特許第5778692号(P5778692)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778692
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】疾病抑制剤
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/08 20060101AFI20150827BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20150827BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20150827BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20150827BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20150827BHJP
   C07K 14/78 20060101ALN20150827BHJP
【FI】
   C07K7/08ZNA
   A61K37/02
   A61P19/02
   A61P19/10
   A61P17/02
   !C07K14/78
【請求項の数】2
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2012-548772(P2012-548772)
(86)(22)【出願日】2011年12月12日
(86)【国際出願番号】JP2011078645
(87)【国際公開番号】WO2012081531
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2013年5月24日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2011/065186
(32)【優先日】2011年7月1日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-277932(P2010-277932)
(32)【優先日】2010年12月14日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-6035(P2011-6035)
(32)【優先日】2011年1月14日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 平成22年7月21日 京王プラザホテルにおいて開催された第28回日本骨代謝学会学術集会におけるプログラム抄録集第216頁に発表、及び当該学術集会においてOHPを用いて発表
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190943
【氏名又は名称】新田ゼラチン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉原 富人
(72)【発明者】
【氏名】井上 直樹
(72)【発明者】
【氏名】真野 博
【審査官】 鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−106003(JP,A)
【文献】 特開2009−120512(JP,A)
【文献】 関口祐介、他,合成コラーゲンオリゴペプチド(POG)5はマウス破骨細胞の形成を抑制する,第28回日本骨代謝学会学術集会プログラム抄録集,2010年 7月,P.216
【文献】 KIM, S.-K. et al,Purification and Characterization of Antioxidative Peptides from Bovine Skin,J. Biochem. Mol. Biol.,2001年,Vol. 34, No. 3,P.219-224
【文献】 TANIHARA, M. et al,The biodegradability of poly(Pro-Hyp-Gly) synthetic polypeptide and the promotion of a dermal wound,J. Biomed. Mater. Res. A,2008年,Vol.85, No.1,P.133-139
【文献】 FABIEN-SOULE, V.、 塩谷敏明,コラーゲンペプチドPeptan(TM)は骨の健康のための理想的なタンパク質,Food Style 21,2010年10月 1日,Vol.14, No.10,P.61-64
【文献】 杉原富人、他,コラーゲン加水分解物(02JoBP)摂取がマウス硬組織への与える影響,アミノ酸研究,2010年 2月,Vol.3, No.1,P.112-113
【文献】 中谷祥恵、他,コラーゲンペプチド摂取がマウス関節軟骨に与える影響,日本栄養・食糧学会大会講演要旨集,2007年,Vol.61st,P.125
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 7/06−7/08
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Glu−Gly−Asp−Gly−His−Leu−Gly−Lys−Pro−Gly−Arg−Hyp−Gly−GluもしくはGlu−Lys−Asp−Gly−His−Pro−Gly−Lys−Pro−Gly−Arg−Hyp−Gly−Gluで表されるアミノ酸配列からなるペプチドまたはその薬学上許容される塩。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチドまたはその薬学上許容される塩を必須成分とする、変形性関節症抑制剤、骨粗しょう症抑制剤もしくは褥創抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾病抑制剤に関する。詳しくは、特定の構造を有するペプチド分子を必須成分とし、骨粗しょう症、変形性関節炎、褥瘡などの抑制(本発明において、「抑制」という用語は、症状の発症を抑制する「予防」としての意味と、発症した症状を抑制する「治療」としての意味の双方を含む。)のための有効成分として働くとともに、miRNAやsiRNAなどの核酸化合物を有効成分とする各種疾病の抑制において有効な担体成分として用いられる疾病抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
骨粗しょう症は、骨の絶対量の減少を生じているが骨の質的な変化を伴わない状態をいう。骨は絶えず吸収、形成されているものであり、吸収率と形成率に差を生じ、骨形成が負の平衡となれば骨粗しょうが起こる。骨の吸収は破骨細胞によって行われ、破骨細胞の分化および活性化が顕著であるほど、骨の吸収率は高くなる。一方、骨の形成は骨芽細胞によって行われ、骨芽細胞の分化および活性化が顕著であるほど、骨の形成率は高くなる。
【0003】
変形性関節炎は、関節に慢性の退行性変化および増殖性変化が同時に起こり、関節の形態が変化する疾患である。関節軟骨が次第に磨耗または欠損し、骨が露出するようになる。関節軟骨は血管系が存在せず、特に関節摺動部軟骨細胞および肋軟骨組織の修復・再生は、血管が存在する骨組織と比較し困難である。特に、関節軟骨を支える骨組織が疎となると(骨粗しょう症)、関節部の機能に支障をきたし、結果として、変形性関節炎(Osteoarthritis)を発症する。
【0004】
褥瘡は、長時間臥床している時に、骨の突出した部位の皮膚および軟部組織が、骨と病床との間で長時間の圧迫のために循環障害を起こし、壊死となった状態をいう。
【0005】
上記のような症状に対するペプチドの効能としては、変形性関節炎に対する効能が報告されており、例えば、有効成分としてコラーゲンペプチド、グルコサミン塩を含み、pHが2〜5である関節強化飲料(特開2002−125638号公報:特許文献1)、コラゲナーゼ酵素を用いてコラーゲン成分またはゼラチン成分を分解することにより得られる、アミノ酸配列がGly−X−Yのトリペプチドを有効成分とする慢性関節リウマチまたは変形関節症の改善剤(特開2002−255847号公報:特許文献2)、コラーゲンおよびコラーゲンペプチドから選ばれた少なくとも1種と、アミノ糖と、ムコ多糖類およびウロン酸から選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする経口関節障害治療剤または機能性食品(特開2003−48850号公報:特許文献3)などが知られている。
【0006】
しかし、上記従来の技術は、変形性関節炎の予防ないし治療に、コラーゲンや、様々なペプチド分子の混合物であるコラーゲンペプチド、あるいは、特定のトリペプチドが有効であることを示すのみであり、変形性関節炎のみならず、骨粗しょう症、褥瘡なども含めた広い意味での疾病を予防ないし治療するのに有効なペプチド構造は不明である。
【0007】
また、近年、miRNA(micro RNA)やsiRNA(small interfering RNA)などの核酸化合物を用いたRNA医薬が注目されている。
【0008】
しかし、RNA医薬においては、これを生体内の標的に選択的に作用させるドラッグデリバリーシステム(DDS)が十分に確立されておらず、特に、経口投与型の送達担体として有効なものがなかった。RNA医薬においては、また、標的以外の正常な細胞や組織が損傷を被る問題があるほか、その伝達効率の低さから、RNA医薬を必要以上に多量に投与しなければならないなどの問題もあるため、これらの問題を解消する意味でのドラッグデリバリーシステム(DDS)の改善が求められていた。
【0009】
上記問題を解決するため、これまでに多数のDDS技術が提案されてきたが、未だ、経口投与型の送達担体として有効なものは存在せず、また、十分なる実用性を備えたDDS技術は知られていない。これら従来のDDS技術とその問題点の例を挙げれば、以下のとおりである。
【0010】
