【実施例】
【0055】
(例1)
絶食状態の雄性Sprague−Dawleyラットのインビボ薬物動態試験:参照としての活性な医薬品成分である市販のPritor錠剤とナノ構造のテルミサルタンの比較
実験プロトコル
絶食状態の雄性Sprague−Dawleyラットにおけるインビボ薬物動態の比較試験
参照テルミサルタンの単回経口用量を30mg/kgとし、例8のナノ構造のテルミサルタン製剤の単回経口用量を、30mg/kgの活性剤に相当する223.8mg/kgとした。両方の試験物質を、胃管を介して5ml/kgの投与体積で投与した。試験品目のビヒクルは0.9%NaCl滅菌溶液とし、処理中、継続的に撹拌することによって懸濁液を均質に保ち、沈降から生じる誤差を最小限に抑えた。
【0056】
pH=5のナノ構造の懸濁液及びPritor懸濁液を投与する、摂食状態の雄性Sprague−Dawleyラットにおけるインビボ薬物動態の比較試験
参照テルミサルタンの単回経口用量を30mg/kgとし、例8のナノ構造のテルミサルタン製剤の単回経口用量を、30mg/kgの活性剤に相当する223.8mg/kgとした。両方の試験物質を、胃管を介して5ml/kgの投与体積で投与した。試験品目のビヒクルは0.9%NaCl滅菌溶液とし、それを1NのHCl溶液によってpH=5に調節した。処理中、継続的に撹拌することによって懸濁液を均質に保ち、沈降から生じる誤差を最小限に抑えた。
【0057】
動物
雄性Wistarラット(Laboratory Animal Center、University of Szegedから購入)を、温度及び光制御条件下で水道水を自由に摂取できるようにし、げっ歯類用の標準ペレット食(Bioplan Ltd、Isaszeg、ハンガリー)で維持した。順化期間は少なくとも4日とした。ラットを、各群6匹の複数群に無作為化し、各群を使用して、テルミサルタン処理後の様々な時間に採血した。すべての動物を、経口処理前に16時間絶食させた。動物をハロタンで麻酔し、テルミサルタン処理の15、30、45、60、120及び360分後に、心穿刺によって血液を採取した。すべての動物について、処理後すぐに水を摂取できるようにした。最後の群のラット(360分後に屠殺した)には、処理の120分後にげっ歯類用の標準食を摂取できるようにした。60分以内に凝固血液を遠心分離(7000rpm、10分、4℃)することによって血清試料を調製し、分析まで−20℃で保存した。
【0058】
試料調製
一定分量200μlの血清を、内部標準の使用溶液20μl及びタンパク質の沈殿のためのアセトニトリル1.2mlと混合した。混合物を1分間ボルテックスし、4℃において12000rpmで10分間遠心分離にかけた。上清を、窒素流の下で40℃において蒸発乾固させ、水−メタノール(50:50v/v)200μlで再構成し、20μlをHPLC系に注入した。
【0059】
統計的分析
対応のない(unpaired)t−検定を使用して、同じ時点に属する血清濃度を統計的に比較した。統計的分析及びグラフ描画を、GraphPad Prism 4.0(GraphPad Software、USA、サンディエゴ)で実施した。
【0060】
結果
a)参照とナノ構造のテルミサルタンの比較
参照の活性な医薬品及びナノ構造のテルミサルタンの両方の処理によって、30mg/kgの試験物質の経口投与後に、15〜360分の間隔で二相性プロファイルを示す検出可能な血清濃度が得られた。ナノ構造の処方からのテルミサルタンの吸収は、参照物質の投与後よりも明らかに急速であり、完全である。ナノ構造のテルミサルタンによる処理では45分後に最大血清濃度(C
max)が決定されたが、参照調製物は120分後にC
maxを示した(
図1)。
【0061】
15〜360分の血清濃度曲線下面積(AUC
15〜360分)を算出して、試験品目の吸収度を特徴付けた。ナノ構造のテルミサルタンは、6412μg・分/mlのAUC
15〜360分値を示したが、参照処理後のこの値は940.1μg・分/mlであった。2つのAUC値の比(AUC
