(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
化合物5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−4−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルアミン(化合物A)と、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、NVP−AEE778、ARRY334543、BIRW2992、BMS690514、ペリチニブ、バンデタニブ、AV412、抗EGFRモノクローナル抗体806、抗EGFRモノクローナル抗体Y90/Re−188、セツキシマブ、パニツムマブ、マツズマブ、ニモツズマブ、ザルツムマブ、ペルツズマブ、MDX−214、CDX110、IMC11F8、ペルツズマブ、トラスツズマブ、zemab(登録商標)、Her2ワクチンPX 1041、およびHSP90阻害剤のCNF1010、CNF2024、タネスピマイシン アルベスピマイシン、IPI504、SNX5422およびNVP−AUY922からなる群から選択されるEGFRモジュレーターと、必要により、少なくとも1種の医薬的に許容可能な担体との組み合わせを含む医薬組成物であって、これらの活性成分が、各場合において、遊離の形態または医薬的に許容可能な塩の形態で存在し、EGFR依存性疾患の非小細胞肺がんを治療するために、同時、個別または順次に使用する、前記医薬組成物。
【背景技術】
【0002】
EGFRのチロシンキナーゼ領域における体細胞変異は、ゲフィチニブ(Gefitinib)
(Iressa(登録商標))またはエルロチニブ(Erlotinib)(Tarceva(登録商標))など
の、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する臨床応答に関連している(Paez et al., E
GFR mutations in lung cancer: correlation with clinical response to gefitinib th
erapy, science, vol 304, 1497-1500)。EGFRモジュレーターに対する獲得耐性は、
初期には治療に臨床的に応答したが、その後、進行性の腫瘍を発症した患者に起こる。E
GFRキナーゼ阻害剤に対する応答不良(refractory response)は、二次的な耐性変異
であるT790Mで実証され(Kobayashi et al.; EGFR mutation and resistance of no
n-small cell lung cancer to gefitinib, N. Engl J Med, Vol 352, 786-792)、これは
、慢性骨髄性白血病(CML)患者(Gorre et al.; Bcr-Abl point mutants isolated f
rom patients with imatinib mesylate resistant chronic leukemia reamin sensitive
to inhibitors of the Bcr-Abl chaperone heat shook protein 90, Blood, vol 100, 30
41-3044)、またはGIST患者(Antonescu et al.; Acquired resistance to Imatinib
in gastrointestinal stromal tumors occurs through secondary gene mutation, Clin
Cancer Res, Vol 11, 4182-4190) において、グリーベック(Gleevec)/グリベック(Gl
ivec)またはダサチニブ(Dasatinib)で観察される耐性の変異(複数可)に類似してい
る。
【0003】
活性化されたEGFRの下流におけるPI3K経路活性化が存在するという文献におけ
る証拠。すなわち、マウス胚線維芽細胞におけるPI3K触媒サブユニット(p110)
の遺伝的除去により、EGFRの活性化型による形質転換に対する耐性が、細胞に付与さ
れる(Zhao et al.; The p110 alpha isoform of PI3K is essential for proper growth
factor signaling and oncogenic transformation, PNAS, vol 103, 16296-16300)。E
