(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
射出成形機における成形条件を設定する射出成形機の成形条件設定方法であって、予め、同一種のペレットに係わる使用時期により異なるペレットデータとなる、ペレット重量データ,ペレット体積データ,ペレット穴有無データ,ペレットの見掛け密度データ,の少なくとも一又は二以上に対する基準となるペレットデータ(基準ペレットデータ)を設定し、前記同一種のペレットを使用する際に、使用するペレットに係わるペレットデータ(使用ペレットデータ)を採取するとともに、この使用ペレットデータと前記基準ペレットデータを比較し、この比較結果から得られる比較結果データにより前記成形条件の補正を行うことを特徴とする射出成形機の成形条件設定方法。
前記ペレットデータに加えて、ペレットの素材に係わる、比熱データ,比重データ,熱伝導率データ,の一又は二以上の入力データを用いることを特徴とする請求項1記載の射出成形機の成形条件設定方法。
前記成形条件の補正は、計量工程において検出される、計量時間及び/又は計量トルクを含む計量モニタ値を監視し、この計量モニタ値が予め設定した閾値に達した時点で行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の射出成形機の成形条件設定方法。
射出成形機における成形条件を設定する射出成形機の成形条件設定装置であって、同一種のペレットに係わる使用時期により異なるペレットデータとなる、ペレット重量データ,ペレット体積データ,ペレット穴有無データ,ペレットの見掛け密度データ,の少なくとも一又は二以上に対する基準となるペレットデータ(基準ペレットデータ)を設定する基準ペレットデータ設定手段と、使用する前記同一種のペレットから採取したペレットデータ(使用ペレットデータ)を取込む使用ペレットデータ取込手段と、この使用ペレットデータと前記基準ペレットデータを比較して比較結果データを得るデータ比較手段と、この比較結果データにより前記成形条件の補正を行う成形条件補正手段とを具備してなることを特徴とする射出成形機の成形条件設定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した射出成形機における従来の成形条件設定方法は、次のような解決すべき課題も存在した。
【0007】
第一に、成形条件を設定するに際しては、入力情報として成形材料の種別(種類)が用いられる。成形材料の種別が異なれば、融点等の物性も異なり、当然に成形条件への影響も大きくなるため、成形材料の種別は成形条件を設定する際の無視できない重要な入力情報となる。しかし、成形条件の設定に用いられるこの種の入力情報は、いわば材料メーカ等で公表される成形材料の一般的な物性情報に留まり、入力情報の質的及び量的観点からは必ずしも十分といえるものではない。結局、的確な成形条件を設定するのは容易でないとともに、自ずと限界があり、成形条件の設定は妥協的にならざるを得ない。
【0008】
第二に、成形条件の設定に影響する成形材料に係わる入力情報を利用する場合、これらの入力情報は基本的に固定値となるため、成形条件の初期設定には利用できるとしても、それ以上に利用できるものではない。したがって、不良品が発生した場合、原因を究明するための情報としては利用しにくく、成形条件の設定(調整)は、思考錯誤の繰り返しにならざるを得ない。結局、成形条件の設定に無用な時間が費やされ、迅速かつ能率的な設定作業を行うことができない。
【0009】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した射出成形機の成形条件設定方法及び装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る射出成形機Mの成形条件設定方法は、上述した課題を解決するため、射出成形機Mにおける成形条件を設定する成形条件設定方法であって、予め、同一種のペレットP1(P2…)に係わる使用時期により異なるペレットデータとなる、ペレット重量データDa,ペレット体積データDb,ペレット穴有無データDc,ペレットの見掛け密度データDd,の少なくとも一又は二以上に対する基準となるペレットデータ(基準ペレットデータ)Das,Dbs,Dcs…を設定し、同一種のペレットP1(P2…)を使用する際に、使用するペレットP1(P2…)に係わるペレットデータ(使用ペレットデータ)Dad