(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
患部の所定骨体Hに穿孔可能な剛性を有し生体親和性のある材料により、その先端が背骨の椎弓根や仙骨の所定位置に届いた状態で、その基部が背骨の後面より後側に突出する程度の所定長さを有すると共に、長さ方向に所定間隔おいて複数設けた肉眼および放射線測定装置により視認可能な目盛り3を有し、かつ、患部の所定骨体Hに穿孔可能な先端形状を有するプローブ2を形成し、該プローブ2の基部を挿入可能な挿入孔5を有する軸部材4と、該軸部材4の外周に摺動自在に取付けた外筒15とを有するペディクルプローブ本体1に、前記プローブ2を着脱機構により着脱自在に装着可能に構成し、プローブ2は軸部材4の長さより短い長さに構成し、もって、前記所定骨体Hにプローブ2を残したまま別途プローブ2を穿孔挿入可能に構成し、着脱機構は、前記プローブ2の基部に形成した係合溝6と、前記軸部材4の軸心に対して交差方向に移動して前記係合溝6に係脱する係合突起9を有する係合体10とにより構成し、前記係合突起9は、軸部材4に対して前記外筒15を前記軸部材4の軸心方向に移動させると、前記係合溝6に係脱する構成とした穿刺具。
【背景技術】
【0002】
従来、脊椎すべり症等では、外科的手術が必要となることがあり、外科的処置の後、癒合が達成されるまで脊柱を保持するために脊椎固定手術が通常行われる。
脊椎固定手術は、背中の中線を所定長さ切開し、切開部分を両側に開創し、筋肉組織等を切開して椎間関節の表面を露出させ、放射線測定装置(たとえばCアーム式蛍光検査装置)等を用いて背骨の椎弓根又は仙骨の複数箇所に決められた深さと角度で穿刺具により挿入孔を形成し、挿入孔に結合ユニットの固定ねじを挿入し、複数の固定ねじをロッドで結合および連結して負傷した脊椎部を保持する方法で行われる。
この手術の際に用いる穿刺具について、下記特許文献に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公知例の穿刺具は、脊椎固定手術に用いられるものではないが、一本のロッドの先端に椎弓根に孔を形成する突起(プローブ部)を形成し、ロッドの基部に球形のハンドル部を設けた構成であり、椎骨に挿入孔を形成する。
この穿刺具を脊椎固定手術に用いるとすると、椎骨に形成された挿入孔は、穿刺具を引き抜くと、脊柱付近の組織により隠され、固定ねじの挿入が容易でないという課題がある。
本願は、穿刺具であるペディクルプローブの構成を工夫し、脊柱付近の組織で隠されるペディクルプローブで形成した挿入孔の発見の容易化を図り、手術時間の短縮化を図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、患部の所定骨体Hに穿孔可能な剛性を有し生体親和性のある材料により、その先端が背骨の椎弓根や仙骨の所定位置に届いた状態で、その基部が背骨の後面より後側に突出する程度の所定長さを有すると共に、長さ方向に所定間隔おいて複数設けた肉眼および放射線測定装置により視認可能な目盛り3を有し、かつ、患部の所定骨体Hに穿孔可能な先端形状を有するプローブ2を形成し、該プローブ2の基部を挿入可能な挿入孔5を有する軸部材4と、該軸部材4の外周に摺動自在に取付けた外筒15とを有するペディクルプローブ本体1に、前記プローブ2を着脱機構により着脱自在に装着可能に構成し、プローブ2は軸部材4の長さより短い長さに構成し、もって、前記所定骨体Hにプローブ2を残したまま別途プローブ2を穿孔挿入可能に構成し
、着脱機構は、前記プローブ2の基部に形成した係合溝6と、前記軸部材4の軸心に対して交差方向に移動して前記係合溝6に係脱する係合突起9を有する係合体10とにより構成し、前記係合突起9は、軸部材4に対して前記外筒15を前記軸部材4の軸心方向に移動させると、前記係合溝6に係脱する構成とした穿刺具としたものである。
請求項
