(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778648
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】シリルアンチモン前駆体及びそれを用いた原子層堆積(ALD)方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/18 20060101AFI20150827BHJP
H01L 27/105 20060101ALI20150827BHJP
H01L 45/00 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
C23C16/18
H01L27/10 448
H01L45/00 A
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-220284(P2012-220284)
(22)【出願日】2012年10月2日
(62)【分割の表示】特願2009-16913(P2009-16913)の分割
【原出願日】2009年1月28日
(65)【公開番号】特開2013-60663(P2013-60663A)
(43)【公開日】2013年4月4日
【審査請求日】2012年10月17日
(31)【優先権主張番号】61/023,989
(32)【優先日】2008年1月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/355,325
(32)【優先日】2009年1月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591035368
【氏名又は名称】エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】マンチャオ シャオ
【審査官】
浅野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−152493(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/133837(WO,A2)
【文献】
DAVIDSON,G. et al,The vibrational spectra and structure of trisilylarsine and trisilylstilbine,Spectrochimica Acta, Part A: Molecular and Biomolecular Spectroscopy,1967年,Vol.23, No.10,p.2609-2616
【文献】
RANKIN,D.W. et al,An electron diffraction determination of the molecular structures of trigermylphosphine and trisilylstibine in the gas phase,Journal of Inorganic and Nuclear Chemistry,1969年,Vol.31, No.8,p.2351-2357
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00〜16/56
H01L 27/105
H01L 45/00
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に金属アンチモン層を堆積するための原子層堆積(ALD)方法であって、
シリルアンチモン前駆体を水又はアルコールと反応させてアンチモン層を形成する工程
を含み、前記シリルアンチモン前駆体が、
【化1】
(式中、R
2-10は個々に水素原子、1〜10個の炭素を有する直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、又は芳香族基であり、R
1は個々に水素原子、2〜10個の炭素を有する直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、又は芳香族基であり、R
11及びR
12は個々に1〜10個の炭素を有する直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、又は芳香族基である)からなる群より選択される、原子層堆積(ALD)方法。
【請求項2】
前記アルコールがROH(式中、Rは1〜10個の炭素原子を直鎖、分岐若しくは環状の形態で有するアルキル基、又は芳香族基である)の一般式を有するアルコールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルコールがメタノールである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応の温度が室温から300℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
堆積チャンバーに以下の一般式、即ち、
【化2】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は独立して水素、1〜10個の炭素を直鎖、分岐若しくは環状の形態で有し、二重結合を持つか若しくは持たないアルキル基、又は芳香族基である)からなる群より選択されるテルル前駆体を導入する工程であって、Teがシリル置換基を有する工程、
Te上のシリル置換基をROH(式中、Rは1〜10個の炭素原子を直鎖、分岐若しくは環状の形態で有するアルキル基、又は芳香族基である)の一般式を有するアルコールと反応させてTe−H結合を形成する工程、
前記堆積チャンバーに以下の一般式、即ち、
【化3】
(式中、R
2-10は個々に水素原子、1〜10個の炭素を有する直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、又は芳香族基であり、R
