【文献】
AVILA,M.Y. et al,A1-, A2A- and A3-subtype adenosine receptors modulate intraocular pressure in the mouse,BRITISH JOURNAL OF PHARMACOLOGY,2001年,Vol. 134,pp.241-245
【文献】
CROSSON,C.E. et al,Modulation of intraocular pressure by adenosine agonists,JOURNAL OF OCULAR PHARMACOLOGY,1994年,Vol.10, No. 1,pp.379-383
【文献】
THE JOURNAL OF PHARMACOLOGY AND EXPERIMENTAL THERAPEUTICS,1995年,Vol.273,No.1,p.320-326
【文献】
Exp. Eye. Res.,1997年,Vol.64,p.979-989
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態は、正常または高眼圧(IOP)を治療、降下、および制御し、かつ/または緑内障を治療するのに有用な化合物を提供する。
アデノシンは、多くの生理学的過程を調節するプリンヌクレオシドである。アデノシンによる細胞シグナル伝達は、RalevicおよびBurnstock(Pharmacol Rev.50:413〜492,1988)、およびFredholm BBら(Pharmacol Rev.53:527〜552,2001)が報告しているように4種類のアデノシン受容体サブタイプ、すなわちA
1、A
2A、A
2B、およびA
3により行われる。眼ではアデノシンA
1受容体アゴニストが、マウス、ウサギ、およびサルのIO
Pを下げる(Tian Bら、Exp Eye Res.64:979〜989,1997、Crosson CE.の論文、J Pharmacol Exp Ther.273:320〜326,1995、およびAvila MYら、Br J Pharmacol.134:241〜245,2001)。他の刊行物は眼におけるアデノシンA
1受
容体アゴニストが小柱網による通常の流出経路を標的にすることに注目している(Husain Sら、J Pharmacol Exp Ther.320:258〜265,
2007)が、他の経路によるIOPの降下も排除されていない。
【0030】
多くの場合、前臨床試験で報告されたアデノシンA
1受容体の介在するきわめて強固な
IOPの降下は、A
1受容体リガンドの点眼後にIOPの即時の、しかし一過性の上昇が
先行することに注目すべきである(Crosson CEおよびGrey T.、Inv
Ophthal Visual Sci.37,[9]1833〜1839,1996)。約3〜9mmHgのIOPの一過性の上昇は、投与後の約30分「時間帯」に観察されている。この現象は、眼内のアデノシン受容体サブタイプ間の交叉反応性から生ずることがある。薬理学的研究は、IOPのこの一過性の上昇が少なくとも部分的にはアデノシンA
2B受容体の活性化が原因である可能性があることを示している(Crosson,
1996)。したがって、A2AアゴニストはIOPに及ぼす混合効果を増大し、減少し、またはそれに影響を与える可能性があるので、IOPを低下させるのみの高度に選択的なA1アゴニストの開発は、IOP治療用のアデノシンA2受容体系薬物の開発よりも支持できるように思われる(Konno,2004、Konno、J Pharmacol
Sci.,2005、Konno、Eur J Pharamacol.2005)。
【0031】
選択的アデノシンA1アゴニストとして働く化合物は知られており、様々な役に立つものが示されている。Jagtapらの米国特許第7,423,144号明細書は、頻脈性不整脈(高い心拍)、疼痛性障害、および虚血再灌流傷害の予防または治療のためのこのような選択的A1アゴニスト化合物について述べている。
【0032】
臨床試験においてヒトにおけるIOPを低下させる選択的A1アゴニストが発見されている。具体的には、それらを必要とする被験者(例えばヒト)の眼圧を低下させることができる式Iの化合物(例えば、化合物A、B、C、D、E、F、G、またはH)について本明細書中で述べる。
【0035】
またはその薬学的に許容できる塩、および薬学的に許容できる賦形剤を有し、
式中、
Aは、−CH
2ONO
2または−CH
2OSO
3Hであり、
BおよびCは、−OHであり、
Dは、
【0037】
であり、
AとBは互いにtransであり、
BとCは互いにcisであり、
CとDは互いにcisまたはtransであり、
R
1は、−H、−C
1〜C
10アルキル、−アリール、−3〜7員単環式ヘテロ環、−8
〜12員二環式ヘテロ環、−C
3〜C
8単環式シクロアルキル、−C
3〜C
8単環式シクロアルケニル、−C
8〜C
12二環式シクロアルキル、−C
8〜C
12二環式シクロアルケニル、−(CH
2)
n−(C
3〜C
8単環式シクロアルキル)、−(CH
2)
n−(C
3〜C
8単環式シクロアルケニル)、−(CH
2)
n−(C
8〜C
12二環式シクロアルキル)、−(CH
2)
n−
(C
8〜C
12二環式シクロアルケニル)、または−(CH
2)
n−アリールであり、
R
2は、−H、ハロ、−CN、−NHR
4、−NHC(O)R
4、−NHC(O)OR
4、−NHC(O)NHR
4、−NHNHC(O)R
4、−NHNHC(O)OR
4、−NHNHC(O)NHR
4、または−NH−N=C(R
6)R
7であり、
R
4は、−C
1〜C
15アルキル、−アリール、−(CH
2)
n−アリール、−(CH
2)
n
−(3〜7員単環式ヘテロ環)、−(CH
2)
n−(8〜12員二環式ヘテロ環)、−(CH
2)
n−(C
3〜C
8単環式シクロアルキル)、−(CH
2)
n−(C
3〜C
8単環式シクロアルケニル)、−(CH
2)
n−(C
8〜C
12二環式シクロアルキル)、−(CH
2)
n−(C
8〜C
12二環式シクロアルケニル)、−C≡C−(C
1〜C
10アルキル)、または−C≡C
−アリールであり、
R
6は、−C
1〜C
10アルキル、−アリール、−(CH
2)
n−アリール、−(CH
2)
n
−(3〜7員単環式ヘテロ環)、−(CH
2)
n−(8〜12員二環式ヘテロ環)、−(CH
2)
n−(C
3〜C
8単環式シクロアルキル)、−(CH
2)
n−(C
3〜C
8単環式シクロアルケニル)、−(CH
2)
n−(C
8〜C
12二環式シクロアルキル)、−(CH
2)
n−(C
8〜C
12二環式シクロアルケニル)、−(CH
2)
n−(C
3〜C
8単環式シクロアルケニル)、−フェニレン−(CH
2)
nCOOH、または−フェニレン−(CH
2)
nCOO−(C
1
〜C
10アルキル)であり、
R
7は、−H、−C
1〜C
10アルキル、−アリール、−(CH
2)
n−アリール、−(C
H
2)
n−(3〜7員単環式ヘテロ環)、−(CH
2)
n−(8〜12員二環式ヘテロ環)、−(CH
2)
n−(C
3〜C
8単環式シクロアルキル)、−(CH
2)
n−(C
3〜C
8単環式シクロアルケニル)、−(CH
2)
n−(C
8〜C
12二環式シクロアルケニル)、または−(
CH
2)
n−(C
8〜C
12二環式シクロアルキル)であり、
各nは、独立して1から5の範囲の整数である。
【0038】
さらなる実施形態では本発明に使用される化合物は、式
【0040】
を有する化合物またはその薬学的に許容できる塩であり、
式中、
Aは、−CH
2ONO
2または−CH
2OSO
3Hであり
BおよびCは、−OHであり、
Dは、
【0042】
であり、
AとBは互いにtransであり、
BとCは互いにcisであり、
CとDは互いにcisまたはtransであり、
R
1は、−C
3〜C
8単環式シクロアルキル、−3〜7員単環式ヘテロ環、または−C
8
〜C
12二環式シクロアルキルであり、
R
2は、−Hまたは−ハロである。
【0043】
さらなる実施形態では本発明に使用される化合物は、式
【0045】
を有する化合物またはその薬学的に許容できる塩であり、
式中、
Aは、−CH
2ONO
2であり、
BおよびCは、−OHであり、
Dは、
【0047】
であり、
AとBは互いにtransであり、
BとCは互いにcisであり、
CとDは互いにcisまたはtransであり、
R
1は、−C
3〜C
8単環式シクロアルキル、−3〜7員単環式ヘテロ環、または−C
8
〜C
12二環式シクロアルキルであり、
R
2は、−Hまたは−ハロである。
【0048】
別の実施形態では式Iの化合物は、下記の化合物の一つまたはその薬学的に許容できる塩である。
化合物A:
【0050】
((2R,3S,4R,5R)−5−(6−(シクロペンチルアミノ)−9H−プリン−9−イル)−3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン−2−イル)メチル硝酸塩、
化合物B:
【0052】