GFRファミリーの4種のメンバーの1種であり、HER1(EGFR1)のパートナー
であるHER3(ErbB−3)は、EGFR阻害剤に感受性を示す腫瘍中で、しばしば
過剰発現され、これは、構成的PI3Kの動員(recruitment)および活性化と相関があ
る(Engelman et al.; ErbB-3 mediates phosphoinositide 3-kinase activity in gefit
inib-sensitive non small cell lung cancer cell lines, PNAS vol 102, 3788-3793; S
ergina et al.; Escape from HER-family tyrosine kinase inhibitor therapy by the k
inase-inactive HER 3)。EGFR増幅およびEGFR阻害剤耐性を保持する腫瘍生検標
本ならびに腫瘍細胞系を、遺伝子的および生化学的に特徴付けると、PI3K経路の構成
的活性化状態が明らかとなった(Engelman et al.; Allelic disruption obscures detec
tion of a biologically significant resistance mutation in EGFR amplified lung ca
ncer, The Journal of Clinical Investigation, vol 116, 2695-2706)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
驚くべきことに、国際公開第07/084786号に記載の特定のピリミジン誘導体は、単剤と
して、およびEGFRキナーゼモジュレーターとの併用で、強力な抗増殖活性、ならびに
増幅したEGFRおよび/または変異EGFR1を有する乳がんおよび肺がん細胞系のin
vivo抗腫瘍応答を引き起こすことが見出された。したがって、前記化合物は、EGFR
依存性疾患の治療に有益である。
【0005】
本発明に適切な特定のピリミジン誘導体、その調製、および該誘導体を含有する適切な
医薬製剤は、国際公開第07/084786号に記載されており、かつ式Iの化合物:
【化2】
または、その立体異性体、互変異性体、もしくは医薬的に許容可能な塩を含み、
Wは、CR
wもしくはNであり、
R
wは、
(1)水素、
(2)シアノ、
(3)ハロゲン、
(4)メチル、
(5)トリフルオロメチル、
(6)スルホンアミド
からなる群から選択され、
R
1は、
(1)水素、
(2)シアノ、
(3)ニトロ、
(4)ハロゲン、
(5)置換および無置換のアルキル、
(6)置換および無置換のアルケニル、
(7)置換および無置換のアルキニル、
(8)置換および無置換のアリール、
(9)置換および無置換のヘテロアリール、
(10)置換および無置換のヘテロシクリル、
(11)置換および無置換のシクロアルキル、
(12)−COR
1a、
(13)−CO
2R
1a、
(14)−CONR
1aR
1b、
(15)−NR
1aR
1b、
(16)−NR
1aCOR
1b、
(17)−NR
1aSO
2R
1b、
(18)−OCOR
1a、
(19)−OR
1a、
(20)−SR
1a、
(21)−SOR
1a、
(22)−SO
2R
1a、および
(23)−SO
2NR
1aR
1b
からなる群から選択され、
R
1aおよびR
1bは、
(a)水素、
(b)置換または無置換のアルキル、
(c)置換および無置換のアリール、
(d)置換および無置換のヘテロアリール、
(e)置換および無置換のヘテロシクリル、ならびに
(f)置換および無置換のシクロアルキル
からなる群から独立に選択され、
R
2は、
(1)水素、
(2)シアノ、
(3)ニトロ、
(4)ハロゲン、
(5)ヒドロキシ、
(6)アミノ、
(7)置換および無置換のアルキル、
(8)−COR
2a、ならびに
(9)−NR
2aCOR
2b
からなる群から選択され、
R
2aおよびR
2bは、
(a)水素、および
(b)置換または無置換のアルキル
からなる群から独立に選択され、
R
3は、
(1)水素、
(2)シアノ、
(3)ニトロ、
(4)ハロゲン、
(5)置換および無置換のアルキル、
(6)置換および無置換のアルケニル、
(7)置換および無置換のアルキニル、
(8)置換および無置換のアリール、
(9)置換および無置換のヘテロアリール、
(10)置換および無置換のヘテロシクリル、
(11)置換および無置換のシクロアルキル、
(12)−COR
3a、
