特許第5778599号(P5778599)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5778599鉄道貨車の空気ばね圧力均一化方法、装置、並びにそれを備えた鉄道貨車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778599
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】鉄道貨車の空気ばね圧力均一化方法、装置、並びにそれを備えた鉄道貨車
(51)【国際特許分類】
   B61F 5/10 20060101AFI20150827BHJP
   B60G 99/00 20100101ALI20150827BHJP
   B61D 3/18 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   B61F5/10 D
   B60G99/00
   B61D3/18 A
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-36180(P2012-36180)
(22)【出願日】2012年2月22日
(65)【公開番号】特開2013-169934(P2013-169934A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2014年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】590003825
【氏名又は名称】北海道旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 信吾
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 克行
(72)【発明者】
【氏名】中野 龍一
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 博彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 頼光
(72)【発明者】
【氏名】稲場 匡
(72)【発明者】
【氏名】新井田 武久
【審査官】 黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−262914(JP,A)
【文献】 特開2010−235000(JP,A)
【文献】 特開2010−234999(JP,A)
【文献】 特開2001−334937(JP,A)
【文献】 特開2009−249889(JP,A)
【文献】 特表2006−500281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 5/10
B60G 99/00
B61D 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1鉄道車両としての鉄道貨車を1台又は複数台連結して第1編成列車に編成されており、当該第1編成列車に、第2鉄道車両を1台又は複数台連結した第2編成列車を積載可能であって、
前記第1鉄道車両は、
前記第1鉄道車両の長手方向の両端部にそれぞれ備えられる第1台車と、
前記第1台車に備えられるとともに、前記第1鉄道車両を支持する第1空気ばねと、
前記第1鉄道車両の長手方向の中央部に備えられる第2台車と、
前記第2台車に備えられるとともに、前記第1鉄道車両を支持する第2空気ばねと、
前記第2空気ばねに供給される圧力空気の流量を制御する電磁弁を備えており、
前記第1空気ばねに接続されている第1圧力センサにより当該第1空気ばねの圧力を検出するステップと、
前記第1圧力センサの出力に基づいて、前記第1空気ばねと前記第2空気ばねとの圧力が均一になるように、前記電磁弁の開度を調整するステップと、から成ること
を特徴とする鉄道貨車の空気ばね圧力均一化方法。
【請求項2】
請求項1記載の鉄道貨車の空気ばね圧力均一化方法において、
前記第1圧力センサは、前記第1鉄道車両の長手方向両端部に備えられる前記第1台車における前記第1空気バネのそれぞれに接続された2個の圧力センサからなり、
前記第2空気ばねに第2圧力センサを接続して当該第2空気ばねの圧力を検出し、
前記第1圧力センサの出力の平均値を算出し、この平均値と前記第2圧力センサの出力とを比較し、両者が均一になるように、前記電磁弁の開度を調整して、前記第1空気ばねと前記第2空気ばねとの圧力が均一になるように前記第2空気ばねの圧力を調整すること、
を特徴とする鉄道貨車の空気ばね圧力均一化方法。
【請求項3】
