(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
重油を燃料とする場合のエンジンの作動において、その使用におけるアスファルテンの取扱いを改善させるためのトランクピストン船舶用エンジン潤滑油組成物であって、グループIIのベースストックを50質量%以上含有する潤滑粘度の油を多量に、以下の(A)と(B)とをそれぞれ1〜25質量%の範囲の量含む、または混和することによって作製され、
(B)が、(A)の製造における過塩基化のステップの間に、(A)に提供されるか、または、
(B)が、(A)と別々にブレンドされ、
20から60のTBNを有する組成物
(A)2未満の塩基性度および80%以上の炭酸化度を有する洗浄剤以外の、過塩基化した金属ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアート洗浄剤であり、炭酸化度が、洗浄剤中の塩基の全過剰量に対するモルパーセンテージとして表される、過塩基化した金属ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアート洗浄剤中に存在する炭酸のパーセンテージであり、(B)(A)の活性成分質量に対して、ヒンダードフェノール以外の、油可溶性のアルキル−置換されたフェノール、または、アルキルナフトール、または、メチレン架橋されたアルキルフェノールの、15〜500質量%の活性成分。
重油を燃料とする場合のエンジンの作動において、その使用におけるアスファルテンの取扱いを改善させるためのトランクピストン船舶用エンジン潤滑油組成物であって、グループIIのベースストックを50質量%以上含有する潤滑粘度の油を多量に、以下の(A)と(B)とをそれぞれ1〜25質量%の範囲の量含む、または混和することによって作製され、20から60のTBNを有する組成物
(A)2未満の塩基性度および80%以上の炭酸化度を有する洗浄剤以外の、過塩基化した金属ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアート洗浄剤であり、炭酸化度が、洗浄剤中の塩基の全過剰量に対するモルパーセンテージとして表される、過塩基化した金属ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアート洗浄剤中に存在する炭酸のパーセンテージであり、(B)(A)の活性成分質量に対して、アルキルナフトール、または、メチレン架橋されたアルキルフェノールの、5〜500質量%の活性成分。
(B)(A)の活性成分質量に対して、ヒンダードフェノール以外の、油可溶性のアルキル−置換されたフェノール、または、アルキルナフトール、または、メチレン架橋されたアルキルフェノールの、15〜90質量%の活性成分を含む、または混和する、請求項1に記載の組成物。
中スピード圧縮点火型船舶用エンジンの燃焼チャンバーの表面の潤滑化の間およびエンジン作動中に、トランクピストン船舶用潤滑油組成物にアスファルテンを分散させる方法であって、
(i)請求項1から14のいずれかに記載の組成物を供するステップと、
(ii)燃焼チャンバー内に前記組成物を供するステップと、
(iii)前記燃焼チャンバー内に重油を供するステップと、
(iv)前記燃焼チャンバー内で前記重油を燃焼させるステップと
を含む方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし上に記載の解決策は、特定のクラスの洗浄剤に限定される。WO2008/128656の問題は、ヒンダードフェノール以外のアルキル置換フェノールを、これと組み合わせて使用することによって、異なる範囲の過塩基化した金属カルボキシラート洗浄剤について解決されるということが、本発明においてここに判明している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様は、重油を燃料とする場合のエンジンの作動において、その使用におけるアスファルテンの取扱いを改善するためのトランクピストン船舶用エンジン潤滑油組成物であり、この組成物は、以下の(A)と(B)とをそれぞれ少量含有するグループIIのベースストックを50質量%以上含有する、潤滑粘度の油を多量に含む、または混和することによって作製される。
