(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
四隅に立設される柱と、これら柱の上端部同士および下端部同士をそれぞれ仕口を介して連結する梁とを有する直方体状の建物ユニットを複数組み合わせてなる建物本体を備え、当該建物本体が、隣接する前記建物ユニットの互いに近接する前記仕口同士を接続することによって構築されるユニット式建物であって、
複数の前記建物ユニットのうち、水平方向に隣接する建物ユニット同士が、互いに近接する前記仕口同士を雁行させて配置された場合、
前記雁行する仕口同士が、当該仕口同士の上面を水平方向に覆う形状からなるシアプレートによって接続されており、
さらに、前記建物本体には、互いに近接する前記仕口同士を雁行させて配置された建物ユニットの各前記梁のうち、一方の建物ユニットにおける当該雁行する仕口に連結した梁が、他方の建物ユニットにおける当該雁行する仕口に連結した梁に対し、これら雁行する仕口同士の雁行量分、建物本体内方に配置されることによって段部が形成されており、
前記建物本体は、当該建物本体の上部に屋根を取り付けるための屋根取付手段を備えており、
前記屋根取付手段は、
前記建物本体の上部側を構成する前記複数の建物ユニットの天井側に配置される各前記梁の上面側に設けられ、前記屋根を支持する支持部と、
前記段部に配置され、前記天井側に配置される各前記梁のうち、当該段部を構成する梁の側方から建物本体外方に向かって水平方向に前記雁行量分、突出して設けられることで、前記他方の建物ユニットにおける前記雁行する仕口に連結した天井側に配置される梁と水平方向において同一線上に位置する跳ね出し部と、を有し、
前記跳ね出し部は、前記支持部のうち、前記段部に配置される支持部を保持することを特徴とするユニット式建物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献2のユニット式建物では、異長建物ユニットの水平方向のサイズが通常の建物ユニットのサイズと異なるため、水平方向に隣接する通常の建物ユニットと異長建物ユニットとの近接する仕口同士の配置において、これら仕口同士が雁行して配置されるものがある。この場合、雁行して配置された仕口同士は、水平方向に同一線上に配置されていないため、特許文献1のような接続部材を用いて接続することができない。
従って、雁行して配置された仕口同士は、各々の仕口が水平方向に対向する梁部分に接続されるため、これら仕口と梁との接続部分には、外部から水平力が加わった場合に、当該水平力を仕口と梁との接続部分を介してユニット式建物全体に水平に伝達させるための控え梁等の補助部材や補強フレーム等の補強部材を配設する必要があった。
【0007】
このように、ユニット式建物を構築する複数の建物ユニットの中に異長建物ユニットが含まれたり、ユニット式建物を構成する建物本体に、水平方向に隣接する建物ユニットの仕口同士が雁行して配置される部位が含まれたりする場合、水平力に対する耐力や剛性の観点から、補助部材や補強部材を配設する必要があるため、当該ユニット式建物の設計ルールが煩雑となるうえ、部材コストも増加する。
しかも、上述のように水平力を分散させて伝達させる場合、分散された水平力が各々通過する梁に関し、それぞれ分けて設計して構造計算するため、当該構造計算が煩雑(例えば、構造計算ツールの整備が必要)となり、結果的にユニット式建物としての設計のバリエーション(すなわち、使用する建物ユニットにおけるサイズ差のバリエーション)に制限が必要となる。
【0008】
加えて、このようなユニット式建物の場合、雁行して配置された仕口同士を介して水平方向に隣接する天井梁同士も雁行して配置される。このため、これら天井梁間に前記仕口同士が雁行して配置された分、建物本体の内外方向に向けたずれ(段部)が生じることとなる。従って、かかる建物本体の上部に屋根束や屋根パネル受けブラケット、小屋梁や小屋パネル等を介して屋根を設ける際に、雁行して配置された天井梁部分では、水平方向において同一線上に隣接して配置された他の天井梁部分に比べて、屋根を支持する位置にずれが生じる分、均一に屋根を支持(保持)するための構造計算が煩雑となる。
【0009】
そこで、本発明の課題は、補助部材や補強部材を必要とすることなく、雁行して配置された建物ユニット間の水平力に対する耐力や剛性を確保することができ、且つ、構造計算を簡略化して設計の自由度を向上させることができるユニット式建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、例えば
図1〜
図4,
図11〜
図16に示すように、四隅に立設される柱11a〜11d(20a〜20d)と、これら柱11a〜11d(20a〜20d)の上端部同士および下端部同士をそれぞれ仕口12(12a〜12d(22(22a〜22d))を介して連結する梁(天井梁13a〜13d(23a〜23d)および床梁14a〜14d(24a〜24d))とを有する直方体状の建物ユニット10(10A,10B),20を複数組み合わせてなる建物本体6を備え、当該建物本体6が、隣接する前記建物ユニット10(10A,10B),20の互いに近接する前記仕口12(22)同士を接続することによって構築されるユニット式建物1であって、
複数の前記建物ユニット10(10A,10B),20…のうち、水平方向に隣接する建物ユニット(例えば、通常の建物ユニット10Bと異長建物ユニット20)同士が、互いに近接する前記仕口(例えば、仕口12d,22a)同士を雁行させて配置された場合、
前記雁行する仕口12d,22a同士が、当該仕口12d,22a同士の上面を水平方向に覆う形状からなるシアプレート30(31〜35)によって接続され
ており、
さらに、前記建物本体6には、互いに近接する前記仕口同士(例えば、仕口12dと仕口22a)を雁行させて配置された建物ユニット(例えば、異長建物ユニット20と、通常の建物ユニット10B)の各前記梁(天井梁13a〜13d(23a〜23d)および床梁14a〜14d(24a〜24d))のうち、一方の建物ユニット(例えば、異長建物ユニット20)における当該雁行する仕口22aに連結した梁(例えば、長辺天井梁23a)が、他方の建物ユニット(例えば、通常の建物ユニット10B)における当該雁行する仕口12dに連結した梁(例えば、長辺天井梁13a)に対し、これら雁行する仕口12d,22a同士の雁行量分、建物本体6内方に配置されることによって段部7が形成されており、
前記建物本体6は、当該建物本体6の上部に屋根5を取り付けるための屋根取付手段を備えており、
前記屋根取付手段は、
前記建物本体6の上部側を構成する前記複数の建物ユニット10(10A,10B),20…の天井側に配置される各前記梁(天井梁13a〜13d,23a〜23d)の上面側に設けられ、前記屋根5を支持する支持部42と、
前記段部7に配置され、前記天井側に配置される各前記梁(天井梁13a〜13d,23a〜23d)のうち、当該段部7を構成する梁(例えば、天井梁23a)の側方から建物本体6外方に向かって水平方向に前記雁行量分、突出して設けられることで、前記他方の建物ユニット10Bにおける前記雁行する仕口12dに連結した天井側に配置される梁(長辺天井梁13a)と水平方向において同一線上に位置する跳ね出し部41と、を有し、
前記跳ね出し部41は、前記支持部42…のうち、前記段部7に配置される支持部42を保持することを特徴とする。
ここで、ユニット式建物1が備える建物本体6は、複数組み合わされた建物ユニット10(10A,10B),20…のうち、水平方向に隣接し、雁行して配置された仕口12d,22a同士を介して連結された一方の建物ユニット20の長辺天井梁23aが、他方の建物ユニット10Bの長辺天井梁13aに対し、当該雁行して配置された仕口12d,22a同士の間の雁行量分、建物本体6内方に配置されて段部7を構成している。すなわち、一方の建物ユニット20の長辺天井梁23aが、他方の建物ユニット10Bの長辺天井梁13aに対して、当該建物本体6の上面視において建物本体6内方に向けた水平方向に、仕口12d,22a同士の雁行した寸法(雁行量)分、ずれて配置されており、これによって一方の建物ユニット20の長辺天井梁23aが段部7を構成することになる。
