(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
タタミイワシは、カタクチイワシなどの稚魚を薄く板状に広げて乾燥させた伝統的食品であって、保存性も高いことから、高級な水産加工品として広く認知されている。
【0003】
その製造にあたっては、まず
図17(a)に示すように、シラス(カタクチイワシの稚魚群)501を洗浄する。そして、
図17(b)に示すように、底面に網を張った矩形の木枠503を冷水502中に浸けた状態で、この木枠503の中に洗浄の後の生シラス501を矢印で示すように手作業で投入して、均等な厚みとなるように薄く展開する。次に、生シラス501を保持した木枠503を冷水502中から取出して軽く水を切り、すだれ504(
図17(c))上で木枠503を一気に手作業でひっくり返す。このとき、すだれ504上に木枠503をたたきつけるようにすることにより、生シラス501を木枠503の底網から剥離させ、生シラス501が矩形の板状にまとまったシラス集合体505として、すだれ504上に移載される。このような、たたきつけるような移載作業(以下「強勢反転移載作業」)が必要となる理由は、生シラス501は粘着力が強く、単に木枠503を反転させる程度では生シラス501を木枠503の網から十分に剥離できず、すだれ504上への生シラス501の移載が失敗したり、あるいは生シラス501の集合体としての形状が大きく崩れてしまうためである。
【0004】
これを繰り返すことにより、すだれ504の上には、同様の方法によって板状とされたシラス集合体505が配列された状態となる(
図17(d))。そして、多数のシラス集合体505は、すだれ504とともに天日干しされた後、すだれ504から取り上げることにより、タタミイワシが完成する。
【0005】
ところで、このような従来の製造方法においては、以下のような問題がある。
【0006】
1)まず、
図17(a)のように、大量の冷水502を貯留した容器中で生シラスの洗浄工程を行う必要がある。通常は、複数回の洗浄が必要とされるが、このような洗浄工程の存在によって、タタミイワシの製造にあたっての工程数が多くなっている。
【0007】
2)上記の洗浄工程が必要となるため、その工程を実行する場所が必要となり、また大量の水の消費があるなどの点で、タタミイワシの製造コストが高くなりがちである。
【0008】
3)木枠503内に生シラス501を均等な厚みに展開する作業(均等化工程)は熟練を要するものであり、特にタタミイワシのような網状の製品の場合、ほぼ均等な厚さで網状に展開することは、容易ではない。特に、既述した「強勢反転移載作業」では、力の入れ方が弱すぎると木枠503の底網からの生シラス501の剥離が不十分となる一方、過剰に勢いを付けると生シラス501の分布が乱れ、乱雑な形状ですだれ504上に移載されてしまうなどの状況が生じるため、特に熟練を要する作業となっている。
【0009】
4)また、この均等化工程は熟練を要するだけでなく、木枠503の形状の制限ともなる。すなわち、木枠503を矩形以外の形状にすると、その中に生シラス501を均等な厚みに展開することが困難になったり、その形状における均等化のためにさらに熟練を要することになる。
【0010】
5)洗浄工程や均等化工程で散逸するシラスもあり、均等な展開が不十分であると商品ロスが出るなど、原料利用効率上も問題がある。
【0011】
そこで、タタミイワシの製造プロセスを自動化(機械化)することも試みられており、そのような例としては、特許文献1が開示する装置がある。この特許文献1では、水中での均等化工程を自動的に行うべく、生シラスを載置した網底の支持枠体を水中に浸けた状態で、水の攪拌を機械的に行ってシラスを水中で舞い上がらせ、それを沈殿させることにより、生シラスを均等な厚みに展開させようとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、特許文献1のような技術では、生シラスの均等化が自動的に行われるという利点はあるが、水の攪拌が弱いと生シラスの均等な展開が十分ではなく、逆に攪拌が強すぎると沈殿までに長時間を要したり、水中の生シラスが損壊しやすいなどの問題がある。したがって上記の各問題の本質的な解決にはなっていない。
【0014】
この発明は、上記の各課題の解決を意図したものであり、タタミイワシに代表されるようなシート状水産物集合体食品の製造にあたって、効率的でかつ応用性が高く、かつ高品質の製品が得られるような製造方法およびそのための製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明の第1の態様では、水産物個体の集合を原料として、シート状の水産物集合体食品を製造する方法であって、(a)通水性の保持面の上に、型枠を配置する型枠配置工程と、(b)前記保持面上の前記型枠の中に、前記原料を供給する原料供給工程と、(c)前記型枠中の前記保持面上に保持された前記原料を、
前記型枠の上方から水のシャワーを付与することによって前記型枠の内部に給水された水の水流によって水洗するとともに、前記水の給水の際に生じる水勢によって前記型枠中の前記原料を水中で分散させて前記型枠内での前記原料の分布を均等化する水洗均等化工程と、(d)前記保持面上で前記型枠に対応した形状となった前記原料の集合体を乾燥または熱加圧によって変性させて相互結合させることにより、前記原料をシート状の水産物集合体食品とする結合工程とを備え、前記水洗均等化工程では、前記原料の均等化と水洗とに用いられた前記型枠内の水が前記保持面から下方に流出することより、前記原料が前記型枠内に留まったままで前記型枠内からの排水が行われることを特徴とする、シート状水産物集合体食品の製造方法を提供する。
【0016】