((2R,3S,4R,5R)−5−(2−クロロ−6−(シクロペンチルアミノ)−9H−プリン−9−イル)−3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン−2−イル)メチル硝酸塩、
化合物C:
【0054】
((2R,3S,4R,5R)−5−(6−(シクロペンチルアミノ)−9H−プリン−9−イル)−3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン−2−イル)メチル硫酸ナトリウム、
化合物D:
【0056】
((2R,3S,4R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(6−(テトラヒドロフラン−3−イルアミノ)−9H−プリン−9−イル)テトラヒドロフラン−2−イル)メチル硝酸塩、
化合物E:
【0058】
((2R,3S,4R,5R)−5−(6−(シクロヘキシルアミノ)−9H−プリン−9−イル)−3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン−2−イル)メチル硝酸塩、
化合物F:
【0060】
((2R,3S,4R,5R)−5−(6−(バイサイクル−[2.2.1]−ヘプタン−2−イルアミノ)−9H−プリン−9−イル)−3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン−2−イル)メチル硝酸塩、
化合物G:
【0062】
((2R,3S,4R,5R)−5−(2−クロロ−6−(シクロヘキシルアミノ)−9H−プリン−9−イル)−3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン−2−イル)メチル硫酸ナトリウム、および
化合物H:
【0064】
((2R,3S,4R,5R)−5−(2−クロロ−6−(シクロヘキシルアミノ)−9H−プリン−9−イル)−3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン−2−イル)メチル硝酸塩。
【0065】
化合物の名称と化合物の構造式の間に矛盾が存在する場合、化学構造式が支配することになる。
一実施形態では本明細書中において、式Iの化合物の有効量をヒトに投与することを含む眼圧を低下させる方法を提供する。別の実施形態では本明細書中において、式Iの化合物の有効量をヒトの障害のある眼に点眼することを含む眼圧を低下させる方法を提供する。さらに別の実施形態では本明細書中において、式Iの化合物の有効量をヒトの障害のある眼に投与することを含む緑内障の治療方法を提供する。別の実施形態では本明細書中において、式Iの化合物の有効量をヒトの障害のある眼に投与することを含むOHTの治療方法を提供する。別の実施形態では本明細書中において、式Iの化合物の有効量をヒトの障害のある眼に投与することを含むPOAGの治療方法を提供する。別の実施形態では、式Iの化合物の約0.05mg/mlから約7.0mg/mlを、ヒトの障害のある眼に毎日1から4回点眼する。一実施形態では、式Iの化合物の約20〜700μgを、ヒトの障害のある眼に毎日1から4回点眼する。さらに別の実施形態では、式Iの化合物の約350μgを、ヒトの障害のある眼に毎日1から4回点眼する。式Iの化合物は、滴の状態で、例えば1から2滴投与することができる。
【0066】
別の実施形態では本明細書中において、化合物Aの有効量をヒトに投与することを含む眼圧を低下させる方法を提供する。さらに別の実施形態では本明細書中において、化合物Aの有効量をヒトの障害のある眼に点眼することを含む眼圧を低下させる方法を提供する。さらに別の実施形態では本明細書中において、化合物Aの有効量をヒトの障害のある眼に投与することを含む緑内障の治療方法を提供する。別の実施形態では本明細書中において、化合物Aの有効量をヒトの障害のある眼に投与することを含むOHTの治療方法を提供する。さらに別の実施形態では本明細書中において、化合物Aの有効量をヒトの障害のある眼に投与することを含むPOAGの治療方法を提供する。一実施形態では、化合物Aの約0.05mg/mlから約7.0mg/mlを、ヒトの障害のある眼に毎日1から4回点眼する。一実施形態では、化合物Aの約20〜700μgを、ヒトの障害のある眼に毎日1から4回点眼する。別の実施形態では、化合物Aの約350μgを、ヒトの障害のある眼に毎日1から4回点眼する。化合物Aは、滴の状態で、例えば1から2滴投与することができる。
【0067】
別の実施形態では本明細書中において、注射用の生理的食塩水に溶かした0.05mg/mlから約7.0mg/mlの化合物Aと1mg/mlから約140mg/mlのヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリンとを含む、ヒトの眼圧を低下させるための局所用点眼製剤を提供する。この製剤は、ヒトのn緑内障、OHT、またはPOAGを治療するために使用することができる。
【0068】
別の実施形態では本明細書中において、被験者の眼圧を低下させるための薬剤の製造のための式Iの化合物の使用法を提供する。別の実施形態では本明細書中において、被験者の緑内障治療用の薬剤の製造のための式Iの化合物の使用法を提供する。別の実施形態では本明細書中において、被験者のOHT治療用の薬剤の製造のための式Iの化合物の使用法を提供する。別の実施形態では本明細書中において、被験者のPOAG治療用の薬剤の製造のための式Iの化合物の使用法を提供する。
【0069】
別の実施形態では本明細書中において、被験者の眼圧を低下させるための式Iの化合物の使用法を提供する。別の実施形態では本明細書中において、被験者の緑内障治療のための式Iの化合物の使用法を提供する。別の実施形態では本明細書中において、被験者のOHT治療のための式Iの化合物の使用法を提供する。別の実施形態では本明細書中において、被験者のPOAG治療のための式Iの化合物の使用法を提供する。
【0070】
別の実施形態では本明細書中において、被験者の眼圧を低下させるための化合物Aの使用法を提供する。別の実施形態では本明細書中において、被験者の緑内障治療のための化合物Aの使用法を提供する。別の実施形態では本明細書中において、被験者のOHT治療のための化合物Aの使用法を提供する。別の実施形態では本明細書中において、被験者のPOAG治療のための化合物Aの使用法を提供する。
【0071】
式Iの化合物は、1個または複数個のキラル中心を含有することができることが分かる。本発明は、すべての鏡像異性体、ジアステレオマー、およびこれら式Iの混合物を意図している。
【0072】
さらに本発明の幾つかの実施形態は、式Iの化合物の薬学的に許容できる塩を含む。
薬学的に許容できる塩は、アレルギー反応または毒性などの過度の望ましくない影響のない、疾患の治療に適した式Iの化合物の可溶性または分散性の形態を含むが、これらに限定されない。
【0073】
代表的な薬学的に許容できる塩には、これらに限定されないが酢酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、またはリン酸塩などの酸付加塩、およびリチウム、ナトリウム、カリウム、またはアルミニウムなどの塩基性付加塩(basic addition salts)が挙げられる。
定義
本明細書中で使用される用語「選択的アデノシンA
1アゴニスト」とは、A
1受容体との高い親和性を有すると同時にA
2およびA
3アデノシン受容体に対して低い親和性を有するA
1アゴニストを意味する。上記式Iの化合物(例えば、化合物AからH)は、A
1受容体との親和性が、それらのそれぞれのA
2AおよびA
3受容体との親和性よりもかなり高い。化合物AからHに対するA
1の選択性のデータを下記の表にまとめる。
【0075】
別の実施形態では、本発明の目的の場合、選択的A
1アゴニストは、A
3結合親和性に対するA
1結合親和性の選択性が約130を超える(すなわち、A
1>A
3[KiA
3(nm)/KiA
1(nm)])化合物と考えられる。
【0076】
CPAおよびCCPAは、既知のA1アゴニストの例である。しかしながらこれらの化合物は、低いA1受容体/A3受容体選択性比を有する。
【0078】
ここで、R=H=シクロペンチルアデノシン(CPA)、およびR=Cl=2−クロロシクロペンチルアデノシン(CCPA)。
本明細書中で使用される用語「アルキル」とは、完全に飽和した分岐または非分岐炭化水素部分を指す。好ましくはこのアルキルは、1から20個の炭素原子、より好ましくは1から16個の炭素原子、1から10個の炭素原子、1から7個の炭素原子、または1から4個の炭素原子を含む。アルキルの代表例には、これらに限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、3−メチルヘキシル、2,2−ジメチルペンチル、2,3−ジメチルペンチル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルなどが挙げられる。さらに表現「C
x〜C
