(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の炭素繊維強化プラスチック層における前記第1の制振層に接合する層の炭素繊維の配向方向と、前記第2の炭素繊維強化プラスチック層における前記第1の制振層に接合する層における炭素繊維の配向方向とは、当該ロボットハンド用フレームの長手方向に対して対称である、ことを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド用フレーム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、特許文献1に記載のロボットハンドは、そのフォークにおいて、炭素繊維強化プラスチック層を用いることにより剛性を確保しつつ、炭素繊維強化プラスチック層の間に柔軟性樹脂層を配置することにより振動減衰特性の向上を図っている。このように、産業用ロボットのロボットハンドにあっては、搬送の対象物を確実に保持するために、剛性の確保と共に振動減衰特性の向上が望まれている。
【0005】
本発明は、そのような事情に鑑みてなされたものであり、振動減衰特性を向上可能なロボットハンド用フレーム、及びロボットハンドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、対象物を搬送するためのロボットハンドにおいて、対象物が載置される複数のフォークを保持するフレームの振動減衰特性を向上することにより、ロボットハンド全体の振動減衰特性を向上可能であることを見出した。本発明は、そのような知見に基づいてなされたものである。
【0007】
すなわち、本発明に係るロボットハンド用フレームは、対象物を搬送するためのロボットハンドに用いられ、対象物が載置される複数のフォークを保持する長尺管状のロボットハンド用フレームであって、長尺管状に形成された第1の炭素繊維強化プラスチック層と、長尺管状に形成され第1の炭素繊維強化プラスチック層の一端から他端にわたって延在するように第1の炭素繊維強化プラスチック層の内側に配置された第2の炭素繊維強化プラスチック層と、第1の炭素繊維強化プラスチック層と第2の炭素繊維強化プラスチック層との間に配置された第1の制振層と、を備え、第1の制振層は、第1及び第2の炭素繊維強化プラスチック層を構成するマトリックス樹脂の剛性よりも低い剛性の粘弾性材料からなる、ことを特徴とする。
【0008】
このロボットハンド用フレームにおいては、第1の炭素繊維強化プラスチック層と第2の炭素繊維強化プラスチック層との間に、炭素繊維強化プラスチック層を構成するマトリックス樹脂よりも剛性の低い粘弾性材料からなる第1の制振層が配置されているので、振動減衰特性が向上される。したがって、このロボットハンド用フレームをロボットハンドに適用すれば、そのロボットハンド全体の振動減衰特性を向上することが可能となる。
【0009】
本発明に係るロボットハンド用フレームにおいては、第1の炭素繊維強化プラスチック層における第1の制振層に接合する層の炭素繊維の配向方向と、第2の炭素繊維強化プラスチック層における第1の制振層に接合する層における炭素繊維の配向方向とは、当該ロボットハンド用フレームの長手方向に対して対称であるものとすることができる。このように、当該ロボットハンド用フレームの長手方向に対して炭素繊維の配向方向が互いに対称である炭素繊維強化プラスチック層の間に制振層を配置すれば、当該ロボットハンド用フレームの長手方向に沿っての捻れ振動を好適に減衰させることができる。
【0010】
本発明に係るロボットハンド用フレームにおいては、粘弾性材料の貯蔵弾性率は、0.1MPa以上2500MPa以下であるものとすることができる。このように、制振層を構成する粘弾性材料の貯蔵弾性率が、2500MPa以下であれば十分な振動減衰特性が得られ、0.1MPa以上であれば剛性の低下が少ない。
【0011】
本発明に係るロボットハンド用フレームにおいては、第1の制振層は、予め第1の制振層に貼着された樹脂フィルムを介して第1及び第2の炭素繊維強化プラスチック層に接合されており、樹脂フィルムは、第1及び第2の炭素繊維強化プラスチック層を構成するマトリックス樹脂と同一の材料からなるものとすることができる。この場合、各炭素繊維強化プラスチック層と制振層とを強固に接合することができる。
【0012】