換言すれば、建物本体6は、水平方向に隣接する一方および他方の建物ユニット20,10B同士を接続するための仕口22aおよび仕口12dが雁行して配置されているため、これら仕口12d,22a同士を介して隣接する一方および他方の建物ユニット20,10Bにおける各々の長辺天井梁23a,13aが、水平方向に向けた同一線上に配置されていない。
また、このように段部7を有する建物本体6は、当該建物本体6の上部に屋根5を取り付けるための屋根取付手段を備えている。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、建物本体6を形成する複数の建物ユニット10(10A,10B),20…のうち、例えば水平方向に隣接する建物ユニット10B,20同士が、互いに近接する仕口12d,22a同士を雁行して配置された場合であっても、当該雁行して配置された仕口12d,22a同士が、これら仕口12d,22a同士の上面を水平方向に覆う形状からなるシアプレート30によって接続されるので、これら建物ユニット10B,20同士を強固に連結することができる。
従って、このような建物本体6において、外部から水平方向に荷重(水平力)が加わったとしても、当該雁行して配置された仕口12d,22a間がシアプレート30によって接続されるので、水平力が加わることに起因して仕口12d,22a間に生じるねじれや曲げを抑制することができ、かかる水平力をシアプレート30を介して隣接する建物ユニット10B,20間で確実に伝達できる。すなわち、このような水平力をユニット式建物1全体に水平に伝達することができるため、ユニット式建物1の当該水平力に対する耐力や剛性を確保することができる。
よって、雁行して配置された仕口12d,22a同士が接続される部分に、従来のような水平力をユニット式建物1全体に水平に伝達させるための控え梁等の補助部材や補強フレーム等の補強部材を配設する必要をなくすことができ、これら補助部材や補強部材が不要になる分、従来よりも部材コストを低減できる。
このように、水平方向に隣接する建物ユニット10B,20同士が、互いの近接する雁行して配置された仕口12d,22a同士を、シアプレート30を介して接続することで強固に連結されるので、外部から水平力が加わったとしても、当該水平力がシアプレート30を介してユニット式建物1全体に水平に伝達されるため、従来のように、水平力が分散して伝達されることを回避でき、水平力が各々通過する梁(例えば、天井梁13a,13c、23a,23c)に関し、それぞれ分けて設計したり構造計算したりすることなく、他の水平方向に向けて同一線上に配置された仕口12c,22b間、12a,22b間、12d,22c間等の接続部分と同様に設計したり構造計算したりできる。つまり、ユニット式建物1の設計ルールを簡素化し、構造計算を簡略化することができるので、建物本体6を構成する際に組み合わされる複数の建物ユニット10(10A,10B),20…の配置を自由にレイアウトでき、ユニット式建物1の設計(すなわち、建物本体6を構成する建物ユニット10(10A,10B),20…のサイズ差のバリエーション)における制限を緩和して自由度を増すことができる。
かくして、本発明では、補助部材や補強部材を必要とすることなく、雁行して配置された建物ユニット(例えば、建物ユニット10B,20)間の水平力に対する耐力や剛性を確保することができ、且つ、構造計算を簡略化して設計の自由度を向上させることができるユニット式建物1を提供することができる。
しかも、建物ユニット10(10A,10B),20は、四隅に柱11a〜11d(20a〜20d)が配設されているので、当該建物ユニット10(10A,10B),20自体の耐力や剛性の低下を防止(すなわち、建物ユニット10(10A,10B),20自体の強度の低下を防止)できるだけでなく、上部に他の建物ユニット10(10A,10B),20…を積層させる場合に、これら建物ユニット10(10A,10B),20…を確実に支持することができる利点も有している。
そして、このような建物本体6が備える屋根取付手段は、当該建物本体6の上部側を構成する複数の建物ユニット10(10A,10B),20…における各天井梁13a〜13d,23a〜23dの上面側に設けられ、屋根5を支持する支持部42と、前記段部7に配置され、各天井梁13a〜13d,23a〜23dのうち、当該段部7を構成する長辺天井梁23aの側方から建物本体6外方に向かって水平方向に前記雁行量分、突出して設けられることで、他方の建物ユニット10Bの長辺天井梁13aと水平方向において同一線上に位置する跳ね出し部41と、を有しており、当該跳ね出し部41は、支持部42…のうち、段部7に配置される支持部42を保持するようになっている。
このため、かかる建物本体6の上部を構成する各建物ユニット10(10A,10B),20…の天井梁13a〜13d,23a〜23dの上面側に、屋根束や屋根パネル受けブラケット等の支持部42を介して屋根5を設ける際、雁行して配置された仕口12d,22a同士を介して連結された一方の建物ユニット20の長辺天井梁23aが、他方の建物ユニット10Bの長辺天井梁13aに対し、段部7を構成していたとしても、跳ね出し部41が、当該段部7を構成する長辺天井梁23aの側方から建物本体6外方に向かって水平方向に前記雁行量分、突出して設けられるので、かかる段部7においても水平方向において同一線上に隣接して配置された他の天井梁13c,23c、13a,13a、13c,13c間と同様に、屋根5を均一に支持(保持)することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、例えば
図4,
図5に示すように、請求項1に記載のユニット式建物1において、
前記雁行する仕口12d,22a同士のうち、一方の仕口22aが、他方の仕口12dに連結された梁(例えば、短辺天井梁13d)に当接するように配置された場合、
前記シアプレート30が、
前記仕口12d,22a同士の上面を水平方向に覆う水平部30aと、
前記水平部30aに対して垂直に配設され、前記一方の仕口22aが当接するように配置された梁(短辺天井梁13d)の上下に延在して当該梁(短辺天井梁13d)の内側面側を覆う垂直部30bと、を有する形状からなることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、シアプレート30は、水平部30aと当該水平部30aに対して垂直に配設された垂直部30bとを有してなり、雁行する仕口12d,22a同士のうち、一方の仕口22aが、他方の仕口12dに連結された短辺天井梁13dに当接するように配置された場合(すなわち、雁行する仕口12d,22a同士の雁行量が大きく、これら仕口12d,22a間が離れて配置される場合)、これら仕口12d,22a同士の上面を水平方向に覆う水平部30aによって接続することに加えて、当該仕口12dに連結された短辺天井梁13dの内側面側を、仕口22aが当接する部位の上下に延在して覆う(当接する)垂直部30bによって接続するので、これら雁行する仕口12d,22aを介して水平方向に隣接して配置される建物ユニット10B,20同士を、より一段と強固に連結することができる。
従って、建物本体6において、外部から水平方向に荷重(水平力)が加わったとしても、当該雁行して配置された仕口12d,22a間が水平部30aと垂直部30bとを備えたシアプレート30によって強固に接続されるので、水平力が加わることに起因して仕口12d,22a間に生じるねじれや曲げを確実に抑制することができ、かかる水平力をシアプレート30を介して隣接する建物ユニット10B,20間でより一層確実に伝達できるため、ユニット式建物1の当該水平力に対する耐力や剛性を向上することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、例えば
図1,
図2,
図6に示すように、請求項1に記載のユニット式建物1において、
前記建物本体6を構成する複数の前記建物ユニット10(10A,10B),20…には、
