(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778706
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】半導体開閉器
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20150827BHJP
H01L 25/18 20060101ALI20150827BHJP
H01H 71/08 20060101ALI20150827BHJP
H01H 73/20 20060101ALN20150827BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01H71/08
!H01H73/20 A
!H01H73/20 B
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-30986(P2013-30986)
(22)【出願日】2013年2月20日
(65)【公開番号】特開2014-160758(P2014-160758A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2013年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236780
【氏名又は名称】不二電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 誠仁
(72)【発明者】
【氏名】山下 力
(72)【発明者】
【氏名】外河 善
【審査官】
小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−064402(JP,A)
【文献】
特開2001−126607(JP,A)
【文献】
実開平01−080945(JP,U)
【文献】
特表2008−511279(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/150706(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01H 71/08
H01L 25/18
H01H 73/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの制御信号により半導体素子を制御して入力側と出力側とを開閉する半導体開閉器の端子構造において、該入力側の正極端子および負極端子が本体ユニットの一方側に配置され、該出力側の正極端子および負極端子が該本体ユニットの他方側に配置され、該入力側の正極端子と負極端子とに所定の段差が設けられ、該出力側の正極端子と負極端子とに所定の段差が設けられており、
該半導体素子用のラジエターと回路基板とを該本体ユニット内で該本体ユニットの厚み方向に互いに対向して縦方向に配置して、導電部材の該ラジエターで該回路基板を面状に覆っている半導体開閉器。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体開閉器であって、該半導体開閉器の複数ユニットがレール上に順次並べて固定されて、前記本体ユニットの一方側および他方側にそれぞれ、前記正極端子と前記負極端子とに段差が付いた状態で該正極端子と該負極端子とが順次並んで配置されている半導体開閉器。
【請求項3】
前記正極端子の両側の隔壁の少なくとも一方に、クランプ電流センサを取り付けるアダプタを取り付けるかまたは該アダプタを取り付け可能とした請求項2に記載の半導体開閉器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば原子力発電所、火力発電所および変電所などの配電盤、制御盤および監視盤などに用いられ、特に近年の太陽光発電に代表される新エネルギー分野で要求のある直流の高電圧回路などを開閉する半導体開閉器およびその端子構造に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を用いた従来の無接点開閉器として、交流の配電系統並びに交流を電源とする電気回路を開または閉状態に切換える半導体開閉器について特許文献1に開示されている。
【0003】
図9は、特許文献1に開示されている従来の半導体開閉器を含む回路構成を示すブロック図である。
【0004】