この発明の第2の態様では、前記第1の態様において、前記水洗均等化工程で使用される前記型枠内の水は、前記原料供給工程によって前記原料を前記型枠内に供給した後に前記型枠内に給水された水である。
【0017】
この発明の第3の態様では、
前記第1または第2の態様において、
前記型枠配置工程では複数の前記型枠が前記保持面の上に2次元的に配列され、前記原料供給工程と前記水洗均等化工程とが、配列された複数の前記型枠をコンベア搬送させつつ行われる。
【0018】
この発明の第4の態様では、前記第3の態様において、前記水流として水のシャワーを揺動旋回させつつ前記型枠内に付与する。
【0019】
この発明の第5の態様では、前記第1の態様において、
前記水洗均等化工程と前記結合工程との間に、前記保持面上から前記型枠を除去する型枠除去工程、をさらに備えることを特徴とする。
【0020】
この発明の第6の態様では、前記第1ないし第5のいずれかの態様において、前記保持面は網面またはパンチングプレート面である。
【0021】
この発明の第7の態様では、前記第1ないし第6のいずれかの態様において、前記水産物個体はイワシの稚魚であり、前記水産物集合体食品はタタミイワシである。
【0022】
この発明の第8の態様では、前記第1ないし第7のいずれかの態様において、円形の水産物集合体食品(たとえば円形のタタミイワシ)を製造するためにこの発明が用いられる。
【0023】
この発明はまた、上記の方法の実施に適した装置として、水産物個体の集合を原料として、シート状の水産物集合体食品を製造する装置を提供する。
【0024】
この発明の第9の態様によれば、この装置は、(a)型枠を通水性の保持面上に配置する型枠配置部と、(b)前記保持面上の前記型枠の中に前記原料を供給する原料供給部と、(c) 前記型枠中の前記保持面上に保持された前記原料を、
前記型枠の上方から水のシャワーを付与することによって前記型枠の内部に給水された水の水流によって水洗するとともに、前記水の給水の際に生じる水勢によって前記型枠中の前記原料を水中で分散させて前記型枠内での前記原料の分布を均等化する水洗均等化部と、(d)前記保持面を有する通水性トレイを所定の搬送経路に沿って搬送する搬送機構とを備え、前記型枠配置部、前記原料供給部、および前記水洗均等化部が、前記搬送経路に沿って上流側から下流側に順に配置されており、前記原料の均等化と水洗とに用いられた前記型枠内の水が前記保持面から下方に流出することより、前記原料が前記型枠内に留まったままで前記型枠内からの排水が行われ、前記水洗均等化部での前記水洗と前記均等化との処理を経て前記保持面上で前記型枠に対応した形状となった前記原料の集合体を、乾燥または熱加圧によって変性させて相互結合させることにより、前記原料がシート状の水産物集合体食品となることを特徴とする。
【0025】
この発明の第10の態様によれば、第9の態様の装置であって、
前記搬送経路に沿って前記水洗均等化部よりも下流側に配置されて前記保持面上から前記型枠を除去する型枠除去部、をさらに備え、前記型枠除去部によって前記型枠を前記保持面上から除去した後に、前記原料の集合体を、乾燥または熱加圧によって変性させて相互結合させる。
【0026】
この発明の第11の態様によれば、第9または第10の態様において、前記型枠は円形であって、前記型枠配置部は、複数個の前記型枠を2次元的に千鳥配列させて前記保持面上に配置する。
【発明の効果】
【0027】
この発明の各態様によれば、原料が供給された型枠内へ給水することによって生じる水流が、原料を水中で分散させて型枠内での原料の分布を均等化するとともに、原料の水洗が行われる。
【0028】
したがって、原料の分布の均等化が、熟練を要することなく効率的に実現可能となる。特に、従来行われてきた「強勢反転移載作業」を必要としないため、熟練者でなくても良質の製品を製造可能である。
【0029】
また、この過程で原料の水洗も行われるため、別途に大量の水を用いた水洗工程を設ける必要がなく、製造方法として効率的であるとともに、水資源の節約にも寄与する。
【0030】
従来のような手作業での原料の均等化では、型枠の形状は作業者の手指の大きさや手の動きに左右されるが、水流による均等化ではそのような制約がないため、型枠の形状の自由度も高い。このため、製造する水産物集合体食品としての応用性も高く、かつ熟練者によらずとも、高品質の製品が得られる。
【0031】
原料の均等化と水洗とに使用された水は、型枠を配置している通水性トレイの底面から排水されるため、水とともに原料の一部が型枠の上を越えて溢れることはない。したがって、原料の一部が無駄になったり、その回収に手数をかける必要もない。
【0032】
また、この発明の第3の態様のように、水洗均等化工程における水流として水シャワーを付与すれば、型枠内の原料に対して全体的に偏りが少ない態様で水付与がなされるため、均等化や水洗が特に効率的となる。
【0033】
これにあたって、この発明の第4の態様のように水シャワーの揺動旋回を行わせる場合には、原料の均等化がさらに適切になされる。
【0034】
また、この発明の第5および第10の態様のように、原料供給処理と水洗均等化処理とを一括化することによって、製造プロセスを簡略化できる。
【0035】
また、この発明の第8の態様のように、この発明は円形の水産物集合体食品を製造するために用いることが可能であり、この場合には、完成したシート状水産物集合体食品の運搬や取扱いの途中で、その角部が欠けるという事態も防止できる。
【0036】
この発明の第10の態様のような接触型ノズルを用いた場合には、原料や水の散逸を防止しつつ、原料の均一化と水洗とを実行できる。
【0037】
