特許第5778686号(P5778686)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本曹達株式会社の特許一覧 ▶ JSR株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778686
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】新規共重合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 297/02 20060101AFI20150827BHJP
【FI】
   C08F297/02
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-542801(P2012-542801)
(86)(22)【出願日】2011年11月2日
(86)【国際出願番号】JP2011006133
(87)【国際公開番号】WO2012063435
(87)【国際公開日】20120518
【審査請求日】2013年4月5日
(31)【優先権主張番号】特願2010-249493(P2010-249493)
(32)【優先日】2010年11月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】新谷 武士
(72)【発明者】
【氏名】岡戸 俊明
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 秀則
(72)【発明者】
【氏名】梶田 徹
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−136311(JP,A)
【文献】 特開平11−269418(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/020317(WO,A1)
【文献】 特開2003−227901(JP,A)
【文献】 特開2000−169531(JP,A)
【文献】 特開2007−217664(JP,A)
【文献】 特開平03−247672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F251−289,291−297
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3級アミノ基を有する繰り返し単位及び4級アンモニウム塩基を有する繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位からなるブロック鎖(A)と、
下記式(I)
【化1】
(式中、Rは、水素原子又はC1〜C3アルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はC1〜C6アルキル基を表し、Qは、置換基としてアルキル基を有していてもよいオキセタニル基、置換基としてアルキル基を有していてもよいテトラヒドロフラニル基、置換基としてアルキル基を有していてもよいテトラヒドロピラニル基、置換基としてアルキル基を有していてもよいモルホルニル基、置換基としてアルキル基を有していてもよいチオモルホルニル基、又は、C2〜C20アルケニル基を表し、nは、0〜6のいずれかの整数を表す。)で表される繰り返し単位と、
下記式(II)
【化2】
(式中、Rは、水素原子又はC1〜C3アルキル基を表し、Rは、飽和脂肪族炭化水素基、又は、飽和脂環式炭化水素基を表す。)で表される繰り返し単位を含むランダム共重合体であるブロック鎖(B)を含有し、
上記式(II)で表される繰り返し単位の共重合割合が、上記式(I)で表される繰り返し単位を除くブロック鎖(B)中90重量%以上であることを特徴とする共重合体。
【請求項2】
3級アミノ基を有する繰り返し単位及び4級アンモニウム塩基を有する繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位が、式(III)
【化3】
(式中、Rは、水素原子又はC1〜C3アルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、C1〜C6アルキル基又はC6〜C10アリールC1〜C6アルキル基を表し、Xは、C1〜C10アルキレン基又はC1〜C10アルキレン−O−C1〜C10アルキレン基を表す。)で表される繰り返し単位であることを特徴とする請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.01〜2.00であることを特徴とする請求項1又は2に記載の共重合体。
【請求項4】
重量平均分子量(Mw)が2000〜50000であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の共重合体。
【請求項5】
ブロック鎖(A)とブロック鎖(B)の比が、重量%で10〜40対90〜60である請求項1〜4のいずれかに記載の共重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散剤として有用な新規な共重合体に関する。本願は、2010年11月8日に出願された日本国特許出願第2010−249493号に対し優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
様々な分野において、共重合体タイプの顔料分散剤が開発されている。
例えば、カラー液晶表示装置分野では、着色層形成用感放射線性組成物に含まれる顔料の分散剤として、共重合体タイプの顔料分散剤が用いられている。当該分野では、可視光の高透過率化と高コントラスト化の要望の強まりから顔料粒子は少なくとも可視光の波長以下まで微粒子化されている。
【0003】
そのような微粒子化された顔料を安定に分散するための分散剤として、様々な共重合体が提案されている。例えば、特許文献1、特許文献2では、顔料の分散安定性を向上させるために4級アンモニウム塩基を有するブロックと、4級アンモニウム塩基を有さないブロックからなる分散剤を用いることが提案されている。
【0004】
また、特許文献3では、下記式(1)で表される繰り返し単位、下記式(2)で表される繰り返し単位及び下記式(3)で表される繰り返し単位を有する共重合体を分散剤として含有する着色層形成用感放射線性組成物が提案されている。
【0005】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−182787号公報
【特許文献2】特開2004−287366号公報