図9に示すように、電子開閉装置110は、例えば3相に形成されたソフトスタータである。ソフトスタータは負荷111の「ソフトな」接続またはソフトな遮断を可能とする。負荷111は例示的に3相モータである。電源112は3相電源である。開閉装置110は例示的に半導体開閉器としてのトライアック113を有する。トライアック113は2つの逆並列に接続されたサイリスタからなる。別段示さないゲートを介して、負荷111は汎用位相制御の意味でランプ状に閉路または開路される。符号114は選択的な橋絡開閉器またはバイパス開閉器であり、ランプアップの末端に到達後にトライアック113を橋絡する。これにより、定格運転時にトライアック113に発生するような熱の形の電気損失は避けられる。
【0005】
符号115は、過電流および/または短絡の場合に電子開閉装置110を電源112から分離する保護装置である。
【0006】
符号116は、特に安全上重要な応用において電子開閉装置110の出力端への電源電圧の移送を防止するために電源電圧を遮断することのできる断路器である。この断路器は同様に電子開閉装置110用の開路命令の存在で持って開路へと駆動することができる。
【0007】
一方、最近の電力エネルギーの発電は太陽光発電、電気自動車に代表される蓄電池の普及により、大型施設の直流化やインフラなど直流の環境が急速に広がっており、前述したように交流が主流であった従来の半導体開閉器の分野も直流対応の必然性が求められている。また、この従来の半導体開閉器は、従来の手動のタイプから、遠隔制御ができる半導体開閉器の必要性が高まっている。
【0008】
ここで、従来の半導体開閉器の端子構造としては入出力の配線の容易さから正極端子および負極端子は同じ高さに配置されているが、例えば、従来の配線中継および分岐装置として段差を有する端子構造について特許文献2を用いて説明する。
【0009】
図10は、特許文献2に開示されている従来のねじ締め2段端子台の端子構造を示す斜視図である。
【0010】
図10に示すように、従来のねじ締め2段端子台100は、基台101と、基台101に回動可能に取り付けられた蓋体102とを備えている。基台101は、上下の2段の段面103,104を備えていて、上方の段面(以下、上段面という)103には、基台101の長手方向に沿って複数の端子接続部105が列設されていると共に、下方の段面(以下、下段面という)104には、基台101の長手方向に沿って複数の端子接続部106が列設されている。
【0011】
上段面103の端子接続部105相互間は絶縁壁107で仕切られ、下段面104の端子接続部106相互間は絶縁壁108で仕切られた状態になっている。換言すれば、上段面103の端子接続部105は、基台101の長手方向の左右側方を一対の絶縁壁107,107で挟まれ、下段面104の端子接続部106は、基台101の長手方向の左右側方を一対の絶縁壁108,108で挟まれた状態になっている。なお、109は取付ねじである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2010−512624号公報
【特許文献2】特開2009−48774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来、ブレーカ(遮断機)やコンダクタ(接触器)など、電気機械式接点を用いた開閉器が使用されている。近年、半導体素子を用いた半導体開閉器が使用されるようになったが、この半導体開閉器も従来の電気機械式の開閉器との互換性を配慮して、その形状も従来品に類似しており、従来品に、半導体素子の放熱機能を有したラジエターが追加されるような形状ではあるものの、十分に半導体開閉器としてのメリットを生かした設計にはなっていない。
【0014】
従来の半導体開閉器の端子構成として、入出力の配線の容易さから正極端子および負極端子は同じ高さで左右に配置されている。また、特許文献2に開示されている従来のねじ締め2段端子台100では、上段と下段の2段構成であるものの、正極端子および負極端子を接続する場合に、左右に隣接する同じ高さの上段または下段で接続し、正極端子および負極端子を上段と下段で分けて接続すると、それぞれの段で複数の端子が連続して並んでいるために、上段と下段のどの端子が正極端子および負極端子の対であるかが分かり難い。
【0015】
この同じ高さで左右の端子配置には次のような問題がある。
【0016】
まず、従来の半導体開閉器において、左右の正極端子および負極端子の両接続端子が隣接しているために表示を誤認して接続極性を間違って接続してしまうことから、半導体開閉器を破壊する事故が発生する虞がある。また、正極端子および負極端子の両接続端子が左右に近接して並んでいると、電流計測のためにクランプ電流センサで電線をクランプし難くなる。さらに、正極端子および負極端子の両接続端子が左右に近接して並んでいると、絶縁距離を延ばすために端子隔壁の高さや長さを増やす必要があり、半導体開閉器のサイズが大型化してしまう。
