(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
合成樹脂製の可撓性条帯を螺旋状に捲回一体化して形成されたホース壁を有する可撓性ホース本体と、前記可撓性ホース本体の内周面にホース長さ方向に沿って接着材により接合一体化された可撓性チューブと、を有する可撓性ホースであって、
前記可撓性ホース本体の内周面のうちホースの最内周部に配置される内周部分は、交互に螺旋状に配置される2つの螺旋状領域を有しており、
前記2つの螺旋状領域の表面は、互いに、前記接着材に対する接着性が異なっていて、
第1の螺旋状領域においては、可撓性ホース本体内周部分と可撓性チューブが互いに接合され、
第2の螺旋状領域においては、可撓性ホース本体内周部分と可撓性チューブが実質的に接合されておらず、
前記可撓性ホース本体は、ホース壁とリップとが一体化されたホースであり、
前記ホース壁は、じゃばら状に形成されて、内周面に凹溝を有し、
前記リップは、ホース壁の凹溝を覆い、ホースの最内周側に位置するように、凹溝に沿って螺旋状に設けられており、
前記ホース壁のうちホースの最内周側に位置する部分をホース壁内周部として、
前記第1の螺旋状領域が前記リップに設けられ、
前記第2の螺旋状領域が前記ホース壁内周部に設けられた
可撓性ホース。
可撓性ホース本体内周部分と可撓性チューブが互いに実質的に接合されない螺旋状領域には、当該螺旋状領域を接着材に対し非接着性にする表面処理がされている請求項1に記載の可撓性ホース。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。本発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態や用途を変更して実施することもできる。第1の実施の形態として、家庭用電気掃除機における実施の形態のチューブ内蔵可撓性ホース1について説明する。
図1は電気掃除機の全体の外観を示し、チューブ内蔵可撓性ホース1は、掃除機本体99に設けられた吸気口に接続管(口元部材)95を介してチューブ内蔵可撓性ホース1の一端で接続され、チューブ内蔵可撓性ホース1の他端は手元操作部98に接続され、手元操作部98に連続して延長管97、続いて床用ノズル96が接続されて電気掃除機が構成されている。
【0015】
チューブ内蔵可撓性ホース1は、複数本の導電線を備えている。導電線は、チューブ内蔵可撓性ホース1のチューブ内に挿通されている。導電線によって、手元操作部98に設けられたスイッチの入力信号を掃除機本体99に伝達したり、床用ノズル96に内蔵されたブラシ駆動用モータに電力を供給したりできる。電気掃除機においては、チューブ内蔵可撓性ホース1に内蔵されたチューブを洗浄液などの液体や還流空気などを送る用途に使用することもできる。
【0016】
図2及び
図3に本発明第1実施形態のチューブ内蔵可撓性ホース1の構造を示す。
図2では、左側上側半分を断面図で、残りを外観で示している。
図3は、ホース壁とチューブが接合される部分を拡大した断面図である。なお、これらの図において、チューブ3は断面ではなく外観で示しており、チューブ3に挿通された導電線は図示を省略している。
【0017】
チューブ内蔵可撓性ホース1は、可撓性を有する合成樹脂によって略円筒状に形成されたホース壁を有する可撓性ホース本体2と、可撓性を有するチューブ3が接着材4により接合一体化された可撓性ホースである。チューブ3は、前記可撓性ホース本体2の内周面にホース長さ方向に沿って配置され、接着一体化されている。
【0018】
可撓性ホース本体2の構造をホース壁部分の断面で
図4に示す。可撓性ホース本体2は、合成樹脂製の可撓性条帯Tが螺旋状に捲回されて、互いに隣接する可撓性条帯Tの側縁部が一体化されてホース壁21が構成された可撓性ホースである。本実施形態においては、可撓性条帯Tは、
図5にその断面を示すように、ホース壁21となる略S字状断面の部分21Tと、リップ22となる部分22Tを有している。
【0019】
すなわち、本実施形態においては、可撓性ホース本体2は、ホース壁21とリップ22とが一体化されたホースである。ホース壁21は、その内周面に螺旋状の凹凸条を有する。すなわち、ホース壁21の内周面には、ホース内側から見て凹溝や凸条となるような凹凸条が、螺旋状に備えられている。また、ホース壁21は、可撓性条帯TのS字状断面部分21Tによって、じゃばら状に形成されており、ホース内周の凹溝部分はそのままホース外周面の凸条部分となっている。
