特許第5778770号(P5778770)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5778770-酸化物触媒 図000007
  • 特許5778770-酸化物触媒 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778770
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】酸化物触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/887 20060101AFI20150827BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20150827BHJP
   C07C 45/35 20060101ALI20150827BHJP
   C07C 47/22 20060101ALI20150827BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20150827BHJP
【FI】
   B01J23/887 Z
   B01J37/04 102
   C07C45/35
   C07C47/22 A
   !C07B61/00 300
【請求項の数】4
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2013-522578(P2013-522578)
(86)(22)【出願日】2012年6月13日
(86)【国際出願番号】JP2012065139
(87)【国際公開番号】WO2013002029
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2013年11月27日
(31)【優先権主張番号】特願2011-143284(P2011-143284)
(32)【優先日】2011年6月28日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】303046314
【氏名又は名称】旭化成ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 淳
(72)【発明者】
【氏名】山口 辰男
(72)【発明者】
【氏名】泉山 健治
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−237592(JP,A)
【文献】 特開2011−072909(JP,A)
【文献】 特開2010−172851(JP,A)
【文献】 特開2001−025664(JP,A)
【文献】 特表2008−502567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
C07C 45/35
C07C 47/22
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン及び/又はアルコールの酸化反応に用いられる酸化物触媒であって、
モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、セリウムを含有し、モリブデン12原子に対するビスマスの原子比aが2≦a≦6、鉄の原子比bが2.5<b≦5、コバルトの原子比cが2≦c≦8、セリウムの原子比dが0.5≦d≦6、鉄/コバルトの原子比が0.4≦b/c≦2.5であり、
X線回折において33.50°にピークを示すセリウムとモリブデンの複合酸化物の面間隔dを基準にしたとき、dの変化率が5000〜9000ppmである、酸化物触媒。
【請求項2】
下記組成式(1)
Mo12BiaFebCocCedefg (1)
(式中、Moはモリブデン、Biはビスマス、Feは鉄、Coはコバルト、Ceはセリウム、Aはセシウム及びルビジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Bは銅、ニッケル、マグネシウム及び鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、a〜fは、Mo12原子に対する各元素の原子比を示し、2≦a≦6、2.5<b≦5、2≦c≦8、0.4≦b/c≦2.5、0.5≦d≦6、0.01≦e≦2、0≦f<2であり、gは酸素以外の構成元素の原子価によって決まる酸素の原子数である。)で表される組成を有する、請求項1記載の酸化物触媒。
【請求項3】
請求項1又は2記載の酸化物触媒の製造方法であって、
モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、セリウムを含む原料スラリーを30〜80℃で熟成し、乾燥し、120℃以上350℃以下で仮焼成後、400℃以上700℃以下の温度で本焼成する工程を含む、製造方法。
【請求項4】
不飽和アルデヒドの製造方法であって、
請求項1又は2記載の酸化物触媒を用い、プロピレン及びイソブチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィン及び/又はt−ブチルアルコールを酸化反応させる工程を含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン及び/又はアルコールの酸化反応に用いられる酸化物触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン、イソブチレンとt−ブチルアルコールから選ばれる少なくとも1種を原料とし、不飽和アルデヒドを中間体として、酸化的エステル化反応によって、アクリル酸メチル、又はメタクリル酸メチルを製造する方法は、直メタ法と呼ばれる2つの反応工程からなる方法と、直酸法と呼ばれる3つの反応工程からなる方法とが知られている。「石油化学プロセス」(石油学会編、第172〜176頁、講談社サイエンティフィク)によると、直酸法は3つの工程でアクリル酸メチル、又はメタクリル酸メチルを製造するプロセスであり、第1酸化工程はプロピレン、イソブチレンとt−ブチルアルコールから選ばれる少なくとも一つの出発物質を、触媒の存在下で分子状酸素と気相接触酸化反応させて、アクロレイン、又はメタクロレインを製造する工程である。第2酸化工程は、第1酸化工程で得られたアクロレイン、又はメタクロレインを触媒の存在下で分子状酸素と気相接触酸化反応させて、アクリル酸、又はメタクリル酸を製造する工程である。エステル化工程は、第2酸化工程で得られたアクリル酸、又はメタクリル酸をさらにエステル化して、その際にアルコールとしてメタノールを用いた場合には、アクリル酸メチル、又はメタクリル酸メチルを得る工程である。これに対し、直メタ法は、プロピレン又はイソブチレン及び/又はt−ブチルアルコールを原料とし、分子状酸素含有ガスを用いて気相接触酸化反応させてアクロレイン、又はメタクロレインを製造する第1反応工程と、得られたアクロレイン、又はメタクロレインと、例えばアルコールとしてメタノールと分子状酸素とを反応させて、一挙にアクリル酸メチル、又はメタクリル酸メチルを製造する第2反応工程の2つの触媒反応工程からなる方法である。
【0003】
不飽和アルデヒドを主成分として製造する触媒としては、古くはソハイオ社によって見出されたものがあり、その後も必須成分としてMo、Biを含む複合酸化物触媒は数多く報告されている。例えば、特許文献1には、触媒を構成する金属として、Mo、Bi、Ce、K、Fe、Co、Mg、Cs、Rbに着目した触媒が記載されている。また、特許文献2にも、不飽和アルデヒド及び不飽和酸を製造するための触媒が記載されており、中でもSb0.5Cs0.50.25Ni2.5Co4.5FeBiMo12Oxで表される触媒が、パス当たりの収率が最大であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開95/35273号パンフレット