規定寸法に基づいて形成された通常の建物ユニット10(10A,10B)と、
前記通常の建物ユニット10(10A,10B)に比して水平方向の寸法が異なって形成された異長建物ユニット20と、が含まれていることを特徴とする。
【0015】
ここで、異長建物ユニット20とは、規定寸法に基づく大きさで形成された通常の建物ユニット10(10A,10B)に比べて、水平方向における寸法(サイズ)が異なる寸法で形成された建物ユニットのことを意味する。換言すれば、四隅の柱21a〜21dの高さ寸法は通常の建物ユニット10(10A,10B)の柱11a〜11dと同一の高さ寸法であるが、天井梁23a〜23dおよび床梁24a〜24dにおける長辺側(長辺天井梁23a,23c)または短辺側(短辺天井梁23b,23d)のうちの少なくともいずれかの長さ寸法が、通常の建物ユニット10(10A,10B)の長辺天井梁13a,13cまたは短辺天井梁23b,23dとは異なる長さ寸法で形成された建物ユニット20のことを示す。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、建物本体6を構成する複数の建物ユニット10(10A,10B),20…には、規定寸法に基づいて形成された通常の建物ユニット10(10A,10B)と、当該通常の建物ユニット10に比して水平方向の寸法が異なって形成された異長建物ユニット20と、が含まれているので、同一寸法の建物ユニット10(10A,10B),20のみが複数組み合わされて建物本体6を形成する場合に比べて、建物本体6の形状に様々なバリエーションを持たせることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、例えば
図16に示すように、請求項1〜3のいずれか一項に記載のユニット式建物1において、
前記建物本体6は、水平方向に隣接する前記複数の前記建物ユニット10(10A,10B)、20…のうち、対向して隣り合う建物ユニット同士(例えば、通常の建物ユニット10A,10A同士)を離して配置することによって形成された離し置き部を有するとともに、当該離し置き部を介して配置した建物ユニット10A,10A同士を連結梁50で連結して構成されており、
前記離し置き部を介して配置された一方の建物ユニット10Aと水平方向に隣接し、且つ、当接するように配置された建物ユニット(例えば、異長建物ユニット20)と、
当該離し置き部を介して離れて配置された他方の建物ユニット10Aと、
が互いに近接する仕口同士(例えば、仕口12c,22b同士)を、雁行させて配置された場合、
前記シアプレート36(37)が、当該雁行する仕口12c,22b同士および前記連結梁50の当該仕口12c,22b同士と近接する部位の上面を水平方向に覆う形状からなることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、建物本体6が、例えば長辺天井梁13a,13c同士を対向させて水平方向に隣り合う通常の建物ユニット10A,10A同士を、離し置き部を介して配置し、これら通常の建物ユニット10A,10A同士を連結梁50で連結して構成されるとともに、離し置き部を介して配置された一方の建物ユニット10Aと水平方向に隣接し、且つ、当接するように配置された異長建物ユニット20と、当該離し置き部を介して離れて配置された他方の建物ユニット10Aとが、互いに近接する仕口12c,22b同士を雁行させて配置されている(
図16の場合、仕口12c,22b同士は連結梁50を介在して雁行している)場合であっても、これら仕口12c,22bをシアプレート36(37)によって接続できるので、かかる異長建物ユニット20と、離し置き部を介して離れて配置された他方の建物ユニット10Aとを強固に連結することができる。
従って、これら建物ユニット10Aと異長建物ユニット20間において確実に水平力を伝達することができるので、離し置き部の離し置き間隔を広げた場合でも、ねじれ等を抑制することができ、ユニット式建物1全体の剛性を確保した構造とすることができる。
【0023】
請求項
5に記載の発明は、例えば
図9,10に示すように、請求項
4に記載のユニット式建物1において、
前記建物本体6は、前記上部に取り付けられる前記屋根5との間に小屋梁43a〜43dを備えており、
前記屋根取付手段は、
前記支持部42…のうち、上面側に前記小屋梁43a〜43dが設けられた前記天井側に配置される梁(天井梁13a〜13d,23a〜23d)に位置する支持部42を、当該小屋梁43a〜43dの上面に配設し、
前記段部7を構成する梁(例えば、長辺天井梁23a,長辺床梁24a)のうち、天井側に配置される梁(長辺天井梁23a)の上面側に前記小屋梁(例えば、43a)が配設される場合、当該小屋梁43aを、前記段部7を構成する天井側の梁(長辺天井梁23a)の側方から建物本体6外方に向かって水平方向に前記雁行量分、突出して設けることにより前記跳ね出し部41として機能させるとともに、
当該跳ね出し部41として機能させる前記小屋梁43aによって、前記支持部42…のうち、前記段部7に配置される支持部42を保持することを特徴とする。
【0024】
請求項
5に記載の発明によれば、建物本体6は、上部に取り付けられる屋根5との間に小屋梁43a〜43dを備えている。すなわち、かかる建物本体6の上部を構成する各建物ユニット10(10A,10B),20…の天井梁13a〜13d,23a〜23dの上面側に小屋梁43a〜43dが設けられている。この場合、屋根取付手段は、支持部42…のうち、上面側に小屋梁43a〜43dが設けられた天井梁13a〜13d,23a〜23dの位置に配置される支持部42を当該小屋梁43a〜43dの上面に配設する。また、段部7を構成する長辺天井梁23aの上面側に小屋梁43a〜43dのうちの例えば小屋梁43aが配設される場合、当該小屋梁43aを、段部7を構成する長辺天井梁23aの側方から建物本体6外方に向かって水平方向に雁行量分、突出して(延出して)設けることによって、段部7に配置される小屋梁43aを、他方の建物ユニット10Bの長辺天井梁13aと水平方向において同一線上に位置する跳ね出し部41として機能させる(つまり、段部7に配置される小屋梁43aによって屋根取付手段の跳ね出し部41を構成する)。このとき、跳ね出し部41として機能させる小屋梁43aによって、支持部42…のうち、当該段部7に配置される支持部42を保持するようにする。
【0025】
このため、建物本体6の上部を構成する各建物ユニット10(10A,10B),20の天井梁13a〜13d,23a〜23dの上面側に設けられた小屋梁43a〜43dの上面に、屋根束や屋根パネル受けブラケット等の支持部42を介して屋根5を設ける際、雁行して配置された仕口12d,22a同士を介して連結された一方の建物ユニット20の長辺天井梁23aが、他方の建物ユニット10Bの長辺天井梁13aに対し、段部7を構成していたとしても、当該段部7に配置される(すなわち、段部7を構成する長辺天井梁23aの上面側に配置される)小屋梁43aが、この段部7を構成する長辺天井梁23aの側方から建物本体6外方に向かって水平方向に前記雁行量分、延出して設けられることで、他方の建物ユニット10Bの長辺天井梁13aと水平方向において同一線上に位置する跳ね出し部41として機能するので、かかる段部7においても水平方向において同一線上に隣接して配置された他の天井梁13c,23c間、13a,13a間、13c,13c間等の上面側と同様に、屋根5を均一に支持(保持)することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ユニット式建物において、補助部材や補強部材を必要とすることなく、雁行して配置された建物ユニット間の水平力に対する耐力や剛性を確保することができ、且つ、構造計算を簡略化して設計の自由度を向上させることができる。
