(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の内歯は、前記開口部の前記ラチェットギヤに対向する内側周縁部のうち、前記巻取ドラムの回転軸心に対して、少なくとも前記ウエビングの引き出し側の半径方向から該ウエビングの引き出し時の該巻取ドラムの回転方向側の内側周縁部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシートベルト用リトラクタ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るシートベルト用リトラクタについて具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
[概略構成]
先ず、本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の概略構成について
図1及び
図2に基づき説明する。
図1は本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の外観斜視図である。
図2はシートベルト用リトラクタ1をユニット別に分解した斜視図である。
【0018】
図1及び
図2に示すように、シートベルト用リトラクタ1は、車両のウエビング3を巻き取るための装置であって、ハウジングユニット5と、巻取ドラムユニット6と、プリテンショナユニット7と、巻取バネユニット8と、ロックユニット9とから構成されている。
また、ロックユニット9は、後述のようにハウジングユニット5を構成するハウジング11の側壁部12に固設され、ウエビング3の急激な引き出しや車両の急激な加速度の変化に反応してウエビング3の引き出しを停止する起動動作を行う。
【0019】
また、後述のプリテンショナ機構17(
図6等参照)を備えたプリテンショナユニット7は、平面視略コの字状のハウジングユニット5の相対向する各側板部13、14の上下端縁部から略直角内側方向に延出されてネジ孔が形成された各ネジ止め部13A、13B、14A、14Bに、各ネジ15及びストッパーネジ16によってネジ止めされる。これにより、プリテンショナユニット7は、ハウジング11の側壁部12に相対向する他方の側壁部を構成する。
【0020】
また、巻取バネユニット8は、プリテンショナユニット7の外側にバネケース56(
図5参照)に一体形成された各ナイラッチ8Aによって固設される。
そして、ウエビング3が巻装される巻取ドラムユニット6は、ハウジングユニット5の側壁部12に固設されたロックユニット9とプリテンショナユニット7との間に回転自在に支持される。
【0021】
[巻取ドラムユニットの概略構成]
次に、巻取ドラムユニット6の概略構成について
図2乃至
図5に基づいて説明する。
図3は巻取ドラムユニット6の斜視図である。
図4はシートベルト用リトラクタ1の断面図である。
図5は巻取ドラムユニット6、プリテンショナユニット7及び巻取バネユニット8の分解斜視図である。
【0022】
図2乃至
図5に示すように、巻取ドラムユニット6は、ガイドドラム21と、ドラムシャフト22と、トーションバー23と、ワイヤ24と、ワイヤプレート25と、ラチェットギヤ26と、ベアリング32とから構成されている。
【0023】
ガイドドラム21は、アルミ材等により形成されて、プリテンショナユニット7側の端面部が閉塞された略円筒状に形成されている。また、ガイドドラム21の軸心方向のプリテンショナユニット7側の端縁部には、外周部から径方向に延出され、更に略直角外側方向に延出されたフランジ部27が形成されている。また、このフランジ部27の内周面には、後述のように車両衝突時に各クラッチパウル29が係合するクラッチギヤ30が形成されている。
【0024】
また、ガイドドラム21のプリテンショナユニット7側の端面部中央位置には、円筒状の取付ボス31が立設され、スチール材等により形成されるドラムシャフト22が圧入等によって固着されている。また、この取付ボス31の外周には、ポリアセタール等の合成樹脂材により形成された略円筒状の筒状部32Aとその基端部の外周に基端フランジ部32Bが連設されたベアリング32が嵌め込まれている。そして、巻取ドラムユニット6は、このベアリング32を介してプリテンショナユニット7を構成するスチール材等で形成されるピニオンギヤ体33の軸受け部33A(
図6、
図8参照)に回転可能に支持される。
【0025】
また、ガイドドラム21の内側には、中心軸に沿って徐々に細くなるように形成された軸孔21Aが形成されており、この軸孔21A内のフランジ部27側端部には、スチール材等により形成されるトーションバー23の一端部に形成されるスプライン23Aが圧入されるスプライン溝が形成されている。これにより、トーションバー23のスプライン23A側をガイドドラム21の軸孔21Aに挿入してフランジ部27に当接するまで圧入することによって、トーションバー23がガイドドラム21内に相対回転不能に圧入固定される。
【0026】
また、ガイドドラム21の軸心方向のロックユニット9側には、端縁部から少し内側の外周面から径方向に延出されたフランジ部35が形成されている。また、このフランジ部35から軸心方向外側の部分は少し外径が細くなった円筒状の段差部36が形成されている。また、この段差部36の外側端面部には径方向の対向する位置に一対の突き出しピン37、37が立設されている。
【0027】
また、フランジ部35の外側面には、後述のように所定形状の凸部(
図18参照)が形成され、ステンレス材等の金属材からなる線材状のワイヤ24が、この凸部の形状に合わせて段差部36の基端部外周に装着される。
また、フランジ部35の外周部は、アルミ材等により形成されて、内側面の外周部に該フランジ部35から外側に突出するワイヤ24が嵌め込まれる凸部38が形成された側面視略卵形のワイヤプレート25で覆われている。
【0028】
また、このワイヤプレート25の中央部には、段差部36が挿通される貫通孔40が形成されると共に、この貫通孔40の軸心方向外側の外周部には、内周面から半径方向内側に円弧状に突出する2個の凸部が、径方向において互いに対向するように形成された一対の嵌合凸部41が設けられている。また、この貫通孔40の各嵌合凸部41に挟まれた軸心方向外側の外周部には、径方向において互いに対向するように4対のカシメピン39が立設されている。また、各カシメピン39の基端部には、半円弧状に所定深さ窪んだ凹み部39Aが形成されている。
【0029】
また、ラチェットギヤ26は、スチール材等により形成された円板状で、外周部から軸心方向に段差部36とほぼ同じ高さまで延出された円筒状の延出部42が形成され、その延出部42の外周面に、ラチェットギヤ部45が形成されている。このラチェットギヤ部45は、後述のように車両衝突時に複数の内歯88(
図10参照)が形成された係合ギヤ部89(
図10参照)に係合した係合状態にロックされ、また、車両緊急時にパウル43(
図9参照)が係合する。
【0030】
また、延出部42の軸心方向ガイドドラム21側の端縁部には、外周部から径方向に延出された回り止めフランジ46が形成され、更に、その外周部に半径方向内側に円弧状に窪む2個の凹み部が、径方向において互いに対向するように形成された一対の嵌合凹部46Bが設けられている(
図5参照)。また、この回り止めフランジ46の各カシメピン39に対向する軸心方向外側面には、半円弧状に所定深さ窪んだ各凹み部46Aが形成されている。
【0031】
また、ラチェットギヤ26の各突き出しピン37に対向する位置には、該各突き出しピン37が嵌入される各貫通孔47が穿設されている。また、各貫通孔47の周囲は、所定深さ窪んだ凹み部47Aが形成されている。また、ラチェットギヤ26の外側中心位置には、軸部48が立設されている。また、軸部48の外周面には、スプライン48Aが形成されている。そして、巻取ドラムユニット6は、この軸部48を介してロックユニット9に回転可能に支持される。
【0032】
また、ラチェットギヤ26の内側面の中央部には円筒状の固定ボス49が立設されており、この固定ボス49の内周面には、トーションバー23の他端側に形成されるスプライン23Bが嵌入されるスプライン溝が形成されている。なお、トーションバー23の他端側に形成されるスプライン23Bの外径は、該トーションバー23の一端側に形成されるスプライン23Aの外径とほぼ同じ径に形成されている。
【0033】
従って、先ず、ワイヤプレート25の各嵌合凸部41にラチェットギヤ26の回り止めフランジ46の各嵌合凹部46Bを嵌入する。その後、各カシメピン39を、その基端部の凹み部39A及び相対向する位置に形成された回り止めフランジ46の凹み部46Aとの内側に広がるようにカシメる。そして、ガイドドラム21のフランジ部35の外側面に、ワイヤ24を装着する(
図18参照)。
【0034】
続いて、その外側にワイヤプレート25及びラチェットギヤ26を被せて、ラチェットギヤ26の各貫通孔47に、ガイドドラム21の各突き出しピン37を挿通させつつ、固定ボス49内にトーションバー23の他端側に形成されたスプライン23Bを嵌入する。その後、各突き出しピン37を貫通孔47の周囲に形成された凹み部47Aの内側に広がるようにカシメる。
【0035】
これにより、ラチェットギヤ26及びワイヤプレート25が、相対回転不能に固定されると共に、このラチェットギヤ26及びワイヤプレート25が、トーションバー23及び各突き出しピン37を介してガイドドラム21に対して相対回転不能に固定される。また、ガイドドラム21のフランジ部27とフランジ部35及びワイヤプレート25との間の外周面にウエビング3が巻装される。
【0036】
[巻取バネユニットの概略構成]
次に、巻取バネユニット8の概略構成について
図2、
図4及び
図5に基づいて説明する。
図2、
図4及び
図5に示すように、巻取バネユニット8は、渦巻バネを含む巻取付勢機構55と、この巻取付勢機構55を収容するバネケース56と、バネシャフト58と、から構成されている。そして、スチール材等で形成されるプリテンショナユニット7の外側面を構成するカバープレート57の各貫通孔51に、バネケース56の3箇所に設けられた各ナイラッチ8Aを介して固定される。そして、巻取ドラムユニット6のドラムシャフト22の先端部が、バネケース56内のバネシャフト58を介して渦巻バネに結合され、渦巻バネの付勢力によって巻取ドラムユニット6をウエビング3の巻取方向に常時付勢する構造とされている。
【0037】
[プリテンショナユニットの概略構成]
次に、プリテンショナユニット7の概略構成について
図4乃至
図8に基づいて説明する。
図6はプリテンショナユニット7をハウジングユニット5への取り付け面側から見た斜視図である。
図7はプリテンショナユニット7の一部切り欠き側面図である。
図8は
図6のプリテンショナユニット7を分解した分解斜視図である。