y−アルキル」(式中、xは1〜5であり、yは2〜15である)は、特定の範囲の炭素の特
定のアルキル基(直鎖または分岐鎖)を表す。例えば、表現C
1〜C
4アルキルには、これらに限定されないがメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、tert−ブチル、およびイソブチルが挙げられる。用語アルキルには、これらに限定されないがC
1〜
C
15アルキル、C
1〜C
10アルキル、およびC
1〜C
6アルキルが含まれる。
【0079】
本明細書中で用いられる用語「C
1〜C
15アルキル」は、1から15個の炭素原子を有
する直鎖または分岐鎖飽和炭化水素を指す。代表的なC
1〜C
15アルキル基には、これら
に限定されないがメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ネオヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、ネオヘプチル、オクチル、イソオクチル、ネオオクチル、ノニル、イソノニル、ネオノニル、デシル、イソデシル、ネオデシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、およびペンタデシルが挙げられる。一実施形態ではC
1〜C
15アルキル基は、1個または複数個の−ハロ、−O−(C
1〜C
6アルキ
ル)、−OH、−CN、−COOR’、−OC(O)R’、−N(R’)
2、−NHC(
O)R’、または−C(O)NHR’基(ただし、各R’は独立して−Hまたは非置換−C
1〜C
6アルキルである)で置換される。指定されない限りそのC
1〜C
15アルキルは非
置換である。
【0080】
本明細書中で用いられる用語「C
1〜C
10アルキル」は、1から10個の炭素原子を有
する直鎖または分岐鎖飽和炭化水素を指す。代表的なC
1〜C
10アルキル基には、これら
に限定されないがメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ネオヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、ネオヘプチル、オクチル、イソオクチル、ネオオクチル、ノニル、イソノニル、ネオノニル、デシル、イソデシル、およびネオデシルが挙げられる。一実施形態ではC
1〜C
10アルキル基は、1個または複数個の−ハロ、−O
−(C
1〜C
6アルキル)、−OH、−CN、−COOR’、−OC(O)R’、−N(R’)
2、−NHC(O)R’、または−C(O)NHR’基(ただし、各R’は独立して
−Hまたは非置換−C
1〜C
6アルキルである)で置換される。指定されない限りそのC
1
〜C
10アルキルは非置換である。C
1〜C
10アルキルには、これに限定されないがC
1〜C
6アルキルが挙げられる。
【0081】
本明細書中で用いられる用語「C
1〜C
6アルキル」は、1から6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖飽和炭化水素を指す。代表的なC
1〜C
6アルキル基には、これらに限定されないがメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、およびネオヘキシルが挙げられる。指定されない限りそのC
1〜C
6アルキルは非置換である。
【0082】
本明細書中で用いられる用語「アリール」は、フェニル基またはナフチル基を指す。一実施形態ではアリール基は、1個または複数個の−ハロ、−O−(C
1〜C
6アルキル)、−OH、−CN、−COOR’、−OC(O)R’、−N(R’)
2、−NHC(O)R
’、または−C(O)NHR’基(ただし、各R’は独立して−Hまたは非置換−C
1〜
C
6アルキルである)で置換される。指定されない限りそのアリールは非置換である。
【0083】
本明細書中で用いられる用語「C
3〜C
8単環式シクロアルキル」は、3、4、5、6、7、または8員飽和非芳香族単環式シクロアルキル環である。代表的なC
3〜C
8単環式シクロアルキル基には、これらに限定されないがシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられる。一実施形態ではC
3〜C
8単環式シクロアルキル基は、1個または複数個の−ハロ、−O−(C
1
〜C
6アルキル)、−OH、−CN、−COOR’、−OC(O)R’、−N(R’)
2、−NHC(O)R’、または−C(O)NHR’基(ただし、各R’は独立して−Hまた
は非置換−C
1〜C
6アルキルである)で置換される。指定されない限りそのC
3〜C
8単環式シクロアルキルは非置換である。
【0084】
本明細書中で用いられる用語「C
3〜C
8単環式シクロアルケニル」は、少なくとも1個の環内二重結合を有する、しかし芳香族ではない3、4、5、6、7、または8員非芳香族単環式炭素環である。任意の2つの基が、それらが結合している炭素原子と一緒にC
3
〜C
8単環式シクロアルケニル基を形成する場合、それら2つの基が結合している炭素原
子は四価のままであることを理解されたい。代表的なC
3〜C
8単環式シクロアルケニル基には、これらに限定されないがシクロプロペニル、シクロブテニル、1,3−シクロブタジエニル、シクロペンテニル、1,3−シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、1,3−シクロヘキサジエニル、シクロヘプテニル、1,3−シクロヘプタジエニル、1,4−シクロヘプタジエニル、1,3,5−シクロヘプタトリエニル、シクロオクテニル、1,3−シクロオクタジエニル、1,4−シクロシクロオクタジエニル、1,3,5−シクロオクタトリエニルが挙げられる。一実施形態ではC
3〜C
8単環式シクロアルケニル基は、1個または複数個の−ハロ、−O−(C
1〜C
6アルキル)、−OH、−CN、−COOR’、−OC(O)R’、−N(R’)
2、−NHC(O)R’、または−C(O)NH
R’基(ただし、各R’は独立して−Hまたは非置換−C
1〜C
6アルキルである)で置換される。指定されない限りそのC
3〜C
8単環式シクロアルケニルは非置換である。
【0085】
本明細書中で用いられる用語「C
8〜C
12二環式シクロアルキル」は、8、9、10、
11、または12員飽和非芳香族二環式シクロアルキル環系である。代表的なC
8〜C
12
二環式シクロアルキル基には、これらに限定されないがデカヒドロナフタレン、オクタヒドロインデン、デカヒドロベンゾシクロヘプテン、およびドデカヒドロヘプタレンが挙げられる。一実施形態ではC
8〜C
12二環式シクロアルキル基は、1個または複数個の−ハ
ロ、−O−(C
1〜C
6アルキル)、−OH、−CN、−COOR’、−OC(O)R’、−N(R’)
2、−NHC(O)R’、または−C(O)NHR’基(ただし、各R’は
独立して−Hまたは非置換−C
1〜C
6アルキルである)で置換される。指定されない限りそのC
8〜C
12二環式シクロアルキルは非置換である。
【0086】
本明細書中で用いられる用語「C
8〜C
12二環式シクロアルケニル」は、少なくとも1
個の環内二重結合を有する8、9、10、11、または12員非芳香族二環式シクロアルキル環系である。任意の2つの基が、それらが結合している炭素原子と一緒にC
8〜C
12
二環式シクロアルケニル基を形成する場合、それら2つの基が結合している炭素原子は四価のままであることを理解されたい。代表的なC
8〜C
12二環式シクロアルケニル基には
、これらに限定されないがオクタヒドロナフタレン、ヘキサヒドロナフタレン、ヘキサヒドロインデン、テトラヒドロインデン、オクタヒドロベンゾシクロヘプテン、ヘキサヒドロベンゾシクロヘプテン、テトラヒドロベンゾシクロヘプテン、デカヒドロヘプタレン、オクタヒドロヘプタレン、ヘキサヒドロヘプタレン、およびテトラヒドロヘプタレンが挙げられる。一実施形態ではC
8〜C
12二環式シクロアルキル基は、1個または複数個の−
ハロ、−O−(C
1〜C
6アルキル)、−OH、−CN、−COOR’、−OC(O)R’、−N(R’)
2、−NHC(O)R’、または−C(O)NHR’基(ただし、各R’
は独立して−Hまたは非置換−C
1〜C
6アルキルである)で置換される。指定されない限りそのC
8〜C
12二環式シクロアルケニルは非置換である。
【0087】
本明細書中で用いられる用語「ハロ」は、−F、−Cl、−Br、または−Iを指す。
用語「3から7員単環式ヘテロ環」とは、(i)環炭素原子の1個がN、O、またはS原子で置換えられている3または4員非芳香族単環式シクロアルキル、あるいは(ii)環炭素原子の1〜4個が独立してN、O、またはS原子で置き換えられている5、6、または7員芳香族または非芳香族単環式シクロアルキルを指す。非芳香族3から7員単環式ヘテロ環は、環の窒素、イオウ、または炭素原子を介して結合することができる。芳香族
