特許第5778736号(P5778736)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5778736モータ冷却用の冷却管継手、および冷却管継手を備えるモータ冷却装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778736
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】モータ冷却用の冷却管継手、および冷却管継手を備えるモータ冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/16 20060101AFI20150827BHJP
   F16L 19/02 20060101ALI20150827BHJP
   F16L 19/06 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   H02K9/16
   F16L19/02
   F16L19/06
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-209614(P2013-209614)
(22)【出願日】2013年10月4日
(65)【公開番号】特開2015-76901(P2015-76901A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2014年10月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(72)【発明者】
【氏名】高見澤 卓
【審査官】 尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−169410(JP,A)
【文献】 特開2010−268667(JP,A)
【文献】 特開平05−099378(JP,A)
【文献】 特開平07−027264(JP,A)
【文献】 特開2009−144872(JP,A)
【文献】 特開平11−030368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/00− 9/28
F16L 19/00−19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを冷却するための冷媒が通過する冷却管を受容する冷却管継手であって、
前記冷却管を受容する第1貫通孔を有する基部と、
前記第1貫通孔と連通し、前記冷却管を受容する第2貫通孔を有し、前記基部に締結される押え部材と、
前記第1貫通孔および前記第2貫通孔と連通し、前記冷却管を受容する第3貫通孔を有し、前記基部と前記押え部材との間に配置される変形部材と、
前記変形部材に面して配置され、前記第3貫通孔の中心軸に対して傾斜する第1傾斜面であって、前記押え部材を前記基部に締結する力によって、前記変形部材と圧接し、前記変形部材を前記中心軸に近づく方向へ変形させる、第1傾斜面と、を備え
前記基部、前記押え部材、および前記変形部材は、いずれも同じ剛性と同じ熱膨張率とを有する金属材料から作製される、冷却管継手。
【請求項2】
前記変形部材は、前記第1傾斜面と面接触する第2傾斜面を有する、請求項1に記載の冷却管継手。
【請求項3】
前記基部は、前記第1貫通孔と平行に延在して該基部を貫通する螺子通過孔を有し、
前記押え部材は、
前記螺子通過孔に対応する位置に設けられた螺子孔を有し、
前記螺子通過孔を通過して前記螺子孔と螺合するボルトによって、前記基部に締結される、請求項1または2に記載の冷却管継手。
【請求項4】
前記第1傾斜面は、前記基部に一体に形成される、請求項1または2に記載の冷却管継手。
【請求項5】
前記基部は、前記押え部材に面する端面から内方に凹むように設けられた凹部を有し、
前記凹部は、前記第1貫通孔の開口を底面に含み、前記押え部材を内部に収容する、請求項に記載の冷却管継手。
【請求項6】
前記押え部材と前記変形部材との間に配置される中間押え部材をさらに備え、
前記第1傾斜面は、前記中間押え部材に一体に形成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の冷却管継手。
【請求項7】
前記基部は、前記押え部材に面する端面から内方に凹むように設けられた凹部を有し、
前記凹部は、前記第1貫通孔の開口を底面に含み、前記変形部材および前記中間押え部材を内部に収容する、請求項に記載の冷却管継手。
【請求項8】
前記冷媒が前記冷却管継手の外部に漏出するのを防止するために、前記冷却管の周囲に密着するリング部材をさらに備え、
