(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の実施形態を詳細に説明するのに先立ち、本開示はその用途において以下の説明文に記載される構成の細部及び要素の配列に限定されない点は理解されるべきである。本発明には他の実施形態が可能であり、本発明は様々な方法で実施又は実行することが可能である。また、本明細書で使用する語法及び専門用語は、説明を目的としたものであり、発明を限定するものとして見なされるべきでない点は理解されるべきである。「からなる(consisting)」の使用と異なり、「含む(including)」、「含有する(containing)」、「備える(comprising)」、又は「有する(having)」及びその変化形の使用は、これらの語の後に列記される要素以外に更なる要素を包含することを意味するものである。いずれの場合にも、等価物が包含されることを意味する。「a」又は「an」の使用は、「1つ以上」を包含することを意味する。本明細書に列挙される任意の数字範囲は、その範囲の下方の値から上方の値までのすべての値を包含することを意図する。例えば、1%〜50%の濃度範囲は略記であり、例えば、2%、40%、10%、30%、1.5%、3.9%などの1%〜50%の値を明確に開示するものとする。
【0017】
用語「固体」又は「液体」は、周囲条件(20℃、1bar(100KPa))に対する言及である。
【0018】
本明細書に記載のリン酸エステル又はそれらの塩は、基材を硬化性エポキシ系組成物により結合させるための硬化促進剤として作用し得ることが判明している。リン酸エステルを硬化促進剤として使用することにより、接着剤組成物を基材に直接適用することで良好な結合強度が得られる。したがって、良好な結合強度を得るためにプライマーを使用する必要がない。
【0019】
本明細書で参照されるような基材間の良好な結合強度は、典型的には、少なくとも9、好ましくは少なくとも10MPaの剪断強度を意味する。好ましい結合強度としては、剪断強度が、鋼鉄基材に関しては少なくとも10、又は少なくとも15、又は少なくとも17MPaであり、アルミニウム基材に関しては少なくとも10、又は少なくとも15、又は少なくとも20、又は少なくとも25MPaであることが挙げられる。複合材料に関し、良好な結合強度としては、剪断強度が少なくとも8MPaであることが挙げられる。
【0020】
例えば、剥離強度が80N/25mm超、好ましくは100N/25mm超であるなどの、良好な接着強度を有する、基材間接着結合が得られ得る。
【0021】
更に凝集破壊(又は基材が複合物である場合には基材破壊)を特徴とする接着結合を生成することができる。
【0022】
本明細書で提供される硬化性組成物は、硬化性エポキシ樹脂を少なくとも1つ、アミン硬化剤を少なくとも1つ、ポリマー性強化剤(polymeric toughening)を1つ以上、充填剤を1つ以上、及びリン酸エステルを少なくとも1つ又はそれらの塩を含む。それらの組成物の調製及び適用は、以下により詳細に記載されることになる。
【0023】
基材:
本発明で提供される組成物は、プライマーを用いずとも基材間に強力な結合を生成することができる。基材としては金属及び樹脂が挙げられる。好ましい金属は、アルミニウム及び鋼鉄であり、並びにこれらの合金が包含される。好ましい樹脂はフェノール樹脂(即ち、フェノールとホルムアルデヒドを反応させることで誘導された繰り返し単位を含有するポリマー)であり、樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリレート、又はポリオキシメチレン又はこれらの混合物を含み、又はこれらからなる。典型的には、樹脂は複合材料であり、樹脂及び樹脂に埋め込まれた繊維、典型的には、ガラス繊維、炭素繊維又はこれらの組み合わせを含有する。他の好適な樹脂はエポキシ樹脂(即ち、エポキシ基を含有しているモノマー又は成分を架橋反応させることで誘導される繰り返し単位を含有している樹脂)である。
【0024】
良好な結合が、同じ基材間(例えば、アルミニウム−アルミニウム基材)だけでなく、異なる基材間(例えば、アルミニウムと鋼鉄、又はアルミニウムと樹脂、又は鋼鉄と樹脂)でも達成され得る。
【0025】
リン酸エステル
好適なリン酸エステルは、式(I)により表されるもの、及びそれらの塩である:
【0027】
式(I)中、Rは、カルボン酸エステル単位を1つ以上及び/又はウレタン単位を1つ以上含有しかつ更にはエーテル基を少なくとも1つ含有する脂肪族又は芳香族残基を表わす。式(I)中、nは1又は2の整数を表わす。一実施形態では、Rは、カルボン酸エステル基を少なくとも1つ及び/又はウレタン基を少なくとも1つ含有する、オキシアルキル化、好ましくはエトキシル化モノアルコールを表わす。式(I)の化合物の混合物(式中、R基が同一であっても又は異なっていてもよい)も想到される。
【0028】
R基は、典型的には、200〜1,0000、好ましくは300〜5,000、最も好ましくは400〜2,000g/モルの分子量を有する。
【0029】
リン酸エステルは、典型的には、50〜150mgのKOH/g、好ましくは、75〜130mgのKOH/gの酸価を有する。
【0030】
式(I)のリン酸エステル、及びそれらの合成法は、例えば、米国特許第5,130,463号に記載されている。これらは、リン酸化合物を式R−OHに相当する(式中、Rは上記の通りのものである)1〜2当量のモノヒドロキシ化合物と反応させることにより調製できる。
【0031】
リン酸化合物の例としては、オキシ塩化リン、五酸化リン、リン酸、ポリリン酸及びアセチルリン酸が挙げられる。
【0032】
有機又は無機塩基を用い、残りの酸基を介しリン酸エステル塩を形成することができる。好適な有機塩基の例としては、一級、二級及び三級アミン及びアミノアルコールが挙げられる。好適な無機塩基の例としては、NH
3、NaOH、KOH、LiOH、Mg(OH)
2及びCa(OH)
2が挙げられる。
【0033】
モノヒドロキシ化合物ROHは、エーテル酸素原子(−O−)を少なくとも1つ及びカルボン酸エステル基(−COO−)を少なくとも1つ、及び/又はウレタン基(−NHCOO−)を含有する。
【0034】
これらの化合物は、ヒドロキシル末端化ポリエーテル−ポリエステル、ポリエーテル−ポリウレタン又はポリエーテル−ポリエステル−ポリウレタンであり、及びそれぞれの基はブロック状に、又はランダムに配置されてよい。
【0035】