(A)2未満の塩基性度および80%以上の炭酸化度を有するような洗浄剤以外の、過塩基化した金属ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアート洗浄剤であり、炭酸化度が、洗浄剤中の塩基の全過剰量に対するモルパーセンテージとして表される、過塩基化した金属ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアート洗浄剤中に存在する炭酸のパーセンテージであり、
(B)(A)の活性成分質量に対して、ヒンダードフェノール以外の、油可溶性のアルキル置換フェノールの、5〜500、好ましくは15〜90質量%の活性成分。
【0005】
本発明の第2の態様は、中スピードの圧縮点火型船舶用エンジンのためのトランクピストン船舶用潤滑油組成物における、本発明の第1の態様に述べられた量の、本発明の第1の態様で定義された成分(B)と組み合わせた洗浄剤(A)の使用であり、この組成物は、多量の潤滑粘度の油を含み、グループIIのベースストックを50質量%以上含有することによって、同じ量の洗浄剤(A)を(B)の不在下で使用した場合の類似の作動と比較して、重油を燃料とするエンジンの作動中のアスファルテンの取扱いを改善し、本組成物による潤滑を改善する使用である。
【0006】
本発明の第3の態様は、(i)と(ii)とを含む、トランクピストン中スピード圧縮点火型船舶用エンジンを作動する方法である。
(i)エンジンに重油を燃料として供給するステップと、
(ii)本発明の第1の態様に定義された組成物を用いて、エンジンのクランクケースを潤滑化するステップ。
本発明の第4の態様は、中スピードの圧縮点火型船舶用エンジンの燃焼チャンバーの表面の潤滑化の間およびエンジン作動中にトランクピストン船舶用潤滑油組成物にアスファルテンを分散させる方法であって、以下を含む方法である。
(i)本発明の第1の態様に定義された組成物を供するステップと、
(ii)燃焼チャンバー内に前記組成物を供するステップと、
(iii)前記燃焼チャンバー内に重油を供するステップと、
(iv)前記燃焼チャンバー内で前記重油を燃焼させるステップ。
【0007】
本明細書内で、以下の単語および表現は、使用されたとすると、および使用された場合、以下に基づく意味を有する:
「活性成分」または「(a.i.)」は、希釈剤または溶媒ではない添加物質を指す。
「含む」またはいかなる同族の単語は、述べられた特徴、ステップ、または整数もしくは成分の存在を特定するが、1つまたは複数のそれらの他の特徴、ステップ、整数、成分もしくはそのグループの存在または追加を妨げず、「からなる」または「基本的にからなる」という表現または同族語は、「含む」または同族語に包含されていてもよく、このうち「基本的にからなる」は、それが適応される組成物の特徴に実質的に影響を及ぼさない物質の包含を可能にする。
「多量の」とは、組成物の50質量%を超えることを意味する。
「少量の」とは、組成物の50質量%未満を意味する。
「TBN」とは、ASTMD2896で測定された全塩基価を意味する。
【0008】
さらに本明細書では、
「カルシウム含有量」とは、ASTM4951により測定された通りである。
「リン含有量」とは、ASTMD5185により測定された通りである。
「硫酸塩灰分含有量」とは、ASTMD874により測定された通りである。
「硫黄含有量」とは、ASTMD2622により測定された通りである。
「KV100」とは、ASTMD445により測定された通り、100°Cでの運動粘度を意味する。
【0009】
また、使用される様々な成分は、必須であり、ならびに最適および通例のものであるが、配合、保存または使用の条件下で反応してもよく、本発明はまた任意のこのような反応の結果、入手可能なもしくは得られた生成物を提供することも理解されよう。
さらに、本明細書中に記載の、量、範囲および割合の任意の上限および下限は、独立して組み合わせることができることが理解されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の特徴を、次により詳細に、以下で考察する。
潤滑粘度の油
潤滑油は、軽い蒸留物の鉱油から重い潤滑油までの範囲の粘度に及んでもよい。一般的に、油の粘度は、100℃で測定した場合、2〜40mm
2/secの範囲に及ぶ。
天然油として、動物油および植物油(例えば、ひまし油、ラード油)、液体の石油ならびにパラフィン系、ナフテン系および混合したパラフィン系−ナフテン系の種類の水素化精製された、溶媒処理されたまたは酸処理された鉱油などが挙げられる。石炭またはシェール由来の潤滑粘度の油もまた有用な基油としての役目を果たす。