ここで、本発明に係るロボットハンドは、対象物を搬送するためのロボットハンドであって、上記のロボットハンド用フレームと、ロボットハンド用フレームに保持されており対象物が載置される長尺管状の複数のフォークと、を備え、複数のフォークは、それぞれ、長尺管状に形成され互いに積層された第3及び第4炭素繊維強化プラスチック層を有する、ことを特徴とする。このロボットハンドは、上記のロボットハンド用フレームを備えている。したがって、このロボットハンドによれば、振動減衰特性が向上される。
【0013】
本発明に係るロボットハンドにおいては、複数のフォークは、それぞれ、第3の炭素繊維強化プラスチック層と第4の炭素繊維強化プラスチック層との間に配置された第2の制振層を有し、第2の制振層は、第3及び第4の炭素繊維強化プラスチック層を構成するマトリックス樹脂の剛性よりも低い剛性の粘弾性材料からなるものとすることができる。この場合、フレーム及びフォークの両方に制振層を設けることにより、ロボットハンド全体の振動減衰特性がより一層向上される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、振動減衰特性を向上可能なロボットハンド用フレーム、及びロボットハンドを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るロボットハンド用フレーム、及びロボットハンドの一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の図面においては、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下の図面中の寸法比率は、実際のものとは異なる場合がある。
[第1実施形態]
【0017】
図1は、本発明に係るロボットハンドの第1実施形態の構成を示す斜視図である。
図1に示されるロボットハンド1は、例えば、所定の対象物OBを搬送するための産業用ロボットに用いられる。対象物OBは、例えば、2.5m×2.2m程度の大きさのLCD(液晶ディスプレイ)基板等である。ロボットハンド1は、そのような対象物OBが載置される複数(ここでは4つ)のフォーク10と、フォーク10の各々を保持するフレーム(ロボットハンド用フレーム)20とを備えている。フォーク10及びフレーム20は長尺の矩形管状を呈している。
【0018】
図2は、
図1に示された領域AR1の拡大図である。
図2に示されるように、フォーク10は、その一端部10aをフレーム20の開口20hからフレーム20の内部に挿入した状態において、SUSプレート等の金属板PLを介してフレーム20に固定されている。なお、ロボットハンド1においては、フォーク10の本数を対象物OBの寸法に応じて適宜変更することができる。また、そのフォーク10の本数に応じて、フレーム20の寸法を適宜変更することができる。
【0019】
図3は、
図1のIII−III線に沿ったフォークの模式的な断面図である。特に、
図3の(b)は、
図3の(a)に示された領域AR2の拡大図である。
図3に示されるように、フォーク10は、炭素繊維強化プラスチック(以下「CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics」という)層(第3の炭素繊維強化プラスチック層)11、及びCFRP層(第4の炭素繊維強化プラスチック層)12を有している。CFRP層11,12は、長尺の矩形管状を呈しており、互いに積層されている。CFRP層11及びCFRP層12は、複数の炭素繊維プリプレグを積層することで構成されている。
【0020】
また、フォーク10は、制振層(第2の制振層)13を有している。制振層13は、CFRP層11とCFRP層12との間に配置されている。特に、制振層13は、フォーク10の上壁部10a及び下壁部10bにおいてCFRP層11とCFRP層12との間に配置されており、フォーク10の側壁部10c,10dには配置されていない。制振層13は、長尺の矩形状を呈しており、CFRP層11,12の一端から他端にわたって延在している。制振層13は、CFRP層11,12を構成するマトリックス樹脂の剛性よりも低い剛性の粘弾性材料から構成される。制振層13を構成する粘弾性材料については後述する。なお、4つのフォーク10は、それぞれ、互いに同様の構成となっている。
【0021】