前記リング部材は、前記押え部材に形成されたリング保持溝に収容される、請求項1〜のいずれか1項に記載の冷却管継手。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載の冷却管継手を備える、モータ冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを冷却するための冷媒を通過させるための冷却管継手、および冷却管継手を備えるモータ冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機等のモータを駆動した場合に発生する熱を抜熱するためのモータ冷却装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−268667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータ冷却装置は、モータを冷却するための冷媒を通過させる冷却管と、冷却管を受容して、冷却管を冷却ジャケット等の部材に接続する冷却管継手とを備える。このようなモータ冷却装置においては、モータ冷却装置を組み立てた後に、冷却管継手から延出する冷却管の長さを微調整することが必要となる場合がある。
【0005】
しかしながら、従来の冷却管継手においては、冷却管を冷却管継手に溶接等により固定していたので、冷却管を冷却管継手から外部に引き出したり、冷却管を冷却管継手の内部に押し入れたりして、冷却管継手から延出する冷却管の長さを微調整することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る冷却管継手は、モータを冷却するための冷媒が通過する冷却管を受容するものであって、冷却管を受容する第1貫通孔を有する基部と、第1貫通孔と連通し、冷却管を受容する第2貫通孔を有し、基部に締結される押え部材と、第1貫通孔および第2貫通孔と連通し、冷却管を受容する第3貫通孔を有し、基部と押え部材との間に配置される変形部材と、第3貫通孔の中心軸に対して傾斜する第1傾斜面とを備える。
【0007】
この第1傾斜面は、押え部材を基部に締結する力によって、変形部材と圧接し、変形部材を中心軸に近づく方向へ変形させる。変形部材は、第1傾斜面と面接触する第2傾斜面を有してもよい。第1傾斜面は、基部に一体に形成されてもよい。基部は、押え部材に面する端面から内方に凹むように設けられた凹部を有し、この凹部は、第1貫通孔の開口を底面に含み、押え部材を内部に収容してもよい。
【0008】
冷却管継手は、押え部材と変形部材との間に配置される中間押え部材をさらに備えてもよい。この場合において、第1傾斜面は、中間押え部材に一体に形成されてもよい。基部は、押え部材に面する端面から内方に凹むように設けられた凹部を有し、この凹部は、第1貫通孔の開口を底面に含み、押え部材および中間押え部材を内部に収容してもよい。
【0009】
冷却管継手は、冷媒が冷却管継手の外部に漏出するのを防止するために、冷却管の周囲に密着するリング部材をさらに備えてもよい。このリング部材は、押え部材に形成されたリング保持溝に収容されてもよい。本発明の他の態様において、モータ冷却装置は、上記の冷却管継手を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、溶接等を用いることなく、変形部材を可逆的に弾性変形させることによって、冷却管を冷却管継手に保持させることができるので、使用者は、冷却管継手から延出する冷却管の長さを、容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るモータ冷却装置の外観図である。
図2】本発明の一実施形態に係る冷却管継手の断面図である。
図3図2に示す冷却管継手の分解断面図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る冷却管継手の断面図である。
図5図4に示す冷却管継手の分解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係るモータ冷却装置10について説明する。モータ冷却装置10は、モータMの周囲に冷媒を流動させることによってモータMを冷却するための装置である。モータ冷却装置10は、モータMの周囲に配置された複数の冷却ジャケット11と、冷却ジャケット11に連結された冷却管12と、冷却管12を冷却ジャケット11に接続するための冷却管継手100とを備える。
【0013】
冷却ジャケット11は、モータMの周囲を取り囲むように、モータMに複数取り付けられている。冷却ジャケット11は、冷媒を通過させるための冷媒通路(図示せず)を内部に有しており、冷媒通路内を流動する冷媒によって、モータMから生じた熱を抜熱する。
【0014】