ポリビニルアルコールとカチオン性高分子を溶解させた水溶液に、少なくともアニオン性薬物(核酸化合物など)の溶液と生体適合性高分子を有機溶媒に溶解させた溶液との混合液を加えて、前記アニオン性薬物が前記生体適合性高分子中に封入されたアニオン性薬物封入ナノ粒子の懸濁液を生成するナノ粒子形成工程と、前記アニオン性薬物封入ナノ粒子の懸濁液から有機溶媒を留去する工程と、前記アニオン性薬物封入ナノ粒子の外層にさらにアニオン性薬物を封入する工程とを有する、アニオン性薬物封入ナノ粒子の製造技術(特開2007−99631号公報:特許文献4)、親水性高分子とsiRNAが共有結合で連結されたsiRNA−親水性高分子接合体(特表2009−504179号公報:特許文献5)、生物的バリヤーを通る輸送のための少なくとも1つのシグナル物質と、少なくとも1つの作用物質を貯蔵し、その際、担体、シグナル物質および作用物質が互いに共有結合を有しないことを特徴とする、ポリマー担体をベースとする球状のドラッグデリバリーシステム(特表2009−512722号公報:特許文献6)、クロストリジウム属菌由来の赤血球凝集活性蛋白を核酸の細胞内導入キャリアーとして使用する方法(特開2009−81997号公報:特許文献7)などが知られているが、いずれも、腸管吸収されないために経口投与しても十分な効果が得られず、また、局所投与としたとしても、標的細胞内に容易に移行しないため、担体それ自身の標的細胞までの移行が不十分であった。さらに、有効成分としての核酸化合物との結合が不十分であり、担体としての機能も十分でなかった。その結果、核酸化合物を効率よく特定の標的細胞内に送達できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−125638号公報
【特許文献2】特開2002−255847号公報
【特許文献3】特開2003−48850号公報
【特許文献4】特開2007−99631号公報
【特許文献5】特表2009−504179号公報
【特許文献6】特表2009−512722号公報
【特許文献7】特開2009−81997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、骨粗しょう症、変形性関節症、褥瘡などの種々の疾病の抑制に有効なペプチド分子の本体、とりわけ、腸管での体内への吸収や細胞内への移行が容易であるとともに、このような体内への吸収や細胞内への移行の容易性に加えて、核酸化合物と静電的に強く結合して複合化する特性を有するなど、他の有効成分との結合性に優れることにより当該他の有効成分をしっかりと担持して、前記の優れた移行性により当該他の有効成分を患部に運ぶことができて、従来のDDS技術が有していた前述の問題を生じることなく、核酸化合物などの他の有効成分を標的細胞内へ送達する担体成分としての機能をも良好に発揮させる新規な物質を探り出すことにあり、このような成分を必須成分として含有する疾病抑制剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その過程において、Hyp−GlyやPro−Glyが疾病抑制に有効であることを確認し、すでに出願を終えているが(特開2010−106003)、その他のペプチド分子の有効性についても、さらなる検討を行った。
【0014】
上記検討の結果、本発明者が新規に見出した特定の構造を有するペプチド分子が、腸管での体内吸収が容易であり、かつ、疾病抑制剤の有効成分として良好に働くことを見出すとともに、この特定構造のペプチド分子がRNA医薬の担体成分としても優れた性能を有するため、前述のDDS技術に関する従来の問題点を解消できることをも見出した。
【0015】
具体的には、例えば、破骨細胞の分化と活性化を抑制し、骨芽細胞の分化と活性化を亢進し、軟骨細胞の変性を抑制してその分化を調節することを見出し、骨粗しょう症、変形性関節症の抑制に有効であることを見出すとともに、このペプチド分子が皮膚真皮中のトロポコラーゲン量を回復させ褥瘡をも抑制することを見出した。
【0016】
そして、上記特定構造のペプチド分子が、生物に由来する特異な構造を有しているために生体親和性に優れ、腸管から体内、さらに細胞内へと容易に移行し得ることから、経口投与型の疾病抑制剤としても極めて有効であることを見出した。
【0017】
さらに、これら特定構造のペプチド分子は、酸性水溶液に浸漬してカチオン化することにより、アニオン性の核酸化合物と静電的に良く結合し、運搬中における結合の切断が起こりにくいことから、上述のようにペプチド分子自身が有効成分として働く場合のみならず、miRNAやsiRNAなどの核酸化合物を有効成分としてこれを標的の細胞内に送達する、担体成分としての機能をも良好に発揮することを見出した。これにより、少量でかつ効率的に核酸化合物を標的細胞内に伝達することができる。このような優れた機能は、例えば、Hyp−GlyやPro−Glyなどのジペプチドでは発揮されないものであるが、これは、本発明者が見出した前記特定構造のペプチド分子が、アミノ酸が6つ以上結合したオリゴペプチドであるのに対して、ジペプチドは2個のアミノ酸が結合したものであるので、アミノ酸に由来する、アニオン性の核酸化合物との静電的結合部位が少なく、十分な静電的結合力が生まれないからであると推測される。
【0018】
また、腫瘍細胞を標的と限定した場合、前記特定構造のペプチド分子と核酸化合物とを静電的に結合したのちに投与するのではなく、当該ペプチド分子を経口投与し、かつ、核酸化合物を局所投与するような共投与方法で、血中で、静電的結合による複合化をさせることにより、標的腫瘍細胞内に少量で効率的に核酸化合物を送達することもできる。このような共投与によるDDS技術は、前述の特許文献4〜7のごとき従来のDDS担体、すなわち、腸管吸収されず、したがって、血中に移行することのない従来のDDS担体では不可能であったことである。
【0019】
これらの事実を確認して、本発明を完成した。
すなわち、本発明にかかる疾病抑制剤は、Glu−Gly−Asp−Gly−His−Leu−Gly−Lys−Pro−Gly−Arg−Hyp−Gly−Glu、Glu−Lys−Asp−Gly−His−Pro−Gly−Lys−Pro−Gly−Arg−Hyp−Gly−Glu、Gly−(Pro−Hyp−Gly)、(Pro−Hyp−Gly)、Gly−(Pro−Hyp−Gly)、(Pro−Hyp−Gly)、(Pro−Hyp−Gly)、(Pro−Hyp−Gly)およびGly−(Pro−Hyp−Gly)ならびにこれらの薬学上許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のペプチド分子を必須成分とする、ことを特徴とする。また、本発明によって、新規な物質であるGlu−Gly−Asp−Gly−His−Leu−Gly−Lys−Pro−Gly−Arg−Hyp−Gly−Glu、Glu−Lys−Asp−Gly−His−Pro−Gly−Lys−Pro−Gly−Arg−Hyp−Gly−Glu、Gly−(Pro−Hyp−Gly)、(Pro−Hyp−Gly)、Gly−(Pro−Hyp−Gly)、(Pro−Hyp−Gly)、(Pro−Hyp−Gly)もしくはこれらの薬学上許容される塩、またはこれらの混合物が提供される。
【0020】
以下では、簡単のため、これらのペプチド分子を、単に「特定構造のペプチド分子」ということがある。また、上記ペプチド分子を構成する各アミノ酸単位を表す略号(Proなど)についてさらなる略記を行うことがあり、具体的には、アルファベット一字により、Pro=P、Hyp=O、Gly=G、Glu=E、Asp=D、His=H、Leu=L、Lys=K、Arg=Rと略記することがある。
【0021】
したがって、特定構造のペプチド分子は、上記略記を用いれば、EGDGHLGKPGROGE、EKDGHPGKPGROGE、G(POG)、(POG)、G(POG)、(POG)、(POG)、(POG)およびG(POG)ならびにこれらの薬学上許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のペプチド分子である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、骨粗しょう症、変形性関節症、褥瘡などの症状を有効に抑制することができる。とりわけ、必須成分である特定構造のペプチド分子が、腸管での体内や細胞内へ容易に移行するために、経口投与にも適している。
【0023】
さらに、前記特定構造のペプチド分子が核酸化合物などと強く結合して複合化する特性をも有しているので、ペプチド分子自身を有効成分とする場合のみならず、これを担体成分として機能させることにより、例えば、核酸化合物などを有効成分として、これを標的細胞内に極めて効率的に送達し、作用させることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明にかかる疾病抑制剤について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
【0025】
〔特定構造のペプチド分子〕
本発明にかかる疾病抑制剤は、特定構造のペプチド分子、すなわち、EGDGHLGKPGROGE、EKDGHPGKPGROGE、G(POG)、(POG)、G(POG)、(POG)、(POG)、(POG)およびG(POG)ならびにこれらの薬学上許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のペプチド分子を必須成分とするものである。
【0026】
薬学上許容される塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩等の有機酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の無機塩基塩、トリエチルアンモニウム塩等の有機塩基塩等が挙げられる。
【0027】
上記特定構造のペプチド分子は、各アミノ酸単位が化学修飾されていても良く、ヒドロキシプロリン単位については、水酸基が化学修飾されていても良い。
【0028】
以上、本発明においては、「特定構造を有するペプチド分子」とは、化学修飾したものも化学修飾していないものも含む。また、以下では、特定構造を有するペプチド分子を、その略号のみで表すことがある(例えば、「(Pro−Hyp−Gly)のペプチド分子」を単に「(Pro−Hyp−Gly)」や「(POG)」と表記するなど)。
【0029】
上記特定構造のペプチド分子が化学修飾されている場合、弱酸性から中性で溶解可能にでき、後述する他の有効成分との相溶性向上なども期待できる。具体的には、ヒドロキシプロリン残基の水酸基については、O−アセチル化などの化学修飾、グリシン残基のα−カルボキシル基については、エステル化、アミド化などの化学修飾、プロリン残基のα−アミノ基については、ポリペプチジル化、スクシニル化、マレイル化、アセチル化、脱アミノ化、ベンゾイル化、アルキルスルホニル化、アリルスルホニル化、ジニトロフェニル化、トリニトロフェニル化、カルバミル化、フェニルカルバミル化、チオール化などの化学修飾が挙げられる。後述する他の有効成分の種類などに応じて、適切な化学修飾を選択すれば良い。