さらに、雁行して配置された仕口同士を介して連結された一方の建物ユニットの長辺天井梁が、他方の建物ユニットの長辺天井梁に対し、段部を構成していたとしても、跳ね出し部が、当該段部を構成する長辺天井梁の側方から建物本体外方に向かって水平方向に前記雁行量分、突出して設けられるので、かかる段部においても水平方向において同一線上に隣接して配置された他の天井梁間と同様に、屋根を均一に支持(保持)することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係るユニット式建物1を示す全体斜視図であり、
図2は、
図1のユニット式建物1を上面視して示す平面図であり、
図3は、
図1のユニット式建物1を構築する建物ユニット10(20)の基本構成を示す斜視図である。
【0029】
図1に示すように、本実施形態のユニット式建物1は、基礎2の上に設けられた下階部3と、下階部3の上に設けられた上階部4と、上階部4の上に設けられた屋根5とからなる建物本体6を備えて構築されている。
かかる建物本体6は、複数の建物ユニットが組み合わされて構築される。すなわち、建物本体6の下階部3および上階部4は、それぞれ
図3に示すように、四隅に立設される柱11a〜11d(21a〜21d)と、これら柱11a〜11d(21a〜21d)の上端部同士および下端部同士をそれぞれ仕口12(12a〜12d(22(22a〜22d))を介して連結する各四本の天井梁13a〜13d(23a〜23d)および床梁14a〜14d(24a〜24d)とを有する直方体状の建物ユニット10(20)を複数組み合わせて構成されている。
【0030】
また、建物ユニット10(20)は、一対の長辺天井梁13a(23a),13c(23c)と一対の短辺天井梁13b(23b),13d(23d)とにより天井フレーム13(23)が画成されており、一方の長辺天井梁13a(23a)の略中央部と、他方の長辺天井梁13c(23c)の略中央部との間には、建物ユニット10(20)における天井フレーム13(23)の剛性を確保するための中間梁15(25)が架設されている。
さらに、一方の長辺天井梁13a(23a)と他方の長辺天井梁13c(23c)との間には、中間梁15(25)を中心としてその周囲(左右)に複数の天井小梁13e(23e)…が、当該長辺天井梁13a(23a),13c(23c)の長辺方向に所定の間隔をあけて架設されている。加えて、各建物ユニット10(20)の天井フレーム13(23)には、剛性向上のための水平ブレース16(26)が取り付けられている。
なお、これら複数の天井小梁13e(23e)…の下面には、図示省略する板部材が固定されることによって天井面(図示省略)が形成されている。
【0031】
同様に、建物ユニット10(20)は、一方の長辺床梁14a(24a)と他方の長辺床梁14c(24c)との間に、複数の根太14e(24e)…が、当該長辺床梁14a(24a),14c(24c)の長辺方向に所定の間隔をあけて架設されている。なお、これら複数の根太14e(24e)…の上面には、図示省略する板部材が固定されることによって床面(図示省略)が形成されている。
【0032】
さらに、複数の建物ユニット10(20)…のうち、ユニット式建物1の外周面を構成する位置に配置される建物ユニット10(20)の外側面には、図示省略するPALC(プレキャストオートクレーブド軽量気泡コンクリート)等の外壁材が取り付けられており、ユニット式建物1の内部空間を構成する位置に配置される建物ユニット10(20)の内側面には、図示省略する石膏ボード等の内装材が取り付けられている。
以上説明したように構成される建物ユニット10(20)は工場にて製造された後、建築現場に搬送される。
【0033】
そして、このような建物ユニット10(20)は建築現場にて任意の位置に配置され、互いに近接する仕口12(22)同士を、プレート状等の接続部材(図示省略)を介して接続することによって連結される。
なお、建物ユニット10(20)の構造は、寸法(サイズ)が異なる場合においてもほぼ同様に構成されるため、ここでは、後述する通常の建物ユニット10と異長建物ユニット20とを、便宜上、同一の図を用いて説明するが、実際上、これら通常の建物ユニット10と異長建物ユニット20とでは、後述するように短辺側の寸法が異なっている。
【0034】
本実施形態の場合、下階部3および上階部4は、それぞれ5つの通常の建物ユニット10と、1つの異長建物ユニット20とにより構成されている。すなわち、下階部3と上階部4とは、それぞれ同一の形状(建物ユニットの組み合わせ)をなしている。
【0035】
ここで、異長建物ユニット20とは、規定寸法に基づく大きさで形成された通常の建物ユニット10に比べて、水平方向における寸法(サイズ)が異なる寸法で形成された建物ユニットのことを意味する。換言すれば、異長建物ユニット20は、四隅に立設される柱21a〜21dの高さ寸法が通常の建物ユニットの柱11a〜11dの高さ寸法と同一であるが、天井梁23a〜23dおよび床梁24a〜24dにおける長辺側(長辺天井梁23a,23c、長辺床梁24a,24c)または短辺側(短辺天井梁23b,23d、短辺床梁24b,24d)のうちの少なくともいずれか(この場合、短辺側のみ)の長さ寸法が、通常の建物ユニット10の天井梁13a〜13dおよび床梁14a〜14dにおける長さ寸法に比べて異なる(この場合、短い)寸法で形成された建物ユニットのことを示す。
【0036】
具体的に、本実施形態の場合、異長建物ユニット20は、天井梁23a〜23dおよび床梁24a〜24dにおける短辺側(短辺天井梁23b,23d、短辺床梁24b,24d)が通常の建物ユニット10の天井梁13a〜13dおよび床梁14a〜14dにおける短辺側(短辺天井梁13b,13d、短辺床梁14b,14d)よりも短い寸法で形成されてなる。
【0037】
そして、このような異長建物ユニット20は、通常の建物ユニット10とほぼ同一の規格で形成されているため、通常の建物ユニット10と同じように、ユニット式建物1に対して確実に組み込めるようになっている。延いては、ユニット式建物1全体が、規定寸法を定義する規格(モジュール)に基づいて設計・構築されることとなる。
【0038】
図1および
図2に示すように、本実施形態のユニット式建物1における下階部3および上階部4において、それぞれ通常の建物ユニット10は、互いの長辺(長辺天井梁13a,13c)同士を対向させて水平方向に2つ隣接させた一方側の建物ユニット10A群と、互いの長辺(長辺天井梁13a,13c)同士を対向させて水平方向に3つ隣接させた他方側の建物ユニット10B群とが、互いの長辺(長辺天井梁13a,13c)が同一方向を向くように短辺(短辺天井梁13b,13d)同士を対向させて水平方向に隣接して配置されている。また、異長建物ユニット20は、長辺(長辺天井梁23a,23c)側が一方側の建物ユニット10A群の通常の建物ユニット10Aに対し、長辺(長辺天井梁23c,13a)同士を対向させて配置され、短辺(短辺天井梁23b,23d)側が他方側の建物ユニット10B群の通常の建物ユニット10Bに対し、短辺(短辺天井梁23b,13d)同士を対向させて配置されている。
なお、
図2では便宜上、各建物ユニット10,20の天井梁側のみを示すため、説明もこれを援用して天井梁側のみとする。
【0039】
そして、これら通常の建物ユニット10(10A,10B)および異長建物ユニット20は、互いの隣接する仕口12a,22b,12c,12d、22c,12d、12c,12d、12a〜12d、12b,12c、12a,12b同士をシアプレート等の接続部材(図示省略)によって接続することで連結されている。
【0040】
このとき、異長建物ユニット20は、短辺天井梁23b,23dが通常の建物ユニット10の短辺天井梁13b,13dよりも短く設定されているため、
図4に示すように、短辺天井梁23bの一方(建物本体外方)側の仕口22aと、この仕口22aに近接する通常の建物ユニット10Bの仕口12dとが水平方向において前後するようにずれて(すなわち、雁行して)配置されることとなる。
つまり、異長建物ユニット20の短辺天井梁23bと対向する通常の建物ユニット10Bの短辺天井梁13dにおける一方(建物本体外方)側の仕口12dと、当該異長建物ユニット20の仕口22aとが雁行するようにして、これら異長建物ユニット20と通常の建物ユニット10Bとが配置されている。