2の発明は、前記外筒15の基部にはフランジ部16を設け、前記外筒15は軸部材4より短く形成して、外筒15の先端は係合体10と重なるように配置し、外筒15を軸部材4の基部側に移動させると、外筒15の先端が、係合体10の先端から基部側に退避して、プローブ2の係合溝6から係合体10の係合突起9を離脱させ、外筒15を軸部材4の先端側に移動させると、外筒15の先端が、係合体10の先端に外側から重なって係合体10の係合突起9を内側に押し、係合突起9はプローブ2の係合溝6に係合する構成とし、前記軸部材4と前記外筒15との間には外筒15を軸部材4の先端側に移動するように付勢するバネ18を設けた穿刺具としたものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明では、プローブ2により脊椎の所定骨体Hに穿孔して挿入孔を形成でき、このプローブ2をペディクルプローブ本体1から外して、各挿入孔にプローブ2を残したまま挿入孔を形成することができ、プローブ2を挿入孔の形成具と挿入孔位置確認具とを兼用して使用することができ、さらに、所定骨体Hへの挿入孔形成を迅速に行って、手術時間を短縮することができ
、また、プローブ2の着脱機構を簡素に構成でき、プローブ2の着脱作業を容易に行うことができる。
請求項
2の発明では、ハンドル部26とフランジ部16により軸部材4に対して外筒15をスライドさせるだけで、プローブ2の装着および取り外しができ、プローブ2の着脱を容易にできる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施例を図面により説明すると、1はペディクルプローブの本体であり、ペディクルプローブ本体1にプローブ2を着脱自在に取付ける。
好ましい実施形態において、ペディクルプローブ本体1及びプローブ2の部材及び部品は、剛性が高く耐久性のある生体親和性のある材料、例えば、ステンレススチール、鉄鋼、チタン又はチタン合金等により形成している。当業者にはよく知られているように、ここで用いる「生体親和性のある」材料とは、患者の体内に埋め込まれた後で有害な化学的、免疫学的反応を起こさない材料を意味する。
【0009】
前記プローブ2は、背骨の椎弓根や仙骨の所定骨体Hに届く程度の所定長さを有して形成し、プローブ2の先端は椎弓根等の所定骨体に穿孔可能な形状に形成した穿孔部2Aとしている。
【0010】
また、プローブ2には、所定間隔おいて目盛り3を設ける。目盛り3は肉眼で視認できると共に、放射線測定装置(たとえばCアーム式蛍光検査装置)等により視認できるように、例えば、目盛り3に放射線により反応する塗料を塗布すると、好適である。
【0011】
前記ペディクルプローブ本体1及びプローブ2により構成されるペディクルプローブの使用の一例を示すと、ペディクルプローブ本体1にプローブ2を装着し、患者の背中の中線を所定長さ切開して開創し、筋肉および組織を切開して椎間関節の表面を露出させ、放射線測定装置(たとえばCアーム式蛍光検査装置)等を用いて背骨の椎弓根又は仙骨の所定骨体Hの複数箇所に決められた深さと角度でペディクルプローブ本体1に装着されたプローブ2を挿入して、所定の骨体H部分に挿入孔を形成し、患者の体内の所定深さにプローブ2を挿入嵌合させて残した状態で、プローブ2からペディクルプローブ本体1を外し、次に、ペディクルプローブ本体1に別のプローブ2を装着して、別途、所定の骨体H部分に挿入孔を形成しつつ挿入嵌合させ、再び、患者の体内の所定深さにプローブ2を残した状態で、プローブ2からペディクルプローブ本体1を外し、この作業を反復する。
【0012】
次に、各挿入孔に残してあるプローブ2の基部の位置に合わせて、結合ユニットのロッドBを作成する。このロッドBは、複数の固定ねじAを連結するものであり、本願の要旨ではなく、途中部分に屈曲可能な彎曲部Cを形成した複数のロッドBを固定ねじAの部分で連結して負傷した脊椎部を保持する(
図5)。
【0013】
各挿入孔に残した各プローブ2の長さを目盛り3により把握して、結合ユニットの固定ねじAを選択し、選択した固定ねじAを前記予め挿入してあるプローブ2と置き換えて挿入(螺子込み)し、各固定ねじAのヘッドを予め用意した前記ロッドBで連結して負傷した脊椎部を固定保持する。
