(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778695
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】清掃しやすい調理面、およびこのような調理面を含む台所用品または家庭用電化製品
(51)【国際特許分類】
A47J 36/02 20060101AFI20150827BHJP
【FI】
A47J36/02 B
【請求項の数】17
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-552449(P2012-552449)
(86)(22)【出願日】2011年2月10日
(65)【公表番号】特表2013-532996(P2013-532996A)
(43)【公表日】2013年8月22日
(86)【国際出願番号】FR2011050278
(87)【国際公開番号】WO2011098730
(87)【国際公開日】20110818
【審査請求日】2014年2月10日
(31)【優先権主張番号】1000583
(32)【優先日】2010年2月12日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】594034072
【氏名又は名称】セブ ソシエテ アノニム
(73)【特許権者】
【識別番号】512210135
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ド ロレーヌ
(73)【特許権者】
【識別番号】511304822
【氏名又は名称】ル ソントル ナショナル ドゥ ラ リシェルシュ シアンティフィーク
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ステファン タフェ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−フランソワ ピアソン
【審査官】
土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/093682(WO,A1)
【文献】
特表2006−511310(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/097589(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 36/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(4)上にZrおよび/またはNbおよび/またはTiを堆積された台所用品または家庭用電化調理製品用の食品調理面(8)であって、
その製造において、前記Zr、Nb、またはTiの少なくとも1種を浸炭および/または窒化するステップを含み、
前記食品調理面(8)に(Zrおよび/またはNbおよび/またはTi)−Si−(Nおよび/またはC)コーティング(6)が形成されるようにSiの堆積をも含む、
ことを特徴とする食品調理面(8)。
【請求項2】
前記堆積が、物理蒸着法によりなされることを特徴とする、請求項1に記載の調理面(8)。
【請求項3】
前記堆積が、堆積ステップ中に浸炭および/または窒化のステップを行うために反応性であることを特徴とする、請求項2に記載の調理面(8)。
【請求項4】
Siが、Zrおよび/またはNbおよび/またはTiを堆積させるのと同じ堆積ステップで堆積されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の調理面(8)。
【請求項5】
(Zrおよび/またはNb)−Si−Nを堆積させるからなることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の調理面(8)。
【請求項6】
Si含有量が、1から15at.%の間、好ましくは1から5at.%の間であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の調理面(8)。
【請求項7】
前記Zr、Nb、またはTiの1種または複数からなる金属堆積層が、浸炭相および/または窒化相の前に製造されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の調理面(8)。
【請求項8】
