特許第5778712号(P5778712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ヒカリの特許一覧

<>
  • 特許5778712-鋏 図000002
  • 特許5778712-鋏 図000003
  • 特許5778712-鋏 図000004
  • 特許5778712-鋏 図000005
  • 特許5778712-鋏 図000006
  • 特許5778712-鋏 図000007
  • 特許5778712-鋏 図000008
  • 特許5778712-鋏 図000009
  • 特許5778712-鋏 図000010
  • 特許5778712-鋏 図000011
  • 特許5778712-鋏 図000012
  • 特許5778712-鋏 図000013
  • 特許5778712-鋏 図000014
  • 特許5778712-鋏 図000015
  • 特許5778712-鋏 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778712
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】鋏
(51)【国際特許分類】
   B26B 13/20 20060101AFI20150827BHJP
【FI】
   B26B13/20
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-80979(P2013-80979)
(22)【出願日】2013年4月9日
(65)【公開番号】特開2014-200570(P2014-200570A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2014年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】500174812
【氏名又は名称】株式会社ヒカリ
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 大吾
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一芳
【審査官】 石田 智樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−189179(JP,A)
【文献】 特開2003−038869(JP,A)
【文献】 特表2007−513732(JP,A)
【文献】 実公昭35−025446(JP,Y1)
【文献】 特表2001−525236(JP,A)
【文献】 実公昭10−016957(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 13/00 − 13/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃部と親指リングとを有する第1鋏半体と、刃部と薬指リングとを有する第2鋏半体とが軸支部にて回動自在に連結される鋏であって、
小指掛部と、
更に、人差し指掛止部を具備し、
前記人差し指掛止部は、
親指リングから親指を抜いたときでも、人差し指背部と当接可能なように、かつ
人差し指および中指を鋏先端方向に上げる動作が可能なように、
該軸支部と該薬指リングとの間から鋏先端側に向かって延設され、該薬指リング側には延設されず、
鋏先端側が開放された非リング状である
ことを特徴とする鋏。
【請求項2】
前記人差し指掛止部の根元と前記薬指リングの鋏先端側端部との間に形成される空間の長さは、15〜25mmである
ことを特徴とする請求項1記載の鋏。
【請求項3】
前記人差し指掛止部は、1/4楕円弧状である
ことを特徴とする請求項1または2記載の鋏。
【請求項4】
前記人差し指掛止部の背部に溝が設けられる
ことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の鋏。
【請求項5】
更に、中指掛止部を具備し、
前記中指掛止部は、該薬指リングから延設され、中指背部と当接する
ことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の鋏。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋏に関し、特に理容または美容用の鋏に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に利用されている理容師や美容師の鋏(従来技術1)の構成・作用について、簡単に説明する。動刃と親指リングとを有する第1鋏半体と、静刃部と薬指リングと小指掛部とを有する第2鋏半体とが軸支部にて回動自在に連結されている。親指腹側を親指リングに押し当てることにより、静刃に対し動刃が回動し、静刃と動刃との間にある髪を切断する。
