簡素化・低コスト化が図れる。なお第4後脚部73の上端は、第2後脚部69の中途部に取り付ける代りに、ベッド部11に回転自在に取り付けてもよい。
【0040】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば上記ストレッチャー1においては、旋回キャスター120を後輪80に設けたが、前輪201に設けても良い。また両車輪80,201に設けても良い。また上記ストレッチャー1においては、ブレーキロッド160の車輪押圧部161をブレーキ板95を介して間接に後輪80に当接してブレーキをかけたが、ブレーキ板95以外の部材を介在しても良く、またブレーキ板95を省略して車輪押圧部161を直接後輪80の外周面85に当接してブレーキをかけてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 ストレッチャー
11 ベッド部
13 フレーム
20 押圧部
27 押圧面
41 脚
43 前脚
61 後脚
67 第1後脚部
69 第2後脚部
71 第3後脚部
73 第4後脚部
a1,a2,a3,a4 回転軸
80 後輪(車輪)
81 回転軸
90 支持アーム
91 基部
93 フォーク
95 ブレーキ板
100 軸支部
120 旋回キャスター
L 旋回軸
140 マニュアルブレーキレバー
142 操作面
143 カム状当接面
160 ブレーキロッド
169 コイルスプリング(付勢手段)
170 自動ブレーキレバー
171 押圧部当接部
173 ブレーキロッド駆動部
175 回転軸
201 前輪(車輪)
図1
図2
図3
図4
図5