15〜360mm(ナノサイズ)/AUC
15〜360分(参照))は、6.82であった。
【0062】
図1:30mg/kgのナノ構造及び参照試験物質の経口投与後のテルミサルタンの血清濃度
【0063】
b)市販のPritor錠剤とナノ構造のテルミサルタンの比較
参照の活性な医薬品及びナノ構造のテルミサルタンの両方の処理によって、30mg/kgの試験物質の経口投与後に、15〜360分の間隔で二相性プロファイルを示す検出可能な血清濃度が得られた。同じ時間に対応する2つの処理(対応のないt−検定)の間に、統計的に異なる血清濃度は見出されなかった。ナノ構造のテルミサルタンによる処理では45分後に最大血清濃度(C
max)が決定されたが、Pritor40mg錠剤は60分後にC
maxを示した。
【0064】
15〜360分の血清濃度曲線下面積(AUC
15〜360分)を算出して、試験品目の吸収度を特徴付けた。ナノ構造のテルミサルタンは、6412μg・分/mlのAUC
15〜360分値を示したが、Pritor40mg錠剤による処理後のこの値は8069μg・分/mlであった。2つのAUC値の比(AUC
15〜360mm(ナノ構造)/AUC
15〜360分(Pritor40mg錠剤))は、0.795であった。
【0065】
投与の30分後のテルミサルタンの血清濃度は、最小限を示す。しかし、15、30及び45分における濃度の比較では(ANOVAに続いてNewman−Keuls事後試験)、統計的有意差はなかった。全体的に見て、提示された結果は、ナノ構造のテルミサルタンの吸収が、市販の薬物調製物(Pritor40mg錠剤)の投与後に得られた吸収と統計的に同一であることを明示している(
図2)。
【0066】
図2:30mg/kgのナノ構造及びPritor試験物質の経口投与後のテルミサルタンの血清濃度
【0067】
c)NaOHの存在による効果の排除
溶解度に対する水酸化ナトリウムの効果を評価するために、pH=5に調節した生理食塩水中Pritor錠剤及び例8のナノ構造のテルミサルタンを投与して、PK試験を実施した。テルミサルタンの吸収は、摂食状態後のものであった。
【0068】
参照の活性な医薬品及びナノ構造のテルミサルタンの両方の処理によって、摂食状態における30mg/kgの試験物質の経口投与後に、15〜360分の間隔で二相性プロファイルを示す検出可能な血清濃度が得られた。ナノ構造の処方からのテルミサルタンの吸収は、参照物質の投与後よりも明らかに急速であり、完全である。ナノ構造のテルミサルタンによる処理では30分後に最大血清濃度(C
max)が決定されたが、参照調製物は120分後にC
maxを示した。
【0069】
15〜360分の血清濃度曲線下面積(AUC
15〜360分)を算出して、試験品目の吸収度を特徴付けた。ナノ構造のテルミサルタンは、2744μg・分/mlのAUC
15〜360分値を示したが、参照処理後のこの値は1242μg・分/mlであった。2つのAUC値の比(AUC
15〜360mm(ナノサイズ)/AUC
15〜360分(参照))は、2.21であった(
図3)。
【0070】
図3:摂食状態におけるpH=5の30mg/kgのナノ構造及びPritor試験物質の経口投与後のテルミサルタンの血清濃度
【0071】
表1:ラットにおける薬物動態試験の結果
【0072】
(例2)
摂食/絶食状態の雌性ビーグル犬でのインビボ薬物動態の比較試験
この試験は、摂食及び絶食させた動物における様々なテルミサルタン製剤の経口投与後に得られた薬物動態パラメーターを比較するように設計した。次の製剤を使用した。
−試験製剤:例8のナノ構造のテルミサルタン製剤
−試験製剤:投与用に測定してカシェ剤(wafer capsule)にした、例8のナノ構造のテルミサルタン製剤及びNaOH
−参照製剤:Pfizer AG製の市販のPritor40mg錠剤(カシェ剤で投与する)
【0073】
実験プロトコル