【0003】
従来技術1(一般的な鋏)を用いた散髪の動作について簡単に説明する(後述にて詳細を説明する)。髪切断時は、親指を親指リングに挿入し、薬指を薬指リングに挿入し、人差し指と中指とを第2鋏半体の柄部に添え、小指を小指掛部に掛ける。これを基本状態とする。
【0004】
以下の手順を、右利きを前提として説明する。髪切断後、鋏を握った状態で、右手で櫛を持つ。右手を使い、櫛で髪を梳かす。何度か梳かしながら髪を引出し、左手で髪を挟み、次の切断長を調節する。左手で髪を挟んだ状態で、櫛を右手から左手に持ち替える。左手で髪を挟んだ状態で、指の外に出ている髪を切断する。
【0005】
この一連の動作のうち、基本状態から櫛を持つとき、親指を親指リングから抜く。これにより、薬指を中心とした大きなモーメントが発生し、回動を止めるために小指に大きな力が発生する。また、櫛を持ち替え再度基本状態に戻るときも同様である。
【0006】
一連の動作は、1人の散髪にて、200回以上繰り返される。従って、小指に大きな力が繰り返し作用することになる。理容師や美容師は、この動作を終日、毎日、数〜数十年繰り返すうちに、腱鞘炎になるおそれもある。
【0007】
また、基本状態から櫛を持つとき、小指のみで力のバランスを取るため、不安定な状態となる。鋏が落下するといったおそれもある。
【0008】
従来技術1における、親指を親指リングから抜いたときの不安定さを解消するために、例えば、特許文献1にはダブルリングを備えた鋏(従来技術2)が記載されている。
【0009】
すなわち、従来技術1は薬指リングのみを備えるのに対し、従来技術2は中指リングと薬指リングとから構成されるダブルリングを有する。
【0010】
従来技術2では、親指を親指リングから抜き、薬指を中心とした大きなモーメントが発生した場合、中指リングが中指背部に掛止され、力が作用する。その結果、小指に作用する力は軽減される。これにより、安定性が増すととともに、腱鞘炎のおそれも軽減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−145788
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、従来技術2に係る鋏は、以下の様に実用性に欠ける。
【0013】
通常、鋏を掌に包み込むように握りながら、櫛を右手の親指と人差し指と中指との3点で支持する。そのため、中指を中指リングから抜く必要がある。
【0014】
上述のように、櫛を持つ動作は繰り返すため、中指を中指リングから抜いたり、中指を中指リングに挿入したりする動作を繰り返すと、中指への負担が増大し、別の筋肉が腱鞘炎になるおそれもある。
【0015】
また、中指を中指リングから抜いたり、中指を中指リングに挿入したりする一動作は一瞬であるものの、何百回も繰り返すことにより、カットスピードが低下するおそれもある。
【0016】
本発明は、上記課題を解決するものであり、腱鞘炎のおそれを軽減できる鋏を提供することを目的とする。また、安定性に優れた鋏を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明は、刃部と親指リングとを有する第1鋏半体と、刃部と薬指リングとを有する第2鋏半体とが軸支部にて回動自在に連結される鋏であって、更に、指掛止部を具備し、前記指掛止部は、前記第2鋏半体の該軸支部より薬指リング側の位置から鋏先端側に向かって延設され、鋏先端側が開放された非リング状である。
【0018】
人差し指および/または中指に指掛止部が掛止されることにより、親指リングから親指を抜いたときの小指への負担を大幅に軽減できる。その結果、腱鞘炎のおそれを軽減でき、また、安定性を向上できる。
【0019】
指掛止部は、鋏先端側が開放された非リング状であることにより、人差し指および/または中指を開放部よりあげることができる。すなわち、リングから指を抜くまたはリングに挿入する動作が不要である。
【0020】
上記発明において、好ましくは、前記指掛止部は、該軸支部と該薬指リングとの間から延設され、人差し指背部と当接する。
【0021】
更に好ましくは、前記指掛止部の根元と前記薬指リングの鋏先端側端部との間に形成される空間の長さは、15〜25mmである。
【0022】
支点(薬指)−作用点(人差し指)間距離が充分長いため、人差し指背部において、小さな力で大きなモーメントを分担することができる。これにより、小指への負担を大幅に軽減できる。
【0023】
更に好ましくは、前記指掛止部は、1/4楕円弧状である。
【0024】
なお、1/8を超え、3/8未満であれば、おおよそ1/4とみなす。サイズが小さすぎると、充分に掛止できない。サイズが大きすぎると、指をスムーズにあげられない。1/4楕円弧状であることにより、充分に掛止でき、かつ、指をスムーズにあげることができる。