(13)−NR
3aR
3b、
(14)−NR
3aCOR
3b、
(15)−NR
3aSO
2R
3b、
(16)−OR
3a、
(17)−SR
3a、
(18)−SOR
3a、
(19)−SO
2R
3a、ならびに
(20)−SO
2NR
3aR
3b
からなる群から選択され、
R
3aおよびR
3bは、
(a)水素、
(b)置換または無置換のアルキル、
(c)置換および無置換のアリール、
(d)置換および無置換のヘテロアリール、
(e)置換および無置換のヘテロシクリル、ならびに
(f)置換および無置換のシクロアルキル
からなる群から独立して選択され、
R
4は、
(1)水素、および
(2)ハロゲン
からなる群から選択される。
【0006】
式Iの化合物の定義に使用される基および記号は、国際公開第07/084786号に開示され
ている意味であり、その公報は、参照により本出願に組み込まれている。
【0007】
本発明の好ましい化合物は、具体的に国際公開第07/084786号に記載されている化合物
である。
【0008】
本発明の非常に好ましい化合物は、5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミ
ジン−4−イル)−4−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルアミン(化合物A)で
ある。5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−4−トリフ
ルオロメチル−ピリジン−2−イルアミンの合成は、国際公開第07/084786号の実施例1
0に記載されている。
【0009】
本発明によるEGFRファミリーメンバーを標的とする化合物には、EGFRファミリ
ーのキナーゼモジュレーター、EGFR発現レベルを変化させる、または腫瘍細胞内のE
GFRファミリーメンバーの発現に関係する細胞免疫応答を引き出す化合物が含まれる。
好ましいEGFRモジュレーターは、EGFRの機能活性の阻害剤として活性を示す。本
発明によるEGFRファミリーメンバーを標的とする化合物としては、ゲフィチニブ、エ
ルロチニブ、ラパチニブ(lapatinib)、NVP−AEE778、ARRY334543
、BIRW2992、BMS690514、ペリチニブ(pelitinib)、バンデタニブ(v
andetanib)、AV412、抗EGFRモノクローナル抗体806、抗EGFRモノクロ
ーナル抗体Y90/Re−188、セツキシマブ(cetuximab)、パニツムマブ(panitum
umab)、マツズマブ(matuzumab)、ニモツズマブ(nimotuzumab)、ザルツムマブ(zalu
tumumab)、ペルツズマブ(pertuzumab)、MDX−214、CDX110、IMC11
F8、ペルツズマブ、トラスツズマブ(trastuzumab)、zemab(登録商標)、He
r2ワクチンPX1041、ならびにHSP90阻害剤のCNF1010、CNF202
4、タネスピマイシン アルベスピマイシン(tanespimycinm alvespimycin)、IPI5
04、SNX5422およびNVP−AUY922が挙げられるが、それらに限定されな
い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
EGFR変異型を有するが、EGFR阻害療法に不応性の非小細胞肺がん細胞系は、こ
のような遺伝的背景において、式Iの化合物のようなPI3K阻害剤の感受性を試験する
貴重なモデルである。NCI−H1975細胞系は、in vivoで腫瘍形成能が高いモデル
である。さらに、この細胞系は、ゲフィチニブなどの化合物による触媒的阻害に対してキ
ナーゼに耐性を付与する、T790Mゲートキーパー変異を有するHER1を含む。式I
の化合物のようなPI3K阻害剤のin vivo抗腫瘍活性は、EGFRに推進され、EGF
Rチロシンキナーゼ阻害剤に耐性のあるこの腫瘍モデルを対象に試験される(
図1)。驚
くべきことに、化合物Aを投与すると、in vivoで腫瘍の増殖が阻害される。化合物Aの
耐容性はよい(well-tolerated)。すなわち、コントロール群と治療群間に、統計学的に
有意な体重差は観察できない(
図2)。
【0012】
したがって、式Iの化合物、特に化合物Aは、このようなEGFR依存性疾患、とりわ
け悪性疾患、またはEGFRファミリーメンバーの獲得耐性に推進される疾患(EGFR fam
ily members acquired resistance driven disease)の治療に有益である。EGFR活性