【0038】
図4乃至
図8に示すように、プリテンショナユニット7は、車両衝突時等にガス発生部材61を作動させ、このガスの圧力を利用して巻取ドラムユニット6のフランジ部27を介して該巻取ドラムユニット6をウエビング3の巻取方向に回転させるプリテンショナ機構17を備えている。
【0039】
ここで、プリテンショナ機構17は、ガス発生部材61と、パイプシリンダ62と、ガス発生部材61のガス圧を受けてパイプシリンダ62内を移動するシールプレート63及びピストン64と、このピストン64に形成されたラックに噛合して回転するピニオンギヤ体33と、このパイプシリンダ62が取り付けられるベースプレート65と、このベースプレート65にパイプシリンダ62のピニオンギヤ体33側の側面に当接して配設される略直方体状のベースブロック体66と、ベースプレート65の外側面に配設されるクラッチ機構68とから構成されている。
【0040】
また、ピニオンギヤ体33は、スチール材等で形成された略円筒状で、その外周部にピストン64に形成されたラックに噛合するピニオンギヤ部71が形成されている。また、このピニオンギヤ部71の軸心方向カバープレート57側の端部から外側方向に延出される円筒状の支持部72が形成されている。また、この支持部72は、ピニオンギヤ部71の谷径を外径として、このカバープレート57の厚さ寸法にほぼ等しい長さに形成されている。
【0041】
また、このピニオンギヤ部71の軸心方向ベースプレート65側の端部には径方向に張り出すフランジ部73が形成されている。さらに、このフランジ部73から外側方向に略円筒状で巻取ドラムユニット6のドラムシャフト22が挿通されると共にベアリング32が嵌入される軸受け部33Aが形成されたボス部74が形成されている。また、このボス部74の外周面には、基端部の外径を有する3個ずつのスプラインが中心角約120度間隔で形成されている。
【0042】
また、クラッチ機構68は、スチール材等で形成された略円環状のパウルベース76と、アルミ材等で形成された3個のクラッチパウル29と、ポリアセタール等の合成樹脂で形成されて、後述のようにパウルベース76と共に各クラッチパウル29を挟持する略円環状のパウルガイド77とから構成されている(
図15等参照)。
【0043】
また、パウルベース76の内周面には、ピニオンギヤ体33のボス部74に形成されたスプラインが圧入されるスプライン溝が中心角約120度間隔で3個ずつ形成されている。また、パウルガイド77の内周径は、パウルベース76のスプライン溝よりも大きく形成されると共に、このパウルガイド77の外側の側面部の3カ所に、等角度で各位置決突起77Aが突設されている。
【0044】
そして、クラッチ機構68のパウルガイド77の外側の側面部に突設される各位置決突起77Aを、ベースプレート65の各位置決孔81に嵌入して、該クラッチ機構68をベースプレート65の外側面に配置する。続いて、
図8に示すように、ピニオンギヤ体33のボス部74を、ベースプレート65の略中央部に形成された貫通孔83に嵌入後、該ボス部74に形成される各スプラインをクラッチ機構68を構成するパウルベース76の各スプライン溝に圧入固定する。これにより、クラッチ機構68とピニオンギヤ体33とが、ベースプレート65に配設固定されるとともに、ピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部71が、
図7に示す位置に常に位置決め固定される。
【0045】
また、ベースブロック体66は、ポリアセタール等の合成樹脂で形成されている。そして、このベースブロック体66の内側の側端縁部から内側方向に平面視略半円状に窪むように形成されると共に底面部が外側方向に突出するリング状に形成されたギヤ収納部85の該底面部の貫通孔82内にピニオンギヤ体33のフランジ部73を挿通させる。また、このベースブロック体66のベースプレート65側の側面部に突出する各位置決めボス79を、ベースプレート65の各位置決孔80に嵌入して、該ベースブロック体66をベースプレート65の内側面に配置する。
【0046】
また、ベースブロック体66の外側側面部からベースプレート65側に延出されて、外側方向に弾性変形可能に形成された弾性係止片66Aと、このベースブロック体66の下側側面部からベースプレート65側に延出されて、外側方向に弾性変形可能に形成された弾性係止片66Bとをそれぞれベースプレート65の側端部に係止する。これにより、ベースブロック体66がベースプレート65に配設される。また、ベースブロック体66の中央部には、カバープレート57側に開口される凹部86が形成され、軽量化を図っている。
【0047】
尚、ベースプレート65の略中央部に形成される貫通孔83の内径は、ピニオンギヤ体33のボス部74の基端部の外径を支持できる径に形成されて、ピニオンギヤ体33の一端側を回転可能に支持することが可能に構成されている。また、ギヤ収納部85の高さは、ピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部71とフランジ部73の高さの和にほぼ等しくなるように形成されている。
【0048】
続いて、プリテンショナ機構17を構成するパイプシリンダ62の構成及び取り付けについて
図5乃至
図8に基づいて説明する。
図5乃至
図8に示すように、パイプシリンダ62は、スチールパイプ材等で略L字状に形成されている。そして、その一端側(
図7中、下側折曲部分)は、略円筒状の収納部62Aが形成されて、ガス発生部材61を収納するように構成されている。このガス発生部材61は、火薬を含んでおり、図示省略の制御部からの着火信号により該火薬を着火させてガス発生剤の燃焼でガスを発生させるように構成されている。
【0049】
また、パイプシリンダ62の他端側(
図7中、上側折曲部分)は、断面略長方形のピストン収納部62Bが形成されて、ピニオンギヤ体33に対向する部分に切欠部111が形成され、ベースプレート65上に配設した場合に、該切欠部111内にピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部71が填り込むように構成されている。また、ピストン収納部62Bの上端部には、ベースブロック体66側の側面部に、ベースプレート65から略直角に折り曲げられた折曲部112が嵌入されて、パイプシリンダ62の上下方向の抜け止めとして機能する切欠部113が形成されている。また、切欠部113の横側の両側面部には、プリテンショナユニット7をハウジングユニット5に取り付けると共に、ピストン64の抜け止めとして機能するストッパーネジ16を挿通可能な相対向する一対の貫通孔114が形成されている。
【0050】
また、
図7及び
図8に示すように、シールプレート63は、ゴム材等でピストン収納部62Bの上端側から挿入可能な略長方形の板状に形成されている。また、シールプレート63は、長手方向両端縁部から上方に延出されると共に、それぞれの上端部の全幅に渡って内側方向に突出する一対の突起部63Aが形成されている。また、シールプレート63の中央部には、ガス抜き孔63Bが形成されている。
【0051】
また、ピストン64は、スチール材等で形成されて、ピストン収納部62Bの上端側から挿入可能な断面略長方形で、全体として長尺状の形状を有している。また、ピストン64の下端部には、シールプレート63の各突起部63が横方向から嵌め込まれる各嵌入溝64Aが形成されている。また、ピストン64の下端面には、この下端面から該ピストン64の側面部に形成された貫通孔64Bに連通する細径の連通孔64Cが形成されている。
【0052】
そして、シールプレート63の各突起部63Aをピストン64の各嵌入溝64に横側からスライドさせて嵌入後、シールプレート63を奥側にして、ピストン収納部62Bの上端側から奥に圧入する。また、シールプレート6のガス抜き孔63Bは、ピストン64の連通孔64Cを介して貫通孔64Bに連通している。
【0053】
従って、この状態で、ガス発生部材61で発生したガスの圧力によって、シールプレート63が押圧されて、ピストン64がピストン収納部62Bの上端側開口部(
図7中、上端部)へ移動する。また、後述のようにウエビング3が再度引き出される場合には、ピニオンギヤ体33の逆回転によってピストン64が下方に下がる際に、シールプレート63のガス抜き孔63B、ピストン64の連通孔64C及び貫通孔64Bを介してパイプシリンダ62内のガスが抜け、スムーズにピストン64が下がる。
【0054】
また、ピストン64のピニオンギヤ体33側の側面には、このピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部71に噛合するラック116が形成されている。また、ラック116の先端部(
図7中、上端部)の背面は、ストッパーネジ16に当接可能な段差部117が形成されている。また、
図7に示すように、ガス発生部材61が作動するまでの通常状態では、ピストン64はピストン収納部62Bの奥側に退避して、ラック116の先端がピニオンギヤ部71に非噛合状態となるように位置している。
【0055】
そして、
図7に示すように、このように構成されたピストン収納部62Bの切欠部111の内側に、ベースブロック体66のギヤ収納部85の両側端縁部から外側方向に突出する各突出部109を嵌入させつつ、ピストン収納部62Bの上端部に形成された切欠部113にベースプレート65の折曲部112を嵌入させて、該ベースプレート65上にパイプシリンダ62を配置する。またこの時、ベースブロック体66に立設された断面略U字状のラック止めピン108が、ラック116の上端のギヤ溝に挿入され、ピストン64の上下方向の移動が規制される。また、ピストン64の先端部は、ピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部71の近傍に位置して、非噛合状態になっている。
【0056】
これにより、パイプシリンダ62のピストン収納部62Bは、ベースブロック体66の側面部に立設される断面略三角形の各リブ110と、ベースプレート65の側端縁部のピニオンギヤ体33に対向する部分から略直角に延出された各背当て部118A、118Bとによって、その両側面部が支持される。尚、この各背当て部118A、118Bは、ピストン収納部62Bよりも少し高くなるように延出されており、カバープレート57の各背当て部118A、118Bに対向する側端部に形成された各貫通孔119A、119Bに挿通可能に形成されている。
【0057】
また、各貫通孔119A、119Bの各背当て部118A、118Bの外側面に対向する側縁部は、内側方向(
図8中、左側方向)へ所定高さ(例えば、約1mmの高さである。)窪んでいる。これにより、各背当て部118A、118Bが各貫通孔119A、119Bに挿入された場合には、各貫通孔119A、119Bの内側面が、各背当て部118A、118Bの外側面に確実に当接するように構成されている。