,Dbd,Dcd…を採取するとともに、この使用ペレットデータDad,Dbd,Dcd…と基準ペレットデータDas,Dbs,Dcs…を比較し、この比較結果から得られる比較結果データEa,Eb,Ec…により成形条件の補正を行うようにしたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る射出成形機の成形条件設定装置1は、上述した課題を解決するため、射出成形機Mにおける成形条件を設定する成形条件設定装置1を構成するに際して、同一種のペレットP1(P2…)に係わる使用時期により異なるペレットデータとなる、ペレット重量データDa,ペレット体積データDb,ペレット穴有無データDc,ペレットの見掛け密度データDd,の少なくとも一又は二以上に対する基準となるペレットデータ(基準ペレットデータ)Das,Dbs,Dcs…を設定する基準ペレットデータ設定手段Fsと、使用する同一種のペレットP1(P2…)から採取したペレットデータ(使用ペレットデータ)Dad,Dbd,Dcd…を取込む使用ペレットデータ取込手段Fiと、この使用ペレットデータDad,Dbd,Dcd…と基準ペレットデータDas,Dbs,Dcs…を比較して比較結果データEa,Eb,Ec…を得るデータ比較手段Fcと、この比較結果データEa,Eb,Ec…により成形条件の補正を行う成形条件補正手段Faとを具備してなることを特徴とする。
【0012】
一方、本発明は、好適な実施の態様により、ペレットデータDa…に加えて、ペレットP1…の素材に係わる、比熱データ,比重データ,熱伝導率データ,の一又は二以上の入力データを用いることができる。他方、成形条件の補正には、ホッパー11及び/又は加熱筒12の設定温度に対する補正を適用できる。さらに、成形条件の補正は、計量工程において検出される、計量時間及び/又は計量トルクを含む計量モニタ値Tdを監視し、この計量モニタ値Tdが予め設定した閾値Tsに達した時点で行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
このような本発明に係る射出成形機Mの成形条件設定方法及び装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0014】
(1) 同一種のペレットP1(P2…)に係わる使用時期、具体的には製造ロット単位で異なる一又は二以上のペレットデータDa…を入力情報として活用できるため、製造ロット単位でペレットP1(P2…)の状態が微妙に異なる場合であっても、的確な成形条件を設定、即ち、補正を行うことができる。このように、同一種のペレットP1(P2…)であっても、製造時期によって、ペレット重量Daやペレット体積Db等に全体的な変動を生じるが、この変動による成形条件への影響を排除できる。これにより、良品の歩留まり向上、更には良品における重量や体積等のバラツキ低減を図ることができる。
【0015】
(2) 使用時期により異なる一又は二以上のペレットデータDa…に対する基準ペレットデータDas…と実際に使用するペレットP1(P2…)に係わる使用ペレットデータDca…の比較結果から得られる比較結果データEa…により成形条件の補正を行うようにしたため、思考錯誤の繰り返しによる成形条件の設定作業を排除し、迅速かつ能率的な設定作業を行うことができる。
【0016】
(3) 使用時期により異なるペレットデータとして、ペレット重量データDa,ペレット体積データDb,ペレット穴有無データDc,ペレットの見掛け密度データDd,の少なくとも一又は二以上を用いるようにしたため、同一種のペレットP1(P2…)に係わる使用時期により異なる様々なペレットデータDa…を入力情報として利用できるとともに、目的を達成するための質的かつ量的にも必要十分なペレットデータDa…を得ることができる。
【0017】
(4) 好適な態様により、ペレットデータDa…に加えて、ペレットP1…の素材に係わる、比熱データ,比重データ,熱伝導率データ,の一又は二以上の入力データを用いれば、より具体的な補正量、即ち、温度(成形温度)を安定化させるための補正量を、容易かつ正確に算出することができる。
【0018】
(5) 好適な態様により、成形条件の補正として、ホッパー11及び/又は加熱筒12の設定温度に対する補正を適用すれば、同一種のペレットP1(P2…)に係わるペレットデータDa,Db,Dc…が使用時期により異なる場合であっても、成形条件に対する最も有効的かつ効果的な補正を行うことができる。