の調節異常との分子リンクが確立された、またはその可能性がある疾患や悪性疾患は、例
えば、「Mendelsohn and Baselga; Status of Epidermal Growth Factor Receptor Antag
onists in the Biology and Treatment of Cancer, Journal of Clinical Oncology, 278
7-2799」;「Mendelsohn and Baselga; Epidermal Growth Factor Receptor Targeting in
Cancer, Seminars in Oncology, Vol 33, 369-385」; Irmer et al., EGFR kinase doma
in mutations - functional impact and relevance for lung cancer therapy, Oncogene
, 1-9; Roche-Lima et al., EGFR targeting of solid tumors; Cancer Control, 2007,
Vol 14 (3), 295-304)に記載されており、これらはすべて、その中に引用されている参考
文献を含め、参照により本出願に組み込まれている。
【0013】
本発明によれば、式Iの化合物、特に化合物Aを使用して、以下のEGFR依存性疾患
、とりわけ悪性疾患を治療するのが好ましい。
・非小細胞肺がん
・頭頸部がん
・結腸直腸がん(colorectal carcinoma)
・乳がん
・神経膠芽腫を含む脳腫瘍(brain malignancy)
・前立腺がん
・膀胱がん
・腎細胞がん
・すい臓がん
・子宮頸がん
・食道がん
・胃がん
・卵巣がん
または、それらの任意の組み合わせ。
【0014】
本発明は、EGFR依存性疾患を治療する医薬製剤を製造するための、上記の式Iの化
合物、またはその互変異性体、または医薬的に許容可能なその塩、またはその水和物もし
くは溶媒和物の使用に関する。
【0015】
さらに、本発明は、EGFR依存性の疾患もしくは悪性疾患、またはEGFRファミリ
ーメンバーを標的とする薬剤に対して獲得耐性を有する疾患を治療する医薬製剤を製造す
るための、式Iの化合物、特に5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−
4−イル)−4−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルアミン(yamine)の使用に関
する。
【0016】
EGFRモジュレーターを使用した治療に対する耐性は、前記EGFRモジュレーター
での治療中に獲得される可能性があり、またはそのタンパク質中の1つまたは複数の変異
によることもある。
【0017】
特に、本発明は、式Iの化合物、特に化合物A、もしくは医薬的に許容可能なその塩の
使用による、EGFRファミリーメンバーに依存する、またはEGFRモジュレーターで
の治療中に耐性を獲得した疾患あるいは悪性疾患の治療に関する。治療時に耐性を生じ得
る、考えられるEGFRモジュレーターには、例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラ
パチニブ、セツキシマブ、ニモツズマブ、パニツムマブ、およびトラスツズマブが挙げら
れる。
【0018】
式(I)の化合物は、また、他の活性な化合物、例えば、国際公開第07/084786号に開
示されている組み合わせパートナー、より好ましくは、以下に限定されないが、ゲフィチ
ニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、NVP−AEE778、ARRY334543、BI
RW2992、BMS690514、ペリチニブ、バンデタニブ、AV412、抗EGF
Rモノクローナル抗体806、抗EGFRモノクローナル抗体Y90/Re−188、セ
ツキシマブ、パニツムマブ、マツズマブ、ニモツズマブ、ザルツムマブ、ペルツズマブ、
MDX−214、CDX110、IMC11F8、ペルツズマブ、トラスツズマブ、ze
mab(登録商標)、Her2ワクチンPX 1041、ならびにHSP90阻害剤のC
NF1010、CNF2024、タネスピマイシン アルベスピマイシン、IPI504
、SNX5422、およびNVP−AUY922などのEGFRファミリーを標的とする
薬剤と組み合わせて、EGFR依存性またはEGFR獲得耐性の疾患を治療するために使