【特許文献2】米国特許4001317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記で述べたような酸化反応の生産性には、原料濃度と反応温度が大きく影響する。理論的には、原料濃度が高く、反応度が高いほど生産性が向上すると考えられるものの、実際には反応温度と原料濃度を高く設定しすぎると、かえって生産性が低下するという問題が生じる。
例えば、気相接触酸化反応により不飽和アルデヒドを得ようとする場合、原料濃度が高いと、発熱によって必要となる酸素分圧が高くなり、逐次酸化物の生成が多くなるため、不飽和アルデヒドの選択率が大幅に低下し、生産性が著しく低下する。一方、反応温度についても、350℃〜370℃程度なら不飽和アルデヒドの選択率は高いが、370℃以上では不飽和アルデヒドの選択率が大幅に低下するため、生産性が著しく低下する。従って、高い原料濃度かつ高い反応温度の反応条件においても、目的生成物の高い生産性を示す触媒が望まれている。
【0006】
上述のような観点で、当分野で利用されているビスモリ系(Bi−Mo)や、特許文献1に記載されているような、ビスモリ系にさらに鉄、セリウム等を加えた系の酸化物触媒を検討した結果、このような触媒は全金属が複合化されているのではなく、BiMo12やCeMo12、FeMo12、Bi、Fe、CeOとしても存在していることがX線構造解析等から分かってきた。そして、これら単独又は二成分酸化物は、比較的酸化力が強いために、目的生成物を更に酸化した状態である逐次酸化物を生成させてしまい、目的生成物の生産性を下げてしまうという問題がある。
【0007】
そこで、触媒の酸化力を適切にすべく本発明者らが鋭意検討した結果、触媒中のMo、Bi、Fe、Co及びCeの比率を適切にした上で、これらの成分が複合化していない成分の生成を抑制することで、逐次酸化物の生成が抑えられ、目的生成物の生産性が向上することを発見し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
オレフィン及び/又はアルコールの酸化反応に用いられる酸化物触媒であって、
モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、セリウムを含有し、モリブデン12原子に対するビスマスの原子比aが2≦a≦6、鉄の原子比bが2.5<b≦5、コバルトの原子比cが2≦c≦8、セリウムの原子比dが0.5≦d≦6、鉄/コバルトの原子比が0.4≦b/c≦2.5であり、
X線回折において33.50°にピークを示すセリウムとモリブデンの複合酸化物の面間隔dを基準にしたとき、dの変化率が5000〜9000ppmである、酸化物触媒。
〔2〕
下記組成式(1)
Mo12BiaFebCocCedefg (1)
(式中、Moはモリブデン、Biはビスマス、Feは鉄、Coはコバルト、Ceはセリウム、Aはセシウム及びルビジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Bは銅、ニッケル、マグネシウム及び鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、a〜fは、Mo12原子に対する各元素の原子比を示し、2≦a≦6、2.5<b≦5、2≦c≦8、0.4≦b/c≦2.5、0.5≦d≦6、0.01≦e≦2、0≦f<2であり、gは酸素以外の構成元素の原子価によって決まる酸素の原子数である。)で表される組成を有する、前項〔1〕記載の酸化物触媒。
〔3〕
前項〔1〕又は〔2〕記載の酸化物触媒の製造方法であって、
モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、セリウムを含む原料スラリーを30〜80℃で熟成し、乾燥し、120℃以上350℃以下で仮焼成後、400℃以上700℃以下の温度で本焼成する工程を含む、製造方法。
〔4〕
不飽和アルデヒドの製造方法であって、
前項〔1〕又は〔2〕記載の酸化物触媒を用い、プロピレン及びイソブチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィン及び/又はt−ブチルアルコールを酸化反応させる工程を含む、製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、オレフィン及び/又はアルコールの酸化反応において、高い原料濃度、かつ高い反応温度の反応条件で、目的生成物の生産性の高い触媒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例2及び比較例1における酸化物触媒のX線回折ピークを示す。
図2図1におけるX線回折ピークの2θ=32.5〜35°の範囲の拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0012】
[1]酸化反応用酸化物触媒
本実施形態における酸化物触媒は、
オレフィン及び/又はアルコールの酸化反応に用いられる酸化物触媒であって、
モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、セリウムを含有し、モリブデン12原子に対するビスマスの原子比aが2≦a≦6、鉄の原子比bが2.5<b≦5、コバルトの原子比cが2≦c≦8、セリウムの原子比dが0.5≦d≦6、鉄/コバルトの原子比が0.4≦b/c≦2.5であり、
X線回折において33.50°にピークを示すセリウムとモリブデンの複合酸化物の面間隔dを基準にしたとき、dの変化率が5000〜9000ppmである。
【0013】
目的生成物の生産性の向上には、目的生成物の選択性と逐次酸化抑制が寄与している。面間隔dの変化率が5000〜9000ppmとなる構造を有する複合酸化物は、中間体の安定性に寄与するのではないかと、本発明者らは考えた。酸化的な水素の脱離により、オレフィン及び/又はアルコールからπアリル中間体が生成し、更に付加反応又は脱水素反応によってπアリル中間体が変化し、目的生成物が得られる。πアリル中間体は反応性が高く不安定であるため、通常であれば即時に他の化合物へと変化又は分解するが、本実施形態における酸化物触媒は、πアリル中間体の安定性を制御しており、目的生成物を得る反応が有利に進行すると考えられる。πアリル中間体に酸素が付加すると、アルデヒド又はカルボン酸に、アンモニアが付加するとニトリルに変化する。また、πアリル中間体から水素が脱離すると二重結合が形成され、アルコールからはオレフィンが、オレフィンからはジオレフィンなどが得られる。よって、反応器に供給する原料を適宜選択することによって、本実施形態における酸化物触媒を用いて、各種目的生成物を得ることが可能である。
【0014】
本実施形態における酸化物触媒が逐次酸化物の生成を抑制する理由は定かではないが、本発明者らが検討したところによると、目的生成物が不飽和アルデヒドであっても、逐次酸化物が減少することが明らかになった。不飽和アルデヒドは極めて容易に酸化されやすい化合物であり、高い原料濃度かつ高い反応温度条件においても、不飽和アルデヒド由来の逐次酸化物が減少するということは驚くべき結果である。酸化されやすい不飽和アルデヒドであっても逐次酸化反応を抑制できるのであれば、他の目的生成物においても逐次酸化の生成が抑制されると考えられる。逐次酸化物はあらゆる酸化反応において好ましくない副生成物であり、これを抑制できるのであれば、生産性の飛躍的な向上が期待できる。
なお、本明細書において逐次酸化物とは、目的生成物を更に酸化した状態の化合物を示す。よって、不飽和カルボン酸を逐次酸化物の一種とみなすのは、直メタ法の第一反応工程など、目的生成物が不飽和アルデヒドの場合である。他に逐次酸化物としては、二酸化炭素、過酸化物、ジケトン類、エポキシ化合物などが挙げられる。
【0015】
(1)組成