【0019】
(6) 好適な態様により、成形条件の補正を、計量工程において検出される、計量時間及び/又は計量トルクを含む計量モニタ値Tdを監視し、この計量モニタ値Tdが予め設定した閾値Tsに達した時点で行うようにすれば、実際に補正を必要とする変動等に対してのみ補正を行うことができるため、無用な補正処理を回避できるとともに、設定した成形条件の安定化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
まず、本実施形態に係る成形条件設定方法を実施できる射出成形機Mの構成について、
図2を参照して説明する。
【0023】
図2中、Miは射出装置であり、この射出装置Miと不図示の型締装置により射出成形機Mの主要部が構成される。射出装置Miは、加熱筒12を備え、この加熱筒12は、前端に射出ノズル21を有するとともに、加熱筒12の後端には、当該加熱筒12の内部に成形材料を供給するホッパー11を備える。したがって、ホッパー11の下端口は、鉛直方向に設けた材料落下孔11sを介して加熱筒12の内部に連通する。
【0024】
また、射出ノズル21を含む加熱筒12の外周面には加熱部23を配設する。加熱部23は、軸方向Hsに沿って順次配設したバンドヒータ等を用いた複数のヒータ23n,23m,23c,23ff,23fr、即ち、射出ノズル21(ノズルゾーンZn)の外周面に装着したノズルヒータ23n,加熱筒12の前部に装着してメータリングゾーンZmを加熱する前部ヒータ23m,加熱筒12の中間部に装着してコンプレッションゾーンZcを加熱する中間部ヒータ23c,加熱筒12の後部に装着してフィードゾーンZfを加熱する後部ヒータ(23ff,23fr)をそれぞれ備え、この後部ヒータ(23ff,23fr)には、前側に位置する第一後部ヒータ23ffと後側に位置する第二後部ヒータ23frが含まれる。
【0025】
さらに、加熱筒12には、各加熱部位における温度を検出する熱電対等を用いた複数の温度センサ24n,24m,24c,24ff,24frをそれぞれ付設する。即ち、ノズルヒータ23nにより加熱される射出ノズル21の温度を検出するノズル温度センサ24n,前部ヒータ23mにより加熱される加熱筒部位におけるメータリングゾーンZmの温度を検出する前部温度センサ24m,中間部ヒータ23cにより加熱される加熱筒部位におけるコンプレッションゾーンZcの温度を検出する中間部温度センサ24c,フィードゾーンZfの温度を検出する後部温度センサ(24ff,24fr)とをそれぞれ備え、この後部温度センサ(24ff,24fr)には、第一後部ヒータ23ffにより加熱される加熱筒部位の温度を検出する第一後部温度センサ24ffと第二後部ヒータ23frにより加熱される加熱筒部位の温度を検出する第二後部温度センサ24frが含まれる。各温度センサ24n,24m,24c,24ff,24frは、加熱筒12(射出ノズル21)の外周面に形成した装着孔に差込んで付設する。一方、加熱筒12の内部にはスクリュ25を挿入し、このスクリュ25の後端は、ホッパー11の後方へ延出することにより、当該スクリュ25を回転駆動及び進退駆動する主要部を省略したスクリュ駆動部26に接続する。
【0026】
他方、射出成形機Mには、成形機全体の制御を司るコンピュータ機能を有する成形機コントローラ31を備えるとともに、上述した加熱部23に対する温度制御を行う温度制御部32を備える。温度制御部32は成形機コントローラ31に接続し、各種データの授受を行うことができる。この温度制御部32は、各ヒータ23n,23m,23c,23ff,23frに対応する独立した制御系を構成する温度制御ユニット32f,32c…を備える。したがって、任意の温度制御ユニット、例えば、温度制御ユニット32ffには、第一後部温度センサ24ffと第一後部ヒータ23ffが接続される。これにより、温度制御ユニット32ffには、成形機コントローラ31から設定温度となる第一後部目標温度Tffsが転送されるため、温度制御時には、第一後部ヒータ23ffに通電してフィードゾーンZfの前側を加熱するとともに、この温度は第一後部温度センサ24ffにより第一後部検出温度Tffdとして検出され、第一後部検出温度Tffdが、第一後部目標温度Tffsになるように、温度に対する独立したフィードバック制御が行われる。なお、残りの各温度制御ユニット23n,23m,23c,23frにおいても同様の制御が行われる。
【0027】