用してもよい。
【0019】
本発明は、また、式Iの化合物、特に(化合物A)からなる群から選択される化合物と
、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、NVP−AEE778、ARRY3345
43、BIRW2992、BMS690514、ペリチニブ、バンデタニブ、AV412
、抗EGFRモノクローナル抗体806、抗EGFRモノクローナル抗体Y90/Re−
188、セツキシマブ、パニツムマブ、マツズマブ、ニモツズマブ、ザルツムマブ、ペル
ツズマブ、MDX−214、CDX110、IMC11F8、ペルツズマブ、トラスツズ
マブ、zemab(登録商標)、Her2ワクチンPX 1041、ならびにHSP90
阻害剤のCNF1010、CNF2024、タネスピマイシン アルベスピマイシン、I
PI504、SNX5422およびNVP−AUY922からなる群から選択されるEG
FRモジュレーターと、必要により、少なくとも1種の医薬的に許容可能な担体とを用い
たEGFR依存性疾患の併用治療に関し、これらの活性成分は、各場合において、遊離の
形態または医薬的に許容可能な塩の形態で存在し、非小細胞肺がん、頭頸部がん、結腸直
腸がん、乳がん、神経膠芽腫を含む脳腫瘍、前立腺がん、膀胱がん、腎細胞がん、すい臓
がん、子宮頸がん、食道がん、胃がん、および/または卵巣がんを治療するために、同時
、個別または順次に使用される併用治療にも関する。
【0020】
特に、本発明は、5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−4−イル)
−4−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルアミンからなる群から選択される式Iの
化合物と、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、セツキシマブ、ニモツズマブ、パ
ニツムマブ、およびトラスツズマブからなる群から選択されるEGFRモジュレーターと
、さらに必要により、少なくとも1種の医薬的に許容可能な担体との組み合わせであって
、このような活性成分は、各場合において、遊離の形態または医薬的に許容可能な塩の形
態で存在し、非小細胞肺がん、頭頸部がん、結腸直腸がん、乳がん、神経膠芽腫を含む脳
腫瘍、前立腺がん、膀胱がん、腎細胞がん、すい臓がん、子宮頸がん、食道がん、胃がん
、および卵巣がんを治療するために、同時、個別または順次に使用される組み合わせに関
する。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、EGFR依存性疾患または悪性疾患、好ましくは、前記
EGFRモジュレーターでの治療中に、EGFRキナーゼモジュレーターに対する耐性を
獲得した悪性疾患を治療する方法であって、式Iの特定のイミダゾキノリン誘導体、特に
好ましくは、5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−4−
トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルアミン(化合物A)、または医薬的に許容可能
なその塩の治療上有効な量を、単独でまたはEGFRモジュレーターと組み合わせて、そ
れを必要とする温血動物に投与することを含む方法に関する。
【0022】
本方法により治療されるべき疾患は、優先的には、非小細胞肺がん、頭頸部がん、結腸
直腸がん、乳がん、神経膠芽腫を含む脳腫瘍、前立腺がん、膀胱がん、腎細胞がん、すい
臓がん、子宮頸がん、食道がん、胃がん、および卵巣がんである。
【0023】
別の実施形態では、本発明は、EGFR依存性疾患、またはEGFRモジュレーターで
の治療中に、耐性を獲得した疾患を治療する医薬製剤であって、式Iの化合物、特に好ま
しくは、5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−4−トリ
フルオロメチル−ピリジン−2−イルアミン(化合物A)、または医薬的に許容可能なそ
の塩、および少なくとも1種の医薬的に許容可能な担体を、単独でまたはEGFRモジュ
レーターと組み合わせて含む製剤に関する。
【0024】
本医薬製剤によって治療されるべき疾患は、優先的には、非小細胞肺がん、頭頸部がん
、結腸直腸がん、乳がん、神経膠芽腫を含む脳腫瘍、前立腺がん、膀胱がん、腎細胞がん
、すい臓がん、子宮頸がん、食道がん、胃がん、および卵巣がんである。
【0025】
別の実施形態では、本発明は、EGFR依存性疾患、またはEGFRモジュレーターで