好適なポリエーテル−ポリエステル基としては、約100〜5,000の範囲の分子量(Mn)を有するモノヒドロキシポリエーテルを用い、ラクトン、例えばカプロラクトンを重合させることで得られるものが挙げられる。
【0036】
更なる好適なポリエーテル−ポリエステル基としては、上記モノヒドロキシポリエーテルの存在下でグリコール及び二塩基酸を縮合させることで得られるものが挙げられる。
【0037】
更なる好適なポリエーテル−ポリエステル基としては、上記のように、モノヒドロキシポリエーテルの存在下で、ヒドロキシカルボン酸を縮合させることで得られるものが挙げられる。
【0038】
好適なポリエーテル−ポリウレタン基及び/又はポリエーテル−ポリエステル−ポリウレタン基としては、上記のモノヒドロキシポリエーテルの存在下で、ジイソシアネートをジヒドロキシ化合物に付加することにより得られるものが挙げられる。これらのウレタン基含有化合物を生成するにあたり好適なジヒドロキシ化合物としては、ジオール、有利には炭素原子を2〜12個有するジオール、ポリオキシアルキレングリコール及び/又はジヒドロキシ官能性ポリエステル、好ましくはほぼ分子量2,000のもの、が挙げられる。
【0039】
有用なジイソシアネートとしては、炭素原子を4〜15個有する脂肪族、脂環式及び/又は芳香族ジイソシアネート、例えば、テトラメチレン−、ヘキサメチレン−、トリメチルヘキサメチレン−、ドデカメチレン−、イソホロン−、トルエン−及びジフェニルメタンジイソシアネート、メチレン−ビス(−4−シクロヘキシルジイソシアネート)、又は1,4−シクロヘキサン−ビス−(メチルイソチオシアネート)が挙げられる。
【0040】
本発明の組成物に有用なリン酸エステルは市販品であり、例えば、BYK Chemie(ドイツ)から市販のBYK−W 9010及びBYK−W 996が挙げられる。
【0041】
リン酸エステルは、典型的には、硬化性エポキシ組成物100部に基づき0.1〜1重量部、好ましくは0.15〜0.5重量部の量で使用される。
【0042】
リン酸エステルは、好ましくは100%固体材料として使用されるが、液体中分散体として、又は溶液として使用することもできる。好適な液体又は溶媒としては、例えば、限定するものではないが、2−メトキシ−1−メチルエチルアセテート及び石油が挙げられる。好ましいリン酸エステルは、溶媒を用いずに使用されるものである。
【0043】
エポキシ樹脂:
硬化性エポキシ樹脂は、エポキシ官能基を1つ以上有するポリマーである。これらは、エポキシ官能基を開環反応させることで重合させることができ、又は架橋することができる。制限するものではないが、典型的には、ポリマーは、エポキシ官能基を有するモノマー由来の繰り返し単位を含むが、エポキシ樹脂はまた、例えば、エポキシ基を含有するシリコーン系ポリマー、エポキシ基でコーティングされているか修飾されている有機ポリマー粒子、又はエポキシ基含有ポリマーでコーティングされているか当該ポリマーに分散されているか若しくは当該ポリマーで修飾された粒子、を含む場合がある。エポキシ樹脂は、少なくとも1、1超、又は少なくとも2つの平均エポキシ官能基を有し得る。
【0044】
硬化性エポキシ樹脂は、芳香族、脂肪族、脂環式又はこれらの混合物であり得る。好ましくは、エポキシ樹脂は、グリシジル又はポリグリシジルエーテル型の部分を含有する。かかる部分は、例えば、ヒドロキシル官能基(例えば、二価若しくは多価フェノール、又はポリオールを含む脂肪族アルコールであるが、これらに限定されない)とエピクロロヒドリン官能基との反応により得ることができる。本明細書において言及するとき、二価フェノールは、芳香環に結合している少なくとも2つのヒドロキシ基(「芳香族」ヒドロキシ基とも呼ばれる)を含有するフェノール、又は少なくとも2つのヒドロキシ基が芳香環に結合している場合のフェノールである。これは、ヒドロキシル基が、ポリフェノールの同じ環に、又は各ポリフェノールの異なる環に結合できることを意味する。したがって、用語「二価フェノール」は、2つの「芳香族」ヒドロキシ基を含有するフェノール又はポリフェノールに限定されるものではなく、多価フェノール、即ち、2つ超の「芳香族」ヒドロキシ基を含有する化合物も包含する。有用な二価フェノールの例としては、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、及びp,p’−ジヒドロキシジベンジル、p,p’−ジヒドロキシフェニルスルホン、p,p’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシフェニルスルホン、p,p’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−1,1−ジナフチルメタン、並びにジヒドロキシジフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルエチルメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルメチルプロピルメタン、ジヒドロキシジフェニルエチルフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニル−プロピレンフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルブチルフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニル−トリルエタン、ジヒドロキシジフェニルトリルメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルジシクロヘキシルメタン、及びジヒドロキシジフェニルシクロヘキサンの2,2’、2,3’、2,4’、3,3’、3,4’、及び4,4’異性体を包含するポリフェノールが挙げられる。
【0045】
好ましいエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない、二価又は多価フェノールのグリシジルエーテル又はポリグリシジルエーテルを含有するか、又はこれらからなるエポキシ樹脂が挙げられる。上記芳香族エポキシ樹脂を用いることに代えて、又はそれに加えて、それらの完全に又は部分的に水素化されている誘導体(即ち、対応する脂環式化合物)を用いてもよい。
【0046】
好ましくは、エポキシ樹脂は、室温で液体であるが、固体のエポキシ樹脂、又は樹脂粒子を用いてもよく、例えば、別の液状樹脂に溶解又は分散した、溶解形態で用いてもよい。
【0047】