一方、成形機コントローラ31は、ハードディスク等の内部記憶手段31mを内蔵し、この内部記憶手段31mには、本実施形態に係る成形条件設定方法に関連して、後述する基準ペレットデータDas,Dbs,Dcs…、使用ペレットデータDad,Dbd,Dcd…及び各種成形条件を登録するデータベース31mbを備えるとともに、各種データ類を書込むデータメモリエリア31md、更には各種プログラム類を格納したプログラムメモリエリア31mpが含まれる。したがって、プログラムメモリエリア31mpには、本実施形態に係る成形条件設定方法を実行するための処理プログラム及び制御プログラム(シーケンス制御プログラムを含む)、即ち、予め、同一種のペレットP1(P2…)に係わる使用時期により異なる一又は二以上のペレットデータDa,Db,Dc…に対する基準となるペレットデータ、即ち、基準ペレットデータDas,Dbs,Dcs…を設定し、同一種のペレットP1(P2…)を使用する際に、使用するペレットP1(P2…)に係わるペレットデータ、即ち、使用ペレットデータDad,Dbd,Dcd…を採取するとともに、この使用ペレットデータDad,Dbd,Dcd…と基準ペレットデータDas,Dbs,Dcs…を比較し、この比較結果から得られる比較結果データEa,Eb,Ec…により成形条件の補正を行うことにより、射出成形機Mにおける少なくとも温度に係わる成形条件を設定する機能を有する処理プログラムを格納する。
【0028】
さらに、成形機コントローラ31には、
図2に示すように、ディスプレイユニット33が付属する。このディスプレイユニット33は、各種データを表示(グラフィック表示を含む)する表示部33dと、この表示部33dに付設することによりタッチパネル方式によりデータ入力を行うことができる入力部(設定部)33iを備える。他方、成形機コントローラ31には、射出成形機Mに備える各種センサ類34を接続するとともに、射出成形機Mに備える各種アクチュエータ類35を接続する。
【0029】
したがって、上述したディスプレイユニット33及び内部記憶手段31mを含む成形機コントローラ31は、射出成形機Mにおける少なくとも温度に係わる成形条件を設定する本実施形態に係る成形条件設定装置1、即ち、同一種のペレットP1(P2…)に係わる使用時期により異なる一又は二以上のペレットデータDa,Db,Dc…に対する基準ペレットデータDas,Dbs,Dcs…を設定する基準ペレットデータ設定手段Fsと、使用する同一種のペレットP1(P2…)から採取した使用ペレットデータDad,Dbd,Dcd…を取込む使用ペレットデータ取込手段Fiと、この使用ペレットデータDad,Dbd,Dcd…と基準ペレットデータDas,Dbs,Dcs…を比較して比較結果データEa,Eb,Ec…を得るデータ比較手段Fcと、この比較結果データEa,Eb,Ec…により成形条件の補正を行う成形条件補正手段Faとを備える成形条件設定装置1を構成する。
【0030】
次に、本実施形態に係る成形条件設定装置1の機能(動作)を含む成形条件設定方法について、
図1〜
図6を参照して説明する。
【0031】
最初に、本実施形態に係る成形条件設定方法の原理について、
図3〜
図5を参照して説明する。
【0032】
本実施形態に係る成形条件設定方法は、同一種のペレットP1(P2…)に係わる使用時期、具体的には製造ロット単位で異なる一又は二以上のペレットデータDa…を、成形条件を設定(調整)する際の入力情報として活用するものである。
図3に、成形材料となるペレットP1,P2…、特に、大きさ,形状,素材等の異なる四種類のペレットP1,P2,P3,P4を示す。
【0033】
ところで、このようなペレットP1…において、同一種のペレット、例えば、ペレットP1に着目した場合、使用時期(製造ロット)が異なるとペレットデータDa…も異なってくる。即ち、同一種のペレットP1であるため、使用時期が異なったとしても、素材の種類やその物性は基本的に同一であるが、
図4の表に示すように、幾つかのペレットデータDa,Db,Dc,Ddは使用時期が異なった場合には変化する。なお、使用時期が異なるとは、基本的に製造ロットが異なることと同義であるが、同一製造ロットであっても使用時期が異なることにより温度や湿気等の影響を受けて変化するため、製造ロットが同一の場合を排除するものではない。
