【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の根底にある課題は、驚くべきことに、特許請求の範囲によって定められる試験細片、方法および使用によって解決される。
【0016】
本発明の主題は、色変化による
エクオールの検出のための試験細片である。本発明によれば、色変化は試験細片の表面上で検出可能である。この色変化は、細片が
エクオールを含む水溶液と接触するときに、起こる。
【0017】
本発明によれば、「試験細片」は、水溶液を当該細片と接触させることにより水溶液を分析するための少なくとも1つの反応性薬剤を含浸した単純な細片である。好ましくは、水溶液との接触をもつ前は、当該細片は無色であるか、または薄い着色しか有しない。これに関して、「無色の」は、細片が白色であるか、または細片の担体材料に応じて、薄い色を有するということを意味する。本発明の好ましい実施形態では、
エクオールの存在は黄色、橙色または赤色によって示される。これは、その色は、たいていは黄色がかったかまたは赤色がかった色であろうが、その色は他の色成分を含んでもよいし、または黒ずんでいてもよいということを意味する。
【0018】
好ましくは、この呈色反応は非常に特異的である。
エクオールが有意な濃度で試料中に存在するとき、明確かつ示差的な色変化が観察されることが好ましい。
エクオールが存在しないとき、細片の色は変化しないかもしくは実質的に変化しないか、または少なくとも、
エクオールの存在を示す色へは変化しないべきである。特に、他のイソフラボンが存在するときは、とりわけ、大豆の中に含有される他のイソフラボン、または大豆の摂取後に代謝的に産生される誘導体が存在するときは、
エクオールを示す色変化は、観察されるべきではない。好ましくは、水溶液がダイゼイン、ダイジン、プルネチン、ビオカニンA、オロボール、サンタルおよび/もしくはプラテンセインまたはそれらの代謝産物を含む場合、この色変化は観察されるべきではない。さらに、当該細片の色は、尿の中に通常存在する他の化合物、例えばビタミン、フェノール類およびエストロゲンホルモンによって影響を受けるべきではない。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、上記水溶液は尿、血液または尿もしくは血液の分画である。尿中の
エクオールの検出は好ましい。なぜなら、血糖などの検出のための類似の試験細片の場合のように、尿の分析は、血液試料を採取し分画することは必要ではないため、消費者または実験室にとって便利だからである。
エクオールが血液中で検出される場合、血漿または血清などの無色の血液試料を使用することが好ましい。本発明によれば、尿を分画に分けることも、尿を、例えば酵素を用いた前処理にかけることも必要ではない。従って、尿は、前もっての精製、分画または化学処理なしに、当該試験細片に付されることが好ましい。しかしながら、本発明によれば、その任意の体液画分または人工の溶液を、
エクオールの存在について調べることができる。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、当該試験細片は、1〜20cmの長さおよび0.2〜2cmの幅を有する。しかしながら、試験細片の寸法は、応用例に応じて変わる。例えば、試験細片がもっぱら
エクオールの検出のために提供される場合、試験細片は、比較的細い棒の寸法を有することができよう。他方、この
エクオール試験は、1つの細片上で他の試験と組み合わせることができよう。この場合、細片は幅がより広くてもよい。例えば、当該細片は、他の尿成分、例えばダイゼインまたはホルモンの検出のための別の部分を含んでもよい。
【0021】
本発明の別の主題は、先行する請求項のうちの少なくとも1つに係る試験細片を製造するための方法であって、担体を、硝酸を含む水性含浸溶液と接触させることを含む方法である。好ましくは、この硝酸は濃硝酸である。濃硝酸はおよそ64〜70重量%の水分含量を有する。好ましい実施形態では、硝酸の濃度は、15%〜70%重量%、好ましくは40〜70重量%、または少なくとも15重量%または少なくとも45重量%である。硝酸は常に水を含むので、この含浸溶液は水溶液である。しかしながら、この水溶液は有機溶媒を含んでもよい。本願明細書で使用する場合、用語「含浸溶液」は、水および任意にさらなる有機溶媒を含む含浸溶液を指す。原理上は、シグナル強度は、硝酸濃度とともに上昇する。しかしながら、試験細片が、