本実施形態における酸化物触媒は、Mo−Bi系の金属酸化物において各金属元素が複合化するようにする観点から、Mo、Bi、Ce、Feの存在は不可欠であり、Mo12原子に対して、Biの原子比aは、2≦a≦6となるようにする。目的生成物の選択率をより高める観点で、好ましくは2≦a≦5であり、より好ましくは2≦a≦4である。同様の観点で、Ceの原子比dは、0.5≦d≦6であり、好ましくは1≦d≦5、より好ましくは1≦d≦4である。BiとMoは、気相接触酸化、アンモ酸化反応等の活性種とされているBiMo12、BiMoO等の複合酸化物を形成しやすく、触媒活性は高いものの、融点が低く、耐熱性が低い。一方、CeとMoは、CeMo12等の複合酸化物を形成し難いが、融点が高く、耐熱性が非常に高い。両者を適切に複合化させると、耐熱性の高いCeMo12にBiが固溶して複合化された構造を有し、高い活性と耐熱性を併せ持つCe−Bi−Mo−O系の複合酸化物が形成される。
【0016】
目的生成物の選択率を低下させることなく触媒活性を高める観点から、FeはMo、Biと同様に、工業的に目的生成物を合成する上で必須の元素であるが、Fe含量が多くなるとFeが生成し、COやCO等の逐次酸化物が増加する傾向があり、その結果、目的生成物の選択率が低下する。Fe含有量を多くしてもFeが生成しない場合もあるが、この時生成するのはFe−Mo−Oという2成分系の複合酸化物であって、これは触媒活性を示さない不活性成分である。従って、従来、高い収率を示すには、Mo12原子に対するFeの原子比を0<Fe≦2.5とするのが一般的であり、これ以上にFeの原子比を高くして有効な結晶相を生成させるという思想はなかった。これに対し、本発明者らは、従来の技術常識であるFeの原子比の上限を超えた組成域で、FeのみならずBiとCeの含有量も増やすことで、Ce−Bi−Fe−Mo−O系という4成分系の高性能な結晶構造が形成されることを見出した。Ce−Bi−Fe−Mo−O系の結晶を有する酸化物触媒は、CeとFeが活性種とされているBiMo12、BiMoO等の複合酸化物のBi−O−Mo結合のMo−O結合エネルギーが適切であるために、目的生成物の高い収率を示すと本発明者らは推定している。本実施形態における酸化物触媒のMo12原子に対するFeの原子比bは、2.5<b≦5であり、好ましくは2.5<b≦4.5、さらに好ましくは2.5<b≦4である。
【0017】
本実施形態における酸化物触媒において、Coは、Mo、Bi、Feと同様に工業的に目的生成物を合成する上で必須の元素であり、複合酸化物CoMoOを形成し、Bi−Mo−O等の活性種を高分散させるための担体としての役割と、気相から酸素を取り込み、Bi−Mo−O等に供給する役割を果たしている。不飽和アルデヒドを高収率で得るには、CoをMoと複合化させ、複合酸化物CoMoOを形成させる必要がある。CoやCoO等の単独酸化物の形成を少なくする観点から、Coの原子比cは、2≦c≦8であり、好ましくは2.5≦c≦6、より好ましくは2.5≦c≦4である。触媒の活性を高める観点から、FeとCoの原子比b/cは、0.4≦b/c≦2.5であり、好ましくは0.7≦b/c≦2.0、より好ましくは1≦b/c≦1.5である。
【0018】
本実施形態における酸化物触媒は、好ましくは、下記組成式(1)で表される組成を有する。
Mo12BiFeCoCe (1)
(式中、Moはモリブデン、Biはビスマス、Feは鉄、Coはコバルト、Ceはセリウム、Aはセシウム及びルビジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Bは銅、ニッケル、マグネシウム及び鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、a〜fは、Mo12原子に対する各元素の原子比を示し、2≦a≦6、2.5<b≦5、2≦c≦8、0.4≦b/c≦2.5、0.5≦d≦6、0.01≦e≦2、0≦f<2であり、gは酸素以外の構成元素の原子価によって決まる酸素の原子数である。)
【0019】
上記組成式(1)において、Aはセシウム及び/又はルビジウムを示し、不飽和アルデヒド製造用触媒において、触媒で複合化されなかったMoO等の酸点を中和する役割を示すと考えられる。セシウム及び/又はルビジウムを含有するか否かは、後述するCe−Bi−Fe−Mo−Oの結晶構造には影響しない。Mo12原子に対するこれらの元素の原子比は、触媒活性の観点から、0.01≦e≦2である。Aの原子比eを、この数値範囲に調整する理由としては、アルカリ元素がこれ以上多くなると触媒が塩基性となり、原料であるオレフィンやアルコールが触媒に吸着され難く、充分な触媒活性を発現できなくなる傾向にあるためである。
【0020】
Bは、銅、ニッケル、マグネシウム及び鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、酸化物中で一部のコバルトに置換すると考えられている。銅は触媒の活性を向上させる役割があるが、触媒性能を示すCe−Bi−Fe−Mo−O結晶の生成とのバランスを保つ観点で、Bの原子比fの上限は、f<2であることが好ましい。ニッケル、マグネシウム、鉛は、原子比f<2である場合、CoMoOの結晶構造を安定化させ、圧力や温度による相転移等を抑制させる役割がある。Bで示される元素は、触媒の活性の向上、又は、触媒中のCoMoOの結晶構造を安定化させるものであるため、Ce−Bi−Fe−Mo−Oの結晶構造には影響せず、含有量がゼロ(f=0)でもよい任意成分として位置づけられる。
【0021】
A及びBで示される元素は、触媒中に含まれていても含まれていなくても、後述するCe−Bi−Fe−Mo−Oの結晶構造とは別に結晶構造を形成するため、Ce−Bi−Fe−Mo−Oの結晶構造には影響しない。
【0022】
上記組成式(1)で表される組成を有する酸化物触媒は、不飽和アルデヒドの選択率が高いという特徴を有しており、直メタ法の第一反応工程において好適に用いられる。直酸法では、最終酸化生成物が不飽和カルボン酸であるため、中間体の不飽和アルデヒドを得る工程においてメタクリル酸を減らすことのメリットは小さく、メタクロレインとメタクリル酸の合計収率が高いほど望ましい触媒といえる。これに対し、直メタ法は第1反応工程で不飽和アルデヒドを生成させた後、第2反応工程で不飽和アルデヒドから不飽和カルボン酸エステルを生成させるので、不飽和カルボン酸を目的生成物とする工程が存在しない。そのため、複合酸化物触媒による酸化工程において、不飽和アルデヒドのみが生成されるのが望ましく、不飽和カルボン酸の生成は極力抑えられるのが望ましい。すなわち、直メタ法の第1反応工程用の触媒を最適化することを目的とする場合、直酸法用の触媒とは明確に方向性が異なり、目的生成物である不飽和アルデヒドの収率が高く、且つ、逐次酸化物である不飽和カルボン酸の収率は低い触媒が望ましいことになる。
【0023】
(2)結晶構造
X線回折(XRD)でX線回折角2θ=5°〜60°の範囲を測定すると、セリウムとモリブデンのみからなる酸化物は33.50°にピークを示す。このセリウムとモリブデンのみからなる酸化物に、鉄とビスマスが更に複合すると、このピークのシフトが起こる。本実施態様における酸化物触媒は、セリウムとモリブデンからなる酸化物に、鉄とビスマスが複合化した金属を含むため、33.50°ではなく、33.50°+α°(0<α)にピークを示す。
【0024】
ブラッグの条件式(「固体表面キャラクタリゼーションの実際」、田中康裕・山下弘巳編、第13〜25頁、講談社サイエンティフィク)によると、結晶面の面間隔d、結晶面とX線の入射角と反射角θ、波長λの間に以下の式(II)
2dsinθ=nλ(n:整数) (II)
の関係がある時、つまり入射及び散乱X線の行路差が入射X線の波長の整数倍に等しいとき、回折現象が観察される。本実施形態では、一次反射とし、n=1の反射条件を満たした回折とする。例えば、多成分系の複合酸化物において、ある元素が置換固溶し、X線回折角(2θ)が低角度側にシフトした場合、面間隔dは広がる方向にあり、高角度側にシフトした場合、面間隔dは縮まる方向にある。このことから、XRDで33.50°に現れるピークが高角度側にシフト(0<α)することは、金属の複合化によって酸化物の面間隔dが縮まる方向に変化していることを意味する。
面間隔dの変化率は、以下の式(III)