市販のエポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(例えば、Hexion Speciality Chemicals GmbH(Rosbach,Germany)から商品名EPON 828,EPON 830又はEPON 1001で入手可能、又はDow Chemical Coから商品名D.E.R−331又はD.E.R−332で入手可能);ビスフェノールFのジグリシジルエーテル(例えば、Dainippon Ink and Chemicals,Inc.から入手可能なEPICLON 830、又はDow Chemical Co(Schwalbach/Ts.,Germany)のD.E.R.−354);ジグリシジルエポキシ官能基を含有しているシリコーン樹脂;難燃性エポキシ樹脂(例えば、DER 580,Dow Chemical Co.から入手可能な、臭素処理したビスフェノール型エポキシ樹脂)が挙げられ、他のビスフェノール系エポキシ樹脂は、商品名EPIKOTE(Hexion Speciality Chemicals(Rosbach,Germany))、D.E.N.(Dow Chemical Co(Schwalbach/Ts.,Germany))、又はEPILOX(Leuna Epilox GmbH(Leuna,Germany))で市販されている。
【0048】
強化剤:
強化剤は、上記エポキシ樹脂以外の、硬化したエポキシ樹脂の強靭性を高めることのできるポリマーである。強靱性は、例えば、本明細書で提供される実施例の項に記載されるように、DIN 2243−2に従う硬化させた組成物のフローティングローラー剥離試験により測定することができる。典型的な強化剤としては、コア/シェルポリマー及び液状ゴムが挙げられる。
【0049】
特に好適な強化剤としては、コア/シェルポリマーが挙げられる。コアシェルポリマーは、コアと呼ばれる内部とシェルと呼ばれる外部とを含有する構造を有する。コアシェルポリマーのコアは、典型的には、エラストマーである。典型的には、低ガラス転移温度(Tg)(例えば、約−30℃未満、又は好ましくは約−50℃未満のTg)を有する。コア及びシェルは、同じ又は異なるポリマーから調製することができる。
【0050】
コアシェルポリマーのコアは、ジエンのポリマー若しくはコポリマーを含んでも又はこれらからなってもよい。即ち、ホモポリマー又はコポリマーは2つの不飽和を有するオレフィン由来の繰り返し単位を含み得る。かかるオレフィンの例としては、ブタジエン及びイソブタジエンが挙げられるが、これらに限定されない。コアシェルポリマーのコアは、低級アルキルアクリレート(例えば、最高20個の炭素原子を含有するアルキルアクリレート)由来の繰り返し単位を含むホモポリマー又はコポリマーも含み得る。このようなアルキルアクリレートの例としては、n−ブチル−、エチル−、イソブチル−、又は2−エチルへキシルアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。コアシェルポリマーのコアは、シリコーン樹脂又はそのコポリマーも含み得る。コアシェルポリマーのコアは、前述のモノマーの1種以上とスチレン又はスチレン誘導体とのコポリマーも含み得る。かかるコポリマーの例としては、ブタジエン−スチレンコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
コアシェルポリマーのシェルは、コアのポリマー、及び1つ以上の更なるコポリマーを含み得る。典型的なコポリマーとしては、不飽和オレフィン(例えば、限定するものではないが、エチレン、スチレン及びこれらに類するものなどのモノ不飽和オレフィン)、オレフィンエステル(例えば、限定するものではないが、酢酸ビニル及びこれに類するもの)、オレフィン酸(例えば、限定するものではないが、アクリレート、メタクリレート)、又はオレフィン系ハロゲン(例えば、限定するものではないが、塩化ビニル)に由来する繰り返し単位を含有しているポリマーが挙げられる。
【0052】
シェルは、また、コアのポリマーを含有しなくてもよいが、不飽和オレフィン(例えば、限定するものではないが、エチレン、スチレン及びこれらに類するものなどのモノ不飽和オレフィン)、オレフィンエステル(例えば、限定するものではないが、酢酸ビニル)、オレフィン酸(例えば、限定するものではないが、アクリレート、メタクリレート)、又はオレフィン性ハロゲン(例えば、限定するものではないが、塩化ビニル)に由来する繰り返し単位を含むポリマー又はコポリマーを含有する。コアシェルポリマーは、エポキシ樹脂又は硬化剤と反応できる反応基を有してもよく、有しなくてもよい。反応基は、例えば、モノマーとしてグリシジルメタクリレートを用いることによりシェルに導入することができるグリシジルエーテル基等のエポキシ基を含み得る。本発明の実施形態では、コアシェルポリマーは、エポキシ基及び/又はアミン基などの、製剤に含まれるエポキシ樹脂又は硬化剤と反応できる反応基を含有しない。
【0053】
コアシェルポリマーは、例えば、特定の粒径が生じるまでモノマーを重合させることにより調製することができる。次いで、例えば、シェルがその粒子の周りで重合するように、モノマー供給を交換することにより、重合を変更させる。
【0054】
あるいは、シェルは、コアにグラフトするか又は架橋反応により導入することができる。コアシェルポリマーを作製する方法の例は、例えば、米国特許第5,186,993号(Hallden−Alberton and Wills)、及び米国特許第4,315,085号(Ozari and Barabas)、又は欧州特許出願第1,632,533号(Katsumi and Masakuni)に見出すことができ、これらは全て参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0055】
コアシェルポリマーは、固体であり得る。コアシェルポリマーは、微粒子物質であり得る。コアシェルポリマーは、約20nm〜約4,000nm、又は約50nm〜約500nmの平均粒径(数平均)を有し得る。粒径は、電子顕微鏡により測定することができる。
【0056】
コアシェルポリマーは、複数のガラス転移温度を有し得る(コア及びシェル材料は、化学的に異なってもよい)。本発明で提供される組成物は、好ましくは、約−30℃未満、又は約−50℃未満の少なくとも1つのガラス転移温度(Tg)を有する少なくとも1つのコアシェルポリマーを含有し、更により好ましくはコアシェルポリマーは約−50℃未満又は更には約−70℃未満の少なくとも1つのTgを有する。