【特許文献3】特開2010−134419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、分散剤の用途の多様化に伴い、分散剤として使用する共重合体には、様々な特性が求められている。カラー液晶表示装置分野で顔料分散剤として用いる際は、微粒子化された顔料の分散剤の初期の分散性及び経時の分散安定性を満たす必要がある。さらに、カラーフィルターを具備する液晶表示素子の高コントラスト化、高輝度性、高現像性等の様々な要求も満たすことが求められている。しかしながら、従来の共重合体では、十分な性能が得られないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、3級アミノ基を有する繰り返し単位及び4級アンモニウム塩基を有する繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含む重合体からなるブロック鎖と、式(I)で表される繰り返し単位と、式(II)で表される繰り返し単位を含むブロック鎖を含有することを特徴とする新規の共重合体を使用することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、
(1)3級アミノ基を有する繰り返し単位及び4級アンモニウム塩基を有する繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含むブロック鎖(A)と、
下記式(I)
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、Rは、水素原子又はC1〜C3アルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はC1〜C6アルキル基を表し、Qは、置換基としてアルキル基を有していてもよい含酸素飽和ヘテロ環基、又は、C2〜C20アルケニル基を表し、nは、0〜6のいずれかの整数を表す。)で表される繰り返し単位と、
下記式(II)
【0012】
【化3】
【0013】
(式中、Rは、水素原子又はC1〜C3アルキル基を表し、Rは、飽和脂肪族炭化水素基、又は、飽和脂環式炭化水素基を表す。)で表される繰り返し単位を含むブロック鎖(B)を含有し、
上記式(II)で表される繰り返し単位の共重合割合が、上記式(I)で表される繰り返し単位を除くブロック鎖(B)中90重量%以上であることを特徴とする共重合体や、
【0014】
(2)3級アミノ基を有する繰り返し単位及び4級アンモニウム塩基を有する繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位が、式(III)
【0015】
【化4】
【0016】
(式中、Rは、水素原子又はC1〜C3アルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、C1〜C6アルキル基又はC6〜C10アリールC1〜C6アルキル基を表し、Xは、C1〜C10アルキレン基又はC1〜C10アルキレン−O−C1〜C10アルキレン基を表す。)で表される繰り返し単位であることを特徴とする(1)に記載の共重合体や、
【0017】
(3)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.01〜2.00であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の共重合体や、
(4)重量平均分子量(Mw)が2000〜50000であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の共重合体に関する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1)共重合体
本発明の共重合体は、以下のブロック鎖(A)及びブロック鎖(B)を、それぞれ少なくとも1個含有する。
ブロック鎖(A):3級アミノ基を有する繰り返し単位及び4級アンモニウム塩基を有する繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含む。
ブロック鎖(B):式(I)で表される繰り返し単位と、式(II)で表される繰り返し単位を含む。
また、本発明の共重合体は、上記ブロック鎖(A)及びブロック鎖(B)以外に他のブロック鎖を含有していてもよい。
【0019】
1)ブロック鎖(A)
ブロック鎖(A)において、3級アミノ基を有する繰り返し単位及び4級アンモニウム塩基を有する繰り返し単位とは、繰り返し単位の側鎖に上記カチオン性官能基を有しているものであれば、特に制限されない。
具体的には、ブロック鎖(A)は、3級アミノ基を有する繰り返し単位、又は4級アンモニウム塩基を有する繰り返し単位の1種のみが単独重合したもの、3級アミノ基を有する繰り返し単位又は4級アンモニウム塩基を有する繰り返し単位の2種以上が共重合したもの、3級アミノ基を有する繰り返し単位の少なくとも1種及び4級アンモニウム塩基を有する繰り返し単位の少なくとも1種が共重合したもの、及びこれらと他の共重合しうるモノマー由来の繰り返し単位とが共重合したものを包含する。共重合は、ランダム、交互、ブロックなどを包含する。
【0020】
(3級アミノ基を有する繰り返し単位)
上記3級アミノ基を有する繰り返し単位としては、3級アミノ基を有する限り特に制限はないが、例えば、下記一般式(IV)で表される繰り返し単位が例示される。
【0021】
【化5】
【0022】
式(IV)中、R、R10、R11は、それぞれ独立して、水素原子又はC1〜C3アルキル基である。Xは、C1〜C10アルキレン基、−COOR14−、−CONHR14−、−OCOR14−及び−R15−OCO−R14−からなる群より選ばれる基である(ここでR14、R15は、それぞれ独立して、C1〜C10アルキレン基又はC1〜C10アルキレン−O−C1〜C10アルキレン基である)。R12、R13は、それぞれ独立して、C1〜C6アルキル基又はC6〜C10アリールC1〜C6アルキル基である。
【0023】
このうち、好ましくは、次式(III)で表される繰り返し単位である。
【0024】
【化6】
【0025】
式(III)中、Rは、水素原子又はC1〜C3アルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、C1〜C6アルキル基又はC6〜C10アリールC1〜C6アルキル基を表し、Xは、C1〜C10アルキレン基又はC1〜C10アルキレン−O−C1〜C10アルキレン基を表す。
【0026】
ここで、C1〜C3アルキル基又はC1〜C6アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等が例示される。
C1〜C10アルキレン基としては、メチレン鎖、エチレン鎖、プロピレン鎖、メチルエチレン鎖、ブチレン鎖、1,2−ジメチルエチレン鎖、ペンチレン鎖、1−メチルブチレン鎖、2−メチルブチレン鎖又はヘキシレン鎖等が例示される。