【0058】
そして、ベースプレート65上にベースブロック体66やパイプシリンダ62等が配置された状態で、このベースブロック体66のカバープレート57側の側面部に突出する各位置決めボス121を、カバープレート57の各位置決孔122に嵌入して、ベースブロック体66やパイプシリンダ62等の上側にカバープレート57を配置する。また同時に、ピニオンギヤ体33の円筒状の支持部72を、カバープレート57の略中央部に形成された支持孔125に嵌入する。
【0059】
また、ベースプレート65の側端縁部から略直角に延出された各背当て部118A、118Bを、カバープレート57の各背当て部118A、118Bに対向する側端縁部に形成された各貫通孔119A、119Bに挿通する。そして、このベースブロック体66の外側側面部からカバープレート57側に延出されて、外側方向に弾性変形可能に形成された弾性係止片66Cと、このベースブロック体66の上側側面部からカバープレート57側に延出されて、外側方向に弾性変形可能に形成された弾性係止片66Dとをそれぞれカバープレート57の側端部に係止する。
【0060】
これにより、カバープレート57がベースブロック体65に配設固定され、パイプシリンダ62がカバープレート57とベースプレート65との間に取り付けられる。また、ピニオンギヤ体33の端部に形成された支持部72が、カバープレート57の支持孔125によって回転可能に支持される。従って、
図4に示すように、ピニオンギヤ体33の両端部に形成されたボス部74の基端部と支持部72とが、それぞれベースプレート65の貫通孔83とカバープレート57の支持孔125とによって回転可能に支持される。
【0061】
また、パイプシリンダ62の各貫通孔114と、カバープレート57の各貫通孔114に対向する位置に形成された貫通孔127と、ベースプレート65の各貫通孔114に対向する位置に形成された貫通孔128とが同軸上に配置される。これにより、スチール材等で形成されたストッパーネジ16をカバープレート57側からベースプレート65側へ挿通して、ハウジング11のネジ孔141B(
図9参照)にネジ止めすることができる。
【0062】
従って、パイプシリンダ62は、カバープレート57とベースプレート65とによって挟持されると共に、ベースブロック体66と各背当て部118A、118Bとによって両側面部が挟持される。また、パイプシリンダ62のピストン収納部62Bの上端側開口が、カバープレート57の上端部から略直角に延出されたカバー部131によって覆われる。また、ガス発生部材61で発生したガスの圧力によって、シールプレート63が押圧されて、ピストン64がピストン収納部62Bの上端側開口部(
図7中、上端部)へ移動した場合には、ピストン64の段差部117が、各貫通孔114に挿通されたストッパーネジ16に当接して、停止させることができる。
【0063】
[ハウジングユニットの概略構成]
次に、ハウジングユニット5の概略構成について
図9及び
図10に基づいて説明する。
図9はハウジングユニット5の分解斜視図である。
図10はシートベルト用リトラクタ1のロックユニット9を取り除いた状態の側面図である。
図9及び
図10に示すように、ハウジングユニット5は、ハウジング11と、ブラケット133と、プロテクタ135と、パウル43と、パウルリベット136とから構成されている。
【0064】
また、ハウジング11は、スチール材等で平面視略コの字状に形成されて、奥側の側壁部12には巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45が所定隙間(例えば、約0.3mm〜0.5mmの隙間である。)を形成しつつ挿入される貫通孔137が形成されている。この貫通孔137の内側周縁部は、巻取ドラムユニット6側へ内側に所定深さ窪んで、巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45に対向するように構成されている。
【0065】
また、貫通孔137のラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45に対向する内側周縁部には、ラチェットギヤ26に係合可能な複数の内歯88が形成された係合ギヤ部89が設けられている。この複数の内歯88は、巻取ドラムユニット6のウエビング3を巻き取る回転方向へ傾斜するように形成されているため、ラチェットギヤ26がウエビング3の引き出し方向へ回転する時にのみ、ラチェットギヤ部45に係合するように形成されている。
【0066】
また、複数の内歯88が形成された係合ギヤ部89は、貫通孔137の内側周縁部のうち、ラチェットギヤ26に立設された軸部48の回転軸心48Bに対して、ウエビング3の引き出し方向(
図10中、上側方向である。)に平行な半径方向から、該ウエビング3の引き出し時の巻取ドラムユニット6の回転方向側へ約90度の中心角度の内側周縁部に設けられている。
【0067】
尚、複数の内歯88が形成された係合ギヤ部89は、貫通孔137の内側周縁部のうち、ラチェットギヤ26に立設された軸部48の回転軸心48Bに対して、ウエビング3の引き出し方向(
図10中、上側方向である。)に直交する直径より、該ウエビング3の引き出し方向側(
図10中、上側である。)の約180度の中心角度の内側周縁部に設けるようにしてもよい。これにより、後述のようにプリテンショナ機構17が作動した場合に、ラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45を複数の内歯88に確実に係合させることができる。
【0068】
また、貫通孔137の内側周縁部に設けられた係合ギヤ部89の複数の内歯88のピッチは、ラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45のピッチの約1/2に形成され、この複数の内歯88の歯丈はラチェットギヤ部45の歯丈よりも小さくなるように形成されている。これにより、後述のように、車両衝突時にプリテンショナ機構17が作動して、ラチェットギヤ部45が複数の内歯88に当接された場合には、ラチェットギヤ26は、ラチェットギヤ部45のピッチの約1/2以下のウエビング3の引き出し方向への回転角度で各内歯88に係合される。
【0069】
また、この貫通孔137の斜め下側のパウル43に対向する部分には、切欠部138が形成され、パウル43がスムーズに回動するようになっている。また、この切欠部138の横側にパウル43を回転可能に取り付けるための貫通孔139が形成されている。
【0070】
また、切欠部138のパウル43が当接する部分には、貫通孔139の同心円上に半円形状の案内部140が形成されている。一方、パウル43の案内部140に当接して摺動する部分は、側壁部12の厚さ寸法にほぼ等しい高さで、この案内部140と同じ曲率半径の円弧状に窪んだ段差部43Bが形成されている。また、パウル43の外側の側面の先端部には、後述のようにロックユニット9を構成するクラッチ202のガイド溝202Fに挿入される案内ピン43Aが立設されている。
【0071】
また、側壁部12の両側端縁部から相対向する各側板部13、14が延出されている。また、各側板部13、14の中央部には、それぞれ開口部が形成され、軽量化及びウエビング3の取り付け作業の効率化等が図られている。また、各側板部13、14の上下端縁部には、所定幅で略直角内側方向に延出された各ネジ止め部13A、13B、14A、14Bが形成されている。また、各ネジ止め部13A、13B、14Aには、各ネジ15がネジ止めされる各ネジ孔141Aがバーリングによって形成され、ネジ止め部14Bには、ストッパーネジ16がネジ止めされるネジ孔141Bがバーリングによって形成されている。
【0072】
また、側板部13の上端縁部に各リベット134によって取り付けられるブラケット133は、スチール材等で形成されて、側板部13の上端縁部から略直角内側方向に延出された延出部にウエビング3が引き出される横長の貫通孔142が形成され、ナイロン等の合成樹脂で形成された横長枠状のプロテクタ135が嵌め込まれている。
【0073】
また、スチール材等で形成されたパウル43は、段差部43Bが案内部140に当接されて、側壁部12の外側から貫通孔139に回転可能に挿通されるパウルリベット136によって、回動可能に固定されている。これにより、パウル43の側面とラチェットギヤ26の側面とが、側壁部12の外側面とほぼ同一面になるように位置される。また、パウル43は、通常時には、ラチェットギヤ26に係合しないようになっている。
【0074】
[クラッチ機構の構成・構造]
次に、プリテンショナ機構17を構成するクラッチ機構68について、機構の構成・構造について
図11乃至
図16に基づいて説明する。
図11は、シートベルト用リトラクタ1を、プリテンショナユニット7を挟んで、巻取りドラムユニット6と巻取バネユニット8とが連結された構成を示す部分断面図で、
図4の断面図を背面側から見た図である。
【0075】
図11に示すように、ガイドドラム21は、ドラムシャフト22を介して巻取バネユニット8との間で同軸に連結されている。ガイドドラム21は、巻取バネユニット8によって、常時ウエビング3の巻き取り方向に付勢されている。
【0076】
また、プリテンショナユニット7のうち、ベースプレート65から突出して備えられているクラッチ機構68は、ガイドドラム21のドラム凹部21Bに収納されている。ベアリング32は、ガイドドラム21とピニオンギヤ体33との間に摺動自在に備えられている。ベアリング32は、筒状形状を有する筒状部32Aと、筒状部32Aの一端に連設され外径方向に広がりを有する基端フランジ部32Bとを有しており、ガイドドラム21とピニオンギヤ体33との間に摺動自在に装着されている。
【0077】
具体的には、ガイドドラム21の取付ボス31の外側面および外側面に連設されるドラム凹部21Bの底面部に、ベアリング32における筒状部32Aの内側面および基端フランジ部32Bの下側面とが摺動自在に接触する。また、ピニオンギヤ体33の内側面および先端部に、ベアリング32における筒状部32Aの外側面および基端フランジ部32Bの上側面とが摺動自在に接触する。
【0078】
また、プリテンショナユニット7において、ピニオンギヤ体33およびクラッチ機構68が、ベアリング32を介してガイドドラム21に摺動自在に当接して構成されている。これにより、通常使用時に、ウエビング3の引き出し、巻き取りに伴うガイドドラム21の回転は、プリテンショナユニット7のピニオンギヤ体33およびクラッチ機構68に規制されず、自在に行うことができる。
【0079】
図12は、シートベルト用リトラクタ1を、巻取バネユニット8側から見た平面図である。
図13、