【0057】
コア/シェル型ポリマーは、総組成物の約10重量%〜約50重量%、好ましくは約10重量%〜約30重量%の量で使用してもよい。
【0058】
コアシェルポリマーは、例えば、商標表記GENIOPERL(Wacker Chemie,Munich,Germany製のシリコーン系コアシェルポリマー)、ALBIDUR(Nanoresins,Geesthacht,Germany製のシリコーン系コアシェルポリマー)、PARALOID EXL(Rohm and Haas,Philadelphia,PA,USA製のメタクリレート−ブタジエン−スチレンコアシェルポリマー)、又はKANE ACE MX(Kaneka,Brussels,Belgium製)で市販されている。市販のコアシェルポリマーの大部分は、ある程度の量のエポキシ樹脂に分散しており、エポキシ当量は供給元により示されている。このエポキシ樹脂の導入量は、組成物を作製するとき、及びエポキシ:ハードナー(硬化剤)比を調整するときに考慮しなければならない。
【0059】
組成物は、コアシェルポリマーに加えて、あるいはコアシェルポリマーの代わりに、他の強化剤も含有してよい。このような強化剤としては、液状ゴムが挙げられる。典型例としては、ブタジエン又はイソブタジエンから誘導された繰り返し単位を含有しているホモ又はコポリマーが挙げられる。液状ゴムとしては、例えば、アクリレート及び/又はアクリロニトリルとのブタジエン又はイソブタジエンコポリマーが挙げられる。具体例としては、液状のブタジエンアクリロニトリルゴム(ATBN)が挙げられる。このような液状ゴムは、例えば、アミン終端ゴム(ATBN)若しくはカルボキシレート終端ゴム(CTBN)、又は遊離エポキシ基若しくはメタクリレート末端基を含有する液状ゴムなどの、反応性末端基を含有してもしなくてもよい。ゴムは、ポリマーがエラストマーであることを意味する。液状ブタジエンゴムの添加は、硬化した接着剤の高温、特に90℃、120℃、又は更には135℃の温度における機械的強度を改善すると考えられる。液状ブタジエンゴムは、例えば商品名HYCARでLubrizol Advanced Materialsから、又はHYPROでNanoresins AG(Geeshacht、Germany)から市販されている。
【0060】
アミン硬化剤:
本明細書で提供される硬化性組成物は、アミン硬化剤を1種以上含む。
【0061】
本明細書で参照される硬化剤は、エポキシ樹脂を架橋することのできる化合物である。典型的には、これらの剤は一級又は二級アミンであるが、一級アミンが好ましい。アミンは、1つ以上のアミノ部分を有する脂肪族、脂環式、又は芳香族構造体であってもよい。
【0062】
本発明に有用な硬化剤の例としては、一般式(II)
【0064】
(式中、
残基R
1、R
2、及びR
4は、互いに独立して、水素、又は約1〜15個の炭素原子を含有する炭化水素(アルキルなど)、又はアルコキシ、又はポリオキシアルキル残基を表すことができ、R
3は、好ましくは、約1〜15個の炭素原子を含有する炭化水素、アルキルエーテル、又はポリエーテルアルキル残基を表し、より好ましくは、R
3は、ポリエーテルアルキル残基であり、好ましくは、残基R
1、R
2、及びR
4は、アミンが少なくとも1又は2個の一級アミン基を含有するように選択される。
【0065】
nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は1〜10の整数である)を有するアミンが挙げられる。
【0066】
R
3がアルキルである好適な硬化剤の例としては、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタメチレン−ジアミン及びこれらに類するものが挙げられる。
【0067】
硬化剤は、アミン基を1つ又は2つ又はそれ以上有するポリエーテルアミンであり得る。ポリエーテルアミンは、1、2、3、4、5、若しくは6個、又は1〜12個、又は1〜6個のカテナリーエーテル酸素原子を有し得る。好適なポリエーテルアミンとしては、ポリプロピレンオキシド又はポリエチレンオキシドから誘導され得るものが挙げられる。好適なポリエーテルアミンは、Huntsman Chemicalsから商標表記JEFFAMINEで市販されているもの、又は例えばBASF,Ludwigshafen Germanyから市販されているTTD(4,7,10−トリオキサトリデカン−1,13−ジアミン)である。
【0068】
好ましい硬化剤の部類としては、ポリアミドアミンが挙げられる。ポリアミドアミンは、商標表記ANCAMIDEでAir Products and Chemicalsから市販されている。
【0069】
組成物は、組成物の総重量に基づき、約3重量%〜約30重量%、好ましくは約7重量%〜約15重量%の硬化剤を含有してもよい。
【0070】
エポキシド部分とアミン硬化剤とのモル比は、所定の実験を通じて、最適性能が得られるように調整することができる。例えば、この比は、約5:1〜約1:5、又は約1:1〜約1:3であってもよい。
【0071】
充填剤:
組成物は更に充填剤を1種以上含んでもよい。好ましくは、組成物は、組成物の密度を減少させることのできる充填剤材料を含有する。本明細書で使用するとき、「組成物の密度を低減させることができる」は、充填剤を含む組成物の密度が、充填剤を含まない組成物よりも低くなることを意味する。典型的には、本組成物は、このような充填剤材料を15〜60重量パーセント含み得る。硬化性組成物の密度を減少させる事のできる充填剤としては、低密度無機充填剤(即ち、0.1〜0.5g/cm
3の密度を有する無機充填剤)及び低密度有機充填剤(即ち、0.01〜0.30g/cm
3の密度を有する有機充填剤)が挙げられる。低密度無機充填剤が好ましい。有機充填剤と無機充填剤の組み合わせを使用してもよいが、無機低密度充填剤は、好ましくは、有機充填剤よりも過剰に使用される。
【0072】
低密度無機充填剤は、好ましくは、無機粒子、無機微小球、及び特に中空無機粒子又は微小球から選択される。粒子、及び特に微小球は、例としてガラス、シリカ、セラミック(ゾル−ゲル誘導物を包含する)、ジルコニア又はこれらの組み合わせを含む材料が挙げられる様々な材料から選択することができる。
【0073】
充填剤は、好ましくは、これらがその圧縮強度を犠牲にすることなく硬化済み組成物の有利な密度を可能にするように選択される。好ましくは、充填剤は0.5g/cm
3未満の密度を呈し、より好ましくは0.12〜0.42g/cm