C6〜C10アリールC1〜C6アルキル基としては、ベンジル、フェネチル、3−フェニル−n−プロピル、1−フェニル−n−へキシル、ナフタレン−1−イルメチル、ナフタレン−2−イルエチル、1−ナフタレン−2−イル−n−プロピル、インデン−1−イルメチル等が例示される。
【0027】
式(IV)又は式(III)で表される繰り返し単位の原料となるモノマーとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート等が例示される。
【0028】
(4級アンモニウム塩基を有する繰り返し単位)
上記4級アンモニウム塩基を有する繰り返し単位としては、4級アンモニウム塩基を有する限り、特に制限はないが、例えば、下記一般式(V)で表される繰り返し単位が例示される。
【0029】
【化7】
【0030】
式(V)中、R21、R22、R23は、それぞれ独立して、水素原子又はC1〜C3アルキル基である。Xは、C1〜C10アルキレン基、−COOR27−、−CONHR27−、−OCOR27−及び−R28−OCO−R27−からなる群より選ばれる基である(ここでR27、R28は、それぞれ独立して、C1〜C10アルキレン基又はC1〜C10アルキレン−O−C1〜C10アルキレン基である)。R24、R25、R26は、それぞれ独立して、C1〜C6のアルキル基又はC6〜C10アリールC1〜C6アルキル基である。Zはハロゲン化物イオン、ハロゲン化アルキルイオン、アルキルカルボキシレートイオン、ニトロキシドイオン、アルキルスルフェートイオン、スルホネートイオン、ホスフェートイオンまたはアルキルフォスフェートイオン等の対イオンを表す。
【0031】
ここで、C1〜C3アルキル基、C1〜C6のアルキル基、C1〜C10アルキレン基、及び、C6〜C10アリールC1〜C6アルキル基は、上記3級アミノ基を有する繰り返し単位の式(IV)におけるものと同様のものを例示できる。
【0032】
このうち、好ましくは、式(VI)で表される繰り返し単位である。
【0033】
【化8】
【0034】
式(VI)中、R29は、水素原子又はC1〜C3アルキル基である。Xは、C1〜C10アルキレン基又はC1〜C10アルキレン−O−C1〜C10アルキレン基を表す。R30、R31、R32は、それぞれ独立して、C1〜C6のアルキル基又はC6〜C10アリールC1〜C6アルキル基である。Z1−は対イオンを表す。
【0035】
ここで、C1〜C3アルキル基、C1〜C6のアルキル基、C1〜C10アルキレン基、及び、C6〜C10アリールC1〜C6アルキル基は、上記3級アミノ基を有する繰り返し単位の式(III)におけるものと同様のものを例示できる。
【0036】
1−としては、上記式(V)中のZに置けるものと同様のものを例示できる。
【0037】
式(V)又は式(VI)で表される繰り返し単位の原料となるモノマーとしては、(メタ)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムフロリド、(メタ)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムブロミド、(メタ)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムヨージド、(メタ)アクリロイロキシプロピルトリメチルアンモニウムフロリド、(メタ)アクリロイロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイロキシプロピルトリメチルアンモニウムブロミド、(メタ)アクリロイロキシプロピルトリメチルアンモニウムヨージド、(メタ)アクリロイロキシブチルトリメチルアンモニウムフロリド、(メタ)アクリロイロキシブチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイロキシブチルトリメチルアンモニウムブロミド、(メタ)アクリロイロキシブチルトリメチルアンモニウムヨージド等が例示される。
【0038】
(他の含有しうる繰り返し単位)
ブロック鎖(A)中の他の含有しうる繰り返し単位としては、(メタ)アクリル酸系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、共役ジエン系モノマー等由来の繰り返し単位が例示される。
【0039】
上記繰り返し単位の原料となる(メタ)アクリル酸系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、共役ジエン系モノマーとしては以下のものが例示される。
(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸1−エチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸エステル化合物;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(エチレングリコールの単位数は2〜100)(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等を例示することができ、これらは1種単独で、あるいは2種以上混合して、用いることができる。
【0040】
芳香族ビニル系モノマーとしては、スチレン;o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブトキシスチレン、m−t−ブトキシスチレン、p−(1−エトキシエトキシ)スチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルアニリン、ビニル安息香酸等のスチレン誘導体;、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルキノリン、4−ビニルキノリン、2−ビニルチオフェン、4−ビニルチオフェン等のヘテロアリール化合物;ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等を挙げることができ、これらは1種単独で、あるいは2種以上混合して、用いることができる。
【0041】
共役ジエン系モノマーとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,3−シクロオクタジエン、1,3−トリシクロデカジエン、ミルセン、クロロプレン等を挙げることができ、これらは1種単独で、あるいは2種以上混合して、用いることができる。
【0042】
2)ブロック鎖(B)
ブロック鎖(B)は、式(I)で表される繰り返し単位の少なくとも1種と、式(II)で表される繰り返し単位の少なくとも1種を含有する。
式(I)で表される繰り返し単位の少なくとも1種と、式(II)で表される繰り返し単位の少なくとも1種の重量%比(式(I)で表される繰り返し単位と、式(II)で表される繰り返し単位の総重量を100としたときの、式(I)で表される繰り返し単位の重量%と、式(II)で表される繰り返し単位の重量%の比)は、特に制限はないが、好ましくは5〜50対95〜50、より好ましくは7〜45対93〜55、さらに好ましくは10〜40対90〜60、特に好ましくは15〜35対85〜65である。