冷却管12は、冷媒を内部にて通過させるための管状の部材であって、モータMの外部に設置された冷媒供給装置(図示せず)と冷却ジャケット11との間、および、2つの冷却ジャケット11の間を、冷媒を流動させることができるように接続する。冷却管12は、冷却管継手100に取り付けられた補助継手14に接続される。冷却管12は、補助継手14および冷却管継手100を介して、冷却ジャケット11に接続され、冷却ジャケット11の内部に配設された冷却管13(図2)と連通する。こうして、冷媒供給装置から供給された冷媒は、冷却管12および13を介して冷却ジャケット11の内部を流動し、モータMから生じた熱を抜熱する。
【0015】
次に、図2および図3を参照して、本実施形態に係る冷却管継手100について説明する。なお、以下の説明においては、基部101の中心軸Oに沿う方向を軸方向とし、紙面左側を軸方向前方とする。冷却管継手100は、基部101、押え部材102、および変形部材103を備える。
【0016】
基部101は、中心軸Oを有する円柱状の部材であって、剛性を有する金属材料から作製され、上記した冷却ジャケット11に固定される。基部101は、軸方向後方側の端面106から内方に凹む凹部106aを有する。凹部106aの側面には、螺子部が形成されており、該螺子部を介して、補助継手14が凹部106aと螺合して接続される。
【0017】
基部101は、軸方向前方側の端面104から内方に凹む凹部105を有する。凹部105は、円柱状の内部空間を画定しており、凹部105の側面には、雌螺子部105aが形成されている。基部101は、凹部106aの底面106bから凹部105の底面107まで、基部101を軸方向に貫通する貫通孔108を有する。
【0018】
貫通孔108は、冷却管13の外径よりも若干大きい直径を有する。貫通孔108の、軸方向前方側の開口部109には、円錐状の第1傾斜面110が形成されている。第1傾斜面110は、軸方向前方に向かうにつれて軸Oから離れるように、軸Oに対して傾斜している。
【0019】
押え部材102は、円柱状の部材であって、剛性を有する金属材料から作製される。押え部材102は、その中心軸が基部101の中心軸Oと一致するように、基部101に締結される。押え部材102は、軸方向前方側の端面111から軸方向後方側の端面112まで、押え部材102の中心を軸方向に貫通する貫通孔113を有する。貫通孔113は、冷却管13の外径よりも若干大きい直径を有する。貫通孔113の軸方向後方側の開口114には、Oリング115を内部に収容するリング保持溝116が形成されている。
【0020】
本実施形態に係るリング保持溝116は、軸方向後方に向かうにつれて径方向外側に拡がるように、軸Oに対して傾斜する傾斜面によって画定されている。また、押え部材102の外周面上には、基部101に設けられた雌螺子部105aと螺合可能な雄螺子部102aが形成されている。
【0021】
変形部材103は、基部101の中心軸Oと同じ軸を中心とした円錐台状の部材であって、剛性を有する金属材料から構成される。好ましくは、基部101、押え部材102、および変形部材103は、同じ剛性と熱膨張率を有する金属材料(例えば、同じ金属材料)から作製される。変形部材103は、軸方向前方側の端面117から軸方向後方側の端面118まで、変形部材103の中心を軸方向に貫通する貫通孔119を有する。貫通孔119は、冷却管13の外径よりも若干大きい直径を有する。
【0022】
また、変形部材103は、第2傾斜面120を外周面として有している。この第2傾斜面120は、軸方向後方側の端面118から、軸方向前方に向かうにつれて軸Oから離れるように軸Oに対して傾斜しつつ、軸方向前方側の端面117まで延在している。なお、第2傾斜面120の軸Oに対する傾斜角度は、基部101に設けられた第1傾斜面110と実質同じとなるように設定される。例えば、第2傾斜面120の軸Oに対する傾斜角度は、0°より大きく90°より小さい角度の範囲内で設定される。
【0023】
図2に示す状態となるように冷却管継手100を組み立てる場合、使用者は、まず、変形部材103を、基部101の第1傾斜面110によって画定された空間S内に挿入する。なお、変形部材103が空間S内に挿入されたとき、変形部材103の軸方向前方側の端面117は、基部101の凹部105の底面107よりも軸方向前方側に僅かに突出する。
【0024】
次いで、使用者は、押え部材102を基部101の凹部105内に軸方向前方側から挿入し、雄螺子部102aを雌螺子部105aに螺合させるべく、押え部材102を軸Oの周方向一方に回し入れる。そして、使用者は、押え部材102を、変形部材103に軽く接触する程度の位置に配置する。
【0025】