インビボ薬物動態の比較試験は、単回用量による2つの期間の交差試験であった。3匹の雌性ビーグル犬に、同量のテルミサルタンを含有する試験製剤及び参照製剤の単回経口用量を投与した。活性成分の用量は、動物1匹当たり40mgであった。テルミサルタンの血漿濃度を、信頼できる生体分析法を使用して定量化した。
【0074】
テルミサルタンの全身曝露を特徴付けるために、主な薬物動態パラメーター(C
max、T
max及びAUC)を、個々の血漿レベル対時間曲線について決定した。試験製剤の投与後に得られたパラメーターを、参照錠剤について得られたパラメーターと比較した。
【0075】
動物
ビーグル犬は、薬物動態試験に適した非げっ歯類種であり、規制当局に許容されている。ビーグル犬は、容易に利用可能であり、扱い、飼育及び投与が容易であり、各個々の動物における全血漿レベル曲線の調査に適している。全身曝露を、6匹のビーグル犬で調査した。
【0076】
試験は、「実験動物の管理と使用に関する指針(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)」、NRC、1996年に従い、動物保護を規制するHungarian Act 1998:XXVIIIの原則に従って実施した。
【0077】
食餌及び摂食
動物に、Ssniff、Spezialdiaeten GmbH製のイヌ用のssniff Hd−H食を与えた。食餌は、ビーグル犬1匹につき1日300gをほぼ同時に与えた。翌朝、残りの食餌を撤去した。投与の前に、動物を終夜(少なくとも12時間)絶食させた。処理当日、絶食群に無作為化した動物には、投与の約4時間後に食餌を与えた。摂食群に無作為化した動物には、標準食約150gを与えた。投与の約4時間後にも、別の食餌150gを与えた。
【0078】
採血及び血漿分離
テルミサルタンの血漿レベルを決定するために、血液約3mlを、抗凝固剤としてリチウムヘパリンを入れたプラスチックバイアルに収集した。採血の時点は、以下の投与前(0分)と、投与の15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、24時間、48時間及び72時間後の両方であった。
【0079】
血液を、前腕の橈側皮静脈(v.cephalica antebrachii)又は伏在静脈(v.saphena)から、使い捨ての滅菌針を用いて採取した。
【0080】
採取後、血液を遠心分離にかけるまで、クラッシュアイス上で冷却し続けた。採血後60分以内に、血液を4℃で10分間、2,000gで遠心分離にかけることによって、血漿試料を調製した。分離した血漿(約1ml)を、エッペンドルフ管に移した。血漿試料をすぐに凍結させ、分析まで超低温フリーザー(−20±5℃)で保存した。
【0081】
テルミサルタンの濃度を、信頼できるクロマトグラフィーによる生体分析法を使用して決定した。
【0082】
薬物動態評価
薬物動態評価を、WinNonlin Professional Version 4.0.1ソフトウェア(Pharsight Corporation、USA)を使用することによって実施した。個々の血漿レベル対時間曲線を、非コンパートメント法を使用して評価した。
【0083】
結果
市販薬物の経口投与によって、絶食状態及び摂食状態の両方において、テルミサルタンの血清濃度が急速に増加した。この濃度増加速度は、非常に大きい個体間変動を示した。ナノサイズのテルミサルタン製剤の投与では、特に摂食状態において血漿濃度がゆっくり増加し、個体間差異は著しく小さかった(
図4a〜bは、絶食(a)及び摂食(b)動物に関して経口投与後の最初の8時間に決定された血漿濃度を示す)。
【0084】
すべての試験期間(0〜72時間)についての曲線下面積(AUC
last)、c
max及びt
maxを、曲線から決定し、市販薬物と比較したナノサイズの製剤の相対的な生体利用能(F
rel)を算出した(表2)。各数値は、ナノサイズの製剤の長いt
max及び低いC
maxを示しているが、AUC
last値は実質的に同一であり、相対的な生体利用能の数値は、絶食及び摂食状態においてそれぞれ102%及び108%であった。
【0085】