【0017】
本発明は、上記従来の問題を解決するもので、極性配線間違いを抑え、電流計測が容易でサイズを小型化することができる半導体開閉器およびその端子構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の半導体開閉器の端子構造は、外部からの制御信号により半導体素子を制御して入力側と出力側とを開閉する半導体開閉器の端子構造において、該入力側の正極端子および負極端子が本体ユニットの一方側に配置され、該出力側の正極端子および負極端子が該本体ユニットの他方側に配置され、該入力側の正極端子と負極端子とに所定の段差が設けられ、該出力側の正極端子と負極端子とに所定の段差が設けられているものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0019】
また、好ましくは、本発明の半導体開閉器の端子構造における段差は、少なくとも印加電圧に対する絶縁距離を確保できる距離に設定されている。
【0020】
さらに、好ましくは、本発明の半導体開閉器の端子構造における入力側の負極端子および前記出力側の負極端子が、該入力側の正極端子および該出力側の正極端子よりも低い位置に設けられている。
【0021】
さらに、好ましくは、本発明の半導体開閉器の端子構造における入力側と出力側の各負極端子を一体的に構成し、その一体化した負極端子の一部を回路基板の負極ラインに接続している。
【0022】
さらに、好ましくは、本発明の半導体開閉器の端子構造におけるラジエターと回路基板とをユニットの厚み方向に互いに対向して配置して、ラジエターで回路基板を面状に覆っている。
【0023】
さらに、好ましくは、本発明の半導体開閉器の端子構造における回路基板の所定位置に穴を配置してこの穴からラジエターに半導体素子を締結固定可能とする。
【0024】
さらに、好ましくは、本発明の半導体開閉器の端子構造における半導体素子は複数個並列接続されている。
【0025】
さらに、好ましくは、本発明の半導体開閉器の端子構造におけるラジエターは複数の針状の放熱構造を有し、上下面および左右面からその中央のラジエターを透視できる構造とし、空気の流れに自由度を持たせている。
【0026】
本発明の半導体開閉器は、本発明の上記半導体開閉器の端子構造が用いられ、該半導体開閉器の複数ユニットがレール上に順次並べて固定されて、前記本体ユニットの一方側および他方側にそれぞれ、前記正極端子と前記負極端子とに段差が付いた状態で該正極端子と該負極端子とが順次並んで配置されているものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0027】
また、好ましくは、本発明の半導体開閉器における正極端子の両側の隔壁の少なくとも一方に、クランプ電流センサを取り付けるアダプタを取り付けるかまたは該アダプタを取り付け可能としている。
【0028】
さらに、好ましくは、本発明の半導体開閉器における負極端子をレールに近く配置し、正極端子をレールから遠くになるように配置する。
【0029】
さらに、好ましくは、本発明の半導体開閉器におけるレール取り付け端子台形状の半導体開閉器である。
【0030】
上記構成により、以下、本発明の作用を説明する。
【0031】
本発明においては、外部からの制御信号により半導体素子を制御して入力側と出力側とを開閉する半導体開閉器の端子構造において、入力側の正極端子および負極端子が本体ユニットの一方側に配置され、出力側の正極端子および負極端子が本体ユニットの他方側に配置され、入力側の正極端子と負極端子とに所定の段差が設けられ、出力側の正極端子と負極端子とに所定の段差が設けられている。
【0032】
これによって、一対の正極端子と負極端子とに所定の段差が設けられていることから、極性配線間違いが抑えられ、この段差により電線をクランプで切る空間が得られてクランプ電流センサ(クランプ電流モニタ)による電流計測が容易になり、この段差によって絶縁極も得られることから半導体開閉器のサイズを小型化することが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