【0030】
また、上記特定構造のペプチド分子をカチオン化する場合、エチレンジアミン化、スペルミン化などが挙げられる。
【0031】
上記特定構造のペプチド分子は、例えば、後述するように、コラーゲンやゼラチンを2段階に分けて酵素処理するか、アミノ酸から合成することにより得ることができ、化学修飾については、後述するような公知の手段が挙げられる。ただし、これらの方法以外の方法で得ても良く、例えば、下記2段階酵素処理法に代えて、1次酵素処理を省略した方法や、1次酵素処理および2次酵素処理を同時に行う方法であっても良いのである。
【0032】
<コラーゲンまたはゼラチンの2段階酵素処理>
コラーゲンまたはゼラチンを一般的な方法で1次酵素処理した後に、2次酵素処理として、アミノペプチダーゼ活性を有する酵素で反応させる2段階酵素処理によって、上記特定構造のペプチド分子を含むコラーゲンペプチドを得ることができる。
【0033】
上において、「アミノペプチダーゼ活性」は、基本的に、ペプチド鎖のN末端からアミノ酸を遊離させる働きを有するペプチダーゼのことであるが、具体的には、例えば、「アミノペプチダーゼP活性」や「アミノペプチダーゼN活性」などがある。「アミノペプチダーゼP活性」は、N末端から2番目にプロリンが存在する場合に作用し、「アミノペプチダーゼN活性」は、N末端から2番目にプロリン以外のアミノ酸が存在する場合に作用する。このように、状況に応じて使い分けることが可能であり、いずれを用いても良い。
【0034】
ここで、2次酵素処理に用いる酵素として、副生成物の分解などの目的や、原料となるコラーゲンの種類、1次酵素処理に用いる酵素の種類に応じて、上記アミノペプチダーゼ活性の他に、異なる活性を併有する酵素を用いたり、あるいは、異なる活性を有する酵素を併用したりすることができる。
【0035】
そのようなアミノペプチダーゼ活性以外の活性として、例えば、プロリダーゼ活性やヒドロキシプロリダーゼ活性などのジペプチダーゼ活性を作用させることにより副生するジペプチドを分解したりすることができる。また、アミノペプチダーゼ活性は、基本的にN末端側のアミノ酸を1つずつ遊離するものであるので、原料となるコラーゲンの種類や1次酵素処理に用いる酵素の種類によっては、1次酵素処理での分解が不十分で、2次酵素処理に必要な時間が長くなる場合がある。そこで、例えば、プロリン残基のカルボキシル基側を加水分解するエンドペプチダーゼであるプロリルオリゴペプチダーゼ活性などの他の活性を作用させることにより、不要部位をオリゴペプチドなどの塊として切断除去することで、2次酵素処理をより効率的に行うことができる。
【0036】
この2段階酵素処理によれば、1次酵素処理によって、経口免疫寛容メカニズムを介した骨・軟骨組織の炎症緩和に有用な比較的分子量の大きなペプチドが生成し、2次酵素処理によって、特定構造のペプチド分子が生成する。
【0037】
例えば、アミノペプチダーゼNを用いれば、[X−X−Gly−Pro−Hyp−](X≠ProかつX≠Hyp)の構造におけるN末端側からアミノ酸X、Xを順次遊離することができ、あるいは、前記構造においてX=Pro、X=Hypである場合には、ジペプチドPro−Hypを遊離することができ、これにより、特定構造のペプチド分子である[(Gly−(Pro−Hyp−Gly)](n=2〜4)が得られる。
【0038】
また、アミノペプチダーゼNによれば、[(Pro−Hyp−Gly)n−Pro−Hyp−Gly−Pro−Y−](n=1〜4、Y≠Hyp)の構造におけるC末端側のグリシンとプロリン結合を切断することができ、これにより、特定構造のペプチド分子である[(Pro−Hyp−Gly)n+1](n=1〜4)が得られる。このことは、本発明者が初めて見出した知見である。
【0039】
さらに、アミノペプチダーゼNによれば、[X−X−Gly−(Pro−Hyp−Gly)](X≠ProかつX≠Hyp)の構造におけるN末端側の「X−X−Gly」部分を遊離することができ、これにより、特定構造のペプチド分子である[(Pro−Hyp−Gly)](n=5)が得られる。
【0040】
アミノペプチダーゼPによれば、[Gly−(Pro−Hyp−Gly)](n=2〜4)の構造におけるN末端のグリシンを遊離することができ、これにより、特定構造のペプチド分子である[(Pro−Hyp−Gly)n+1](n=2〜4)が得られる。また、N末端のグリシンが遊離しない場合もあるので、その場合には、特定構造のペプチド分子である[Gly−(Pro−Hyp−Gly)](n=2〜4)が一部残ることになる。
【0041】
前記コラーゲンとしては、特に限定するわけではないが、例えば、牛や豚などの哺乳動物由来のコラーゲンやサメや鯛などの魚類由来のコラーゲンが挙げられ、これらは、前記哺乳動物の骨、皮部分や前記魚類の骨、皮、鱗部分などから得ることができる。具体的には、前記骨、皮、鱗などに脱脂・脱灰処理、抽出処理などの従来公知の処理を施せば良い。
【0042】
前記ゼラチンは、前記コラーゲンを熱水抽出などの従来公知の方法で処理することにより得ることができる。
【0043】
前記コラーゲンやゼラチンの2段階酵素処理で用いる酵素としては、特に限定されないが、得られるペプチド分子を特定保健用食品に利用する場合などを考慮すると、病原性微生物由来の酵素以外の酵素を用いることが好ましい。
【0044】
1次酵素処理の処理条件としては、例えば、コラーゲンまたはゼラチン100重量部に対して酵素0.1〜5重量部用い、30〜65℃で1〜72時間処理することができる。
【0045】
上記コラーゲンまたはゼラチンの1次酵素処理により得られるコラーゲンペプチドの平均分子量は、好ましくは500〜2000、より好ましくは500〜1800である。平均分子量が前記範囲にあれば、分子量の比較的大きなペプチドが充分に生成しているといえる。
【0046】
1次酵素処理後に、必要に応じて酵素を失活させても良いが、この場合の失活温度としては、例えば、70〜100℃である。
【0047】
前記1次酵素処理に用いる酵素としては、コラーゲンまたはゼラチンのペプチド結合を切断することが可能な酵素であれば、特に限定されないが、通常、タンパク質分解酵素あるいはプロテアーゼと呼ばれる酵素が用いられる。具体的には、例えば、コラゲナーゼ、チオールプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、酸性プロテアーゼ、アルカリ性プロテアーゼ、メタルプロテアーゼなどが挙げられ、これらを単独で、あるいは複数組み合わせて用いることができる。前記チオールプロテアーゼとしては、植物由来のキモパパイン、パパイン、ブロメライン、フィシン、動物由来のカテプシン、カルシウム依存性プロテアーゼなどが知られている。また、前記セリンプロテアーゼとしては、トリプシン、カテプシンDなどが、前記酸性プロテアーゼとしては、ペプシン、キモトリプシンなどが知られている。
【0048】
さらに、2次酵素処理では、例えば、酵素として、Aspergillus属由来のアミノペプチダーゼ活性を有する酵素を用いた酵素反応がなされる。この反応により、1次酵素処理物には含まれていなかった特定構造のペプチド分子が生成する。
【0049】
2次酵素処理の処理条件としては、例えば、1次酵素処理物100重量部に対して酵素0.01〜5重量部用い、30〜65℃で1〜72時間処理することができる。
【0050】
上記2次酵素処理により得られるコラーゲンペプチドの平均分子量は、好ましくは500〜1800、より好ましくは500〜1500である。この2次酵素処理は、特定構造のペプチド分子の生成を主たる目的としており、1次酵素処理により得られるコラーゲンペプチドのうち、比較的大きなペプチドが過剰に加水分解されてしまわないように、前記平均分子量の範囲となるように2次酵素処理することが好ましい。
【0051】
2次酵素処理後に酵素を失活させる必要があるが、失活温度としては、例えば、70〜100℃である。
【0052】
前記2段階酵素処理により得られた加水分解物、もしくは、前記2段階酵素処理および発酵により得られた発酵生成物は、特定構造のペプチド分子以外のアミノ酸やペプチド成分も含む混合物であるので、特定構造のペプチド分子もしくはその塩を得る場合には、必要に応じて、分画・精製を行うようにしても良い。分画・精製の方法としては、特に制限はなく、例えば、限外濾過や、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーなどの各種液体クロマトグラフィーや、これらを組み合わせた方法などのような従来公知の方法にすれば良い。具体的には、例えば、以下のようにして分画・精製することができる。すなわち、まず、前記加水分解物あるいは発酵生産物の約2g/10mLをイオン交換カラム(例えば、DEAEトヨパール650Mカラム(東ソー社製)やSPトヨパール650Mカラム(東ソー社製)など)に2回に分けて負荷して、蒸留水で溶出されるボイドボリューム画分を回収する。次いで、回収した画分を前記イオン交換カラムとは逆のイオン交換基を有するカラム(例えば、SPトヨパール650Mカラム(東ソー社製)やDEAEトヨパール650Mカラム(東ソー社製)など)に負荷して、蒸留水で溶出されるボイドボリューム画分を回収する。次に、この画分をゲル濾過カラム(例えば、セファデックスLH−20カラム(ファルマシア社製)など)に負荷し、30%メタノール水溶液で溶出して化学合成品である特定構造のペプチド分子が溶出する位置に相当する画分を回収する。本画分については、逆相カラム(例えば、μBondasphere 5μC18 300Åカラム(ウォーターズ社製)など)を装填した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供し、0.1%トリフルオロ酢酸を含む32%以下のアセトニトリル水溶液の直線濃度勾配により分画する。そして、回収した特定構造のペプチド分子画分を減圧乾固することにより、特定構造のペプチド分子を高純度で得ることができる。
【0053】
<アミノ酸からの合成>
アミノ酸から特定構造のペプチド分子を合成することができる。
特定構造のペプチド分子の合成法としては、一般的に、(1)固相合成法と(2)液相合成法(例えば、特開2003−183298号公報参照)があり、前者の場合は、さらに(A)Fmoc法と(B)Boc法の方法が知られているが、特定構造のペプチド分子は、いずれの方法で合成してもよい。
【0054】
固相法を一例として、以下に詳しく説明する。