の治療中に、耐性を獲得した疾患を治療するための、式Iの化合物、特に好ましくは、5
−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−4−トリフルオロメ
チル−ピリジン−2−イルアミン(化合物A)、または医薬的に許容可能なその塩の使用
に関する。
【0026】
本化合物の単独、またはEGFRモジュレーターとの組み合わせによって治療されるべ
き疾患は、優先的には、非小細胞肺がん、頭頸部がん、大腸がん、乳がん、神経膠芽腫を
含む脳腫瘍、前立腺がん、膀胱がん、腎細胞がん、すい臓がん、子宮頸がん、食道がん、
胃がん、および卵巣がんである。
【0027】
式(I)の化合物は、また、既知の治療方法、例えば、ホルモン療法、または特に放射
線と組み合わせて有利に使用してもよい。式(I)の化合物は、特に放射線療法に感受性
の乏しい腫瘍の治療に、放射線増感剤として特に使用してもよい。
【0028】
本発明による治療は、症候的であっても、予防的であってもよい。
【0029】
「組み合わせ(併用(combination))」とは、1回投薬単位形態の所定の組み合わせ
、または併用投与向けのキットオブパーツ(a kit of parts)のいずれかを意味し、後者
では式(I)の化合物と組み合わせパートナーを同時に個々に投与してもよく、または、
組み合わせパートナーが、共同効果、例えば相乗効果を示すことが特に可能になる時間間
隔内に、個別に投与してもよい。
【0030】
式Iの化合物は、単独で、または1以上の他の治療用化合物と組み合わせて投与するこ
とができ、可能な併用療法としては、所定の組み合わせの形態を取る、または、本発明の
化合物と、1以上の他の治療用化合物の時間差を設けた投与、もしくは互いに無関係な投
与、または、所定の組み合わせと1以上の他の治療用化合物の併用投与をとることができ
る。
【0031】
活性成分の投薬量は、患者のタイプ、人種、年齢、体重、性別、および医療状態;治療
すべき病態の重篤度;投与経路;患者の腎臓および肝臓の機能;ならびに使用される特定
の化合物を含めた種々の要因で決まる。通常の技能を有する医師、臨床医師または獣医師
は、病態の進行を予防する、阻止する(counter)または抑止する(arrest)ために必要
な薬物の有効量を、容易に決め、処方することができる。有効性を示す範囲内の薬物濃度
を達成する最適精度を得るには、標的部位への薬物利用率(drug’s availability)に関
する動力学に基づいたレジメンが必要である。これには、薬物の分布、平衡および排出に
関する検討が必要である。
【0032】
本発明の化合物は、任意の従来の経路、特に非経口的に、例えば、注射可能な溶液や懸
濁液の形態で、経腸的に、例えば、経口的に、例としては錠剤やカプセルの形態で、局所
的に、例としてはローション、ジェル、軟膏もしくはクリームの形態で、または、経鼻形
態もしくは座薬の形態で投与してもよい。局所投与としては、例えば、皮膚への投与があ
る。局所投与の別の形態としては、眼への投与がある。少なくとも1種類の医薬的に許容
可能な担体または希釈剤と共に本発明の化合物を含む医薬組成物は、医薬的に許容可能な
担体または希釈剤と共に混合することによる、従来の方法で製造してもよい。
【0033】
該医薬組成物は、局所投与、経腸投与、例えば、経口投与や直腸投与、または非経口投与に適しており、無機または有機の固体または液体でもよい医薬的に許容可能な担体と共に、上記の障害の1つの治療に有効な量の式Iの化合物、またはそのN−オキシドもしくは互変異性体を含んでいる。経口投与用途には、希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、マニトール(manitol)および/またはグリセロール、および/または潤沢剤、および/またはポリエチレングリコールと共に、活性成分を含有する医薬組成物、特に、錠剤またはゼラチンカプセルがある。錠剤は、結合剤、例えばマグネシウムアルミニウムシリケート、コーンスターチ、小麦スターチ、米スターチなどのでんぷん類、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン、必要に応じて、崩壊剤、例えばでんぷん類、寒天、アルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩、および/または発泡剤混合物、または吸着剤、着色料、着香料および甘味料を含んでもよい。本発明の薬理学的に活性な化合物を、非経口投与可能な組成物の形態、または輸液の形態で用いることも可能である。医薬組成物は、滅菌してもよく、ならびに/あるいは賦形剤、例えば、防腐剤、安定化剤、湿潤化合物、および/または乳化剤、溶解剤、浸透圧および/または緩衝液を調節するための塩を含んでもよい。本発明の医薬組成物は、必要に応じて、別の薬理学的に活性な物質を含んでよく、それ自体既知の方法、例えば、従来の混合法、顆粒化法、糖剤化法、溶解法、または凍結乾燥法で調製され、約1〜99%、特に約1〜約20%の活性成分(複数可)を含む。