以上により、本発明によれば、入力側の正極端子と負極端子とに所定の段差が設けられ、出力側の正極端子と負極端子とに所定の段差が設けられるため、極性配線間違いを抑え、電流計測が容易でサイズを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の実施形態1における半導体開閉器の1ユニット構成を示す図であって、(a)は両側にそのサイドプレートが取り付けられた半導体開閉器の左斜視図、(b)はそのサイドプレートが両側から取り外された半導体開閉器の左斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態1における半導体開閉器の1ユニット構成を示す図であって、(a)は両側にそのサイドプレートが取り付けられた半導体開閉器の右斜視図、(b)はそのサイドプレートが両側から取り外された半導体開閉器の右斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態1における半導体開閉器の1ユニット構成を示す図であって、(a)は
図1(a)の半導体開閉器の上面図、(b)は
図1(a)の半導体開閉器の右側面図である。
【
図4】(a)は
図1(b)の半導体開閉器の正面図、(b)は(a)の半導体開閉器におけるAA線断面図である。
【
図5】
図4(a)の半導体開閉器における裏面図である。
【
図7】
図1(b)の半導体開閉器の左展開斜視図である。
【
図8】
図2(a)の半導体開閉器の右展開斜視図である。
【
図9】特許文献1に開示されている従来の半導体開閉器を含む回路構成を示すブロック図である。
【
図10】特許文献2に開示されている従来のねじ締め2段端子台の端子構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明の半導体開閉器およびその端子構造の実施形態1について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図における構成部材のそれぞれの厚みや長さなどは図面作成上の観点から、図示する構成に限定されるものではない。
【0036】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1における半導体開閉器の1ユニット構成を示す図であって、
図1(a)は両側にそのサイドプレートが取り付けられた半導体開閉器の左斜視図、
図1(b)はそのサイドプレートが両側から取り外された半導体開閉器の左斜視図である。
図2は、本発明の実施形態1における半導体開閉器の1ユニット構成を示す図であって、
図2(a)は両側にそのサイドプレートが取り付けられた半導体開閉器の右斜視図、
図2(b)はそのサイドプレートが両側から取り外された半導体開閉器の右斜視図である。
図3は、本発明の実施形態1における半導体開閉器の1ユニット構成を示す図であって、
図3(a)は
図1(a)の半導体開閉器の上面図、
図3(b)は
図1(a)の半導体開閉器の右側面図である。なお、
図2(a)ではプリント基板12が半透明でその裏面側にある半導体素子などが透けて見えている。
【0037】
図1(a)および
図1(b)〜
図3(a)および
図3(b)において、本実施形態1の半導体開閉器1は、開閉器本体(箱体)としての絶縁樹脂製のユニット2と、ユニット2に下側に設けられた電圧入出力用の負極端子3と、ユニット2に上側に設けられた電圧入出力用の正極端子4と、制御電源入力表示用のLED5と、過電流検知表示用のLED6と、制御電圧入力用のコネクタ7と、これらのLED5、6およびコネクタ7を覆う蓋体であるカバー8と、各半導体素子13の発熱を放熱するラジエター9と、負極端子3の絶縁隔壁になると共に負極端子3の連結部分を密閉し、ラジエター9とユニット2の隙間を覆うサイドプレート10と、半導体素子13の主回路および制御回路が設けられた回路基板11と、正極端子4の絶縁隔壁になると共にサイドプレート10の反対側のユニット2上の回路基板11を覆うサイドプレート12とを有している。なお、半導体開閉器1は半導体開閉器1Aの両側にサイドプレート10、12を配置したことが半導体開閉器1と半導体開閉器1Aとの違いである。
【0038】
ラジエター9の周囲は、放熱が良好なように、縦方向でも横方向でも空気が流れるように空間を壁で遮らないように構成されている。要するに、これは取り付け方向が水平面上でも垂直面上でも上方向に空気が流れるように空間を確保している。ラジエター9は複数の針状の放熱構造を有し、上下面および左右面からその中央のラジエター9を透視できる構造とし、空気の流れに自由度を持たせている。
【0039】
図4(a)は
図1(b)の半導体開閉器の正面図、
図4(b)は
図4(a)の半導体開閉器におけるAA線断面図である。
図5は、
図4(a)の半導体開閉器における裏面図である。なお、
図5ではプリント基板12が半透明でその裏面側にある半導体素子13などが透けて見えている。
【0040】
図4(a)、
図4(b)および