【0020】
そして、ホース壁21の内周面には、内周面に設けられた凹溝を覆うように、リップ22が、凹溝に沿って螺旋状に設けられている。そして、可撓性ホース本体2においては、リップ22と、ホース壁21の内周部204とが、ホースの最内周側に位置していて、ホースの内側には、リップ22とホース壁の内周部204のみが露出している。すなわち、可撓性ホース本体2において、ホース本体のホース最内周側に配置される内周部分は、リップ22と内周部204という2つの螺旋状部分を有している。換言すれば、可撓性ホース本体の内周面のうちホースの最内周部に配置される内周部分は、交互に螺旋状に配置される2つの螺旋状領域S1、S2を有している。そして、本実施形態では、リップ22が第1の螺旋状領域S1に、内周部204が第2の螺旋状領域S2に対応している。
【0021】
チューブ3が接着材4によって可撓性ホース本体2の内周面に接合一体化される際には、チューブ3と、リップ22および内周部204とが対向するように配置されて、ホース本体2とチューブ3の間が接着材4によって接着される。接着材4はチューブ3との接着性が良好な接着材が選択される。
【0022】
ここで、ホース本体2のリップ22とホース壁の内周部204とは、異なる樹脂材料で形成されており、リップ22を構成する樹脂材料と、内周部204を構成する樹脂材料とでは、接着材4に対する接着性が異なっている。換言すれば、ホース本体の最内周に設けられた2つの螺旋状領域S1,S2の表面は、互いに、接着材4に対する接着性が異なっている。
【0023】
本実施形態においては、リップ22(第1の螺旋状領域S1)を構成する樹脂は、接着材4に対する接着性が高い樹脂であり、ホース壁の内周部204(第2の螺旋状領域S2)を構成する樹脂は、接着材4に対する接着性が低い(実質的に接着しない)樹脂である。その結果、チューブ内蔵可撓性ホース1において、チューブ3と可撓性ホース本体2の間は、リップ22(第1の螺旋状領域S1)では、接着材4によって接着(接合)一体化される一方で、ホース壁の内周部204(第2の螺旋状領域S2)では、実質的に接着(接合)一体化されていない。
【0024】
ここで、第2の螺旋状領域S2においてホース本体2とチューブ3(接着材4)とが実質的に接着一体化されていない(実質的に非接着である)とは、両者が完全に非接着であることに限定されず、チューブ内蔵可撓性ホース1の使用時に与えられる変位や力によって、第2の螺旋状領域S2におけるホース本体2とチューブ3(接着材4)との間の接着が損なわれて(はがれて)しまうような、弱い接着状態を含む。
【0025】
可撓性ホース本体2やチューブ3を構成する合成樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂などの比較的軟質な合成樹脂材料が例示される。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)などが例示される。軟質塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)、や熱可塑性エラストマ(TPE)などを使用することもでき、その他の樹脂材料で、可撓性ホース本体2やチューブ3を構成しても良い。
【0026】
接着材4としては、可撓性ホース本体2やチューブ3と同じ種類の樹脂からなるホットメルト型接着材などが使用できる。また、溶剤を用いた接着剤や、反応型接着剤といった他の接着材料を接着材4として用いることもできる。また、チューブ3を熱可塑性樹脂で構成して、チューブ3の表面の一部を溶融させて、その部分を接着材4として用いてホース本体2に接着するようにしても良い。
【0027】
本実施形態においては、可撓性ホース本体2のホース壁部分21(条帯TのS字状部分21T)は、融点が110℃のオレフィン樹脂、特に線形低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)で構成されており、ホース最内周に配置されたホース壁内周部204(第2の螺旋状領域S2)もまた、同じ樹脂で構成されている。一方、可撓性ホース本体2のリップ22(条帯Tのリップ部分22T,第2の螺旋状領域S2)は、融点が90℃のオレフィン樹脂、特に高ビニル配合のEVA樹脂で構成されている。そして、接着材4としては、熱可塑性接着材(EVA樹脂)が使用されている。