CFRP層11及びCFRP層12を構成するための炭素繊維プリプレグとしては、例えば、JX日鉱日石エネルギー(株)製炭素繊維プリプレグ(平織りプリプレグ)FMP61−2026A(CF:東レ(株)製PAN系230GPaCF(商品名:トレカT300)、マトリックス樹脂:130℃硬化エポキシ、CF目付け(AFW):198g/m
2、樹脂含有率:40.0重量%、プリプレグ厚さ(MPT):0.237mm)、JX日鉱日石エネルギー(株)製炭素繊維プリプレグ(一方向プリプレグ)E8026C−25N(CF:日本グラファイトファイバー(株)製ピッチ系高弾性780GPaCF(商品名:グラノックXN−80)、マトリックス樹脂:130℃硬化エポキシ、CF目付け(AFW):250g/m
2、樹脂含有率:31.4重量%、プリプレグ厚さ(MPT):0.209mm)、及び、JX日鉱日石エネルギー(株)炭素繊維プリプレグ(一方向プリプレグ)B24N35C125(CF:三菱レイヨン(株)製PAN系230GPaCF(商品名パイロフィルTR30S)、マトリックス樹脂:130℃硬化エポキシ、CF目付け:125g/m
2、樹脂含有率:35.0重量%、プリプレグ厚さ(MPT):0.126mm)等を用いることができる。
【0022】
図4は、
図2のIV−IV線に沿ったフレームの模式的な断面図である。特に、
図4の(b)は、
図4の(a)に示された領域AR3の拡大図である。
図4に示されるように、フレーム20は、CFRP層(第1の炭素繊維強化プラスチック層)21、CFRP層(第1の炭素繊維強化プラスチック層、第2の炭素繊維強化プラスチック層)22、及び、CFRP層(第2の炭素繊維強化プラスチック層)23を有している。
【0023】
CFRP層21は、長尺の矩形管状に形成されている。CFRP層22は、長尺の矩形管状に形成されており、CFRP層21の一端から他端にわたって延在するようにCFRP層21の内側に配置されている。CFRP層23は、長尺の矩形管状に形成されており、CFRP層22の一端から他端にわたって延在するようにCFRP層22の内側に配置されている。CFRP層21〜23は、複数の炭素繊維プリプレグを積層することで構成される。
【0024】
また、フレーム20は、制振層(第1の制振層)24,25を有している。制振層24は、CFRP層21とCFRP層22との間に配置されている。制振層24は、長尺の矩形管状を呈しており、CFRP層21,22の一端から他端にわたって延在している。制振層25は、CFRP層22とCFRP層23との間に配置されている。制振層25は、長尺の矩形管状を呈しており、CFRP層22,23の一端から他端にわたって延在している。制振層24,25は、CFRP層21〜23を構成するマトリックス樹脂の剛性よりも低い剛性の粘弾性材料から構成される。制振層24,25を構成する粘弾性材料については後述する。
【0025】
CFRP層21は制振層24に接合された接合層21aを含む。CFRP層22は制振層24に接合された接合層22aと制振層25に接合された接合層22bとを含む。CFRP層23は制振層25に接合された接合層23bを含む。
図2に示されるように、接合層21a,22bの炭素繊維の配向方向D1と、接合層22a,23bの炭素繊維の配向方向D2とは、フレーム20の所定の面内(例えば上面20s)においてフレーム20の長手方向Dxに対して互いに対称となっている(例えば、配向方向D1及び配向方向D2は、上面20s内において長手方向Dxから45°(−45°)及び−45°(45°)となっている)。
【0026】
CFRP層21〜23を構成する炭素繊維プリプレグとしては、上述したFMP61−2026A、及び、B24N35C125に加えて、例えば、JX日鉱日石エネルギー(株)製炭素繊維プリプレグ(一方向プリプレグ)B24N33C269(CF:三菱レイヨン(株)製PAN系230GPaCF(商品名:パイロフィルTR30S)、マトリックス樹脂:130°硬化エポキシ、CF目付け:269g/m
2、樹脂含有率:33.4重量%、プリプレグ厚さ(MPT):0.263mm)、及び、JX日鉱日石エネルギー(株)製炭素繊維プリプレグ(一方向プリプレグ)E6026E−26K(CF日本グラファイトファイバー(株)製ピッチ系高弾性600GPaCF(商品名:グラノックXN−60)、マトリックス樹脂:130°硬化エポキシ、CF目付け(AWF):260g/m