図5において、電圧入出力用の負極端子3は、電圧入力用の負極端子3から電圧出力用の負極端子3に端子金具を介して一体的に連結されている。また、電圧入出力用の負極端子3は、ユニット2に下方から保持されて、短冊状で上に開放したコ字状の両端縁部が水平方向に端子領域を延設するように曲げられた銅または銅合金の表面にNi(ニッケル)やAg(銀)などで表面処理が為された端子金具3aと、この端子金具3aの両側の端子領域中央部に形成された各ねじ穴に螺合したSワッシャおよび平ワッシャ付きのねじ3bとを有している。さらに、電圧入出力用の負極端子3は、回路基板11の負ラインの所定箇所にも端子部3cで半田付けなどで電気的に接続されている。
【0041】
即ち、電圧入出力用の負極端子3は、半導体素子13を含まない側の導電ラインとして回路基板11に配置せず、電線などで接続しない手段として、電圧入力用の負極端子3と電圧出力用の負極端子3とを一体の端子として短絡している。負極端子3からの電位を回路基板11に与えるために、負極端子3の端子切片の一部(端子3c)を回路基板11の負ラインの所定位置に半田で接続している。
【0042】
電圧入出力用の正極端子4は、電圧入力用の正極端子4と、電圧出力用の正極端子4との縦方向に配置された2個の端子金具で構成されている。また、電圧入力用の正極端子4と電圧出力用の正極端子4とはそれぞれ、ユニット2に下方から保持されて、短冊状の端縁部が水平方向に端子領域を延設するように曲げられた銅または銅合金の表面にNi(ニッケル)やAg(銀)などで表面処理が為された端子金具4aと、この端子金具4aの端子領域中央部に形成されたねじ穴に螺合したSワッシャおよび平ワッシャ付きのねじ4bとを有している。さらに、電圧入力用の正極端子4と電圧出力用の正極端子4とはそれぞれ、回路基板11の所定箇所にも端子部4cで半田などで電気的に接続されている。
【0043】
正極端子4と負極端子3との段差(段違い)は、絶縁距離(IEC60947の規格:例えばDC1200Vにおいて、空間距離14mm、沿面距離20mm)を満たすことはもちろん、小型のクランプ電流センサを配置できる距離として30mm以上40mm以下に設定している。40mm以上になるとサイズが大きくなる。このように、上下方向に距離が離れているため、クランプ電流センサでクランプする空間を有することができる。負極端子3側をレール側で下側に位置させる。
【0044】
消費電力モニタのために半導体開閉器1(スイッチ)を通過する電流値(電流情報)をモニタする場合が多いが、このため、クランプ電流センサを、上側の正極端子4に接続する電線の周りに挟み込んでクランプする。これを可能にするために、前述したように、正極端子4と負極端子3との段差を少なくとも30mm以上40mm以下に設定したが、電線にクランプするクランプ電流センサを取り付けるアダプタをユニット2の隔壁に取り付け可能な構造物を有していてもよい。この隔壁へのアダプタの取り付けが可能な構造物は絶縁距離を増やすためのリブと兼用した形状としてもよい。要するに、正極端子4の両側の隔壁の少なくともいずれか(ユニット2の隔壁)に、クランプ電流センサを取り付けるアダプタを取り付け可能とする構造を有していてもよい。
【0045】
ラジエター9は、熱伝導性のよいアルミニュウムなどの凹凸(ここでは多数の針状体)のある金属製で構成されており、電圧入出力用の負極端子3が配置されたユニット2の上方に縦方向に設けられ、放熱効果を得るために多数の突起状部(凸部、ここでは多数の針状体)が千鳥状に立設した板面側を外側にしてなべねじ9aでユニット2に固定されている。
【0046】
複数の半導体開閉器1の複数ユニットをレールに設置する場合に、回路基板11にDC/DCコンバータを用いる場合など、隣接ユニット間に磁気的影響が生じる虞があるが、導電部材からなるラジエター9を回路基板11間に面状に配置し、即ち、金属板状のラジエター9と回路基板11を交互に配置するため、隣からの電磁ノイズをラジエター9で磁気シールドしてノイズを遮断でき、回路基板11には隣からのノイズは入らない構成である。
【0047】
直流用の半導体開閉器1の半導体素子13はMOSFETで構成されており、高電圧で無接点で開閉される。定格電圧DC1200Vで定格電流10Aを、実際は、電圧DC600VまたはDC800Vで10Aで用いる。半導体素子13は無接点であるのでメカニカル接点のようにアークの発生も発音もなく、接点の損耗もなく静かに駆動する。また、半導体素子13は、リレーを介することなくコネクタ7を介した外部からのオンオフ制御信号による遠隔操作により容易にソーラなどの高電圧直流回路をオンオフ制御することができる。負荷側は例えばソーラパネルなどからの電圧であり、ソーラパネルからの電圧を2個並列の半導体素子13により遮断(OFF)してメンテナンス作業などを行い、その後、半導体素子13により導通してソーラシステムからの電力を得ることができる。
【0048】