図14は、ガイドドラム21、クラッチ機構68およびベースプレート65の関係を説明する斜視図である。尚、ガイドドラム21、クラッチ機構68、およびベースプレート65の関係を説明するために、プリテンショナユニット7の構成部材、巻取バネユニット8、ドラムシャフト22等が適宜省略されている。また、部材間の関係を示すため、必要に応じて部材の一部または全部が透視された状態(点線で表示)が表示されている。
【0080】
図12乃至
図14に示すように、クラッチ機構68は、ガイドドラム21と同軸に組み付けられている。これは、クラッチ機構68がベースプレート65の貫通孔83を介してピニオンギヤ体33と同軸に連結され、ピニオンギヤ体33の軸受部33Aの内側面が、取付ボス31の外側面とベアリング32を介して回転摺動自在に位置決められているからである。
【0081】
また、ガイドドラム21のドラム凹部21Bを構成する周縁部には、軸心に向かってクラッチギヤ30が刻設されている。後述するように、クラッチ機構68に収納されているクラッチパウル29が、プリテンショナ機構17の作動時に突出する。この突出したクラッチパウル29がクラッチギヤ30に係合して、巻取ドラムユニット6をウエビング3の巻き取り方向に回転させる。
【0082】
また、クラッチ機構68のうちベースプレート65に接する面には、位置決突起77Aが備えられており、ベースプレート65に開口されている位置決孔81と係合されている。これにより、クラッチ機構68とベースプレート65とは、通常作動時においては相対回転不能に固定されている。
【0083】
また、後述するように、位置決突起77Aは、クラッチ機構68を構成するパウルガイド77に形成されている。通常作動時および車両衝突時の初期段階において、パウルガイド77はベースプレート65との間で相対回転不能な状態で固定されている。
【0084】
そして、車両衝突時にピストン64が押圧駆動されピニオンギヤ体33が回転すると、パウルガイド77に対してパウルベース76が相対回転する。この回転運動に伴いクラッチパウル29が外径方向に突出する。そして、クラッチパウル29が突出した後も、駆動力が継続することにより、パウルガイド77にも駆動力が印加される。この駆動力に抗しきれなくなると位置決突起77Aが破断する。以後、クラッチ機構68は一体となってガイドドラム21のクラッチギヤ30介して巻取ドラムユニット6を回転させ、ウエビング3の巻き取りが行われる。
【0085】
[クラッチ機構の構成]
図15及び
図16は、クラッチ機構68の構成を示す分解斜視図である。
図15は、巻取バネユニット8側から見た分解斜視図であり、
図16は、巻取りドラムユニット6側から見た分解斜視図である。
【0086】
図15及び
図16に示すように、クラッチ機構68は、パウルベース76、クラッチパウル29、パウルガイド77より構成されている。
【0087】
クラッチパウル29の基端部には貫通孔29Aが開孔されており、パウルガイド77に突設されている十字状突起77Bに圧入される。十字状突起77Bの十字形状の一辺の長さは、クラッチパウル29の貫通孔29Aの直径より長く形成されており、圧入された状態でクラッチパウル29の回動を規制する。この場合、クラッチパウル29においてパウルガイド77に対向する面側の貫通孔29Aには面取り加工が施されている。また、貫通孔29Aの面取り加工に代えて、または面取り加工と共に、十字状突起77Bは、その先端部において十字形状の一辺の長さが短く形成され、あるいは先端部がその他の部位に比して肉薄に形成されていてもよい。これにより、圧入作業をスムーズに行うことができる。
【0088】
また、クラッチパウル29において、貫通孔29Aと係合歯29Bとの中間位置に凹部29Cが設けられており、パウルガイド77の対応位置には突起77Eが突設されている。パウルガイド77が十字状突起77Bに圧入された状態で、突起77Eと凹部29Cとが嵌合する。凹部29Cと突起77Eとの配置位置は、十字状突起77Bに圧入されたクラッチパウル29の回動位置を決める効果を有するものである。十字状突起77Bに圧入されたクラッチパウル29を収納位置に位置決めするための構成である。凹部29Cと突起77Eとの嵌合、および十字状突起77Bへの貫通孔29Aの圧入により、通常動作時にクラッチパウル29は収納位置から回動せず、係合歯29Bが外方に突出することはない。
【0089】
また、パウルガイド77の内径側の側面には、クラッチパウル29ごとにガイド部77Cが近接して設けられている。プリテンショナユニット7の動作初期段階においては、パウルガイド77は回転不能の状態にある。位置決突起77Aがベースプレート65に係合しているからである。この状態でパウルベース76が回転する。その回転に伴いパウル支持ブロック76Bに押圧されたクラッチパウル29は、十字状突起77Bおよび突起77Eを破断しながら回転方向に移動する。移動したクラッチパウル29は、クラッチパウル29の内径側の側面がガイド部77Cに押圧される。パウルベース76は更に回転するので、クラッチパウル29は、パウル支持ブロック76Bおよびガイド部77Cに押圧される。その結果、クラッチパウル29は、ガイド部77Cにより外径方向に摺動案内されて外径方向に突出する。
【0090】
また、パウルベース76には、挿通孔76Aが設けられている。ここで、十字状突起77Bの突設長さはクラッチパウル29の肉厚より長く形成されている。十字状突起77Bにクラッチパウル29が圧入されると、十字状突起77Bの先端部はクラッチパウル29の貫通孔29Aの反対側から飛び出した状態となる。パウルガイド77とパウルベース76とが嵌合した際、十字状突起77Bのうちクラッチパウル29から飛び出した部分が、挿通孔76Aに嵌合される。
【0091】
また、挿通孔76Aをパウルベース76の外径側で囲むように肉厚のパウル支持ブロック76Bが設けられている。パウル支持ブロック76Bは、車両衝突時にクラッチパウル29がガイドドラム21を押圧駆動する際に、クラッチパウル29が受ける荷重を受け止めるために設けられている。
【0092】
また、クラッチパウル29は、先端部にクラッチギヤ30と係合する係合歯29Bが設けられている。本実施形態では、3つのクラッチパウル29が配設される構成である。プリテンショナ機構17の作動時に、各クラッチパウル29がガイドドラム21を押圧駆動する際、押圧駆動に伴う荷重を分散して、効率のよい押圧性能、耐荷重性能を実現することができる。
【0093】
また、パウルベース76において、パウル支持ブロック76Bの外径端には、係止ブロック76Cが形成されている。また、係止ブロック76Cに近接してパウル支持ブロック76Bの一角に凹部76Dが開孔されている。また、パウルガイド77には、パウルベース76と嵌合した際、係止ブロック76Cと係合する係止フック77D、および凹部76Dと嵌合する十字状突起77Fが形成されている。
【0094】
ここで、係止ブロック76Cと係止フック77Dとの係合は、ピニオンギヤ体33による回転初期において、パウルガイド77に対してパウルベース76が相対回転可能な係合状態とされることが好ましい。これにより、ピニオンギヤ体33の回転の初期段階においては、パウルガイド77が回転不能に維持された状態でパウルベース76が回転し、クラッチパウル29が突出する。また、凹部76Dと嵌合する十字状突起77Fは、パウルベース76の回転に応じて破断される。
【0095】
ここで、パウルベース76、およびクラッチパウル29は、金属製部材で構成され、パウルガイド77は、樹脂製部材で構成されている。これにより、クラッチパウル29の突出動作、およびクラッチパウル29の突出後の、パウルガイド77のパウルベース76との一体回転動作やパウルベース76の逆回転規制動作が、簡便かつ確実に行えるようになる。
【0096】
[エネルギ吸収機構]
次に、後述のように、プリテンショナ機構17が作動して、巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ26が、ハウジング11の側壁部12に設けられた係合ギヤ部89の複数の内歯88に係合した係合状態にロックされた後、つまり、巻取ドラムユニット6がウエビング3の引き出し方向へ回転しないように強制ロックされた後、ウエビング3に作用する引出力が予め設定された所定値を超えた場合には、ウエビング3を所定荷重下で引き出させることによって乗員に生じる衝撃エネルギーを吸収するエネルギ吸収機構として、ワイヤ24及びトーションバー23等が巻取ドラムユニット6に設けられている。
【0097】
ここで、トーションバー23の取付構造、及び、ガイドドラム21とワイヤプレート25との間に取り付けられたワイヤ24の取付構造について
図17乃至
図21に基づいて説明する。
図17は巻取ドラムユニット6の軸心及びカシメピン39を含む断面図である。
図18は
図17のX1−X1矢視断面図である。
図19はドラムガイド21をワイヤプレート25の取り付け側から見た斜視図である。
図20はドラムガイド21の段差部36に形成された屈曲路を示す一部拡大図である。
図21はワイヤプレート25の屈曲路を示す一部拡大図である。
【0098】
図17及び
図18に示すように、巻取ドラムユニット6を構成するガイドドラム21のプリテンショナユニット7側の端面部中央位置には、ドラムシャフト22が圧入等によって固着されている。そして、ドラムシャフト22の基端部にはベアリング32が嵌め込まれている。また、ガイドドラム21の軸孔21Aの奥側には、トーションバー23のスプライン23Aが相対回転不能に圧入固定されている。
【0099】
また、
図18に示すように、ガイドドラム21のフランジ部35の外側面に形成された正面視略円形の段差部36の外周部には、ワイヤ24の一端の屈曲部24Aが嵌入保持される屈曲路145が一体形成されている。
この屈曲路145は、
図19に示すように、フランジ部35の軸方向外側面から突出する正面視下側向きの略台形状に形成された凸部147と、段差部36の外周の凸部147に対向する凹み部148と、この凹み部148の正面視左端(
図20中、左端)から少し離れた段差部36の外周面から斜め内側方向に形成された溝部149と、段差部36の凹み部148と溝部149との間の外周面とによって形成されている。
【0100】
また、
図20に示すように、凸部147と凹み部148の対向面に、屈曲路145の深さ方向に沿って2組の対向するリブ151が設けられている。また、溝部149の対向面に、屈曲路145の深さ方向に沿って1組のリブ152が設けられている。また、対向する各リブ151、152間の距離は、ワイヤ24の外径よりも小さくなるように形成されている。
【0101】
また、
図18に示すように、ワイヤ24の一端の屈曲部24Aは、各リブ151、152を押し潰しつつ屈曲路145に嵌入されて固定保持される。また、ワイヤ24の屈曲部24Aに連続して形成される正面視くの字状の屈曲部24Bは、フランジ部35の外周よりも外側に突出するように形成されている。そして、ワイヤ24の屈曲部24Bに連続して形成される屈曲部24Cは、段差部36の外周面に沿った円弧状に形成されている。