2、樹脂含有率:27.5重量%)等を用いることができる。
【0027】
上述した制振層13、及び制振層24,25を構成する粘弾性材料は、25℃における貯蔵弾性率が、0.1MPa以上2500MPa以下の範囲であることが好ましく、0.1MPa以上250MPa以下の範囲であることがさらに好ましく、0.1MPa以上100MPa以下の範囲であることが一層好ましい。制振層13、及び制振層24,25を構成する粘弾性材料の貯蔵弾性率が2500MPa以下であれば、十分な振動減衰特性を得ることができ、0.1MPa以上であれば、フォーク10及びフレーム20の剛性の低下が少なく、産業用部品として要求される性能を満たすことができる。
【0028】
また、制振層13、及び制振層24,25を構成する粘弾性材料は、炭素繊維プリプレグを熱硬化してフォーク10及びフレーム20を作製することから、その作製の際に発生する熱に対して安定であることが好ましい。さらに、制振層13、及び制振層24,25を構成する粘弾性材料は、フォーク10及びフレーム20の各CFRP層との接着性に優れていることが好ましい。
【0029】
以上の観点から、制振層13、及び制振層24,25を構成する粘弾性材料は、例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、及びエチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)等のゴム、並びに、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及び、柔軟鎖を持つポリマーであるゴムやエラストマー等を添加することによって弾性率を低くしたエポキシ樹脂等のCFRPに比べて柔軟な材料とすることができる。
【0030】
このようなフレーム20は、上述したような炭素繊維プリプレグ等を直方体状の芯材に巻きつけて積層した後に熱硬化することで作製することができる。特に、
図5の(a)に示されるように、一の炭素繊維プリプレグ30を、芯材40の所定の部分P1においてオーバーラップさせるように芯材40に巻き付けた場合には、
図5の(b)に示されるように、別の炭素繊維プリプレグ31を、芯材40の他の所定の部分P2においてオーバーラップさせるように芯材40に巻き付ける等して、炭素繊維プリプレグのオーバーラップ箇所を重畳させないようにすれば、フレーム20の厚みにばらつきが生じることを避けることができる。
【0031】
また、
図5の(c)に示されるように、一の炭素繊維プリプレグ32を、芯材40の所定の部分P3において突き合わせるように芯材40に巻き付けた場合には、
図5の(d)に示されるように、別の炭素繊維プリプレグ33を、芯材40の他の所定の部分P4において突き合わせるように芯材40に巻き付ける等して、炭素繊維プリプレグの突き合わせ箇所をずらせば、フレーム20の強度にばらつきが生じることを避けることができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係るロボットハンド1によれば、フォーク10において、CFRP層11とCFRP層12との間に制振層13を配置しているので、振動減衰特性が向上される。特に、本実施形態に係るロボットハンド1によれば、フレーム20においても、CFRP層21とCFRP層22との間、及びCFRP層22とCFRP層23との間に制振層24及び制振層25を配置しているので、振動減衰特性がより一層向上される。
【0033】
また、フレーム20においては、接合層21aの炭素繊維の配向方向と接合層22aの炭素繊維の配向方向とを、フレーム20の長手方向に対して対称としている。また、接合層22bの炭素繊維の配向方向と接合層23bの炭素繊維の配向方向とを、フレーム20の長手方向に対して対称としている。このため、このロボットハンド1によれば、フレーム20の長手方向に沿っての捻れ振動を好適に減衰することができる。
[第2実施形態]
【0034】
本発明に係るロボットハンドの第2実施形態は、フレーム20に代えて
図6に示されるフレーム(ロボットハンド用フレーム)50を備える点で、第1実施形態に係るロボットハンド1と相違している。本実施形態に係るフレーム50は、制振層の層数がフレーム20と相違している。すなわち、第1実施形態に係るフレーム20が2層の制振層を備えていたのに対して、第2実施形態に係るフレーム50は、4層の制振層を備えている。