その後、開創器を除去し、最小負荷切開部を閉じて縫合する。
【0014】
しかして、ペディクルプローブ本体1にプローブ2を着脱しうる着脱機構の構成は、任意であるが、以下一例を示す。
前記ペディクルプローブ本体1の一部を構成する軸部材4の先端には、軸部材4の
軸心(軸部材4の長さ方向)に沿った前記プローブ2を挿入する挿入孔5を形成する。
【0015】
プローブ2の基部にはプローブ2の軸心に対して交差方向の係合溝6を形成する。
前記軸部材4には、前記係合溝6に係脱する係合突起9を有する係合体10を設ける。係合体10は軸部材4の外周に形成した凹部11に嵌合させる。軸部材4の先端側の凹部11には挿入孔5と連通する連通孔12を形成し、連通孔12を係合突起9が軸部材4の交差方向に移動して係合溝6に係脱する。
【0016】
前記軸部材4は所定長さを有し、前記軸部材4の外周には、前記ペディクルプローブ本体1の一部を構成する外筒15を摺動自在に取付ける。
外筒15は、基部にフランジ部16を設け、外筒15は軸部材4より短く形成し、外筒15の先端は係合体10と重なるように配置する。係合体10は弾性体により、先端に至るに従い外側(交差方向外側)に突き出るように形成し、係合体10自体の弾力により係合突起9はプローブ2の係合溝6から離脱するように付勢されており、この係合体10に外筒15の先端が重なって係合突起9を係合溝6に係合させる。
【0017】
即ち、外筒15のフランジ部16により、外筒15を軸部材4の基部側に移動させると、外筒15の先端が、係合体10の先端から基部側に退避して、プローブ2の係合溝6から係合体10の係合突起9を離脱させる。
反対に、外筒15を軸部材4の先端側に移動させると、外筒15の先端が、係合体10の先端に外側から重なって係合体10の係合突起9を内側に押し、係合突起9はプローブ2の係合溝6に係合し、プローブ2を軸部材4に保持する。
【0018】
軸部材4と外筒15との間にはバネ18を設ける。バネ18はコイルバネにより形成し、軸部材4の外周に挿入する。
軸部材4の外周面には内側フランジ部20を、外筒15の内周面には内側フランジ部を夫々設ける。内側フランジ部20と内側フランジ部21の間にバネ18を設ける。
【0019】
前記係合体10の先端外側には外筒15の先端に係合するストッパ25を設ける。
即ち、バネ18は常時外筒15を軸部材4の先端方向に移動するように付勢し、外筒15の先端にストッパ25を常時係合させることにより、外筒15がバネ18の弾力により軸部材4から抜けるのを防止する。
【0020】
軸部材4の基部にはハンドル部26のスリーブ部27を嵌合させ、スリーブ部27は軸部材4に係合ピン28により固定する。
この場合、軸部材4のスリーブ部27と外筒15のフランジ部16との間の、外筒15のスライドストロークLに対して、前記係合体10の全長Tを長く形成し、外筒15を最大に軸部材4のハンドル部26に引いても、外筒15の先端は係合体10と重なるようにし、係合体10が軸部材4の凹部11から外れるのを防止している(
図3)。
【0021】
ペディクルプローブ本体1は、軸部材4の凹部11に係合体10を装着し、軸部材4の外周にバネ18を挿入し、次に、軸部材4の外周に外筒15を挿入し、軸部材4の基部にハンドル部26のスリーブ部27を嵌合させ、スリーブ部27を軸部材4に係合ピン係合ピン28により固定して組み立てる。
【0022】
(実施形態の作用)
ペディクルプローブの軸部材4のハンドル部26に対してフランジ部16を引くと、外筒15の先端が係合体10の先端から退避し、係合体10はそれ自体の弾性により軸部材4の軸心に対する交差方向外側に移動し、これにより係合体10の係合突起9は挿入孔5から退避する。
【0023】
この状態で、プローブ2の基部を軸部材4の挿入孔5に挿入し、軸部材4のハンドル部26に対してフランジ部16を離すと、外筒15はバネ18の弾力で軸部材4の先端側に移動し、外筒15の先端が係合体10の先端に外側から重なって係合体10の係合突起9を内側に押し、係合突起9はプローブ2の係合溝6に係合し、プローブ2を軸部材4に保持する。