合成潤滑油として、炭化水素油およびハロ置換炭化水素油、例えば、重合したおよび共重合したオレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン−イソブチレンコポリマー、クロル化したポリブチレン、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン))など、アルキベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2−エチルヘキシル)ベンゼン)、ポリフェニル(例えば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化したポリフェノール)、ならびにアルキル化したジフェニルエーテルおよびアルキル化した硫化ジフェニルなど、ならびにこれらの誘導体、類似体および同族体が挙げられる。
【0011】
アルキレンオキシドポリマーおよびインターポリマーならびにこれらの誘導体は、その末端ヒドロキシル基が、エステル化、エーテル化などで改質されており、既知の合成潤滑油の別のクラスを構成する。これらは、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの重合により調製されるポリオキシアルキレンポリマー、ならびにアルキルおよびアリールエーテルのポリオキシアルキレンポリマー(例えば、1000の分子量を有するメチル−ポリイソ−プロピレングリコールエーテル、または1000〜1500の分子量を有するポリ−エチレングリコールのジフェニルエーテル)、ならびにこれらのモノカルボン酸およびポリカルボン酸エステル、例えば、酢酸エステル、混合したC
3−C
8脂肪酸エステルおよびテトラエチレングリコールのC
13オキソ酸ジエステルにより例示される。
【0012】
別の適切なクラスの合成潤滑油は、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸およびアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸ダイマー、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸)と、様々なアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)とのエステルを含む。このようなエステルの具体的な例として、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル,リノール酸ダイマーの2−エチルヘキシルジエステル、ならびに1モルのセバシン酸と、2モルのテトラエチレングリコールおよび2モルの2−エチルヘキサン酸とを反応させることによって形成される錯体エステルが挙げられる。
【0013】
合成油として有用なエステルとして、C
5〜C
12モノカルボン酸と、ポリオールおよびポリオールエステル、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトールとトリペンタエリトリトールなどとから作製されたものも挙げられる。
【0014】
ケイ素ベースの油、例えばポリアルキル−、ポリアリール−、ポリアルコキシ−またはポリアリールオキシ−のシリコーン油およびシリケート油は、別の有用なクラスの合成潤滑剤を含む。このような油として、ケイ酸テトラエチル、ケイ酸テトライソプロピル、ケイ酸テトラ(2−エチルヘキシル)、ケイ酸テトラ(4−メチル−2−エチルヘキシル)、ケイ酸テトラ(p−tert−ブチル−フェニル)、ヘキサ−(4−メチル−2−エチルヘキシル)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサンおよびポリ(メチルフェニル)シロキサンが挙げられる。他の合成潤滑油として、亜リン酸含有の酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレシル、リン酸トリオクチル、デシルホスホン酸のジエチルエステル)および重合テトラヒドロフランが挙げられる。
【0015】