【0035】
フレーム50の構造について詳細に説明する。フレーム50は、CFRP層(第1の炭素繊維強化プラスチック層)51、CFRP層(第1の炭素繊維強化プラスチック層、第2の炭素繊維強化プラスチック層)52、CFRP層(第1の炭素繊維強化プラスチック層、第2の炭素繊維強化プラスチック層)53、CFRP層(第1の炭素繊維強化プラスチック層、第2の炭素繊維強化プラスチック層)54、及び、CFRP層(第2の炭素繊維強化プラスチック層)55を有している。
【0036】
CFRP層51は、長尺の矩形管状に形成されている。CFRP層52は、長尺の矩形管状に形成されており、CFRP層51の一端から他端にわたって延在するようにCFRP層51の内側に配置されている。CFRP層53は、長尺の矩形管状に形成されており、CFRP層52の一端から他端にわたって延在するようにCFRP層52の内側に配置されている。CFRP層53は、長尺の矩形管状に形成されており、CFRP層52の一端から他端いわたって延在するようにCFRP層52の内側に配置されている。
【0037】
CFRP層54は、長尺の矩形管状に形成されており、CFRP層53の一端から他端にわたって延在するようにCFRP層53の内側に配置されている。CFRP層55は、長尺の矩形管状に形成されており、CFRP層54の一端から他端にわたって延在するようにCFRP層54の内側に配置されている。CFRP層51〜55は、CFRP層21〜23と同様にして、複数の炭素繊維プリプレグを積層することで構成される。
【0038】
また、フレーム50は、制振層(第1の制振層)56〜59を有している。制振層56は、CFRP層51とCFRP層52との間に配置されている。制振層56は、長尺の矩形管状を呈しており、CFRP層51,52の一端から他端にわたって延在している。制振層57は、CFRP層52とCFRP層53との間に配置されている。制振層57は、長尺の矩形管状を呈しており、CFRP層52,53の一端から他端にわたって延在している。制振層58は、CFRP層53とCFRP層54との間に配置されている。制振層58は、長尺の矩形管状を呈しており、CFRP層53,54の一端から他端にわたって延在している。
【0039】
制振層59は、CFRP層54とCFRP層55との間に配置されている。制振層59は、長尺の矩形管状を呈しており、CFRP層54,55の一端から他端にわたって延在している。制振層56〜59は、制振層24,25と同様の材料から構成することができる。すなわち、制振層56〜59は、CFRP層51〜55を構成するマトリックス樹脂の剛性よりも低い剛性の粘弾性材料から構成することができる。
【0040】
CFRP層51は、制振層56に接合された接合層51aを含む。CFRP層52は、制振層56に接合された接合層52aと、制振層57に接合された接合層52bとを含む。CFRP層53は、制振層57に接合された接合層53bと、制振層58に接合された接合層53cとを含む。CFRP層54は、制振層58に接合された接合層54cと、制振層59に接合された接合層54dとを含む。CFRP層55は、制振層59に接合された接合層55dを含む。
【0041】
CFRP層51〜55を構成する炭素繊維プリプレグとしては、上述したCFRP層21〜23を構成する炭素繊維プリプレグと同様のものを用いることができる。ただし、接合層51a,52b,53c,54dの炭素繊維の配向方向と、接合層52a,53b,54c,55dの炭素繊維の配向方向とは、上述した接合層21a,22bと接合層22a,23bとのように、フレーム50の所定の面内においてフレーム50の長手方向に対して互いに対称となっている。
【0042】
以上説明した第2実施形態に係るロボットハンドにおいても、第1実施形態に係るロボットハンド1と同様の理由から、振動減衰特性が向上される。特に、第2実施形態に係るロボットハンドによれば、フレームの制振層の数を増加させることにより、振動減衰特性をより一層向上することができる。
【0043】
以上の実施形態は、本発明に係るロボットハンド用フレーム及びロボットハンドの一実施形態を説明したものである。したがって、本発明に係るロボットハンド用フレーム及びロボットハンドは、上述したものに限定されない。本発明に係るロボットハンド用フレーム及びロボットハンドは、特許請求の範囲に記した各請求項の要旨を変更しない範囲において、上述したものを任意に変形したものとすることができる。