本発明は、以下の態様を包含する。
[1]
EGFR依存性疾患を治療する医薬製剤を製造するための、式Iの化合物
【化3】
または、その立体異性体、互変異性体、もしくは医薬的に許容可能な塩の使用
(式中、Wは、CRwまたはNであり、
Rwは、
(1)水素、
(2)シアノ、
(3)ハロゲン、
(4)メチル、
(5)トリフルオロメチル、
(6)スルホンアミド
からなる群から選択され、
R1は、
(1)水素、
(2)シアノ、
(3)ニトロ、
(4)ハロゲン、
(5)置換および無置換のアルキル、
(6)置換および無置換のアルケニル、
(7)置換および無置換のアルキニル、
(8)置換および無置換のアリール、
(9)置換および無置換のヘテロアリール、
(10)置換および無置換のヘテロシクリル、
(11)置換および無置換のシクロアルキル、
(12)−COR1a、
(13)−CO2R1a、
(14)−CONR1aR1b、
(15)−NR1aR1b、
(16)−NR1aCOR1b、
(17)−NR1aSO2R1b、
(18)−OCOR1a、
(19)−OR1a、
(20)−SR1a、
(21)−SOR1a、
(22)−SO2R1a、および
(23)−SO2NR1aR1b
からなる群から選択され、
R1aおよびR1bは、
(a)水素、
(b)置換または無置換のアルキル、
(c)置換および無置換のアリール、
(d)置換および無置換のヘテロアリール、
(e)置換および無置換のヘテロシクリル、ならびに
(f)置換および無置換のシクロアルキル
からなる群から独立に選択され、
R2は、
(1)水素、
(2)シアノ、
(3)ニトロ、
(4)ハロゲン、
(5)ヒドロキシ、
(6)アミノ、
(7)置換および無置換のアルキル、
(8)−COR2a、ならびに
(9)−NR2aCOR2b
からなる群から選択され、
R2aおよびR2bは、
(a)水素、および
(b)置換または無置換のアルキル
からなる群から独立に選択され、
R3は、
(1)水素、
(2)シアノ、
(3)ニトロ、
(4)ハロゲン、
(5)置換および無置換のアルキル、
(6)置換および無置換のアルケニル、
(7)置換および無置換のアルキニル、
(8)置換および無置換のアリール、
(9)置換および無置換のヘテロアリール、
(10)置換および無置換のヘテロシクリル、
(11)置換および無置換のシクロアルキル、
(12)−COR3a、
(13)−NR3aR3b、
(14)−NR3aCOR3b、
(15)−NR3aSO2R3b、
(16)−OR3a、
(17)−SR3a、
(18)−SOR3a、
(19)−SO2R3a、ならびに
(20)−SO2NR3aR3b
からなる群から選択され、
R3aおよびR3bは、
(a)水素、
(b)置換または無置換のアルキル、
(c)置換および無置換のアリール、
(d)置換および無置換のヘテロアリール、
(e)置換および無置換のヘテロシクリル、ならびに
(f)置換および無置換のシクロアルキル
からなる群から独立して選択され、
R4は、
(1)水素、および
(2)ハロゲン
からなる群から選択される。)。
[2]
式Iの化合物が、5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−4−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルアミン(化合物A)である、上記[1]に記載の使用。
[3]
疾患が悪性疾患である、上記[1]または[2]のいずれか1項に記載の使用。
[4]
前記疾患が、EGFRモジュレーターによる治療に対して耐性である、上記[1]から[3]のいずれか1項に記載の使用。
[5]
EGFRモジュレーターによる治療に対する耐性が、前記EGFRモジュレーターによる治療中に獲得された、上記[4]に記載の使用。
[6]
耐性が、エクソン欠失、および/またはタンパク質中の変異によるものである、上記[4]に記載の使用。
[7]
EGFRモジュレーターが、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、セツキシマブ、ニモツズマブ、パニツムマブおよびトラスツズマブからなる群から選択される、上記[4]または[5]に記載の使用。