3の密度を呈する。充填剤は平均的な粒径を有することができ、典型的には、500μm未満、又は10〜100μmの粒径に相当するメッシュサイズを有する。
【0074】
好ましい中空無機微小球としては、例えば、3M Companyから商品名Glass bubbles D32又はScotchlite D32/4500で市販されているガラス微小球が挙げられる。
【0075】
硬化性組成物に使用される充填剤の濃度及び性質は、好ましくは、硬化済み組成物の密度が1g/cm
3未満、より好ましくは0.9g/cm
3未満、最も好ましくは0.5〜0.8g/cm
3であるように選択される。
【0076】
一部の実施形態では、接着剤組成物は低粘度を有する。好ましい硬化性組成物は、0.5〜1.0g/cm
3未満の密度を有する。好ましくは、組成物は、硬化後に約0.5〜約1.0g/cm
3未満の密度も有し得る。
【0077】
他の成分
組成物は、反応性希釈剤、チキソトロープ剤、顔料、難燃剤、抗酸化物質、二次硬化剤、触媒及びこれらに類するものなどの補助剤を更に含み得る。
【0078】
反応性希釈剤及びチキソトロープ剤は、接着剤組成物の流動特性を制御するために添加してもよい。
【0079】
チキソトロープ剤:
チキソトロープ剤は、組成物が水のような稠度又は粘度を有することを防ぐために、組成物に添加することができる。チキソトロープ剤は、典型的には、50nm未満の粒径を有する微粒子物質である。好ましいチキソトロープ剤としては、ヒュームドシリカが挙げられる。チキソトロープ剤は、Cabot(Schwalbach im Taunus,Germany)から商標表記Cab−O−Silで、又はDegussa Evonik GmbH(Frankfurt,Germany)から商標表記Aerosilで市販されている。典型的には、チキソトロープ剤は、硬化性組成物の総重量に基づき最大5重量%又は最大10重量%存在し得る。
【0080】
反応性希釈剤:
反応性希釈剤は、エポキシ含有モノマー分子である。好ましくは、反応性希釈剤は、飽和又は不飽和の環状骨格を有する。好ましい反応性末端エーテル部分としては、グリシジルエーテルが含まれる。好適な希釈剤の例としては、レゾルシノールのジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテルが挙げられる。市販の反応性希釈剤は、例えば、Hexion製「Reactive Diluent 107」、又はAir Products and Chemical Inc,Allentown,PA,USA製「Epodil 757」である。
【0081】
反応性希釈剤は、硬化性組成物総重量に基づき、最大15重量%の量で添加することができる。
【0082】
二次硬化剤:
いくつかの実施形態では、組成物は更に二次硬化剤を含んでもよい。本発明にかかる二次硬化剤としては、イミダゾール、イミダゾール塩、イミダゾリン、又は式(III)の構造を有するものを含む芳香族三級アミンが挙げられる。
【0084】
式中、
R
1は、H又は例えばメチル若しくはエチルなどのアルキル、好ましくはメチルであり;
R
2はCHNR
5R
6であり、
R
3及びR
4は、互いに独立して、存在しても、存在しなくてもよく、存在する場合には、R
3及びR
4はCHNR
5R
6であり;
R
5及びR
6は、それぞれ互いに独立してアルキルであり、好ましくはCH
3又はCH
2CH
3である。
【0085】
二次硬化剤の例は、Air Products Chemicals Europe B.V.から、ANCAMINE K54として市販されているトリス−2,4,6−(ジメチルアミノメチル)フェノールである。
【0086】
難燃剤系:
本発明で提供される組成物は、(1)アルカリ土類金属水酸化物及びアルミニウム基水酸化物を含む群から選択される化合物を少なくとも1つ、及び(2)リン含有材料を少なくとも1つ、の混合物を含む難燃系を更に含んでもよい。組成物は、典型的には、総組成物の2〜50重量パーセント、好ましくは10〜50重量パーセントで、上記(1)及び(2)の難燃系を含む。
【0087】
アルカリ土類金属水酸化物及びアルミニウム基水酸化物を含む群(1)の化合物は、多くの場合、煙抑制剤と呼ばれる。特に好ましい化合物としては、アルミニウム三水和物(=酸化アルミニウム三水和物、場合によってはアルミニウム水酸化物とも呼ばれる)及び水酸化マグネシウムが挙げられる。市販のアルミニウム三水和物としては、Almatisから市販のSPACE RITEが挙げられる。
【0088】
リン含有材料(2)は、例えば、カプセル化した赤リン元素、メラミンリン酸塩、ジメラミンリン酸塩、メラミンピロリン酸塩及び無機ホスフィン酸塩(例えば、ホスフィン酸アルミニウムなど)を含む群から選択され得る。赤リン元素及び無機ホスフィン酸塩が好ましい。市販のカプセル化赤リンとしては、Clariant(Germany)から市販のExolit RP 6500が挙げられる。
【0089】
難燃系は、メタホウ酸バリウム、メタホウ酸カルシウム、メタホウ酸亜鉛及びこれらの混合物からなる群から選択されるものなどの任意選択的なホウ素含有材料を含んでもよい。これらの材料は、硬化性組成物の量に関し最大25重量パーセント提供され得る。
【0090】
触媒:
組成物は、所望により、硬化反応を促進させるための金属塩触媒を含有してもよい。本発明の組成物内において実施可能な好適な触媒としては、アニオンが、硝酸塩、ヨウ化物、チオシアネート、トリフレート、アルコキシド、過塩素酸塩、及び硝酸塩、ヨウ化物、チオシアネート、トリフレートを含むスルホネートから選択される、第I族金属塩、第II族金属塩又はランタノイド塩が挙げられ、それらの水和物を含むスルホネートが好ましい。好ましい第I族金属(カチオン)は、リチウムであり、好ましい第II族金属はカルシウムであり、マグネシウム及びマグネシウムであって、カルシウムが特に好ましい。したがって、好ましい触媒塩は、硝酸ランタン、ランタントリフレート、ヨウ化リチウム、硝酸リチウム、硝酸カルシウム及びそれらの対応する水和物である。一般に、触媒量の塩が用いられる。大部分の用途に関し、触媒は、組成物の総重量に基づき、約0.05〜3.0重量部未満で使用されるであろう。典型的には、約1:1〜約3:1である金属塩触媒対二次硬化剤の重量比を使用してもよい。
【0091】
顔料:
顔料としては、酸化第二鉄、れんが粉、カーボンブラック、酸化チタンなどを含む無機又は有機顔料を挙げることができる。
【0092】
接着剤特性:
硬化性組成物は、硬化時に望ましい機械的強度が得られるような量で、上述の成分を含有する。上述の成分を用いることにより、以下の特性のうち1つ以上又は全てを有する硬化接着剤を調製することができる:
a)アルミニウム基材に対し、23℃にて少なくとも80N/25mmのフローティングローラー剥離強度を有する硬化接着剤(以降の節に記載されるフローティングローラー剥離強度に従って測定するとき);
b)鋼鉄基材に対し、23℃にて少なくとも10MPaの重なり剪断強度を有する硬化接着剤(以降の節に記載される重なり剪断強度試験に従って測定するとき);
c)エッチングしたアルミニウム基材に対し、23℃にて少なくとも10MPaの重なり剪断強度を有する硬化接着剤(以降の節に記載される重なり剪断強度試験に従って測定するとき);
d)ガラス繊維フェノール複合体基材に対し、23℃にて少なくとも5MPaの重なり剪断強度を有する硬化接着剤(以降の節に記載される重なり剪断強度試験に従って測定するとき)。
【0093】
組成物は、好ましくは室温において硬化性である。
【0094】
接着剤は、室温にて7日間にわたって硬化させることができる。硬化は加熱することで、例えば、75℃にて30分間加熱することで促進させることができる。
【0095】
接着剤組成物:
接着剤組成物は、好ましくは、有機又は水性溶媒を含まない。本明細書において参照される溶媒は、組成物の成分と反応せず、かつ組成物から除去することができる液体である。典型的には、溶媒は、周囲条件にて150℃未満、好ましくは130℃未満の沸点を有する液体である。接着剤組成物は、好ましくは、100%固体組成物などの無溶媒組成物である。
【0096】
接着剤組成物は室温硬化性及び/又は熱性である。本明細書で提供される接着剤組成物は、一液型又は二液型組成物であり得る。早期硬化を予防するにあたり二液型組成物が好ましい。二液型組成物の場合、反応液は互いに別個に分けて保管し、接着剤は二液を共に混合することで調製される。混合は、好ましくは、即時使用に先立って実施される。まず構成成分を一緒に混合し、室温で硬化させ、場合により加熱硬化させることもできる。二液型組成物は、典型的には、A部と、A部とは別個のB部を含む。接着剤組成物の更なる成分を含有する更なる別個の部も考慮する。典型的には、二液組成物は、(B)部に約10〜約50重量%のエポキシ樹脂、約0.25〜約1%のリン酸エステル、約10〜約40重量%の強化剤、約1〜約20重量%の充填剤を含有し、ここで、(B)部中の成分の合計量は100%になる。
【0097】
典型的には、(A)部は40〜90重量%の硬化剤及び1〜10重量%の充填剤を含有し、成分の合計量は100%になる。
【0098】
組成物には、更に液状ゴム、好ましくは液状ブタジエンゴムを、(B)部又は(A)部のいずれかにあるいは両方に5〜40重量%含有させてもよい。液状ブタジエンゴムが反応性である場合、即ち、例えばアミン終端ブタジエンゴムなどのように硬化反応に関与し得る末端基を有する場合、それらは、硬化剤と共に組成物の(A)部に存在させることが好ましい。
【0099】
更に組成物には、微量で他の材料を1種以上含有させてもよく、典型的には、(A)部に最大で20%若しくは最大10%、又は(B)部に最大15%若しくは最大10%の、上記種類の材料以外の材料を更に含有させてもよい。
【0100】
二液組成物から硬化性接着剤組成物を調製するために、(A)部及び(B)部を組み合わせる。接着剤を作製するために用いられる(A)部と(B)部との比は、好ましくは、それぞれエポキシ基含量及びアミン含量に基づく当量により決定される。(A)部及び(B)部は、当量比(アミン含量対エポキシ含量)約1:1で混合する。
【0101】
組成物には、組成物を最適化させるために、又は組成物を特定の用途に適応させるために、他の成分を更に含有させてもよい。これら成分の最適な量は、慣用の実験方法により確認することができる。
【0102】
接着剤組成物は、任意の好都合な技法により所望の基材に適用することができる。接着剤組成物は、必要に応じて、冷たい状態で又は温かい状態で適用することができる。接着剤組成物は、押し出すことにより適用することができる、又はコーキングガンなどの機械的適用方法を用いて適用することができる、又は基材上に貼り付けることにより適用することができる。一般に、接着剤は、一方又は両方の基材に適用される。接着剤が互いに結合される基材の間に位置するように基材を接触させる。適用後、硬化性組成物は、接着剤組成物(成分の混合後に得られる2成分組成物の場合)を適切な時間にわたって室温で保管することで硬化させ、場合により続いて高温で硬化させる。凝集力及び/又は接着強度がそれ以上増加しなくなった時点で完全硬化が得られる。典型的には、室温条件で約7日後に完全硬化が得られる。代替的な実施形態においては、硬化は、約60〜約80℃の範囲の高温にて行うことができる。典型的には、加熱は、硬化温度に応じて、少なくとも15分間、少なくとも30分間、少なくとも2時間、少なくとも8時間、又は少なくとも12時間実施される。
【0103】
接着剤組成物を使用して、接着剤組成物を、接着させるべき2つの部品の間に適用することによって、及び結合による接続を形成させるために接着剤を硬化させることによって、溶接又は機械的な締結を補完又は完全に排除することもできる。
【0104】
接着剤接着の分野では、接着剤は、液体、ペースト、及び加熱によって液化可能な半固体又は固体として適用することができ、あるいは接着剤はスプレーとして適用されてもよい。それは、有用な接着の形成に適合する連続ビード、中間ドット、ストライプ、対角線又はその他のあらゆる幾何学的形状として適用することができる。好ましくは、接着剤組成物は、液体又はペーストの形態である。接着剤配置の選択肢は、溶着又は機械的締結によって増やしてもよい。
【0105】
接着剤組成物は前処理を必要とせず、又はプライマーの使用を必要とせず、したがって、環境的にも経済的にも利点がある。
【0106】
本明細書で提供される硬化性組成物は、船、航空機、又は車、モーターバイク若しくは自転車などのモータークラフトの組立など、乗り物の組立に使用することもできる。具体的には、硬化性組成物は、乗り物の内装部品、例えば、椅子、テーブル、及びこれらに類する物を組み立てる際に接着剤として使用することができる。接着剤は、ボディフレーム組立にも使用することができる。組成物は更に、建築における構造用接着剤として、又は家庭及び工業製品における構造用接着剤としても使用することができる。組成物は、台所用品の組立、具体的には、例えば、飛行機、列車及び船などの乗り物の備え付けの台所などの、アルミニウム製の台所部品の組立に好ましく使用される。