このとき、基部101の貫通孔108、押え部材102の貫通孔113、および変形部材103の貫通孔119は、互いに連通する。そして、使用者は、冷却管13を、貫通孔108、貫通孔113、および貫通孔119内に挿入する。ここで、上記したように、貫通孔108、貫通孔113、および貫通孔119の直径は、冷却管13の外径よりも若干大きくなるように設定される。このため、使用者は、冷却管13を、貫通孔108、貫通孔113、および貫通孔119内に、円滑に挿入することができる。
【0026】
ここで、使用者は、冷却管13の軸方向後方端が凹部106aの底面106bから予め定められた距離だけ軸方向前方側に離隔するように、冷却管13を貫通孔108、113、119内に挿入する。これにより、図2に示すように冷却管継手100に補助継手14を取り付けたときに、冷却管13の軸方向後方端が補助継手14と当接することによって、冷却管13に歪みが生じてしまうのを防止する。
【0027】
冷却管13を貫通孔108、貫通孔113、および貫通孔119内に挿入した後、使用者は、押え部材102を基部101の凹部105内に固く締結するために、押え部材102を周方向一方に回して、凹部105内にさらに回し入れる。そうすると、押え部材102の端面112が変形部材103の端面117と圧接し、変形部材103に対して、図2中の矢印Fで示すような、軸方向後方側へ向けたスラスト力Fが加えられる。
【0028】
変形部材103は、スラスト力Fおよび基部101の第1傾斜面110からの垂直抗力を受け、主に垂直抗力のラジアル方向成分F等の作用により、軸方向に近づく方向、すなわち径方向内側へ変形することになる。これにより、変形部材103の貫通孔119が縮径され、冷却管13が貫通孔119内に固定される。
【0029】
なお、このような変形部材103の変形が、塑性領域での変形ではなく弾性領域での変形となるように、第1傾斜面110および第2傾斜面120の傾斜角度や、変形部材103の材料が選択される。Oリング115は、押え部材102に設けられたリング保持溝116内に保持され、冷却管13の周囲に密着する。これにより、冷媒を冷却管13に流したときに、冷媒が、押え部材102と冷却管13との間を通過して冷却管継手100の外部に漏出してしまうのを防止することができる。
【0030】
一方、冷却管継手100の組み立て後に、冷却管継手100に挿入された冷却管13の挿入の深さを変更する必要が生じた場合、使用者は、押え部材102を周方向他方に回すことによって、基部101に対する押え部材102の締結を緩める。そうすると、押え部材102と変形部材103との間の圧接が解除され、変形部材103は、組み立て前の形状に復元する。その結果、冷却管13に対する変形部材103の締め付け力が解放され、使用者は、冷却管13を冷却管継手100内にさらに深く挿入したり、冷却管継手100の外へ引き出したりすることが可能となる。
【0031】
このように、本実施形態に係る冷却管継手100によれば、押え部材102を基部101に締結したときに変形部材103に加えられるスラスト力Fと、基部101に設けられた第1傾斜面110とを利用して、変形部材103を可逆的に弾性変形させることによって、冷却管13を保持している。
【0032】
この構成によれば、使用者は、押え部材102を基部101に締結するだけで、溶接等を用いることなく、冷却管13を冷却管継手100に容易に保持することができる一方、基部101に対する押え部材102の締結を緩めるだけで、冷却管13を冷却管継手100に挿入したり、冷却管継手100から引き出したりすることが可能となる。
【0033】
このような構成を備える冷却管継手100は、例えば、冷却管継手100から延出する冷却管13の長さを微調整することが必要となった場合に、特に有利である。これについて具体的に述べると、図1に示すようにモータ冷却装置10を組み立てた後に、冷却ジャケット11の位置を微調整する必要が生じる場合がある。このような場合において、仮に、冷却管13が冷却管継手100に固定されていることにより、冷却管継手100から延出する冷却管13の長さを調整できないとすると、冷却ジャケット11の位置を微調整することが困難となってしまう。
【0034】
ここで、本実施形態に係る冷却管継手100は、上記したように、基部101に対する押え部材102の締結を緩めるだけで、冷却管13を冷却管継手100に挿入したり、冷却管継手100から引き出したりすることができる。したがって、使用者は、冷却管継手100から延出する冷却管13の長さを容易に調整することができるので、モータ冷却装置10を組み立てた後においても、冷却ジャケット11の位置を容易に調整することができる。
【0035】