この発明の第11の態様のように、複数個の型枠を2次元的に千鳥配列させて保持面上に配置する態様では、型枠を密に配置できることから、空間的な無駄も少なくなる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下では、この発明の実施形態として、水産物個体の集合を原料としたシート状の水産物集合体食品としてのタタミイワシの製造方法の各工程をまず説明し、その後に、その方法の実施に適した装置例について説明する。
【0040】
<<製造方法>>
図1〜
図8は、この発明の実施形態にかかるタタミイワシの製造方法の工程説明図である。
【0041】
<型枠配置工程>
まず、事前に、
図1に示すような網トレイ10を準備しておく。ただし、
図1(a)はこの網トレイ10の平面図であり、
図1(b)はそのB1−B1端面図である。網トレイ10は、木製、金属製あるいは樹脂製の矩形のフレーム11の底の全面を覆うように底網12を取り付けて構成されている。ただし、
図1および後記の各図では、図示の便宜上、底網12の一部のみに網目が付されて描かれているが、実際にはフレーム11の底面の全体を覆うように底網12が存在する。
【0042】
この底網12の網目は、原料となる個々のシラス(水産物個体)のサイズよりもかなり小さなものとなっており、この底網12の上に原料となるシラスを載せたときも、網目からシラスが脱落しないようになっている。具体的には、底網12は天然繊維や合成繊維の網でもよいし、金属製の網、耐熱樹脂製の網、竹製の簾(すだれ)などであってもよい(この明細書では、簾も網の1種と考える)。また、細孔が全体分布した金属製または樹脂製のパンチングプレートを使用することもできる。これらの材質からなる底網12やパンチングプレートは、通水性を有するものの、原料のシラスは脱落させずにその上に保持可能な「通水性の保持面」として機能する。
【0043】
このような網トレイ10(すなわち通水性トレイ)の底網12の上に、
図6(a)に示すような、それぞれが円環状となっている無底の型枠20を、
図2に示すように複数配列して載置する。ただし、
図2(a)は平面図であり、また
図2(b)はそのB2−B2端面図である。
【0044】
図6(a)の型枠20は、金属、耐熱樹脂、竹などの材料を用いて形成された枠体21を用いて形成されており、型枠20を網トレイ10の底網12上に載置した状態で枠体21が囲む領域22内にシラスの集合を収容し、最終的にこの領域22に対応する集合形状を持ったタタミイワシを製造するために使用される。この実施形態の型枠20は、円形のタタミイワシを製造するために好適な形状を有している。
【0045】
一般に、型枠20は囲まれる領域22の形状およびサイズは、最終的に製造すべきタタミイワシの形状およびサイズとほぼ同じとされる。ただし、後述するように、この領域22に収容される原料のシラス集合体が乾燥工程を経ることによって、それらのシラス集合体はある程度収縮するから、領域22のサイズ(円環状の場合は直径)は、製品となるタタミイワシのサイズよりは、ある程度、大きなものとされている。
【0046】
枠体21の円形の壁面の底部は平坦であり、網トレイ10の底網12の上面に載置したときに、枠体21の底部と底網12の上面との間からシラスが散逸しないようになっている。枠体21の高さは、製品としてのタタミイワシの厚さよりもかなり高く、乾燥前のシラスシートST(後述する
図5)の厚さ)の10倍程度とされる。たとえば最終的に完成するタタミイワシの厚さが1mm程度であり、その前提となる乾燥前のシラスシートSTの厚さが3〜4mm程度の場合には、枠体21の高さは2.5cm〜3.5cmの範囲が好ましい。
【0047】
また、枠体21の材質として特に好ましいのは防錆性を有する金属であり、たとえばステンレスが好適に使用できる。アルミニウムなど比較的軽い金属よりもステンレスのように比較的重い金属の方がよいのは、後述する水流の勢いなどによって位置ずれが生じないほか、繰返しの使用によって変形することも少ないからである。さらに、後に説明するようにこの実施形態では枠体21を移動させるときにハンド115(
図11(c))による把持が使用されるが、枠体21の材料としてステンレスなどの磁性金属(合金を含む)を用いると、電磁石などを用いて磁気的に枠体21を保持して移動させることによって型枠配置や型枠除去を実現することもできる。
【0048】
図2に示すように、好ましくは、複数の型枠20は底網12上に2次元的に千鳥状に密接配置される。すなわち、型枠20の奇数列C1,C3,…は、型枠20の偶数列C2,C4,…に対して、型枠20の外形サイズ(直径)の半分だけ図の上下方向にずれた位置にある。このような2次元的な千鳥配置とすることによって円形の型枠20相互隙間が最小となり、所定の面積中に最大数の型枠20を配置することができる(最密配置)。型枠20が矩形の場合には縦横にマトリクス配置し、型枠20が6角形の場合にはハニカムに配置することにより、型枠20の相互間の隙間はほぼゼロとなって、それぞれの最密配置が得られる。
【0049】
型枠20が円形の場合には、網トレイ10の網底12の縦横のそれぞれのサイズは、当該円形の直径(外径)の整数倍(より正確には2以上の整数倍)程度とされている。それによって、型枠20の千鳥配列が、余分の隙間なく網底12内に収容されて空間の有効活用が可能となるとともに、後述する水洗均等化工程でシャワー水を上からかけたときにも、その水圧で型枠20が水平方向にずれることを特に有効に防止できる。
【0050】
<原料供給工程>
次に網トレイ10の底網12(保持面)上に配列された複数の型枠20のそれぞれの内部の領域22内に、原料としてのシラスの集合を供給する。
図3には、複数の型枠20のうちの半数にシラスWBが供給された状態を示しているが、最終的には複数の型枠20のすべての中にシラスWBが供給されることになる。