請求項1記載の鉄道貨車の空気ばね圧力均一化方法において、
前記電磁弁として、前記開度と前記第2空気ばねに供給される目標空気圧力との関係が既知であるものを用いて、
前記第1圧力センサの出力に基づいて、前記電磁弁の開度を調整して、前記第1空気ばねと前記第2空気ばねとの圧力を均一化すること、
を特徴とする鉄道貨車の空気ばね圧力均一化方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項記載の鉄道貨車の空気ばね圧力均一化方法において、
前記第1鉄道車両は標準軌の軌道を走行する鉄道貨車であり、前記第2鉄道車両は、狭軌の軌道を走行する鉄道車両であり、前記第1鉄道車両の台枠上には、前記狭軌の軌道が敷設されていること、
を特徴とする鉄道貨車の空気ばね圧力均一化方法。
【請求項5】
第1鉄道車両としての鉄道貨車を1台又は複数台連結して第1編成列車に編成されており、当該第1編成列車に、第2鉄道車両を1台又は複数台連結した第2編成列車を積載可能であって、
前記第1鉄道車両は、
前記第1鉄道車両の長手方向の両端部にそれぞれ備えられる第1台車と、
前記第1台車に備えられるとともに、前記第1鉄道車両を支持する第1空気ばねと、
前記第1鉄道車両の長手方向の中央部に備えられる第2台車と、
前記第2台車に備えられるとともに、前記第1鉄道車両を支持する第2空気ばねと、
前記第1空気ばねに接続されて当該第1空気ばねの圧力を検出する第1圧力センサと、
前記第2空気ばねに供給される圧力空気の流量を制御する電磁弁と、
前記電磁弁の作動を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記第1空気ばねと前記第2空気ばねとの圧力を均一化するため、前記第1圧力センサの出力に基づいて前記電磁弁の前記開度を調整すること、
を特徴とする鉄道貨車の空気ばね圧力均一化装置。
【請求項6】
請求項5記載の鉄道貨車の空気ばね圧力均一化装置において、
前記第1圧力センサは、前記第1鉄道車両の長手方向両端部に備えられる前記第1台車における前記第1空気バネのそれぞれに接続された2個の圧力センサからなり、
前記第2空気ばねに接続されており当該第2空気ばねの圧力を検出する第2圧力センサを更に備えており、
前記制御手段は、前記第1空気ばねと前記第2空気ばねとの圧力を均一化するため、前記第1圧力センサの出力の平均値を算出し、この平均値と前記第2圧力センサの出力とを比較し、両者が均一になるように、前記電磁弁の開度を調整すること、
を特徴とする鉄道貨車の空気ばね圧力均一化装置。
【請求項7】
請求項5記載の鉄道貨車の空気ばね圧力均一化装置において、
前記電磁弁は、前記開度と前記第2空気ばねに供給される目標空気圧力との関係が既知であり、
前記制御手段は、前記第1空気ばねと前記第2空気ばねとの圧力を均一化するため、前記第1圧力センサの出力と、前記開度及び前記目標空気圧力の関係とに基づいて、前記電磁弁の開度を調整すること、
を特徴とする鉄道貨車の空気ばね圧力均一化装置。
【請求項8】
請求項5記載の鉄道貨車の空気ばね圧力均一化装置において、
前記第1鉄道車両は標準軌の軌道を走行する鉄道車両であり、前記第2鉄道車両は、狭軌の軌道を走行する鉄道車両であり、前記第1鉄道車両の台枠上には、前記狭軌の軌道が敷設されていること、
を特徴とする鉄道貨車の空気ばね圧力均一化装置。
【請求項9】
請求項5記載の鉄道貨車の空気ばね圧力均一化装置において、
前記第1空気ばね及び第2空気ばねには、前記貨物車両の車体長手方向に渡って引き通されている空気配管から分岐した空気管を通して前記圧力空気が供給されており、
前記電磁弁は、前記第2空気ばねに通じる前記空気管に配置されていること、
を特徴とする鉄道貨車の空気ばね圧力均一化装置。
【請求項10】
請求項9記載の鉄道貨車の空気ばね圧力均一化装置において、
前記第1空気ばねは、前記第1台車の台車枠を構成する側梁の車体長手方向中央部の近傍にそれぞれ配設されており、
前記第1台車の前記両第1空気ばねは、前記空気管に高さ調整装置を介して接続されているとともに、互いに差圧弁を介して接続されていること、
を特徴とする鉄道貨車の空気ばね圧力均一化装置。
【請求項11】
請求項5〜10のいずれか一項記載の空気ばね圧力均一化装置を備えたことを特徴とする鉄道貨車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両を搭載可能な鉄道貨車における空気ばねの圧力均一化方法及び装置、並びに当該装置を備えた鉄道車両を搭載可能な鉄道貨車であって、鉄道貨車の両端部と中央部に設けられるおける台車の空気ばねの圧力均一化方法及び装置、並びにその装置を備えた鉄道貨車に関する。