製造した堆積物の厚さが、2から10μmの間であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の調理面(8)。
【請求項9】
前記堆積物が、導電面上に所望の組成を有する材料からなる1または複数のシートまたはプレートの集合体により得られる1または複数の標的から製造され、前記シートまたはプレートが、積層、粉末焼結、粉末溶射またはキャスティングにより得られることを特徴とする、請求項2または3に従属する場合は請求項2から8のいずれか一項に記載の調理面(8)。
【請求項10】
前記基材(4)は、アルミニウム、銅、鋳鉄、鋼、または特にステンレス鋼からなる1枚または複数の金属シート材料からなることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の調理面(8)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の調理面(8)を含むことを特徴とする、食品を調理するための台所用品。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載の調理面(8)および前記調理面(8)を加熱するための電気手段またはガス手段を含む、食品を調理するための家庭用電化製品。
【請求項13】
物理蒸着法により、基材(4)上に、Siを含む、Zrおよび/またはNbおよび/またはTiを堆積させることにより、台所用品または家庭用電化調理製品用の食品調理面(8)を製造する方法であって、
前記Zrおよび/またはNbおよび/またはTiの少なくとも1つを浸炭および/または窒化して、(Zr/Nb/Ti)−Si−(N/C)コーティング(6)を形成するステップを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記堆積が、堆積ステップ中に浸炭および/または窒化のステップを行うために反応性である、ことを特徴とする請求項13に記載の食品調理面(8)を製造する方法。
【請求項15】
Siが、Zrおよび/またはNbおよび/またはTiを堆積させるのと同じ堆積ステップで堆積される、ことを特徴とする請求項13または14に記載の食品調理面(8)を製造する方法。
【請求項16】
前記Zr、Nb、またはTiの1種または複数からなる金属堆積層が、浸炭相および/または窒化相の前に製造される、ことを特徴とする請求項13から15のいずれか一項に記載の食品調理面(8)を製造する方法。
【請求項17】
製造した堆積物が、導電面上に所望の組成を有する材料からなる1または複数のシートまたはプレートの集合体により得られる1または複数の標的から製造され、前記シートまたはプレートが、積層、粉末焼結、粉末溶射またはキャスティングにより得られる、ことを特徴とする請求項13から16のいずれか一項に記載の食品調理面(8)を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を調理するための台所用品および家庭用電化製品の分野、さらに詳細には処理される食品と接触する前記台所用品または家庭用電化製品の調理面に係る発明である。
【背景技術】
【0002】
本発明の目的は、炭化物、窒化物または炭窒化物の形態のTi、Zr、Nbを堆積させた調理面、特に本出願人の名前で出願された特許出願の特許文献1、特許文献2および特許文献3に記載されているような調理面の改善に係る発明である。
【0003】
このような調理面は、食品を調理する面(以下、食品調理面)として使用した後、清掃しやすいという特性を有し、この清掃容易性は、炭化した食品を調理面から容易に除去することが可能である。
【0004】
染み(Staining)の現象は、ある種の食品と接触したときこのような調理面上で時々観察された。これらの染みの現象は、多様な構造および組成の堆積物がこれらの染みの出現および/または程度に影響を与える前に表面を調製しないと前記堆積物上で起こる。
【0005】
この現象の分析から、このような染みが、表面と反応する油によりおよび/または表面の酸化により動物性油で調理する際に本質的に形成されることが特に示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】仏国特許第2,848,797号明細書
【特許文献2】仏国特許第2,883,150号明細書