図3中では、個々のシラスを識別可能に図示していないが、拡大して見ると、
図6(b)に示すようなシラス個体の集合として、
図7(a)のように多数のシラスWBが不均一な分布状態で、型枠20の領域22内に存在している。なお、この段階での各型枠20内の状態を示す
図7(a)および以下の各図中では、シラス個体が、細楕円によって模式的に示されている。
【0051】
この供給段階のシラスWBは生シラスであってもよく、加熱後(茹でた後)のシラスであってもよい。いずれも場合も、あらかじめシラスを多量の水で水洗いしてからこれらの型枠20内にシラスWBを供給する必要はない。それは、後述するように、この実施形態では、型枠20内に投入された後の状態で、シラス集合体の水洗と均一化とを、一括して1つの工程で行うからである。
【0052】
シラスWBの集合は、ある程度の水分を伴った状態で型枠22内に供給される(特に、生シラスの場合)。このため、
図3(a)のB3−B3端面図である
図3(b)中に矢印A1で示すように投入されたシラスWBの集合から若干の水A2が滴下することもあるが、大量の水を伴うわけではないので、滴下した水はそのまま床に落としてもかまわない。
【0053】
<水洗均等化工程>
次に、底網12の上で各型枠22が占拠する範囲の上方から水流を与える(
図4)。好ましくは、この水は、面状に広がるシャワー水SWであり、このシャワー水SWは、個々の型枠22に対応した円形の広がり面を持つシャワーヘッドの配列から各型枠22内にシャワー水を与えてもよく、ひとつの網トレイ10の板網12上に配列した複数の型枠22の全部について一括して水付与をするシャワーヘッドであってもよい。個別シャワーの場合には、互いに隣接する型枠22の間の隙間に落下してそのまま下方に流出する無駄な水を防止できるというコスト削減、ないしはエコロジー的な利点がある。また、全体一括シャワーの場合には、多数の小さなシャワーヘッドを配列する必要がないという、設備上のコスト削減の利点がある。
【0054】
これら2つの方式の中間的な構成として、型枠22の1列または数個の列に同時にシャワーをかけることができるシャワーヘッドを使用し、そのヘッドを板網12に対して相対的に平行移動させることによって、型枠22の部分ごとに水付与が可能な構成を取ることができる。
図3の例は、最初に図の右半分に水付与を行い、その後に左半分に水付与を行う態様を示している。図示のタイミングでは、右半分の列については水付与が行われ、後半の列についてはまだ水付与はされていない時点での状態を示している。
【0055】
それぞれの型枠20にシャワー水SWとして水を付与し続けている状態(
図4(a)の矢印A3)では、その水が型枠20内の内部の領域22にある程度貯留しつつ、網底12を通して流出する(
図4(a)のB4−B4端面図である
図4(b)の矢印A4)。シャワー水SWによる単位時間当たりの水付与量が、単位時間あたり網底12を通して流出する水の量と同等またはそれ以上であれば型枠20内には水がある程度貯留した状態し続けた状態で網底12を通した流出も行われ、シャワー水SWを停止すると、型枠20内に貯留している水が底網12から抜けて行き、最終的には、型枠20にシラスWBの集合だけが網底12上に残る。このような水付与にあたって、型枠20の高さを比較的高くしていることにより、原料としてのシラスWBは型枠20内の水層WL(
図7(b))内に留まったままであり、シラスWBが型枠20を乗り越えて型枠20の外部に流出することはない。
【0056】
このような水付与には、2つの機能がある。第1の機能は、型枠22内に水を付与することによりシラスWBを貯留した水中で攪拌、分散させて(
図7(b)参照)、水流を止めてシラスWBが沈殿した際にはその分布厚さが均等になるということである(
図8(a)参照)。したがって、従来のように熟練者がいなくても、均一な厚みのシート状となったシラスWBの集合を成形することができる。つまり、この第1の機能は、シラスWBの集合体を、型枠20の内部で均等な厚みの分布状態とする作用である。
【0057】
第2の機能は、シラスWBの水洗である。この水洗均等化工程では、
図7(b)に示すようにシラスWBは水層WL中にあり、かつシャワー水SWの水圧や、水層WL内における水の乱流で攪拌されるから、別工程で大量の貯留水を使用してシラスWBを水洗いしておかなくても、この水洗均等化工程で十分な水洗いを受けることができる。
【0058】
このような結果、熟練を必要とせずにタタミイワシの厚みを均等化させ、水の消費量も少なくなって、タタミイワシの生産効率を上げることができる。
【0059】
またシラスWBの均等化と水洗とに用いられた型枠20内の水は網底12を通って下方に流出することより、シラスWB前が型枠20内に留まったままで型枠20内からの排水が行われる。したがって、型枠20からの水の除去のための別工程を必要としない。
【0060】
<型枠除去工程>
各型枠20内のシラスWBの集合の水洗均等化工程が完了すると、シラスWBの集合を底網12上に残したままで、それぞれの型枠20が
図8(a)の矢印A5のように上方に引き上げられて取り除かれる(
図8(b))。それによって、シラスWBのそれぞれの集合は、型枠20に対応した形状、すなわち円形に成形されたシラスシートSTとなる(
図5)。底網12上から各型枠20を除去した後も、各シラスシートSTは型枠20が存在していたときの配列のままであり、それらの各シラスシートSTが、底網12の上に2次元的に千鳥配列した状態となっている。
【0061】
<乾燥工程>
このようにして得られた底網12上のシラスシートSTの配列は、その配列を崩すことなく、網トレイ10ごと乾燥工程に移行する。乾燥装置を使用する場合には、シラスシートSTの配列を載置したままの網トレイ10を乾燥装置に入れる。また自然乾燥をする場合にも、シラスシートSTの配列を載置したままの網トレイ10を天日干しまたは陰干しする。