未精製の油、精製した油、再精製した油を、本発明の潤滑剤に使用することができる。未精製の油は、さらなる精製処理なしに天然の原料または合成による原料から直接得たものである。例えば、レトルト処理操作から直接得たシェール油、蒸留から直接得た石油、またはエステル化から直接得たエステル油などで、さらなる処理なしで使用されるものが、未精製の油である。精製した油は、1つまたは複数の特性を改善するために、油を1つまたは複数の精製ステップにおいてさらに処理すること以外は、未精製の油と同様である。多くのこのような精製技法、例えば、蒸留、溶媒抽出、酸または塩基の抽出、濾過およびパーコレート法などが当業者に知られている。再精製した油は、精製した油を提供するのに使用されるプロセスと同様のプロセスにより得られるが、業務ですでに使用された油から開始する。このような再精製した油はまた、再生した油または再加工した油としても知られており、使用済みの添加剤および油分解生成物を除去するための技法を用いた追加処理の対象となることが多い。
【0016】
本発明におけるベースストックおよび基油に対する定義は、米国石油協会(The American Petroleum Institute (API))の出版物「エンジンオイルのライセンス供与および認可システム(Engine Oil Licensing and Certification System)」、Industry Services Department、第4版、1996年12月、補遺1、1998年12月に見出されるものと同じである。前記出版物は、ベースストックを以下の通り分類している。
a)グループIのベースストックは、90パーセント未満の飽和脂肪酸および/または0.03パーセント超の硫黄を含有し、表E−1で特定された試験方法を用いて、80以上および120未満の粘度指数を有する。
b)グループIIのベースストックは、90パーセント以上の飽和脂肪酸および0.03パーセント以下の硫黄を含有し、表E−1で特定された試験方法を用いて、80以上および120未満の粘度指数を有する。
c)グループIIIのベースストックは、90パーセント以上の飽和脂肪酸および0.03パーセント以下の硫黄を含有し、表E−1で特定された試験方法を用いて、120以上の粘度指数を有する。
d)グループIVのベースストックは、ポリアルファオレフィン(PAO)である。
e)グループVのベースストックとして、グループI、II、III、またはIVに含まれていないすべて他のベースストックを含む。
ベースストックに対する分析法を以下の表に示す。
【0018】
述べられている通り、本発明における潤滑粘度の油は、50質量%以上のグループIIのベースストックを含有する。油は、60、例えば、70、80または90質量%以上のグループIIのベースストックを含有することが好ましい。潤滑粘度の油は、実質的にすべてグループIIのベースストックであってよい。
【0019】
過塩基化した金属洗浄剤(A)
金属洗浄剤は、いわゆる金属「セッケン」に基づく添加剤であり、これは、酸性有機化合物の金属塩であり、界面活性剤と呼ばれることもある。これらは、長い疎水性の尾部を有する極性の頭部を一般的に含む。過塩基化した金属洗浄剤は、金属塩基(例えば炭酸)ミセルの外層として中和された金属洗浄剤を含み、過剰な金属塩基、例えば酸化物または水酸化物などと、酸性気体例えば二酸化炭素などとを反応させることによって、多量の金属塩基を含めることにより提供することができる。
本発明において、過塩基化した金属洗浄剤(A)は、過塩基化した金属ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアート、好ましくはヒドロカルビル置換サリチラート洗浄剤である。
「ヒドロカルビル」は、炭素および水素原子を含有し、炭素原子を介して残りの分子に結合している基またはラジカルを意味する。ヒドロカルビルは、これらが、この基の炭化水素の性質および特徴を基本的に変えないという条件で、ヘテロ原子、すなわち炭素および水素以外の原子を含有し得る。ヒドロカルビルの例として、アルキルおよびアルケニルを挙げることができる。過塩基化した金属のヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートは、通常以下に示す構造を有する:
【0020】
【化1】
(式中、Rは、直鎖または分枝の脂肪族ヒドロカルビル基であり、より好ましくは直鎖または分枝鎖のアルキル基を含めたアルキル基、である)。ベンゼン環に結合しているR基が2つ以上あってもよい。Mは、アルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウムまたはカリウム)またはアルカリ土類金属(例えばカルシウム、マグネシウムバリウムまたはストロンチウム)である。カルシウムまたはマグネシウムが好まれ、カルシウムが特に好まれる。COOM基は、ヒドロキシル基に対してオルト位、メタ位またはパラ位に位置することができ、オルト位が好まれる。R基は、ヒドロキシル基に対して、オルト位、メタ位またはパラ位に位置することができる。