【0028】
このような材料を選択することにより、ホース壁部分21とリップ22とを共押出を利用して接合一体化して可撓性樹脂条帯Tを成形しながら、接着材4の溶融温度や接着条件を適宜調整することによって、特に融点の差を利用して、ホース壁内周部204と接着材4を実質的に非接着としながら、リップ22と接着材4とを接着することができる。
【0029】
2つの螺旋状領域S1,S2のうち、一方を接着材4と接着し、他方を接着材4と実質的に接着しないものとする手段としては、これら螺旋状領域S1、S2の間で、表面の接着性を異ならせればよい。接着性を異ならせるためには、本実施形態のように融点の違いを利用したり、後述する実施形態のように樹脂の相溶性の程度を異ならせたりすることができる。あるいは、これら2つの領域のいずれかまたは両方に、接着性を高める、あるいは接着性を弱める(実質的に非接着とする)表面処理を行って、これら螺旋状領域S1、S2の間で、表面の接着性を互いに異ならせるようにしても良い。
【0030】
チューブ内蔵可撓性ホース1の製造方法について説明する。
チューブ3は、公知の方法、例えば押出成形や、いわゆる連続ブロー成形法などにより製造しておく。
【0031】
可撓性ホース本体2の製造にあたっては、まず、2種類の樹脂材料を押出し機に供給して、これら樹脂材料を半溶融状態で共押出しして、
図5に示すような可撓性条帯Tを作成する。条帯Tには、内向き側縁部201、外周部202、立上り部203、内周部204、外向き側縁部205が順次連設されて構成された略S字状部分21Tと、内周部204と外向き側縁部205が接続される部分から分岐したリップ部分(延長部)22Tが設けられており、略S字状部分21TがLLDPE樹脂により、リップ部分22TがEVA樹脂により共押出されて形成されている。押出された条帯Tはその後冷却されて、その断面形状が固定される。
【0032】
その後、いわゆるスパイラル成形法により、可撓性条帯Tによって可撓性ホース本体2を製造する。公知のホース製造装置のガイドシャフトの周囲に、可撓性条帯Tが螺旋状に捲回される。条帯Tは、内向き側縁部201が先行して捲回された条帯の外向き側縁部205に重なり合うように捲回され、互いに重ね合わせられた内向き側縁部201と外向き側縁部205の間に接着剤30を充填し接着することにより、接合一体化されて、略S字状部分21Tが螺旋状の凹凸条を備えるホース壁21となり、リップ部分22Tがリップ22となって、可撓性ホース本体2が連続して製造される。
接着剤30としては、前記条帯Tの略S字状部分21Tと同じ種類の樹脂からなるホットメルト型接着材などが使用できる。
【0033】
得られた可撓性ホース本体2を所定長さに切断し、チューブ3をホース本体の内部にホース長さ方向に沿って挿通し、接着材4を用いてチューブ3をホース本体2の内周面に接合一体化して、チューブ内蔵可撓性ホース1が得られる。この接着工程は、欧州特許EP1011960(B1)公報や、国際公開WO2008/035484号公報などに開示された公知の接着工程により行うことができる。
【0034】
そして、この接着工程における接着材の選択や接着の条件等を適宜調整することによって、上記実施形態のような、一方の螺旋状領域S1においては、可撓性ホース本体2の内周部分と可撓性チューブ3が互いに接合(接着)され、他方の螺旋状領域S2においては、可撓性ホース本体2の内周部分と可撓性チューブ3が実質的に接合されていないような、チューブ内蔵可撓性ホース1を得ることができる。
【0035】
チューブ内蔵可撓性ホース1の作用及び効果を説明する。
チューブ内蔵可撓性ホース1においては、チューブ3とホース本体2が接着されるべく対向配置されるホース本体2の最内周の部分が、接着材4との接着性が異なる2つの螺旋状領域S1,S2を有するようにされていて、一方の螺旋状領域S1においては、可撓性ホース本体2の内周部分と可撓性チューブ3が互いに接合され、他方の螺旋状領域S2においては、可撓性ホース本体2の内周部分と可撓性チューブ3が実質的に接合されていない。従って、ホース本体2とチューブ3は、チューブの長手方向に沿って断続的に接着されている。