【0025】
さらに、好ましくは、前記指掛止部の背部に溝が設けられる。
【0026】
これにより、指掛止部を指背部にフィットするように調整できる。
【0027】
上記発明において、好ましくは、前記指掛止部は、該薬指リングから延設され、中指背部と当接する。
【0028】
上記発明において、好ましくは、前記指掛止部は、該軸支部と該薬指リングとの間から延設され、人差し指背部と当接する、人差し指掛止部と、該薬指リングから延設され、中指背部と当接する、中指掛止部とを有する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の鋏によれば、腱鞘炎のおそれを軽減できる。また、鋏保持の安定性が増す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】指の基本状態 <従来技術1>
図2】櫛を持った状態 <従来技術1>
図3】櫛で髪を梳かす動作 <従来技術1>
図4】切断長を調整する動作 <従来技術1>
図5】髪を切断する動作 <従来技術1>
図6】指の基本状態 <従来技術2>
図7】中指を中指リングから抜く動作 <従来技術2>
図8】本実施形態の概略構成 <本実施形態>
図9】クォーターリングの背部に設けられた溝
図10】指の基本状態 <本実施形態>
図11】人差し指および中指をあげる動作 <本実施形態>
図12】第1効果の説明図
図13】第2効果の説明図
図14】変形例
図15】変形例
【発明を実施するための形態】
【0031】
本願発明の実施形態について説明する前に、従来技術1(一般例)と従来技術2(特許文献1)の課題について詳しく説明する。後述する本発明の実施形態と共通構成(図8参照)には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0032】
<従来技術1>
従来技術1は、一般的に利用されている理容師や美容師の鋏である。動刃11は柄部12を介して親指リング13と連続し、鋏半体1を構成する。親指リング13にはヒットポイント14が延設される。静刃21は柄部22を介し薬指リング23と連続し、鋏半体2を構成する。薬指リング23には小指掛24が延設される。鋏半体1と鋏半体2とが軸支部3にて回動自在に連結されている。親指腹側を親指リング13に押し当てることにより、静刃21に対し動刃11が回動し、静刃21と動刃11との間にある髪を切断する。
【0033】
従来技術1を用いた散髪の動作について図を用いて説明する。なお、右利きを前提とする。
【0034】
図1に従来技術1の基本状態を示す。親指を親指リング13に挿入し、薬指を薬指リング23に挿入し、人差し指と中指とを柄部22に添え、小指を小指掛24に掛ける。
【0035】
図2に櫛を持った状態を示す。前回の髪切断後、鋏を握った状態で、右手で櫛を持つ。親指を親指リング13から抜き、鋏を掌に包み込むように握りながら、人差し指および中指をあげ、櫛を親指と人差し指と中指との3点で支持する。
【0036】
図3に櫛で髪を梳かす動作を示す。図2の状態を維持しながら、右手を使い、櫛で髪を数回梳かす。
【0037】
図4に切断長を調整する動作を示す。櫛で髪を引出しながら、左手の人差し指と中指の間に髪を挟み、次の切断長を調節する。切断長が確定したら、左手の状態を維持する。
【0038】
図5に髪を切断する動作を示す。櫛を右手から左手に持ち替える。左手の人差し指と中指は髪を挟んだ状態を維持する。左手の親指と人差し指の間に櫛を保持する。右手の親指を親指リング13に再度挿入し、人差し指と中指とを柄部22に添え、基本状態に戻す。左手の人差し指と中指との間から外に出ている髪を切断する。
【0039】
この一連の動作を繰り返す。たとえば、1人の散髪にて、一連の動作が200回以上繰り返される。
【0040】
上記動作において、右手で櫛を持つとき(図1図2)および櫛を持ち替え再度基本状態に戻るとき(図4図5)、親指は親指リング13から抜かれた状態であり、薬指は薬指リング23に挿入された状態にある。
【0041】
これにより、薬指(薬指リング23)を中心とした大きなモーメントが発生する(後述する図12参照)。なお、小指と薬指との間は短い。従って、モーメントによる回動を止めるために、小指に大きな力が作用する。これが、不安定状態および腱鞘炎の原因となる。
【0042】
<従来技術2>
従来技術2は、薬指リング23に連設される中指リング29を備える。すなわちダブルリングを特徴とする。
【0043】
従来技術2を用いた散髪の動作について図を用いて説明する。従来技術1と共通動作については、適宜説明を省略する。
【0044】
図6に従来技術2の基本状態を示す。親指を親指リング13に挿入し、中指を中指リング29に挿入し、薬指を薬指リング23に挿入し、人差し指を柄部22に添え、小指を小指掛24に掛ける。