特に、本発明は、一方の軌道(例えば2本のレールの間隔が1067mmの狭軌)を走行するとともに長手方向の両端部に台車を備える複数の第2鉄道車両からなる第2編成列車を、他方の軌道(例えば2本のレールの間隔が1435mmの標準軌)を走行する複数の第1鉄道貨車から成る第1編成列車に積載して運搬する鉄道貨車であって、両端部と中央部に設けられる台車の空気ばねの圧力を均一化する方法及び装置、並びに当該装置を備えた鉄道貨車に関する。
【背景技術】
【0002】
軌間の異なる路線を相互に直通運転する方法は複数考案されている。例えば、鉄道車両の台車に、車軸の長手方向の両端部に備えられる2枚の車輪の間隔を、走行する軌間の間隔に合わせて変更できる軌間変換機構を備え、一方の軌間から他方の軌間に切り替わる地点に台車の軌間可変機構を動作させる軌間可変装置を備え、鉄道車両に当該切り替わり地点を通過させることで軌間の異なる路線を相互に直通運転する例がある。
【0003】
鉄道車両に軌間の異なる路線を走行させる別の方法として、一方の軌間を走行する複数の連結された貨車あるいは客電車等の鉄道車両を、他方の軌間を走行する複数の連結された貨車の床面に敷設された一方の軌間の上に積載して輸送する方法がある。この場合、貨車から貨車へ積み荷である上記鉄道車両が円滑に移動できるように、貨車と貨車との連結部にはレール状の構造物を備えた渡り装置が掛け渡されている。
【0004】
後者の例に関しては、特許文献1において、複数の鉄道車両から構成され所定軌道を走行する鉄道列車を連結状態のまま搭載する列車搭載部を備えるとともに、所定軌道とは異なる寸法の軌間を有する特定軌道を走行する貨物列車及び列車搬入搬出方法として開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−262914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方の軌間(左右の2本のレールの間隔)を持つ軌道を走行する複数の連結された貨車あるいは機関車、客電車等の鉄道車両を、他方の軌間を持つ軌道を走行する複数の連結された鉄道貨車の床面に敷設された一方の軌道の上に積載して輸送する場合、積み荷となる一方の鉄道車両の重量が大きくなる傾向がある。特に、一方の鉄道車両が貨物を運搬する車両の場合、他方の鉄道貨車に積載される貨物の総重量は、一方の車両の自重とその車両に積載された貨物の重量の和となり、積載される貨物の重量が50〜60重量トンに及ぶことが推定される。
【0007】
重量積載物を積載する鉄道貨車に備えられる各台車の輪軸に、積み荷の荷重が略均等に負担されない場合は、当該鉄道車両を積載する鉄道貨車において、軸重が不均一となる、又は大きな荷重を負担する輪軸の軸重が許容軸重を超過するというおそれがある。許容軸重を超過した鉄道貨車の輪軸が軌道(例えば、標準軌)を通過することによって、軌道の損傷が促進され、軌道の保守周期の短縮と保守コストの上昇をもたらすおそれがある。
【0008】
このため、一方の軌道(狭軌)を走行するとともに長手方向の両端部に台車を備える複数の第2鉄道車両からなる第2編成列車を、他方の軌道(標準軌)を走行する複数の第1鉄道車両としての鉄道貨車からなる第1編成列車に積載して運搬する当該鉄道貨車において、特に、第2鉄道車両に備えられる各台車が荷重をほぼ均等に負担しない場合に、第1鉄道車両において、大きな荷重を負担する輪軸の軸重を許容軸重の範囲内に収める点において解決すべき課題がある。
【0009】
本発明の目的は、一方の軌道を走行する複数の連結された第2鉄道車両を、他方の軌道を走行する複数の連結された第1鉄道貨車の床面に敷設された一方の軌道上に積載して輸送する場合に、第1鉄道貨車に備えられる台車の軸重を均一化できる空気ばねの圧力均一化方法及び装置、並びにその装置を備えた鉄道貨車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明による鉄道貨車における空気ばねの圧力均一化方法は、第1鉄道車両としての鉄道貨車を1台又は複数台連結して第1編成列車に編成されており、当該第1編成列車に、第2鉄道車両を1台又は複数台連結した第2編成列車を積載可能であって、前記第1鉄道車両は、前記第1鉄道車両の長手方向の両端部にそれぞれ備えられる第1台車と、前記第1台車に備えられるとともに、前記第1鉄道車両を支持する第1空気ばねと、前記第1鉄道車両の長手方向の中央部に備えられる第2台車と、前記第2台車に備えられるとともに、前記第1鉄道車両を支持する第2空気ばねと、前記第2空気ばねに供給される圧力空気の流量を制御する電磁弁を備えており、前記第1空気ばねに接続されている第1圧力センサにより当該第1空気ばねの圧力を検出するステップと、前記第1圧力センサの出力に基づいて、前記第1空気ばねと前記第2空気ばねとの圧力が均一になるように、前記電磁弁の開度を調整するステップと、から成ることを特徴としている。