本実施形態の場合、異長建物ユニット20の仕口22aと、通常の建物ユニット10Bの仕口12dとの雁行量が大きく設定されている(すなわち、雁行する仕口12dと仕口22aとが離れて配置される)ため、異長建物ユニット20の仕口22aは、通常の建物ユニット10Bの短辺天井梁13dに当接した状態で配置されている。
【0041】
このため、これら雁行して配置された異長建物ユニット20の仕口22aと、通常の建物ユニット10の仕口12dとを介して配置される異長建物ユニット20の長辺天井梁23aと、通常の建物ユニット10の長辺天井梁13aとは、他の隣接する長辺天井梁13c,23c同士や、長辺天井梁13a,13a同士、長辺天井梁13c,13c同士のように、水平方向において同一線上に隣接して配置されてはいない。
【0042】
具体的には、ユニット式建物1が備える建物本体6(
図1および
図2参照)は、複数組み合わされた建物ユニット10(10A,10B),20のうち、水平方向に隣接し、雁行して配置された仕口12d,22a同士を介して連結された一方の建物ユニット20の天井梁23aが、他方の建物ユニット10Bの天井梁13aに対し、当該雁行して配置された仕口12d,22a同士の間の雁行量分、建物本体6内方に配置されて段部7を構成している。すなわち、一方の建物ユニット20の天井梁23aが、他方の建物ユニット10Bの天井梁13aに対して、当該建物本体6の上面視において建物本体6内方に向けた水平方向に、仕口12d,22a同士の雁行した寸法(雁行量)分、ずれて配置されており、これによって一方の建物ユニット20の天井梁23aが段部7を構成している。
換言すれば、建物本体6は、水平方向に隣接する一方および他方の建物ユニット20,10B同士を接続するための仕口22aおよび12dが雁行して配置されているため、当該仕口12d,22a同士を介して隣接する一方および他方の建物ユニット20,10Bにおける各々の天井梁23a,13aが、水平方向に向けた同一線上に配置されていない。
【0043】
そして、このような段部7を備えた本実施形態の建物本体6では、
図4および
図5に示すように、雁行して配置された通常の建物ユニット10Bの仕口12dと、異長建物ユニット20の仕口22aとが、これら仕口12d,22a同士の上面を水平方向に覆う形状(本実施形態の場合、平面視略L字状)からなるシアプレート30によって接続されている。
具体的に、シアプレート30には接続対称となる仕口(この場合、仕口12d,22a)に対する位置決め用のガイドピン(図示省略)が所定部位に突設されており、対応する仕口12d,22a側には当該ガイドピンに応じたガイド孔(図示省略)が穿設されている。そして、シアプレート30は仕口12d,22aのガイド孔にガイドピンを挿入させることで、当該仕口12d,22aに対する取付位置を容易に決めることができ、この後、ボルトやナット等の接続部材を用いて仕口12d,22aに固定されるようになっている。
【0044】
これにより、建物本体6を形成する複数の建物ユニット10A,10B,20…のうち、例えば水平方向に隣接する建物ユニット10B,20同士が、互いに近接する仕口12d,22a同士を雁行して配置された場合であっても、当該雁行して配置された仕口12d,22a同士を、これら仕口12d,22a同士の上面を水平方向に覆う形状からなるシアプレート30によって接続されるので、これら建物ユニット10B,20同士を強固に連結することができるようになっている。すなわち、当該雁行して配置された仕口12d,22a同士を介して
図2の紙面左右に配置される通常の建物ユニット10Bの天井梁13aと、段部7を構成する異長建物ユニット20の天井梁23aとを、他の水平方向において同一線上に隣接して配置された天井梁13c,23c、13a,13a、13c,13c間と同様に設計したり、構造計算したりできるようになっている。
従って、
図6に示すように、本実施形態の建物本体6において、外部から水平方向に荷重(水平力)が加わったとしても、当該雁行して配置された仕口12d,22a間がシアプレート30によって接続されるので、水平力が加わることに起因して仕口12d,22a間に生じるねじれや曲げを抑制することができ、かかる水平力をシアプレート30を介して異長建物ユニット20の天井梁23aから隣接する通常の建物ユニット10Bの天井梁13aへと確実に伝達できるようになっている。すなわち、このような水平力をユニット式建物1全体に水平に伝達することができるため、ユニット式建物1の当該水平力に対する耐力や剛性を確保することができるようになっている。
【0045】
特に、本実施形態のように、雁行する仕口12d,22a同士のうち、一方の仕口22aが、他方の仕口12dに連結された短辺天井梁13dに当接するように配置された場合(すなわち、雁行する仕口12d,22a同士の雁行量が大きく、これら仕口12d,22a間が離れて配置される場合)、シアプレート30は、
図5に示すように、雁行する仕口12d,22a同士の上面を水平方向に覆う水平部30aと、当該水平部30aに対して垂直に配設され、一方の仕口22aが当接するように配置された短辺天井梁13dの上下(この場合、下階部3側の短辺天井梁13dと、上階部4側の短辺床梁14dと)に延在して当該短辺天井梁13dの内側面側を覆う垂直部30bと、を有する形状からなることが好ましい。
このとき、シアプレート30の垂直部30bが覆うように当接する短辺天井梁13dの内側面側には、当該短辺天井梁13dの上下に延在して、その内側面側(この場合、下階部3側の短辺天井梁13dの内側面側と、上階部4側の短辺床梁14dの内側面側と)を覆う補強カバー17が設けられていても良い。これにより、シアプレート30の垂直部30bを当該内側面側に対して、より確実に当接させることができる。
【0046】
この場合、シアプレート30は、雁行する仕口12d,22a同士の上面を、水平方向に覆う水平部30aによって接続することに加えて、当該仕口12dに連結された短辺天井梁13dの内側面側を、仕口22aが当接する部位の上下に延在して覆う(当接する)垂直部30bによって接続するので、これら雁行する仕口12d,22aを介して水平方向に隣接して配置される建物ユニット10B,20同士を、より一段と強固に連結することができるようになっている。
従って、建物本体6において、外部から水平方向に荷重(水平力)が加わったとしても、当該雁行して配置された仕口12d,22a間が水平部30aと垂直部30bとを備えたシアプレート30によって強固に接続されるので、水平力が加わることに起因して仕口12d,22a間に生じるねじれや曲げを確実に抑制することができ、かかる水平力をシアプレート30を介して隣接する建物ユニット10B,20間でより一層確実に伝達できるため、ユニット式建物1の当該水平力に対する耐力や剛性を向上することができるようになっている。
【0047】
ここで、ユニット式建物1の屋根5の取り付けに関し、
図7および8を用いて説明する。
図7は、
図1のユニット式建物1における屋根5の取り付け部分を拡大して示す縦断面図であり、
図8は、
図1のユニット式建物1に適用される異長建物ユニット20の天井フレーム23を概略的に示す構成図である。
【0048】
図1および
図7に示すように、かかるユニット式建物1の建物本体6は、その上部(すなわち、各建物ユニット10A,10B,20の天井梁13a〜13d,23a〜23dによって画成される天井フレーム13,23の上面側)に屋根5を取り付けるための屋根取付手段である跳ね出し部41と、支持部42とを備えている。
支持部42は、建物本体6の上部側を構成する複数の建物ユニット10A,10B,20…における天井フレーム13,23(具体的には、各天井梁13a〜13d,23a〜23d)の上面側に設けられ、屋根5を支持する。
【0049】
跳ね出し部41は、
図2,
図7および
図8に示すように、上述した段部7に配置され、各天井梁13a〜13d,23a〜23dのうち、当該段部7を構成する一方の建物ユニット(異長建物ユニット20)の天井フレーム23における天井梁23aの側方から建物本体6外方に向かって水平方向に上述した雁行量分、突出して設けられる。これにより、跳ね出し部41は、他方の建物ユニット(通常の建物ユニット10B)の天井梁13aと水平方向において同一線上に位置する機能を果たす(