図4には、使用時期が異なった際に変化するペレットデータDa…として、ペレット重量データDa,ペレット体積データDb,ペレット穴有無データDc,ペレットの見掛け密度データDdを例示する。このように、ペレットデータDa…に、少なくとも、ペレット重量データDa,ペレット体積データDb,ペレット穴有無データDc,ペレットの見掛け密度データDd,の一又は二以上を用いれば、同一種のペレットP1(P2…)に係わる使用時期により異なる様々なペレットデータDa…を入力情報として利用できるとともに、目的を達成するための質的かつ量的にも必要十分なペレットデータDa…を得ることができる利点がある。
【0034】
そして、同一種のペレットP1である以上、使用時期が異なっても、オペレータがその変化に気づくことはほとんどない。即ち、使用時期が異なるペレットP1,P1について、両者を並べて対比し、必要より拡大鏡等で見比べたり、或いは重量計により各ペレットP1…の重さを測定し、平均値を比較するなどの監視を行わない限り、オペレータは、現に存在するペレットP1を使用して成形を行うため、前回使用したペレットP1…に対する見掛け上の相違に気づくことはほとんどない。
【0035】
しかし、使用時期が異なるペレットP1…同士について、実際に検証、即ち、ペレット重量,ペレット体積,ペレット穴の有無,ペレットの見掛け密度,について、それぞれ計測して検証した結果、明確な相違が存在するとともに、この相違が成形条件に一定の影響を及ぼしていることを確認できた。
図4がこの検証結果を示しており、ペレット重量(Da)の場合、軽いほど成形時の成形温度(樹脂温度)が安定するが、重いほど成形温度が不安定になる。ペレット体積(Db)の場合、小さいほど成形温度が安定するが、大きいほど成形温度が不安定になる。ペレット穴(Dc)の場合、穴が有るものは成形温度が安定するが、穴の無いものは成形温度が不安定になる。ペレット見掛け密度(Dd)の場合、小さいほど成形温度が安定するが、大きいほど成形温度が不安定になる。
【0036】
なお、
図4は、さらに、入力情報D1…の一例と成形温度(成形条件)への影響を示している。熱拡散率(D1)の場合、大きいほど成形温度が安定するが、小さいほど成形温度が不安定になる。SM値(D2)の場合、小さいほど成形温度が安定するが、大きいほど成形温度が不安定になる。サイクル時間(D3)の場合、長いほど成形温度が安定するが、短いほど成形温度が不安定になる。以上において、SM値は計量停止位置を意味するとともに、成形温度が不安定(安定)とは、バラツキが大きい(小さい)ことを意味する。また、熱拡散率は、熱伝導率/(比重×比熱)から得ることができる。この場合、熱拡散率を求めるのに必要な熱伝導率,比重,比熱は、使用する成形材料の一般情報(入力データ)となるため、予め、材料メーカ等から公表されているペレットP1…の素材に係わる、比熱データ,比重データ,熱伝導率データとして登録する。このように、ペレットデータDa…に加えて、ペレットP1…の素材に係わる、比熱データ,比重データ,熱伝導率データ,の一又は二以上の入力データを用いれば、より具体的な補正量、即ち、温度(成形温度)を安定化させるための補正量を、容易かつ正確に算出できる利点がある。その他、処理に関係する入力データとして、成形温度や初期温度等を入力させる。
【0037】
一方、
図5は、上述したペレットデータDa…の影響及びこの影響を回避するための補正原理をイメージ的に示す。
図5中、Z1は加熱筒12におけるペレットP1に対する加熱領域を示すとともに、Z2は溶融樹脂に対する加熱領域を示す。また、Qmは、成形温度、即ち、成形条件として設定した目標温度(設定温度)まで上昇させるに必要な熱量を示している。
図5(a)は成形温度が安定する場合のイメージであり、例示の場合、SM値は「小」、サイクル時間は「長」である。また、ペレット重量は「軽」、ペレット体積は「小」、ペレット穴は「有」である。この場合、加熱領域Z1の熱量はQp1、加熱領域Z2の熱量はQp2となり、Qp1+Qp2は必要とする熱量Qmを満たしている。したがって、熱量に不足を生じることがなく、成形温度は安定する。
【0038】
これに対して、
図5(b)は成形温度が不安定となる場合のイメージであり、例示の場合、SM値は「大」、サイクル時間は「短」であり、
図5(a)の場合と同じになるが、ペレット重量は「重」、ペレット体積は「大」、ペレット穴は「無」となる。この場合、加熱領域Z1の熱量はQn1、加熱領域Z2の熱量はQn2となり、Qn1+Qn2の熱量は、必要とする熱量Qmを満たすことがなく、不足熱量Qmrを生じる。したがって、