エクオールを含む水溶液との接触後に展開される場合、感度は高められるであろうから、硝酸の濃度はより低くできるであろう。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、この含浸溶液は、有機溶媒、好ましくは脂肪族アルコール、および/またはアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を含む。所望のシグナル強度を得るように、これらの成分の量は調整される。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、当該有機溶媒は、トルエン、ベンゼンまたはアミルアルコールである。好ましい実施形態では、当該脂肪族アルコールはアミルアルコールであり、かつ/または当該金属水酸化物は水酸化ナトリウムである。アミルアルコールを加えるときは、この水溶液はむしろ懸濁液またはエマルションである。本願明細書で使用する場合、用語「含浸溶液」は、このようなエマルションまたは懸濁液にも関する。
【0024】
別の好ましい実施形態では、当該含浸溶液は硝酸、硝酸塩および有機溶媒を含む。例えば、この溶液は、40〜80重量%の硝酸(少なくとも45重量%のHNO
3濃度で)、5〜30重量%の硝酸塩および5〜40重量%の有機溶媒を含む。硝酸塩は、好ましくはアルカリ硝酸塩またはアルカリ土類硝酸塩、好ましくは硝酸ナトリウムである。当業者は知っているとおり、水酸化ナトリウムなどの塩基を用いた上記硝酸の一部の中和反応から、溶液中の硝酸塩のうちの少なくとも一部を生成するとき、同じ溶液を得ることができる。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、当該溶液のpHは4未満、好ましくは2未満である。好ましい実施形態では、担体は、紙、セルロース、ニトロセルロースまたは有機ポリマーから作製される。この担体は、多孔性であり、例えば不織布膜または多孔質膜である。酸の存在下で安定である担体は当該技術分野で公知である。
【0026】
当該試験細片は、好ましくは水との接触の際に迅速に溶解する水溶性の有機ポリマーでできた外側バリア層を含んでもよい。このバリア層は、試験細片に保存安定性を与える可能性がある。例えば、この細片は、ポリビニルアルコール(PVOH、PVA)と層状になっていてもよい。水溶性のプラスチックからできたバリア層は、当該技術分野で公知である。例えば、PVOHは、水との接触後、数秒以内に分解、分散および溶解する。膜のグレードを選択することにより、素早い溶解が成し遂げられる。有用なバリア材料は、ペレット状のポリビニルアルコール(英国、アーラム(Irlam)のエンバイアロンメンタル・ポリマーズ(Environmental Polymers)から、商標「depart」で入手できる)であってもよい。この材料を用いた試験により、23℃および50%RHで、ポリビニルアルコールの30ミクロン(30μm)の膜は、配合に応じて、1日あたり0.24〜1.85ml/m
2の範囲の酸素透過速度を有する可能性があるということが示されている。膜材料についての窒素透過速度はあまりに低くて、実験室の試験では測定できなかったが、これは、アルミニウム箔の透過性に類似の透過性を示唆する。
【0027】
試験細片は、例えば数ヶ月または数年間の長時間の保存安定性を有することが好ましい。これは、安定な担体を使用し、バリア層を設け、かつ/または葉、バッグまたは容器などの密封された梱包材料の中に細片を包み込むことにより、成し遂げることができる。しかしながら、当該試験細片を、含浸溶液および担体を含むキットとして提供することも可能である。この細片を使用する前に、使用者は、担体に溶液を含浸させる。
【0028】
本発明の好ましい実施形態では、当該方法は、
(a)担体、および硝酸を含む水性含浸溶液を準備する工程と、
(b)この担体に当該溶液を含浸させる工程と、
(c)この担体を乾燥する工程と
を含む。
【0029】
本発明の別の主題は、水溶液が
エクオールを含むかどうかを判定するための方法であって、
(A)当該水溶液を本発明の試験細片と接触させる工程と、
(B)色変化の存在または不存在を検出する工程と、
(C)色変化の存在または不存在から、当該溶液が
エクオールを含むかどうかを推測する工程と