d変化率[ppm]=(d−d’)/d×1000000 (III)
(式中、dは、33.50°にピークを示すセリウムとモリブデンの複合酸化物の面間隔を示し、d’は、本実施形態における酸化物触媒の面間隔を示す。)で表される。本実施態様における酸化物触媒においては、dの変化率が5000〜9000ppmである。dの変化率が5000ppm未満であると、セリウムとモリブデンの二成分系に近い酸化物を含むことから、酸化力が強く、触媒として使用すると逐次酸化物の収率が高くなる。一方、変化率が9000ppm超であると、活性が低下する。高活性、かつ、高収率で目的生成物を得る観点から、dの変化率は、より好ましくは5500〜8500ppm、さらに好ましくは6000〜8000ppmである。
【0025】
面間隔dが変化するメカニズムは明らかではないが、Ce、Bi及びMoの複合酸化物に、さらにFeが固溶することによって、複合化されたCe−Bi−Fe−Mo−Oの4成分系の高性能な結晶構造が新たに形成されるためと考えられる。Bi等を分散させて複合化させるための触媒の製造方法については、後で詳述するが、このような結晶構造を形成させるためには、金属の存在比も重要であり、Mo12原子に対するFeの原子比bが2.5<b≦5の範囲を満足する時には生成するが、これより小さいと生成しないか、生成したとしても極少量であり、得られる酸化物触媒は、逐次酸化物の生成を抑制し難くなる。即ち、b≦2.5であると逐次酸化物の収率が高くなり、b>5であるとCO(COやCO等)の収率が高くなるため、その結果、目的生成物の生産性は低下する。
【0026】
なお、Ce−Bi−Fe−Mo−Oの複合化の指標としては、33.50°のシフトを基準とするのが望ましいが、この他のピークについても複合化による影響が起こる。本実施形態における酸化物触媒は、強度の強い順に、X線回折角(2θ)が28.17°±0.05°、33.50°+α°、26.44°±0.05°にピークを有する。この内、28.17°±0.05°、33.50°+α°の2つのピークは主にCe−Mo−Oに由来し、26.44°±0.05°は、主にCo−Mo−Oに由来するピークであり、逐次酸化物の生成抑制の観点で、各ピークの強度は、上記順に従って小さくなることが好ましい。
【0027】
X線回折角(2θ)=33.50°+α°のピークについて、αとは、33.50°からのピークのシフトを示し、d変化率が5000〜9000ppmであるとき、0.10°≦α≦0.25°である。
【0028】
(3)金属酸化物以外の成分
本実施形態における酸化反応用の酸化物触媒は、金属酸化物を担持するための担体を含有してもよい。担体を含む触媒は、金属酸化物の高分散化の点、及び担持された金属酸化物に高い耐摩耗性を与えるという点で好ましい。ここで、押し出し成型法により触媒を成型する場合には担体を含むことが好ましいが、固定床反応器でメタクロレインを製造する際に、打錠成型した触媒にする場合には担体を含まなくてよい。担体としては、特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアが挙げられる。一般的にシリカは、他の担体に比べてそれ自身不活性であり、目的生成物に対する選択性を減ずることなく、金属酸化物に対して良好なバインド作用を有するため、好ましい担体である。さらに、シリカ担体は担持された金属酸化物に、高い耐摩耗性を与え易いという点でも好ましい。押し出し成型法により触媒を成型する場合、触媒全体に対する担体の含有量は5〜10質量%であることが好ましい。
【0029】
流動床反応器で用いる触媒の場合も、上記と同じ観点から、シリカを担体として用いることが好ましい。Ce−Bi−Fe−Mo−Oの結晶構造への影響と、見掛比重を適切にして流動性を良好にする観点で、触媒中の担体の含有量は、触媒の全質量に対して80質量%以下が好ましく、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。流動床反応用のような強度を要する触媒の場合、実用上十分な耐破砕正や耐摩耗性等を示す観点から、担体の含有量は、触媒の全質量に対して20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。
【0030】
[2]酸化反応用触媒の製造方法
上述のように、本発明者らは、Ce、Bi、Fe及びMoを単独及び/又は二成分系酸化物ではなく、4成分が複合化したCe−Bi−Fe−Mo−O系の複合酸化物を得ることに着目し、その組成比や調製方法を総合的に検討した。
【0031】
ビスモリ系(Bi−Mo)触媒と呼ばれるように、BiはMoと共に活性種の形成のための必須元素であるため、活性の観点から多く含まれていることが有利であるが、Bi含有量を多くすると触媒が不均質になることが知られている。例えば、従来、工業的に使用されているBi原料である硝酸Biは難水溶解性物質であり、硝酸Biを溶解させるためには大量の硝酸を必要とし、その結果、焼成後の触媒組成が不均質になるため、従来の触媒調製技術では、Bi含有量を多くするには限界があった。即ち、Bi等の単独酸化物が生成し、均質な触媒が得られず、目的生成物の生産性が低くなるという問題がある。また、目的生成物の選択率を低下させることなく触媒活性を高める観点から、FeはMoやBiと同様に工業的に目的生成物を合成する上で必須の元素であることが古くから報告されているが、国際公開95/35273号パンフレットに報告されているように、少量の添加が最適であり、Fe含量が多くなるとCOやCO等の逐次酸化物の生成が増加する傾向が現れ、目的生成物の選択率が低下してしまう。
【0032】
本発明者らはこの課題を解決すべく試行錯誤を重ねた結果、驚くべきことに、硝酸が多い触媒で、従来よりもBi、Fe含有量の多い触媒成分に、さらにCeを加えることによって、(a)特定の構成比率と、(b)特定の金属塩スラリーの熟成条件、(c)特定の焼成方法の3つの要件を満たした新たな触媒製造技術によって、はじめて単純酸化物の生成を抑制し、4つの成分が複合化したCe−Bi−Fe−Mo−Oの結晶が新たに形成されることを見出した。単に、硝酸Biを増やし、且つ硝酸を多くしただけでは、所望の複合化は起こらなかった。すなわち、硝酸が多い触媒で、Bi、Fe含有量の多い触媒成分にし、さらにCeを加えることによって、はじめてCe−Bi−Fe−Mo−Oの4成分が相溶した結晶構造が得られることを見出した。
【0033】
すなわち、(a)特定の構成比率と、(b)特定の金属塩スラリーの熟成方法、(c)特定の焼成方法の3条件が揃って初めて、複合化されたCe−Bi−Fe−Mo−Oの4成分系の結晶構造が形成され、不飽和アルデヒドの収率の高い触媒を得ることが可能となる。この3条件のうち1つでも欠けた場合、Ce−Mo−OやBi−Mo−O、Fe−Mo−O等の2成分系の複合酸化物や、FeやBi、MoO、CeO等の単純酸化物が生成し、面間隔dの変化率の範囲も5000〜9000ppmから外れ、その結果、不飽和アルデヒドの収率が低下する。
【0034】
本実施態様における酸化物触媒は、例えば、原料スラリーを調製する第1の工程、原料スラリーを噴霧乾燥する第2の工程、第2の工程で得られた乾燥粒子を焼成する第3の工程を包含する方法によって得ることができる。第1〜第3の工程を有する酸化物触媒の製造方法の好ましい態様について以下に説明する。
【0035】
(1)原料スラリーの調製
第1の工程では触媒を構成する各金属元素の触媒原料を混合して原料スラリーを得る。モリブデン、ビスマス、セリウム、鉄、コバルト、ルビジウム、セシウム、銅、ニッケル、マグネシウム及び鉛の各元素源としては、水又は硝酸に可溶なアンモニウム塩、硝酸塩、塩酸塩、有機酸塩を挙げることができ、酸化物や水酸化物、炭酸塩等でもよい。酸化物の場合は、水又は有機溶媒に分散された分散液が好ましく、より好ましくは水に分散された酸化物であり、水に分散されている場合、酸化物を分散させるために高分子等の分散安定剤が含まれていてもよい。酸化物の粒子径は、好ましくは1〜500nm、より好ましくは10〜80nmである。担体を含有する触媒を製造する場合は、原料スラリーにシリカ原料としてシリカゾルを添加するのが好ましい。