【0011】
また、この発明による鉄道貨車における空気ばねの圧力均一化装置は、第1鉄道車両としての鉄道貨車を1台又は複数台連結して第1編成列車に編成されており、当該第1編成列車に、第2鉄道車両を1台又は複数台連結した第2編成列車を積載可能であって、前記第1鉄道車両は、前記第1鉄道車両の長手方向の両端部にそれぞれ備えられる第1台車と、前記第1台車に備えられるとともに、前記第1鉄道車両を支持する第1空気ばねと、前記第1鉄道車両の長手方向の中央部に備えられる第2台車と、前記第2台車に備えられるとともに、前記第1鉄道車両を支持する第2空気ばねと、前記第1空気ばねに接続されて当該第1空気ばねの圧力を検出する第1圧力センサと、前記第2空気ばねに供給される圧力空気の流量を制御する電磁弁と、前記電磁弁の作動を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1空気ばねと前記第2空気ばねとの圧力を均一化するため、前記第1圧力センサの出力に基づいて前記電磁弁の前記開度を調整することを特徴としている。
【0012】
更に、この発明による第1鉄道車両は、上記の空気ばねの圧力均一化装置を備えた鉄道貨車である。
【発明の効果】
【0013】
本発明である鉄道貨車の空気ばね圧力均一化方法及び装置によれば、一方の軌道を走行する複数の連結された第2鉄道車両を、他方の軌道を走行する複数の連結された第1鉄道車両の床面に敷設された一方の軌道上に積載して輸送する場合に、第1鉄道車両としての鉄道貨車に備えられる複数の台車の軸重を均一化できて、他方の軌道に作用する荷重を分散することができ、且つ許容軸重の超過を抑制することができる。また、本発明によれば、そうした空気ばねの圧力均一化装置を備えた第1鉄道車両としての鉄道貨車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明による空気ばねの圧力均一化装置を備えた鉄道貨車の一実施例であって、標準軌を走行する鉄道貨車の台枠の上面に敷設された狭軌の軌道上に積載された鉄道車両が積載された状態を示す側面図である。
図2図2は、図1に示す鉄道貨車のA−A断面図である。
図3図3は、図1に示す鉄道貨車において、空気ばねの圧力を均一化することにより軸重を均等にする軸重均等化装置を備える鉄道貨車の配管、配線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による、台車の軸重を均等化可能にした、鉄道貨車の空気ばね圧力均一化方法及び装置、並びに軸重均等化装置を備える鉄道貨車の実施形態を、図1から図3を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明による鉄道車両を積載可能な鉄道貨車の一実施例を示す側面図である。第1鉄道車両100は、例えば、2本のレールの間隔が1435mmである標準軌を走行する鉄道貨車であり、第2鉄道車両200は、2本のレールの間隔が1067mmである狭軌を走行するものである。図1において、標準軌を走行する第1鉄道車両100をなす台枠110の上面には、レール205によって狭軌が敷設されており、第2鉄道車両200がこの狭軌に載せられている。第2鉄道車両200は、機関車、客車、電車、ディーゼルカー、貨車、保線用車両等であり、これら鉄道車両が編成されて第2編成列車を構成している。第1鉄道車両100としての鉄道貨車は、1台又は複数台連結して第1編成列車に編成されており、当該第1編成列車に、第2鉄道車両を1台又は複数台連結した第2編成列車を積載可能である。詳述はしないが、第1鉄道車両100からなる第1編成列車は専用の機関車によって牽引される。
【0017】
第1鉄道車両100は、その長手方向の両端部に第1台車50,50を備えるとともに、長手方向の中央部に第2台車70を備えている。第2台車70を備えるのは、重量の大きい狭軌の第2鉄道車両200を積載したときに、第1鉄道車両100に備わる台車50,50,70の輪軸1軸当たりの軸重を小さくして、高速走行時に標準軌の軌道へ与える衝撃を緩和するためである。各台車50,50,70には2軸の輪軸(2枚の車輪と1本の車軸からなる)が備えられている。
【0018】
第1鉄道車両100の床面である台枠110(図2参照)上には狭軌の軌道をなすレール205が敷設されている。また、隣り合う第1鉄道車両100,100間の連結部にはレール205,205に連続する態様で渡り装置207が備えられている。各第1鉄道車両100のレール205と渡り装置207とにより、複数の連結された第1鉄道車両100の長手方向の一方の端部から他方の端部まで、連続した狭軌の軌道が形成されている。詳述はしないが、渡り装置207は、複数の第1鉄道車両100からなる編成車両が曲線及び縦曲線(例えば、上り勾配から下り勾配へ変わる点)を通過する場合に、隣接する第1鉄道車両100,100間で生じる枕木方向及び高さ方向の相対変位を吸収できる機能を備えている。