プロリンを担体ポリスチレンに固定し、アミノ基の保護としてFmoc基あるいはBoc基を使用する公知の固相合成法により合成することができる。すなわち、表面をアミノ基で修飾した直径0.1mm程度のポリスチレン高分子ゲルのビーズを固相として用い、縮合剤としてジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を用いた脱水反応によってFmoc(fluorenyl−methoxy−carbonyl)基でアミノ基を保護したプロリンにヒドロキシプロリンを結合(ペプチド結合)させた後、固相を溶媒でよく洗い、残ったヒドロキシプロリンなどを除去する。この後、固相に結合しているプロリン残基の保護基を除去(脱保護)することにより、POを合成することができる。続いて、同様の方法で、このPOのヒドロキシプロリン残基のアミノ基にグリシンを結合(ペプチド結合)させることで、POGを得ることができる。このようにして、アミノ酸を順次結合していくことで、目的のペプチド分子を合成することができる。
【0055】
<化学修飾>
特定構造のペプチド分子は、化学修飾が施されているものであっても良い。化学修飾の具体的手段や処理条件は、通常のペプチドの化学修飾技術が適用される。
【0056】
ヒドロキシプロリン残基の水酸基の化学修飾については、例えば、O−アセチル化は水溶媒中または非水溶媒中で無水酢酸を作用させることなどにより、行うことができる。
【0057】
グリシン残基のα−カルボキシル基の化学修飾について、例えば、エステル化はメタノールへの懸濁後に乾燥塩化水素ガスを通気することなどにより、アミド化はカルボジイミドなどを作用させることにより、行うことができる。
【0058】
化学修飾のその他の具体例として、特公昭62−44522号公報や特公平5−79046号公報等に記載の化学修飾技術が適用できる。
【0059】
〔疾病抑制剤〕
本発明にかかる疾病抑制剤としては、骨粗しょう症抑制剤、変形性関節炎抑制剤、褥瘡抑制剤のほか、核酸化合物とペプチド分子の複合体(薬効は核酸化合物の種類によって種々のものがある)などが好適に挙げられる。
【0060】
本発明にかかる疾病抑制剤は、上記特定構造のペプチド分子を必須成分として含むものであり、コラーゲンペプチドが含む特定構造のペプチド分子を必須成分とするものであっても良い。そして、この場合においては、前記疾病抑制剤が、アミノ酸から化学合成した特定構造のペプチド分子や、コラーゲンやゼラチンの加水分解物であるコラーゲンペプチドから単離した特定構造のペプチド分子を含有する態様だけでなく、前記コラーゲンペプチドから特定構造のペプチド分子を単離せずにコラーゲンペプチドの形のまま含有する態様であってもよい。本発明にかかる疾病抑制剤は、このように、コラーゲンペプチドのまま含有させる形態も含めて、本発明にかかる特定構造のペプチド分子を必須成分とするものであり、これらの特定構造のペプチド分子を、コラーゲンペプチドの形で用いる場合を含めて併用することも可能である。
【0061】
上記特定構造のペプチド分子は、アミノ酸や、特定構造のペプチド分子以外の構造を有するペプチド分子などとは異なる(例えば、(POG)にさらにGlyが結合したG(POG)は特定構造のペプチド分子ではない)。前記特定構造のペプチド分子を含有させることで、優れた疾病抑制効果(骨粗しょう症、変形性関節炎、褥瘡などの症状の抑制効果、RNA医薬における担体効果)が発現される。これらの効果は、後述する実施例中の性能評価試験において、具体的に立証されている。
【0062】
<有効成分としての利用>
まず、特定構造のペプチド分子を有効成分として含有してなる疾病抑制剤(骨粗しょう症抑制剤、変形性関節炎抑制剤、褥瘡抑制剤など)についての説明を行う。有効成分として用いる場合は、好ましくはEGDGHLGKPGROGE、EKDGHPGKPGROGE、G(POG)、(POG)、G(POG)、(POG)、(POG)、(POG)およびG(POG)ならびにこれらの薬学上許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のペプチド分子を含有するものも好ましい。
【0063】
特定構造のペプチド分子を有効成分として含有してなる疾患抑制剤は、経口的に又は非経口的に種々の形態の製剤で投与することができる。その形態としては、例えば、液剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、粉剤、注射剤、経皮剤、坐剤、点鼻剤及び吸入剤等が挙げられ、好ましくは患部に直接投与する液剤、経口的に投与する錠剤、顆粒剤、カプセル剤等が挙げられる。特定構造のペプチド分子の投与量は、患者の状態や体重、化合物の種類、投与経路等によって異なる。成人1日当たり、患部に直接投与する場合は、例えば、約0.01〜200mg、好ましくは約0.1〜100mg、より好ましくは約1〜50mgが挙げられる。経口投与の場合は、例えば、約0.1〜1000mg、好ましくは約1〜500mg、より好ましくは約10〜200mgが挙げられる。その他の形態の製剤は、これらの投与量を参考にして適宜決めることができる。これら製剤は、1日1〜数回に分けて投与するか、または1〜数日に1回投与することができる。
【0064】
この場合、前記本発明にかかる疾病抑制剤全量に対し、前記特定構造のペプチド分子を、0.001重量部以上の割合で配合することが好ましい。より好ましくは0.01重量部以上の割合で配合する。0.001重量部未満では本発明の効果が充分に発現されないおそれがある。
【0065】
さらに、本発明にかかる疾病抑制剤を患部に直接注入して用いる場合、前記特定構造のペプチド分子の含量が10μmol/L以上であることが好ましい。
【0066】
本発明にかかる疾病抑制剤は、特定構造のペプチド分子を生理食塩水などで希釈したものであっても良く、充分に本発明の効果を得ることができるが、前記特定構造のペプチド分子以外に、本発明の効果を害しない範囲で、適宜他の有効成分や製剤用の成分を含有させても良い。
【0067】
前記他の有効成分としては、グルコサミンおよび/またはその塩、コンドロイチン硫酸などが挙げられ、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。中でも、グルコサミンおよび/またはその塩は、特定構造のペプチド分子による疾病抑制効果を向上させる働きがあるため好ましい。
【0068】
また、前記他の有効成分として、特定構造のペプチド分子以外のペプチド分子やアミノ酸を含んでいても良く、例えば、比較的分子量の大きなペプチド分子は、慢性リウマチ性関節炎などに対して、経口免疫寛容メカニズムによる骨・軟骨組織の炎症を緩和するという効果を奏するので有用である。特定構造のペプチド分子以外のペプチド分子やアミノ酸を含有させるためには、コラーゲンやゼラチンを加水分解して特定構造のペプチド分子を含有するコラーゲンペプチドを得た後、このコラーゲンペプチドを、特定構造のペプチド分子を単離せずに、そのまま使用すればよい。
【0069】
さらに、前記他の有効成分として、骨塩の沈着促進の目的で、カルシウムや糖転移ヘスペリジンなどを用いることができ、コラーゲンの合成・沈着促進などの目的でビタミンCなどを用いることもできる。
【0070】
前記他の有効成分の配合量としては、疾病抑制剤全量に対して、0.001〜20重量部で用いることが好ましく、0.01〜20重量部の割合で用いることがより好ましい。特に、グルコサミンおよび/またはその塩の配合量を、疾病抑制剤全量に対して、5〜15重量部とすることが好ましい。5重量部未満では特定構造のペプチド分子の効果を向上させる効果が充分に発揮されないおそれがあり、15重量部を超えると尿や糞中に排出され、過剰摂取となるおそれがある。
【0071】
製剤化のための成分としては、例えば、結晶性セルロースなどの賦形剤などを用いることができ、その形態などに応じて適切な量を設定すれば良い。
【0072】
本発明にかかる疾病抑制剤の使用形態としては、例えば、経口投与により摂取したり、患部へ直接注入したり、といった形態が挙げられる。特定構造のペプチド分子は、腸管で迅速に吸収され、アミノ酸への分解もほとんど起こらないため、経口投与による摂取が好適である。
【0073】
経口投与の場合には、特定構造のペプチド分子と前記他の有効成分や製剤用の成分を混合したものを、従来公知の方法により、打錠成型によって錠剤としたり、その他、顆粒剤、散剤、カプセル剤などの固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤などの液剤、凍結乾燥製剤などの任意の形態に調製することもできる。
【0074】
患部へ直接注入する場合には、特定構造のペプチド分子を生理食塩水などで希釈したものを用いるが、必要に応じて、さらに、前記他の有効成分を用いても良く、その濃度としては、上述の如く、特定構造のペプチド分子の含量を0.1mol/L以上とすることが好ましい。
【0075】
<担体成分としての利用>
次に、上記特定構造のペプチド分子を担体成分とし核酸化合物の静電的複合体としてなる疾病抑制剤について説明する。
【0076】
すなわち、上記特定構造のペプチド分子は、上述のように、それ自身が有効成分として働くものであるが、腸管吸収性や細胞内への移行の容易性、および、核酸化合物との静電的結合が強いことを利用して、核酸化合物を標的細胞内部へ送達する担体成分として機能させることができる。この場合、疾病抑制に有効成分として働くのは核酸化合物であるので、この点において、ペプチド分子自身が有効成分として働く場合とは、ペプチド分子の役割が異なっているということができる。
【0077】
前記核酸化合物としては、例えば、miRNAやsiRNAなどが挙げられる。より具体的には、例えば、微生物感染症における感染防御抗原、生理活性物質、酵素阻害物質、レセプター阻害物質、発癌抑制物質、アポトーシス促進物質、アポトーシス抑制物質、細胞再生促進物質、免疫反応促進物質、免疫反応抑制物質などの物質をコードする遺伝子が組み込まれた遺伝子発現カセット、リボザイムまたはアンチセンス遺伝子、抑制性のリボ核酸などの機能を有する核酸などが挙げられる。ここで、遺伝子発現カセットとは、外来遺伝子が細胞内で発現するように適切に構築された発現ベクターを指す。
【0078】
本発明にかかる疾病抑制剤として、上記特定構造のペプチド分子と上記核酸化合物との静電的複合体とするための方法としては、例えば、緩衝液中で前記特定構造のペプチド分子と前記核酸混合物を混合すればよい。緩衝液としては、特に限定されず、生理食塩水、リン酸緩衝液、燐酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液など、細胞や生体に悪影響を及ぼさないものを適宜選択すればよい。