市販薬物の急速な溶解及び吸収パラメーターは、固体NaOHを含有する独特の製剤であるPritor錠剤によって引き起こされる。この製剤は、化合物の溶解を可能にするが、非常に急速な吸収ももたらし、このことは薬理学的に不利になり得る。臨床薬理学においては、一時的な高いピーク濃度が副作用をもたらすことがあるため、急速に生じる高いピーク値は望ましくない。この場合、非常に急速な血圧降下によって、重症の一時的低血圧症が生じ得る。強いアルカリ環境が、同時に摂取される他の薬物の吸収を改質することもある。また、大きい個体間差異は、異なる度合いのアルカリ化、及び結果として生じる溶解したテルミサルタンの量の差異にも起因し得る。
【0086】
例8の製剤はNaOHを含有しておらず、したがってこの仮説を試験するために、ナノ構造のテルミサルタン及びNaOHを含有するカシェ剤(wafer tablet)を用いて動物研究を実施した。ナノ構造のテルミサルタンのみの投与と比較して、より大きい個体間変動が観測された。また、絶食及び摂食状態の両方において、血漿濃度の急速な増加が観測された(
図8cは、経口投与後の最初の8時間に決定された血漿濃度を示す)。市販薬物と比較して、相対的な生体利用能の数値は類似していた(絶食及び摂食状態について、それぞれ97.3%及び133%)。
【0087】
結局、NaOHを添加していないナノ製剤化APIは、より好ましいPKプロファイルを有するNaOHを含まない市販の薬物錠剤との生物学的同等性を示す。
【0088】
図4:絶食(a)及び摂食(b)状態における、40mgのナノ構造のテルミサルタン及び参照試験物質の経口投与後のテルミサルタンの血清濃度。絶食状態及び摂食状態における、NaOHを伴うナノ構造のテルミサルタンの経口投与後のテルミサルタンの血清濃度(c)。
【0089】
表2:
図4a及び4bに提示の結果から算出した、雌性ビーグル犬のテルミサルタンの主な薬物動態パラメーター
【0090】
2.本発明のナノ粒子のテルミサルタン組成物の溶解プロファイル
本発明のナノ粒子のテルミサルタン組成物は、小さい粒径及び独特のナノ構造の粒子形成に起因して、高い溶解度及び溶解プロファイルを有する。より急速な溶解は、一般に、より急速な作用発現及び高い生体利用能をもたらすため、投与される活性剤が急速に溶解することが好ましい。
【0091】
(例3)
実験プロトコル
溶解度(C
max)の決定
参照APIと比較した例8のナノ構造のテルミサルタンの溶解度を、蒸留水中、UV−VIS測定(Helios Alfa UV分光光度計)によって波長296nm及び室温で決定した。0.20μmの使い捨てシリンジフィルターによって、再分散した試料を濾過した。溶液中のナノ粒子の存在を調べるために、赤色レーザーポインターを波長670nmで操作してその溶液に照射した。散乱が観測されなかった場合は、濾過が成功し、溶液はナノ粒子を含有していないものとした。
【0092】
水酸化ナトリウムの存在下での溶解度(C
max)の決定
Pritor錠剤は、酸性状態を中和し、吸収中にテルミサルタンを溶解する機能を果たす水酸化ナトリウムを含有する。溶解度に対する水酸化ナトリウムの効果を評価するために、ナノ構造のテルミサルタンを、Pritor錠剤が含有する水酸化ナトリウムと同量の水酸化ナトリウムの存在下で溶解させた。
【0093】
例8のナノ構造の活性成分270.1mg(テルミサルタン40mg)、同じナノ構造の活性成分270.1mg(テルミサルタン40mg)とNaOH1.87mgの混合物、及びPritor錠剤1錠を、pH=2.5のHCl溶液100mLに溶解した。0.20μmの使い捨てシリンジフィルターによって、懸濁液を濾過した。溶液中のナノ粒子の存在を調べるために、赤色レーザーポインターを波長670nmで操作してその溶液に照射した。散乱が観測されなかった場合には、濾過が成功し、溶液はナノ粒子を含有していないものとした。テルミサルタン濃度は、UV−VIS測定(Agilent 8453)によって決定した。
【0094】
溶解試験