【0045】
右手で櫛を持つ動作において、まず、親指を親指リング13から抜く。鋏は、中指、薬指、小指により支持される。その後、鋏を掌に包み込むように握りながら、中指を中指リング29から抜き、櫛を親指と人差し指と中指との3点で支持する。
【0046】
図7に中指を中指リング29から抜く動作を示す。
【0047】
従来技術2では、親指が親指リング13から抜かれても、薬指が薬指リング23に挿入され、中指が中指リング29に挿入された状態を維持できる。薬指を中心とした大きなモーメントが発生した場合、中指リング29が中指背部に掛止され、力が作用し、モーメントの一部を分担する(後述する図12参照)。その結果、小指に作用する力は軽減される。
【0048】
しかし、中指を中指リング29から抜いたり、中指を中指リング29に挿入したりする動作が必要となる。中指への負担が増大し、小指への負担軽減効果が相殺される。
【0049】
<本発明の実施形態>
〜構成〜
図8は、本実施形態に係る鋏である。図8を用いて概略構成を説明する。
【0050】
動刃11は柄部12を介して親指リング13と連続し、鋏半体1を構成する。親指リング13にはヒットポイント14が延設される。静刃21は柄部22を介し薬指リング23と連続し、鋏半体2を構成する。薬指リング23には小指掛24が延設される。鋏半体1と鋏半体2とが軸支部3にて回動自在に連結されている。
【0051】
更に、クォーターリング41およびワンエイスリング(= one eighth =1/8)42を備える。
【0052】
クォーターリング41は、軸支部3と薬指リング23との間から鋏先端側に向かって延設され、人差し指背部と当接する。クォーターリング41は、楕円状の薬指リング23の1/4弧状をしている。これにより、クォーターリング41鋏先端側が開放されている。
【0053】
クォーターリングの呼称は、おおよその形状およびサイズを想定させるものである。したがって、厳密に幾何学的な楕円弧である必要はない。リング内円(弧)が人差し指背部とフィットする形状であれば変形が可能である。また、厳密に1/4のサイズである必要はない。ここでは、1/8を超え、3/8未満であれば、おおよそ1/4とみなす。
【0054】
クォーターリング41の根元背面側と薬指リング23の鋏先端側端部との間に形成される空間の長さdは、15〜25mmである。すなわち、中指が余裕をもって動ける空間を確保する。中指の大きさは個人差があるので幅を持たせている。
【0055】
ワンエイスリング42は、薬指リング23に鋏先端側に向かって延設され、中指背部と当接する。ワンエイスリング42は、楕円状の薬指リング23の1/8弧状に近似する形状をしている。ワンエイスリングの呼称は、おおよその形状およびサイズを想定させるものであり、クォーターリング41について説明したように厳密に、形状やサイズを限定するものではない。これにより、ワンエイスリング42鋏先端側が開放されている。
【0056】
図9は、クォーターリング41の背部に設けられた溝45である。図示の例では、幅0.5mm、深さ0.5mmの溝が3本設けられている。万力等により力を加えると、溝45の箇所で曲がりやすくなる。これにより、各個人の中指のサイズにフィットするように、形状の調整が可能となる。
【0057】
溝45の幅は0.5〜1.0mmの範囲で変更できる。溝45の深さは0.5〜0.7mmの範囲で変更できる。本数の限定は特にない。
【0058】
〜動作〜
本実施形態を用いた散髪の動作について図を用いて説明する。従来技術1と共通動作については、適宜説明を省略する(図1〜5参照)。
【0059】
図10は、本実施形態の基本状態である。親指を親指リング13に挿入し、人差し指背部をクォーターリング41に当接し、中指をワンエイスリング42に当接し、薬指を薬指リング23に挿入し、小指を小指掛24に掛ける。
【0060】
右手で櫛を持つ動作において、まず、親指を親指リング13から抜く。クォーターリング41は人差し指背部に掛止される。ワンエイスリング42は中指背部に掛止される。小指は小指掛24に掛けられる。これにより、鋏は、人差し指、中指、薬指、小指の4点により支持される。
【0061】
その後、鋏を掌に包み込むように握りながら、人差し指および中指をあげ、櫛を親指と人差し指と中指との3点で支持する。
【0062】
図11は、人差し指および中指をあげる動作を示す。すなわち、クォーターリング41、ワンエイスリング42は鋏先端側が開放された非リング状であるため、リングから人差し指および中指を抜くという動作が不要である。同様に、リングに人差し指および中指を挿入するという動作が不要である。この人差し指および中指をあげる動作は、従来技術1の動作とほぼ同じであり、理容師や美容師は違和感なく本実施形態を使用することができる。
【0063】