【0079】
特定構造のペプチド分子と上記核酸化合物との混合比としては、その具体的なペプチドおよび核酸化合物によって、またそれらの親和性によって変化するが、例えば、約1:1〜10:1、好ましくは約1.1:1〜5:1、より好ましくは約1.2:1〜3:1が挙げられる。
【0080】
前記緩衝液のpHとしては、特に限定されず、例えば、pH6.0〜8.5の範囲が好ましく、pH7.0〜8.0の範囲がより好ましい。
【0081】
塩濃度は、0〜10%が好ましく、0.7〜1.1%がより好ましい。また、塩の種類としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムなどが挙げられ、なかでも、塩化ナトリウムが好ましい。
【0082】
特定構造のペプチド分子と核酸化合物との上記静電的複合体は、経口的に又は非経口的に種々の形態の製剤で投与することができる。その形態としては、例えば、液剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、粉剤、注射剤、経皮剤、坐剤、点鼻剤及び吸入剤等が挙げられ、好ましくは患部に直接投与する液剤、経口的に投与する錠剤、顆粒剤、カプセル剤等が挙げられる。特定構造のペプチド分子の投与量は、核酸化合物の種類、患者の状態や体重、化合物の種類、投与経路等によって異なるが、対応する核酸化合物の投与量を参考にして、決めることができる。
【0083】
さらに、本発明の疾病抑制剤は、共投与という態様、すなわち、前記特定構造のペプチド分子を経口投与し、核酸化合物を局所に投与するという態様であっても有効に機能する。これは、経口投与により血中に移行した前記特定構造のペプチド分子と局所に投与した核酸化合物とが、血中で会合、複合化(両者の静電的複合)することができ、その結果として、標的細胞(例えば、癌細胞)への細胞内化により核酸化合物の機能を発現させることができるからである。これにより、前記miRNAやsiRNAと予め静電的結合させることなく、これらを、特に、腫瘍細胞内に効率的に導入することができる。
【実施例】
【0084】
以下に、本発明にかかる疾病抑制剤の必須成分であるペプチド分子またはこれを含むコラーゲンペプチドの性能評価試験と、前記疾病抑制剤の配合例によって、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と、「重量%」を「%」と記すことがある。
【0085】
〔特定構造のペプチド分子の準備〕
後述する性能評価試験や疾病抑制剤に使用する特定構造のペプチド分子としては以下のものを用いた。
【0086】
すなわち、(POG)はペプチド研から入手し、EGDGHLGKPGROGEおよびEKDGHPGKPGROGE、G(POG)、(POG)、G(POG)、(POG)、G(POG)および(POG)は、それぞれ、PHジャパンから入手した。
【0087】
〔他のペプチド分子の準備〕
後述する性能評価試験や疾病抑制剤に使用する比較用の他のペプチド分子は、前述の固相法により合成した。
【0088】
すなわち、まず、表面をアミノ基で修飾した直径0.1mm程度のポリスチレン高分子ゲルのビーズを固相として用い、縮合剤としてジイソプロピルカルボジイミド(DIC)10部を用いた脱水反応によってFmoc(fluorenyl−methoxy−carbonyl)基でアミノ基を保護したヒドロキシプロリン45部にグリシン45部を結合(ペプチド結合)させた後、固相を溶媒(エチルアルコール)でよく洗い、残ったヒドロキシプロリンなどを除去した。この後、固相に結合しているヒドロキシプロリン残基の保護基をトリフルオロ酢酸の温浸により除去(脱保護)することにより、OGを合成した。
【0089】
上記各ペプチド分子の合成には、Libertyペプチド合成システム(CEM社製)を使用した。
【0090】
同様にして、PO、Ala−Hyp、Leu−Hyp、Phe−Hyp、Ser−Hyp、POGを合成した。
【0091】
〔特定構造のペプチド分子を含むコラーゲンペプチドの準備1〕
後述する性能評価試験や疾病抑制剤に使用する特定構造のペプチド分子を含有する豚皮由来のコラーゲンペプチド(PC)は、以下に示す方法に従って得た。
【0092】
すなわち、豚皮由来コラーゲンの熱変性物であるゼラチン(I型コラーゲン)1kgを75℃の温水4Lに溶解させ、60℃に温度調節した後、1次反応として、黄色コウジカビ由来プロテアーゼ10gを添加し、pH5.0〜6.0、温度45〜55℃で120分間保持することにより酵素加水分解処理を行った。次いで、2次酵素反応として、これにアミノペプチダーゼP活性を有するAspergillus oryzae抽出酵素を終濃度1.5%で添加し、これを可溶化した後、50℃で2時間反応させた。反応後、この反応液を10分間100℃に加熱処理し、その後、60℃に冷却し、活性炭と濾過助剤(珪藻土)とを用いて濾過し、得られた母液に120℃で3秒間高温殺菌処理した。そして、殺菌後の母液を噴霧乾燥し、豚皮由来のコラーゲンペプチド(PC)を得た。
【0093】
このPCを、薄層クロマトグラフィー(TLC)に供した。すなわち、TLCプレート(商品名「Cellulose F」、メルク社製)に、水に可溶化したPCを、10μg滴下し(スポット原点)乾燥させた後、溶媒(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)で展開した。イサチン−Zn発色液を噴霧し、青色スポットの発色Rf値が同一プレートでの合成ペプチド分子(POG)、(POG)、(POG)、(POG)の各々のRf値と一致することを確認することにより、このPCがこれら各ペプチド分子を含むことを確認した。
【0094】
上記PCについて、さらに、MALDI−TOF/MS分析を行った。ただし、このPCにはペプチド分子が多種含まれていて解析が困難であったため、同サンプルを、Sep−PakC18カートリッジカラム(Waters社製)により逆相クロマト分画分取したのち、凍結乾燥したサンプルを20μLのMQ水で溶解し、MALDI−TOF/MS分析を行うようにした。
【0095】
MALDI−TOF/MS分析は、具体的には、マトリックス支援レーザーイオン化法(MALDI:matrix assisted laser desoption ionization)と飛行時間型質量分析法(TOF/MS:Time of flight/mass)の組み合わせにより質量を決定した。MALDIのためのマトリックスとして、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)を0.1%TFA含有50%アセトニトリルにごく微量加えた溶液の上清を用いた。これを分析試料と同量混合し、結晶を作った。短時間のレーザーを照射することにより、分析試料をイオン化した。全ての質量スペクトルは、337nm窒素レーザーを備え、イオンを6kVで加速するAutoflex TOF/TOF質量分析計(Bruker Daltonics社製)で得られた。得られた分子イオンピークとCID−LIFTでのイオンピークの解析を行った。
【0096】
上記解析から、このPCがペプチド分子EGDGHLGKPGROGE、EKDGHPGKPGROGE、G(POG)、G(POG)、G(POG)をも含むことを確認した。
【0097】
MALDI−TOF/MSのCID−LIFTでのイオンピーク解析から、前記PCは、EGDGHLGKPGROGEを0.01%、EKDGHPGKPGROGEを0.01%、(POG)を0.01%、G(POG)を0.02%、(POG)を0.1%、G(POG)を0.2%、(POG)を1%、G(POG)を2%、(POG)を5%含むものであることが分かった。
【0098】
なお、上記イオンピーク解析において、EGDGHLGKPGROGEのm/zは1421.639、EKDGHPGKPGROGEのm/zは1476.706、(POG)のm/zは1354.6、G(POG)のm/zは1087.5、(POG)のm/zは1144.5、G(POG)のm/zは877.4、(POG)のm/zは820.5、G(POG)のm/zは610.3、(POG)のm/zは553.4である。
【0099】
〔特定構造のペプチド分子を含むコラーゲンペプチドの準備2〕
後述する性能評価試験や疾病抑制剤に使用する特定構造のペプチド分子を含有する魚鱗由来のコラーゲンペプチド(FC)は、魚鱗由来ゼラチンを用いたこと以外は、前記PCの製造と同様の操作により得た。
【0100】
このFCを前記PCの場合と同様にTLCにより分析したところ、ペプチド分子(POG)、(POG)、(POG)、(POG)の存在が確認された。
【0101】
さらに、MALDI−TOF/MS解析から、このFCがペプチド分子G(POG)、G(POG)、G(POG)をも含むことを確認した。
【0102】
MALDI−TOF/MSのCID−LIFTでのイオンピーク解析から、前記FCは、(POG)を0.01%、G(POG)を0.02%、(POG)を0.1%、G(POG)を0.2%、(POG)を1%、G(POG)を2%、(POG)を5%含むものであることが分かった。
【0103】
〔特定構造のペプチド分子を含むコラーゲンペプチドの準備3〕
後述する性能評価試験や疾病抑制剤に使用する特定構造のペプチド分子を含有する豚皮由来のコラーゲンペプチド(PC−CP)は、以下に示す方法に従って得た。
【0104】
すなわち、豚皮由来コラーゲンの熱変性物であるゼラチン(I型コラーゲン)1kgを20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)4Lに加温しながら溶解させたのち、40℃に冷却し、1次酵素反応として、1gのコラゲナーゼ(新田ゼラチン社製、Collagenase N2)を添加後、pH7.0〜7.8、40℃で18時間保持することにより酵素分解処理を行った。次いで2次酵素反応として、この反応液にアミノペプチダーゼPおよびプロリルオリゴペプチダーゼ活性を併有するAspergillus niger抽出酵素を終濃度1.0%で添加し、これを可溶化した後、pH4.0、50℃で2時間反応させた。反応後、この反応液を10分間100℃に加熱処理し、その後、60℃に冷却し、活性炭と濾過助剤(珪藻土)とを用いて濾過し、得られた母液に120℃で3秒間高温殺菌処理した。そして、殺菌後の母液を噴霧乾燥し、PC−CPを得た。
【0105】
ここでは、2次酵素反応で用いる酵素としてプロリルオリゴペプチダーゼ活性を併有するものを用いることで、N末端側の不要部位を塊として切断除去することにより、特定構造のペプチド分子を、効率的に得るようにしている。