式(II)で表される繰り返し単位の少なくとも1種の共重合割合は、式(I)で表される繰り返し単位を除くブロック鎖(B)中90重量%以上、好ましくは、95重量%〜100重量%である。
また、ブロック鎖(B)は、ランダム、交互、ブロックなどを包含する。
【0043】
(式(I)で表される繰り返し単位)
ブロック鎖(B)は、次式(I)で表される繰り返し単位の少なくとも1種を含有する。
【0044】
【化9】
【0045】
式(I)中、Rは、水素原子又はC1〜C3アルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はC1〜C6アルキル基を表し、Qは、置換基を有していてもよい含酸素飽和ヘテロ環基、又は、C2〜C20アルケニル基を表し、nは、0〜6の整数を表す。
【0046】
本発明において、RのC1〜C3アルキル基、C1〜C6アルキル基としては、上記3級アミノ基を有する繰り返し単位の式(III)におけるものと同様のものを例示できる。
本発明において、Qの含酸素飽和ヘテロ環基は、環上の任意の炭素原子に置換基を有していてもよい。含酸素飽和へテロ環基とは、酸素原子を少なくとも1個含み、更にN,S及びOからなるヘテロ原子を1つ含んでいてもよい3〜8員飽和ヘテロ環を意味し、好ましくは、3〜6員飽和へテロ環である。
ここで、含酸素飽和へテロ環基としては、オキシラニル基、オキセタニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、モルホルニル基及びチオモルホルニル基等を例示することができる。これらのうち、好ましくは、オキシラニル基、オキセタニル基、テトラヒドロフラニル基及びテトラヒドロピラニル基等の架橋性官能基である。
【0047】
含酸素飽和ヘテロ環基の置換基とは、C1〜6アルキル基である。C1〜C6アルキル基としては、上記3級アミノ基を有する繰り返し単位の式(III)におけるものと同様のものを例示できる。
【0048】
QのC2〜C20アルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ぺンタデセニル基、エイコセニル基、トリコセニル基等が挙げられる。これらのうち好ましくは、C2〜C6アルケニル基である。
【0049】
式(I)で表される繰り返し単位の原料となるモノマーとしては、(メタ)アクリル酸オキセタン−2−イルメチル、(メタ)アクリル酸オキセタン−3−イルメチル、(メタ)アクリル酸(2−メチルオキセタン−2−イル)メチル、(メタ)アクリル酸(3−メチルオキセタン−3−イル)メチル、(メタ)アクリル酸(2−エチルオキセタン−2−イル)メチル、(メタ)アクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル、(メタ)アクリル酸(3−プロピルオキセタン−3−イル)メチル、(メタ)アクリル酸2−(オキセタン−2−イル)エチル、(メタ)アクリル酸2−(オキセタン−3−イル)エチル、(メタ)アクリル酸(テトラヒドロフラン−2−イル)メチル、(メタ)アクリル酸(テトラヒドロフラン−3−イル)メチル、(メタ)アクリル酸(2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル)メチル、(メタ)アクリル酸(3−メチルテトラヒドロフラン−3−イル)メチル、(メタ)アクリル酸(5−メチルテトラヒドロフラン−2−イル)メチル、(メタ)アクリル酸(4−メチルテトラヒドロフラン−2−イル)メチル、(メタ)アクリル酸(3−メチルテトラヒドロフラン−2−イル)メチル、(メタ)アクリル酸(2−メチルテトラヒドロフラン−3−イル)メチル、(メタ)アクリル酸(5−メチルテトラヒドロフラン−3−イル)メチル、(メタ)アクリル酸(4−メチルテトラヒドロフラン−3−イル)メチル、(メタ)アクリル酸2−(テトラヒドロフラン−3−イル)エチル、(メタ)アクリル酸オキシラン−2−イルメチル、(メタ)アクリル酸(3−メチルオキシラン−2−イル)メチル、(メタ)アクリル酸(2−メチルオキシラン−2−イル)メチル等や、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸2−メチルアリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸(E)−ブテン−2−イル、(メタ)アクリル酸(Z)−ブテン−2−イル、(メタ)アクリル酸3−ブテニル、(メタ)アクリル酸3−メチル−3−ブテニル、(メタ)アクリル酸(E)−ペンテン−3−イル、(メタ)アクリル酸(Z)−ペンテン−3−イル、(メタ)アクリル酸3−メチル−2−ブテニル等を例示することができる。
【0050】
(式(II)で表される繰り返し単位)
ブロック鎖(B)は、さらに次式(II)で表される繰り返し単位の少なくとも1種を含有する。
【0051】
【化10】
【0052】
式(II)中、Rは、水素原子又はC1〜C3アルキル基を表し、Rは、飽和脂肪族炭化水素基又は飽和脂環式炭化水素基を表す。
【0053】
本発明において、RのC1〜C3アルキル基としては、上記3級アミノ基を有する繰り返し単位の式(III)におけるものと同様のものを例示できる。
本発明において、Rの飽和脂肪族炭化水素基としては、C1〜C20のアルキル基が好ましい。
上記C1〜C20のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、2−メチルブチル、n−へキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル、エチルブチル、n−ヘプチル、2−メチルへキシル、n−オクチル、イソオクチル、tert−オクチル、2−エチルへキシル、3−メチルへプチル、n−ノニル、イソノニル、1−メチルオクチル、エチルへプチル、n−デシル、1−メチルノニル、n−ウンデシル、1,1−ジメチルノニル、n−ドデシル、n−テトラデシル、n−ヘプタデシルおよびn−オクタデシル基等が挙げられる。これらのうち、特に好ましくはC1〜C6のアルキル基である。
【0054】
また、本発明において、飽和脂環式炭化水素基は、基内のいずれかの部分に単環又は多環の環状構造を有する、飽和炭化水素基を意味し、C3〜C20のシクロアルキル基、C4〜C20のアルキル置換シクロアルキル基、C4〜C20のシクロアルキルアルキル基、C7〜C20の飽和橋かけ環炭化水素基等を包含する。
上記C3〜C20のシクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロへキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシル、シクロテトラデシル、シクロオクタデシル等が挙げられる。