3から7員単環式ヘテロ環は、環の炭素原子を介して結合することができる。3から7員単環式ヘテロ環基の代表例には、これらに限定されないが、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、モルホリニル、オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、チアジアジニル、チアジアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオモルホリニル、チオフェニル、トリアジニル、トリアゾリルが挙げられる。一実施形態では3から7員単環式ヘテロ環基は、1個または複数個の−ハロ、−O−(C
1〜C
6アルキル)、−OH、−CN、−COOR’、−OC(O)R’、−N(R’)
2
、−NHC(O)R’、または−C(O)NHR’基(ただし、各R’は独立して−Hまたは非置換−C
1〜C
6アルキルである)で置換される。指定されない限りその3から7員単環式ヘテロ環は非置換である。
【0088】
用語「8から12員二環式ヘテロ環」とは、二環系の環の一方または両方で、その環炭素原子の1〜4個が独立してN、O、またはS原子で置き換えられた二環式8から12員芳香族または非芳香族二環式シクロアルキルを指す。この種類にはベンゼン環に接合している3から7員単環式ヘテロ環が含まれる。8から12員単環式ヘテロ環の非芳香族環は、環の窒素、イオウ、または炭素原子を介して結合する。芳香族8から12員単環式ヘテロ環は、環炭素原子を介して結合する。8から12員二環式ヘテロ環の例には、これらに限定されないが、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾテトラゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイミダゾリニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、1H−インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、イソベンゾフラニル、イソインダゾリル、イソインドリル、イソインドリニル、イソキノリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、キノキサリニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、およびキサンテニルが挙げられる。一実施形態では8から12員二環式ヘテロ環基の各環を、1個または複数個の−ハロ、−O−(C
1〜C
6アルキル)、−OH、−CN、−COOR’、−OC(O)R’、−N(R’)
2、−NHC(
O)R’、または−C(O)NHR’基(ただし、各R’は独立して−Hまたは非置換−C
1〜C
6アルキルである)で置換される。指定されない限りその8から12員二環式ヘテロ環は非置換である。「フェニレン基」の代表例を下記に示す。
【0089】
本明細書中で用いられる語句「薬学的に許容できる塩」は、酸と、プリン化合物の塩基性窒素原子との塩である。これら塩の実例には、これらに限定されないが、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩(glucaronate)、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩))が挙げられる。薬学的に許容できる塩はまた、カンファースルホン酸塩であることもできる。用語「薬学的に許容できる塩」はまた、カルボン酸官能基などの酸性官能基を有するプリン化合物と塩基との塩を意味する。好適な塩基には、これらには限定されないが、ナトリウム、カリウム、およびリチウムなどのアルカリ金属の水酸化物と、カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物と、アルミニウ
ムおよび亜鉛などの他の金属の水酸化物と、アンモニアと、有機アミン類、例えば非置換またはヒドロキシ置換モノ、ジ、またはトリアルキルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N−メチル、N−エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ、ビス、またはトリス−(2−OH低級アルキルアミン類)、例えばモノ、ビス、またはトリス−(2−ヒドロキシエチル)アミン、2−ヒドロキシ−tert−ブチルアミン、またはトリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミン、N,N−ジ−低級アルキル−N−(ヒドロキシル−低級アルキル)−アミン類、例えばN,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミンまたはトリ−(2−ヒドロキシエチル)アミン、N−メチル−D−グルカミンと、アルギニン、リシンなどのアミノ酸とが挙げられる。用語「薬学的に許容できる塩」にはまた、プリン化合物の水和物が含まれる。本明細書中では幾つかの化学構造式は、化学結合を表すために太線および破線を用いて描かれる。これらの太線および破線は絶対立体化学を示す。太線は、置換基が、それが結合している炭素原子の平面より上にあることを示し、また破線は、置換基が、それが結合している炭素原子の平面より下にあることを示す。
【0090】
本明細書中で用いられる用語「有効量」とは、(i)高IOPを治療または予防する、あるいは(ii)ヒトのIOPを低下させるのに有効な選択的アデノシンA1アゴニストの量を意味する。
【0091】
用語「被験者」は、高IOPに関連する疾患、障害、または状態を患うまたはそれに罹患する生物、例えば原核生物および真核生物を含むものである。被験者の例には、哺乳動物、例えばヒト、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット、および形質転換された非ヒト動物が挙げられる。幾つかの実施形態では被験者は、ヒト、例えばIOPの増加を患う、または患う危険性がある、または潜在的に患うことが可能なヒトである。別の実施形態では被験者は細胞である。
【0092】
用語「治療する」、「治療された」、「治療すること」、または「治療」は、治療されている状態、障害、または疾患に関連したまたはそれに起因する少なくとも1つの症状の縮小または緩和を含む。幾つかの実施形態では治療は、高IOPの誘発、次いで本発明の化合物の活性化を含み、結果として高IOPに関連したまたはそれに起因する少なくとも1つの症状を縮小または緩和することになる。例えば治療は、疾患の1つまたは幾つかの症状の縮小、あるいは障害の根治であることができる。
【0093】
用語「使用」には、高IOPの治療に使用することと、これらの疾患の治療に使用される医薬組成物の製造、例えば薬剤の製造に使用することと、これらの疾患の治療に本発明の化合物を使用する方法と、これらの疾患の治療のための本発明の化合物を含む医薬製剤と、これらの疾患の治療に使用される本発明の化合物との本発明の実施形態の任意の1つまたは複数が、別段の指定がない限り、個々に必要に応じてかつ目的に適うように含まれる。具体的には治療される、したがって本発明の化合物を使用することが好ましい疾患は、緑内障、POAG、またはOHTから選択される。
【0094】
用語「約」または「おおよそ」は、一般には所与の値または範囲の20%以内、より好ましくは10%以内、さらに最も好ましくは5%以内を意味する。別法では、特に生物系では用語「約」は、おおよそ対数(すなわち、大きさの次数)の範囲内、好ましくは所与の値の2倍以内を意味する。
【0095】
本明細書中で用いられる用語「一滴」とは、液滴に似た眼科的に許容できる流体の量を指す。一実施形態では一滴は、約5μlから約200μl、例えば約30μlから約80μlに相当する液体量を指す。
【0096】
下記の省略形が本明細書中で使用され、表示された定義を有する。CCPAは2−クロロ−N6−シクロペンチルアデノシンであり、CPAはN6−シクロペンチルアデノシンであり、NECAはアデノシン−5’−(N−エチル)カルボキサミドであり、NMRは核磁気共鳴であり、R−PIAはN6−(2−フェニル−イソプロピル)アデノシンのR−異性体であり、OHTは高眼圧症、またはPOAGは原発性開放隅角緑内障であり、HPβCDはヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリンである。
合成方法
式Iの化合物は、米国特許第7,423,144号明細書(その開示内容はその全体が本明細書中に援用される)および他の公開されている方法(Cristalliら、J.Med.Chem.35:2363〜2369,1992、Cristalliら、J.Med.Chem.37:1720〜1726,1994、Cristalliら、J.Med.Chem.38:1462〜1472,1995、およびCamaioniら、Bioorg.Med.Chem.5:2267〜2275,1997参照)に記載の合成手順を使用することによって、または下記で概略を説明する合成手順を使用することによって調製することができる。