【0019】
図2は、図1に示す鉄道貨車のA−A断面図である。第1鉄道車両100は、床面をなす台枠110と、台枠110の幅方向の両端部に立設される側構体120,120と、側構体120,120の上端部に載置される屋根構体130とからなる車両構体を備えている。なお、積み荷である第2鉄道車両200を第1鉄道車両100の長手方向に沿って敷設される狭軌のレール205を利用して、荷役(積み込み、及び積み下ろし)するため、第1鉄道車両100の長手方向の両端部には妻構体を設置していない。
【0020】
各構体及び台枠110は、架台の上面に、所定の形状に押出成形されたアルミ合金製の押出形材をその押出方向と交差する方向に沿って所定の枚数並べて配設した後、押出形材の接合面同士を突き合せた接合線に沿って摩擦撹拌接合又は溶接することによって製作される。製作された各構体と台枠は、摩擦撹拌接合又は溶接によって組立てられ、第1鉄道車両100の車両構体が構成される。第2鉄道車両200を積載するために、第1鉄道車両100の台枠110の上面には、狭軌の軌道をなすレール205が敷設されている。
【0021】
第1鉄道車両100は、台枠110の長手方向の両端部の下面には第1台車50,50が、また、台枠110の中央部の下面には第2台車70を備えている。
台車50,50,70は、それぞれ、軌道5の長手方向に沿って離置される側梁16,16と、両側梁16,16の長手方向の中央部同士を接続するとともに枕木方向に沿って配設される中梁(図示なし)と、から構成される台車枠と、輪軸10を回動可能に支持する軸箱体(図示なし)と、から構成される。軸箱体は軸ばね(図示なし)によって、台車枠に対して弾性支持されている。
【0022】
側梁16,16の長手方向の中央部であって、車体中心から離れる側(外側)には空気ばね座20,20が備えられており、空気ばね座20,20の上面に載置される第1空気ばね52,53(第1台車50について)、及び第2空気ばね72,73(第2台車70について)によって、台枠110の下面が弾性支持されている。
【0023】
図3は、図1に示す鉄道貨車において、空気ばねの圧力を均一化することにより軸重を均等にする軸重均等化装置を備える鉄道貨車の配管、配線図である。第1鉄道車両100(鉄道貨車)は、その長手方向の両端部を第1台車50,50によって支持されるとともに、中央部を第2台車70によって支持されている。各台車50,50,70の台車枠をなす側梁16の長手方向の中央部には空気ばね座20,20が配設されており、空気ばね座20,20の上面に備えられる第1空気ばね52,53及び第2空気ばね72,73が、第1鉄道車両100の台枠110の下面を支持している。
【0024】
第1空気ばね52,53及び第2空気ばね72,73には、編成された第1鉄道車両100に引き通される空気管180から分岐する空気管182を通じて高圧空気が供給される。
第1鉄道車両100の長手方向の両端部に備えられる第1台車50,50の台車枠をなす左右の各側梁16,16には、その高さを検知するとともに、その高さを調整する高さ調整装置(弁)55,56が備えられている。一般に、高さ調整装置55,56は、第1鉄道車両100の台枠110の下面に備えられた高さ調整弁に接続するレバー(図示なし)と、このレバーと台車枠とを回動可能に接続する連結棒(図示なし)と、から構成されている。
【0025】
荷重の重心位置が偏った場合、あるいは走行時の振動などによって、レール上面から第1鉄道車両100の台枠110下面に至る高さが所定の範囲を超えて上下に変位した場合に、高さ調整装置55,56が作動する。高さ調整装置55,56は、第1空気ばね52,53へ供給される高圧空気の給排気量を調整することによって、軌道5の上面から台枠110の下面までの高さ、及び台枠110の傾きを調整する。
第1空気ばね52,53は、車体幅方向左右の側梁16,16において空気ばね座20,20上に配設されていて且つ差圧弁54を備える空気管によって接続されているので、差圧弁54の作動によって、所定の範囲を超えて第1鉄道車両100が傾かないように左右の空気ばね52,53の圧力差(高さ)が所定の範囲内に維持されている。
【0026】