【0106】
このPC−CPを前記PCの場合と同様にTLCにより分析したところ、ペプチド分子EGDGHLGKPGROGE、EKDGHPGKPGROGE、(POG)、(POG)、(POG)、(POG)の存在が確認された。
【0107】
さらに、MALDI−TOF/MS解析から、このPC−CPがペプチド分子G(POG)、G(POG)、G(POG)をも含むことを確認した。
【0108】
MALDI−TOF/MSのCID−LIFTでのイオンピーク解析から、前記PC−CPは、EGDGHLGKPGROGEを0.01%、EKDGHPGKPGROGEを0.01%、(POG)を0.02%、G(POG)を0.04%、(POG)を0.2%、G(POG)を0.4%、(POG)を4%、(POG)を10%含むものであることが分かった。
【0109】
〔特定構造のペプチド分子を含むコラーゲンペプチドの準備4〕
後述する性能評価試験や疾病抑制剤に使用する特定構造のペプチド分子を含有する豚皮由来のコラーゲンペプチド(PC−2)は、2次酵素反応を、アミノペプチダーゼN活性を有するAspergillus oryzae抽出酵素により行うこと以外は、前記PCの製造と同様の操作により得た。
【0110】
このPC−2を前記PCの場合と同様にTLCにより分析したところ、ペプチド分子(POG)、(POG)、(POG)、(POG)の存在が確認された。
【0111】
さらに、MALDI−TOF/MS解析から、このPC−2がペプチド分子G(POG)、G(POG)、G(POG)をも含むことを確認した。
【0112】
MALDI−TOF/MSのCID−LIFTでのイオンピーク解析から、前記PC−2は、(POG)を0.01%、G(POG)を0.03%、(POG)を0.1%、G(POG)を0.3%、(POG)を1%、G(POG)を3%、(POG)を4%含むものであることが分かった。
【0113】
〔特定構造のペプチド分子を含むコラーゲンペプチドの準備5〕
後述する性能評価試験や疾病抑制剤に使用する特定構造のペプチド分子を含有する魚鱗由来のコラーゲンペプチド(FC−2)は、2次酵素反応を、アミノペプチダーゼN活性を有するAspergillus oryzae抽出酵素により行うこと以外は、前記FCの製造と同様の操作により得た。
【0114】
このFC−2を前記PCの場合と同様にTLCにより分析したところ、ペプチド分子(POG)、(POG)、(POG)、(POG)の存在が確認された。
【0115】
さらに、MALDI−TOF/MS解析から、このFC−2がペプチド分子G(POG)、G(POG)、G(POG)をも含むことを確認した。
【0116】
MALDI−TOF/MSのCID−LIFTでのイオンピーク解析から、前記FC−2は、(POG)を0.01%、G(POG)を0.04%、(POG)を0.1%、G(POG)を0.3%、(POG)を1%、G(POG)を2%、(POG)を3%含むものであることが分かった。
【0117】
〔特定構造のペプチド分子を含むコラーゲンペプチドの準備6〕
後述する性能評価試験や疾病抑制剤に使用する特定構造のペプチド分子を含有する豚皮由来のコラーゲンペプチド(PC−CP−2)は、2次酵素反応を、アミノペプチダーゼNおよびプロリルオリゴペプチダーゼ活性を併有するAspergillus niger抽出酵素により行うこと以外は、前記PC−CPの製造と同様の操作により得た。
【0118】
このPC−CP−2を前記PCの場合と同様にTLCにより分析したところ、ペプチド分子(POG)、(POG)、(POG)、(POG)の存在が確認された。
【0119】
さらに、MALDI−TOF/MS解析から、このPC−CP−2がペプチド分子G(POG)、G(POG)、G(POG)をも含むことを確認した。
【0120】
MALDI−TOF/MSのCID−LIFTでのイオンピーク解析から、前記PC−CP−2は、(POG)を0.02%、G(POG)を0.04%、(POG)を0.2%、G(POG)を0.4%、(POG)を2%、G(POG)を4%、(POG)を9%含むものであることが分かった。
【0121】
〔特定構造のペプチド分子を含まないコラーゲンペプチドの準備1〕
後述する性能評価試験や疾病抑制剤に使用する特定構造のペプチド分子のいずれも含有しない比較用のコラーゲンペプチド(PC−CP−Cont)は、以下に示す方法に従って得た。
【0122】
すなわち、豚皮由来コラーゲンの熱変性物であるゼラチン(I型コラーゲン)1kgを20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)4Lに加温しながら溶解させたのち、40℃に冷却し、1次酵素反応として、1gのコラゲナーゼ(新田ゼラチン社製、Collagenase N2)を添加後、pH7.0〜7.8、40℃で18時間保持することにより酵素分解処理を行った。次いで、酵素加水分解処理で得られた溶液を10分間100℃に加熱処理し、その後、60℃に冷却し、活性炭と濾過助剤(珪藻土)とを用いて濾過し、得られた母液に120℃で3秒間高温殺菌処理した。そして、殺菌後の母液を噴霧乾燥し、PC−CP−Contを得た。
【0123】
また、このPC−CP−Contを前記PCの場合と同様にTLCにより分析し、さらに、MALDI−TOF/MS解析を行ったが、特定構造のペプチド分子のいずれの存在も確認できなかった。
【0124】
〔性能評価試験〕
上記各ペプチド分子、コラーゲンペプチド、および、比較のためのアミノ酸(プロリン、ヒドロキシプロリン)を用いて行った各性能評価試験の詳細を以下に示す。
【0125】
<評価試験1:破骨細胞の分化および活性化の抑制>
Kobayashi Y.らの破骨細胞分化培養法[J.Bone Miner.Metab.(2004)22:p.318−328]に準じて評価した。
【0126】
すなわち、EGDGHLGKPGROGE、EKDGHPGKPGROGE、(POG)、G(POG)、(POG)、G(POG)、(POG)、G(POG)および(POG)を用い、それぞれをマウス初代骨髄細胞培養液に終濃度625μMとなるように添加し、培養から6日後にマーカー酵素である酒石酸耐性酸性リン酸エステル加水分解酵素(TRAP)の各抑制活性を調べた。同様にして、他のペプチド分子(PO、Ala−Hyp、Leu−Hyp、Phe−Hyp、Ser−Hyp、POG)、アミノ酸(Pro、Hyp)を用いたときのTRAP抑制活性を調べた。さらに、対照として、ペプチド無添加(ブランク)のときのTRAP抑制活性も調べた。
【0127】
また、さらに、各種ペプチド分子、アミノ酸による破骨細胞の分化および活性化の抑制度を、次のPitアッセイにより評価した。すなわち、破骨細胞を象牙片上で培養するPitアッセイは、Kakudo S,et al(1996).J.Bone Miner.Metab.14:129−136に準じて実施した。具体的には以下のとおりである。
【0128】
若令マウス腸管骨由来の破骨細胞の前駆細胞と骨髄ストローマ細胞含有浮遊液を、10%DMSO存在下、−80℃で凍結保存して、成熟破骨細胞を死滅させた。
【0129】
この細胞2.0×10を、象牙片をセットした96ウエルプレートの各ウエルに播きこみ、各被験ペプチドを培養液に添加して37℃、5%COで約1週間培養した。その後、シリコン製ラバーポリスマンで象牙片から細胞を除去した後、酸ヘマトキシリン溶液で象牙片を数分間染色した。この時、TRAP染色によりTRAP染色陽性多核巨細胞(破骨細胞)数を計測し、対照(ブランク)でのその細胞数に対する相対数を算出した。その後、顕微鏡下にて破骨細胞によるPit数(吸収窩の数)を計測し、ブランク(対照)に対する相対比によって各被験ペプチドの破骨細胞の活性抑制度を表示した。
結果を表1に示す。
【0130】
【表1】
【0131】
(試験数:n=6)
註) **:対照と比較して統計的に有意差あり(p<0.01)
*:対照と比較して統計的に有意差あり(p<0.05)
【0132】
<評価試験2:骨芽細胞の分化および活性化の亢進>
骨芽細胞株MC3T3−E1培養液に、デキサメタゾン(終濃度1nmol/L)、β−グリセロリン酸(終濃度5mmol/L)、アスコルビン酸(終濃度100μg/mL)をそれぞれ加えた後、EGDGHLGKPGROGE、EKDGHPGKPGROGE、(POG)、G(POG)、(POG)、G(POG)、(POG)、G(POG)および(POG)を用い、これらを前記培養液に終濃度2.5mmol/Lとなるように添加し、培養から10日後に骨芽細胞の分化および石灰化のマーカー酵素であるアルカリフォスファターゼ(ALP)の各亢進活性を調べた。同様にして、他のペプチド分子(PO、Ala−Hyp、Leu−Hyp、Phe−Hyp、Ser−Hyp、POG)、アミノ酸(Pro、Hyp)を用いたときのALP亢進活性を調べた。さらに、対照として、ペプチド無添加(ブランク)のときのALP亢進活性も調べた。結果を表2に示す。
【0133】
【表2】
【0134】
(試験数:n=6)
註) **:対照と比較して統計的に有意差あり(p<0.01)
*:対照と比較して統計的に有意差あり(p<0.05)
【0135】
<評価試験3:軟骨細胞の変性の抑制>
EGDGHLGKPGROGE、EKDGHPGKPGROGE、(POG)、G(POG)、(POG)、G(POG)、(POG)、G(POG)、(POG)を用い、各ペプチド分子を前駆軟骨細胞株ATDC5培養液に終濃度2.5mmol/Lとなるように添加し、培養から5日後に肥大化軟骨および石灰化のマーカー酵素であるアルカリフォスファターゼ(ALP)の各抑制活性を調べた。同様にして、他のペプチド分子(PO、Ala−Hyp、Leu−Hyp、Phe−Hyp、Ser−Hyp、POG)、アミノ酸(Pro、Hyp)を用いたときのALP活性を調べた。さらに、対照として、ペプチド無添加(ブランク)のときのALP活性も調べた。結果を表3に示す。
【0136】
【表3】
【0137】
(試験数:n=6)
註) **:対照と比較して統計的に有意差あり(p<0.01)
*:対照と比較して統計的に有意差あり(p<0.05)
【0138】
<評価試験4:皮膚真皮中のトロポコラーゲン量の回復>
ウィスター系雄ラット(140g)を、3日間、市販固形食(TypeMF、オリエンタル酵母社製)により予備飼育した後、カゼイン食に切り替え、3日後に皮膚創傷を発症させた。
【0139】
前記皮膚創傷は、ラットの腹部に除毛処理を3日間施すことにより発症させるようにし、具体的には、ラットにネンブタール(4mg/0.08mL/100gBW)を腹腔内投与して麻酔した後、腹部(約3×5cm)に対しバリカンによる毛刈りを行った。さらに、市販の除毛剤(Epilat除毛クリーム、カネボウ社製)を塗付し、5分間放置した後、剃刀で丁寧に剃った。この処理は、皮膚試料の採取開始の3日前から1日1回、3日間連続して行った。