上記C4〜C20のアルキル置換シクロアルキル基としては、1−メチルシクロプロピル、2−エチルシクロプロピル、3−メチルシクロへキシル、4−メチルシクロへキシル、4−エチルシクロへキシル、3−エチルシクロヘキシル、2−メチルシクロオクチル、2−メチルシクロデシル、3−メチルシクロテトラデシル、3−メチルシクロオクタデシル等が挙げられる。
上記C4〜C20のシクロアルキルアルキル基としては、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロへキシルメチル、シクロヘプチルエチル、シクロオクチルエチル、シクロデシルメチル、シクロテトラデシルメチル、シクロオクタデシルメチル等が挙げられる。
上記C7〜C20の飽和橋かけ環炭化水素基としては、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、アダマンチル基、ジシクロペンテニル基、イソボルニル基等が挙げられる。
【0055】
(他の含有しうる繰り返し単位)
ブロック鎖(B)中の他の含有しうる繰り返し単位としては、芳香族ビニル系モノマー、共役ジエン系モノマー等由来の繰り返し単位が例示される。
芳香族ビニル系モノマーとしては、スチレン;o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブトキシスチレン、m−t−ブトキシスチレン、p−(1−エトキシエトキシ)スチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルアニリン、ビニル安息香酸等のスチレン誘導体;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルキノリン、4−ビニルキノリン、2−ビニルチオフェン、4−ビニルチオフェン等のヘテロアリール化合物;ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等を挙げることができ、これらは1種単独で、あるいは2種以上混合して、用いることができる。
【0056】
共役ジエン系モノマーとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,3−シクロオクタジエン、1,3−トリシクロデカジエン、ミルセン、クロロプレン等を挙げることができ、これらは1種単独で、あるいは2種以上混合して、用いることができる。
【0057】
3)その他の事項
(共重合体中のブロック鎖(A)、ブロック鎖(B)以外の含有しうるブロック鎖)
本発明の共重合体は、ブロック鎖(A)及び(B)以外に、他のブロック鎖を有していてもよい。
そのような他のブロック鎖としては、(メタ)アクリル酸系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、共役ジエン系モノマー等由来の繰り返し単位を含有するブロック鎖が挙げられる。これらのブロック鎖としては、単独重合したブロック鎖、ランダム共重合したブロック鎖、交互共重合したブロック鎖等が例示される。
(メタ)アクリル酸系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、共役ジエン系モノマー等については、上記と同様のものが例示される。
【0058】
(共重合体中のブロック鎖(A)とブロック鎖(B)の比及び分子量等の物性)
本発明の共重合体中のブロック鎖(A)とブロック鎖(B)の比は、特に制限はないが、重量%比で、10〜40対90〜60、好ましくは、15〜35対85〜65である。また、共重合体中の酸性基を有する繰り返し単位の含有割合は、0.5〜20重量%、好ましくは、1〜15重量%である。
また、GPCを用いて測定した、重量平均分子量は、1,000〜200,000であり、分散剤としては2,000〜100,000が好ましく、より好ましくは2,000〜50,000である。GPCを用いて測定した、重量平均分子量と数平均分子量との比は、1.0〜2.5であり、分散剤としては特に、1.0〜2.0が好ましい。
【0059】
(2)共重合体の製造法
本発明のブロック共重合体の製造方法は、特に制限されず、公知の方法により製造することができるが、たとえば、モノマーをリビング重合で重合させ、ブロック共重合体とすることができる。リビング重合としてはリビングラジカル重合、リビングアニオン重合が挙げられるが、このうちリビングアニオン重合がさらに好ましい。
ブロック共重合体とするには、ブロック鎖(A)又は(B)のモノマーを重合した後、連続的に別のブロックのモノマーを重合させてブロック共重合体化してもよいし、ブロック鎖(A)とブロック鎖(B)の各モノマーを別々に反応させてブロックを作製した後、各ブロックを結合してもよい。リビングアニオン重合は、厳密に組成や分子量をコントロールすることができる点から好ましい。
【0060】
リビングアニオン重合でブロック共重合体を製造する場合には、例えば、添加剤および重合開始剤を付加した溶媒に、所望のモノマーを滴下して重合することができる。この際、所望の配列のブロックポリマーとするためには、各ブロックのモノマーを、所望の配列になるよう順次滴下して、反応させる。
あるブロックのモノマーを重合し、次のブロックのモノマーを重合するには、先のブロックの重合反応の終了後、次のブロックのモノマーの滴下を開始する。重合反応の進行は、モノマーの残量をガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフフィーで検出することによって確認できる。また、先のブロックのモノマー滴下終了後、モノマーや溶媒の種類により異なるが、1分から1時間攪拌後、次のブロックのモノマーの滴下を開始することもできる。
各ブロックに複数種類のモノマーが含まれる場合には、それらを別々に滴下してもよいし、同時に滴下することもできる。
【0061】
リビングアニオン重合で4級アンモニウム塩基を有するモノマーを重合するのは一般的に困難である。したがって、リビングアニオン重合で4級アンモニウム塩基を有する繰り返し単位を含む重合体を製造する場合は、3級アミノ基を有する繰り返し単位の原料となるモノマーを重合した後に、該3級アミノ基を公知の方法で、4級化することができる。4級化剤としては、塩化ベンジル、臭化ベンジル、ヨウ化ベンジル等や、塩化メチル、塩化エチル、臭化メチル、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ−n−プロピル等の一般的なアルキル化剤を挙げることができる。
【0062】
リビングラジカル重合で製造する場合には、リビングアニオン重合と同様に反応を行うこともできるし、あるブロックのモノマーを重合後、次のモノマーを重合する前に、一旦重合体を精製して、先の反応のモノマーの残を除去した後に、次のモノマーを重合することもできる。各ブロックのモノマー同士が互いに混入しないことが好ましい場合には、重合体の精製を行うことが好ましい。