【0036】
スラリーを均一に分散化させる観点で、原料スラリー中に、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドなどの水溶性ポリマーや、アミン類、アミノカルボン酸類、しゅう酸、マロン酸、コハク酸などの多価カルボン酸、グリコール酸、りんご酸、酒石酸、クエン酸などの有機酸を適宜添加することもできる。有機酸の添加量は特に限定されないが、均一性と生産量のバランスの観点から、金属酸化物に対して0〜30質量%の範囲で添加することが好ましい。
【0037】
原料スラリーの調製方法は通常用いられる方法であれば、特に限定されないが、例えば、モリブデンのアンモニウム塩を温水に溶解させた溶液と、ビスマス、セリウム、鉄、コバルト、アルカリ金属を硝酸塩として水又は硝酸水溶液に溶解させた溶液を混合することにより調製することができる。混合後のスラリー中の金属元素濃度は、均一性と生産量のバランスの観点から、通常1〜50質量%であり、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは20〜40質量%である。
【0038】
アンモニウム塩と硝酸塩を混合すると沈殿を生じ、スラリーとなり易いが、原料スラリーは懸濁状態にし、熟成を実施するのが好ましい。本明細書中、スラリーの「熟成」とはスラリーを懸濁させた状態で保持することを示す。懸濁させるためには、継続的及び/又は断続的にスラリーを攪拌するのが好ましく、この攪拌の工程で、固形分を粉砕し、触媒前駆体の生成を促し、より微細で均一なスラリーにすることができる。Biの含有量が多い場合には、硝酸が多く分散性の低いスラリーになり易いことから、熟成を行うことが特に好ましい。
【0039】
スラリーを熟成する場合、目的とする複合結晶及び/又はその前駆体を得るために、室温より高い温度であって、スラリーの媒体が液状を保つ温度に加熱することが望ましく、具体的には、20℃〜90℃が好ましく、より好ましくは30℃〜80℃、さらに好ましくは50℃〜70℃である。スラリーの攪拌には、攪拌羽根や攪拌子等、一般的な攪拌手段を使用することができ、スラリーの粘度等にもよるが、攪拌速度は50〜3000rpmが好ましい。スラリーの温度や攪拌エネルギーによっても、触媒前駆体の生成に必要な熟成時間は異なり、温度が高いほど、また攪拌エネルギーが大きいほど、適切な熟成時間は短くなる傾向にある。例えば、スラリー温度が20℃〜90℃で、スターラーを使って攪拌処理をする場合、熟成時間は生産性の観点から1〜24時間が好ましく、より好ましくは1〜20時間、さらに好ましくは1〜10時間である。
【0040】
固形分量の多いスラリーの場合、熟成に先立って、ホモジナイザー等を使用してスラリー中の固形分を粉砕するのが好ましい。前述のとおり、Bi含有量の多い組成にすると、スラリー中の硝酸含有量も高くなる傾向にあり、分散性が低くなり易いことから、ホモジナイザー処理が特に有効である。固形分をより小さく粉砕する観点で、ホモジナイザーの回転数は、5000〜30000rpmが好ましく、10000〜20000rpmがより好ましく、15000〜20000rpmがさらに好ましい。ホモジナイザー処理の時間は、回転数や固形分量にもよるが、一般的には5分〜2時間とするのが好ましい。
【0041】
原料スラリーが均質でない場合、焼成後の触媒組成が不均質になり、均質に複合化された結晶構造は形成され難くなるため、得られた酸化物の複合化が十分でない場合に、スラリーの調製工程の適正化を試みるのは好ましい態様である。なお、上述の原料スラリーの調製工程は一例であって限定的なものではなく、各元素源の添加手順を変えたり、硝酸濃度を調整したり、アンモニア水をスラリー中に添加してスラリーのpHや粘度を改質させたりしてもよい。より多くCe−Bi−Fe−Mo−Oの結晶構造を形成させるには、均質なスラリーにすることが重要であり、この観点から、原料スラリーのpHは2.0以下であることが好ましい。原料スラリーのpHは、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.0以下である。原料スラリーのpHが2.0を超えると、ビスマス化合物の沈殿が生成し、Ce−Bi−Fe−Mo−Oの結晶構造の生成を妨げる場合がある。
【0042】
(2)乾燥
第2の工程では、第1の工程で得られた原料スラリーを乾燥して乾燥粒子を得る。乾燥方法は、特に制限はなく一般に用いられている方法によって行うことができ、蒸発乾涸法、噴霧乾燥法、減圧乾燥法など任意の方法で行なうことができる。噴霧乾燥法では、通常工業的に実施される遠心方式、二流体ノズル方式及び高圧ノズル方式等の方法によって行うことができ、乾燥熱源としては、スチーム、電気ヒーター等によって加熱された空気を用いることが好ましい。この際、噴霧乾燥装置の乾燥機入口の温度は、通常150〜400℃、好ましくは180〜400℃、より好ましくは200〜350℃である。
【0043】
(3)焼成
第3の工程では、第2の工程で得られた乾燥粒子を焼成する。焼成は回転炉、トンネル炉、マッフル炉等の焼成炉を用いて行うことができる。乾燥粒子の焼成は、仮焼成と本焼成の2段焼成で行うのが好ましい。1段目は、通常120〜350℃、好ましくは150℃〜350℃、より好ましくは200℃〜350℃の温度範囲で仮焼成を行う。仮焼成の目的は、乾燥粒子中に残存している硝酸の除去とアンモニウム塩である原料と硝酸塩である原料に由来する硝酸アンモニウム及び含有有機物をおだやかに燃焼させることにあるので、1段目の焼成では、この目的を達成できる程度に乾燥粒子を加熱すればよい。仮焼成の時間は、通常0.1〜72時間、好ましくは1〜48時間、さらに好ましくは3〜24時間である。150℃以下の低温の場合、長時間の仮焼成を行うこが好ましく、330℃以上の高温の場合、2時間以下の短時間の仮焼成を行うことが好ましい。仮焼成の温度が高すぎたり、時間が長すぎたりすると、仮焼成の段階でセリウムとモリブデンの2成分系のみで酸化物が成長し易くなってしまう結果、後述の本焼成においてCe−Bi−Fe−Mo−Oの結晶構造が生成し難くなってしまう。よって仮焼成温度及び時間の上限は、セリウムとモリブデンの2成分系酸化物の生成が起こらない程度に設定するのが好ましい態様である。
【0044】
仮焼成の際、昇温速度は、急激な燃焼反応を抑える観点からも遅い方が望ましい。本実施形態における酸化物触媒は、多成分系であるため、原料を、例えば金属硝酸塩とした場合、各金属硝酸塩の分解温度が異なり、焼成中に硝酸が動くため、焼成後の触媒組成が不均質になりやすい。特に、Bi含有量が多い場合、水に難溶解性の硝酸Bi量が多いため、溶解させるための硝酸量が多くなる。このため、より均質に複合化された構造を形成させるためには、ゆっくりと昇温し、硝酸や有機物などの燃焼や分解成分を除去するのが好ましい。昇温速度は、通常0.1℃/min〜100℃/min、より好ましくは0.1℃/min〜75℃/min、さらに好ましくは0.1℃/min〜50℃/minである。
【0045】
仮焼成の後、2段目の本焼成を行うのが好ましいが、この目的は、所望の結晶構造を形成し易くすることにある。本発明者らの知見によると、結晶構造は焼成温度と焼成時間の積の影響を受けるため、焼成温度と焼成時間を適切に設定することが好ましい。本焼成の温度は、Ce−Bi−Fe−Mo−Oの結晶を生成させる観点で仮焼成の温度より高く、700℃以下の温度に設定することが好ましい。本焼成の焼成温度は、Ce−Bi−Fe−Mo−Oの結晶構造の生成し易さの観点で、400〜700℃が好ましく、より好ましくは400℃〜650℃、さらに好ましくは450℃〜600℃である。このような温度で焼成を行う場合、焼成温度と焼成時間の積を適切にして結晶生成を促す観点から、本焼成の時間は、通常0.1〜72時間、好ましくは2〜48時間、より好ましくは3〜24時間である。結晶構造の生成のために焼成温度×焼成時間を適切にする観点で、400℃以下の低温の場合、例えば24〜72時間程度の長時間の本焼成を行うことが好ましく、600℃以上の高温の場合、表面積が小さくなりすぎて触媒の活性が下がってしまうのを防ぐ観点から、1時間以下の短時間の本焼成を行うことが好ましい。