参照テルミサルタン5mgと、テルミサルタン5mgを含有するナノ構造のテルミサルタン粉末34.7mgとを、蒸留水10mLに再分散させることによって、溶解試験を実施した。懸濁液を、1、5、10、20及び60分間撹拌し、次いでそれを0.2μmの使い捨てシリンジフィルターによって濾過した。テルミサルタン濃度を、UV−VIS分光光度計(Agilent 8453)によって決定した。
【0095】
結果
C
maxの決定
ナノ構造のテルミサルタンの溶解度を決定するために、再分散性試験を実施した。再分散したナノ構造のテルミサルタンの粒径は、強度に基づく平均では104nmであり、数平均では26nmであった。d(90)値は、強度に基づく平均及び数平均で、それぞれ185nm及び40nmであった。ナノ構造のテルミサルタンの溶解度は0.4mg/mLであったが、これは、蒸留水におけるテルミサルタンの溶解度よりも124.5倍高い(
図5)。
【0096】
図5:テルミサルタンの溶解度の増大
【0097】
水酸化ナトリウムの存在下での溶解度試験
Pritor錠剤は、酸性状態を中和し、吸収中にテルミサルタンを溶解する機能を果たす水酸化ナトリウムを含有する。溶解度に対する水酸化ナトリウムの効果を評価するために、例8のナノ構造のテルミサルタンを、Pritor錠剤が含有する水酸化ナトリウムと同量(46.8μmol)の水酸化ナトリウムの存在下で溶解させた。水酸化ナトリウムの存在下では、pH=2.5のHCl溶液におけるナノ構造のテルミサルタンの溶解度は、Pritor錠剤のテルミサルタンの溶解度よりも2.9倍高かった(
図6)。
【0098】
図6:テルミサルタンの溶解度の増大
【0099】
溶解比較試験
例8のナノ構造のテルミサルタンの即時再分散性に起因して、組成物のテルミサルタン含量の24%超が、再分散の際にすぐに溶解する。10分以内に、再分散したナノ構造の粒子を含有する溶液は、その飽和状態に達し、溶解したテルミサルタンの含量は、ナノ構造のテルミサルタンの溶解度との良好な相関において0.4mg/mLになる(
図7)。
【0100】
蒸留水中の参照テルミサルタンの含量は、UV−VIS方法では検出することができない。
【0101】
図7:参照テルミサルタン及びナノ構造のテルミサルタンの溶解比較試験
【0102】
3.本発明のナノ粒子のテルミサルタン組成物の結晶学的構造
固体薬物の化学的安定性は、薬物の結晶状態によって影響を受ける。多くの薬物物質は、多形を示す。それぞれの結晶状態は、異なる化学反応性を有する。薬物のそれらの非晶質形での安定性は、非晶質状態の自由エネルギーレベルが高いことから、それらの結晶形の薬物の安定性よりも一般に低い。
【0103】
粉砕などの機械的ストレスによってもたらされる固体薬物の化学的安定性の低下は、結晶状態の変化によるものである。
【0104】
固体薬物の化学的安定性は、表面積の差異により、薬物の結晶状態の影響も受ける。薬物の固体表面上で進行する反応について、表面積の増加は、反応に関与する薬物の量を増大し得る。
【0105】
(例4)
結晶学的構造の決定
本発明の安定な部分結晶、結晶、多形体又は非晶質のナノ構造のテルミサルタン組成物は、参照結晶と比較して、その表面積の広さに起因して著しく高い溶解度を示す。
【0106】
例8の連続流ナノ沈殿法によって調製されたテルミサルタン粒子の構造を、X線回折分析(Philips PW1050/1870 RTG粉末回折計)によって調査した。測定によって、ナノ構造のテルミサルタン組成物は、部分結晶又は非晶質であることが示された(
図8参照)。ナノサイズのテルミサルタンのXRDディフラクトグラムによって、結晶テルミサルタンの特徴的な反射を見出すことができるものの、強度は低い(
図8a)。
【0107】
図8:参照テルミサルタン、本発明のナノ構造のテルミサルタン組成物及び安定剤のX線ディフラクトグラム
【0108】
4.本発明のナノ粒子のテルミサルタン組成物の再分散性プロファイル