次に、図4および図5を参照して、本発明の他の実施形態に係る冷却管継手200について説明する。なお、上記した実施形態と同様の部材には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。また、理解の容易の観点から、図5においては、冷却管12および補助継手14を省略している。冷却管継手200は、基部201、押え部材202、中間押え部材203、および変形部材204を備える。
【0036】
基部201は、中心軸Oを有する部材であって、上記した冷却ジャケット11に固定される。基部201は、軸方向前方側の端面205から内方に凹む凹部206と、軸方向後方側の端面207から内方に凹む凹部207aと、凹部207aの底面207bから凹部206の底面208まで、基部201を軸方向に貫通する貫通孔209と、基部201を端面205から端面207まで軸方向に貫通する複数の螺子通過孔210とを有する。上述の実施形態と同様に、補助継手14は、基部201に設けられた凹部207aに接続される。
【0037】
押え部材202は、基部201の中心軸Oと同じ軸を中心とする部材である。押え部材202は、軸方向前方側の端面211から軸方向後方側の端面212まで、押え部材202の中心を軸方向に貫通する貫通孔213を有する。貫通孔213の軸方向後方側の開口214には、Oリング215を内部に収容するリング保持溝216が形成されている。
【0038】
なお、本実施形態においては、リング保持溝216は、貫通孔213の壁面から径方向外側に向かって凹む円柱状の凹部によって形成されている。また、押え部材202は、基部201に設けられた複数の螺子通過孔210の各々に対応する位置に、螺子孔217を有する。
【0039】
中間押え部材203は、基部201の中心軸Oと同じ軸を中心とする円柱状の部材である。中間押え部材203は、第1傾斜面218によって画定された内部空間Sを有する。第1傾斜面218は、軸方向後方側の端面220から、軸方向前方へ向かうにつれて軸Oへ近づくように軸Oに対して傾斜しつつ、軸方向前方側の端面219まで延びている。
【0040】
変形部材204は、基部201の中心軸Oと同じ軸を中心とする円錐台状の部材である。好ましくは、基部201、押え部材202、中間押え部材203、および変形部材204は、同じ剛性と熱膨張率を有する金属材料(例えば、同じ金属材料)から作製される。変形部材204は、軸方向前方側の端面221から軸方向後方側の端面222まで、変形部材204の中心を軸方向に貫通する貫通孔223を有する。また、変形部材204は、第2傾斜面224を外周面として有する。この第2傾斜面224は、軸方向後方側の端面222から、軸方向前方に向かうにつれて軸Oに近づくように軸Oに対して傾斜しつつ、軸方向前方側の端面221まで延在する。
【0041】
なお、第2傾斜面224の軸Oに対する傾斜角度は、中間押え部材203に設けられた第1傾斜面218と実質同じとなるように設定される。例えば、第2傾斜面224の軸Oに対する傾斜角度は、0°より大きく90°より小さい角度の範囲内で設定される。また、上記実施形態と同様に、基部201の貫通孔209、押え部材202の貫通孔213、および、変形部材204の貫通孔223は、組み立てる前の状態において、冷却管13の外径よりも若干大きい直径を有する。
【0042】
図4に示すように冷却管継手200を組み立てる場合、使用者は、中間押え部材203の第1傾斜面218と、変形部材204の第2傾斜面224とが互いに面接触するように、変形部材204を、中間押え部材203の内部空間S内に挿入する。そして、使用者は、互いに組み合わされた中間押え部材203および変形部材204を、基部201に設けられた凹部206に挿入する。
【0043】
なお、中間押え部材203および変形部材204が凹部206内に挿入されたとき、中間押え部材203の軸方向前方側の端面219は、基部201の軸方向前方側の端面205よりも、軸方向前方側に若干突出する。
【0044】
次いで、使用者は、押え部材202を基部201に対して軸方向前方側から配置し、基部201の螺子通過孔210を通り、押え部材202の螺子孔217と螺合するボルト225によって、押え部材202の端面212が中間押え部材203の端面219と軽く接触する程度に、押え部材202を基部201に締め込む。
【0045】
この状態において、基部201の貫通孔209、押え部材202の貫通孔213、および変形部材204の貫通孔223は、互いに連通する。そして、使用者は、冷却管13を、貫通孔209、貫通孔213、および貫通孔223内に挿入する。ここで、上記したように、貫通孔209、貫通孔213、および貫通孔223の直径は、冷却管13の外径よりも若干大きくなるように設定される。このため、使用者は、冷却管13を、貫通孔209、貫通孔213、および貫通孔223内に、円滑に挿入することができる。
【0046】