図2参照)。
また、跳ね出し部41は、各天井梁13a〜13d,23a〜23dの上面側に設けられる支持部42…のうち、段部7に配置される支持部42を保持するようになっている。
【0050】
このため、本実施形態のユニット式建物1では、建物本体6の上部を構成する各建物ユニット10A,10B,20…の天井梁13a〜13d,23a〜23dの上面側に、屋根束や屋根パネル受けブラケット等の支持部42を介して屋根5を設ける際、雁行して配置された仕口12d,22a同士を介して連結された一方の異長建物ユニット20の天井梁23aが、他方の通常の建物ユニット10Bの天井梁13aに対し、段部7を構成していたとしても、跳ね出し部41が、当該段部7を構成する天井梁23aの側方から建物本体6外方に向かって水平方向に前記雁行量分、突出して設けられるので、かかる段部7においても水平方向において同一線上に隣接して配置された他の天井梁13c,23c、13a,13a、13c,13c間と同様に、屋根5を均一に支持(保持)することができるようになっている。
【0051】
なお、ここでは、ユニット式建物1の建物本体6が、その上部を構成する各建物ユニット10A,10B,20における天井フレーム13,23の上面側に、屋根取付手段である跳ね出し部41と、支持部42とを介して屋根5を取り付ける構造について説明したが、これはあくまでも一例であって、これに限られることはない。
すなわち、例えば
図7および
図8との対応部分に同一符号を付した
図9および
図10に示すように、ユニット式建物1において、建物本体6がその上部に取り付けられる屋根5との間に小屋梁43a〜43dからなる小屋パネル43を備えていても良い。
【0052】
因みに、
図8では建物本体6の形状に基づき、天井フレーム23の長辺天井梁23a側に跳ね出し部41を設ける場合について述べたが、ここでは便宜上、
図10において、小屋パネル43の短辺側の小屋梁43aが前記天井フレーム23の長辺天井梁23aに対応するものとして説明することとする。すなわち、建物本体6おいて、段部7を構成する天井梁(不図示)が短辺天井梁である場合について説明することとするが、後述する小屋パネル43における小屋梁43aの構造としては、短辺小屋梁43a,43c側に限定することなく、長辺小屋梁43b,43d側においても同様に適用可能であることは言うまでもない。
また、
図10に示す小屋パネル43は、建物本体6における段部7を構成する異長建物ユニット20に対応した寸法(サイズ)で形成された場合の小屋パネルであるが、他の通常の建物ユニット10(10A,10B)の上部に設けられる小屋パネルは、周知の通り、当該通常の建物ユニット10(10A,10B)に対応した寸法(サイズ)で形成されるものとし、説明上、
図10と同一の符号を援用する。
【0053】
このように、建物本体6がその上部に取り付けられる屋根5との間に小屋梁43a〜43dからなる小屋パネル43を備える場合、屋根取付手段は、支持部42…のうち、上面側に小屋パネル43(小屋梁43a〜43d)が設けられた天井梁13a〜13d,23b〜23d(すなわち、段部7を構成する天井梁23aを除く天井梁13a〜13d,23b〜23d)の位置に配置される支持部42を、当該小屋梁43a〜43dの上面に配設する。
【0054】
このとき、建物本体6の段部7を構成する異長建物ユニット20の上面側(すなわち、天井梁23aの上面側)に小屋パネル43(例えば、小屋梁43a)が配設される場合、当該小屋パネル43は、段部7を構成する天井梁23a上に位置する小屋梁43aを、この天井梁23aの側方から建物本体6外方に向かって水平方向に前記雁行量分、突出して設ける(延出する)ように形成されることが望ましい。すなわち、段部7を構成する異長建物ユニット20上に配置される小屋パネル43は、段部7の上方に位置する部位の小屋梁(例えば、小屋梁43a)を、当該段部7から建物本体6外方に向かって水平方向に前記雁行量分(隣接する天井梁13aとのずれ(段差)分)、延出して形成されることが望ましい。
【0055】
これにより、小屋パネル43の延設された小屋梁43aを、上述した跳ね出し部41(
図8参照)と同様に、当該段部7を構成する一方の建物ユニット(異長建物ユニット20)に対する他方の建物ユニット(通常の建物ユニット10B)の天井梁13aと水平方向において同一線上に位置する跳ね出し部として機能させる(つまり、段部7に配置される小屋梁43aによって屋根取付手段の跳ね出し部を構成する)ことが可能となる。このとき、跳ね出し部として機能させる小屋梁43aによって、支持部42…のうち、当該段部7に配置される支持部42を保持するようにする。
【0056】
このように、建物本体6の上部を構成する各建物ユニット10A,10B,20の天井フレーム13(天井梁13a〜13d),23(天井梁23a〜23d)の上面側に設けられた小屋パネル43(小屋梁43a〜43d)の上面に、屋根束や屋根パネル受けブラケット等の支持部42を介して屋根5を設ける際、雁行して配置された仕口12d,22a同士を介して連結された一方の異長建物ユニット20の天井梁23aが、他方の通常の建物ユニット10Bの天井梁13aに対し、段部7を構成していたとしても、当該段部7に配置される(すなわち、段部7を構成する天井梁23aの上面側に配置される)小屋梁43aが、この段部7を構成する天井梁23aの側方から建物本体6外方に向かって水平方向に前記雁行量分、延設されることで、他方の通常の建物ユニット10Bの天井梁13aと水平方向において同一線上に位置する跳ね出し部として機能するので、かかる段部7においても水平方向において同一線上に隣接して配置された他の天井梁13c,23c、13a,13a、13c,13c間の上面側と同様に、屋根5を均一に支持(保持)することができる。
【0057】
なお、かかる段部7に配置され、跳ね出し部として機能する小屋梁43aは、当該段部7を構成する天井梁23aの上面側において平行するように、当該天井梁23aの両端部間に亘って設けられても良いし、当該段部7を構成する天井梁23aの両端部に対し、仕口22a,22dを介して直交する方向に結合された一対の天井梁23b,23dの上面側にそれぞれ配置される小屋梁43b,43dを、それらの段部7側の端部が、各々当該段部7の側方から建物本体6外方に向かって水平方向に前記雁行量分、突出するように延設されるようにして、この段部7の両端部の上面側に当該段部7と直交するように設けられても良い。
【0058】
以上説明したように、本実施形態のユニット式建物1によれば、建物本体6を形成する複数の建物ユニット10A,10B,20…のうち、例えば水平方向に隣接する通常の建物ユニット10Bと、異長建物ユニット20とが、互いに近接する仕口12d,22a同士を雁行させて配置された場合であっても、当該雁行する仕口12d,22a同士が、これら仕口12d,22a同士の上面を水平方向に覆う形状からなるシアプレート30によって接続されるので、これら建物ユニット10B,20同士を強固に連結することができる。すなわち、当該雁行して配置された仕口12d,22a同士を介して配置される通常の建物ユニット10Bの天井梁13aと、段部7を構成する異長建物ユニット20の天井梁23aとを、他の水平方向において同一線上に隣接して配置された天井梁13c,23c、13a,13a、13c,13c間と同様に設計したり、構造計算したりできる。
【0059】
従って、本実施形態の建物本体6において、外部から水平方向に荷重(水平力)が加わったとしても、当該雁行して配置された仕口12d,22a間がシアプレート30によって接続されるので、水平力が加わることに起因して仕口12d,22a間に生じるねじれや曲げを抑制することができ、かかる水平力をシアプレート30を介して異長建物ユニット20の天井梁23aから隣接する通常の建物ユニット10Bの天井梁13aへと確実に伝達できる。すなわち、このような水平力をユニット式建物1全体に水平に伝達することができるため、ユニット式建物1の当該水平力に対する耐力や剛性を確保することができる。