【0097】
スキーム1は、本発明の化合物を製造するのに有用なヌクレオシド中間体の製造方法を示す。
【0099】
式中、R
2は上記で定義したものと同様である。
式1の保護されたリボース化合物を、ヘキサメチルジシラザンリチウムおよびトリメチルシリルトリフラートを用いて式2のプリン化合物と結合させ、続いてトリフルオロ酢酸を用いてアセトニドを除去して、式3のヌクレオシド中間体および式4のそれらの対応する他のアノマーを得ることができる。同様に、式5のリボース二酢酸を、ヘキサメチルジシラザンリチウムおよびトリメチルシリルトリフラートを用いて式2の化合物と結合させて、式6のアセトニドで保護されたヌクレオシド中間体および式7のそれらの対応する他のアノマーを得ることができる。
【0100】
スキーム2は、本発明の化合物を製造するのに有用な式8のアデノシン中間体の製造に役立つ方法を示す。
【0102】
式中、R
1およびR
2は上記で定義したものと同様である。
式3aの6−クロロアデノシン誘導体を、カンファースルホン酸の存在下でアセトンおよび2,2−ジメトキシプロパンを用いて、その2’,3’−アセトニドに転換する。このアセトニドを、塩基の存在下で式R
1−NH
2のアミンを用いてさらに誘導体化して、
式8の化合物を得ることができる。
【0103】
本発明の他の化合物を製造するのに有用な方法体系をスキーム4に記述する。
【0105】
式中、R
1およびR
2は上記で定義したものと同様である。
式8のアデノシン中間体を、無水酢酸または他のニトロ化剤、例えばMsCl/ONO
3またはテトラフルオロホウ酸ニトロソニウムの存在下で硝酸を用いてそれらの5’−硝
酸塩類似体に転換することができる。TFA/水を用いてアセトニドを除去することにより本発明の化合物が得られる。
【0106】
R
3が−CH
2OSO
3Hである式(Id)のプリン誘導体を製造するのに有用な方法体系をスキーム6で概略を説明する。
【0108】
式中、R
1およびR
2は上記で定義したものと同様である。
式8のアデノシン中間体を三酸化イオウ−ピリジンコンプレックスで処理して、対応する5’−スルホン酸ピリジン塩中間体を得ることができる。次いでこのピリジン塩中間体を、NaOHまたはKOHを用いて中和し、続いてTFA/水を用いてアセトニドを除去して、Aが−CH
2OSO
3Hである式(Id)のプリン誘導体のそれぞれ対応するナトリウムまたはカリウム塩を得ることができる。このナトリウムまたはカリウム塩を硫酸または塩酸などの強い水性酸で処理することにより、Aが−CH
2OSO
3Hである本発明の化合物が得られる。
送達方法
式Iの化合物を組み込んで送達のための様々な型の点眼組成物または製剤にすることができる。式Iの化合物は、通常の当業熟練者によく知られている手法を用いて、眼に直接に送達する(例えば、局所点眼薬または軟膏や、盲嚢中に埋め込まれる、あるいは鞏膜に隣接してまたは眼内に埋め込まれる医薬品送達スポンジなどの持続放出装具や、眼周囲、結膜、テノン嚢下、腔内、硝子体内、または管内注射剤)ことも、また全身的に送達する(例えば、経口、静脈内、皮下、または筋内注射剤や、腸管外、皮膚、または鼻からの送達)こともできる。さらに本発明の物質を眼内挿入物または埋込装具に製剤化することも考えられる。
【0109】
好ましくは式Iの化合物を取り込んで眼への送達のための約4〜8のpHを有する局所点眼製剤にする。これら化合物を眼科的に許容できる保存剤、界面活性剤、増粘剤、浸透促進剤、緩衝剤、塩化ナトリウム、および水と組み合わせて、水性の滅菌した点眼用懸濁液または溶液を形成することができる。点眼液製剤は、化合物を生理学的に許容できる等張性の水性緩衝液中に溶解することによって調製することができる。さらに点眼液剤は、その化合物の溶解を助けるために眼科的に許容できる界面活性剤を含むことができる。さらに点眼液剤は、結膜嚢中での製剤の保持を向上させるために、ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン(HPβCD)、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの粘度または溶解度を増すための物質を含有することもできる。これらに限定されないがゲランおよびキサンタンガムを含めたゲル化剤もまた使用することができる。滅菌した点眼軟膏製剤を調製するには、有効成分を鉱油、液状ラノリン、または白色ワセリンなどの適切な賦形剤中で保存剤と混ぜ合わせることができる。滅菌した点眼用ゲル製剤は、類似の点眼製剤用の公開されている処方に従って化合物を、例えばCarbopol−974などと組み合わせることにより調製される親水性基剤中に懸濁させることによって調製することができ、また保存剤および等張化剤を組み込むこともできる。
【0110】
好ましい実施形態における化合物は、高いIOPに悩む患者のIOPを下げるのに、かつ/あるいはPOAGまたはOHT患者の正常IOPレベルを維持するのに十分な量が組
成物中に含有される。このような量を、本明細書中では「IOPを制御または低下させるのに有効な量」またはより簡便に「有効量」と呼ぶ。化合物は、通常はそれら製剤中に0.05mg/mlから7.0mg/mlの量、しかし好ましくは0.4から7.0mg/mlの量が含有されるはずである。したがって局所的に与える場合、熟練した臨床医の裁量に従ってこれらの製剤の1から2滴が、眼の表面に一日当たり1から4回与えられることになる。
【0111】
式Iの化合物はまた、他の緑内障治療薬、例えばこれらに限定されないがβ遮断薬、プロスタグランジン類似体、カルボニックアンヒドラーゼ阻害薬、α
2アゴニスト、縮瞳薬
、神経保護薬A3アンタゴニスト、A2Aアゴニスト、およびこれらの組合せと併用することもできる。
式Iの化合物を使用する臨床試験の設計
本明細書中で述べる臨床試験は、OHTまたはPOAGを有する成人の片方の試験対象の眼への治験薬(すなわち化合物Aまたはプラセボ)の単回局所点眼の多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、用量増加試験である。「試験対象の眼」は、投与前日(0日目)の7:00と8:00AMの間に記録される平均IOPの高い方の眼と定義した。被験者の登録規準には、インフォームド・コンセントに署名し、OHTまたはPOAGと診断されている、登録されている間のそれらの眼疾患の急性増悪期の危険性の低い、出産可能性のない年齢18から75歳(両端の歳を含む)の男性および女性が含まれた。
【0112】
これら成人被験者を、順次7つの処理群の1つに割り当てた。各処理群は12人の被験者を含み、8人の被験者は1日目にその試験対象の眼に化合物Aを2.5、7.5、20、60、180、350、または700μg投与されるように無作為に選ばれ、また4人の被験者は模擬プラセボ(表1参照)を投与されるように無作為に選ばれた。
【0114】
仮面性眼圧を、通常の角膜麻酔後にゴールドマン眼圧計で2回測定した。1日目の朝に両眼のベースライン(投与前)IOP測定値を求めた後に、指定された治験薬(化合物Aまたは模擬プラセボ)を、片方の試験対象の眼のみに単回50μl滴剤として組み込んだ。続いて両側の外眼部の検査およびマスク化されたIOPの測定を、治験薬点眼後1、2、4、および6時間に相当する9:00AM、10:00AM、12:00正午、および2:00PM(各±5分)に行った。さらに、700mcgコホートではIOP測定を、治験薬点眼後10時間に相当する6:00PM(18:00)に行った。
用量/剤形、経路、および投与計画
被験者は、治験薬を試験対象の眼の下結膜嚢へ点眼器により点眼された。治験薬は、被験者ごとに片方の眼(試験対象の眼)にのみ投与された。投与量は、それぞれの処理群を通じて滴剤50μl当たり2.5μgから350μgの範囲であった。有資格の眼科医(または訓練を受け、指名された人)が治験薬を投与した。それぞれ次にくる処理群への被験者の無作為化された登録は、3人の資格を持った医師(すなわち、内科医、心臓内科医、および眼科医)から構成される安全性調査委員会による完了した処理群からの安全性データの再調査および承認に基づいた。
処方例
処方は、注射用0.9%生理的食塩水(USP)で下記の指示された濃度に再構成されるすべてのヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン(HPβCD)20mgに対して化合物Aが1mg(すなわち、1:20wt/wt)である。
【0116】
臨床試験の結果
臨床試験の結果を図に示し、さらに下記で説明する。
7つの処理群の多施設、無作為化、二重盲検臨床試験に対する用量増加計画を
図1に示す。各処理群に12人の被験者を無作為に割り当てた。すなわち8人の被験者には化合物Aを与え、4人の被験者にはプラセボを与えた。それぞれ次にくる処理群に対する増加は、ごく最近の完了したコホートからの安全性データの安全性調査委員会の承認に基づいた。
【0117】
すべての処理群の各時点における試験対象の眼のIOP平均値および中央値(mmHg)を、それぞれ