本発明のナノ粒子のテルミサルタン組成物のさらなる特徴は、界面活性剤(単数又は複数)/ポリマー(単数又は複数)によって安定化した乾燥ナノ粒子が、即座に、又はマンニトール、スクロースなどの従来の再分散剤を使用することによって再分散できるということである。
【0109】
(例5)
例8のナノ構造のテルミサルタン粉末の再分散化は、ナノサイズのテルミサルタン粉末10mgを、蒸留水5mLに分散させることによって実施した。蒸留水への添加後に、バイアルを手動で穏やかに振とうさせて、
図9に示す通り、ナノ構造のテルミサルタン粒子のコロイド分散液を得た。再分散した粒子の粒径及びサイズ分布は、
図10に示すことができる。
【0110】
図9:蒸留水におけるナノ構造のテルミサルタンの即時再分散性。
【0111】
図10:再分散の前及び後のテルミサルタンナノ粒子の大きさ及びサイズ分布。
【0112】
5.本発明のナノ粒子のテルミサルタン組成物の吸収及び透過性プロファイルを増大する親油性の強化
細胞膜のリン脂質性に起因して、経口投与後に腸管壁から吸収されるだけでなく、標的組織においてその薬理学的作用を発揮することができる薬物化合物には、特定の度合いの親油性が必要とされることが多い(F.Kesisoglouら、「薬物送達の進展の概説(Advanced Drug Delivery Reviews)」59(2007年)631〜644頁)。
【0113】
テルミサルタンの親油性は、ナノ粒子が沈殿する際に、親油性の安定剤又は/及びポリマー主鎖上に親油性側鎖基を有する安定剤及び/又は両親媒性安定剤を使用することによって増大することができる。適用される安定剤の親油性の性質又は親油性の側鎖基に起因して、本発明のテルミサルタンナノ粒子の親油性だけでなく、吸収及び透過性が増大し得る。
【0114】
例えばキトサンを使用して、経粘膜の吸収強化に起因する腸上皮の傍細胞透過性を増大することができる。
【0115】
薬物送達の目的で使用される大部分の両親媒性コポリマーは、疎水性セグメントとしてポリエステル又はポリ(アミノ酸)誘導体のいずれかを含有する。医薬品の対象となるポリエーテルの大部分は、ポロキサマーファミリー、すなわちポリプロピレングリコール及びポリエチレングリコールのブロックコポリマーに属する。
【0116】
6.本発明のナノ粒子のテルミサルタン組成物の急速な表面湿潤プロファイル
テルミサルタンが溶解するためには、まずその表面が周りの流体によって湿潤されなければならない。ナノサイズの非晶質/部分結晶形は、安定剤(単数又は複数)及び活性な医薬品成分の性質により、疎水性及び親水性の相互反応を発現する化学的に無作為化された表面を有し、それによって湿潤性を改善することができる。本発明のテルミサルタンナノ粒子の表面が、親水性の基/安定剤(単数又は複数)によって官能化される場合、親水性(hydrophility)が高度であるほど、元の結晶形と比較して表面は急速に湿潤し、急速に溶解する。本発明のテルミサルタンナノ粒子のこの進化した特性は、再分散性試験の結果によって支持される。ナノ構造のテルミサルタン粒子のより大きい表面積及び安定剤(単数又は複数)(例えば、ポロキサマー、ポリ(ビニルピロリドン))の親水性(hydrofilic)基に起因して、表面の湿潤は、参照の結晶形よりも急速である。
【0117】
(例6)
ナノ粒子のテルミサルタン湿潤性の視覚的観測
例8のナノ構造のテルミサルタン粒子の湿潤性を、蒸留水中で調査し、CCDカメラを備えた実体顕微鏡によって視覚化した。0.1mgの参照及びナノ構造のテルミサルタン粉末を、スライドに置き、次いで一滴の蒸留水を粉末に添加した。ナノ構造のテルミサルタン粉末は、すぐに膨潤し始め、湿潤し終えたが、参照テルミサルタン粒子は、
図11に示す通り凝集状態を維持した。
【0118】
図11:立体顕微鏡によって100×拡大率で観測した参照テルミサルタン(a)及びナノ構造のテルミサルタン(b)の湿潤性
【0119】
B.組成物
本発明は、立体的に及び/又は静電気的に粒子を安定にする少なくとも1つの安定剤を含む、ナノサイズのテルミサルタンナノ構造粒子の形成を提供する。
【0120】