1は個々に水素原子、2〜10個の炭素を有する直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、又は芳香族基であり、R
11及びR
12は個々に1〜10個の炭素を有する直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、又は芳香族基である)からなる群より選択されるシリルアンチモン前駆体を導入し、Te層の上部にSb層であって、Sbがシリル置換基を有するSb層を形成する工程、
Sb上のシリル置換基を(i)水及び/又は(ii)ROH(式中、Rは1〜10個の炭素原子を直鎖、分岐若しくは環状の形態で有するアルキル基、又は芳香族基である)の一般式を有するアルコールと反応させてSb−H結合を形成する工程
を含む、原子層堆積(ALD)方法。
【請求項6】
前記アルコールがメタノールである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記反応の温度が室温から300℃である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
以下の一般構造、即ち、
【化4】
(式中、R
2、R
3、R
5、R
6、R
8及びR
9は個々に1〜10個の炭素を有する直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、又は芳香族基であり、R
1、R
4及びR
7は個々に水素原子、2〜10個の炭素を有する直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、又は芳香族基である)の一般構造を有するシリルアンチモン前駆体であって、R
1、R
4及びR
7の1つがフェニルである場合には、残りのR
2とR
3、R
5とR
6及びR
8とR
9の両方ともメチルということはなく、また、R
1-9のいずれかがC
1-3又はフェニルである場合には、R
1-9のすべてが同じものであることはない、シリルアンチモン前駆体。
【請求項9】
トリス(ジメチルシリル)アンチモンを含む、請求項8に記載のシリルアンチモン前駆体。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
先端技術として、相変化材料は、新型の高度集積不揮発性メモリーデバイス、即ち、相変化ランダムアクセスメモリー(PRAM)の製造におけるその応用のため、ますます関心を集めている。相変化ランダムアクセスメモリー(PRAM)デバイスは、明らかに異なる抵抗を有する結晶相と非晶相の間で可逆的な相変化を受ける材料を用いて合成される。最も一般的に用いられる相変化材料は、14族及び15族元素のカルコゲニドの三元組成物、例えば、GSTとして一般に略記されるゲルマニウム−アンチモン−テルル化合物である。
【0002】
PRAMセルを設計する際の技術的障害の1つは、GST材料を或る温度で結晶質から非晶質の状態に変換する間の放熱を克服するために、高レベルのリセット電流をかける必要があるということである。この放熱は、GST材料をコンタクトプラグ内に閉じこめることによって大幅に低減することができる。これは、動作に必要とされるリセット電流を低下させる。GSTプラグを基材上に形成するために、原子層堆積(ALD)プロセスを用いて適合性が高く化学的組成が均一な膜が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0049447号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0039192号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0072370号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0172083号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】sang−Wook Kim,S.Sujith,Bun Yeoul Lee,Chem.Commun.,2006,pp4811−4813
【非特許文献2】Stephan Schulz,Martin Nieger,J.Organometallic Chem.,570,1998,pp275−278
【非特許文献3】Byung Joon Choi,et al.Chem Mater.2007,19,pp4387−4389;Byung Joon Choi,et al.J.Electrochem.Soc.,154,ppH318−H324(2007)
【非特許文献4】Ranyoung Kim,Hogi Kim,Soongil Yoon,Applied Phys.Letters,89,pp102−107(2006)
【非特許文献5】Junghyun Lee,Sangjoon Choi,Changsoo Lee,Yoonho Kang,Daeil Kim,Applied Surface Science,253(2007)pp3969−3976
【非特許文献6】G.Becker,H.Freudenblum,O.Mundt,M.reti,M.Sachs,Synthetic Methods of Organometallic and Inorganic Chemistry,vol.3,H.H.Karsch,New York,1996,p.193
【非特許文献7】Sladek,A.,Schmidbaur,H.,Chem.Ber.1995,128,pp565−567
【発明の概要】
【0005】
本発明は、原子層堆積及び化学気相成長からなる群より選択されるプロセスを用いてゲルマニウム−アンチモン−テルル合金膜を製造する方法であって、シリルアンチモン前駆体が該合金膜のためのアンチモン源として用いられる方法である。
【0006】
好ましくは、本発明は、原子層堆積及び化学気相成長からなる群より選択されるプロセスを用いてゲルマニウム−アンチモン−テルル合金膜を製造する方法であって、シリルアンチモン前駆体が該合金膜のためのアンチモン源として用いられ、該シリルアンチモン前駆体が、以下の一般式、即ち、