【特許文献3】仏国特許第2,897,250号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これらの表面に特有の清掃容易性を損なうことなく、このようなコーティングの耐酸化性を高めることにより、これらの染みの出現を著しく減少させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、Zrおよび/またはNbおよび/またはTiを基材上に堆積させた台所用品または家庭用電化調理製品のための食品調理面であって、前記調理面に、(Zrおよび/またはNbおよび/またはTi)−Si−(Nおよび/またはC)コーティングが施されるようにするために、Siの堆積も含むように少なくとも1種の成分を浸炭および/または窒化するステップを含む製造プロセスにより得られるものである。
【0009】
「(Zrおよび/またはNbおよび/またはTi)−Si−(Nおよび/またはC)コーティング」という用語は、窒化および/または浸炭のステップが成分Zr、NbおよびTiの堆積中または堆積後に起こり、その結果得られる成分Siも含むZr系および/またはNb系および/またはTi系コーティングを意味するものである。
【0010】
したがって、本発明は、製造プロセス中のケイ素の添加により、調理面として使用する炭化物、窒化物または炭窒化物の形態のZr系および/またはNb系および/またはTi系の先行技術における層の化学的不活性を改善することを提案するものである。
【0011】
様々な研究および分析から、調理面でのケイ素の存在により、製造条件に応じて、染みが非常に軽減されるか、または染みが全く形成されないことが実際に示された。
【0012】
さらに、様々な試験から、ケイ素の添加は、硬度、したがって引っかき抵抗性を高め、製造される層の接着性を改善することもできることが示された。
【0013】
驚くべきことに、ケイ素の添加により、調理面として使用した後で清掃しやすいというこれらの層の特性が損なわれなかっただけでなく、この特性が強化され、したがって、最初に求められた目標を越えてこれらの層の様々な質が著しく改善された。
【0014】
好ましい製造方法によれば、堆積物は、通常PVDと省略される物理蒸着法で製造される。物理蒸着法は、少量の材料を使用して、基材上に材料の薄層を施し、調理面を製造することができるので、これらの材料の原材料費が低減されるという利点を有する、材料を堆積させるための先行技術のプロセスである。さらに、この堆積技法により、堆積物を堆積させる基材上に強く接着する堆積物を得ることができる。したがって、使用中に堆積物が分離するリスクは、最小限に抑えられる。調理面を含む台所用品または家庭用電化調理製品などの調理器具で食品を扱う際、前記調理面はフォーク、ナイフおよび他の台所用器具の使用により誘導される機械的応力に耐えることができなくてはならないため、この態様は重要である。
【0015】
堆積物は、堆積ステップ中に浸炭および/または窒化のステップが行われるように、反応により、すなわち例えば窒素、アセチレン、メタンなどの反応ガスの存在下で有利には製造されるので、処理時間が削減されると同時に、コーティングの硬度が増す。
【0016】
Siもコストおよび堆積時間を合理化するためにZrおよび/またはNbおよび/またはTiを堆積させるのと同じ堆積ステップで有利に堆積させる。
【0017】
本発明の好ましい実施例によれば、調理面は、その優れた耐酸化性により(Zrおよび/またはNb)−Si−Nを堆積させることにある。さらに、窒素の存在下での堆積物は、アセチレンまたはメタンの存在下での堆積物よりも容易に製造される。
【0018】
Siの含有量は、有利には1から15at.%の間であり、好ましくは1から5at.%の間である。先に言及したように、調理面上の染みの出現の減少に対する顕著な効果は、1at.%超のSiの含有量でのみ明らかであり、これはまたコーティングに良好な引っかき抵抗性を与える最低含有量であることが分かった。さらに、過剰なSi含有量は、得られた層の構造を変化させ、それにより、低Si量で得られた質を損なう場合がある。
【0019】
実施形態の好ましい方法によれば、成分Zrおよび/またはNbおよび/またはTiの1種または複数からなる金属堆積層を、コーティングと基材との間の接着を強化するために浸炭相および/または窒化相より前に製造する。
【0020】
さらに、金属層を堆積させることは、反応ガスでこの同じ層を堆積させるよりも速いので、全体的な堆積プロセスが促進される。
【0021】
製造した堆積物の厚さは、このコーティングの処理時間およびコストを最適にするように2から10μmの間である。
【0022】