を含む方法である。
【0030】
本発明の別の主題は、人が
エクオール産生体であるかどうかを判定するための方法であって、
(i)当該人からの尿、血液またはその分画を、先行する請求項のいずれか1項に記載の試験細片と接触させる工程と、
(ii)色変化の存在または不存在を検出する工程と、
(iii)この色変化の存在または不存在から、当該人が
エクオール産生体であるかどうかを推測する工程と
を含む方法である。
【0031】
本発明の方法では、
エクオールの存在は黄色、橙色または赤色への色変化により判定されることが好ましい。さらには、この色変化が目によって観察されることが好ましい。従って、色検出のために機器を使用することは必要ではない。
【0032】
ある人が
エクオール産生体であるかどうかを判定するとき、尿または血液は、試験前に、ダイゼインまたはダイゼインを含む食品もしくは食事を摂取していた患者から、得られることが好ましい。当該人が、所定の量のダイゼイン、またはダイゼインを含む製品を摂取していたことが好ましい。例えば、ダイゼインを含む製品は、大豆または大豆分画または大豆製品(日本の伝統食である納豆など)、またはアカツメクサ(クローバー)アッセイもしくは分画である。摂取後、
エクオール産生体は、ダイゼインを
エクオールへと迅速に変換し、
エクオールを大量に排泄する。従って、ダイゼインが
エクオールへと変換されるか否かは直接モニターすることができる。尿などの試料は、ダイゼインが
エクオールへと変換されるように十分な時間の後に、採取および/または分析されるべきである。例えば、ダイゼインまたはダイゼインを含む食品の摂取後、20分〜10時間後に、尿試料が採取および/または分析されてもよい。
【0033】
個体に投与されるダイゼインの量は、
エクオール産生体について明確なシグナルが観察されるように選ばれる。ダイゼインの量は、特定の試験細片の選択性だけでなく、その個体の体重にも依存する。例えば、試験の前に、純粋な形態で、またはダイゼインを含む製品の一部として10〜2000mg、好ましくは20〜1000mg、50〜500mgまたは50〜250mgのダイゼインが当該個体に投与されてもよい。他の実施形態では、投与されるダイゼインの量は、1000mgまで、500mgまで、または250mgまでである。試験は、それぞれダイゼインの量を変えた投与の後に、数回、例えば2回または3回実施されてもよい。
エクオールへのダイゼインの変換は、個体間で様々であるので、当該アッセイは、個体が強力な
エクオール産生体であるかどうかまたは個体がダイゼインを部分的にしか変換しないかどうかを判定するためにも使用することができる。
【0034】
本発明によれば、そして当該技術分野で公知の方法、例えば薄層クロマトグラフィーとは対照的に、試験細片を展開することは必要ではない。水溶液とすでに接触した試験細片を、色変化を誘導するための化学物質に曝すことなく、色変化は起こる。対照的に、色変化は、当該試験細片を
エクオールと接触させた後に、試験細片と
エクオールとの化学反応に起因して始まる。試料を試験細片と接触させたあと迅速に、例えば1分以内または30秒未満で色変化が起こることが好ましい。
【0035】
好ましくは、色変化は、ダイゼインの摂取後の
エクオール産生体の尿の中の
エクオールの生理的濃度の範囲にある
エクオール濃度で起こる。好ましくは、この水溶液は、少なくとも0.5%、または少なくとも0.1%または少なくとも0.05%または少なくとも0.01%の
エクオール(w/v)を含む。
【0036】
本発明の主題は、色変化による
エクオールの検出のための本発明の試験細片の使用でもある。本発明の方法は、好ましくは、診断方法である。
【0037】
本発明の試験細片および方法は、本発明の根底にある課題を解決する。当該試験細片は、迅速、簡単かつ特異的な方法での
エクオールの検出を可能にする。この試験細片は、自身が
エクオール産生体であるかどうかを判定したい人が使用することができる。この試験細片は、第1の人が、第2の人が
エクオール産生体であるかどうか、または第2の人からの試料が
エクオールを含むかどうかを判定するために、使用することもできる。例えば、この第1の人は、実験室スタッフ、医療スタッフ、または栄養アドバイザーもしくは食事アドバイザーなどの他の専門家であることができる。本発明の方法は、当該試験細片のほかに、複雑な機器または特定の化学物質は必要としない。