以上の工程を全て行うことで、複合化されたCe−Bi−Fe−Mo−Oの4成分系の結晶構造が形成され易くなる。
【0046】
本焼成工程において、Ce−Bi−Fe−Mo−Oの4成分系の結晶構造が生成したことは、本焼成の後にX線構造解析を行うことによって確認できる。本焼成の後でX線構造解析を行うと、Ce−Bi−Fe−Mo−Oの4成分系の結晶構造が生成していれば、33.50°+α°にピークが観察される。セリウムとモリブデンのみからなる酸化物の結晶が生成する場合は33.50°にピークが現れるが、Ce−Bi−Fe−Mo−Oの4成分系の場合は、このピークがシフトするので、このシフトを指標として4成分系結晶の生成を確認することができる。
このシフト(α°)の大きさを調べ、33.50°にピークを示すセリウムとモリブデンの複合酸化物の面間隔dを基準にして、
2dsinθ=nλ(n:整数) (II)
d変化率[ppm]=(d―d’)/d×1000000 (III)
を用いてdの変化率を調べる。本実施形態においては、dの変化率が5000〜9000ppmであれば、Ce−Bi−Fe−Mo−Oの4成分系の結晶構造が生成したと判断する。
【0047】
[3]不飽和アルデヒドの製造方法
本実施形態における酸化物触媒を用い、プロピレン及びイソブチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィン及び/又はt−ブチルアルコールを酸化反応させることにより、不飽和アルデヒドを製造することができる。以下、その具体例について説明するが、本実施形態の製造方法は、以下の具体例に限定されるものではない。
【0048】
(1)メタクロレインの製造方法
メタクロレインは、例えば、本実施形態の酸化物触媒を用いて、イソブチレン、t−ブチルアルコールの気相接触酸化反応を行うことにより得ることができる。気相接触酸化反応は、固定床反応器内の触媒層に、1〜10容量%のイソブチレン、t−ブチルアルコール又は両者の混合ガスに対して分子状酸素濃度が1〜20容量%になるように、分子状酸素含有ガスと希釈ガスを添加した混合ガスからなる原料ガスを導入する。イソブチレン、t−ブチルアルコールの濃度は、通常1〜10容量%、好ましくは6〜10容量%、より好ましくは7〜9容量%である。反応温度は300〜480℃、好ましくは350℃〜450℃、より好ましくは400℃〜450℃である。圧力は、常圧〜5気圧であり、空間速度400〜4000/hr[Normal temperature pressure (NTP)条件下]で原料ガスを導入することで行うことができる。酸素と、イソブチレン若しくはt−ブチルアルコール、又は両者の混合ガスのモル比は、不飽和アルデヒドの収率を向上させるために反応器の出口酸素濃度を制御する観点から、通常1.0〜2.0であり、好ましくは1.1〜1.8、より好ましくは1.2〜1.8である。
【0049】
分子状酸素含有ガスとしては、例えば、純酸素ガス、及びNO、空気等の酸素を含むガスが挙げられ、工業的観点から空気が好ましい。希釈ガスとしては、例えば、窒素、二酸化炭素、水蒸気及びこれらの混合ガスが挙げられる。混合ガスにおける、分子状酸素含有ガスと希釈ガスの混合比に関しては、体積比で0.01<分子状酸素/(分子状酸素含有ガス+希釈ガス)<0.3の条件を満足することが好ましい。さらに、原料ガスにおける分子状酸素の濃度は1〜20容量%であることが好ましい。
【0050】
原料ガス中の水蒸気は、触媒へのコーキングを防ぐ観点からは必要であるが、メタクリル酸や酢酸等のカルボン酸の副生を抑制するために、できるだけ希釈ガス中の水蒸気濃度を下げることが好ましい。原料ガス中の水蒸気は、通常0〜30容量%の範囲で使用される。
【0051】
(2)アクロレインの製造方法
プロピレンの気相接触酸化によりアクロレインを製造する際の条件等に特に制限はなく、プロピレンの気相接触酸化によりアクロレインを製造する際に一般に用いられている方法によって行うことができる。例えば、プロピレン1〜15容量%、分子状酸素3〜30容量%、水蒸気0〜60容量%、窒素、炭酸ガスなどの不活性ガス20〜80容量%、などからなる混合ガスを、反応器内の触媒層に、250〜450℃、0.1〜1MPaの加圧下、空間速度(SV)300〜5000hr−1で導入すればよい。また、反応器については、一般の固定床反応器、流動床反応器あるいは移動床反応器が用いられる。
【実施例】
【0052】
以下に実施例を示して、本実施形態をより詳細に説明するが、本実施形態は以下に記載の実施例によって限定されるものではない。尚、酸化物触媒における酸素原子の原子比は、他の元素の原子価条件により決定されるものであり、実施例及び比較例においては、触媒の組成を表す式中、酸素原子の原子比は省略する。また、酸化物触媒における各元素の組成比は、仕込みの組成比から算出した。
【0053】
<X線回折角度の測定>
XRDの測定は、National Institute of Standards & Technologyが標準参照物質660として定めるところのLaB化合物の(111)面、(200)面を測定し、それぞれの値を37.441°、43.506°となるように規準化した。
XRDの装置としては、ブルカー社製:D8 ADVANCEを用いた。XRDの測定条件は、X線出力:40kV−40mA、発散スリット(DS):0.3°、Step幅:0.02°/step、計数Time:2.0sec、測定範囲:2θ=5°〜60°とした。
【0054】
実施例及び比較例において、反応成績を示すために用いた、転化率、選択率、及び収率は次式で定義される。
転化率=(反応した原料のモル数/供給した原料のモル数)×100
選択率=(生成した化合物のモル数/反応した原料のモル数)×100
収率=(生成した化合物のモル数/供給した原料のモル数)×100
【0055】
目的生成物の生産性は、各触媒1t当りの目的生成物の生成量を算出後、触媒10tで8000時間連続運転を行ったものと仮定して次式で定義される。
生産性(t)=({時間当たりの供給した原料のモル数(mol/h)×収率)/触媒量(t)}×10(t)×8000(hr)/目的生成物の分子量
【0056】
[実施例1]
約90℃の温水197.0gにヘプタモリブデン酸アンモニウム65.7gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス43.8g、硝酸セリウム25.5g、硝酸鉄36.4g、硝酸セシウム0.66g、及び硝酸コバルト34.5gを18質量%の硝酸水溶液42.4gに溶解させ、約90℃の温水205.0gを添加した(B液)。A液とB液の両液を混合し、ホモジナイザーを用い、20000rpmで1時間処理した後、約65℃で約4時間程度マグネチックスターラーを使って撹拌を継続することによって熟成させ、原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、さらに得られた噴霧乾燥触媒前駆体を室温から昇温速度1.4℃/minで昇温し、250℃で3時間仮焼成した。得られた仮焼成触媒前駆体を530℃で8時間本焼成した。得られた酸化物触媒の組成を表1に、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
触媒の反応評価として、触媒4.0gを直径14mmのジャケット付SUS製反応管に充填し、反応温度430℃でイソブチレン8容量%、酸素12.8容量%、水蒸気3.0容量%及び窒素容量76.2%からなる混合ガスを120mL/min(NTP)の流量で通気し、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0057】
[実施例2]