物理蒸着法を使用する場合、物理的溶射プロセスは、基材と、導電面上に所望の組成を有する材料からなる1枚または複数のシートまたはプレートの集合体により得られる1種または複数の標的であって、前記シートまたはプレートが、積層、粉末焼結、粉末溶射またはキャスティングにより得られる標的との間に電圧差を加えることにより実現される。一般に、例えば、反応性カソードアーク蒸発法などの任意の物理蒸着法が使用できる。
【0023】
基材は、以下の材料:アルミニウム、銅、鋳鉄、鋼、特にステンレス鋼の1枚または複数の金属シートからなることができる。
【0024】
本発明は、上述したように調理面を含む食品を調理するための台所用品にも関する。
【0025】
具体的には、このような台所用品はスキレット、ソースパン、ダッチオーブン、中華鍋などであってよい。
【0026】
本発明は、調理面を加熱するための電気手段またはガス手段とともに調理面を含み、前記調理面が上に記載した特徴の1つに適合する、食品を調理するための家庭用電化製品にも関する。
【0027】
具体的には、このような家庭用電化製品は、食事を用意するための加熱器具、ラクレットグリル、フォンデュ用電気器具、フライヤー、パン焼き器、炊飯器などであってよい。
【0028】
試験の結果による他の利点は、添付の図面について言及する以下の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】2つのコーティングの内の1つが本発明によるコーティングである、2つのコーティングの斜入射X線回折の出力を示す図である。
【
図2】2つのコーティングの内の1つが本発明によるコーティングである、2つのコーティングの走査電子顕微鏡下で観察された破面解析を示す図である。
【
図3】2つのコーティングの内の1つが本発明によるコーティングである、2つのコーティングの走査電子顕微鏡下で観察された破面解析を示す図である。
【
図4】2つのコーティングの内の1つが本発明によるコーティングである、2つのコーティングの引っかき抵抗性試験の結果を示す図である。
【
図5】
図1と同様の出力であるが、
図1のものと異なるコーティングを示す図である。
【
図6】本発明の特性の内の1つを例示する写真を表す図である。
【
図7】本発明の特性の内の1つを例示する写真を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の第1の例示的実施例は、前記基材の脱脂およびイオンエッチング後にステンレス鋼基材上にNbNコーティングを堆積させることに関する。製造方法は反応蒸発法であって、プラズマを製造するのに必要なアルゴンのみが本質的に存在する室内を超高真空にした後、金属標的の溶射が、窒素をアルゴンプラズマ中に導入することにより実現されるので、ニオブを含有する金属標的の溶射により、窒化ニオブ(NbN)を得ることができる。
【0031】
様々な製造パラメーターは、所望の特徴を有するのに十分な厚さであるが、基材に対する良好な接着性を維持するのに過度に厚くない層を得る目的で、堆積速度(コーティングの厚さ)および堆積物の質を変えるために変化させてもよい。
【0032】
マグネトロンの使用は、室内の圧力を下げることにより堆積速度を高めると同時に、密で純粋なコーティングを得ることができるように選択された。
【0033】
さらに、特に堆積速度およびコーティングの結晶構造に対する窒素の流速の影響から、約1.5μm/hから4μm/hの堆積速度を得るのに最適な流速の範囲を見出すことができた。
【0034】
層の特徴の1つは、増幅後、コーティングの表面を通過する針の動きが紙上に打ち出され、急な振れが針と基材との接触を示す、表面形状測定装置で測定したその厚さである。コーティングの厚さは、キャリブレーションによるか、またはグラフを用いるかのいずれかによりこの振れを測定することにより測定できる。同様の結果は、非接触表面形状測定装置でも得ることができる。この測定は、SEM(走査電子顕微鏡)断面分析で補足される。最後に、コーティングの厚さは、「カロテスト(Calotest)」(登録商標)法などのマイクロメーターのコーティングの厚さを正確に測定できる任意の他の方法により、または光学顕微鏡法によりコーティングの一片または破面を調べることにより測定できる。
【0035】
別の測定は、Castaingマイクロプローブを使用することによるか、電子衝撃後のコーティングからの電子の脱励起を観察することにより、励起電子の性質が示される、走査型電子顕微鏡と組み合わせたエネルギー分散型X線分光計によるか、または層の様々な結晶相を特定するためのBragg−Brentano型X線回折計により実現される、コーティングの化学分析に関する。