【0062】
すると、各シラスシートSTを構成する各シラスWBは乾燥して相互結合し、模式的に
図6(c)に示すようなシート状の水産物集合体食品としての円形のタタミイワシSSとなる。それぞれのタタミイワシSSは、底網12上から取り上げられ、検査や包装などの後処理を経て出荷される。この乾燥工程は、各シラスWBの乾燥変性によって相互結合させて板状のタタミイワシSSとする工程であり、一般には均等化と水洗が完了して成形された原料の結合工程としての意義を有する。
【0063】
<<製造装置>>
図9は、上記の製造方法の実施に適したシート状水産物集合体食品の製造装置100の概念的側面図であり、
図10はその平面図である。この製造装置100は、複数の網トレイ10(図中では便宜上、1個のみが描かれている)を順次に水平搬送方向Xに搬送しつつ、既述した各工程を順次に実行するように構成されている。そのような水平搬送の目的で、コンベア101〜104が水平搬送方向Xに整列して配置されている。これらのコンベア101〜104は、ベルトコンベアでもよく、ローラーコンベアなどであってもよい。
【0064】
ただし、このうちのコンベア103については、網トレイ10の両側部だけを支持して中央部には窓が形成されるようなコンベアが好ましい。それは、コンベア103の下方には排水(
図4(b)中の矢印A4)を受ける水受部130Aが配置されており、この水受部130Aへスムースに排水を落下させるためである。この実施形態では、すべてのコンベア101〜104について、網トレイ10の両側帯を支持して搬送するコンベアを使用している。また、水産食品の製造現場の床は防水加工されているとともに、床から流れ出る水の排水口も整備されていることが通例であるため、水受部130Aを設けずに、
図4(b)中の矢印A4の排水をそのまま床に落としてもかまわない。
【0065】
また、この実施形態のようにコンベア101〜104を一体化せずに連鎖的な配列とすれば、各工程での処理時間に違いが生じても、次工程に存在する網トレイがさらに先の工程に移動するまで、前工程にある網トレイを待機させるような制御も可能となる。
【0066】
図9および
図10の駆動機構MTは、これらのコンベア101〜104を駆動するためのモータや伝動機構を含み、制御部CTによって制御される。制御部CTはこの駆動機構MTだけでなく、各処理部110〜140および、後述する移載機構150や乾燥部160をも制御する装置であって、たとえばコンピュータを用いた制御装置である。
【0067】
以下、各部の構成と動作について分説する。なお、各図におけるZ方向は鉛直上下方向であり、Y方向はX、Zの双方に直交する水平方向である。
【0068】
<型枠配置部>
型枠配置部110は、型枠配置工程(
図2参照)を実行するための機構であり、
図10のX方向から見た構成が
図11(a)に示されている。
【0069】
図10に示すコンベア101上の搬入位置(
図10では左端)に空の網トレイ10が載置されると、この網トレイ10はコンベア101によって型枠配置部110の下に搬送され、一時停止する。
図11(a)に示すように、型枠配置部110は、コンベア101の上方においてY方向に伸びるガイドレール111を備えており、このガイドレール111には走行体112が取り付けられている。走行体112にはモータが内蔵されており、それによって走行体112はY方向に沿ってガイドレール111上を往復走行することが可能である。そして、この走行体112には鉛直Z方向に昇降可能なコラム113が挿通されており、走行体112に内蔵された他のモータによってコラム113を昇降させることができる。
【0070】
走行体112の下端にはハンド保持体114が固定されており、このハンド保持体114は、Y方向(下向き)のハンド115の複数組を並列的に保持している。複数組のハンド115は同じ構造を有している。平面配置図である
図11(b)には各ハンド115を破線円形で模式的に示しており、平面視でXY方向の4列にわたって複数組のハンド115が2次元的に千鳥配列されている。このうち第1列目と3列目とにおいては5つのハンド115が、第2列目と4列目とにおいては4つのハンド115が、それぞれに等間隔で配置されている。これは、
図3(a)に示す枠体20の8列の千鳥配列のうちの半分(4列分)に相当する配列状態である。ここで、網トレイ10の底網12を覆うような枠体配列の全体(全千鳥配列)を想定したとき、その全千鳥配列を構成する繰返し単位となるような部分的な千鳥配列を「千鳥配列ブロック」と呼ぶことにする。したがって、
図11(b)のハンド115の配列はこの実施形態における「千鳥配列ブロック」に相当し、その繰返し(この例の場合は2回の繰返し)によって全千鳥配列を完成することができる。
【0071】
1組のハンド115の拡大模式図が
図11(c)に示されている。
図11(c)において、ハンド115は矩形配列された4本のフィンガー116を備えており、保持体114に内蔵された駆動機構によって、4本のフィンガー116が対角線方向(A5方向)に移動して、4本のフィンガー116の相互間隔が、図中の破線で示すように広がることができる。4本のフィンガー116は、実線で示す状態では、型枠20を把持する狭間隔状態にあり、破線で示す状態では、型枠20を解放する広間隔状態にある。
【0072】
図11(a)において、コンベア101の上方空間を避けた位置には、図示しない支持体によって置台116が固定支持されており、置台116の上には出し入れ自在な箱体117が載置されている。箱体117内には、多数の型枠20が水平垂直の各方向に配列されて積上げられている。
【0073】