図5(b)に示すような成形温度が不安定となる状態では、加熱領域Z1と加熱領域Z2の一方又は双方における設定温度を高くし、不足熱量Qmrを補うように補正を行えば、成形温度を安定させることができる。
【0039】
以下、本実施形態に係る成形条件設定方法の具体的な処理手順について、各図を参照しつつ
図1に示すフローチャートに従って説明する。
【0040】
まず、予め、成形機コントローラ31に備える基準ペレットデータ設定手段Fsにより、使用するペレット、例えば、ペレットP1についての基準となるペレットデータ、即ち、基準ペレットデータDas,Dbs,Dcs…の設定を行う(ステップS1)。
図6は、ペレットデータDa,Db,Dc…を採取するための単純な採取治具51を一例として示す。例示の採取治具51は、所定の容積を有する採取カップ51cである。したがって、
図6に示すように、ペレットP1…を採取カップ51cの中に収容することにより、採取カップ51cの上端レベルまで満たせば、収容したペレットP1…の全体重量とペレット数量に基づいてペレット重量データDaを得ることができるとともに、採取カップ51cの容積と収容したペレット数量によりペレット体積データDbを得ることができる。また、外観目視によりペレット穴有無データDcを得ることができる。さらに、ペレットP1…の全体重量と採取カップ51cの容積によりペレットの見掛け密度データDdを得ることができる。
【0041】
基準ペレットデータDas…としては、最初に採取したペレットデータDa,Db,Dc,Ddを、そのまま基準ペレットデータDas,Dbs,Dcs,Ddsとして用いることができる。したがって、得られた基準ペレットデータDas,Dbs,Dcs,Ddsを入力部33iから成形機コントローラ31に入力し、データベース31mbに登録(設定)する。一方、基準ペレットデータDas…を設定したなら、成形を行う際に必要となる各種成形条件を設定する設定作業を行う。なお、成形条件の初回設定時には、基準ペレットデータDas…に対して比較する使用ペレットデータDad…が無いため、通常の設定作業を行うとともに、必要な成形条件を設定する。即ち、成形条件に対するペレットデータDs…に基づく補正は行わない。
【0042】
他方、任意の期間が経過し、同一種のペレットP1を用いた2回目の成形を行う場合を想定する。この場合、任意の期間が経過することにより、同一種のペレットP1であっても製造ロットは前回使用したペレットP1とは異なるものとする。まず、成形を行うに際しては、成形機コントローラ31に備える使用ペレットデータ取込手段Fiにより、使用ペレットデータDad,Dbd,Dcd…の取込みを行う。最初に、使用するペレットP1に係わるペレットデータ、即ち、使用ペレットデータDad,Dbd,Dcd…を採取する(ステップS2)。使用ペレットデータDad,Dbd,Dcd…を採取するに際しては、上述した初回と同様に、採取カップ51cを利用して、ペレットデータDa,Db,Dc,Ddをそれぞれ採取する。そして、得られたペレットデータDa,Db,Dc,Ddを、使用ペレットデータDad,Dbd,Dcd,Dddとして、入力部33iから成形機コントローラ31に取込み、内部記憶手段31mにおけるデータベース31mbに設定する。
【0043】
次いで、成形機コントローラ31におけるデータ比較手段Fcにより、使用ペレットデータDad,Dbd,Dcd…と基準ペレットデータDas,Dbs,Dcs…を比較して比較結果データEa,Eb,Ec…を得る。この場合、まず、使用ペレットデータDad,Dbd,Dcd…と基準ペレットデータDas,Dbs,Dcs…を比較、具体的には、使用ペレットデータDadと基準ペレットデータDas、使用ペレットデータDbdと基準ペレットデータDbs、のように、同一のペレットデータ同士を比較する(ステップS3)。これにより、この比較結果、具体的には両者間の偏差量を含む比較結果データEa,Eb,Ec…が得られるため、この比較結果データEa,Eb,Ec…に対する判定を行う(ステップS4)。具体的には、基準ペレットデータ(重量データ)Dasに対して使用ペレットデータ(重量データ)Dadが相対的に重いか軽いかを判定し、この判定結果を成形条件設定支援情報として出力する(ステップS5)。
【0044】