【0036】
もしも、ホース本体2とチューブ3が連続的に接着されていると、接着材4やチューブ3の影響によって、接着された部分のホース壁が硬くなってあまり変形しなくなってしまい、ホース本体の変形を大きく規制してしまうため、チューブ内蔵可撓性ホースの可撓性や伸縮性を阻害してしまう。一方、上記チューブ内蔵可撓性ホース1によれば、ホース本体2とチューブ3は、チューブの長手方向に沿って断続的に接着されているので、ホース壁21は、実質的にチューブが接着されていない部分では、変形が許容されるため、伸縮性を妨げられない。従って、上記チューブ内蔵可撓性ホース1によれば、ホース内部に挿通されたチューブ3を接着した部位で可撓性ホース1の伸縮性や曲げ性が阻害されることを抑制できる。
【0037】
特に、本実施形態のチューブ内蔵可撓性ホース1のように、接着材4がホットメルト接着材に代表される熱可塑性接着材であり、可撓性ホース本体2の内周部分と可撓性チューブ3が互いに接合される螺旋状領域S1を形成する合成樹脂の融点が、可撓性ホース本体2の内周部分と可撓性チューブ3が互いに実質的に接合されない螺旋状領域S2を形成する合成樹脂の融点よりも低くされていれば、簡単に、ホース本体2とチューブ3の接着・非接着をコントロールできて、チューブ内蔵可撓性ホース1を効率的に製造できる。
【0038】
本実施形態においては、2つの螺旋状領域を構成する樹脂の融点の差が20℃となるようにされている。融点の差は、好ましくは10〜50℃、特に好ましくは、15〜30℃程度にされる。
【0039】
また、本実施形態のチューブ内蔵可撓性ホース1のように、ホース本体2には、ジャバラ状のホース壁21から分岐するようにリップ22が設けられていて、リップ22の部分にホース本体2とチューブ3とが接着される螺旋状領域S1が形成されていることが好ましい。このようにされていると、ホース本体2とチューブ3とは、ホース壁21から分岐したリップ部分22においてのみ接着され、ジャバラ状のホース壁部分21には、接着材4と接着される部分がなくなるため、ホース壁部分21の変形や伸縮が阻害されず、チューブ内蔵可撓性ホース1の伸縮性や曲げ性が阻害されることを、特に効果的に抑制できる。
【0040】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に本発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその詳細な説明を省略する。また、以下に示す実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施することもできる。
【0041】
図6には、本発明の第2実施形態のチューブ内蔵可撓性ホース5を示す。本実施形態においては、可撓性ホース本体55にチューブ3が接着材4によって接着されており、可撓性ホース本体55の断面形状は、第1実施形態におけるものと同様にされている。本実施形態においては、ジャバラ状のホース壁51の内周部504に、ホース内側に面するように被覆部53が設けられている。
【0042】
また、本実施形態では、ホース壁51を構成するS字状断面部分と、リップ部52とは、同じ樹脂材料により構成されている。一方で、被覆部53は、ホース壁51やリップ52とは異なる樹脂材料により構成されている。より具体的には、ホース壁51やリップ52は、熱可塑性の接着材4とは非相溶性の(すなわち熱溶着しにくい)樹脂材料により構成されており、被覆部53は、熱可塑性の接着材4と相溶性の(すなわち熱溶着しやすい)樹脂材料により構成されている。
【0043】
すなわち、本実施形態では、ホース壁51の内周部504に設けられた被覆部53の部分が、接着材4(チューブ3)と接着される第1の螺旋状領域S4になって、リップ52の部分が、接着材4(チューブ3)とは実質的に接着されない第2の螺旋状領域S3となっている。
【0044】
より具体的には、本実施形態では、接着材4として、EVA樹脂を主体とするホットメルト接着材が用いられ、ホース壁51とリップ52とは、EVA樹脂とは非相溶性の軟質塩化ビニル樹脂(軟質PVC樹脂)で構成され、被覆部53はEVA樹脂で構成されている。なお、ホース壁51の内周部504と被覆部53とは、改質EVA樹脂などの接着層(図示せず)を介して一体化されている。