【化1】
(式中、R
2-10は個々に水素原子、1〜10個の炭素を有する直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、又は芳香族基であり、R
1は個々に水素原子、2〜10個の炭素を有する直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、又は芳香族基であり、R
11及びR
12は個々に1〜10個の炭素を有する直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、又は芳香族基である)からなる群より選択され、ゲルマニウム前駆体が、以下の一般式、即ち、
【化2】
(式中、R
1及びR
2は個々に1〜10個の炭素を有する直鎖、分岐又は環状のアルキル基である)を有するアミノゲルマンであり、テルル前駆体が、以下の一般式、即ち、
【化3】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は独立して水素、1〜10個の炭素を直鎖、分岐若しくは環状の形態で有し、二重結合を持つか若しくは持たないアルキル基、又は芳香族基である)からなる群より選択される
ジシリルテルル、シリルアルキルテルル、又はシリルアミノテルルである、方法である。
【0007】
本発明はまた、以下の式、即ち、
【化4】
(式中、R
2-10は個々に水素原子、1〜10個の炭素を有する直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、又は芳香族基であり、R
1は個々に水素原子、2〜10個の炭素を有する直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、又は芳香族基であり、R
11及びR
12は個々に1〜10個の炭素を有する直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、又は芳香族基である)からなる群より選択される一般構造を有する組成物であって、構造(A)において、R
1-9の1つがフェニルである場合には、フェニルを有するケイ素上のR
1-9の残りが両方ともメチルということはなく、また、構造(A)において、R
1-9のいずれかがC
1-3又はフェニルである場合には、R
1-9のすべてが同じものであることはない、組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、ALDプロセスにおいてアンチモン層を生成するアンチモン前駆体類に関する。アンチモン層は、ALDサイクルにおいて結果として堆積されるゲルマニウム層及びテルル層と反応して、PRAMデバイスに適したGST三元物質膜を形成する。
【0009】
PRAMデバイスにおけるGST材料は、通常、180〜300℃の温度で堆積される。200℃で堆積された膜が最良の化学特性及び構造特性を有することが見出された。ALDプロセスは、高い化学反応性及び反応選択性を有する前駆体を必要とする。既存の前駆体、例えば、ジアルキルテルル、トリアルキルアンチモン、及びアルキルゲルマンは、ALDサイクルで用いられるべき所与の堆積条件で要求される反応性を有していない。プラズマを使用して堆積を促進させる場合が多い。
【0010】
本発明は、ALDの前駆体としてシリルアンチモン化合物を提供し、それはアルコール又は水と反応してアンチモン層を形成する。テトラアミノゲルマニウム前駆体と有機テルル前駆体から結果として生じるゲルマニウムとテルルの堆積に関し、GST膜は、高い一致性(conformality)を有する基材上に堆積することができる。
【0011】
本発明は、ALDプロセスにおいてアンチモン層を生成するアンチモン前駆体類に関する。アンチモン層は、複数のALDサイクルにおいて結果として堆積されるゲルマニウム層及びテルル層と反応して、PRAMデバイスに適したGST三元物質膜を形成する。本発明は、高い反応性及び熱安定性を有する複数のシリルアンチモン前駆体、並びに他の化学物質とともにGST膜を堆積するのにALDプロセスにおいて用いられるべき化学成分を開示する。
【0012】
本発明は、ALDの前駆体としてシリルアンチモン化合物を提供し、それはアルコール又は水と反応してアンチモン原子層を形成する。テトラアミノゲルマニウムとテルル前駆体から結果として生じるゲルマニウムとテルルの堆積に関し、GST膜は、高い一致性(conformality)を有する基材上に堆積することができる。
【0013】
アンチモン前駆体は、以下の一般式、即ち、
【化5】
(式中、R
2-10は個々に水素原子、1〜10個の炭素を有する直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、又は芳香族基であり、R
1は個々に水素原子、2〜10個の炭素を有する直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、又は芳香族基であり、R
11及びR
12は個々に1〜10個の炭素を有する直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、又は芳香族基である)からなる群より選択されるトリシリルアンチモン、ジシリルアルキルアンチモン、ジシリルアンチモン、又はジシリルアミノアンチモンを含有することができる。好ましくは、構造(A)において、R
1-9の1つが芳香族炭化水素である場合には、芳香族炭化水素を有するケイ素上のR
1-9の残りが両方ともメチルということはない。
【0014】
シリルアンチモン化合物はアルコール又は水に対して非常に反応性である。この反応は低温で元素アンチモンを生成する。
【化6】
【0015】
これらの反応は、室温から300℃の温度で行うことができる。
【0016】
ALDプロセスでは、アンチモン前駆体、アルコール、ゲルマニウム前駆体、及びテルル前駆体、例えば(Me
2N)
4Ge及び(Me
