【実施例】
【0027】
実施例1
材料および方法
(A)細胞株
ラット神経膠芽腫細胞株RG-2を10%のFCS(Biochrom KG、Berlin、Germany)および1%の抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン; Gibco、Invitrogen Corporation、Karlsruhe、Germany)を添加したDMEM(Sigma-Aldrich、Steinheim、Germany)中で、5%のCO
2加湿雰囲気中、37℃で培養した。ラット脳に注射する対数増殖期のRG-2細胞をトリプシン処理し、遠心分離し(1000rpm/10分)、ペレットを、添加物なしのDMEM中に再懸濁した。
【0028】
(B)RG-2細胞への照射
リンパ球とのRG-2細胞の共培養の前に、細胞増殖が停止され得る線量である3000cGyを該細胞に照射した。
【0029】
(C)パルボウイルスH-1(H-1PV)の作製および感染
H-1PVをヒトNBK細胞において増幅し、先に記載(Faisst et al.,J Virol 69(1995)、4538-43)のヨードキサノール勾配で精製した。プラークアッセイによってH-1PVをNBK指示細胞において滴定し、プラーク形成単位(pfu)/細胞で示される感染多重度(MOI)で、さらに使用した。
【0030】
(D)インビトロ刺激アッセイ
この試験は、腫瘍抗原との共培養によるリンパ球の特異的活性化をアッセイするために使用した。LN細胞を排液リンパ節から、シリンジプランジャーでの該リンパ節の機械的破壊およびメッシュでの残屑の濾過によって収集した。0.1%のウシ血清アルブミン(BSA; Sigma Chemical Co、St Louis、MO)を添加したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液を、すべてのインビトロでのリンパ球操作に使用した。LN細胞を96ウェル丸底プレート内に2.5 x 10
5細胞/ウェルで播種し、さらに、10%のウシ胎仔血清、2mmol/L グルタミン、50 U/mL ペニシリン、50μg/mL ストレプトマイシン、Hepes 25 mM、および0.05mmol/L 2-メルカプトエタノールを添加したRPMI 1640培地中で培養した。培養物を、完全RPMI培地中で37℃および7%のCO
2にて48時間インキュベートし、1μCi [
3H]TdR/ウェルを各ウェルに添加した。72時間目、細胞を、Harvester 96(TomTec、Orange、CT)を有するガラス繊維フィルター(Wallac Oy、Turku、Finland)上に収集し、1205 Beta-Plateリーダー(Wallac、Gaithersburg、MD)において計測した。結果を、四重培養物の平均CPM ± 標準偏差(SD)として示した。
【0031】
(E)動物実験
すべての動物実験は、施設内および国のガイドラインに従って行なった。
【0032】
(F)腫瘍細胞の大脳内移植
再攻撃実験の6〜12ヶ月前にパルボウイルスH-1PVで成功裡に処理した8匹の雌Wistarラット(Charles River、Sulzfeld、Germany)(5匹ラットには腫瘍内治療を与え、3匹のラットには静脈内治療を与えた)を使用した。雌Wistar近交系ラットにイソフルラン(初期用量2.5%、維持1.6%)で麻酔し、定位枠に乗せた。頭皮の線状切開後、正中の2mm右側および冠状縫合に対して1mm前方に0.5mmの穿頭孔を作製し、10μlのHamiltonシリンジの針を穿頭孔から前頭葉内の硬膜レベルの5mm下の深さまで定位的に導入し、RG-2神経膠腫細胞(5μlの容量中1000000細胞)を5分間で注射した。針をゆっくり抜き取り、穿頭孔を骨蝋で密封した。
【0033】
実施例2
成功裡に処理したWistarラットのRG-2 腫瘍細胞での再攻撃
合計7ラットをH-1PVで成功裡に処理し、頭蓋内の神経膠腫を完全寛解にした。これらの7匹のラットのうち、4匹のラットは大脳内(i.e.)治療を受け、3匹のラットは静脈内(i.v.)治療を受けた。i.v.治療ラットでは、中和抗体の形成によってインタクトな体液性免疫応答が示された(表1)。神経膠腫の再増殖なしの6ヶ月の観察期間後、ラットに100,000個のRG-2 腫瘍細胞の大脳内注射を再攻撃した。2匹の対照動物には同数の腫瘍細胞を注射した。7匹の再攻撃動物のうち0匹でRG-2神経膠腫が発生し、対照的に、2匹の対照動物のうち2匹が腫瘍細胞の注射後、14日目および15日目に腫瘍の形成によって死亡した。生存した再攻撃動物の追跡期間は>3ヶ月とし、MRIでは、いずれの再攻撃ラットでも腫瘍の成長は示されなかった(表2および
図1)。
【0034】
【0035】
【0036】
実施例3
成功裡のパルボウイルスH-1PV治療後の動物における腫瘍再攻撃後の腫瘍特異的免疫細胞の検出