【0102】
また、
図5、
図17、
図18、
図21に示すように、ワイヤプレート25の貫通孔40の内周は、段差部36の外周部にほぼ対向すると共に、この貫通孔40の周縁部には、ワイヤ24に当接した状態で、このワイヤ24、フランジ部35及び凸部147を収容する収容凹部155が形成されている。また、この収容凹部155は、フランジ部35の外周部を覆う内周面の径が、フランジ部35の外径にほぼ等しくなるように形成されている。
【0103】
また、収容凹部155のワイヤ24の屈曲部24Bに対向する部分には、屈曲部24Bを収容するために径方向外側に膨出した膨出部155Aが形成されている。また、膨出部155Aの内側面には、ワイヤ24の屈曲部24Bの内側に挿入される正面視略山形の凸部38が一体形成され、ワイヤ24が摺動案内される屈曲路156が構成されている。また、この凸部38のワイヤプレート25の半径方向内側端面部は、段差部36の外周面に沿った円弧状に形成されている。
【0104】
従って、
図18に示すように、ワイヤ24のガイドドラム21への取り付けは、先ず、ガイドドラム21の軸孔21Aの奥側に、トーションバー23のスプライン23Aを圧入固定する。続いて、段差部36に形成された屈曲路145にワイヤ24の屈曲部24Aを押し込むと共に、屈曲部24Cを段差部36の外周面に沿って配置する。そして、ワイヤプレート25の凸部38を、ワイヤ24の屈曲部24B内に挿入して、屈曲路156内にワイヤ24の屈曲部24Bを挿入すると共に、貫通孔40の周縁部をワイヤ24に当接させて、収容凹部155内にワイヤ24、段差部36及び凸部147を収容する。
【0105】
その後、上記のように、ラチェットギヤ26の固定ボス49内にトーションバー23の他端側に形成されたスプライン23Bを嵌入して、各貫通孔47に挿通したガイドドラム21の各突き出しピン37をカシメる。これにより、ラチェットギヤ26及びワイヤプレート25が、各突き出しピン37を介してガイドドラム21に対して相対回転不能に固定される。また、ワイヤプレート25の各カシメピン39をカシメることによって、ラチェットギヤ26及びワイヤプレート25が、トーションバー23に相対回転不能に固定される。
【0106】
[緊急ロック機構]
本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1では、車両衝突時にプリテンショナ機構17が作動して巻取ドラムユニット6がウエビング3の引き出し方向へ回転しないようにロックする強制ロック機構のほかに、ロックユニット9が作動して巻取ドラムユニット6の回転をロックする2種類のロック機構を備えている。ウエビングの急な引き出しに対して作動するウエビング感応式ロック機構と、車両の揺れや傾きなどに起因して生ずる加速度に感応して作動する車体感応式ロック機構である。以下の説明では、プリテンショナ機構17が作動してロックする強制ロック機構と明確に区別するために、ロックユニット9が作動して巻取ドラムユニット6の回転をロックする2種類のロック機構を「緊急ロック機構」と称して、以下に説明を行う。
【0107】
[緊急ロック機構の概略構成]
緊急ロック機構を構成するロックユニット9の概略構成について
図4及び
図22に基づいて説明する。
図22は、緊急ロック機構を構成するロックユニット9の分解斜視図である。また、
図4には断面図を示す。
【0108】
図4及び
図22に示すように、ロックユニット9は、ウエビング感応式ロック機構と車体感応式ロック機構との動作を行うユニットである。ロックユニット9は、メカニズムブロック201、クラッチ202、パイロットアーム203、リターンスプリング204、ビークルセンサ205、ロッキングギヤ206、センサスプリング207、ロックアーム208、イナーシャマス209、およびメカニズムカバー210で構成されている。
【0109】
略円板状のクラッチ202の外周縁にはリブ202Aが設けられている。メカニズムブロック201の係合部201Aと係合することにより、クラッチ202は、回動可能にメカニズムブロック201に取り付けられる。このとき、リターンスプリング204が、ロックユニット9の上端部で互いに対向してなる、メカニズムブロック201およびクラッチ202の突状保持部201Bおよび202Bの間に保持されており、クラッチ202を所定位置に付勢する。
【0110】
メカニズムブロック201は、中央部が開口されている。開口形状は略倒立した瓢箪状の形状を有している。このうち、大径の開口部はラチェットギヤ26の外径より大きく、クラッチ202の外径より小さい径を有している。これにより、大径の開口部においてクラッチ202の背面とラチェットギヤ26とが近接して対向配置する。小径の開口部および大径の開口部との接続部分は、パウル43の可動領域を提供し、パウルリベット136によりハウジング11に回動可能に軸支されたパウル43が配置される。パウル43の大径の開口部への回動により、パウル43がラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45に係合する。
【0111】
また、メカニズムブロック201において、小径の開口部の対向辺(
図22中、左下角部である。)には、センサ載置部201Cが設けられており、ビークルセンサ205が、ボールセンサ205C上にビークルセンサレバー205Aを上方に向けて載置される。
【0112】
クラッチ202は、中央に開口部202Cを有している。近接配置されたラチェットギヤ26の軸部48が遊嵌される。クラッチ202の前面部には、ロックアーム208が係合するクラッチ歯202Dが、開口部202Cと同軸であって軸心に向かう方向へ円環状に立設されている。
【0113】
クラッチ202の略下方中央部には、取付ピン202Eとガイド溝202F(
図23参照)とが備えられている。取付ピン202Eは前面側に備えられ、パイロットアーム203が回動可能に軸支される。パイロットアーム203は、ビークルセンサレバー205Aにより押圧され押上げられる。ガイド溝202Fは背面側に備えられ、パウル43の案内ピン43Aが遊嵌される。ガイド溝202Fは左方に向かって開口部202Cの軸心に近づくように形成されている。これにより、クラッチ202が反時計方向に回動することによりパウル43はラチェットギヤ26に近づくように誘導される。
【0114】
更に、取付ピン202Eから左下方に誘導ブロック202Gが延設されている。誘導ブロック202Gは、ビークルセンサ205のレバー基部205Bに対向して設けられている。誘導ブロック202Gは、取付ピン202Eから左方に延設されるに従い下方に広がるテーパー構造を有している。その先は一定の幅を有した領域である。
【0115】
ロッキングギヤ206は、背面側に、円環状に立設されているクラッチ202のクラッチ歯202Dが収納される、円環状の溝部206D(
図4参照)を有している。ロッキングギヤ206は、溝部206Dがクラッチ歯202Dを囲むようにクラッチ202に接触あるいは近接して配置される。
【0116】
また、ロッキングギヤ206の中央部には円筒状の固定ボス206Eが前面側から背面側に貫通するように立設されており、この固定ボス206Eの内周面には、軸部48の外周面に形成されたスプライン48Aが嵌入されるスプライン溝が形成されている。そして、開口部202Cに遊嵌された軸部48が、ロッキングギヤ206の固定ボス206Eに嵌入されて、巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ26とロッキングギヤ206とが同軸に相対回転不能に圧入固定される。
【0117】
また、ロッキングギヤ206の外周端側の一角には、溝部206Dに抜ける開口部206Cが備えられている。また、開口部206Cに近接して軸支ピン206Bが備えられている。ロックアーム208は、その先端部が開口部206Cから外方の溝部206Dに向かって回動可能に、軸支ピン206Bに軸支される。
【0118】
また、ロックアーム208は、センサスプリング207によりロッキングギヤ206と連結されており、通常動作時、先端部が開口部206Cから突出しないように付勢されている。ウエビング感応式ロック機構によるロック動作の際、ロックアーム208が開口部206Cを介して溝部206Dに突出し、ロックアーム208の先端部がクラッチ歯202Dと係合する。
【0119】
また、ロッキングギヤ206の外周縁は、外径方向に向かってロッキングギヤ歯206Aが刻設されている。ロッキングギヤ206は、固定ボス206Eがクラッチ202の開口部202Cに嵌入されて、ロッキングギヤ歯206Aがパイロットアーム203に近接するようにクラッチ202の背面側に配置される。車体感応式ロック機構によるロック動作の際、ビークルセンサ205のビークルセンサレバー205Aによりパイロットアーム203が押し上げられて、パイロットアーム203の先端部がロッキングギヤ歯206Aと係合する。
【0120】
また、ロッキングギヤ206の前面には、略円板状のイナーシャマス209が回動可能に取り付けられている。イナーシャマス209は、ガイド開口部209Aを有している。ガイド開口部209Aにはロックアーム208に突設された誘導ピン208Aが遊嵌されている。イナーシャマス209は、急激なウエビングの引き出しに対して慣性遅れを発生させる部材であり、金属部材で成形されている。ガイド開口部209Aは機能的には一つ備えていれば良いが、慣性遅れを発生させる目的から、イナーシャマス209の中心点に対して点対称の位置にダミーのガイド開口部209Aを備えている。
【0121】
ロックユニット9の前面は、合成樹脂により成形されたメカニズムカバー210でカバーされる。このメカニズムカバー210は、ハウジング11側が開口される略箱体状のカバーケースであり、上側両角部と下端縁部中央位置の3箇所に、ナイラッチ8Aと同様な構成を有するナイラッチ210Aが設けられている。また、メカニズムカバー210のハウジング11側の中央部には、ロッキングギヤ206の前面に突出する固定ボス206Eが摺動回転可能に嵌入される円筒状の支持ボス210Bが立設されている。
【0122】
ロックユニット9は、先ず、メカニズムブロック201に、リターンスプリング204、クラッチ202、パイロットアーム203、ビークルセンサ205、ロックギヤ206、ロックアーム208、イナーシャマス209を配設する。その後、メカニズムカバー210の支持ボス210Bにロックギヤ206の固定ボス206を嵌入すると共に、各ナイラッチ210Aをメカニズムブロック201の各開口201Dに挿入することによって組み立てられる。
【0123】