【0021】
ヒドロキシ安息香酸は通常、Kolbe−Schmittプロセスにより、フェノキシドのカルボキシル化により調製され、その場合、一般的に、カルボキシル化していないフェノールと混合して(標準的には希釈剤中で)得ることになる。ヒドロキシ安息香酸は、硫化されていなくても、または硫化されていてもよく、化学的に改質され、および/または追加の置換基を含有していてもよい。ヒドロカルビル置換ヒドロキシ安息香酸を硫化するためのプロセスは、当業者によく知られており、例えば、米国特許出願公開第2007/0027057号に記載されている。
ヒドロカルビル置換ヒドロキシ安息香酸において、ヒドロカルビル基は、アルキル(直鎖または分枝鎖のアルキル基を含む)が好ましく、このアルキル基は、5〜100、好ましくは9〜30、特に14〜24個の炭素原子を含有するのが有利である。
「過塩基化した」という用語は、酸部分の当量数に対する金属部分の当量数の比が1超の金属洗浄剤を記載するために一般的に使用される。「低い塩基」は、酸部分に対する金属部分の当量比が1超であり、約2までである金属洗浄剤を記載するために使用される。
【0022】
「過塩基化したカルシウム塩である界面活性剤」とは、油不溶性の金属塩の金属カチオンが基本的にカルシウムカチオンである過塩基化した洗浄剤を意味する。油不溶性の金属塩中に少量の他のカチオンが存在してもよいが、油不溶性の金属塩中の典型的に少なくとも80、より典型的には少なくとも90、例えば少なくとも95モル%のカチオンがカルシウムイオンである。カルシウム以外のカチオンは、過塩基化した洗浄剤の製造において、カチオンがカルシウム以外の金属である界面活性物質の塩の使用に由来し得る。界面活性剤の金属塩もまた、カルシウムが好ましい。
炭酸化し、過塩基化した金属洗浄剤は、アモルファスナノ粒子を通常含む。さらに、結晶性方解石およびバテライトの形態で炭酸を含むナノ粒子物質の開示が存在する。
【0023】
洗浄剤の塩基性は、全塩基価(TBN)として表現し得る。全塩基価は、過塩基化した物質の塩基性のすべてを中和するのに必要な酸の量である。TBNは、ASTM標準D2896または相当する手順を用いて測定することができる。洗浄剤は、低いTBN(すなわち、50未満のTBN)、中間TBN(すなわち、50〜150のTBN)または高いTBN(すなわち、150超、例えば150〜500などのTBN)を有し得る。本発明において、塩基性度(Basicity Index)および炭酸化度(Degree of Carbonation)を使用することができる。塩基性度は、過塩基化した洗浄剤内の総セッケン量に対する総塩基量のモル比である。炭酸化度は、過塩基化した洗浄剤中に存在する炭酸のパーセンテージであり、洗浄剤中の過剰塩基の総量に対するモルパーセンテージで表される。
【0024】
過塩基化した金属ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートは、当技術分野で使用されている技法のいずれかにより調製することができる。一般的方法は、以下の通りである:
1.モル過剰の金属塩基を用いてヒドロカルビル置換ヒドロキシ安息香酸を中和することによって、揮発性炭化水素、アルコールおよび水からなる溶媒混合物中で、わずかに過塩基化した金属ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアート錯体を生成するステップ、
2.炭酸化することによって、コロイド状に分散した金属炭酸塩を生成するステップ、およびこれに続く後反応期間、
3.コロイド状に分散していない残留する固体を除去するステップ、および
4.揮散することによって、プロセス溶媒を取り除くステップ。
過塩基化した金属ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾアートは、バッチまたは連続過塩基化プロセスのいずれかにより作製することができる
金属塩基(例えば金属水酸化物、金属酸化物または金属アルコキシド)、好ましくは、石灰(水酸化カルシウム)は、1つまたは複数のステージで充填することができる。充填量は、同じでもよいし、異なってもよく、これらに続く二酸化炭素充填量も同じである。さらなる充填量の水酸化カルシウムを加える場合、前のステージの二酸化炭素処理が、完了している必要はない。炭酸化が進むにつれて、溶解した水酸化物は、揮発性炭化水素溶媒と非揮発性炭化水素油の混合物中に分散したコロイド状炭酸粒子へと変換される。