〜効果〜
図12を用いて、従来技術1および従来技術2と比較することにより、本実施形態の第1効果について説明する。鋏に発生するモーメントおよび作用する力を概念的に記載する。
【0064】
親指を親指リング13抜くと、鋏の重心が力点となり、薬指(薬指リング23)を中心とした大きなモーメントが発生する。その結果、従来技術1では、小指に大きな力が集中する。従来技術2では、中指リング29がモーメントの一部を分担するため、小指に作用する力は軽減される。しかし、支点(薬指)−作用点(中指)間距離が短いため、その軽減効果は限定的である。
【0065】
本実施形態において、支点(薬指)−作用点(人差し指)間距離が、従来技術2に比べて長いため、クォーターリング41において、小さな力で大きなモーメントを分担することができる。また、ワンエイスリング42でもモーメントの一部を分担する。その結果、小指に作用する力は大幅に軽減される。
【0066】
これにより、腱鞘炎のおそれを軽減できる。更に、親指を親指リング13から抜いた状態、すなわち、基本状態から櫛を持つとき、また、櫛を持ち替え再度基本状態に戻るとき(従来技術1の図4図5参照)、バランスの良い4点支持により、安定性が格段に向上する。
【0067】
なお、第1効果は、親指を親指リング13抜く場合に限らず、髪を切断する場合にも得られる。すなわち、バランスの良い4点(人差し指、中指、薬指、小指)支持により、鋏(とくに、静刃)を安定した状態で保持できる。その結果、より正確なカットが期待できる。
【0068】
図13を用いて、従来技術1および従来技術2と比較することにより、本実施形態の第2効果について説明する。基本状態から櫛を持つとき、親指を親指リング13から抜いた後の人差し指及び中指の概略軌跡を記載する。
【0069】
従来技術2においては、中指を中指リング29から抜いたり、中指を中指リング29に挿入したりする動作が必要となる。これにより、中指への負担が増大する。
【0070】
一方、本実施形態において、従来技術1の動作とほぼ同様に、人差し指および中指をあげる。すなわち、リングから人差し指および中指を抜く、または、リングに人差し指および中指を挿入するという動作が不要であり、従来技術2のような負担増はない。またカットスピードが低下するおそれもない。
【0071】
従来技術1とほぼ同様の動作のため、理容師や美容師は違和感なく本実施形態を使用することができる。
【0072】
なお、本実施形態の基本状態は極めて安定しており、熟練者は瞬時に櫛を持つことができる。これによりカットスピードが向上する。
【0073】
〜変形例〜
本実施形態では、人差し指掛止部41にクォーターリング(1/4)を用い、中指掛止部42にワンエイスリング(1/8)を用いたが、これに限定されない。たとえば、人差し指掛止部41にワンエイスリングを用い、中指掛止部42にクォーターリングを用いてもよい。人差し指掛止部41、中指掛止部42ともに、クォーターリングを用いても良い。
【0074】
すなわち、指掛止部41,42は、非リング状であって、フックのように指に掛止できればよい。本実施形態では、薬指リング23と比較することで、大まかなサイズを連想しやすいように、クォーターリング、ワンエイスリングと表現しただけであって、楕円形状に限定されないし、サイズも限定されない。
【0075】
ただし、薬指リング23の1/8相当未満のサイズであると、やや支点側に作用する力の向きを考慮しても、指に充分に掛止できない。すなわち、第1効果が得られない。従って、掛止部41,42は、薬指リング23の1/8相当以上のサイズであることが好ましい。
【0076】
一方、薬指リング23の1/2相当(ハーフリング)超のサイズであると、人差し指および中指をあげる動作が、従来技術1とほぼ同様にはできなくなる。すなわち、第2効果が得られない。従って、掛止部41,42は、薬指リング23の1/2相当以下のサイズであることが好ましい。
【0077】
また、本実施形態は、人差し指掛止部41と中指掛止部42の両方を備えるが、人差し指掛止部41のみでも充分な効果が得られる(図14参照)。なお、中指掛止部42のみでも、本実施形態や人差し指掛止部41のみの変形例程の効果は期待できないものの、一定の効果が得られる(図15参照)。
【0078】
さらに、人差し指掛止部41による効果が大きいため、小指掛24を無くしても良い。
【符号の説明】
【0079】
1 鋏半体(第1)
2 鋏半体(第2)
3 軸支部
11 動刃
12 柄部
13 親指リング
14 ヒットポイント
21 静刃
22 柄部
23 薬指リング
24 小指掛部
29 中指リング(従来技術2)
41 クォーターリング(人差し指掛止部)
42 ワンエイスリング(中指掛止部)
45 溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15