【0036】
機械的特性、特に引っかき抵抗性を、0.1から5Nの段階的負荷下でコーティング面に対して通常数マイクロメーターから数十マイクロメーターの範囲で曲率半径を有するダイヤモンド針を可動的に当てることにある、「マイクロスクラッチテスター」として一般に知られる装置により決定する。装置に備えられた様々なセンサーにより、浸透深さおよび摩擦係数を決定できる。
【0037】
本発明によれば、ケイ素標的を処理反応器に導入する。種々の堆積物を、前記のNbN堆積用に最適化されたパラメーターを維持することにより製造した。ケイ素標的の強度のみを調整し、様々な種々のコーティングのSi含有量を変更した。
【0038】
種々のコーティングのこのSi含有量を、既に記載したのと同じ技法により測定する。
【0039】
化合物NbNが化学量論量であると想定すると、Si/Nb比は、Siの原子濃度を決定するために使用でき、したがって化合物が示すSiの質量濃度が決定され得る。
【0040】
得られた種々のコーティングの分析は、Si量が増加するにつれて、コーティングがますます微細に結晶化されることを示している。
【0041】
Siを加えた種々のコーティングの耐酸化性に関しては、堆積物はすべて500℃の温度で2時間の焼きなましのステップを経て、同じ焼きなましを経たNbNコーティングと比較したコーティングの酸化レベルを観察した。
【0042】
図1は、NbNコーティング(破曲線)を堆積させたステンレス鋼基材およびNb−Si−Nコーティングを堆積させたステンレス鋼基材の斜入射X線回折の出力物を示しており、Si/Nbの原子比率は0.27(実曲線)であり、両方の試料は、既に記載したように焼きなましを経た。
【0043】
これらの出力物において、「a」のピークは化合物NbNに対応している一方で、「b」のピークは酸化ニオブに対応している。
【0044】
2つの曲線の比較は、ケイ素の添加により、表面酸化物の存在が著しく減少しており、ケイ素をNbN系コーティングに加えた場合、酸化ニオブのピークの強度が非常に低下していることを示している。したがって、耐酸化性は改善されている。
【0045】
各々
図2および3に示した焼きなまし後のこれら2つのコーティングNbNおよびNb−Si−Nの2次電子像モードでの走査電子顕微鏡の断面解析は、先の曲線を裏付けている。実際に、NbNコーティング2上の酸化物の厚さe
1はコーティングの全体の厚さに対応しており、元になる化合物4は基材であり、この酸化物の厚さは、表面のみ酸化したNb−Si−Nコーティング6上の酸化物の厚さe
2を著しく上回っている。したがって、コーティング6は、本発明による調理面8を形成している。したがって、調理面8は、Nb−Si−Nを堆積させることからなる。
【0046】
さらに、引っかき抵抗性試験から、ケイ素の添加により、硬度ならびに基材に対するコーティングの接着性が改善されることが示された。
図4は、加えられた負荷に対するコーティングにおける装置のダイヤモンド針の浸透深さを示している。破曲線は、NbNコーティングに対応している一方で、実曲線は、Si量が4at.%のNb−Si−Nコーティングに対応している。Siの添加により、約1at.%のやや低いSi量でも硬度を著しく高めることができることが疑いもなく明らかである。
【0047】
また、このテスト中に種々のセンサーにより記録された情報から、1at.%超のSi含有量についてはフィルムの接着性の改善が確認された。
【0048】
後者が調理面として使用された場合のコーティングの清掃容易性を評価するために、様々な調理試験が、プライノメーター試験を行う前に、出願人の名前で既に引用された出願に概説されている方法に従って行われた。
【0049】
しかし、基材はフェライト系ステンレス鋼、アルミニウムおよびオーステナイト系ステンレス鋼の3つの連続する層からなり、これらの層はすべて、0.4mmの厚さを有する。選択したコーティングを堆積させる前に、純粋なニオブからなる1μmの厚さの層を施し、基材とコーティングとの間の良好な接着を確実にする。
【0050】
次いで、調理を施す前にコーティングを、十分な厚さ(約3μm)で堆積させ、清掃容易性試験をプライノメーターで行う。
【0051】
図6および7に例示したこのような試験から、
図7に例示したケイ素をドープしたNbNコーティングが、