【0025】
炭酸化は、アルコール促進剤の還流温度までの一連の温度にわたり、1つまたは複数のステージにおいて行うことができる。添加温度は、同様であってもよく、または異なってもよく、または各添加ステージにより異なってもよい。温度が上昇する段階、その後で温度を低下させてもよい段階は、さらなる炭酸化ステップより前に行うことができる。
反応混合物の揮発性炭化水素溶媒は、およそ150℃以下の沸点を有する液体の芳香族炭化水素が標準的に好ましい。芳香族炭化水素は、特定の利点、例えば改善された濾過速度などをもたらすことが判明しており、適切な溶媒の例は、トルエン、キシレン、およびエチルベンゼンである。
【0026】
アルカノールは、メタノールが、好ましいが、ただし、他のアルコール、例えばエタノールなども使用することができる。炭化水素溶媒に対するアルカノールの比率の正しい選択、および最初の反応混合物の水含有量は、所望の結果を得るために重要である。
この反応混合物に油を加えてもよい。もしそのような場合、適切な油として、炭化水素油、特に鉱物由来のものが挙げられる。38℃で15〜30mm
2/secの粘度を有する油が極めて適切である。
二酸化炭素での最終の処理後、この反応混合物は通常、高温、例えば130℃より上に加熱することによって、揮発性物質(水および残存するあらゆるアルカノールおよび炭化水素溶媒)を取り除く。合成が完了した時点で、粗生成物は、懸濁した沈殿物が存在するために濁っている。これを、例えば、濾過または遠心分離により浄化する。これらの処置は、溶媒除去の前、または溶媒除去中、または溶媒除去後に使用してもよい。
【0027】
生成物は、一般的に油溶液として使用される。反応混合物が、揮発性物質の除去後、油溶液を保持するために十分な油を含有していない場合、さらなる油を加えるべきである。これは、溶媒除去の前、または溶媒除去中、または溶媒除去後に、行うことができる。
本発明において、(A)は、以下を有することができる:
(A1)2以上の塩基性度および80%以上の炭酸化度、または
(A2)2以上の塩基性度および80%未満の炭酸化度、または
(A3)2未満の塩基性度および80%未満の炭酸化度。
【0028】
アルキル置換フェノール(B)
述べられているように、フェノールは、(A)の質量の、5〜500、好ましくは15〜90質量%を構成する。より好ましくは、フェノールは、20〜80、例えば30〜70など、例えば40〜60質量%を構成する。
(B)のアルキル置換基は、例えば直鎖または分枝、好ましくは直鎖の、9〜30、好ましくは14〜24個の炭素原子を有する単一のアルキル基であってよい。
アルキルフェノール(B)の例として、アルキル置換が、例えば、2位または4位に位置するアルキルベンゼノールを挙げることができる。
アルキルフェノール(B)のさらなる例として、アルキル置換が1位または2位に位置する、アルキルナフトールを挙げることができる。
アルキルフェノール(B)のさらなる例として、アルキルフェノールアルデヒド凝縮物、好ましくは、凝縮物がメチレン架橋されたアルキルフェノールとなるように、アルデヒドがホルムアルデヒドであるアルキルフェノールアルデヒド凝縮物を挙げることができる。このような凝縮物の例は、例えばEP−A−1657292などにおいて、当技術分野で知られている。
潤滑油組成物中に含有される添加剤(A)および(B)の処理の割合は、例えば、1〜25、好ましくは2〜20、より好ましくは5〜18質量%の範囲であってよい。
本発明の目的のために、(A)および(B)は、これらを一緒にブレンドすることにより、一緒に提供されてもよい。または、これらは、(A)を製造するための過塩基化ステップの間に、(B)を組み込むことによって、(A)の製造中に一緒に提供されてもよい。
【0029】
共添加剤
本発明の潤滑油組成物は追加の(A)および(B)とは別のさらなる添加剤を含むことができる。このような追加の添加剤として、例えば無灰分散剤、他の金属洗浄剤、摩耗防止剤、例えばジチオリン酸ジヒドロカルビル亜鉛など、抗酸化剤および乳化破壊剤を挙げることができる。