安定剤は、好ましくは、テルミサルタンと関連又は相互作用するが、テルミサルタン又は安定剤自体とは化学的に反応しない。
【0121】
本発明のテルミサルタンのナノ粒子は、安定剤(単数又は複数)を使用する溶媒−逆溶媒沈殿法によって形成することができる。ナノサイズのテルミサルタンの調製したコロイド溶液の安定性は、第2の立体的又は静電気的安定剤として作用し得るさらなる安定剤(単数又は複数)の組合せによって増大することができる。さらに追加の安定剤を使用して、本発明のテルミサルタンの粒径を低減し、制御することができる。
【0122】
テルミサルタンナノ粒子の粒径
本発明は、動的光散乱法によって測定して約600nm未満の平均粒径を有するテルミサルタンナノ粒子を含有する。
【0123】
「約600nm未満の平均粒径」とは、テルミサルタンナノ粒子の少なくとも90%が、前述の技術によって測定して数/強度による平均未満、すなわち約600nm未満等の粒径を有することを意味する。
【0124】
(例7)
ナノ構造のテルミサルタンの生成
実験中、テルミサルタンナノ粒子を、マイクロ流体系の連続流反応器で調製した。出発溶液として、DMSO100mLに溶解した100mgのテルミサルタン、20mgのドデシル硫酸ナトリウム及び200mgのポリ(ビニルピロリドン)、PVP K−25を使用した。調製した溶液を、供給ユニットを使用して流速0.5mL/分で反応器ユニットを通過させた。一方、第2の供給ユニットを使用して、蒸留水を流速2mL/分で混合ユニットを通過させ、そこで第1の反応器ユニットから送り出されるテルミサルタンを含有する溶液と蒸留水とを混合した。混合ユニットを通過する水によって化学的に沈殿させることにより、ナノ粒子を大気圧で連続的に生成する。生成されたコロイド溶液は、第2の反応器ユニットを介して流れ、装置と統合された動的光拡散ユニット(Nanotrac)に達し、それによって、得られたナノ粒子の粒径を連続的に検出することができる。ナノ粒子の大きさは、流速、圧力及び安定剤の種類を変更することによって、広範に制御することができる(
図12参照)。テルミサルタン粒子の粒径及びサイズ分布は、
図13に示す通り、安定剤(PVP K−25)の量によって制御することができる。テルミサルタン粒子の粒径は、最良の場合205nmであった。
【0125】
図12:異なる安定剤を使用する、テルミサルタンナノ粒子の粒径及びサイズ分布
【0126】
図13:テルミサルタンナノ粒子の粒径及びサイズ分布に対する安定剤の濃度の効果
【0127】
(例8)
ナノ構造のテルミサルタンの生成
実験中、テルミサルタンナノ粒子を、マイクロ流体系の連続流反応器で調製した。出発溶液として、0.1MのNaOH溶液80mLに溶解した160mgのテルミサルタン及び320mgのポリ(ビニルピロリドン)、PVP40を使用した。調製した溶液を、供給ユニットを使用して流速4mL/分で反応器ユニットを通過させた。一方、第2の供給ユニットを使用して、0.1Mの酢酸溶液を流速3.7mL/分で混合ユニットを通過させ、そこで第1の反応器ユニットから送り出されるテルミサルタンを含有する溶液と酢酸溶液とを混合した。混合ユニットを通過する酢酸によって化学的に沈殿させることにより、ナノ粒子を大気圧で連続的に生成する。生成されたコロイド溶液は、第2の反応器ユニットを介して流れ、装置と統合された動的光拡散ユニット(Nanotrac)に達し、それによって、得られたナノ粒子の粒径を連続的に検出することができる。ナノ粒子の大きさは、流速を変更することによって、広範に制御することができる。テルミサルタン粒子の粒径は、最良の場合、
図14及び表3に示す通り165nmであった。
【0128】
図14:テルミサルタンナノ粒子の粒径及びサイズ分布
【0129】
表3:テルミサルタンの粒径に対する流速の効果
【0130】
(例9)
クリーム製剤に取り込んだテルミサルタンナノ粒子
テルミサルタンナノ粒子1.3gを含有するゲル100mLの調製。Carbopol 971を、例8に記載の方法によって合成したテルミサルタンコロイド溶液100mLに、激しく撹拌しながら室温で溶解した。