図2aおよび2bに示す。すべての処理群の試験対象の眼の投与前IOPからの平均値および中央値の絶対IOP変化量(mmHg)を時間点ごとに
図3aおよび3bに示す。
【0118】
図4aは、10:00AMにおける7つの処理群の応答者解析の要約した図表を示す。化合物Aの局所点眼で処理したヒト被験者の場合、投与後おおよそ2時間(おおよそ10:00AM)のところで薬物処理した眼とプラセボ処理した眼の違いの最も大きな部分がはっきり見られる。投与後2時間の臨床的IOP評価は、統計的有意性のあるヒト緑内障/OHT患者での効果の存在を検出するために特に重要である。
【0119】
図4bは、投与後6時間の観察期間にわたっての平均応答率を用いた7つの処理群の応答者解析の要約した図表を示す。応答率を得るには、それぞれの投与後3時間の時点における各被験者のIOPの低下%を平均した。この比率の平均値を用いて応答率を求めた。
【0120】
図5は、全投与後観察期間にわたっての350mcgコホートのベースライン(BL:投与前)からの平均値および中央値の低下%ならびにカテゴリカル応答者解析を示す。
図6から8に示す図は、プラセボ応答に対する、350および700mcgコホートで観察されたIOPの平均値および中央値の統計的に有意な低下(投与前ベースラインIOPの測定値からの)を実例により示す。
【0121】
図7は、投与後の観察期間にわたっての700mcgコホートのベースライン(BL:投与前)からの平均値および中央値の低下%ならびにカテゴリカル応答者解析を示す。
化合物Aの有効性の要約
化合物Aは、投与1日前のベースラインからの下記のIOPの減分を生じさせることが分かった。すなわち
1.用量に関係したIOPの減分
a.IOPの平均値および中央値の低下傾向およびベースラインからの変化量%を、特に投与後2時間の時点で観察した。IOPの平均値および中央値の最大の低下が350mcg用量のところにあることが分かった。
【0122】
b.応答者解析は、多くの被験者において化合物Aに対する用量応答を示し、それは観察期間全体(約6時間)を通じてIOPのベースラインからの≧10%、≧15%、または≧20%のカテゴリカル平均値の低下を達成した。最大IOP低下を達成する被験者の%(応答者解析)は、350mcg処理群中に存在した。
【0123】
2.プラセボに対する統計的に有意な減分
a.プラセボ応答に対する統計的に有意な差が、投与後2時間の時点での350mcgおよび700mcg処理群で観察された。
【0124】
3.350mcg処理群ではIOPの低下は、全観察期間(約6時間)のあいだ続くことが分かった。
合成例
2’,3’−イソプロピリデン−N
6−シクロヘキシルアデノシン:エタノール(20ml)に溶かした6−クロロアデノシン(2.58g)およびシクロヘキシルアミン(5g)を還流により6時間加熱し、次いで室温まで冷却した。反応混合物を真空中で濃縮し、得られる残渣を水(50ml)および酢酸エチル(300ml)で希釈した。有機層を分離し、水性層を酢酸エチル(2×50ml)で抽出した。一緒にした有機層を水(1×30ml)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空中で濃縮し、真空下で乾燥して、N
6−シクロヘキシルアデノシンを白色固体(2.600g)として得た。N
6−シクロヘキシルアデノシン(2.6g)をアセトン(30ml)で希釈し、得られる溶液に2,2−ジメトキシプロパン(12ml)、続いてD−カンファースルホン酸(3.01g)を加え、その混合物を室温で18時間撹拌した。反応混合物を真空中で乾燥し、得られる残渣を酢酸エチル(150ml)で希釈し、次いで飽和NaHCO
3水溶液を用いてpH
8.0に中和した。有機層を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空中で濃縮した。残渣を、溶離液としてMeOH−CH
2Cl
2(4:96)を用いたシリカゲルカラム上で2回精製して2’,3’−イソプロピリデン−N
6−シクロヘキシルアデノシン(3.16g)を得た。
1H NMR(CDCl
3):δ1.23〜1.47(m,9H)、1.3
8(s,3H)、1.64(s,3H)、1.79〜1.81(m,1H)、2.04〜2.06(m,1H)、3.80(d,J=12Hz,1H)、3.96(d,J=12Hz,1H)、4.53(s,1H)、5.09〜5.16(m,2H)、5.80〜5.92(m,2H)、7.79(s,1H)、8.24(s,1H)、8.22〜8.38(m,1H)。
【0125】
N
6−シクロヘキシルアデノシン−5’−O−硝酸塩(化合物E):無水酢酸(6ml)を硝酸(2g、63%)の撹拌溶液に−25℃(冷却にはCCl
4−CO
2浴を使用した)でゆっくり加え、追加の1時間のあいだ反応温度を−7.5〜0℃に保った。無水酢酸(3ml)に溶かした2’,3’−イソプロピリデン−N
6−シクロヘキシルアデノシン(1.0g)の溶液をゆっくり加えた。得られた反応物を0から−5℃で2時間撹拌し、その混合物を、水性NaHCO
3(40ml)および酢酸エチル(150ml)の氷冷溶
液中にゆっくり注ぎ、それを5分間撹拌した。有機層を分離し、水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空中で濃縮した。残渣をTFA(16ml)と水(4ml)の混合物で希釈し、その混合物を室温で30分間撹拌した。この混合物を真空中で濃縮し、得られ
る残渣を水(10ml)で希釈し、真空中で濃縮した。得られた残渣を酢酸エチルで希釈し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空中で濃縮した。残渣を、酢酸エチル−ヘキサン(40:60から20:80までの勾配)を用いたシリカゲルカラム上で精製してN
6−シクロヘキシルアデノシン−5’−O−硝酸塩(0.150g)を得た。
1H NMR(DMSO−D
6):δ1.08〜1.13(
m,1H)、1.27〜1.41(m,4H)、1.57〜1.83(m,6H)、4.12〜4.17(m,2H)、4.30〜4.33(m,1H)、5.48(d,J=5.4Hz,1H)、5.60(d,J=5.7Hz,1H)、5.90(d,J=4.8Hz,1H)、7.59(d,J=8.1Hz,1H)、8.16(s,1H)、8.29(s,1H)。
【0126】
N
6−(エキソ−2−ノルボルニル)アデノシン−5’−O−硝酸塩(化合物F):2’,3’−イソプロピリデン−N
6−エキソ−ノルボルニルアデノシンを2’,3’−イソプロピリデン−N
6−シクロヘキシルアデノシンの手順に従って調製し、後続の反応に使用した。無水酢酸(6ml)を硝酸の撹拌溶液(2g、63%)に−25℃(冷却にはCCl
4−CO
2浴を使用した)でゆっくり加え、追加の1時間のあいだ反応温度を−7.5〜0℃に保った。無水酢酸(3ml)に溶かした2’,3’−イソプロピリデン−N
6−エキソ−ノルボルニルアデノシン(1.2g)の溶液をゆっくり加えた。混合物を0から−5℃で40分間撹拌し、その混合物を、水性NaHCO
3の氷冷溶液(40ml)中
にゆっくり注いだ。この溶液をジクロロメタン中で抽出した。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空下で濃縮した。残渣を酢酸エチル−ヘキサン(1:1)を用いたシリカゲルカラム上で精製して、所望の生成物(0.245g)および出発化合物(1.0g)を得た。このニトロ生成物(0.245g)を、TFA(15ml)と水(5ml)の混合物で希釈し、その混合物を室温で30分間撹拌した。これを真空下で濃縮し、水(10ml)で希釈し、真空中で濃縮した。得られる残渣を酢酸エチルで希釈し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空中で濃縮した。残渣を酢酸エチルとヘキサンの混合物から再結晶させてN
6−エキソ−2−ノルボルニルアデノシン−5’−O−硝酸塩(0.123g)を得た。
1H NMR(DMSO−D
6):δ1.03〜1.21(m,3H)、1.40〜1.56(
m,3H)、1.58〜1.64(m,4H)、3.94(bs,1H)、4.13〜4.17(m,1H)、4.30(bs,1H)、4.66〜4.87(m,3H)、5.49(d,J=5.4Hz,1H)、5.62(d,J=5.4Hz,1H)、5.91(d,J=4.8Hz,1H)、7.60(d,J=6.6Hz,1H)、8.20(s,1H)、8.31(s,1H)。
【0127】
2−クロロ−N
6−シクロヘキシルアデノシン:エタノール(30ml)に溶かした2,6−ジクロロアデノシン(1.0g)とシクロヘキシルアミン(0.926g)の混合物を還流により6時間加熱し、次いで室温まで冷却した。混合物を真空下で濃縮した。残渣をMeOH−CH
2Cl
2(1:6から1:5)を用いたシリカゲルカラム上で精製した。一緒にした画分を真空下で濃縮、乾燥して、2−クロロ−N
6−シクロヘキシルアデノシンを白色固体(2.600g)として得た。
1H NMR(DMSO−D
6):δ1.