必須ではないが、添加剤(A)および(B)が、基油に同時に加えられることによって、潤滑油組成物を形成することができる、添加剤を含む1つまたは複数の添加剤パッケージまたは濃縮物を調製することが望ましいこともある。添加剤パッケージ(複数可)の潤滑油への溶解は、溶媒により、および軽い加熱を伴う混合により促進することができるが、これは必須ではない。添加剤パッケージ(複数可)は通常、所望の濃縮を得る、および/または添加剤パッケージ(複数可)を所定の量の潤滑剤の基剤と合わせた場合、最終配合物において意図する機能を実行するように、適切な量の添加剤(複数可)を含有するように配合することになる。したがって、本発明に従い、添加剤(A)および(B)を、少量の基油または他の相容性溶媒と、他の望ましい添加剤と共に混和することによって、適切な割合での添加剤の添加剤パッケージに対して、例えば、2.5〜90、好ましくは5〜75、最も好ましくは8〜60質量%の量で活性成分を含有し、残りが基油である添加剤パッケージを形成することができる。
【0030】
トランクピストンエンジンオイルとしての最終配合物は、通常、30、好ましくは10〜28、より好ましくは12〜24質量%の添加剤パッケージ(複数可)を含有することができ、残りは基油であってよい。トランクピストンエンジンオイルは、20〜60、例えば25〜55などの組成上のTBN(ASTMD2896を用いて)を有することが好ましい。
【実施例】
【0031】
本発明は、以下の実施例により例示されるが、決してこれに限定されるものではない。
成分
以下の成分を使用した。
成分(A):
(A1)350のTBN(塩基性度2以上、炭酸化度80%以上)を有し、6質量%のアルキルフェノールを含有するサリチル酸カルシウム洗浄剤、
(A2)225のTBN(塩基性度2以上、炭酸化度80%未満)を有し、5質量%のアルキルフェノールを含有する、サリチル酸カルシウム洗浄剤、
(A3)65のTBN(塩基性度2未満、炭酸化度80%未満)を有し、8質量%のアルキルフェノールを含有するサリチル酸カルシウム洗浄剤。
(A3)および(B)のサリチル酸カルシウム洗浄剤は、67のTBN(塩基性度2未満、炭酸化度80%未満)を有し、フェノールB1(以下参照)の存在下で過塩基化されている。2つの異なる生成物は、以下の表1に示された通り作製した。
成分(B):
(B1)2−および4−(直鎖C16アルキル)ベンゼノールを混合した(2:1)
(B2)1−(直鎖C16アルキル)ナフトール
(B3)2−(直鎖C16アルキル)ナフトール
基油I:XOMAPE600として知られている、APIグループI基油
基油II:CHEV600Rとして知られている、APIグループII基油
HFO:重油、ISO−F−RMK380
【0032】
潤滑剤
上の成分から選択したものをブレンドすることによって、一連の範囲のトランクピストン船舶用エンジン潤滑剤を得た。潤滑剤のいくつかは、本発明の実施例であり、他の潤滑剤は、比較目的のための対照例である。それぞれがHFOを含有した時点で試験した潤滑剤の組成を、「結果」という表題のもとで以下の表に示す。
【0033】
試験
光散乱
試験用の潤滑剤を、アスファルテンの凝集を予想し、これにより「ブラックスラッジ」の生成を予想する、光散乱による収束ビーム反射法(Focused Beam Reflectance Method 「FBRM」)を用いてアスファルテン分散性について評価した。
【0034】
FBRM試験方法は、第7回舶用機関国際シンポジウム(7th International Symposium on Marine Engineering)東京、2005年10月24日〜28日で開示され、会議プロシーディング「様々なベースストックを用いたTPEO用途におけるサリチラート洗浄剤の利点(The Benefits of Salicylate Detergents in TPEO Applications with a Variety of Base Stocks)」において発表された。さらに、CIMAC会議、ウイーン、2007年5月21日〜24日において詳細が開示され、会議プロシーディングにおいて「中スピード船舶用エンジンの潤滑用の新規な基流体の課題に対応する添加剤による取組み(Meeting the Challenge of New Base Fluids for the Lubrication of Medium Speed Marine Engines − An Additive Approach)」において発表された。後者の論文では、FBRM方法を用いて、90%超または90%未満の飽和脂肪酸と、0.03%超または0.03%未満の硫黄を含有するベースストックに基づく潤滑剤系に対して、性能を予想するアスファルテン分散性についての定量的結果を得ることが可能なことが開示されている。FBRMから得た相対的性能の予想が、船舶用ディーゼルエンジンにおいてエンジン試験により確認された。