【0044】
例えば、上述した各制振層(制振層13,24,25,56〜59)は、予め各制振層に貼着された樹脂フィルムを介して各CFRP層(CFRP層11,12,21〜23,51〜55)に接合されていてもよい。その場合には、その樹脂フィルムを、各CFRP層を構成するマトリックス樹脂と同一の材料から構成すれば、各制振層と各CFRP層とを強固に接合することが可能となる。
【0045】
また、フレーム20,50における制振層の層数は、所望するフレーム20,50の剛性と振動減衰特性との兼ね合いから、例えば1層〜10層程度の範囲で任意に変更することができる。さらに、フォーク10は、必ずしも制振層13を備えていなくてもよい。
【実施例】
【0046】
引き続いて、本発明に係るロボットハンドの実施例について説明する。本実施例においては、以下に示されるように比較例1、実施例1〜4のそれぞれに係るロボットハンドを準備し、その振動減衰特性を評価した。
【0047】
比較例1に係るロボットハンドは、第1実施形態に係るロボットハンド1に対して、フォーク及びフレームが制振層を備えていない点で相違している。つまり、比較例1に係るロボットハンドは、下記表1に示されるように複数の炭素繊維プリプレグのみを積層して構成される4つのフォークと、下記表2に示されるように複数の炭素繊維プリプレグのみを積層して構成されるフレームとを備えている。
【0048】
なお、以下の表において「角度」とは、フォークやフレームの長手方向に対する炭素繊維の配向角度(配向方向)を示している。例えば「角度」が「0°/90°」であるとは、その炭素繊維プリプレグにおいて、フォークやフレームの長手方向に対して0°の角度でもって配向された炭素繊維と、90°の角度でもって配向された炭素繊維とが平織りされていることを示している。
【表1】
【表2】
【0049】
実施例1に係るロボットハンドは、第1実施形態に係るロボットハンド1に対して、フォークが制振層を備えていない点で相違している(換言すれば、実施例1に係るロボットハンドは、フレームのみが制振層を備えている)。つまり、実施例1に係るロボットハンドは上記表1に示されるように複数の炭素繊維プリプレグのみを積層して構成される4つのフォークと、下記表3に示されるように複数の炭素繊維プリプレグと2層の制振シート(制振層)とを積層して構成されるフレームとを備えている。なお、ここでは、制振シートとして、SBRシート(アスク工業株式会社製(商品名:アスナーシート、厚さ:0.15mm))を用いた。
【表3】
【0050】
実施例2に係るロボットハンドは、第1実施形態に係るロボットハンド1と同様の構成を有している(換言すれば、実施例2に係るロボットハンドは、フォーク及びフレームが制振層を備えている)。つまり、実施例2に係るロボットハンドは、下記表4に示されるように複数の炭素繊維プリプレグと制振シートとを積層して得られる上下壁部と上記表1に示されるように複数の炭素繊維プリプレグのみを積層して得られる一対の側壁部とから構成される4つのフォークと、上記表3に示されるように複数の炭素繊維プリプレグと2層の制振シートとを積層して構成されるフレームとを備えている。
【表4】
【0051】
実施例3に係るロボットハンドは、第2実施形態に係るロボットハンドに対して、フォークが制振層を備えていない点で相違している(換言すれば、実施例3に係るロボットハンドは、フレームのみが制振層を備えている)。つまり、実施例3に係るロボットハンドは、上記表1に示されるように複数の炭素繊維プリプレグのみを積層して構成される4つのフォークと、下記表5に示されるように複数の炭素繊維プリプレグと4層の制振シートとを積層して構成されるフレームとを備えている。
【表5】
【0052】
実施例4に係るロボットハンドは、第2実施形態に係るロボットハンドと同様の構成を有している(換言すれば、実施例4に係るロボットハンドは、フォーク及びフレームが制振層を備えている)。つまり、実施例4に係るロボットハンドは、上記表4に示されるように複数の炭素繊維プリプレグと制振シートとを積層して得られる上下壁部と上記表1に示されるように複数の炭素繊維プリプレグのみを積層して得られる一対の側壁部とから構成される4つのフォークと、上記表5に示されるように複数の炭素繊維プリプレグと4層の制振シートとを積層して構成されるフレームとを備えている。