12〜1.21(m,2H)、1.33〜1.43(m,3H)、1.63〜1.86(m,6H)、3.57〜3.62(m,1H)、3.66〜3.69(m,1H)、3.97(d,J=3Hz,1H)、4.16(d,J=3.3Hz,1H)、4.54(d,J=5.4Hz,1H)、5.08〜5.11(m,1H)、5.24(d,J=4.8Hz,1H)、5.51(d,J=5.7Hz,1H)、5.85(d,J=5.7Hz,1H)、8.26(d,J=8.4Hz,1H)、8.41(s,1H)。
【0128】
2−クロロ−2’,3’−イソプロピリデン−N
6−シクロヘキシルアデノシン:2−クロロ−N
6−シクロヘキシルアデノシン(0.5g)をアセトン(30ml)で希釈し
、この混合物に2,2−ジメトキシプロパン(2.04g)、続いてD−カンファースルホン酸(CSA、0.272g)を加えた。得られる反応混合物を室温で2時間撹拌した。追加のCSA(0.2g)を加え、2時間撹拌した。混合物を真空中で濃縮し、得られる残渣を酢酸エチルで希釈し、次いで濃NaHCO
3水溶液を用いてpH8.0に中和し
た。有機層を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空下で濃縮して、2−クロロ−2’,3’−イソプロピリデン−N
6−シクロヘキシルアデノシン(0.378g)を得た。
1H NMR(CDCl
3):δ1.23〜1.30(m,3H)、1.36〜1.44
(m,1H)、1.63(s,3H)、1.68〜1.79(m,5H)、2.04〜2.08(m,2H)、3.81(d,J=5Hz,1H)、3.99(d,J=12.9Hz,1H)、4.51(s,1H)、5.11(d,J=5.7Hz,1H)、5.15〜5.18(m,1H)、5.75(bs,1H)、5.78(d,J=4.5Hz,1H)、5.96(bs,1H)、7.76(s,1H)。
【0129】
2−クロロ−N
6−シクロヘキシルアデノシン−5’−O−硫酸ナトリウム塩(化合物G):2−クロロ−2’,3’−イソプロピリデン−N
6−シクロヘキシルアデノシン(0.540g)をDMF(6ml)に溶解し、DMF(3ml)に溶かした三酸化イオウ(0.302g)の溶液にゆっくり加えた。混合物を室温で一晩撹拌した。これを回転蒸発器(ratavaporator)上で濃縮し、残渣を水(8ml)で希釈した。この水溶液を、NaOH(0.1N)でpH7.0までゆっくり中和した。これを酢酸エチルで抽出し、次いで水性層を濃縮した。得られた白色固体をそれ自体で次のステップで使用した。この保護された硫酸ナトリウム塩をTFA−水(16:4ml)の混合物で処理し、30分間撹拌した。反応混合物を濃縮し、残渣をアセトンから結晶化させて2−クロロ−N
6−シクロヘキシルアデノシン−5’−O−硫酸ナトリウム塩(0.150g)を得た。
1H NMR(DMSO−D
6):δ1.10〜1.13(m,1H)、1.25〜
1.41(m,4H)、1.57〜1.83(m,6H)、3.72〜4.08(m,4H)、4.47(s,1H)、5.81(s,1H)、8.14(d,J=6.0Hz,1H)、8.43(s,1H)。
【0130】
2−クロロ−N
6−シクロヘキシルアデノシン−5’−O−硝酸塩(化合物H):ニトロ化およびTFA水脱保護反応に続いて2−クロロ−2’,3’−イソプロピリデン−N
6−シクロヘキシルアデノシンから2−クロロ−N
6−シクロヘキシルアデノシン−5’−O−硝酸塩を調製した。
1H NMR(CDCl
3):δ1.06〜1.42(m,4
H)、1.64〜1.88(m,5H)、4.08(bs,1H)、4.21(s,1H)、4.30(d,J=4.2Hz,1H)、4.41(s,1H)、4.83〜4.88(m,2H)、5.57(d,J=5.4Hz,1H)、5.70(d,J=4.5Hz,1H)、5.90(d,J=5.1Hz,1H)、8.26(d,J=8.7Hz,1H)、8.38(s,1H)。
化合物Aの合成
N
6−シクロペンチルアデノシン:6−クロロアデノシン(43g)とシクロペンチルアミン(5当量)のエタノール(50当量)に溶かした溶液を還流により3時間加熱し、次いで室温まで冷却した。得られる反応混合物を真空中で濃縮し、得られる残渣を水(400ml)および酢酸エチル(400ml)で希釈した。有機層を分離し、水性層を酢酸エチル(2×400ml)中に抽出した。一緒にした有機層を水(2×200ml)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空中で濃縮し、真空下で乾燥して固体を得た。これをMeOH(400ml)中に懸濁し、濾過し、乾燥してN
6−シクロペンチルアデノシン(43.8g)を得た。
【0131】
2’,3’−イソプロピリデン−N
6−シクロペンチルアデノシン:N
6−シクロペンチルアデノシン(43g)をアセトン(75当量)で希釈し、その得られた溶液に2,2−ジメチルプロパン(5当量)、続いてD−カンファースルホン酸(1当量)を加え、得
られる反応物を室温で3時間撹拌した。得られる反応混合物を真空中で濃縮し、その得られた残渣を酢酸エチルで希釈し、次いで濃NaHCO
3水溶液を用いてpH7.0に中和
した。有機層を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空中で濃縮し、真空下で乾燥して固体を得た。これをヘキサン(250ml)中に懸濁し、濾過し、ヘキサンで洗浄し、真空下で乾燥して2’,3’−イソプロピリデン−N
6−シクロペンチルアデノシン(43g)を得た。
【0132】
2’,3’−イソプロピリデン−N
6−シクロペンチルアデノシン−5’−硝酸塩:無水酢酸(22当量)を−10℃(冷却にはアセトニトリル−CO
2浴を使用した)の硝酸
の撹拌溶液(5当量、63%)に4時間かけてゆっくり加え、反応温度を添加の間ずっと−5〜5℃に保った。その得られた溶液を−20℃に冷却し、2’,3’−イソプロピリデン−N
6−シクロペンチルアデノシン(18.250g、0.048モル)の無水酢酸(37ml、8当量)に溶かした溶液をゆっくり加えた。得られた反応物を−15〜−5℃で1時間撹拌し、その得られる反応混合物をNaHCO
3水溶液(水800mlに溶か
した168g)と酢酸エチル(350ml)の氷冷溶液にゆっくり注ぎ、得られる溶液を5分間撹拌した。有機層を分離し、酢酸エチル(350ml)を用いて水性層を抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空中で濃縮し、溶離液として70%酢酸エチル−ヘキサンを使用するシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィを用いて精製して2’,3’−イソプロピリデン−N
6−シクロペンチルアデノシン−5’−硝酸塩(14.9g)を得た。
【0133】
化合物A:2’,3’−イソプロピリデン−N
6−シクロペンチルアデノシン−5’−硝酸塩(4.8g)を、TFA(20ml)と水(5ml)の混合物で希釈し、得られる反応物を室温で30分間撹拌した。得られる反応混合物を真空中で濃縮し、その得られる残渣を水(10ml)で希釈し、真空中で濃縮した。この得られた残渣を酢酸エチルで希釈し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、その有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空中で濃縮して白色固体の残渣を得た。これを真空下で乾燥し、次いで冷エタノールから再結晶させて化合物A(3.1g)を得た。
1H NMR(DMSO−d
6):δ1.