モノマーの重合に使用するアニオン重合開始剤としては、求核剤であって、アニオン重合性モノマーの重合を開始させる働きを有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、アルカリ金属、有機アルカリ金属化合物等を使用することができる。
【0063】
アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等が挙げられる。有機アルカリ金属化合物としては、上記アルカリ金属のアルキル化物、アリル化物、アリール化物等や、リチウムアミド化合物等が挙げられる。具体的には、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、エチルナトリウム、リチウムビフェニル、リチウムナフタレン、リチウムトリフェニル、ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン、α−メチルスチレンナトリウムジアニオン、1,1−ジフェニルヘキシルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム、1,4−ジリチオ−2−ブテン、1,6−ジリチオヘキサン、ポリスチリルリチウム、クミルカリウム、クミルセシウム、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムジヘプチルアミド、リチウムジヘキシルアミド、リチウムジオクチルアミド等を使用できる。これらのアニオン重合開始剤は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
アニオン重合開始剤の使用量は、用いるアニオン重合性モノマー全体に対して、通常0.0001〜0.2当量、好ましくは0.0005〜0.1当量である。この範囲のアニオン重合開始剤を用いることによって、目的とする重合体を収率よく製造することができる。
本発明における重合温度は、移動反応や停止反応などの副反応が起こらず、モノマーが消費され重合が完結する温度範囲であれば特に制限されないが、−100℃以上溶媒沸点以下の温度範囲で行なわれることが好ましい。また、モノマーの重合溶媒に対する濃度は、特に制限されないが、通常、1〜40重量%であり、2〜15重量%であることが好ましい。
【0065】
本発明の製造方法に用いられる重合溶媒は、重合反応に関与せず、かつ重合体と相溶性のある溶媒であれば特に制限されず、具体的には、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、トリオキサンなどのエーテル系化合物、テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどの第3級アミンなどの極性溶媒や、ヘキサンやトルエンなどの脂肪族、芳香族又は脂環式炭化水素化合物などの非極性溶媒又は低極性溶媒を例示することができる。これらの溶媒は、1種単独で、又は2種以上の混合溶媒として用いることができる。本発明の製造方法においては、非極性溶媒又は低極性溶媒を極性溶媒と併用した場合でも、精度よく重合をコントロールすることができ、例えば、非極性溶媒又は低極性溶媒は、溶媒全体に対して、5vol%以上用いることができ、20vol%以上用いてもよく、50vol%以上用いてもよい。
本発明においては、必要に応じて、ジエチル亜鉛等のジアルキル亜鉛、ジブチルマグネシウム等のジアルキルマグネシウム、トリエチルアルミニウム等の有機金属を、重合安定化剤、モノマーや溶媒の精製剤として使用することもできる。
【0066】
本発明においては、必要に応じてアルカリ金属塩、またはアルカリ土類金属塩などの添加剤を、重合開始時又は重合中に添加することができる。このような添加剤として、具体的には、ナトリウム、カリウム、バリウム、マグネシウムの硫酸塩、硝酸塩、ホウ酸塩などの鉱酸塩やハロゲン化物を例示することができ、より具体的には、リチウムやバリウムの塩化物、臭化物、ヨウ化物や、ホウ酸リチウム、硝酸マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどを挙げることができる。これらの中でも、リチウムのハロゲン化物、例えば塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、フッ化リチウムが好ましく、塩化リチウムが特に好ましい。
【0067】
(3)本発明の共重合体の用途
本発明の共重合体は、塗料、印刷インク、インクジェット用インク、カラーフィルター用顔料分散物等における各種の有機顔料の分散を始め、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属ケイ酸塩、金属窒化物等の無機粒子の分散やカーボンナノチューブの分散に有用である。特に、カラーフィルター用顔料分散物における顔料分散にきわめて有用である。
【0068】
[実施例]
以下実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0069】
1000mLフラスコにテトラヒドロフラン(以下、THFと略すことがある)518.26g、塩化リチウム(4.05重量%濃度THF溶液)42.09g、ジイソプロピルアミン2.06gを加え、−60℃まで冷却した。その後、n−ブチルリチウム8.50g(15.36重量%濃度ヘキサン溶液)を加え、15分間熟成した。
次に、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(以下、DMMAと略すことがある)44.71gを滴下し、滴下後20分反応を継続した。そして、ガスクロマトグラフィー(以下、GCと略す)を測定し、モノマーの消失を確認した。反応液の一部をサンプリングし、ゲルパーミィエイションクロマトグラフィー(以下、GPCと略す)(移動相THF、PMMAスタンダード)で分析したところ、分子量(Mw)は2860、分子量分布(Mw/Mn)は1.15であった。
次いで、メタクリル酸メチル(以下、MMAと略すことがある)28.05g、メタクリル酸n−ブチル(以下、nBMAと略すことがある)39.24g、メタクリル酸3−エチル−3−オキセタニル(以下、OXMAと略すことがある)28.03gの混合液を60分かけて滴下し、滴下後30分反応を継続した。GCを測定し、モノマーの消失を確認した後、メタノール3.22gを加えて反応を停止した。
得られた共重合体をGPC(移動相DMF、PMMAスタンダード)により分析したところ、分子量(Mw)は9410、分子量分布(Mw/Mn)は1.17、組成比がDMMA−[MMA/nBMA/OXMA]=32−[20/28/20](重量%)の共重合体であることを確認した。