【0053】
なお、実施例1〜4に係るロボットハンドのフレームにおいて、制振シートを挟んで制振シートに接合される一対の炭素繊維プリプレグは、その炭素繊維の配向角度が、例えば45°と−45°といったように、フレームの長手方向に対して対称となっている。
【0054】
また、以上の比較例1、及び実施例1〜4においては、各表に示される順に(数字の降順に)炭素繊維プリプレグ等を直方体状の芯材に巻き付けて積層し、炭素繊維プリプレグの外側からPPやPET等の熱収縮テープを巻き付けたり、アルミや鉄等の金属製の外型を押し当てた状態で真空バッグの中に入れることにより炭素繊維プリプレグ等を固定しながら熱硬化した後に、芯材を抜き取ることによって、厚さ約5mm程度の矩形管状のフレームを得た。
【0055】
以上のようにして用意した比較例1、及び実施例1〜4に係る各ロボットハンドに対して振動減衰特性の評価を行った。ここでの振動減衰特性の評価方法は以下の通りである。すなわち、
図7に示されるように、まず、中央2つのフォーク10に予め2.7kgfのおもり60吊り下げておき、その吊り下げ糸61を切断することによって、各ロボットハンドに振動を与えた。その状態において、各ロボットハンドのフレーム20の両端のたわみを、レーザ変位計70によって測定した。
【0056】
図8は、比較例1に係るロボットハンドの振動減衰特性の評価結果を示すグラフであり、
図9は、実施例1に係るロボットハンドの振動減衰特性の評価結果を示すグラフであり、
図10は、実施例2に係るロボットハンドの振動減衰特性の評価結果を示すグラフであり、
図11は、実施例3に係るロボットハンドの振動減衰特性の評価結果を示すグラフであり、
図12は、実施例4に係るロボットハンドの振動減衰特性の評価結果を示すグラフである。
【0057】
図8に示される評価結果と
図9に示される評価結果とを比較すると、比較例1に係るロボットハンドよりも実施例1に係るロボットハンドの方が、フォーク先端たわみが速やかに減衰していることがわかる。すなわち、フレームに2層の制振シートを設けた実施例1に係るロボットハンドによれば、フォーク及びフレームに制振シートを設けていない比較例1に係るロボットハンドと比較して振動減衰特性が向上している。
【0058】
また、
図9に示される評価結果と
図10に示される評価結果とを比較すると、実施例1に係るロボットハンドよりも実施例2に係るロボットハンドの方が、フォーク先端たわみがより速やかに減衰していることがわかる。すなわち、フレームに2層の制振シートを設けた上にフォークにも制振シートを設けた実施例2に係るロボットハンドによれば、フレームのみに2層の制振シートを設けた実施例1に係るロボットハンドと比較して振動減衰特性がより向上している。
【0059】
また、
図8に示される評価結果と
図11に示される評価結果とを比較すると、比較例1に係るロボットハンドよりも実施例3に係るロボットハンドの方が、フォーク先端たわみが速やかに減衰していることがわかる。すなわち、フレームに4層の制振シートを設けた実施例3に係るロボットハンドによれば、フォーク及びフレームに制振シートを設けていない比較例1に係るロボットハンドと比較して振動減衰特性が向上している。特に、
図9に示される評価結果と
図11に示される評価結果とを比較すると、実施例1に係るロボットハンドよりも実施例3に係るロボットハンドの方が、振動減衰特性が向上していることがわかる。すなわち、制振シートを2層から4層にすることにより、振動減衰特性がより向上していることがわかる。
【0060】
さらに、
図11に示される評価結果と
図12に示される評価結果とを比較すると、実施例3に係るロボットハンドよりも実施例4に係るロボットハンドの方が、フォーク先端たわみがより一層速やかに減衰していることがわかる。すなわち、フレームに4層の制振シートを設けた上にフォークにも制振シートを設けた実施例4に係るロボットハンドによれば、フレームのみに4層の制振シートを設けた実施例3に係るロボットハンドと比較して振動減衰特性がより一層向上している。
【0061】
以上の評価結果に鑑みると、ロボットハンドにおいて、フレームに制振層を設けることにより振動減衰特性が改善されることがわかった。一方で、フレームの制振層を2層から4層に増やすことにより、振動減衰特性がより改善されることがわかった。