そして、ロックユニット9は、メカニズムブロック201の開口部202Cに遊嵌した軸部48を、クラッチ202の開口部202Cを介してロックギヤ206の固定ボス206Eに嵌入した後、メカニズムカバー210の各ナイラッチ210Aをハウジング11の側壁部12の3箇所に設けられた各貫通孔52に押し込むことによって、当該側壁部12の外側に固定される。これにより、巻取ドラムユニット6の軸部48が、ロックユニット9のロックギヤの固定ボス206Eを介して、ハウジング11の側壁部12の外側に取り付けられたメカニズムカバー210の支持ボス210Bによって回転可能に支持される。
【0124】
尚、ロックユニット9は、イナーシャマス209、リターンスプリング204、センサスプリング207、およびビークルセンサ205の金属球を除いた部材は樹脂部材で成形されており、互いに接触した場合の部材間の摩擦係数は小さなものである。
【0125】
次に、
図23乃至
図28により通常のロック機構についての動作を説明する。各図においてウエビング3の引き出し方向は図示の矢印方向である。また、各図において、反時計方向の回転方向がウエビング3が引き出される時の巻取ドラムユニット6の回転方向である。以下の説明では、ロック動作に係る動作を中心に説明し、その他の部分については適宜、記載を省略する。また、動作の説明上、必要に応じて図面の一部を切り欠いて表示している。ウエビング感応式ロック機構および車体感応式ロック機構では、共にパウル43の動作は共通である。このため、以下の説明では、パウル43とラチェットギヤ26との関係を示す部分については、その一部をきり欠いた状態として表示している。
【0126】
[ウエビング感応式ロック機構の動作説明]
図23乃至
図25は、ウエビング感応式ロック機構の動作説明図である。ウエビング感応式ロック機構では、パウル43とラチェットギヤ26との関係を示す部分に加えて、ロックアーム208とクラッチ歯202Dとの関係を示す部分、及びセンサスプリング207の部分を切り欠いて表示している。
【0127】
ウエビング3に加わる引き出し方向の加速度が所定値を越えると、センサスプリング207がイナーシャマス209の初期位置を維持できなくなる。すなわち、イナーシャマス209に慣性遅れが生じ、イナーシャマス209に対してロッキングギヤ206が反時計方向に回動する。
【0128】
これにより、ロックアーム208の誘導ピン208Aがイナーシャマス209のガイド開口部209Aにガイドされて、ロックアーム208の先端部が、半径方向外側に回動してクラッチ歯202Dと係合する。この状態を
図23に示す。
【0129】
そして、ロックアーム208がクラッチ歯202Dに係合した後もウエビング3の引き出しが継続すると、ラチェットギヤ26と同軸に固定されているロッキングギヤ206は、反時計方向の回転力が印加され続ける。このため、ロックアーム208がクラッチ歯202Dに係合しているので、クラッチ202も反時計方向に回動される。
【0130】
これにより、パウル43の案内ピン43Aが、クラッチ202のガイド溝202Fに誘導されて、当該パウル43がラチェットギヤ26に向かって回動する。この状態を
図24に示す。
【0131】
続いて、パウル43の回動が継続されて、このパウル43がラチェットギヤ26に係合することにより、ラチェットギヤ26の回転がロックされる。これにより、ガイドドラム21、つまり、巻取ドラムユニット6の回転がロックされてウエビング3の引き出しがロックされる。この状態を
図25に示す。
図25の状態では、リターンスプリング204が圧縮された状態に維持される。
【0132】
その後、ウエビング3に加わる引き出し方向の引張力が緩められ、ガイドドラム21、つまり、巻取ドラムユニット6が、ウエビング3の巻取方向に回転すると、圧縮されたリターンスプリング204の付勢力により、クラッチ202は時計方向に回動する。これにより、ウエビング3に加わる引き出し方向の引張力が緩められた通常時に戻った場合には、パウル43の案内ピン43Aが、クラッチ202のガイド溝202Fを逆方向に誘導されて、ラチェットギヤ26から離間し、パウル43による巻取ドラムユニット6のロック状態が解除される。
【0133】
[車体感応式ロック機構の動作説明]
図26乃至
図28は、車体感応式ロック機構の動作説明図である。車体感応式ロック機構では、パウル43とラチェットギヤ26との関係を示す部分を切り欠いて表示している。
【0134】
車体の揺れや傾きなどによる加速度が所定値を越えると、ビークルセンサ205のボールセンサ205Cが所定位置を維持できなくなり、ビークルセンサレバー205Aがパイロットアーム203を押し上げる。これにより、パイロットアーム203の先端部が、ロッキングギヤ206のロッキングギヤ歯206Aと係合する。この状態を
図26に示す。
【0135】
そして、パイロットアーム203とロッキングギヤ歯206Aとの係合状態が継続すると、ロッキングギヤ206に加わっている反時計方向の回転力が、パイロットアーム203を介してパイロットアーム203が軸支されているクラッチ202を反時計方向に回動させる。
【0136】
これにより、クラッチ202のガイド溝202Fにパウル43の案内ピン43Aが誘導されて、当該パウル43がラチェットギヤ26に向かって回動する。この状態を
図27に示す。
【0137】
続いて、パウル43の回動が継続されて、このパウル43がラチェットギヤ26に係合することにより、ラチェットギヤ26の回転がロックされる。これにより、ガイドドラム21、つまり、巻取ドラムユニット6の回転がロックされてウエビング3の引き出しがロックされる。この状態を
図28に示す。
図28の状態では、リターンスプリング204が圧縮される。
【0138】
その後、ウエビング感応式ロック機構と同様に、ウエビング3が巻き取られると、圧縮されたリターンスプリング204の付勢力により、クラッチ202は時計方向に回動して、パウル43とラチェットギヤ26の係合が解除される。尚、ボールセンサ205Cは、車両の加速度がなくなった時点で、初期状態に復帰する。
【0139】
ここで、誘導ブロック202Gは、ロック状態が解除されクラッチ202が時計方向に回動して通常の位置に戻る際、ビークルセンサレバー205Aが車体の加速度により上昇しないようにする揺動規制部材であって、パイロットアーム203の先端部とビークルセンサ205のビークルセンサレバー205Aとが当接してクラッチ202の戻りが規制されないように備えられている。
【0140】
また、ロック状態では、誘導ブロック202Gのうち幅広領域の下端部がビークルセンサ205のレバー基部205Bに当接している。この状態では、ビークルセンサレバー205Aの先端位置が、パイロットアーム203の下端部の可動軌跡より下方に維持されるように幅広領域の幅を設定しておけば、クラッチ202が時計方向に回動して戻る際にも、ビークルセンサレバー205Aとパイロットアーム203の先端部とが当接してしまうことはない。
【0141】
また、クラッチ202の時計方向への回動に伴い、レバー基部205Bに当接する誘導ブロック202Gの下端部は、テーパー構造を有して幅が順次狭くなる。これにより、ロック状態からの復帰時、クラッチ202が時計方向に回動して通常位置に戻る際、パイロットアーム203の先端部がビークルセンサレバー205Aに当接し、クラッチ202の戻り動作を規制してしまうことはない。また、通常の動作状態において、レバー基部205Bが誘導ブロック202Gに当接することはなく、また、ビークルセンサ205の車体の加速度による揺動が誘導ブロック202Gにより規制されてしまうことはない。
【0142】
[強制ロック機構の動作説明]
次に、上記のように構成されたシートベルト用リトラクタ1において、車両衝突時等に、プリテンショナ機構17のガス発生部材61の作動によって起動する強制ロック機構の動作について
図29乃至
図38に基づいて説明する。
【0143】
図29、
図33、
図34は、パイプシリンダ62の一部を断面図として表示し内部に配置されているピストン64の位置が明示されている。また、ベースプレート65およびパウルガイド77を除いた表示として、クラッチパウル29とガイドドラム21との係合状態を明示している。
図30、
図35、
図36は、クラッチパウル29とガイドドラム21との係合状態を拡大して示している。
【0144】
図31は、プリテンショナ機構17が作動していないときのラチェットギヤ26の回転位置を、ハウジング11の側壁部12からロックユニット9を取り除いて示している。
図32は、プリテンショナ機構17が作動していないときの、巻取ドラムユニット6の回転位置を一部切り欠いて示している。
図37は、プリテンショナ機構17が作動してメカニズムカバー210が塑性変形したときの、ラチェットギヤ26の回転位置を、ハウジング11の側壁部12からロックユニット9を取り除いて示している。
【0145】
図38は、プリテンショナ機構17が作動してメカニズムカバー210が塑性変形したときの、巻取ドラムユニット6の回転位置を一部切り欠いて示している。また、
図32及び
図38では、ワイヤ24及びワイヤプレート25を省略すると共に、巻取ドラムユニット6のフランジ部27の一部を切り欠いて、取付ボス31及びベアリング32がピニオンギヤ体33に軸支されている状態を示している。
【0146】
先ず、プリテンショナ機構17が作動していない通常状態について
図29乃至
図32に基づいて説明する。
図29及び
図30に示すように、パイプシリンダ62内のピストン64は、基底位置に配置されており、ピストン64に刻設されているラック116は、ピニオンギヤ体33とは係合していない。また、各クラッチパウル29は収納位置に維持されている。
【0147】
また、
図31及び
図32に示すように、巻取ドラムユニット6の一端側(
図32中、右端側である。)は、取付ボス31の外周に嵌入されたベアリング32を介して、プリテンショナユニット7を構成するスチール材等で形成されるピニオンギヤ体33の軸受け部33Aに回転可能に支持される。また、巻取ドラムユニット6の他端側(
図32中、左端側である。)は、ラチェットギヤ26の軸部48がロックギヤ206の固定ボス206Eを介してメカニズムカバー210の支持ボス210Bに回転可能に支持されている。
【0148】
また、ラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45と、ハウジング11の側壁部12に形成された貫通孔137の内側周縁部との間には、所定隙間(例えば、約0.3mm〜0.5mmの隙間である。)が形成されている。つまり、ラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45と、係合ギヤ部89に形成された各内歯88との間には、所定隙間(例えば、約0.3mm〜0.5mmの隙間である。)が形成されている。従って、ラチェットギヤ26は各内歯88に接触することなく、巻取ドラムユニット6はウエビング3の引き出し方向、又は、巻き取り方向へスムーズに回転する。