【0107】
本明細書で提供される特に好ましい構造用接着剤は、(硬化させた場合に)以下に示すような剥離試験法又は剪断試験法で評価した場合に、主に金属基材上で凝集破壊を示し、又は複合体上で基材破壊を示す。「凝集破壊」は、接着剤が割れること、及び接着剤の一部が、結合させた表面のそれぞれに残っていることを意味する。凝集しない結合は「強固」であるものとして言及される。「基材破壊」は、接着剤が基材よりも強力であり、基材が裂けてしまうことを意味する。接着剤が基材から綺麗に取り除かれるような破壊様式は、「接着破壊様式」として言及される。
【0108】
以下の実施例及びデータは、更に、本発明を例示するが、いかなる形態においても本発明を限定するものではない。
【0109】
使用材料:
ANCAMIDE 910(Air Products and Chemicals,Inc.,Allentown/PA/USA):ポリアミドアミン硬化剤
ANCAMINE K54(Air Products and Chemicals,Inc.,Allentown/PA/USA):トリス−2,4,6−ジメチルアミノメチル−フェノール
AEROSIL 202(Evonik Industries,Frankfurt,Germany):疎水性ヒュームドシリカ。
【0110】
BYK−W 996(BYK−Chemie GmbH,Germany):2−メトキシ−1−メチルエチルアセテート及び石油の50/50ブレンド中酸価数71mgのKOH/gを有する、リン酸エステルの50%固形分溶液
BYK−W 9010(BYK−Chemie GmbH,Germany):酸価数129mgのKOH/gを有する、固形分100%のリン酸エステル
Ca(NO
3)
2×4H
2O(VWR International GmbH,Darmstadt,Germany):硝酸カルシウム四水和物
EPODIL 757(Air Products and Chemicals Inc.,Allentown,PA/USA):
1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル。
【0111】
EPON 828(Hexion Speciality Chemicals GmbH,Rosbach,Germany):ビスフェノール−Aのジグリシジルエーテルをベースにしたエポキシ樹脂、分子量<700g/モル。
【0112】
Exolit RP 6500(Clariant,Germany):カプセル化赤リン
ガラスビーズ(90〜150μm)(3M Company,USA):
Hycar 1300X16(Lubrizol Advanced Materials Inc,Brussels,Belgium):アミン末端化ブタジエンアクリロニトリルゴム(ATBN)。
【0113】
Kane Ace(登録商標)MX 153(Kaneka,Belgium):ビスフェノール−A系未変性液状エポキシ樹脂中33%のコアシェルゴム。
【0114】
Scotchlite K20(3M,Germany):密度0.2g/ccでかつ均衡破壊強度(isostatic crush strength)500psiのガラスゴム。
【0115】
SpaceRite S−11(Almatis,Germany):白色水酸化アルミニウムアルミニウム。
【0116】
TTD(BASF,Ludwigshafen,Germany):4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカン−ジアミン。
【0117】
ZB−467(Chemtura,Switzerland):ホウ酸亜鉛難燃剤/防煙剤
Z−6040シラン(Dow Corning,Germany):エポキシシラン
試験方法:
粒径:
粒径は電子顕微鏡により測定することができ、平均粒径は数平均として表される。
【0118】
凝集強度(重なり剪断強度):
重なり剪断強度は、クロスヘッド速度10mm/分にて引張試験機を使用し、DIN EN 2243−1(2005)に従って決定した。熱チャンバ(Zwick GmbH & Co.KG,Ulm,Germany)を備えるZwick/Roell Z050引張試験機を使用した。試験結果はMPaで記録した。
【0119】
測定のために、スパチュラを使用して試験ストリップの一端に接着剤を適用し、続いて処理したストリップの端部を、未処理のストリップの端部と重ね合わせた。2つの端部を互いに押し付けて、10mmの重なりを形成した。
【0120】
次いで、スパチュラを用いて過剰な接着剤を除去した。重なり合ったストリップは、キャパシティバインダークリップを使用して、接着剤の端でクランプした。クランプしたストリップを、重なり剪断試験を実施する前に周囲湿度にて室温で7日間硬化させた。
【0121】
クロム硫酸(70℃にて15分間エッチングする、バス組成物:27.5w/wのH
2SO
4(密度1,82)、7.5w/wのNa
2Cr
2O
7・2 H
2O、65.0w/w脱塩H
2O、添加剤:0.5g/Lのアルミニウム、1.5g/LのCuSO
4・5H
2O)、によりエッチングしたアルミニウム2024 T3 被覆ストリップ(Rocholl GmbH(Aglasterhausen,Germany)から入手)、リン酸化させた鋼鉄(Thyssen Krupp AG,(Langenfeld,Germany)から入手)及びガラス繊維エポキシ樹脂複合体(Glimberger Kunststofftechnik(Voesendorf,Austria))の100×25×1,6mmの試験ストリップで凝集強度を測定した。
【0122】
接着強度(フローティングローラ剥離強度):
熱チャンバを備えるZwick/Roell Z050引張試験機(Zwick GmbH & Co.KG(Ulm,Germany))を用い、140mm/分のクロスヘッド速度で操作して、DIN 2243−2(2005)に従って、フローティングローラー剥離試験により接着強度を測定した。試験結果はN/25mmで報告する。
【0123】