冷却管13を貫通孔209、貫通孔213、および貫通孔223内に挿入した後、使用者は、押え部材202を基部201に対して固く締結するために、ボルト225をさらに締める。そうすると、図4中の矢印Fに示すように、押え部材202から中間押え部材203に対して、軸方向後方へ向けたスラスト力Fが加えられる。このスラスト力Fによって中間押え部材203が軸方向後方に押され、中間押え部材203の第1傾斜面218が、変形部材204の第2傾斜面224に対して圧接する。
【0047】
その結果、変形部材204は、第1傾斜面218から垂直抗力を受け、主に垂直抗力のラジアル方向成分F等の作用により、径方向内側へ変形することになる。そして、変形部材204の貫通孔223が縮径され、冷却管13が貫通孔223内に保持される。このとき、Oリング215は、押え部材202に設けられたリング保持溝216内に保持され、冷却管13の周囲に密着する。これにより、冷媒を冷却管13に流したときに、冷媒が冷却管継手200の外部に漏出するのを防止することができる。
【0048】
一方、冷却管継手200に挿入された冷却管13の挿入の深さを変更する必要が生じた場合、使用者は、ボルト225の締結を緩める。そうすると、中間押え部材203と変形部材204との間の圧接が解除され、変形部材204は、組み立て前の形状に復元する。その結果、冷却管13に対する変形部材204の締め付け力が解放され、使用者は、冷却管13を冷却管継手200内にさらに深く挿入したり、冷却管継手200の外へ引き出したりすることが可能となる。
【0049】
このように、本実施形態に係る冷却管継手200によれば、使用者は、ボルト225を締める、または緩めるといった簡単な作業で、冷却管13を冷却管継手200に挿入したり、冷却管継手200から引き出したりすることが可能となる。これにより、冷却管継手200から延出する冷却管13の長さを容易に調整することができるので、モータ冷却装置10を組み立てた後においても、冷却ジャケット11の位置の調整等の作業を行うことができる。
【0050】
なお、上記した実施形態においては、第1傾斜面および第2傾斜面が、いずれも円錐面である場合について述べた。しかしながら、これに限らず、第1傾斜面および第2傾斜面は、例えば三角錐台、四角錐台といった角錐台状の傾斜面であってもよいし、または、軸方向一方に向かうにつれてその断面積が小さくなる(または大きくなる)ような傾斜面であれば、如何なる断面形状を有する傾斜面であってもよい。
【0051】
また、上記した実施形態においては、変形部材が円錐台状である場合について述べたが、これに限らず、例えば楔形部材、先細状の多角形部材等であってもよい。また、第1傾斜面と圧接した場合に、変形部材が径方向内側へ向けて変形し易くするために、変形部材の軸方向一方の端面から、予め定められた距離だけ軸方向他方側へ延びるスリットを形成してもよい。また、このスリットは、変形部材を径方向に貫通してもよいし、変形部材の第2傾斜面から予め定められた距離だけ径方向内側へ凹むように設けられてもよい。
【0052】
また、上記した実施形態においては、変形部材が第2傾斜面を有する場合について述べた。しかしながら、これに限らず、変形部材は、例えばリング部材のように、傾斜面を有していない形態であってもよい。何故ならば、このように変形部材が第2傾斜面を有していない場合であっても、第1斜面と圧接することによって、径方向内側に変形し、以って冷却管を保持することが可能であるからである。
【0053】
また、上記した実施形態においては、第1傾斜面を基部に一体に形成した場合、および、第1傾斜面を中間押え部材に形成した場合について述べた。しかしながら、これに限らず、第1傾斜面を押え部材に一体に形成してもよいし、上記した部材以外の他の部材に第1傾斜面を形成し、変形部材と圧接させる構成であってもよい。
【0054】
また、上記した実施形態においては、リング保持溝が軸Oに対して傾斜する傾斜面によって画定されている場合、および、貫通孔の壁面から径方向外側に向かって凹む円柱状の凹部によって形成されている場合について述べた。しかしながら、これに限らず、リング保持溝は、例えば、ゴムリングの外周面と相補的に嵌合する形状の面を有してもよい。
【0055】
以上、発明の実施形態を通じて本発明を説明したが、上述の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが、発明の解決手段に必須であるとは限らない。さらに、上述の実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0056】
10 モータ冷却装置
100,200 冷却管継手
101,201 基部
102,202 押え部材
103,204 変形部材
203 中間押え部材
110,218 第1斜面
120,224 第2斜面
図1
図2
図3
図4
図5