【0149】
次に、プリテンショナ機構17が作動した状態について
図33乃至
図38に基づいて説明する。
図33と
図35に示すように、車両衝突時等において、プリテンショナ機構17のガス発生部材61が作動した場合には、パイプシリンダ62内のピストン64が
図29に示す通常状態から、ラック止めピン108を剪断して上方に(矢印X2方向である。)に移動し、ピニオンギヤ体33のピニオンギヤ部71の歯に当接する。
【0150】
これにより、ベースプレート65とカバープレート57とによって回転可能に支持されているピニオンギヤ体33は、正面視反時計方向(矢印X3方向である。)への回転を開始する。従って、ピニオンギヤ体33に一体固定されているパウルベース76が回転を開始して、クラッチパウル29が半径方向外側への突出を開始する。
【0151】
そして、
図34に示すように、ピストン64がパイプシリンダ62内を更に移動してピニオンギヤ体33を正面視反時計方向(矢印X3方向である。)へ回転させた場合には、該ピニオンギヤ体33に一体固定されているパウルベース76の回転が継続し、クラッチパウル29の突出状態が維持される。また、
図36に示すように、クラッチパウル29は、外径方向への突出が完了して、クラッチギヤ30への係合が完了する。
【0152】
続いて、パウルベース76の回転によって、パウルガイド77の各位置決突起77Aが、パウルガイド77の外側面から剪断されて、該クラッチ機構68とピニオンギヤ体33が、ピストン64の移動に伴って一体となって回転を開始する。これにより、
図34に示すように、クラッチパウル29とガイドドラム21との係合が完了し、巻取ドラムユニット6がウエビング3の巻き取り方向(矢印X4方向である。)へ回転され、ウエビング3がガイドドラム21に巻き取られて、シートベルト用リトラクタ1へ引き込まれる(矢印X5方向である。)。
【0153】
また、
図37及び
図38に示すように、プリテンショナ機構17の作動によって、巻取ドラムユニット6がウエビング3の引き込み方向(矢印X4方向である。)へ高速で回転された場合には、ウエビング3には引き込みに対して反対方向、つまり、ウエビング3の引き出し側方向(
図37中、上方向である。)へ大きな張力P1(例えば、約2kN〜3kNの張力である。)が作用する。そして、この張力P1(例えば、約2kN〜3kNの張力である。)は、巻取ドラムユニット6の軸方向両端部の軸部48と取付ボス31で支持される。
【0154】
ここで、
図38に示すように、取付ボス31は、ベアリング32を介して、金属製のピニオンギヤ体33、ベースプレート65及びカバープレート57によって回転可能に軸支されている。一方、軸部48は、合成樹脂製のロッキングギヤ206を介して、金属製のハウジング11の側壁部12に固定された合成樹脂製のメカニズムカバー210によって回転可能に軸支されている。また、合成樹脂製のメカニズムカバー210は、支持ボス210Bの半径方向外側へ所定値以上(例えば、約1kN以上である。)の押圧力が作用すると塑性変形するように構成されている。
【0155】
このため、
図38に示すように、軸部48に張力P1(例えば、約2kN〜3kNの張力である。)が作用した場合には、軸部48及びロッキングギヤ206を介して、支持ボス210Bの半径方向上側へ所定値以上(例えば、約1kN以上である。)の押圧力が作用し、メカニズムカバー210は、張力P1の作用する上側方向へ塑性変形される。そして、メカニズムカバー210の塑性変形によって、軸部48の回転軸心48Bが距離L1だけ偏心され、ラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45が、金属製の側壁部12に形成された係合ギヤ部89の複数の内歯88に押圧されつつ当接して回転する。
【0156】
それにより、ラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45と係合ギヤ部89の各内歯88との間に摩擦力が発生し、ガイドドラム21に対してほぼ半径方向内側向き(
図37中、ほぼ左向きである。)の押圧力P2(例えば、約0.4kN〜0.6kNである。)が作用する。そして、この押圧力P2は、巻取ドラムユニット6の軸方向両端部の軸部48と取付ボス31で支持される。
【0157】
このため、張力P1(例えば、約2kN〜3kNの張力である。)と押圧力P2(例えば、約0.4kN〜0.6kNである。)との合力P3が、軸部48と取付ボス31の回転軸心48Bに対して、ウエビング3の引き出し方向に平行な半径方向よりも、巻取ドラムユニット6のウエビング3の引き出し時の回転方向側(矢印X4方向に対して反対方向である。)へ傾いた半径方向外側(
図37中、左斜め上方向である。)へ作用する。
【0158】
従って、
図38に示すように、メカニズムカバー210は、軸部48に張力P1(例えば、約2kN〜3kNの張力である。)よりも大きい合力P3の約半分の力が作用した場合には、軸部48及びロッキングギヤ206を介して、合力P3の作用する方向へ更に塑性変形される。そのため、
図37に示すように、ラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45が、金属製の側壁部12に形成された係合ギヤ部89の複数の内歯88に係合した係合状態にロックされる。
【0159】
これにより、巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ26及びワイヤプレート25が、ウエビング3の引き出し方向へ回転するのが抑止されると共に、巻取ドラムユニット6のウエビング3の巻き取り方向(
図37中、矢印X4方向である。)への回転が許容される。そして、ピストン64の移動が停止するまで、巻取ドラムユニット6はウエビング3の巻き取り方向へ回転され、ウエビング3が所定長さ引き込まれる。
【0160】
[エネルギ吸収]
次に、車両衝突時等において、プリテンショナ機構17が作動して、ラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45が、金属製の側壁部12に形成された係合ギヤ部89の複数の内歯88に係合した係合状態にロックされた場合には、ラチェットギヤ26のウエビング3の引き出し方向への回転が阻止される。この状態で、ウエビング3に作用する引出力が予め設定された所定値を超えて引き出された場合には、ガイドドラム21に作用する回転トルクによって、ラチェットギヤ26の各貫通孔47に嵌入されてカシメられた各突き出しピン37が、ガイドドラム21と共に回転されて、剪断される。この際に、「第1のエネルギ吸収機構」としての各突き出しピン37の剪断による衝撃エネルギの吸収がなされる。
【0161】
また同時に、ガイドドラム21が回転された場合には、トーションバー23のガイドドラム21の軸孔21Aの奥側に圧入固定されたスプライン23A側が回転され、トーションバー23の捻れ変形が開始される。このトーションバー23の捻れ変形に伴ってガイドドラム21がウエビング3の引出方向に回転し、「第2のエネルギ吸収機構」としてのトーションバー23の捻れ変形による衝撃エネルギの吸収がなされる。
【0162】
また同時に、ガイドドラム21が回転された場合には、ワイヤプレート25とラチェットギヤ26とは、各嵌合凸部41と各嵌合凹部46Bとによって嵌合されているため、このワイヤプレート25とガイドドラム21との相互間においても相対回転が生じる。それにより、ガイドドラム21の回転に伴ってワイヤ24とワイヤプレート25との相互間においても相対回転が生じ、「第3のエネルギ吸収機構」としてのワイヤ24による衝撃エネルギの吸収がなされる。
【0163】
[ワイヤの引き出し動作]
ここで、ワイヤ24によって衝撃エネルギを吸収する際の、当該ワイヤ24の動作について
図18、
図39乃至
図42に基づいて説明する。
図39乃至
図42はワイヤ24を引き出す動作説明図である。
図18に示されるように、ワイヤプレート25とガイドドラム21との初期状態においては、屈曲路145を構成する凸部141の周方向一端側が、屈曲路156を構成する凸部38の引き出し側端部の近くに位置し、各屈曲路145、156の各端部がほぼ一直線状になるように対向している。
【0164】
そして、
図39乃至
図41に示すように、ウエビング3の引き出しによってガイドドラム21がウエビング3の引出方向に回転した場合には、ワイヤプレート25は回転が阻止され、ガイドドラム21の回転に伴って段差部36がウエビング3の引出方向X7に相対回転されていく。これにより、段差部36の屈曲路145に屈曲部24Aが固定保持されたワイヤ24が、膨出部155A内に凸部38によって形成される正面視略くの字状の屈曲路156から順次しごかれながら、矢印X8方向に引き出されて、段差部36の外周面に巻き取られる。尚、この際には、ワイヤ24の引き出しと同時に、ガイドドラム21の回転に伴ってトーションバー23も捻れ変形している。
【0165】
また、正面視略くの字状の屈曲路156をワイヤ24が変形しながら通過する際に、凸部38とワイヤ24との相互間に摺動抵抗が生じると共に、ワイヤ24自体による屈曲抵抗が生じ、これら摺動抵抗と屈曲抵抗による引出抵抗によってワイヤ24による衝撃エネルギの吸収がなされる。
【0166】
そして、
図42に示すように、ガイドドラム21の回転に伴って、ワイヤ24の他端部が屈曲路156から離脱した時点で、このワイヤ24による衝撃エネルギの吸収作用は終了し、以降はガイドドラム21の回転に伴ってトーションバー23の捻れ変形による衝撃エネルギの吸収のみとなる。
【0167】
ここで、各突き出しピン37、ワイヤ24及びトーションバー23による衝撃エネルギの吸収特性について
図43に基づいて説明する。
図43は各突き出しピン37、ワイヤ24及びトーションバー23による衝撃エネルギの吸収の一例を示す吸収特性図である。
【0168】
図43に示すように、ウエビング3の引き出しが開始されてから各突き出しピン37が剪断される時点までの間は、各突き出しピン37とトーションバー23による衝撃エネルギの吸収が、同時になされる。従って、ウエビング3に引き出しが開始されてから各突き出しピン37が剪断される時点までは、各突き出しピン37とトーションバー23の双方によってエネルギが吸収される。
【0169】
そして、更にウエビング3が引き出され、各突き出しピン37が剪断されてからワイヤ24が屈曲路156から離脱するまでの間は、トーションバー23の捻れ変形による衝撃エネルギの吸収と、ワイヤ24による衝撃エネルギの吸収が、同時になされる。また、各突き出しピン37が剪断されてからワイヤ24の屈曲路156からの引き出しが終了するまでの間は、エネルギ吸収荷重が乗員に悪影響を与えない最大荷重F1よりも小さい所定荷重にできるだけ沿うように設定することが可能である。