【0045】
あるいは、本実施形態のチューブ内蔵可撓性ホース5において、接着材4として低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)を主体とするホットメルト接着材を用い、ホース壁51とリップ52とを、LDPE樹脂とは非相溶性の軟質塩化ビニル樹脂(軟質PVC樹脂)で構成し、被覆部53をLDPE樹脂で構成することも可能である。この場合は、ホース壁51の内周部504と被覆部53とは、塩化ビニルがグラフトされたポリエチレン樹脂などの接着層により一体化できる。
【0046】
本実施形態のチューブ内蔵可撓性ホース5も、第1実施形態と同様の工程によって製造することができ、チューブ内蔵可撓性ホース5の伸縮性や曲げ性が阻害されることを抑制できる。
【0047】
このように、ホースとチューブとが接着されるべく対向配置される、ホースの最内周に配置される内周部分において、交互に配置される2つの螺旋状領域を設けた際に、いずれの螺旋状領域を接着材と接着可能とし、いずれの螺旋状領域を接着材と実質的に接着しないかは任意である。
【0048】
また、本実施形態のように、熱可塑性接着材を構成する合成樹脂との相溶性の差を利用して、第1螺旋状領域と第2螺旋状領域の接着性の差を付けるようにしても、簡単に、ホース本体55とチューブ3の接着・非接着をコントロールできて、チューブ内蔵可撓性ホース5を効率的に製造できる。
【0049】
図7には、本発明の第3実施形態のチューブ内蔵可撓性ホース6を示す。本実施形態においては、可撓性ホース本体66にチューブ3が接着材4によって接着されている点は第1実施形態におけるものと同様である。本実施形態においては、可撓性ホース本体66の構成が第1実施形態や第2実施形態とは異なっている。可撓性ホース本体66は、硬鋼線を硬質樹脂で被覆した樹脂被覆金属線を螺旋状に捲回して、ホース本体の螺旋状補強体61として、螺旋状補強体61,61を覆うように、軟質樹脂製の条帯を螺旋状に捲回一体化して形成したホース壁62を設けて、両者を接着一体化して構成されている。
【0050】
可撓性ホース本体66は、螺旋状補強体61,61の間に設けられた軟質樹脂製のホース壁62が伸びたりたわんだりすることにより、伸縮可能になっている。本実施形態においては、可撓性ホース本体66のホース壁62は、螺旋状補強体61,61の間の部分で、ホースの最内周部分に配置されており、チューブ3を接合一体化する接着材4は、この部分に接着されうるようになっている。
【0051】
ホース壁62の螺旋状補強体61,61の間の部分は、螺旋状補強体61と平行に設けられた3つの螺旋状領域S5,S6,S5に分かれている。これら螺旋状領域は、接着材4と接着する第1の螺旋状領域S5(ホース壁断面におけるA区間の部分)と、接着材4とは実質的に接着しない第2の螺旋状領域S6(ホース壁断面におけるB区間の部分)とが、交互に設けられて、ホース内側から見ると、螺旋状補強体61、第1螺旋状領域S5,第2螺旋状領域S6,第1螺旋状領域S5,螺旋状補強体61・・・と並ぶように設けられている。このように、ホースの最内周に設けられる螺旋状領域は3つ以上であっても良い。
【0052】
本実施形態において、ホース壁62は同一材料で構成される軟質樹脂製可撓性条帯により形成されているが、第2螺旋状領域S6には、接着材4との接着性を妨げる物質がコーティングされている。即ち、この領域では接着材に対し非接着性にする表面処理がされていて、接着材4とホース壁62とは接着しない。従って、本実施形態においても、チューブ内蔵可撓性ホース6の伸縮性や曲げ性が阻害されることを抑制できる。
【0053】
具体的には、ホース壁62はEVA樹脂により形成され、接着材4もEVA樹脂を主体として形成されており、コーティング処理がされていない第1螺旋状領域S5では、両者が接着する。一方で、第2螺旋状領域S6の部分には、例えばフッ素系離型剤やシリコーン系撥油剤といった処理剤などの、EVA樹脂を主体とする接着材4と接着しない処理剤(非接着性のコーティング剤)が塗布されている。
【0054】