コラム113を上昇位置にして走行体112が箱体117の上に移動すると、ハンド保持体114が箱体117の直上に位置した状態となる。そして、各ハンド115を構成する4本のフィンガー116の間隔を広げた広間隔状態としてハンド保持体114を下降させ、各組のフィンガー116を、その時点での最上部の型枠20の位置まで下降させる。
図11(c)の実線で示すように各組のフィンガー116を狭間隔状態とすると、各組のフィンガー116は各1個の型枠20の枠体21を把持する。
【0074】
この状態でコラム113を上昇位置に移行させ、走行体112をコンベア101の上方まで移動させる。そしてコラム113とともにハンド保持体114を下降させ、各組のフィンガー116が把持している型枠20が網トレイ10の底網12の高さ付近まで降りた時点で、各組のフィンガー116を広間隔状態とする。そして、各ハンド115とともに走行体112を上昇させる。
【0075】
以上の動作によって、箱体117の中に収容していた複数の型枠20の4列分が
図11(a)の網トレイ10の底網12上に2次元的に千鳥配列される。このような動作に対応して、箱体117内の型枠20の水平方向の配列も、千鳥配列ブロックに相当する4列の千鳥配列となっている。
【0076】
図2に示す型枠20の8列の配列のうち、4列分の部分配列が完成すると、コンベア101が網トレイ10の長さの約半分だけX方向に駆動され、それによって網トレイ10がその長さの約半分だけX方向に移動する。そして、上記の動作を繰り返すことによって、型枠20の新たな4列分(千鳥配列ブロック)が追加配置され、8列からなる型枠20の全千鳥配列が完成する。この状態となると、コンベア101が再駆動され、次段のコンベア102と協働して、当該網トレイ10が供給部120へ送り出される。
【0077】
図2(a)からわかるように、型枠20を千鳥配列させたとき、互いに隣接する型枠20の間の隙間は、型枠20に対応する円の中心から6方向に等角度で存在する。これに対応して、各ハンド115を構成するフィンガーを6本とし、各フィンガーを等角度で6方向に配置してもよいが、この実施形態のように4本のフィンガー116を矩形(より正確には対角線が120度および60度で交差するような矩形)で配置することによっても、型枠20の把持は可能である。さらに、120度ずつの等角度間隔で配置した3本のフィンガーを持つハンドを用いてもよい。
【0078】
<原料供給部>
図12は原料供給部120の構成を示す図である。原料供給部120は、シラスWBを貯留するシラスタンク121を内蔵しており、シラスタンク121の下には、一定量ごとにシラスタンク121内のシラスWBを下方に供給する複数の定量供給機構122が、平面視で千鳥配列ブロックをなすように配置されている。
【0079】
型枠20の全千鳥配列が完了した網トレイ10が原料供給部120の下方に搬送されてきて一時停止すると、各定量供給機構122からノズル123を介して所定量のシラスが
図12(b)のように下方に供給落下され、
図7(a)のように枠体21の内部領域に収容される。網トレイ10の全体で見ると
図3(a)のようになる。
【0080】
図3に示す型枠20の8列の配列のうち、4列分の型枠20についてシラスWBの供給が完了すると、
図12(a)のコンベア102が網トレイ10の長さの約半分だけX方向に駆動され、それにともなって網トレイ10もその長さの約半分だけX方向に移動する。そして、上記の動作を繰り返すことによって、型枠20の残りの4列分にもシラスWBが供給され、シラスWBを収容した型枠20の8列からなる全千鳥配列が完成する。この状態となると、コンベア102が再駆動され、次段のコンベア103と協働して、当該網トレイ10が水洗均等化部130へ送り出される。
【0081】
<水洗均等化部>
水洗均等化部130は、型枠20内に収容されたシラスWBの洗浄と、それらのシラスWBを均等な厚さに分布させる分散処理とを同時に行うような複合的な水洗均等化工程を実行するためのものである。
図13(a)において外部から連続的に水が供給される給水部131の底面には、シャワーノズル132が平面視で千鳥配列ブロックを形成するように設けられている。各シャワーノズル132は、
図13(b)に示すように、型枠20の内部の全体にシャワー水SWを供給し、それによって
図4および
図7(b)で説明したような、水中におけるシラスWBの浮遊拡散によるシラスWBの分布の均一化と、その水洗とが同時に達成される。シャワー水SWを停止した段階では、型枠20内のシラスWBが
図8(a)に示すような均等な分布状態になる。
【0082】
型枠配置部110および原料供給部120と同様に、この過程は網トレイ10上の千鳥配列ブロックごとに網トレイ10を間欠送りして、型枠20の全千鳥配列の前半と後半とに分けて実行され、最終的に、すべての型枠20内のシラスWBが
図8(a)のような均一分布の状態になる。
【0083】
型枠20内のシラスWBを洗浄した後の排水(
図4(b)中の矢印A4)は、
図9に示すバット状の水受部130Aで受けて、この水受部130Aの底部に設けた開口から所定の排水系に排水される。
【0084】
なお、この実施形態では型枠20ごとにシャワーノズル132を設けているが、網トレイ10の全体または半分を覆うような大きなシャワー面を持つシャワーノズルを使用してもよい。
【0085】
<型枠除去部>
型枠除去部140は、
図11に示した型枠配置部110と同様の構成を有しており、コンベア104上の網トレイ10上から型枠20を除去する動作を行う。すなわち、型枠配置部110の動作とは逆に、ハンド115は広間隔状態で網トレイ10上にアクセスし、狭間隔状態となって型枠20を把持して上昇する。そして、把持した型枠20を