反応液を酢酸エチルで希釈し、三回水洗後、溶媒を留去した。酢酸2−メトキシ−1−メチルエチル(以下、PGMEAと略す)に溶媒置換後、1−エトキシ−2−プロパノール(以下、PGMEと略す)を加え、PGMEA/PGME=7/3(w/w)約35重量%溶液になるように調整した。DMMAに対して、0.8当量の塩化ベンジル(以下、BzClと略すことがある)を加え、70℃で7時間反応させることにより、四級化を行った。
【実施例2】
【0070】
1000mLフラスコにTHF535.69g、塩化リチウム(4.05重量%濃度THF溶液)44.41g、ジイソプロピルアミン2.10gを加え、−60℃まで冷却した。その後、n−ブチルリチウム8.53g(15.36重量%濃度ヘキサン溶液)を加え、15分間熟成した。
次に、DMMA45.57gを滴下し、滴下後20分反応を継続した。そして、GCを測定し、モノマーの消失を確認した。反応液の一部をサンプリングし、GPC(移動相THF、PMMAスタンダード)で分析したところ、分子量(Mw)は3220、分子量分布(Mw/Mn)は1.15であった。
次いで、MMA23.83g、nBMA39.32g、OXMA25.24g、メタクリル酸1−エトキシエチル(以下、EEMAと略すことがある)12.74gの混合液を60分かけて滴下し、滴下後30分反応を継続した。GCを測定し、モノマーの消失を確認した後、メタノール3.28gを加えて反応を停止した。
得られた共重合体をGPC(移動相THF、PMMAスタンダード)により分析したところ、分子量(Mw)は10720、分子量分布(Mw/Mn)は1.11、組成比がDMMA−[MMA/nBMA/OXMA/EEMA]=31−[16/27/17/9](重量%)の共重合体であることを確認した。
反応液を酢酸エチルで希釈し、三回水洗後、溶媒を留去した。PGMEAに溶媒置換後、ポリマーと同量の水を加え、115℃で7時間熟成させた。得られた共重合体をGPC(移動相DMF、PMMAスタンダード)により分析し、分子量(Mw)は6510、分子量分布(Mw/Mn)が1.46、組成比がDMMA−[MMA/nBMA/OXMA/MA]=32−[17/28/18/5](重量%)の共重合体であることを確認した。ここで、MAは、メタクリル酸を意味し、EEMAが脱保護されて得られたものである。
次にPGMEを加え、PGMEA/PGME=7/3(w/w)約35重量%溶液になるように調整した。DMMAに対して、0.8当量のBzClを加え、70℃で7時間反応させることにより、四級化を行った。
【実施例3】
【0071】
1000mLフラスコにTHF521.71g、塩化リチウム(4.05重量%濃度THF溶液)46.79g、ジイソプロピルアミン2.14gを加え、−60℃まで冷却した。その後、n−ブチルリチウム8.20g(15.36重量%濃度ヘキサン溶液)を加え、15分間熟成した。
次に、DMMA44.82gを滴下し、滴下後20分反応を継続した。そして、GCを測定し、モノマーの消失を確認した。反応液の一部をサンプリングし、GPC(移動相THF、PMMAスタンダード)で分析したところ、分子量(Mw)は3490、分子量分布(Mw/Mn)は1.09であった。
次いで、MMA28.50g、nBMA39.60g、メタクリル酸アリル(以下、AMAと略すことがある)28.48gの混合液を60分かけて滴下し、滴下後30分反応を継続した。GCを測定し、モノマーの消失を確認した後、メタノール3.38gを加えて反応を停止した。
得られた共重合体をGPC(移動相DMF、PMMAスタンダード)により分析したところ、分子量(Mw)は11320、分子量分布(Mw/Mn)は1.16、組成比がDMMA−[MMA/nBMA/AMA]=32−[20/28/20](重量%)の共重合体であることを確認した。
反応液を酢酸エチルで希釈し、三回水洗後、溶媒を留去した。PGMEAに溶媒置換後、PGMEを加え、PGMEA/PGME=7/3(w/w)約35重量%溶液になるように調整した。DMMAに対して、0.8当量のBzClを加え、70℃で7時間反応させることにより、四級化を行った。
【実施例4】
【0072】
1000mLフラスコにTHF519.56g、塩化リチウム(4.05重量%濃度THF溶液)48.46g、ジイソプロピルアミン2.11gを加え、−60℃まで冷却した。その後、n−ブチルリチウム8.47g(15.36重量%濃度ヘキサン溶液)を加え、15分間熟成した。
次に、DMMA45.12gを滴下し、滴下後20分反応を継続した。そして、GCを測定し、モノマーの消失を確認した。反応液の一部をサンプリングし、GPC(移動相THF、PMMAスタンダード)で分析したところ、分子量(Mw)は2800、分子量分布(Mw/Mn)は1.15であった。
次いで、MMA23.86g、nBMA39.95g、AMA25.57g、EEMA12.78gの混合液を60分かけて滴下し、滴下後30分反応を継続した。GCを測定し、モノマーの消失を確認した後、メタノール3.22gを加えて反応を停止した。
得られた共重合体をGPC(移動相THF、PMMAスタンダード)により分析したところ、分子量(Mw)は10470、分子量分布(Mw/Mn)は1.12、組成比がDMMA−[MMA/nBMA/AMA/EEMA]=31−[16/27/17/9](重量%)の共重合体であることを確認した。
反応液を酢酸エチルで希釈し、三回水洗後、溶媒を留去した。PGMEAに溶媒置換後、ポリマーと同量の水を加え、115℃で7時間熟成させた。得られた共重合体をGPC(移動相DMF、PMMAスタンダード、カラムは変更)により分析し、分子量(Mw)は6340、分子量分布(Mw/Mn)が1.50、組成比がDMMA−[MMA/nBMA/AMA/MA]=32−[17/28/18/5](重量%)の共重合体であることを確認した。ここで、MAは上記と同じ意味である。
次にPGMEを加え、PGMEA/PGME=7/3(w/w)約35重量%溶液になるように調整した。DMMAに対して、0.8当量のBzClを加え、70℃で7時間反応させることにより、四級化を行った。
【実施例5】
【0073】
1000mLフラスコにTHF521.03g、塩化リチウム(3.59重量%濃度THF溶液)48.20g、ジイソプロピルアミン2.11gを加え、−60℃まで冷却した。その後、n−ブチルリチウム8.67g(15.36重量%濃度ヘキサン溶液)を加え、15分間熟成した。
次に、DMMA44.75gを滴下し、滴下後20分反応を継続した。そして、GCを測定し、モノマーの消失を確認した。反応液の一部をサンプリングし、GPC(移動相THF、PMMAスタンダード)で分析したところ、分子量(Mw)は3060、分子量分布(Mw/Mn)は1.09であった。
次いで、MMA27.80g、nBMA39.31g、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル(以下、THFMAと略すことがある)28.15gの混合液を60分かけて滴下し、滴下後30分反応を継続した。GCを測定し、モノマーの消失を確認した後、メタノール3.29gを加えて反応を停止した。