第1鉄道車両100の台枠110下面からレール上面までの高さを所定の範囲内に維持する、或いは台枠110の左右方向(枕木方向)の傾きを矯正する機能については、第1鉄道車両100の両端部に備えられる第1台車50,50が担う。そのため、第1鉄道車両100の中央部に備えられる第2台車70には、高さ調整装置及び左右の空気ばね72,73の空気圧力差を所定の範囲に維持する差圧弁は配設されていない。
【0027】
第2鉄道車両200が第1鉄道車両100に積載された場合、第2鉄道車両200はその長手方向の両端にのみが台車で支持されているため(図1参照、特に、第1鉄道車両100の長手方向の長さと、第2鉄道車両200のそれとがほぼ同じ場合)、第2鉄道車両200の荷重は、第1鉄道車両100の両端部の第1台車50,50によって支持され、中央部の第2台車70はその荷重をほとんど負担しない状態となる可能性がある。つまり、荷重を支持する第1台車50,50の軸重は、第2台車70の軸重に比較して大きく、各台車50,50,70の軸重が不均一となるだけでなく、大きな荷重を負担する台車50,50の軸重が許容軸重を超過するおそれがある。
【0028】
上記の事象が生じないように、第1鉄道車両100は、第1台車50に備えられる第1空気ばね52(53)の空気圧力を検知する第1圧力センサ57と、第2台車70に備えられる第2空気ばね72(73)の圧力を検知する第2圧力センサ77と、第2台車70の第2空気ばね72(73)の空気圧力を調整する電磁弁78と、第1圧力センサ57及び第2圧力センサ77に接続されるとともに電磁弁78を制御する制御装置79と、を備えている。
電磁弁78は、第1鉄道車両100からなる第1編成列車の全長に渡って引き通される空気配管180と、第2台車70の第2空気ばね72(73)とを接続する空気配管182に備えられる。圧力センサ57,77と、制御装置79と、電磁弁78と、は制御線190で接続されている。
【0029】
第2鉄道車両200が第1鉄道車両100に積載された後、まず、制御装置79は、第1鉄道車両100の長手方向の両端部の各第1台車50の第1空気ばね52(53)に接続される第1圧力センサ57の出力を基に、両端部の第1台車50,50の空気ばね52(53)の空気圧力の平均値を算出する。
次に、制御装置79は、算出された平均値と第2台車70の空気ばね72(73)に接続される第2圧力センサ77の出力とを比較して、第1空気ばね52(53)の空気圧力と第2空気ばね72(73)の空気圧力とがほぼ等しくなるように、電磁弁78の開度を調整する。必要に応じて、第2空気ばね72(73)の空気圧力を第2圧力センサ77で検知した結果を制御装置79にフィードバックしてもよい。
【0030】
第2鉄道車両200を積載した第1鉄道車両100に備えられる各台車50,70の空気ばね52(53),72(73)の空気圧力がほぼ同等に、つまり、第1鉄道車両100を支持する全ての空気ばね52(53),72(73)の空気圧力を略均一化することにより、各台車50,70の軸重も均一化できるので、許容軸重を超過する輪軸の発生、及び、超過した輪軸の通過による軌道損傷に伴う軌道保守コストの上昇を抑制することができる。なお、両第1台車50,50の第1空気ばね52,53の空気圧力が同程度になるように別途制御されていれば、両方の第1圧力センサ57の平均値を取ることなく、一方の第1圧力センサ57の検出値に基づいて、電磁弁78の開度を制御し、第2空気ばね72(73)に供給される圧力空気の流量を制御して、第1空気ばね52(53)と第2空気ばね72(73)との圧力を均一化することも可能である。
【0031】
なお、電磁弁78に、その開度と第2空気ばね72(73)に供給される目標空気圧力との関係が既知であるものを選定すれば、第2空気ばね73の空気圧力を検知する第2圧力センサ77の設置を省略できるとともに、第2空気ばね72(73)の空気圧力を第2圧力センサ77で観察して制御装置79にフィードバックする必要もなくなり、装置の構成を簡略化できる。即ち、第2空気ばね73の空気圧力が、第1圧力センサ57が検出した第1空気ばね52(53)の空気圧力と同じ圧力となるように、上記関係に基づいて電磁弁78の開度を制御すればよい。
また、第1空気ばね52(53)及び第2空気ばね72(73)の圧力を容易に調整するためは、空気ばねに負荷される荷重と空気ばねの空気圧力とが比例関係になる、即ち、受圧面積変化率が0に近いタイプの空気ばねを選定することが望ましい。
【符号の説明】
【0032】
5…軌道 10…輪軸
16…側梁 20…空気ばね座
50…第1台車 52,53…空気ばね
54…差圧弁 55,56…高さ調整装置
57…圧力センサ
70…第2台車 72,73…空気ばね
77…圧力センサ 78…電磁弁
79…制御装置
100…第1鉄道車両 110…台枠
120…側構体 130…屋根構体
180,182…空気管 190…制御線
200…第2鉄道車両
図1
図2
図3