[8]
EGFRモジュレーターと共に使用する、上記[1]から[3]のいずれか1項に記載の使用。
[9]
EGFRモジュレーターが、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、NVP−AEE778、ARRY334543、BIRW2992、BMS690514、ペリチニブ、バンデタニブ、AV412、抗EGFRモノクローナル抗体806、抗EGFRモノクローナル抗体Y90/Re−188、セツキシマブ、パニツムマブ、マツズマブ、ニモツズマブ、ザルツムマブ、ペルツズマブ、MDX−214、CDX110、IMC11F8、ペルツズマブ、トラスツズマブ、zemab(登録商標)、Her2ワクチンPX 1041、およびHSP90阻害剤のCNF1010、CNF2024、タネスピマイシン アルベスピマイシン、IPI504、SNX5422およびNVP−AUY922からなる群から選択される、上記[8]に記載の使用。
[10]
治療すべき疾患が、
・非小細胞肺がん
・頭頸部がん
・結腸直腸がん
・乳がん
・神経膠芽腫を含む脳腫瘍
・前立腺がん
・膀胱がん
・腎細胞がん
・すい臓がん
・子宮頸がん
・食道がん
・胃がん
・卵巣がん
またはそれらの任意の組み合わせである、上記[1]から[9]のいずれか1項に記載の使用。
[11]
5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−4−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルアミン(化合物A)からなる群から選択される式Iの化合物と、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、NVP−AEE778、ARRY334543、BIRW2992、BMS690514、ペリチニブ、バンデタニブ、AV412、抗EGFRモノクローナル抗体806、抗EGFRモノクローナル抗体Y90/Re−188、セツキシマブ、パニツムマブ、マツズマブ、ニモツズマブ、ザルツムマブ、ペルツズマブ、MDX−214、CDX110、IMC11F8、ペルツズマブ、トラスツズマブ、zemab(登録商標)、Her2ワクチンPX 1041、およびHSP90阻害剤のCNF1010、CNF2024、タネスピマイシン アルベスピマイシン、IPI504、SNX5422およびNVP−AUY922からなる群から選択されるEGFRモジュレーターと、必要により、少なくとも1種の医薬的に許容可能な担体との組み合わせであって、これらの活性成分が、各場合において、遊離の形態または医薬的に許容可能な塩の形態で存在し、非小細胞肺がん、頭頸部がん、結腸直腸がん、乳がん、神経膠芽腫を含む脳腫瘍、前立腺がん、膀胱がん、腎細胞がん、すい臓がん、子宮頸がん、食道がん、胃がん、および/または卵巣がんを治療するために、同時、個別または順次に使用する、前記組み合わせ。
[12]
EGFR依存性疾患、またはEGFRモジュレーターによる治療中に、耐性を獲得した疾患を治療する方法であって、治療上有効な量の上記[1]または[2]のいずれか1項に記載の式Iの化合物を、それを必要とする温血動物に投与する工程を含む、前記方法。
[13]
治療すべき疾患が、上記[10]に記載の疾患である、上記[13]に記載の方法。
[14]
式Iの化合物が、上記[9]に記載のEGFRモジュレーターと共に投与される、上記[12]または[13]に記載の方法。
[15]
EGFR依存性疾患、またはEGFRモジュレーターによる治療中に、耐性を獲得した疾患を治療する医薬製剤であって、上記[1]もしくは[2]のいずれか1項に記載の式Iの化合物、または医薬的に許容可能なその塩、および少なくとも1種の医薬的に許容可能な担体を含む、医薬製剤。
[16]
治療すべき疾患が、上記[10]に記載の疾患である、上記[15]に記載の医薬製剤。
[17]
上記[9]に記載のEGFRモジュレーターを含む、上記[15]または[16]に記載の医薬製剤。
[18]
EGFR依存性疾患、またはEGFRモジュレーターによる治療中に、耐性を獲得した疾患を治療するための、上記[1]もしくは[2]のいずれか1項に記載の式Iの化合物、または医薬的に許容可能なその塩の使用。
[19]
治療すべき疾患が、上記[10]に記載の疾患である、上記[18]に記載の使用。
[20]
上記[9]に記載のEGFRモジュレーターと共に使用する、上記[18]または[19]に記載の使用。