得られた共重合体をGPC(移動相DMF、PMMAスタンダード)により分析したところ、分子量(Mw)は9020、分子量分布(Mw/Mn)は1.12、組成比がDMMA−[MMA/nBMA/THFMA]=32−[20/28/20](重量%)の共重合体であることを確認した。
反応液を酢酸エチルで希釈し、三回水洗後、溶媒を留去した。PGMEAに溶媒置換後、PGMEを加え、PGMEA/PGME=7/3(w/w)約35重量%溶液になるように調整した。DMMAに対して、0.8当量のBzClを加え、70℃で7時間反応させることにより、四級化を行った。
【0074】
[比較例1]
1000mLフラスコにTHF560.41g、塩化リチウム(3.63重量%濃度THF溶液)11.32g、ジフェニルエチレン3.27gを加え、−60℃まで冷却した。その後、n−ブチルリチウム7.28g(15.36重量%濃度ヘキサン溶液)を加え、15分間熟成した。
次に、MMA33.69g、nBMA15.80g、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(PME−200 日油株式会社製)(以下、PEGMAと略すことがある)8.66g、AMA23.15gの混合液を60分かけて滴下し、滴下後20分反応を継続した。そして、GCを測定し、モノマーの消失を確認した。反応液の一部をサンプリングし、GPC(移動相DMF、PMMAスタンダード)で分析したところ、分子量(Mw)は7300、分子量分布(Mw/Mn)は1.08であった。
次いで、DMMA40.30gを滴下し、滴下後30分反応を継続した。そして、GCを測定し、モノマーの消失を確認した後、メタノール3.65gを加えて反応を停止した。
得られた共重合体をGPC(移動相DMF、PMMAスタンダード)により分析したところ、分子量(Mw)は9430、分子量分布(Mw/Mn)は1.10、組成比がDMMA−[MMA/nBMA/PEGMA/AMA]=33−[28/13/7/19](重量%)の共重合体であることを確認した。
反応液を酢酸エチルで希釈し、三回水洗後、溶媒を留去した。PGMEAに溶媒置換後、PGMEを加え、PGMEA/PGME=7/3(w/w)約35重量%溶液になるように調整した。DMMAに対して、0.8当量のBzClを加え、70℃で7時間反応させることにより、四級化を行った。
【0075】
[比較例2]
1000mLフラスコにTHF617.82g、塩化リチウム(3.63重量%濃度THF溶液)12.44g、ジフェニルエチレン3.39gを加え、−60℃まで冷却した。その後、n−ブチルリチウム7.82g(15.36重量%濃度ヘキサン溶液)を加え、15分間熟成した。
次に、MMA40.24g、nBMA18.70g、PEGMA10.17g、OXMA27.30gの混合液を60分かけて滴下し、滴下後20分反応を継続した。そして、GCを測定し、モノマーの消失を確認した。反応液の一部をサンプリングし、GPC(移動相DMF、PMMAスタンダード)で分析したところ、分子量(Mw)は5870、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。
次いで、DMMA47.38gを滴下し、滴下後30分反応を継続した。そして、GCを測定し、モノマーの消失を確認した後、メタノール3.86gを加えて反応を停止した。
得られた共重合体をGPC(移動相DMF、PMMAスタンダード)により分析したところ、分子量(Mw)は7640、分子量分布(Mw/Mn)は1.07、組成比がDMMA−[MMA/nBMA/PEGMA/OXMA]=33−[28/13/7/19](重量%)の共重合体であることを確認した。
反応液を酢酸エチルで希釈し、三回水洗後、溶媒を留去した。PGMEAに溶媒置換後、PGMEを加え、PGMEA/PGME=7/3(w/w)約35重量%溶液になるように調整した。DMMAに対して、0.8当量のBzClを加え、70℃で7時間反応させることにより、四級化を行った。
【0076】
[比較例3]
1000mLフラスコにTHF626.56g、塩化リチウム(3.63重量%濃度THF溶液)10.26g、ジフェニルエチレン3.23gを加え、−60℃まで冷却した。その後、n−ブチルリチウム6.95g(15.36重量%濃度ヘキサン溶液)を加え、10分間熟成した。
次に、MMA26.52g、nBMA62.13gの混合液を30分かけて滴下し、滴下後15分反応を継続した。そしてGCを測定し、モノマーの消失を確認した。反応液の一部をサンプリングし、GPC(移動相DMF、PMMAスタンダード)で分析したところ、分子量(Mw)は3840、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。
次に、DMMA42.19gを滴下し、滴下後30分反応を継続した。そして、GCを測定し、モノマーの消失を確認した後、メタノール3.79gを加えて反応を停止した。
得られた共重合体をGPC(移動相DMF、PMMAスタンダード)により分析したところ、分子量(Mw)は5770、分子量分布(Mw/Mn)が1.08、組成比がDMMA−[MMA/nBMA]=32−[20/48](重量%)の共重合体であることを確認した。
反応液を酢酸エチルで希釈し、三回水洗後、溶媒を留去した。PGMEAに溶媒置換後、PGMEを加え、PGMEA/PGME=7/3(w/w)約35重量%溶液になるように調整した。DMMAに対して、0.8当量のBzClを加え、70℃で7時間反応させることにより、四級化を行った。
【0077】
(顔料分散液の調製)
上記実施例1〜5及び比較例1〜3で得られた共重合体溶液を顔料分散剤として用いて、以下の顔料分散液を調製した。
顔料としてC.I.ピグメントレッド177を15質量部、顔料分散剤として上記実施例1〜5及び比較例1〜3で得られたいずれかの共重合体溶液を11.5質量部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート55質量部及びジエチレングリコールメチルエチルエーテル18.5質量部を用いて、ビーズミルにより12時間混合・分散して顔料分散液を調製した。
【0078】
その結果、実施例1〜5で得られた共重合体溶液を用いて調製された顔料分散液は、鮮やかな赤色を示し、40℃で1週間保管した後も、調製直後と変わらぬ粘度値を示した。一方、比較例1〜3で得られた共重合体を用いて調製された顔料分散液は、鮮やかな赤色を示したが、40℃で1週間保管した後、粘度値が調製直後対比で30%増加した。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の共重合体は顔料分散性に優れており、例えば、光学的カラーフィルターの製造に使用されるカラーフィルター用顔料分散剤として使用することができる。