また、本実施形態のように、非接着性のコーティング材の塗布によって接着材4とホース壁の接着性を調整するようにすれば、簡単に、ホース本体66とチューブ3の接着・非接着をコントロールできて、チューブ内蔵可撓性ホース6を効率的に製造できる。
【0055】
図8には、本発明の第4実施形態のチューブ内蔵可撓性ホース7を示す。本実施形態においては、可撓性ホース本体77にチューブ3が接着材4によって接着されている点は他の実施形態におけるものと同様である。本実施形態においては、可撓性ホース本体77の構造が他の実施形態とは異なっている。可撓性ホース本体77では、凹凸条を有するように押出成形された合成樹脂製条帯を螺旋状に捲回し、互いに隣接する条帯側縁部を接着一体化してジャバラ状のホース壁72が構成されている。ジャバラ状のホース壁72は、2条の螺旋状の凹凸条を有するように構成されている。
【0056】
可撓性ホース本体77は、ジャバラ状のホース壁72が変形・伸縮することにより、伸縮可能になっている。本実施形態においては、ジャバラ状のホース壁72において、ホース内側から見て凸条となるように形成された2条の螺旋状領域S7,S8が、ホースの最内周部分に配置されており、チューブ3を接合一体化する接着材4は、この部分に接着されるようになっている。
【0057】
本実施形態において、ホース壁72は同一材料で構成される合成樹脂製可撓性条帯により形成されているが、第1螺旋状領域S7には、接着材4との接着性を高める物質がコーティングされている。即ち、接着材4との接着性を高める表面処理がされている。具体的には、ホース壁62はPP樹脂により形成され、接着材4はLDPE樹脂を主体として形成されており、コーティング処理がされていない第2螺旋状領域S8では、両者は実質的に接着しない。
【0058】
一方で、第1螺旋状領域S7の部分には、接着材4と接着可能とするプライマーが塗布されていて、この部分では、接着材4とホース壁72が接着する。従って、本実施形態においても、チューブ内蔵可撓性ホース6の伸縮性や曲げ性が阻害されることを抑制できる。
【0059】
本実施形態に示されるように、接着材4と接着する螺旋状領域S7と、接着材4とは実質的に接着しない領域S8とは、両者が直接隣接するように設けられていなくても良い。
【0060】
また、本実施形態のように、プライマー等の塗布によって、接着材4とホース壁の接着性を高める表面処理を行うようにすれば、簡単に、ホース本体77とチューブ3の接着・非接着をコントロールできて、チューブ内蔵可撓性ホース7を効率的に製造できる。接着性を高める表面処理は、プライマーに限定されず、カップリング剤の適用や、プラズマ処理などの他の処理によって表面処理しても良い。なお、本実施形態におけるプライマーと第3実施形態における非接着性のコーティング材を併用して、2つの螺旋状領域の接着性を調整することもできる。
【0061】
接着材4とホース本体2,55,66,77とを、互いに接着もしくは実質的に接着しないようにするための樹脂や処理剤等の組み合わせは、上記実施形態において例示した組み合わせに限定されるものではなく。公知の知見に基づいて、互いに接着もしくは実質的に接着しないよう、樹脂や処理剤や接着条件を選択・調整すればよい。
【0062】
また、可撓性ホース本体の具体的形状や構造も、上記実施形態に限定されるものではなく、さまざまなホースを可撓性ホース本体として使用できる。中でも、合成樹脂製の可撓性条帯を螺旋状に捲回一体化して形成したホース壁を有する可撓性ホースを採用すれば、交互に螺旋状に配置され接着性が異なる2つの螺旋状領域を、ホース本体の製造時に簡単に設けることができて、製造効率が高い。
【0063】
また、チューブ3は、上記実施形態において例示したような、押出成形した直管状のものであっても良いが、他の形態のチューブであっても良い。例えば、連続ブロー成形したようなジャバラ状の管壁を有するものであっても良く、このようなチューブは柔軟であるため、ホースの可撓性を妨げず、特に好ましい。また、チューブの断面は、円形であっても良いし、楕円形、半円形、多角形といった他の形状であっても良い。
【0064】
また、上記実施形態においては、電気掃除機用のチューブ内蔵可撓性ホースを例として説明したが、電気掃除機以外の他の技術分野、例えば、主液と補助液を送る産業用ホースにも本発明のチューブ内蔵可撓性ホースは応用できる。即ち、チューブ内蔵可撓性ホースの用途は特に限定されない。