250×25×1.6mm及び300×25×0.5mmのアルミニウム2024 T3被覆金属ストリップ(Rocholl GmbH(Aglasterhausen,Germany)から入手可能)を、メチルエチルケトンに浸漬させて洗浄し、次いで、上記のようにFPLエッチングした。ストリップの組立中に拡張領域に接着剤が流れ込むのを避けるため、200mm×25mmのブランク領域を残して、ストリップをテフロンテープ(PTFEテープ;3M 5490)でマスキングした。これにより、画定されたボンドラインを確保し、測定中に境界の明瞭な亀裂が生じる。スパチュラを用い、硬化接着剤組成物を1.6mmストリップのブランク領域及び対応する0.5mmストリップのブランク領域に適用した。ストリップを相互に押し付け、残留接着剤をスパチュラで除去した。組立品は、キャパシティバインダークリップを使用して、ボンドラインの長さにわたって両面をクランプした。試験前に、接着剤を周囲湿度にて室温で7日間硬化させた。
【0124】
二液型接着剤組成物の調製
(A)部の準備:
使用するアミン硬化剤を80℃に加熱した。Ancamine K54を添加し、混合物を更に5分間撹拌した。高速ミキサー(DAC 150 FVZ Speed mixer,Hauschild Engineering,Germany)を用い3000rpmで1分間撹拌し続けながら残りの材料(下表を参照)を室温(23℃)で加えた。全ての原材料を確実に均一に分散させるために成分は少量ずつ加えた。
【0125】
(B)部の調製:
エポキシ樹脂及び強化剤を23℃にて30分間撹拌しながら混合した。次にこの混合物を80℃に加熱し90分間保持した。混合物を室温まで冷却した。次いで、残りの成分(下表を参照)を添加し、各々を23℃で添加した後3000rpmにて1分間撹拌しながら高速ミキサー(DAC 150 FVZ Speedmixer,Hauschild Engineering)を用いて均質にした。
【0126】
(A)部と(B)部の混合:
A部及びB部をMixPacからの(2/1)400mLカートリッジに充填した。動的混合ノズルをカートリッジに取り付けた。気圧式銃を用い、4bar(400kPa)の圧力を印加することにより両方の部を押し出した。次に、組成物を23℃にて7日間硬化させた。
【実施例】
【0127】
実施例1及び2、並びに比較例C−1
実施例1及び2、並びに比較例C−1において、表1のA部を表2の異なるB部と混合することで硬化性組成物を調製した。実施例1及び2のB部はリン酸エステルを含んだ。比較例C−1のB部はリン酸エステルを含有しなかったが、当該技術分野においてエポキシ化合物の硬化促進剤として既知であるエポキシシランを含有する。A:Bの当量比が1:1となるようにA部とB部を組み合わせた。凝集強度及び接着強度について接着剤組成物を試験した。試験結果を表3に記録する。
【0128】
【表1】
【0129】
【表2】
【0130】
【表3】
本発明の実施態様の一部を以下の項目[1]−[15]に記載する。
[1]
硬化性エポキシ接着剤組成物であって、
i.硬化性エポキシ樹脂
ii.アミン硬化剤、
iii.ポリマー性強化剤、
iv.充填剤材料及び
v.式
【化1】
のリン酸エステル(式中、Rは、カルボン酸エステル単位を1つ以上及び/又はウレタン単位を1つ以上含有しかつ更にはエーテル基を少なくとも1つ含有する脂肪族又は芳香族残基を表し、かつnは1又は2の整数を表わす)、を含む、硬化性エポキシ接着剤組成物。
[2]
前記リン酸エステルの前記R基が200〜10,000の分子量を有する、項目1に記載の組成物。
[3]
前記硬化性エポキシ樹脂が、芳香族グリシジルエーテル単位を1つ以上含む、項目1又は2に記載の組成物。
[4]
前記エポキシ樹脂が、150〜4,000g/モルの分子量を有する、項目1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
[5]
前記エポキシ樹脂が、1〜3.8個の官能基を有する、項目1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
[6]
前記充填剤材料が、ガラス粒子を含む、項目1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
[7]
前記アミン硬化剤が、ポリアミドアミンを含む、項目1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
[8]
前記ポリマー性強化剤が、コア/シェル型ポリマーを含む、項目1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
[9]
前記組成物が、ブタジエンに由来する繰り返し単位を含む液状ポリマーを含む、項目1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
[10]
(a)アルカリ土類金属水酸化物及びアルミニウム基水酸化物を含む群から選択される化合物を少なくとも1種、及び
(b)リン含有材料を少なくとも1種、の混合物を含む難燃系を更に含む、項目1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
[11]
第一基材、第二基材、並びに前記第一基材を前記第二基材に結合させる、前記第一基材と前記第二基材の間の組成物、を含む物品であって、前記組成物は、項目1〜10のいずれか一項に記載の前記硬化性エポキシ接着剤組成物の硬化反応による反応生成物を含み、前記第一基材及び前記第二基材が、それぞれ互いに独立してアルミニウム、鋼鉄、及び樹脂系複合材料から選択される、物品。
[12]
第一基材を第二基材に結合させるための方法であって、
(i)項目1〜10のいずれか一項に記載の前記硬化性エポキシ接着剤組成物を、前記第一基材の少なくとも一部に付加することと、
(ii)前記第一基材が前記硬化性組成物を含有している箇所で、前記第二基材を前記第一基材に適用すること、
(iii)前記硬化性エポキシ接着剤組成物を硬化させること、を含み、
前記第一基材及び前記第二基材が、それぞれ互いに独立してアルミニウム、鋼鉄及び樹脂系複合材料から選択される、方法。
[13]
前記硬化性エポキシ接着剤組成物が、前記表面又は前記第一若しくは前記第二表面に直接適用され、あるいは前記第一及び前記第二表面に直接適用される、項目12に記載の方法。
[14]
前記硬化が室温で実施される、項目12又は13に記載の方法。
[15]
基材を硬化性エポキシ接着剤組成物により結合させるための硬化促進剤としての、式
【化2】
のリン酸エステルの使用であって(式中、Rは、エーテル酸素原子を少なくとも1つ、並びにカルボン酸エステルを少なくとも1つ及び/又はウレタン基を少なくとも1つ有する、脂肪族、脂環式及び/又は芳香族基を表し、かつnは1又は2の整数である)、
ここで、前記基材は、鋼鉄、アルミニウム及び樹脂系複合材料から選択される、使用。