これにより、成形機コントローラ31における成形条件補正手段Faを利用して、成形条件に対する補正を行うことができる。即ち、オペレータは出力された成形条件設定支援情報を利用して成形条件の設定(補正)を行うことができる(ステップS6)。なお、同一種のペレットP1を用いた2回目の成形となるため、成形条件は、例えば、前回の成形条件を読み出して使用することができる。
【0045】
また、成形条件の設定(補正)を行うに際しては、成形条件を設定するための設定ツールが存在するか否かにより設定処理の方法が異なる。設定ツールが無い場合は、例えば、成形条件設定支援情報を表示部33dに表示し、オペレータによりマニュアル設定することができる(ステップS7,S8)。具体的には、オペレータは、表示部33dに表示された成形条件設定支援情報を確認しながら、加熱筒12の加熱部23における、例えば、第一後部ヒータ23ffに対する設定温度を、本来、「230〔℃〕」であるところ、「240〔℃〕」に設定変更するなど、オペレータによるマニュアル設定(補正)を行うことができる。
【0046】
これに対して、設定ツールがある場合には、この設定ツールを利用して成形条件の設定を行うことができる(ステップS7,S9)。設定ツールとしては、比較結果データEa,Eb,Ec…に基づき、補正量を自動演算により求める演算処理機能を一例として挙げることができる。即ち、必要な成形温度を得る全体の必要伝熱量Qmは、
Qm〔J/s〕=((成形温度〔℃〕−ホッパー温度〔℃〕)
×比熱〔J/(g℃)〕×SM値〔g〕)/サイクル時間〔s〕
により表されるため、必要伝熱量Qmが大きいときは、加熱筒12における設定温度を高くする必要がある。この場合、
図5中、ペレット領域Z1の必要伝熱量Qmz1は、
Qmz1〔J/s〕=((融点〔℃〕−ホッパー温度〔℃〕)
×比熱〔J/(g℃)〕×SM値〔g〕)/サイクル時間〔s〕
により得られる。
【0047】
一方、前述した比較結果データEa,Eb,Ec…に対応する、例えば、係数値Ktを、予め設定したデータテーブル或いは換算式等を用いて求め、この係数値Ktにより、必要伝熱量Qmz1を補正する(=Qmz1×Kt)とともに、さらに、このQmz1×Ktから必要な補正量、例えば、「+10〔℃〕」を求め、前述した第一後部ヒータ23ffに対する設定温度を、例えば、本来「230〔℃〕」であるところ、「240〔℃〕」に設定変更することができる。
【0048】
その他、このような設定ツールとしては各種設定ツールを利用できる。例えば、ペレット体積Dbが大きくなるとともに、更にバラツキが大きくなることにより、成形温度に係わる標準偏差σnが、例えば、「0.0045」から「0.078」に悪化した場合、悪化時のペレットデータDa…に基づき、予め設定したデータテーブル或いは換算式から第一後部ヒータ23ffの設定温度に対する補正量、例えば、「+10〔℃〕」を求め、本来「230〔℃〕」であるところ、「240〔℃〕」に設定変更することができる。これにより、成形温度が安定化し、標準偏差σnを低下させることができる。この場合、ペレット領域Z1の必要伝熱量Qmz1を算出し、悪化時のペレットデータDa(重量)又はDb(体積),及び標準偏差σnから、対応する係数値を求めることができる。
【0049】
また、計量時間の標準偏差σnが、ペレット形状の変化により、例えば、「0.047」から「0.752」に悪化した場合、悪化時のペレットデータDa…に基づき、予め設定したデータテーブル或いは換算式から前述した第二後部ヒータ23frの設定温度に対する補正量、例えば、「+60〔℃〕」を求め、この補正量により補正することもできる。これにより、成形温度が安定化し、標準偏差σnを低下させることができる。この場合も、ペレット領域Z1の必要伝熱量Qmz1を算出し、悪化時のペレットデータDa(重量)又はDb(体積),及び標準偏差σnから対応する係数値を求めることができる。他方、反対にペレットP1の重量が低下するなどにより、成形温度が安定化した場合には、例えば、第二後部ヒータ23frの設定温度に対する補正量、例えば、「−20〔℃〕」の補正量を求め、これにより、設定温度を低下させるようにしてもよい。
【0050】