【0140】
試験群を、カゼイン食群、EGDGHLGKPGROGE群、EKDGHPGKPGROGE群、(POG)群、G(POG)群、(POG)群、G(POG)群、(POG)群、G(POG)群、(POG)群、PC群、FC群、PC−CP群、PC−2群、FC−2群、PC−CP−2群に分け、各群ごとに、除毛処理当日(除毛処理後0日目)、除毛処理から1日後、除毛処理から2日後、除毛処理から4日後における、皮膚創傷回復過程の皮膚コラーゲン量の推移(総コラーゲン量当たりの比率)を測定した。
各群の食餌組成を表4に示す。
【0141】
【表4】
【0142】
上記食餌組成でラットを飼育するようにし、飼育期間を通して食餌および水は自由摂取とした。
【0143】
さらに、EGDGHLGKPGROGE群、EKDGHPGKPGROGE群、(POG)群、G(POG)群、(POG)群、G(POG)群、(POG)群、G(POG)群、(POG)群、PC群、FC群、PC−CP群、PC−2群、FC−2群、PC−CP−2群では、食餌に配合した各特定のペプチド分子、PC、FC、PC−CP、PC−2、FC−2、PC−CP−2と同一のものを10g精秤し、蒸留水20mLで保温溶解したものを各試験群のラットに1日1回正午にゾンデを用いて胃内投与した。
【0144】
各群の皮膚創傷回復過程の皮膚コラーゲン量の推移(総コラーゲン量当たりの比率)の測定結果を表5に示す。
【0145】
【表5】
【0146】
(被験動物数:n=4)
註) 異なるアルファベット間で統計的に有意差あり(p<0.05)
(注釈):皮膚トロポコラーゲン比率(%)=X÷[X+Y+Z]×100
X:0.45M NaCl水溶液可溶性コラーゲン量:トロポコラーゲン量
Y:0.5M 酢酸水溶液可溶性コラーゲン量:酸可溶性コラーゲン量
Z:0.5M 酢酸水溶液不可溶性コラーゲン量:(酸不溶性コラーゲン=架橋化コラーゲン)量
【0147】
ここで、皮膚可溶性コラーゲンの定量は、下記のようにして行った。
皮膚下の脂肪を可能な限り除去しながら処理皮膚と未処理皮膚をトリミングした。解剖用はさみで丹念に細切し、約0.2から0.3gを精秤し、14mL容遠沈管に採取した。これに冷0.45M塩化ナトリウム溶液4mLを加えてポリトロンホモゲナイザー(speed No4)で20秒間、氷冷しながらホモゲナイズした。さらに、冷0.45M塩化ナトリウム溶液2mLを加えて、冷蔵室内で回転撹拌機(TAITEC社製)を用いて24時間の抽出を行った。抽出液を冷却遠心機で20,000g、20分間遠心して上清液を採取し、中性塩可溶性コラーゲン画分とした。遠心残渣に冷0.5M酢酸を6mL加え、同様に24時間の抽出を行った。0.5M酢酸抽出液を冷却遠心機で20,000g、20分間遠心して上清液を採取し、酸可溶性コラーゲン画分とした。その遠心残渣は不溶性コラーゲン画分とした。
【0148】
中性塩可溶性コラーゲン画分と酸可溶性コラーゲン画分の各5mLには同じ容積の濃塩酸5mLを加え、不溶性コラーゲン画分には濃塩酸1mLを加え60℃で5分間加温溶解させ、さらに6N塩酸2mLで3回洗浄しながらガラス製加水分解用試験管に移し、110℃で24時間、加水分解を行った。
【0149】
そして、各コラーゲン画分の加水分解液中に含まれるヒドロキシプロリン量を比色定量することにより、各コラーゲン画分の定量を行い、これら各コラーゲン画分の総和に対する前記中性塩可溶性コラーゲン画分の相対比を算出した。
【0150】
上記ヒドロキシプロリン量の比色定量は、Firschein and Shill法により行い、具体的には、以下のようにして行った。
【0151】
試料溶液2mLに2−プロパノール2mLを加え、十分に撹拌した。ここに酸化剤であるクロラミンT液0.5mLを加えて正確に4分間放置した後、氷冷した。ここにp−ジメチルアミノベンズアルデヒド溶液5mLを加えて、十分に撹拌した後、沸騰水浴中で正確に2分間加熱した。その後、直ちに氷冷し、1時間放置した後、波長575nmで比色定量した。
【0152】
なお、クロラミンT液は、クロラミンT(5g)を蒸留水50mLに溶解調整し、冷蔵保存しておき、使用直前に酢酸緩衝液(pH6.0)で1:4に希釈して用いた。また、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド溶液(エーリッヒ溶液)は、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド粉末20gに濃塩酸22mLを加えて沸騰水中で加熱溶解し、直ちに氷水中にて冷却し、2−プロパノール122mLを加えて撹拌溶解し調製した。
【0153】
<評価試験5:腸管吸収性>
ウィスター系雄ラット(170g)を一晩絶食させて実験に供した。検体試料には、EGDGHLGKPGROGE、EKDGHPGKPGROGE、(POG)、G(POG)、(POG)、G(POG)、(POG)、G(POG)、(POG)、OG、PO、Ala−Hyp、Ser−Hypを各215nmol/10mL用い胃内投与した。
【0154】
試験方法としては、ラットの心臓と門脈にカニューレを装着して1方向性灌流を行った。灌流液としては、NaCl 9.0g、5.75%KCl 8mL、10.55%KHPO 2mL、19%MgSO 2mL、NaHCO 2.73g、グルコース3.43g、水1255mLからなるクレブス−リンガー重炭酸液(KRB液、pH7.4)に、前記KRB液500mLに対して牛血清アルブミン10g、デキサメタゾン(0.123mg/mL)0.5mL、ノルアドレナリン(0.024mg/mL)0.5mLを加えたものを用いた。
【0155】
門脈から採取された灌流試料溶液5.0mLに30%スルフォサリチル酸を0.5mL加え、激しく撹拌し、冷蔵庫で一晩放置した。この試料を3000rpmで10分間遠心分離し、除タンパク質を行った。遠心上澄液について、その0.5mL中のヒドロキシプロリン量を比色定量することにより、遊離型Hyp量を得た。
【0156】
さらに、前記遠心上澄液3.0mLをネジ口試験管に秤取し、これに当量の濃塩酸を加え、110℃で24時間加水分解した。エバポレーターで濃縮乾固し、塩酸を除去し、5mLの蒸留水に溶解し、飽和水酸化リチウム溶液を数滴加えてpH5〜7に調整し、10mLに定容した。この溶液2mLについて、ヒドロキシプロリン量を比色定量することにより、総Hyp量を得た。加水分解後の総Hyp量から、加水分解前の遊離型Hyp量を差し引いて得られる値がペプチド態Hyp量となる。このペプチド態Hyp量から、検体試料の各ペプチド分子がラット門脈灌流液中に吸収された定量値をまず確認した。
【0157】
上記において、ヒドロキシプロリン量の比色定量は、評価試験4で具体的に説明したFirschein and Shill法により行った。
【0158】
さらに、ラット門脈灌流液中に回収されたペプチド分子、すなわち、腸管吸収された各EGDGHLGKPGROGE、EKDGHPGKPGROGE、(POG)、G(POG)、(POG)、G(POG)、(POG)、G(POG)、(POG)の同定、定量を上述のMALDI−TOF/MS解析により行った。また、OG、PO、Ala−Hyp、Ser−Hypの同定、定量を下記によるHPLC分析および質量分析(LC/MS/MS)を用いて行った。
【0159】
(HPLC分析)
灌流液中のペプチド分子の分析を逆相HPLC分析により行った。HPLC装置としては、送液ポンプ、デッサ、オートサンプラ、カラムオープン、紫外部分光光度計、プリンター、システムコントローラーから構成される日本分光社製のLCSS−905システムを用いた。逆相カラムは、Nova Pak C18(3.9×150mm)を用いた。
【0160】
0.1%TFA含有アセトニトリル−水系のリニアグラディエント移動層を用い、試料注入量は70μL、流速は1mL/minであった。
【0161】
(LC/MS/MS分析)
HPLC装置としてはU980HPLC(日本分光社製)を用い、この装置はODS(C18)カラム(Mightysil RP−18,2×250mm、Kanto Chemical Co Ltd社製)を装着している。移動相溶媒としては、0.2%蟻酸含有アセトニトリル−水系とし、リニアグラディエントにより40分間で0%から40%アセトニトリルまで濃度を上昇させ、100%アセトニトリルで10分間洗浄を行った。試料注入量は10μLであり、カラム温度は40℃であった。
【0162】
MS分析は、4チャンネルのMultiple Reaction Monitoring法によるQuattro LC質量分光光度計(Micromass,Manchester,UK)によるMS/MS方式で行った。すなわち、HPLCからの溶出液を[M+H]であるm/zとそのフラグメントイオン種のm/sでモニターした。POについては[M+H]m/z:229.1>132.1を、Ser−Hypについては[M+H]m/z:219.1>132.1を、Ala−Hypについては[M+H]m/z:203.1>132.1を、OGについては[M+H]m/z:189.1>86.1を、それぞれ用いてモニターした。
【0163】
灌流液を最終濃度3%のスルフォサリチル酸処理し、除タンパク質を行った。上清液を凍結乾燥し、乾燥粉末10mgを蒸留水に溶解し、陽イオン交換樹脂カラム処理し、アンモニア溶出画分を得た。この画分の溶媒を除去し、蒸留水に溶解し、LC/MS/MS分析した。
結果は、表6に示すとおりであった。
【0164】
【表6】
【0165】
<評価試験6>
10週令のC57BL/6Jマウスに、下記表7に示す組成で各々飼料を経口摂取させた。
【0166】
【表7】
【0167】
マウスを3週間後に屠殺し、各群の大腿骨・脛骨関節部のμCT(卓上型マイクロCTスキャナ SKYSCAN1172、SKYSCAN社製)像から関節腔の幅を測定し、非脱灰ヘマトキシリン染色切片からマトリクス構造評価および細胞状態を評価した。
結果を表8に示す。
【0168】
【表8】
【0169】
(被験動物数:n=4)
註) *:N群と比較して統計的に有意差あり(p<0.05)
【0170】
<評価試験7>