【0024】
この状態で、放射線測定装置(たとえばCアーム式蛍光検査装置)等を用いて背骨の椎弓根又は仙骨の複数箇所に決められた深さと角度でペディクルプローブ本体1に装着されたプローブ2を挿入し、所定骨体H部分に挿入孔を形成する。
【0025】
次に、ペディクルプローブの軸部材4のハンドル部26に対してフランジ部16を引き、外筒15の先端を係合体10の先端から退避させて、係合体10の係合突起9とプローブ2の係合溝6との係合を外し、患者の体内の所定深さにプローブ2を残した状態で、プローブ2からペディクルプローブ本体1を外す。
【0026】
次に、ペディクルプローブ本体1に別のプローブ2を装着して、別途、所定の骨部分に挿入孔を形成し、再び、患者の体内の所定深さにプローブ2を残した状態で、プローブ2からペディクルプローブ本体1を外し、この作業を反復し、所定骨体H部分の挿入孔に残してあるプローブ2の基部に合わせて、結合ユニットのロッドBを作成し、選択した固定ねじAをプローブ2と入れ換えて挿入し、各固定ねじAのヘッドを途中部分に屈曲可能な彎曲部Cを形成した複数のロッドBで連結して負傷した脊椎部を固定保持する。
【0027】
脊椎部の固定方法において、脊椎の椎骨の部分は位置により形状が相違し、しかも、患者により患部が相違するから、固定ねじAの挿入箇所および深さは全て相違することになり、そのため、固定ねじAの選択および各固定ねじAを連結するロッドBの長さの選択に要する時間を短縮することは、手術時間の短縮に貢献する。
【0028】
本願では、所定骨体Hにプローブ2により挿入孔を穿孔すると共に、そこに、残しておくので、各挿入孔に残してあるプローブ2により、固定ねじAの挿入箇所及び深さと、各固定ねじAを連結するロッドBの長さの選択に要する時間を短縮することができ、手術時間の短縮に貢献する。
【0029】
軸部材4の凹部11には、先端内面に内側に突き出る係合突起9を有する係合体10を嵌合させているから、外筒15を軸部材4の軸心方向に移動させるだけで、係合突起9を係合溝6に係脱させられる。
軸部材4と外筒15との間にはバネ18を設けているので、外筒15は常時軸部材4の先端側に移動するように付勢されている。
【0030】
係合体10の先端外側には外筒15の先端に係合するストッパ25を設けているので、外筒15を軸部材4の先端方向に移動するようにバネ18により付勢し、外筒15の先端にストッパ25が常時係合することにより、外筒15がバネ18の弾力により軸部材4から抜けるのを防止し、外筒15と軸部材4とは互いに一体状態を保持する。
【0031】
外筒15はバネ18により軸部材4の先端方向に移動するようにバネ18により付勢されているので、ハンドル部26とフランジ部16を握る(摘む)と、外筒15は軸部材4に対して移動して係合体10の係合突起9とプローブ2の係合溝6との係合外し、フランジ部16を離すと、外筒15は元の状態に復帰する。
そのため、ハンドル部26とフランジ部16を握るだけで、軸部材4に対してプローブ2を簡単に着脱できる。
【0032】
軸部材4と外筒15との関係は、軸部材4のスリーブ部27と外筒15のフランジ部16との間の、外筒15のスライドストロークLに対して、前記係合体10の全長Tを長く形成し、外筒15を最大に軸部材4のハンドル部26に引いても、外筒15の先端は係合体10と重なるようにしているので、係合体10が軸部材4の凹部11から外れるのを防止している。
【0033】
ペディクルプローブ本体1は、軸部材4の凹部11に係合体10を装着し、軸部材4の外周にバネ18を挿入し、次に、軸部材4の外周に外筒15を挿入し、軸部材4の基部にハンドル部26のスリーブ部27を嵌合させ、スリーブ部27を軸部材4に係合ピン28により固定すれば、前記軸部材4と外筒15との関係であっても、組立可能であり、一旦、組み立てた軸部材4と外筒15とはハンドル部26を外さなければ分解しない。