よって、雁行して配置された仕口12d,22a同士が接続される部分に、従来のような水平力をユニット式建物1全体に水平に伝達させるための控え梁等の補助部材や補強フレーム等の補強部材を配設する必要をなくすことができ、これら補助部材や補強部材が不要になる分、従来に比べて部材コストを低減できる。
【0060】
このように、水平方向に隣接する建物ユニット10B,20同士が、互いの近接する雁行して配置された仕口12d,22a同士を、シアプレート30を介して接続することで強固に連結されるので、外部から水平力が加わったとしても、当該水平力がシアプレート30を介してユニット式建物1全体に水平に伝達されるため、従来のように、水平力が分散して伝達されることを回避でき、水平力が各々通過する梁(例えば、天井梁13a,13c、23a,23c)に関し、それぞれ分けて設計したり構造計算したりすることなく、他の水平方向に向けて同一線上に配置された仕口12c,22b間、12a,22b間、12d,22c間等の接続部分と同様に設計したり構造計算したりできる。つまり、ユニット式建物1の設計ルールを簡素化し、構造計算を簡略化することができるので、建物本体6を構成する際に組み合わされる複数の建物ユニット10(10A,10B),20…の配置を自由にレイアウトでき、ユニット式建物1の設計(すなわち、建物本体6を構成する建物ユニット10(10A,10B),20…のサイズ差のバリエーション)における制限を緩和して自由度を増すことができる。
【0061】
しかも、シアプレート30は、ユニット式建物1において、雁行する仕口12d,22a同士のうち、一方の仕口22aが、他方の仕口12dに連結された短辺天井梁13dに当接するように配置された場合、当該雁行する仕口12d,22a同士の上面を水平方向に覆う水平部30aと、当該水平部30aに対して垂直に配設され、一方の仕口22aが当接するように配置された短辺天井梁13dの上下に延在して当該短辺天井梁13dの内側面側を覆う垂直部30bと、を有する形状からなることが好ましい。
【0062】
これによれば、シアプレート30は、水平部30aと当該水平部30aに対して垂直に配設された垂直部30bとを有してなり、雁行する仕口12d,22a同士のうち、一方の仕口22aが、他方の仕口12dに連結された短辺天井梁13dに当接するように配置された場合(すなわち、雁行する仕口12d,22a同士の雁行量が大きく、これら仕口12d,22a間が離れて配置される場合)、これら仕口12d,22a同士の上面を水平方向に覆う水平部30aによって接続することに加えて、当該仕口12dに連結された短辺天井梁13dの内側面側を、仕口22aが当接する部位の上下に延在して覆う(当接する)垂直部30bによって接続するので、これら雁行する仕口12d,22aを介して水平方向に隣接して配置される建物ユニット10B,20同士を、より一段と強固に連結することができる。
従って、建物本体6において、外部から水平方向に荷重(水平力)が加わったとしても、当該雁行して配置された仕口12d,22a間が水平部30aと垂直部30bとを備えたシアプレート30によって強固に接続されるので、水平力が加わることに起因して仕口12d,22a間に生じるねじれや曲げを確実に抑制することができ、かかる水平力をシアプレート30を介して隣接する建物ユニット10B,20間でより一層確実に伝達できるため、ユニット式建物1の当該水平力に対する耐力や剛性を向上することができる。
【0063】
かくして、本実施形態のユニット式建物1では、補助部材や補強部材を必要とすることなく、雁行して配置された建物ユニット10B,20間の水平力に対する耐力や剛性を確保することができ、且つ、構造計算を簡略化して設計の自由度を向上させることができる。
【0064】
しかも、建物本体6を構成する各種建物ユニット10A,10B,20は、四隅に柱11a〜11d、20a〜20dが配設されているので、建物ユニット10A,10B,20自体の耐力や剛性の低下を防止(すなわち、当該建物ユニット10A,10B,20自体の強度の低下を防止)できるだけでなく、上部に他の建物ユニット10A,10B,20を積層させる場合に、これら建物ユニット10A,10B,20を確実に支持することができる利点も有している。
【0065】
また、ユニット式建物1は、規定寸法に基づいて形成された通常の建物ユニット10(10A,10B)と、当該通常の建物ユニット10(10A,10B)に比して水平方向の寸法が異なって形成された異長建物ユニット20と、を含んで建物本体6を構成している。
【0066】
従って、本実施形態のユニット式建物1によれば、同一寸法の建物ユニット10(10A,10B),20のみが複数組み合わされて建物本体6を形成する場合に比べて、建物本体6の形状に様々なバリエーションを持たせることができる。
【0067】
さらに、本実施形態のユニット式建物1によれば、上述した段部7を有する建物本体6は、当該建物本体6の上部側を構成する複数の建物ユニット10A,10B,20…における各天井梁13a〜13d,23a〜23dの上面側に設けられ、屋根5を支持する支持部42と、段部7に配置され、各天井梁13a〜13d,23a〜23dのうち、当該段部7を構成する天井梁23aの側方から建物本体6外方に向かって水平方向に前記雁行量分、突出して設けられることで、他方の建物ユニット10Bの天井梁13aと水平方向において同一線上に位置する跳ね出し部41と、を有する屋根取付手段を備えており、当該跳ね出し部41は、支持部42…のうち、段部7に配置される支持部42を保持するようになっている。
【0068】
このため、かかる建物本体6の上部を構成する各建物ユニット10A,10B,20の天井梁13a〜13d,23a〜23dの上面側に、屋根束や屋根パネル受けブラケット等の支持部42を介して屋根5を設ける際、雁行して配置された仕口12d,22a同士を介して連結された一方の建物ユニット20の天井梁23aが、他方の建物ユニット10Bの天井梁13aに対し、段部7を構成していたとしても、跳ね出し部41が、当該段部7を構成する天井梁23aの側方から建物本体6外方に向かって水平方向に前記雁行量分、突出して設けられるので、かかる段部7においても水平方向において同一線上に隣接して配置された他の天井梁13c,23c、13a,13a、13c,13c間と同様に、屋根5を均一に支持(保持)することができる。
【0069】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜、種々の改良および設計の変更が可能である。
【0070】
例えば、上述した実施形態においては、ユニット式建物1の建物本体6において、通常の建物ユニット10Bと異長建物ユニット20との間における雁行して配置された仕口12d,22a同士を接続するシアプレートとして、
図4に示したシアプレート30を適用する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、要は雁行して配置された仕口12d,22a同士を、これら仕口12d,22a同士の上面を水平方向に覆う形状からなるシアプレートであれば、この他種々の形状を広く適用することができる。すなわち、シアプレートの形状としては、例えば
図4との対応部分に同一符号を付して示す
図11のように、互いに近接する仕口12d,22a同士の雁行量に応じて、これら仕口12d,22a同士の上面を水平方向に覆う形状であれば良く、当該
図11に示すような一部(例えば、一方の仕口22aと他方の仕口12dとを結ぶ対角線)が傾斜した形状からなるシアプレート31であっても良いし、同じく
図4との対応部分に同一符号を付した
図12〜17に示すように、略ト字状の形状や、略L字状の形状、これらの形状に傾斜部を設けた形状からなるシアプレート32〜35であっても良い。
【0071】