図6に例示した無添加のNbNコーティングよりも清掃しやすいことが驚くべきことに確実に示される。
【0052】
この態様は、コーティングの他の特性の改善、特に酸化による染みの減弱、さらには消失と関連しているという点でなおさら驚くべきものである。
【0053】
したがって、NbNを堆積させる際のケイ素の添加により、前記堆積物に関して以下の利点がもたらされる:
耐酸化性の増加、
硬度の増加、
基材に対する接着性の改善、
結合性の改善、および、
さらなる清掃容易性。
【0054】
さらに、NbNのみを堆積させることにより最初に得られた色は、Siの添加により変化することはない。
【0055】
本発明の第2の実施例は、ZrNコーティングの堆積およびケイ素の添加による効果に関する。したがって、調理面は、Zr−Si−Nを堆積させることからなる。
【0056】
ニオブと同様に、第1のステップは、Zr−Si−N化合物を製造する前にZrNを堆積させるのに最適な条件を決定することからなった。
【0057】
次いで、Nbと同じ動作手順が実施され、コーティングのSi含有量を変化させることにより様々な試験を行い、次いで得られた種々のコーティングの特徴を評価した。
【0058】
これらの試験からも、Siの添加により、X線回折ピークが拡大されることが確認され、したがって、ケイ素の量が増加するにつれて、構造がより微細に結晶化されることが示された。
【0059】
図1と同様に、
図5はZrNコーティング(破曲線)を堆積させたステンレス鋼基材およびZr−Si−Nコーティングを堆積させたステンレス鋼基材の斜入射X線回折の出力物を示しており、Si/Zrの原子比率は0.04(実曲線)であり、これは化合物ZrNが化学量論量であると想定すると、2at.%のSi含有量に対応しており、これらのコーティングは測定前に2時間で500℃に加熱した空気中での熱処理を経た。
【0060】
「a’」のピークは、化合物ZrNに対応している一方で、「b’」のピークは化合物ZrO
2に対応している。ニオブの場合のように、ケイ素の添加により、製造した層の耐酸化性が改善される。
【0061】
硬度に関しては、ケイ素の添加はほとんど影響を及ぼさない。ZrNコーティングは良好な硬度特性を有しており、例えばダイヤモンド針を使用した硬度試験で、5N下で9.7μmの浸透が得られた。ケイ素の添加により、硬度特性がわずかに低下し、5N下で10.5μmの浸透が、2at.%のSiのZr−Si−Nコーティングで得られ、5N下で12.5μmの浸透が、4at.%のSiのZr−Si−Nコーティングで得られた。
【0062】
無添加のZrNコーティングは、良好な「清掃容易性」を示すコーティングであり、ケイ素の添加によりこの特性がわずかに増大する。
【0063】
コーティングにケイ素をドープした場合、そもそもNbNコーティング上ほどZrNコーティング上では顕著でない染みは消失する。
【0064】
本発明は言及した実施形態の例に限定されるものではない。
【0065】
代わりの選択肢として、ケイ素をドープしたコーティングは、ZrNまたはNbNではなくTiNであってもよい。
【0066】
代わりの選択肢として、本発明は、硬度を高めるか、および/またはコーティングの色を変化させる目的で、窒化ジルコニウムまたは窒化ニオブだけでなく、Nbおよび/またはZrおよび/またはTiの組合せに基づくコーティングの製造にも関する。
【0067】
さらに、Siの添加は、炭化物または炭窒化物を製造するために、種々のまたは補足的な反応ガス、例えばアセチレンまたはメタンで堆積させる場合にも有益である。
【0068】
したがって、本発明は、基材4上にZrおよび/またはNbおよび/またはTiを堆積させることからなり、製造が成分の少なくとも1種の浸炭および/または窒化のステップを含む、台所用品または家庭用電化調理製品のための食品調理面8であって、前記面が、(Zrおよび/またはNbおよび/またはTi)−Si−(Nおよび/またはC)コーティング6を製造するためにSiを堆積させることも含む、食品調理面8に関する。Zrおよび/またはNbおよび/またはTiは、堆積ステップ中に浸炭および/または窒化のステップを行うために有利には反応的に堆積させる。Siは、Zrおよび/またはNbおよび/またはTiを堆積させるのと同じ堆積ステップで堆積させてもよい。成分Zr、NbまたはTiの1種または複数からなる金属堆積層は、浸炭相および/または窒化相の前に製造できる。製造した堆積物の厚さは有利には2から10μmの間である。