半導体素子13は、MOSFETで2個並列に接続されており、素子駆動時に10A程度の電流を流すことから発熱するため、これを放熱する目的で、ラジエター9に対してその裏面全面を押し付けるようになべねじ13aで固定されている。各半導体素子13は3端子13bを有しており、各半導体素子13の3端子13bが回路基板11の所定箇所に半田などで電気的に接続されている。
【0049】
回路基板11には、制御電源入力表示用のLED5の各端子5bと、過電流検知表示用のLED6の各端子6bと、制御電圧入力用のコネクタ7の各端子7bとがそれぞれ電気的に半田などで接続されている。回路基板11は、ラジエター9の裏面側で所定の空間を空けた状態でタッピングねじ11bにて4箇所、ユニット2に締結固定されている。
【0050】
ユニット2の底面部には、一または複数のユニット2をレール(図示せず)の幅方向両側に延設した各鍔部を受けて通すためのレール受部14、15が対向して設けられている。レール受部15は、レール(図示せず)の一方の鍔部を係合可能とするように弾性により出退自在に構成されている。したがって、ユニット2の底面部の一方のレール受部14にレール(図示せず)の一方の鍔部を係合させて、レール(図示せず)の他方の鍔部を、出退自在なレール受部15のテーパ部分に上から押し付けることにより、ワンタッチでレール(図示せず)の両鍔部をユニット2の両レール受部14、15に装着することができるようになっている。
【0051】
図6は
図1(a)の半導体開閉器の回路図である。
【0052】
図6において、半導体開閉器1は回路基板11上に主回路21と制御回路22で構成されている。主回路21において、入力用の負極端子3と出力用の負極端子3間は端子金具3aで一体的に連結され、入力用の負極端子4と出力用の負極端子4間は,回路基板11上の半導体素子13(MOSFET)と電流制限回路211の直列回路が接続されている。入力用の負極端子3と入力用の負極端子4間は、電圧を安定化させると共にサージによる回路の損傷を防ぎ、ノイズを低減するための入力保護素子212、213の並列回路が接続されている。また、出力用の負極端子3が還流ダイオード214のアノードに接続され、還流ダイオード214のカソードは出力用の負極端子4に接続されて逆電圧を緩和(逆起電力を通す)する構成である。ここでは図示していないが、半導体素子13(MOSFET)は、電流容量を稼ぎかつ発熱を抑えるために2個並列に接続されている。
【0053】
電流制限回路211は、2個並列の半導体素子13(MOSFET)からの電流値が所定値を超えて過電流になった場合にこれを検知して過電流検知表示用のLED6を点灯させると共に、所定電流に電流値を制限するかまたは、半導体素子13からの電流を遮断する。
【0054】
制御回路22は、コネクタ7からの制御信号を受けて、ノイズをカットすると共に電圧を発生させて制御信号がオン信号の場合に制御電源入力表示用のLED5を点灯させる入力回路221と、入力回路221からの制御信号がオン信号の場合に所定電圧を2個並列の半導体素子13(MOSFET)の各ゲートに出力させて2個並列の半導体素子13(MOSFET)をオン駆動して回路を接続し、または、制御信号がオフ信号の場合に所定電圧を2個並列の半導体素子13(MOSFET)の各ゲートに出力させて2個並列の半導体素子13(MOSFET)をオフ駆動して回路を遮断する出力回路222とを有している。
【0055】
以下に、上記構成の半導体開閉器1の製造方法としての組み立て方法について説明する。
【0056】
図7は、
図1(b)の半導体開閉器1Aの左展開斜視図であり、
図8は、
図2(a)の半導体開閉器1Aの右展開斜視図である。
【0057】
図7および
図8に示すように、ユニット2に、下側の一体化した負極端子3を所定位置に収容すると共に、上側の2個の正極端子4を所定位置に収容する。
【0058】
次に、ユニット2に装着した下側の一体化した負極端子3の上方に、素子放熱用のラジエター9を凹凸面が外側にくるようになべねじ9aによりユニット2の所定位置に締結固定する。
【0059】
続いて、2個の半導体素子13をラジエター9の裏面側の所定位置に並べて仮固定する。
【0060】
その後、制御電源入力表示用のLED5、過電流検知表示用のLED6および制御電圧入力用のコネクタ7が取り付けられた回路基板11をタッピングねじ11bによりユニット2の所定位置に締結固定する。このとき、回路基板11の所定の複数の小穴にそれぞれ端子部4c、端子5b、6b,7bおよび3端子13cの各先端をそれぞれ通して半田付けする。
【0061】
さらに、回路基板11の穴11aを通してドライバにより半導体素子13のなべねじ13aを本締めして半導体素子13をラジエター9の裏面に固定する。