【0035】
FBRMプローブは、レーザー光がこれを介して移動することによって、プローブ先端に到達する光ファイバーケーブルを含有する。先端では、光学部品が、小さなスポットにレーザー光の焦点を合わせる。焦点を合わせたビームが、プローブの窓と試料の間の円形の軌道をスキャンするように、光学部品が回転する。粒子が窓を通り過ぎ流動すると、粒子はスキャン経路を交差し、個々の粒子から後方散乱した光が得られる。
スキャニングレーザービームは、粒子よりもかなり高速で移動するが、これは、粒子が効果的に定常であることを意味する。焦点を合わせたビームが、粒子の1つの先端に到達すると、後方散乱した光の量に増加がある。焦点を合わせたビームが粒子の他の先端に到達すると、この量は低下する。
装置は、増加した後方散乱の時間を測定する。1つの粒子からの後方散乱の時間を、スキャンスピードで掛け、その結果が、距離または弦長である。弦長は、粒子の先端上の任意の2つの点の間の直線である。これは、弦長分布、すなわちミクロンでの弦長寸法の関数として測定された弦長(粒子)の数のグラフとして表される。測定はリアルタイムで実施されるので、分布の統計を計算および追跡することができる。FBRMは通常、毎秒、幾万もの弦を測定することによって、数−対−弦長の確固たる分布が生じる。この方法は、アスファルテン粒子の粒径分布の絶対的尺度をもたらす。
集束ビーム反射測定プローブ(Focused beam Reflectance Probe(FBRM))、モデルLasentec D600Lは、Mettler Toledo、Leicester、UKから提供された。この装置は、1μm〜1mmの粒径分解能を得るための構成で使用した。FBRMからのデータは、いくつかの方法で提示することができる。研究により、毎秒の平均カウントをアスファルテン分散性の定量的測定として使用することができることが示唆されている。この値は、凝集物の平均サイズおよびレベルの両方の関数である。本応用において、平均計数率(全粒径範囲にわたり)を、1試料につき1秒の測定時間を用いてモニターした。
試験潤滑剤配合物を60℃に加熱し、400rpmで撹拌した。温度が60℃に到達したら、FBRMプローブを試料に挿入し、15分間測定を行った。4ブレードスターラー(400rpm)を用いた撹拌下で、重油(10%w/w)のアリコートを潤滑剤配合物に導入した。計数率が平衡値(通常一晩)に到達した時点で、毎秒の平均カウントの値を取った。
【0036】
結果
光散乱
FBRM試験の結果を、以下の表1および2に要約する。表1では、(A)+(B)を作製するための過塩基化ステップの間に、フェノールB1を、Caサリチラート中に取り込んだ。
【0037】
表2では、フェノールB1、B2およびB3をそれぞれ別々に、過塩基化したCaサリチラート(A1)とブレンドした。
基油は、基油IIであった。
各表のすべて値は、右の欄の粒子カウント値以外は、質量%のa.i.である。比較例は、「Ref」と明示され、本発明の実施例は、「In」と明示されている。
【0038】
【表2】
In3およびIn4は、同じ添加剤をそれぞれ含有するが、処理の割合が異なる。同様に、実施例Ref3およびRef4は、同じ添加剤をそれぞれ含有するが、処理の割合が異なる。
【0039】
Ref2は、フェノール単独では極めて乏しい性能をもたらしたことを示している。Ref3は、サリチラート単独で(少量の固有のフェノールと共に)、より良い性能を有することを示している。In3は、かなり高いパーセンテージのフェノールが使用された場合でも、性能は、まったく同じままであることを示している。(予想としては、比較的高いフェノール含有量であれば、性能は激しく低下するであろうというものであった)。Ref4およびIn4は、より高い濃度で同じ点を例示している。
【0040】
【表3】
【0041】
In5およびIn6に対する結果は、フェノールB1を加えた場合、Ref5よりも性能が改善することを示している。Ref2におけるB1単独での性能を考慮すると、これは極めて驚くべきことである。
【0042】
In7およびIn8に対する結果は、Ref7およびRef8でそれぞれB2およびB3が単独で乏しい性能であったことを考えるとフェノールB2およびB3に対してそれぞれ同じように驚くべき改善を示している。