この後、成形条件の設定処理(補正処理)が終了したなら、成形条件に係わるデータを登録(設定)する(ステップS10)。これにより、基本的な成形条件の設定作業、即ち、補正作業は終了する。ところで、得られた成形条件に係わるデータは、データベースとして登録するとともに、利用に供するための必要な処理を行うことができる(ステップS11)。例えば、同一種のペレットP1…を複数回使用することにより、複数回に基づく使用ペレットデータDad,Dbd,Dcd…が得られるため、成形終了後、初回の使用ペレットデータ(基準ペレットデータ)Dad…を含む全ての使用ペレットデータDad…の平均値を求め、この平均値を基準ペレットデータDad…として書換えてもよい。或いは、各使用ペレットデータDad…と補正量の関係が得られるため、変換に使用するデータテーブル或いは換算式等を逐次最適化する処理を行ってもよい(ステップ(S1,S6))。今後、さらに同一種のペレットP1を使用して成形を行う場合には、ステップS2からステップS11の処理を繰り返して行えばよい(ステップS12)。
【0051】
なお、以上においては、成形条件に対する補正として、加熱筒12の設定温度に対する補正を例示したが、ホッパー11の設定温度に対して補正してもよい。この場合、ホッパー11に対する冷却を行っている場合には、冷却度合を低下させる等の処理を行うことも可能である。このように、成形条件の補正として、ホッパー11及び/又は加熱筒12の設定温度に対する補正を適用すれば、同一種のペレットP1(P2…)に係わるペレットデータDa,Db,Dc…が使用時期により異なる場合であっても、成形条件に対する最も有効的かつ効果的な補正を行うことができる利点がある。
【0052】
また、成形条件の補正を行うに際しては、計量工程において検出される、計量時間及び/又は計量トルクを含む計量モニタ値Tdを監視し、この計量モニタ値Tdが予め設定した閾値Tsに達した時点で行うようにしてもよい。このような手法を採れば、実際に補正を必要とする変動等に対してのみ補正を行うことができるため、無用な補正処理を回避できるとともに、設定した成形条件の安定化を図れる利点がある。
【0053】
よって、このような本実施形態に係る成形条件設定方法(成形条件設定装置1)によれば、基本的な手法として、予め、同一種のペレットP1(P2…)に係わる使用時期により異なる一又は二以上のペレットデータDa,Db,Dc…に対する基準ペレットデータDas,Dbs,Dcs…を設定し、同一種のペレットP1(P2…)を使用する際に、使用するペレットP1(P2…)に係わる使用ペレットデータDad,Dbd,Dcd…を採取するとともに、この使用ペレットデータDad,Dbd,Dcd…と基準ペレットデータDas,Dbs,Dcs…を比較し、この比較結果から得られる比較結果データEa,Eb,Ec…により成形条件の補正を行うようにしたため、同一種のペレットP1(P2…)に係わる使用時期、具体的には製造ロット単位で異なる一又は二以上のペレットデータDa…を入力情報として活用でき、製造ロット単位でペレットP1(P2…)の状態が微妙に異なる場合であっても、的確な成形条件を設定、即ち、補正を行うことができる。このように、同一種のペレットP1(P2…)であっても、製造時期によって、ペレット重量Daやペレット体積Db等に全体的な変動を生じるが、この変動による成形条件への影響を排除できる。これにより、良品の歩留まり向上、更には良品における重量や体積等のバラツキ低減を図ることができる。また、使用時期により異なる一又は二以上のペレットデータDa…に対する基準ペレットデータDas…と実際に使用するペレットP1(P2…)に係わる使用ペレットデータDca…の比較結果から得られる比較結果データEa…により成形条件の補正を行うようにしたため、思考錯誤の繰り返しによる成形条件の設定作業を排除し、迅速かつ能率的な設定作業を行うことができる。
【0054】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0055】
例えば、ペレットP1…としては、例示以外の各種形状,素材,大きさのペレットにも同様に適用できる。また、ペレットデータDa…として、ペレット重量データDa,ペレット体積データDb,ペレット穴有無データDc,ペレットの見掛け密度データDdを例示したが、これらの各データDa…の一つを用いてもよいし二以上を用いてもよく、さらに、これ以外の他のペレットデータ、例えば、ペレット形状データ等であっても同様に用いることができる。一方、成形条件の補正として、ホッパー11及び/又は加熱筒12の設定温度に対する補正を行う場合を例示したが、設定温度以外の成形条件に対する補正、例えば、スクリュ25の回転速度や溶融樹脂の背圧に対する補正を行うことも可能である。なお、ヒータにはバンドヒータをはじめ、各種加熱手段を適用できるとともに、温度センサには、熱電対をはじめ、各種温度検出手段を適用できる。