49〜1.58(m,4H)、1.66〜1.72(m,2H)、1.89〜1.94(m,2H)、4.12〜4.17(m,1H)、4.28〜4.33(m,1H)、4.48(bs,1H)、4.65〜4.87(m,3H)、5.5(d,J=5.1Hz,1H)、5.63(d,J=5.7Hz,1H)、5.91(d,J=5.1Hz,1H)、7.75(d,J=7.5Hz,1H)、8.17(bs,1H)、8.30(s,1H);MS(ES
+):m/z381.35(M+1);C
15H
20N
6O
6に対する解析計算値:C47.37、H5.30、N22.10;実測値:C47.49、H5.12、N21.96。
化合物Bの合成
2−クロロ−N
6−シクロペンチルアデノシン:2’,3’,5’−トリアセトキシ−2,6−ジクロロアデノシン(1.5g)およびシクロペンチルアミン(8当量)をエタノール(50当量)で希釈し、得られる溶液を還流により約15時間加熱し、次いで室温まで冷却し、真空中で濃縮して粗残渣を得た。これを酢酸エチルと水の混合物で希釈し、分液漏斗に移した。有機層を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空中で濃縮して粗残渣を得た。これをシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離液として8%MeOH−ジクロロメタン)を用いて精製して2−クロロ−N
6−シクロペンチルアデノシン(0.948g)を得た。MSm/z370.32[M+H]
+。
【0134】
2’,3’−イソプロピリデン−2−クロロ−N
6−シクロペンチルアデノシン:2−クロロ−N
6−シクロペンチルアデノシン(900mg、前のステップで調製したもの)および2,2−ジメトキシプロパン(10当量)をアセトン(15ml)で希釈し、その得られる溶液にD−カンファースルホン酸(1当量)を加え、得られた反応物を室温で2
時間撹拌した。その得られる反応混合物を真空中で濃縮し、飽和NaHCO
3水溶液と酢
酸エチルの混合物で希釈し、分液漏斗に移した。有機層を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空中で濃縮して粗残渣を得た。これをシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離液として5%MeOH−ジクロロメタンを使用する)を用いて精製して2’,3’−イソプロピリデン−2−クロロ−N
6−シクロペンチルアデノシン(0.905g)を得た。
1H NMR(CDCl
3,300MHz):δ1.36(s,3H)
、1.62(s,3H)、1.66〜2.16(m,9H)、3.78(d,J=12.9Hz,1H)、3.98(d,J=12.9Hz,1H)、4.51(bs,1H)、4.55〜4.60(m,1H)、5.09〜5.17(m,2H)、5.81(bs,1H)、7.25(s,1H)、7.89(s,1H)。
【0135】
2’,3’−イソプロピリデン−2−クロロ−N
6−シクロペンチルアデノシン−5’−硝酸塩:硝酸溶液(2.0ml、60%)を無水酢酸(16.0ml)に−10〜10℃(アセトニトリル−CO
2冷却浴を使用)で30分かけてゆっくり加え、その反応混合
物を−10〜10℃で10分間撹拌した。次いで反応混合物を−30℃に冷却し、次いで無水酢酸(8.0ml)に溶かした2’,3’−イソプロピリデン−2−クロロ−N
6−シクロペンチルアデノシン(655mg、0.0016モル、前のステップで調製したもの)の溶液をゆっくり加えた。添加が完了したら、得られた反応物を−5℃まで暖め、TLC(溶媒は5%MeOH−CH
2Cl
2または70%EtOAc−ヘキサン)を用いて監視した。反応が完了したら、反応混合物を飽和NaHCO
3水溶液(300当量を水75
mlに溶かしたもの)と酢酸エチル(60ml)の氷冷混合物中にゆっくり注いだ。有機層を分離し、水性層を酢酸エチルで逆抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空中で濃縮して粗残渣を得た。この粗残渣を、フラッシュカラム(溶離液として5%メタノール−ジクロロメタン)を用いて精製して、2’,3’−イソプロピリデン−2−クロロ−N
6−シクロペンチルアデノシン−5’−硝酸塩(0.435g)を得た。
1H NMR(CDCl
3,300MHz):δ1.38(s,3H)、
1.59(s,3H)、1.66〜2.13(m,9H)、4.50〜4.55(m,1H)、4.71〜4.83(m,2H)、5.14〜5.17(m,1H)、5.31(d,J=5.7Hz,1H)、6.04(s,1H)、7.24(s,1H)、7.81(s,1H)。MS m/z455.44[M+H]
+。
【0136】
化合物B:2’,3’−イソプロピリデン−2−クロロ−N
6−シクロペンチルアデノシン−5’−硝酸塩(0.435g、前のステップで調製したもの)をTFA(20ml)および水(5ml)で希釈し、得られる溶液を30分間撹拌した。得られる反応混合物を真空中で濃縮し、得られる残渣を水(10ml)で希釈し、得られる溶液を真空中で濃縮した。得られた粗残渣を酢酸エチルで希釈し、分液漏斗に移し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空中で濃縮した。得られた粗残渣を、シリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィ(溶離液として10%メタノール−ジクロロメタンを使用)を用いて精製して、化合物16(0.250g)を得た。
1H NMR(DMSO−d
6,300MHz):δ1.52〜1.95(m,9H)、4.13
〜4.24(m,2H)、4.55〜4.58(m,1H)、4.73〜4.85(m,2H)、5.50(bs,1H)、5.61(bs,1H)、5.84(d,J=5.1Hz,1H)、8.33(bs,2H)、MS m/z414.85[M+H]
+。
化合物C(ナトリウム塩)の合成
2’,3’−イソプロピリデン−N
6−シクロペンチルアデノシン(1g、0.0026モル、実施例1の記述のように調製したもの)と、DMF(17ml)に溶かした三酸化イオウ−ピリジンコンプレックス(0.0039モル)との混合物を室温で約18時間撹拌した。DMFを真空中で除去し、得られる残渣を真空中で乾燥した。乾燥した残渣を水(25ml)で希釈し、NaOH(1N)を用いてpH7.0に中和し、真空中で濃縮して粗残渣を得た。これをTFAの溶液(水に溶かした80%溶液、50ml)で希釈し
た。得られる溶液を25℃で30分間撹拌し、反応混合物を真空中で濃縮して粗残渣を得た。これを水(10ml)で希釈し、真空中で濃縮した。得られた粗化合物を、アセトン−水から再結晶して化合物C(ナトリウム塩)(805mg)を得た。
1H NMR(DMSO−d
6,300MHz):1.53〜1.96(m,9H)、3.78〜4.10
(m,4H)、4.43〜4.54(m,2H)、5.90(d,J=5.1Hz,1H)、8.23(s,1H)、8.46(s,1H)。MS m/z416.20[M+H]
+。
実施例−結合試験
細胞の培養および膜の調製
ヒトアデノシンA
1受容体を安定にトランスフェクトされたCHO細胞を成長させ、こ
れをヌクレオシドを含まない栄養混合物F12(DMEM/F12)を有し、10%ウシ胎児血清、ペニシリン(100μg/ml)、ストレプトマイシン(100U/ml)、L−グルタミン(2mM)、およびジェネティシン(G−418:0.2mg/ml、A
2B:0.5mg/ml)を含有するダルベッコ変法イーグル培地中に、5%CO
2/95%空気中において37℃で維持した。次いで細胞を、1:5と1:20の間の比率で週に2から3回分割する。
【0137】
放射性リガンド結合実験用の膜を、Klotzら、Naunyn−Schmiedeberg’s Arch.Pharmacol.,357:1〜9(1998)に記載されているように新鮮または凍結細胞から調製する。次いでこの細胞懸濁液を氷冷低張緩衝液(5mM Tris/HCl、2mM EDTA、pH7.4)中でホモジナイズし、そのホモジネートを1,000gで10分間(4℃)回転を与える。次いで上清から膜を100,000gで30分間沈降させ、50mM Tris/HCl緩衝液pH7.4(A
3アデノシン受容体の場合は50mM Tris/HCl、10mM MgCl
2、1mM
EDTA、pH8.25)中に再懸濁させ、液体窒素中でタンパク質濃度1〜3mg/mlで凍結させ、−80℃で保存する。
アデノシン受容体結合試験
アデノシンA
1受容体に対する選択されたプリン化合物の親和性は、Ki(nM)とし
て表され、ヒト組換えA
1アデノシン受容体を安定にトランスフェクトされたCHO細胞
中の特異的[
3H]2−クロロ−N
6−シクロペンチルアデノシン結合の置換を測定することによって求めることができる。
【0138】
非標識化合物の解離定数(Ki値)は、A
1受容体結合の特性解析のためのA
1選択的アゴニスト2−クロロ−N
6−[
3H]シクロペンチルアデノシン([
3H]CCPA、1nM)を用いた96ウェルマイクロプレート中での競合実験で求められる。非特異的結合は、100μM R−PIAおよび1mMテオフィリンの存在下で個々に求められる。詳細についてはKlotzら、Naunyn−Schmiedeberg’s Arch.Pharmacol.,357:1〜9,1998を参照されたい。結合データは、プログラムSCTFIT(De Leanら、Mol.Pharm.1982,21:5〜16)を用いた非線形曲線の当てはめによって計算することができる。
機能的特性解析
フォルスコリンに刺激されるアデニリルシクラーゼ活性のA
1およびA
3受容体を介した阻害を、ヒトA
1およびA
3アデノシン受容体を安定にトランスフェクトされたCHO細胞から調製された膜でテストした。A
2aおよびA
2b受容体を介する基礎シクラーゼ活性の刺激を、ヒトA
2aおよびA
3アデノシン受容体を安定にトランスフェクトされたCHO細胞から調製された膜でテストした。
【0139】
ヒトA
1およびA
3アデノシン受容体によるアデニリルシクラーゼの阻害
【0141】
本発明およびその実施形態を詳細に述べた。しかしながら本発明の範囲は、本明細書中で述べたいずれの工程、製品、物質組成、化合物、手段、方法、および/またはステップの特定の実施形態に限定されるものではない。本発明の精神および/または本質的特徴から逸脱することなく様々な修正形態、置換形態、および変形形態を、開示された材料に対して行うことができる。したがって当業界の通常の熟練者は、本発明のこのような関連する実施形態に従って、実質上同一の機能を果たすか、または本明細書中で述べた実施形態と実質上同一の結果を達成するそれより後の修正形態、置換形態、および/または変形形態を利用することができることを本開示内容から容易に理解するはずである。したがって別添の特許請求の範囲は、その範囲内に、本明細書中で述べた工程、製品、物質組成、化合物、手段、方法、および/またはステップに対する修正形態、置換形態、および変形形態を包含するものである。