【0062】
さらに、カバー8をLED5、6、コネクタ7に対してユニット2に装着する。
【0063】
以上により、本実施形態1の半導体開閉器1Aを組み立てることができる。
【0064】
その後、本実施形態1の半導体開閉器1Aの両側にサイドプレート10、12を配置して本実施形態1の半導体開閉器1を組み立てることができる。
【0065】
さらに、本実施形態1の半導体開閉器1をレールに通し、同じ方向から本実施形態1の半導体開閉器1Aをレールに通した後にサイドプレート12をレールに通して両側から固定金具により、1ユニットの半導体開閉器1、半導体開閉器1Aおよびサイドプレート12を固定して、本実施形態1の2ユニットの半導体開閉器1を組み立てることができる。複数ユニットの半導体開閉器1もレールに通して同様にして組み立てることができる。
【0066】
このように、半導体素子13による無接点開閉器のメリットを生かした小型で組み立てが素早く容易なレール組み立て型の半導体開閉器1を得ることができる。
【0067】
以上により、本実施形態1によれば、外部からの制御信号によりコネクタ7を介して半導体素子13を制御して入力側と出力側とを開閉する半導体開閉器1の端子構造において、入力側の正極端子4および負極端子3が本体ユニットの一方側に配置され、出力側の正極端子4および負極端子3が本体ユニットの他方側に配置され、入力側の正極端子4と負極端子3とに所定の段差(高さが異なる)が設けられ、出力側の正極端子4と負極端子3とに所定の段差(高さが異なる)が設けられている。これらの段差は、圧着端子の充電部間が少なくとも印加電圧に対する絶縁距離(例えばDC1200Vにおいて、空間距離14mm、沿面距離20mm)を確保できる距離に設定されている。入力側の負極端子3および出力側の負極端子3が、入力側の正極端子4および出力側の正極端子4よりも少なくとも絶縁距離だけ低い位置(レール側)に設けられている。
【0068】
これによって、隣接する1対の負極端子3と正極端子4を上下に段差を設けて配置している。このとき、下部に負極端子3、上部に正極端子4を配置すれば、負極端子3はアース側で正極端子4は高電圧側なので、一般の極性感覚と一致することから、極性配線間違いを抑えることができて、負極端子3と正極端子4とは上下に距離があって、クランプ電流センサで正極端子4に接続された電線を容易にクランプする空間が確保できて、クランプ電流センサを電線に容易に取り付けられる。また、1対の負極端子3と正極端子4を上下に十分な段差を設けて配置するため、負極端子3と正極端子4の間で十分な高電圧に対する絶縁距離を取ることができて、端子間絶縁のための隔壁の高さや長さを大きくする必要がなく、半導体開閉器1のサイズをより小さくすることができる。
【0069】
したがって、本実施形態1の半導体開閉器1は、薄型で小型のレール取り付け型半導体開閉器を実現することができるため、従来技術による大型の電気機械式接点や半導体開閉器に比べてより小型で高機能のスイッチボードを実現することができる。
【0070】
以上のように、本発明の好ましい実施形態1を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態1に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態1の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、例えば原子力発電所、火力発電所および変電所などの配電盤、制御盤および監視盤などに用いられ、特に近年の太陽光発電に代表される新エネルギー分野で要求のある直流の高電圧回路などを開閉する半導体開閉器およびその端子構造の分野において、入力側の正極端子と負極端子とに所定の段差が設けられ、出力側の正極端子と負極端子とに所定の段差が設けられるため、極性配線間違いを抑え、電流計測が容易でサイズを小型化することができる。
【符号の説明】
【0072】
1、1A 半導体開閉器
2 ユニット
3 負極端子
3a、4a 端子金具
3b、4b Sワッシャおよび平ワッシャ付きのねじ
3c、4c 端子部
4 正極端子
5 制御電源入力表示用のLED
5b、6b、7b 端子
6 過電流検知表示用のLED
7 制御電圧入力用のコネクタ
8 カバー
9 ラジエター
9a なべねじ
10、12 サイドプレート
11 回路基板
11a 穴
11b タッピングねじ
13 半導体素子(MOSFET)
13a なべねじ
13b 3端子
14、15 レール受部
21 主回路
211 電流制限回路
212、213 入力保護素子
214 還流ダイオード
22 制御回路
221 入力回路
222 出力回路