約90℃の温水206.3gにヘプタモリブデン酸アンモニウム68.8gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス33.2g、硝酸セリウム29.6g、硝酸鉄44.7g、硝酸セシウム0.57g、及び硝酸コバルト32.3gを18質量%の硝酸水溶液42.6gに溶解させ、約90℃の温水196.2gを添加した(B液)。A液とB液の両液を混合し、ホモジナイザーを用い、20000rpmで1時間処理した後、約65℃で約4時間程度撹拌混合することによってスラリーを熟成し、原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、さらに得られた噴霧乾燥触媒前駆体を室温から昇温速度1.4℃/minで昇温し、250℃で3時間仮焼成した。得られた仮焼成触媒前駆体を520℃で14時間本焼成した。得られた酸化物触媒の組成を表1に、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。また、X線回折パターンを図1及び2に示す。触媒のBiリッチ相のSTEM−EDX分析を行った結果、Bi原子比を1とすると、Ce原子比は0.32、Fe原子比は0.16、Mo原子比は1.1となり、Biが多く存在する部位にCe、Fe、Moが存在し、Ce−Bi−Fe−Mo−Oの4成分系の結晶構造が生成していた。
触媒の反応評価として、触媒3.5gを反応管に充填し、実施例1と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0058】
[実施例3]
約90℃の温水202.3gにヘプタモリブデン酸アンモニウム67.4gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス40.3g、硝酸セリウム23.5g、硝酸鉄50.3g、硝酸セシウム0.56g、及び硝酸コバルト28.0gを18質量%の硝酸水溶液42.7gに溶解させ、約90℃の温水201.5gを添加した(B液)。A液とB液の両液を混合し、ホモジナイザーを用い、20000rpmで1時間処理した後、約65℃で約4時間程度撹拌混合することによってスラリーを熟成し、原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、さらに得られた噴霧乾燥触媒前駆体を室温から昇温速度1.4℃/minで昇温し、250℃で3時間仮焼成した。得られた仮焼成触媒前駆体を540℃で3時間本焼成した。得られた酸化物触媒の組成を表1に、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
触媒の反応評価として、触媒3.5gを反応管に充填し、実施例1と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0059】
[実施例4]
約90℃の温水202.2gにヘプタモリブデン酸アンモニウム67.4gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス40.3g、硝酸セリウム23.5g、硝酸鉄55.4g、硝酸セシウム0.56g、及び硝酸コバルト24.2gを18質量%の硝酸水溶液42.9gに溶解させ、約90℃の温水202.7gを添加した(B液)。A液とB液の両液を混合し、ホモジナイザーを用い、20000rpmで1時間処理した後、約65℃で約4時間程度撹拌混合することによってスラリーを熟成し、原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、さらに得られた噴霧乾燥触媒前駆体を室温から昇温速度1.4℃/minで昇温し、250℃で3時間仮焼成した。得られた仮焼成触媒前駆体を530℃で8時間本焼成した。得られた酸化物触媒の組成を表1に、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
触媒の反応評価として、触媒3.5gを反応管に充填し、実施例1と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0060】
[実施例5]
約90℃の温水201.6gにヘプタモリブデン酸アンモニウム67.2gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス40.2g、硝酸セリウム23.4g、硝酸鉄60.4g、硝酸セシウム0.55g、及び硝酸コバルト18.6g及び硝酸鉛1.0gを18質量%の硝酸水溶液37.9gに溶解させ、約90℃の温水203.9gを添加した(B液)。A液とB液の両液を混合し、ホモジナイザーを用い、20000rpmで1時間処理した後、約65℃で約4時間程度撹拌混合することによってスラリーを熟成し、原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、さらに得られた噴霧乾燥触媒前駆体を室温から昇温速度1.4℃/minで昇温し、250℃で3時間仮焼成した。得られた仮焼成触媒前駆体を540℃で5時間本焼成した。得られた酸化物触媒の組成を表1に、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
触媒の反応評価として、触媒3.6gを反応管に充填し、実施例1と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0061】
[実施例6]
約90℃の温水198.56gにヘプタモリブデン酸アンモニウム66.2gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス39.6g、硝酸セリウム23.0g、硝酸鉄59.5g、硝酸セシウム0.36g、及び硝酸コバルト18.3g及び硝酸ニッケル9.1gを18質量%の硝酸水溶液38.4gに溶解させ、約90℃の温水210.0gを添加した(B液)。A液とB液の両液を混合し、ホモジナイザーを用い、20000rpmで1時間処理した後、約65℃で約4時間程度撹拌混合することによってスラリーを熟成し、原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、さらに得られた噴霧乾燥触媒前駆体を室温から昇温速度1.4℃/minで昇温し、250℃で3時間仮焼成した。得られた仮焼成触媒前駆体を520℃で14時間本焼成した。得られた酸化物触媒の組成を表1に、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
触媒の反応評価として、触媒3.0gを反応管に充填し、実施例1と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0062】
[実施例7]
約90℃の温水202.1gにヘプタモリブデン酸アンモニウム67.4gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス40.3g、硝酸セリウム23.4g、硝酸鉄55.4g、硝酸セシウム0.56g、及び硝酸コバルト22.3g、硝酸銅1.5gを18質量%の硝酸水溶液37.9gに溶解させ、約90℃の温水203.1gを添加した(B液)。A液とB液の両液を混合し、ホモジナイザーを用い、20000rpmで1時間処理した後、約65℃で約4時間程度撹拌混合することによってスラリーを熟成し、原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、さらに得られた噴霧乾燥触媒前駆体を室温から昇温速度1.4℃/minで昇温し、250℃で3時間仮焼成した。得られた仮焼成触媒前駆体を550℃で3時間本焼成した。得られた酸化物触媒の組成を表1に、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
触媒の反応評価として、触媒3.2gを反応管に充填し、実施例1と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0063】
[実施例8]