再攻撃実験の6ヶ月前にH-1PVで成功裡に治療した動物の排液リンパ節由来のリンパ球のインキュベーションにより、RG-2細胞によるリンパ球活性化の強い増大がもたらされる。この腫瘍特異的効果は、照射RG-2細胞または凍結/解凍処理後のRG-2細胞を抗原として使用した場合に検出され得た。絶対数は、凍結/解凍処理RG-2細胞よりも照射RG-2細胞とのリンパ球のインキュベーション後の方が高かった(
図2a)。しかしながら、対照と比べたリンパ球比活性の相対増加は、RG-2神経膠腫細胞の凍結/解凍処理後の方が高かった(
図2b)。
【0037】
実施例4
単回腫瘍内用量のH-1 PVでの動物の治療後の神経膠腫抑制におけるT細胞の役割
RG2神経膠腫を有するWistarラットにおける一時的なCD8細胞枯渇を、単回H-1 PV腫瘍内注射後の確立された神経膠腫の運命に対する効果について試験した。この条件下で、非枯渇動物における神経膠腫塊の完全寛解を観察した。対照的に、CD8陽性T細胞を特異的抗体のi.p.注射によってブロックした場合、枯渇ラットにおいて、H-1 PV感染で腫瘍抑制は引き起こされなかった。だが、続いて、これらの腫瘍を有する感染動物をCD8陽性T細胞で再構成した場合(抗CD8抗体の注射の中止)、さらなるH-1 PV注射なしで完全腫瘍寛解が起こった。重要なことに、H-1 PV治療なしでは、実験条件で神経膠腫を有する動物において自然な腫瘍寛解が観察されなかったため、T細胞の存在単独は回復に充分でなかった。これらのデータから、パルボウイルスH-1PV感染による宿主抗腫瘍T細胞応答の活性化は、神経膠腫の成功裡のH-1 PV系治療に必須であると結論づけることができる。
【0038】
実施例5
H-1PVでの膵臓癌の治療
H-1 PV治療膵臓腫瘍を有するラット由来の脾細胞を、同じ型の腫瘍を有する未処理レシピエントに移入した。移入された免疫細胞は、受動的(細胞傷害性リンパ球)または能動的(抗原提示細胞)にレシピエントを腫瘍発生から保護されることが予測された。実際、H-1 PV処理ドナーからの養子移入により、未処理腫瘍を有するラット由来の脾細胞を受けた対照レシピエントと比較して、これらの動物においてメジアン生存期間のほぼ倍加が引き起こされた。
【0039】
腫瘍モデル
すべての外科および画像形成手順は、エーロゾル麻酔下で行なった。体重180〜200gの免疫応答性雄Lewisラット(Janvier、Le Genest Saint Isle、France)を膵臓癌移植に使用した。移植HA-RPC細胞によって形成した皮下腫瘍から200μlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中5x10
6細胞の懸濁液を調製し、膵臓実質に注射した。移植後、最初の3週間、膵尾まで腫瘍の進行が確認され、第4週の間にリンパ節浸潤に至った。5〜6週間後に肝臓転移が現れ、6〜9週目に起こった肺転移により死亡した。
【0040】
養子移入
脾臓をインタクトで取り出し、滅菌技術を用いてPBS中でばらばらにした。ストレーナーの上面でプランジャーを用いて脾臓を細分した後、1000rpmで15分間の遠心分離によって単細胞懸濁液を得た。脾臓細胞を添加物を含むRPMI 1640中に再懸濁し、血球計算板で、生存能を確保するためのトリパンブルー中にて計測した。平均生存能は>90%であった。PBSまたはH-1PVで処理した腫瘍を有するラットから単離された脾細胞を腫瘍を有するレシピエントラットに麻酔動物において静脈内および腹腔内で注射した(合計1x10
7細胞/動物)。
【0041】
結果
膵臓腫瘍のH-1PV感染の免疫調節性の特徴は、H-1PV処理動物の脾臓由来の免疫細胞の養子移入を使用することにより評価した。膵臓に腫瘍の発生の2週間後、ラットにH-1PV腫瘍内注射を与えた(
図3A)。3週間後、進行中の免疫反応を示し、末梢組織からのH-1PVのクリアランスをもたらす(データ示さず)抗ウイルス中和抗体が出現した時点で、動物の脾臓を収集し、3週目の膵臓腫瘍を有する未処理レシピエント動物への細胞移入に使用した。H1-1PV処理ドナー由来の脾細胞によりレシピエント動物が保護され得、対照ドナー由来の細胞と比べて、腫瘍の成長の遅滞および生存期間の有意な(p<0.01)延長(152日対90日)がもたらされた。移入の3週間後、レシピエントの血清を、H-1PVに対する中和抗体の存在について細胞毒性保護アッセイによって評価した。抗体力価の上昇は観察されず、脾細胞とともにウイルスは移入されなかったことが示された(データ示さず)。これにより、H-1PV媒介性腫瘍崩壊効果がレシピエント動物で観察された抗腫瘍効果に関与している可能性が排除された。
【0042】
したがって、膵臓癌では、以前に使用されていた肝細胞癌モデルと同様、H-1PVは、腫瘍に対して免疫系を刺激して反応させ得る免疫賦活効果を有する。上記の養子移入実験は、ウイルス処理ドナーの免疫系により、同じ腫瘍実体を有する未処理動物が保護され得ることを明白に示す。