(POG)、G(POG)、(POG)、G(POG)、(POG)、G(POG)、(POG)のそれぞれについて、終濃度5mmol/Lとなるように生理食塩水に可溶化したのち、濾過滅菌した。これらの溶液0.5mlを、10週令のC57BL/6Jマウスに上記表7の組成で飼料を3週間与えたC群に対して、その左大腿骨・脛骨関節腔に注射した。1週間後に屠殺し、左右の大腿骨−脛骨関節腔部の非脱灰マイヤーヘマトキシリン染色切片を作成し、病理評価した。同様にして、注射した後、3週間後に屠殺した場合についても、左右の大腿骨−脛骨関節腔部の非脱灰マイヤーヘマトキシリン染色切片を作成し、前記評価試験6でのN群の病理切片と比較して病理評価した。
結果を表9に示す。
【0171】
【表9】
【0172】
(被験動物数:n=4)
a):骨梁の増加あり。多くの骨芽細胞存在。
b):N群と同様な骨梁。骨芽および骨細胞数がN群と同等数存在。
【0173】
<性能評価試験の結果の考察>
上記結果に見るように、対照(ブランク)との比較から、特定構造のペプチド分子が、破骨細胞の分化と活性化を抑制し(表1)、骨芽細胞の分化と活性化を亢進し(表2)、軟骨細胞の変性を抑制してその分化を調節し(表3)、皮膚真皮中のトロポコラーゲン量を回復させる(表5)ことが分かる。そして、その効果は、OGを除く他のペプチド分子、アミノ酸よりも優れている。
【0174】
また、特定構造のペプチド分子は、ジペプチドには劣るものの、十分に迅速かつ安定的に(アミノ酸に分解されずに)腸管吸収されることが分かる(表6)。
【0175】
そして、表8,9に示す結果からは、特定構造のペプチド分子が、関節軟骨の変性を抑制したり、あるいは、関節軟骨の再生を促進したりすることが分かる。
【0176】
〔疾病抑制剤〕
上記特定構造のペプチド分子を用いて、本発明にかかる疾病抑制剤を得た。それらの配合例を以下に示す。
【0177】
<実施例1〜7>
表10に示す配合で、各材料を混合し、賦形剤としての結晶性セルロースを、表10に記載の配合全体に対して10部の割合で用いて、常法により打錠成形することにより、経口用として用いうる、実施例1〜7にかかる疾病抑制剤を得た。
【0178】
【表10】
【0179】
<実施例8>
上記PCを用いてチュアブルタイプのタブレットを製造した。
具体的には、下記配合成分を混合し、打錠成型器を用いて、一粒0.8gのチュアブルタイプのタブレットを調製した。このチュアブルタイプのタブレットは、全量を100%としたとき、EGDGHLGKPGROGEを0.005%、EKDGHPGKPGROGEを0.005%、(POG)を0.005%、G(POG)を0.01%、(POG)を0.05%、G(POG)を0.1%、(POG)を0.5%、G(POG)を1%、(POG)を2.5%含むものであった。
PC 50.0kg
アスコルビン酸 10.0kg
ミクロカルマグS(エスケーフーヅ社製) 4.6kg
マビット(林原社製) 19.0kg
結晶セルロース 10.0kg
乳化剤 3.2kg
アスパルテーム 0.5kg
発酵乳パウダー 1.4kg
粉末香料 1.0kg
クエン酸 0.3kg
【0180】
<実施例9>
上記PCを用い、下記配合成分を混合して、100〜140mLのお湯に溶解させて飲用する粉末コンソメスープ(1袋6.0g)を調製した。この粉末コンソメスープは、全量を100%としたとき、EGDGHLGKPGROGEを0.0035%、EKDGHPGKPGROGEを0.0035%、(POG)を0.0035%、G(POG)を0.007%、(POG)を0.035%、G(POG)を0.07%、(POG)を0.35%、G(POG)を0.7%、(POG)を1.75%含有するものであった。
PC 35.0kg
チキンエキスパウダー 25.0kg
食塩 18.0kg
ブドウ糖 7.7kg
乳酸カルシウム 7.0kg
グルタミン酸ナトリウム 4.0kg
オニオンエキスパウダー 1.0kg
HVP 1.0kg
ビーフフレーバー 0.5kg
5’−リボヌクレオチド2ナトリウム 0.5kg
ホワイトペッパー 0.2kg
ターメリック 0.1kg
【0181】
<実施例10>
上記PCを用い、下記配合成分を混合して、100〜150mLの水に溶解させて飲用する粉末ジュース(1袋13.0g)を調製した。この粉末ジュースは、全量を100%としたとき、EGDGHLGKPGROGEを0.004%、EKDGHPGKPGROGEを0.004%、(POG)を0.004%、G(POG)を0.008%、(POG)を0.04%、G(POG)を0.08%、(POG)を0.4%、G(POG)を0.8%、(POG)を2%含有するものであった。
PC 40.4kg
アスコルビン酸ナトリウム 1.2kg
エリスリトール 52.0kg
アセスルファムK 0.1kg
アスパルテーム 0.1kg
クエン酸ナトリウム 0.8kg
クエン酸(結晶) 4.6kg
マスカットフレーバー 0.8kg
【0182】
<実施例11>
上記PCを用い、下記配合成分に従い、精製水に他の配合成分を溶解し、pH3.5、B’×9.0%に調製したのち、110℃で30秒加熱殺菌処理を施し、10℃に冷却してから紙パックに無菌充填して、清涼飲料水(1パック125mL)を調製した。この清涼飲料水は、全量を100%としたとき、EGDGHLGKPGROGEを0.00025%、EKDGHPGKPGROGEを0.00025%、(POG)を0.00025%、G(POG)を0.0005%、(POG)を0.0025%、G(POG)を0.005%、(POG)を0.025%、G(POG)を0.05%、(POG)を0.125%含有するものであった。
PC 2.5kg
ビタミンミックスDN(BASFジャパン社製)0.1kg
エリスリトール 5.5kg
アセスルファムK 0.015kg
アスパルテーム 0.005kg
クエン酸 約0.6kg
フルーツミックスフレーバー 0.16L
ライチフレーバー 0.04L
精製水 残量(合計が100.0kgになるように設定)
【0183】
<実施例12>
まず、下記配合成分のうちの精製水(B)に上記PCおよびゼラチンを浸漬して30分間膨潤させたのち、80℃達温30分間加熱して完全に溶解させ、ゼラチン溶液とした。次に、下記配合成分のうちの精製水(A)にミルクオリゴ糖、粉末麦芽還元糖、エリスリトール、および難消化性デキストリンを溶解させ、煮詰めた後、アスパルテーム、前記ゼラチン溶液、予め精製水(A)の一部に溶解させたクエン酸(結晶)、ペパーミントフレーバー、ミントフレーバー、レモンフレーバー、およびベニバナ黄色素を添加し、B’×79〜81%に調製したのち脱泡し、スターチモールドに充填して室温で24時間乾燥させ、グミゼリー(1粒4g)を調製した。このグミゼリーは、全量を100%としたとき、EGDGHLGKPGROGEを0.0005%、EKDGHPGKPGROGEを0.0005%、(POG)を0.0005%、G(POG)を0.001%、(POG)を0.005%、G(POG)を0.01%、(POG)を0.05%、G(POG)を0.1%、(POG)を0.25%含有するものであった。
PC 5.0kg
ミルクオリゴ糖 41.0kg
粉末麦芽還元糖 31.0kg
エリスリトール 5.0kg
難消化性デキストリン 5.0kg
アスパルテーム 0.05kg
ゼラチン(APH250、新田ゼラチン社製) 7.0kg
クエン酸(結晶) 1.2kg
ペパーミントフレーバー 0.6L
ミントフレーバー 0.2L
レモンフレーバー 0.7L
ベニバナ黄色素 適量
精製水(A) 20.0L
精製水(B) 18.0L
【0184】
<実施例13〜17>
PCに代えて、PC−2を用いたこと以外は実施例8〜12と同様にして、各種疾病抑制剤を得た。
【0185】
<実施例18>
実施例1の(POG)を滅菌済みの生理的食塩水で2.5mMの濃度となるよう可溶化することにより、患部への注入用として用いうる、実施例18にかかる疾病抑制剤を得た。
【0186】
<実施例19〜27、比較例1〜3>
論文「Takeshita F,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2005;102:12177−12182」に準じて、疾病抑制剤の調製およびその試験を下記のとおりに行った。
【0187】
ルシフェラーゼを発現するヒト前立腺癌細胞株PC−3M(PC−3M−lu)をヌードマウス左心室から投与することで骨転移モデルを準備する。次に、ルシフェラーゼを特異的に抑制するGL3siRNAを各合成ペプチド(10μM)あるいは従来公知の一般的なDDS担体と混合後複合体化して、尾静脈から全身投与した。そのマウスをin vivoイメージングで解析することにより、骨転移巣でのルシフェラーゼの発光量を定量するIVIS(リアルタイムin vivoイメージングシステム)(Xenogen社:住商バイオサイエンス)によって評価した。
結果を表11に示す。
【0188】
【表11】
【0189】
(試験数:n=3)
註) **:対照と比較して統計的に有意差あり(p<0.01)
*:対照と比較して統計的に有意差あり(p<0.05)
註)
・PVA:ポリビニルアルコール (平均重合度約1500、和光純薬製)
・PEG:ポリエチレングリコール (平均分子量1500、和光純薬製)
・PLA:ポリ乳酸 (分子量1600〜2400、和光純薬製)
【0190】
表11に見るように、本発明の特定構造のペプチド分子を用いた場合には、siRNAのみ(対照)の場合や、従来の一般的なDDS担体を用いた場合と比べて、ルシフェラーゼ発現率が少なく、骨転移が抑制されていること、したがって、標的へのsiRNAの伝達が有効に働いていることが分かる。
【0191】
<実施例28〜36、比較例4〜6>
骨転移ヌードマウスに各合成ペプチド0.1gを0.5mLの蒸留水に可溶化して胃内投与し、投与30分後、ルシフェラーゼを特異的に抑制するGL3siRNAをこのマウスの尾静脈から全身投与した。このマウスについて、実施例19〜27と同様の評価を行った。
結果を表12に示す。
【0192】
【表12】
【0193】
(試験数:n=3)
註) **:対照と比較して統計的に有意差あり(p<0.01)
註)
・PVA:ポリビニルアルコール (平均重合度約1500、和光純薬製)
・PEG:ポリエチレングリコール (平均分子量1500、和光純薬製)
・PLA:ポリ乳酸 (分子量1600〜2400、和光純薬製)
【0194】
表12からは、本発明の特定構造のペプチド分子が、共投与によっても、標的へのsiRNAの伝達担体として有効に働いていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明にかかる疾病抑制剤は、例えば、骨粗しょう症抑制剤、変形性関節炎抑制剤、褥瘡抑制剤のほか、核酸化合物とペプチド分子の複合体などとして好適に使用することができる。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]