図11の箱体117と同様の箱体(ただし、型枠除去部140では最初は空の箱体を使用する)に移載する。それぞれが円形にまとまったシラスWBの配列は、網トレイ10の網底12の上に残したままである。
【0086】
このような動作を繰り返すことにより、
図5に示すような円形のシラスシートSTの配列が、網トレイ10の網底12の上に得られる。
【0087】
ただし、このような型枠20の除去処理を省略し、型枠20を網トレイ10上に残したままで以後の乾燥工程に送ってもよい。以下では型枠20の除去を行った後に乾燥を行う場合について説明するが、この段階での型枠20の除去を省略する場合の処理については、変形例として後で改めて説明する。
【0088】
<移載機構および乾燥部>
図9および
図10に示す移載機構150は、たとえば
図14に示すように、鉛直コラム151に沿って上下駆動される昇降体152と、この昇降体152から連結部153を介して水平に伸びるアーム154とを備える。連結部153に内蔵されたモータなどによってアーム154は水平方向に伸縮可能であり、アーム154を伸展させてコンベア104(
図9)上から網トレイ10をすくい取った後、いったんアーム154を収縮させて
図14(a)の状態にしてから、網トレイ10を保持したアーム154は鉛直軸まわりのθ方向に180度旋回する。
【0089】
旋回後のアーム154は乾燥部160に対向している。
図14(b)に示すように、乾燥部160は複数の棚161を積層させており、各棚161に1つの網トレイ10を収容可能である。アーム154が再び伸展されて網トレイ10を矢印A5方向に移動させて、その時点で空となっている1つの棚に載置させると、アーム154は待避して逆旋回し、
図14(a)の状態に戻る。型枠除去工程を終えて順次に送られてくる複数の網トレイ10についてこれを繰り返すことにより、乾燥部160には定格数の網トレイ10が収容された状態となる。
【0090】
乾燥部160には、赤外線(熱線)や温風などを発生して、各網トレイ10上のシラスシートSTを乾燥させる熱源162を備えており、これによって、各網トレイ10上のシラスシートSTを乾燥させることができる。乾燥部160の内部でシラスシートSTから生じる水蒸気を排気する目的で、乾燥部160に排気ファンなどを取付けてもよい。
【0091】
この乾燥工程によって各網トレイ10上のシラスシートSTは、それらに含まれるシラスSWが自然結合し、
図6(c)で説明した円形のタタミイワシSSとなる。各網トレイ10は移載機構160または手作業で乾燥部160から引き出され、それぞれのタタミイワシSSを網トレイ10上から回収することによって、製品本体としてのタタミイワシSSが得られる。これらのタタミイワシSSは、所定の検査や包装を経て製品となる。
【0092】
ところで、タタミイワシSSが円形とされていることは、タタミイワシSSを使用した調理の便宜や、完成した料理での趣向の増進のほか、タタミイワシSSの出荷や配送の過程での破損防止にも有効である。すなわち、伝統的な矩形のタタミイワシの場合には、出荷や配送の過程でその角部が欠けることもあったが、円形のタタミイワシSSの場合には、角部の欠けのような破損が起こりにくいという利点もある。
【0093】
<<他の実施形態および変形例>>
(1) 上記実施形態では千鳥配列のうちの4列をブロックとして、各ブロックごとに同時処理を行っているが、一般に、各処理部110、120、130、140のそれぞれにおける処理を、網トレイ10上に千鳥配列された複数個の型枠20のうちの少なくとも1列分の型枠をブロックとして一括処理を行うようにすることによって、個々の型枠20を1個毎に順次に処理するよりも高効率となる。
(2) この発明は、トレイ10上に配列された複数の型枠20の全部を一括して処理する場合や、トレイ10として1個の型枠20に相当した小サイズのものを使用し、各トレイに1個の型枠20だけを配置するような場合も含んでいる。
【0094】
(3)
図15(a)は、この発明の他の実施形態として、首振り機構を使用してシャワー水の供給を行う例を示す。すなわち、
図13(b)の場合には、シャワーノズル132の向きが下向きに固定されているが、
図15(a)のシャワーノズル132Aは揺動旋回(ローリング)が可能となっている。ここにおける「揺動旋回」とは、正面視では揺動(首振り)を行い、平面視では旋回するような、立体振子状の動作のことを言う。
【0095】
具体的には、水道管などから水が供給される上部給水管135と、鉛直軸まわりに回転自在の下部給水管137とが、連結部136を介して連結されており、図示しないモータなどによって、下部給水管137を鉛直軸まわりに矢印P1で示すように回転させつつ、上部給水管135から連結部136と下部給水管137とを介してシャワーノズル132Aに給水を行う。シャワーノズル132Aは下部給水管137に傾斜して固定されており、下部給水管137の回転に伴ってシャワーノズル132Aは揺動旋回する。これによって、型枠20の枠体21の中心部から周辺方向に向かうような斜め方向の水流成分が生じ、その水流成分の方向は周期的に旋回する。このため、枠体21に不均一にシラスWBが供給された場合でも、旋回する水勢によってそれらのシラスWBを水中で分散させて、枠体21の内部におけるシラスWBの分布を均一化できる。特にこのようなローリングを行わせると、
図13よりも水平方向の水勢成分が大きくなるため、シラスWBの分布の均一化の能力が高い。この均一化作用を持つ水によってシラスWBの水洗が同時に行われる点は、
図13の実施形態と同様である。
【0096】
なお、水中でのシラスWBの均等化の処理は、
図13(b)のようなシャワーノズル132単体を使用してシャワー水SWの水勢による分散作用を利用しつつ、手作業を併用して行ってもよい。
【0097】