【0170】
更に、ワイヤ24が屈曲路156から離脱した場合には、このワイヤ24による衝撃エネルギの吸収作用は終了し、以降はガイドドラム21の回転に伴ってトーションバー23の捻れ変形による衝撃エネルギの吸収のみとなる。
【0171】
従って、ワイヤ24の屈曲部24Aを屈曲路145に押し込むことによって、ワイヤ24が各リブ151、152により固定保持されるため、構造の簡素化及びワイヤ24の組付け作業の効率化を図ることができる。
また、車両衝突時等における衝撃エネルギの吸収は、この衝撃エネルギの吸収開始直後の初期段階におけるエネルギ吸収を各突き出しピン37及びトーションバー23によって吸収し、その後、ワイヤ24及びトーションバー23によって吸収するようにして大きくし、より効率よく行うことが可能となる。
【0172】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1では、車両衝突時において、プリテンショナ機構17の作動によって、巻取ドラムユニット6がウエビング3の引き込み方向へ高速で回転された場合には、ウエビング3の引き出し側方向(
図37中、上方向である。)へ大きな張力P1(例えば、約2kN〜3kNの張力である。)が作用する。これより、メカニズムカバー210は、軸部48及びロッキングギヤ206を介して、支持ボス210Bの半径方向上側へ所定値以上(例えば、約1kN以上である。)の押圧力が作用し、張力P1の作用する上側方向へ塑性変形される。
【0173】
そして、メカニズムカバー210の塑性変形によって、ラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45と係合ギヤ部89の各内歯88との間に摩擦力が発生し、ガイドドラム21に対してほぼ半径方向内側向き(
図37中、ほぼ左向きである。)の押圧力P2(例えば、約0.4kN〜0.6kNである。)が作用する。このため、張力P1と押圧力P2との合力P3が、軸部48と取付ボス31の回転軸心48Bに対して、ウエビング3の引き出し方向に平行な半径方向よりも、巻取ドラムユニット6のウエビング3の引き出し時の回転方向側へ傾いた半径方向外側(
図37中、左斜め上方向である。)へ作用する。
【0174】
このため、軸部48には、張力P1(例えば、約2kN〜3kNの張力である。)よりも大きい合力P3の約半分の力が作用するため、メカニズムカバー210は、軸部48及びロッキングギヤ206を介して、合力P3の作用する方向へ更に塑性変形される。そして、メカニズムカバー210の塑性変形によって、ラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45が、金属製の側壁部12に形成された係合ギヤ部89の複数の内歯88に係合した係合状態にロックされる。
【0175】
従って、ハウジング11の側壁部12の外側に取り付けられて、軸部48を回転可能に支持するメカニズムカバー210を、ウエビング3の引き出し側方向への張力P1が所定値以上(例えば、約2kN〜3kNである。)になった時に、塑性変形するように構成することによって、プリテンショナ機構17の作動によるウエビング3の巻き取り時に確実に、メカニズムカバー210を塑性変形させて、巻取ドラムユニット6のウエビング3の引き出し方向への回転を迅速かつ確実にロックすることが可能となる。
【0176】
それにより、プリテンショナ機構17の作動後においても、巻取ドラムユニット6のウエビング3の引き出し方向の回転をロックした状態を確実に維持することができる。また、巻取ドラムユニット6のウエビング3の巻き取り方向への回転を許容することができ、プリテンショナ機構17の作動によって巻取ドラムユニット6を巻き取り方向へ回転させ、ウエビング3を確実に巻き取ることができる。
【0177】
また、ハウジング11の側壁部12に形成された貫通孔137の内側周縁部に、巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ26に係合する複数の内歯88を設けると共に、ハウジング11の側壁部12の外側にメカニズムカバー210を取り付けることによって、プリテンショナ機構17が作動した場合に、巻取ドラムユニット6のウエビング3の引き出し方向への回転を阻止する強制ロック機構を構成することが可能となる。これにより、プリテンショナ機構17が作動した場合に、巻取ドラムユニット6のウエビング3の引き出し方向への回転を阻止する強制ロック機構の部品点数の削減化及び組立作業の迅速化を図ることが可能となる。
【0178】
また、ハウジング11の側壁部12に形成された貫通孔137の内側周縁部に設けられた複数の内歯88のピッチは、ラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45のピッチの約1/2に形成されているため、巻取ドラムユニット6のウエビング3の引き出し方向への回転時に、ラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45が複数の内歯88に係合する遅れ時間を確実に短縮することが可能となる。また、複数の内歯88は、ラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45のピッチの約1/2のピッチに形成されているため、該複数の内歯88の半径方向の歯丈をバーリング等により低くして、歯厚を厚くすることが可能となる。
【0179】
また、複数の内歯88は、側壁部12に形成された貫通孔137のラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45に対向する内側周縁部のうち、軸部48及び取付ボス31の回転軸心48Bに対して、少なくともウエビング3の引き出し側の半径方向から該ウエビング3の引き出し時の巻取ドラムユニット6の回転方向側へ約90度の中心角度の内側周縁部に形成されている。これにより、プリテンショナ機構17の作動によるメカニズムカバー210の塑性変形によって、ラチェットギヤ26の移動する方向に対向する貫通孔137の内側周縁部に複数の内歯88を確実に設けることが可能となる。
【0180】
更に、メカニズムカバー210は、合成樹脂の成形によって形成される。これにより、プリテンショナ機構17が作動してウエビング3に所定値以上(例えば、約2kN〜3kNである。)の張力P1が作用した場合に、メカニズムカバー210が確実に塑性変形してラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45を複数の内歯88に係合した係合状態にロックするように、当該メカニズムカバー210の形状や強度を容易に設定することが可能となる。
【0181】
尚、本発明は前記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。例えば、以下のようにしてもよい。
【0182】
[他の実施形態1]
(A)例えば、他の実施形態1に係るシートベルト用リトラクタ301では、上記シートベルト用リトラクタ1とほぼ同じ構成であるが、上記係合ギヤ部89に替えて、
図44に示す係合ギヤ部303を設けるようにしてもよい。ここで係合ギヤ部303について
図44に基づいて説明する。
【0183】
図44は、プリテンショナ機構17が作動していないときのラチェットギヤ26の回転位置を、ハウジング11の側壁部12からロックユニット9を取り除いて示している。尚、以下の説明において上記
図1乃至
図43の前記実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の構成等と同一符号は、該前記実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の構成等と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0184】
図44に示すように、貫通孔137のラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45に対向する内側周縁部には、ラチェットギヤ26に係合可能な複数の内歯303が形成された係合ギヤ部305が設けられている。この複数の内歯303は、ラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45のピッチと同じピッチで形成されると共に、巻取ドラムユニット6のウエビング3を巻き取る回転方向へ傾斜するように形成されているため、ラチェットギヤ26がウエビング3の引き出し方向へ回転する時にのみ、ラチェットギヤ部45に係合するように形成されている。
【0185】
また、複数の内歯303が形成された係合ギヤ部305は、貫通孔137の内側周縁部のうち、ラチェットギヤ26に立設された軸部48の回転軸心48Bに対して、ウエビング3の引き出し方向(
図44中、上側方向である。)に平行な半径方向から、該ウエビング3の引き出し時の巻取ドラムユニット6の回転方向側へ約90度の中心角度の内側周縁部に設けられている。
【0186】
尚、複数の内歯303が形成された係合ギヤ部305は、貫通孔137の内側周縁部のうち、ラチェットギヤ26に立設された軸部48の回転軸心48Bに対して、ウエビング3の引き出し方向(
図44中、上側方向である。)に直交する直径より、該ウエビング3の引き出し方向側(
図44中、上側である。)の約180度の中心角度の内側周縁部に設けるようにしてもよい。これにより、プリテンショナ機構17が作動した場合に、ラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45を複数の内歯303に確実に係合させることができる。
【0187】
また、貫通孔137の内側周縁部に設けられた係合ギヤ部305の複数の内歯303のピッチは、ラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45のピッチと同じピッチに形成されている。これにより、車両衝突時にプリテンショナ機構17が作動して、ラチェットギヤ部45が複数の内歯303に当接された場合には、ラチェットギヤ26は、各内歯303に迅速かつ確実に係合することができる。また、係合ギヤ部305の複数の内歯303のピッチを、ラチェットギヤ26のラチェットギヤ部45のピッチと同じピッチに形成することによって、各内歯303の強度を上げることができる。
【0188】
[他の実施形態2]
(B)また例えば、
図45に示すように、ハウジング11の側壁部12に形成された係合ギヤ部89の各内歯88の厚さT2を、バーリング加工等によって、側壁部12の厚さT1よりも厚くなるように形成してもよい。これにより、各内歯88の強度を上げることができる。