3Si)
2Te(式中、「Me」はメチルである)が、蒸気吸引又は直接液体注入(DLI)により、周期的に堆積チャンバーに導入される。堆積温度は好ましくは100℃〜400℃の間である。
【0017】
ALD反応は以下のスキームで説明できる。
【化4】
【0018】
工程1:テトラキス(ジメチルアミノ)ゲルマンを導入し、基材表面にアミノゲルマンの分子層を形成する。
【0019】
工程2:ヘキサメチルジシリルテルルをアミノゲルマン層と反応させてTe−Ge結合を形成し、ジメチルアミノトリメチルシランを除去する。シリル置換基を有するTe層を形成する。
【0020】
工程3:メタノールをテルル層上に残存するシリル基と反応させ、Te−H結合及び揮発性副生成物のメトキシトリメチルシラン(パージによって除去される)を形成する。
【0021】
工程4:トリス(トリメチルシリル)アンチモンを導入し、テルル層の上部にアンチモン層を形成する。
【0022】
工程5:メタノールをアンチモン層上に残存するシリル基と反応させ、Sb−H結合及び揮発性副生成物のメトキシトリメチルシラン(パージによって除去される)を形成する。
【0023】
工程6:ヘキサメチルジシリルテルルを再度導入し、テルル層を形成する。
【0024】
工程7:メタノールを再度導入し、テルル上のシリル基を除去する。
【0025】
次いで、所望の膜厚が得られるまで、ALDサイクルを場合により何度も十分繰り返す。次のサイクルを再び工程1から開始するなど。
【0026】
このプロセスで用いられるシリルアンチモン化合物は、以下の一般式、即ち、
【化8】
(式中、R
2-10は個々に水素原子、1〜10個の炭素を有する直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、又は芳香族基であり、R
1は個々に水素原子、2〜10個の炭素を有する直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、又は芳香族基であり、R
11及びR
12は個々に1〜10個の炭素を有する直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基若しくはアルケニル基、又は芳香族基である)からなる群より選択される。好ましくは、構造(A)において、R
1-9の1つが芳香族炭化水素である場合には、芳香族炭化水素を有するケイ素上のR
1-9の残りが両方ともメチルということはない。さらに、好ましくは、構造(A)において、R
1-9のいずれかがC
1-3又はフェニルである場合には、R
1-9のすべてが同じものであることはない。
【0027】
このプロセスで用いられるアミノゲルマンは、以下の一般式、即ち、
【化9】
(式中、R
1及びR
2は個々に1〜10個の炭素を直鎖、分岐又は環状の形態で有するアルキル基である)を有する。
【0028】
テルル前駆体は、以下の一般式、即ち、
【化10】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は独立して水素、1〜10個の炭素を直鎖、分岐若しくは環状の形態で有し、二重結合を持つか若しくは持たないアルキル基、又は芳香族基である)からなる群より選択されるジシリルテルル、シリルアルキルテルル、又はシリルアミノテルルを含有することができる。
【0029】
このプロセスで用いられるアルコールは、以下の一般式、即ち、ROH(式中、Rは1〜10個の炭素を直鎖、分岐又は環状の形態で有するアルキル基である)を有する。
【実施例】
【0030】
[例1:トリス(トリメチルシリル)アンチモンの合成]
200メッシュのアンチモン粉末1.22g(0.01mol)、水素化リチウム0.72g(0.03mol)及びテトラヒドロフラン(THF)40mlを100mlのフラスコに入れた。撹拌しながら、この混合物を4時間還流した。アンチモンを構成する黒色粉末が全て消失し、濁った色の沈殿が生成した。次いで混合物を−20℃に冷却し、トリメチルクロロシラン3.3g(0.03mol)を加えた。混合物を室温まで温めた。4時間撹拌した後、混合物を不活性雰囲気下で濾過した。溶媒を蒸留によって除去した。トリス(トリメチルシリル)アンチモンを減圧蒸留により精製した。
【0031】
[例2:トリス(ジメチルシリル)アンチモンの合成]
200メッシュのアンチモン粉末1.22g(0.01mol)、水素化リチウム0.72g(0.03mol)及びテトラヒドロフラン(THF)40mlを100mlのフラスコに入れた。撹拌しながら、この混合物を4時間還流した。アンチモンを構成する黒色粉末が全て消失し、濁った色の沈殿が生成した。次いで混合物を−20℃に冷却し、ジメチルクロロシラン2.83g(0.03mol)を加えた。混合物を室温まで温めた。4時間撹拌した後、混合物を不活性雰囲気下で濾過した。溶媒を蒸留によって除去した。トリス(ジメチルシリル)アンチモンを減圧蒸留により精製した。
【0032】
[例3:トリス(ジメチルシリル)アンチモンの合成]
200メッシュのアンチモン粉末3.65g(0.03mol)、ナトリウム2.07g(0.09mol)、ナフタレン1.15g(0.009mol)及びTHF50mlを100mlのフラスコに入れた。混合物を室温で24時間撹拌した。アンチモンを構成する黒色粉末及びナトリウムが全て消失し、濁った色の沈殿が生成した。次いで混合物を−20℃に冷却し、ジメチルクロロシラン8.51g(0.09mol)を加えた。混合物を室温まで温めた。4時間撹拌した後、混合物を不活性雰囲気下で濾過した。溶媒を蒸留によって除去した。トリス(ジメチルシリル)アンチモンを減圧蒸留により精製した。
【0033】
[例4:アンチモン膜の生成]
窒素を満たしゴムの隔壁を取り付けた100mlのパイレックス(登録商標)ガラスフラスコの底にトリス(ジメチルシリル)アンチモン0.05gを入れた。メタノール0.1gをシリンジでゆっくりと加えた。光沢のある黒色の膜がフラスコのガラス壁内部に堆積し始めた。数分後、フラスコ内部全体が暗灰色/黒色のアンチモン膜で被覆された。