図15(b)はさらに他の実施形態として、型枠20内への原料(シラスWB)の供給工程と、その水洗均等化工程とを同時に実現する装置例を示している。この装置では、
図9および
図10における原料供給部120と水洗均等化部130とが一体化されて、原料供給/水洗均等化部120Bとされており、
図12(a)のシラスタンク121に相当する要素として混合タンク121Bが存在する。この混合タンク121B内においては、シラスWBと水WTとが混合された状態となっている。このときの水WTの量は、シラスWBが滑らかに流動できる程度以上の量である。そして、定量供給機構122Bによって、型枠20ごとに、そのような混合物の所定量を型枠20内に落下させて供給する。
【0098】
型枠20内にこの混合物が落下した直後には、部分Qの拡大として図中の左側に示すように、それに含まれる水WTの落下の水勢によって型枠20内の水が一時的に乱流となり、その流れによってシラスWBが分散して型枠20内に均等に分布する。また、この水によってシラスWBの洗浄も行われる。この水は、その後に底網から落下してゆくことによって、
図15と同様のシラスシートSTを得ることができる。
【0099】
製造方法として見たときには、この実施形態では、原料供給工程と水洗均等化工程とが、シラスWBと水WTとを混合状態で型枠20内に供給する原料供給/水洗均等化工程として一括化されていることになる。
【0100】
(4)
図16(a)は、原料供給部と水洗均等化部とを一体化した場合に、シラスWBおよび水を型枠20内に供給する際に使用することができる接触型ノズル122Cの断面を示す。この接触型ノズル122Cは、下方に開口しており、当該ノズル開口を囲むように、ノズル本体122Pの下端部122Qには、硬質スポンジなどで構成された弾性リング122Rが固定されている。
【0101】
図16(a)に示す状態から
図16(b)に示す状態にまで接触型ノズル122Cを降下させると、弾性リング122Rが型枠20の上部に密着して弾性的に圧縮し、接触型ノズル122Cの内部空間と型枠20の内部空間とが連通する。この
図16(b)の状態で、シラスWBや水WTをノズル本体122Pから型枠20内に供給することによって、
図16(c)のような状態となる。この供給工程での水勢によって、水WT中にシラスWBが均一に分散し、水WTによるシラスWBの水洗も行われる。水WTは、時間の経過とともに網底12を介して下方に落下する(矢印A6)。これらにおいて、弾性リング122Rは、いわゆるパッキンあるいはシールとしての機能を果たしている。
【0102】
このような接触型ノズル122Cを用いた態様は、シラスWBと水WTとを混合してから型枠20内に供給する場合だけでなく、シラスWBを先に型枠20内に供給した後に水WTを供給するような場合にも適用できる。いずれにおいても、型枠20の側壁を越えて水があふれ出ることがないため、水の利用効率も高い。
【0103】
なお、これら
図15および
図16の各態様における上記以外の装置構成や動作は、既述した実施形態の装置100と同様である。
【0104】
(5) 上記の実施形態では、水平の搬送経路に沿って配置された搬送機構によって網トレイ10を自動搬送しているが、そのような搬送の一部または全部を手作業での搬送としてもよい。
【0105】
(6) また、シラスシートSTの乾燥は、手作業による天日干しであってもかまわない。したがって、この場合には乾燥部160を省略可能であり、移載機構150も省略できる。
【0106】
また、既述したように乾燥前の型枠除去工程を省略することもできるが、この場合には、均等化されたシラスシートSTが型枠20の中に入ったままで乾燥され、シラスシートSTの乾燥後に型枠を除去することになる。多数の型枠が準備されている場合には、型枠20を早期に回収して次の組のシラスの処理のために使いまわさなくてもよいため、乾燥が完了するまで多数の型枠20を使用し続けることが可能であり、このような変形例を適用しやすい。これにより、生シラスを扱う一連の過程での工程が減少する。
【0107】
一般に、この発明の実施形態として示した装置の各要素すなわち、型枠載置部、原料供給部、水洗均等化部、型枠除去部、移載機構、乾燥部などの各要素の機能の一部または全部を手作業に置換して行うことが可能であり、全自動化は必須ではない。
【0108】
(7) さらに、シラスシートSTの水分を蒸発させる乾燥処理によってシラスを相互に固着させるだけでなく、シラスシートSTをヒートプレス機構によって熱加圧(加熱した金属面などをシラスシートSTに当接させて加圧する処理)を行うことにより、シラスの集合を熱と圧力で相互結合させたタタミイワシを得ることもできる。このような熱加圧による相互結合も、上記の実施形態のような乾燥による相互結合も、シラスの材質(タンパク質など)を変性させて、水産個体の集合を相互に結合した状態とする処理としては共通の概念に属する。
【0109】
上記のような、事前の型枠除去を行わないような変形例をも含めると、乾燥や熱加圧を行う工程は、「通水性の保持面上で型枠に対応した形状となった原料の集合体を乾燥または熱加圧によって変性させて相互結合させることにより、その原料をシート状の水産物集合体食品とする結合工程」と表現することができる。
【0110】
(8) さらにこの発明は、円形のタタミイワシSSに限らず、矩形や六角形など種々の形状にタタミイワシSSを成形する場合にも適用可能である。また、生シラスではなく、いったん茹でたシラスを使用してもよい。
【0111】
(9) この発明は、タタミイワシに限らず、他の種類の稚魚、小型魚、魚介類の内臓やヒレなどの部分組織、粉砕した水産物、魚卵、小エビ、沖アミ、海草などの海産物個体の集合を乾燥や熱加圧によって相互結合させたシート状とする集合体食品の製造にも適用可能である。