また、上述した実施形態においては、建物本体6が複数の建物ユニット10(10A,10B),20…のうち、水平方向に隣接する異長建物ユニット20と、通常の建物ユニット10(10A,10B)とが、互いの長辺(長辺天井梁23a,23c、13a,13c)を同一方向に向けて配置されており、且つ、水平方向に隣接する通常の建物ユニット10同士(10A同士、10B同士、10Aと10B)が、互いの長辺(長辺天井梁13a,13c)を同一方向に向けて配置されている場合について述べたが、本発明はこれに限らず、これら建物ユニット10(10A,10B),20は、それぞれいずれか一組が互いの長辺(長辺天井梁23a,23c、13a,13c)を同一方向に向けて配置されていれば良い。また、建物本体6を構成する各種建物ユニット10(10A,10B),20の組み合わせとしては、この他種々の配置(配列)を広く適用することができる。
【0072】
例えば、
図4との対応部分に同一符号を付した
図12〜
図17に示すように、建物本体6は、複数の建物ユニット10(10A,10B),20…のうち、水平方向に隣接するいずれか一組の異長建物ユニット20と、通常の建物ユニット10(10A,10B)とが、互いの長辺(長辺天井梁23a,23c、13a,13c)を直交する方向に向けて配置されていても良い。
【0073】
また、建物本体6は、複数の建物ユニット10(10A,10B),20…のうち、水平方向に隣接するいずれか一組の異長建物ユニット20同士が、互いの長辺(長辺天井梁23a,23c)を直交する方向に向けて配置されていても良い。
【0074】
また、建物本体6は、複数の建物ユニット10(10A,10B),20…のうち、水平方向に隣接するいずれか一組の異長建物ユニット20同士が、互いの長辺(長辺天井梁23a,23c)を同一方向に向けて配置されていても良い。
【0075】
さらに、建物本体6は、複数の建物ユニット10(10A,10B),20…のうち、水平方向に隣接するいずれか一組の通常の建物ユニット10同士(10A同士、10B同士、10Aと10B)が、互いの長辺(長辺天井梁13a,13c)を直交する方向に向けて配置されていても良い。
【0076】
これらの場合、水平方向において近接する仕口12,22同士または、仕口12,12同士や、仕口22,22同士(より具体的には、仕口12d,22a同士等)が雁行して配置されていても、当該雁行して配置された仕口12d,22a同士をシアプレート30(31〜35)によって強固に接続できるので、建物本体6を構築する際に、水平方向に隣接する建物ユニット10(10A,10B),20が通常の建物ユニット10(10A,10B)と異長建物ユニット20の組み合わせであっても、通常の建物ユニット10同士(10A同士、10B同士、10Aと10B)の組み合わせであっても、異長建物ユニット20同士の組み合わせであっても良く、これら各種建物ユニット(通常の建物ユニット10(10A,10B)、異長建物ユニット20)を自由に組み合わせることができる。すなわち、建物本体6を構築する際に複数組み合わされる建物ユニット10(10A,10B),20…の種別や、それらの配置される方向を自由に設計(レイアウト)でき、ユニット式建物1の設計に関する制限を緩和することができる。
このように、通常の建物ユニット10(10A,10B)と異長建物ユニット20とを自由に組み合わせて建物本体6を構築することができるので、同一寸法の建物ユニット10(10A,10B),20のみが複数組み合わされて建物本体6を形成する場合に比べて、建物本体6を構成する各種建物ユニットのレイアウト(建物本体6の形状)の自由度を増すことができ、ユニット式建物1の設計に様々なバリエーションを持たせることができる。
【0077】
さらに、上述した実施形態においては、建物本体6における通常の建物ユニット10Bの仕口12dと、異長建物ユニット20の仕口22aとが雁行して配置される場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば
図12〜
図17に示すように、近接する仕口同士が雁行して配置された水平方向に隣接する建物ユニットの一方が、異長建物ユニット20であっても、通常の建物ユニット10(10A,10B)であっても良く、また、他方が、異長建物ユニット20であっても、通常の建物ユニット10(10A,10B)であっても良い。
【0078】
この場合、雁行して配置された仕口12,22同士または、仕口12,12同士や、仕口22,22同士等をシアプレート32〜35等によって強固に接続できるので、建物本体6を構築する際に、近接する仕口同士が水平方向に雁行して配置される部分を含むことができ、各種建物ユニット(通常の建物ユニット10(10A,10B)、異長建物ユニット20)を自由に組み合わせることができる。これにより、建物本体6を構成する各種建物ユニット10(10A,10B),20のレイアウトにおける自由度を増すことができるとともに、建物本体6の形状に様々なバリエーションを持たせることができるため、ユニット式建物1としての設計が単調になることを回避して、当該設計のバリエーションを豊富にできる。
【0079】
さらに、ユニット式建物1においては、例えば
図16または
図17に示すように、建物本体6が、水平方向に隣接する複数の建物ユニット10(10A,10B)、20…のうち、長辺同士(例えば、長辺天井梁13a,13c同士)を対向させて隣り合う建物ユニット同士(例えば、通常の建物ユニット10A,10A同士)を離して配置することによって形成された離し置き部を有するとともに、当該離し置き部を介して配置した建物ユニット10A,10A同士を連結梁50で連結して構成されていても良い。また、離し置き部には、対向する連結梁50,50(一方は図示省略)間において、剛性向上のための水平ブレース51が各対角線上に取り付けられていることが好ましい。なお、ここでは、通常の建物ユニット10A,10A同士が長辺天井梁13a,13c同士を対向させて隣り合う場合に形成される離し置き部について言及しているが、一例であってこれに限ることはない。
【0080】
そして、このような離し置き部を介して配置された一方の建物ユニット10Aと水平方向に隣接し、且つ、当接するように配置された建物ユニット(例えば、異長建物ユニット20)と、当該離し置き部を介して離れて配置された他方の建物ユニット10Aとが、互いに近接する仕口同士(例えば、仕口12c,22b同士)を、雁行させて配置された場合、シアプレート36,37が、当該雁行する仕口12c,22b同士および連結梁50の当該仕口12c,22b同士と近接する部位の上面を水平方向に覆う形状からなることが好ましい。
ここで
図16に示す仕口12c,22b同士は、一方の仕口22bが他方の仕口12cよりも
図16紙面における下方(すなわち、離し置き部側)に雁行するように位置するため、当該位置における連結梁50を介在して雁行する状態となる。
これに対し、
図17に示す仕口12c,22b同士は、一方の仕口22bが他方の仕口12cと対向する位置か、またはこれよりも
図16紙面における上方(すなわち、離し置き部とは反対側)に雁行するように位置するため、上述の
図16のように連結梁50を介在することなく雁行する状態となる。
【0081】
このようなユニット式建物1によれば、建物本体6が、例えば長辺天井梁13a,13c同士を対向させて水平方向に隣り合う通常の建物ユニット10A,10A同士を離間して配置することで離し置き部を形成し、当該離し置き部を介して配置される通常の建物ユニット10A,10A同士を連結梁50で連結して構成されており、離し置き部を介して配置された一方の建物ユニット10Aと水平方向に隣接し、且つ、当接するように配置された異長建物ユニット20と、当該離し置き部を介して離れて配置された他方の建物ユニット10Aと、が互いに近接する仕口12c,22b同士を、雁行させて配置されている場合であっても、これら仕口12c,22bをシアプレート36,37によって接続できるので、かかる異長建物ユニット20と、離し置き部を介して離れて配置された他方の建物ユニット10Aとを強固に連結することができる。
従って、これら建物ユニット10Aと異長建物ユニット20間において確実に水平力を伝達することができるので、離し置き部の離し置き間隔を広げた場合でも、ねじれ等を抑制することができ、ユニット式建物1全体の剛性を確保した構造とすることができる。