約90℃の温水202.1gにヘプタモリブデン酸アンモニウム67.0gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス44.7g、硝酸セリウム26.1g、硝酸鉄37.2g、硝酸ルビジウム0.51g、及び硝酸コバルト18.5g、硝酸マグネシウム14.6gを18質量%の硝酸水溶液37.7gに溶解させ、約90℃の温水203.1gを添加した(B液)。A液とB液の両液を混合し、ホモジナイザーを用い、20000rpmで1時間処理した後、約65℃で約4時間程度撹拌混合することによってスラリーを熟成し、原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、さらに得られた噴霧乾燥触媒前駆体を室温から昇温速度1.4℃/minで昇温し、250℃で3時間仮焼成した。得られた仮焼成触媒前駆体を540℃で3時間本焼成した。得られた酸化物触媒の組成を表1に、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
触媒の反応評価として、触媒3.1gを反応管に充填し、実施例1と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0064】
[実施例9]
約90℃の温水202.2gにヘプタモリブデン酸アンモニウム67.4gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス40.3g、硝酸セリウム23.5g、硝酸鉄55.4g、硝酸セシウム0.56g、及び硝酸コバルト24.2gを18質量%の硝酸水溶液42.9gに溶解させ、約90℃の温水202.7gを添加した(B液)。A液とB液の両液を混合し、ホモジナイザーを用い、20000rpmで1時間処理した後、約65℃で約4時間程度撹拌混合することによってスラリーを熟成し、原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、さらに得られた噴霧乾燥触媒前駆体を室温から昇温速度1.4℃/minで昇温し、150℃で36時間仮焼成した。得られた仮焼成触媒前駆体を520℃で8時間本焼成した。得られた酸化物触媒の組成を表1に、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
触媒の反応評価として、触媒3.9gを反応管に充填し、実施例1と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0065】
[実施例10]
約90℃の温水202.2gにヘプタモリブデン酸アンモニウム67.4gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス40.3g、硝酸セリウム23.5g、硝酸鉄55.4g、硝酸セシウム0.56g、及び硝酸コバルト24.2gを18質量%の硝酸水溶液42.9gに溶解させ、約90℃の温水202.7gを添加した(B液)。A液とB液の両液を混合し、ホモジナイザーを用い、20000rpmで1時間処理した後、約65℃で約4時間程度撹拌混合することによってスラリーを熟成し、原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、さらに得られた噴霧乾燥触媒前駆体を室温から昇温速度75℃/minで昇温し、250℃で3時間仮焼成した。得られた仮焼成触媒前駆体を530℃で4時間本焼成した。得られた酸化物触媒の組成を表1に、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
触媒の反応評価として、触媒3.9gを反応管に充填し、実施例1と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0066】
[実施例11]
約90℃の温水202.2gにヘプタモリブデン酸アンモニウム67.4gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス40.3g、硝酸セリウム23.5g、硝酸鉄55.4g、硝酸セシウム0.56g、及び硝酸コバルト24.2gを18質量%の硝酸水溶液42.9gに溶解させ、約90℃の温水202.7gを添加した(B液)。A液とB液の両液を混合し、ホモジナイザーを用い、20000rpmで1時間処理した後、約65℃で約4時間程度撹拌混合することによってスラリーを熟成し、原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、さらに得られた噴霧乾燥触媒前駆体を室温から昇温速度1.4℃/minで昇温し、250℃で3時間仮焼成した。得られた仮焼成触媒前駆体を400℃で48時間本焼成した。得られた酸化物触媒の組成を表1に、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
触媒の反応評価として、触媒3.2gを反応管に充填し、実施例1と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0067】
[実施例12]
約90℃の温水202.2gにヘプタモリブデン酸アンモニウム67.4gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス40.3g、硝酸セリウム23.5g、硝酸鉄55.4g、硝酸セシウム0.56g、及び硝酸コバルト24.2gを18質量%の硝酸水溶液42.9gに溶解させ、約90℃の温水202.7gを添加した(B液)。A液とB液の両液を混合し、ホモジナイザーを用い、20000rpmで1時間処理した後、約65℃で約4時間程度撹拌混合することによってスラリーを熟成し、原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、さらに得られた噴霧乾燥触媒前駆体を室温から昇温速度1.4℃/minで昇温し、250℃で3時間仮焼成した。得られた仮焼成触媒前駆体を640℃で30分本焼成した。得られた酸化物触媒の組成を表1に、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
触媒の反応評価として、触媒5.4gを反応管に充填し、実施例1と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0068】
[実施例13]
実施例3と同じ触媒を用い、触媒の反応評価として、触媒6.4gを反応管に充填し、反応温度を400℃に変更したこと以外は実施例1と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0069】
[実施例14]
実施例3と同じ触媒を用い、触媒の反応評価として、触媒3.0gを反応管に充填し、反応温度を460℃に変更したこと以外は実施例1と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0070】
[実施例15]
約90℃の温水208.5gにヘプタモリブデン酸アンモニウム69.5gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス32.0g、硝酸セリウム7.2g、硝酸鉄39.9g、硝酸セシウム1.3g、及び硝酸コバルト43.2g、硝酸ニッケル24.2gを18質量%の硝酸水溶液38.3gに溶解させ、約90℃の温水208.5gを添加した(B液)。A液とB液の両液を混合し、ホモジナイザーを用い、20000rpmで1時間処理した後、約60℃で約4時間程度撹拌混合して熟成し、原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、さらに得られた噴霧乾燥触媒前駆体を室温から昇温速度1.4℃/minで昇温し、280℃で3時間仮焼成した。得られた仮焼成触媒前駆体を550℃で10時間本焼成した。得られた酸化物触媒の組成を表1に、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
触媒の反応評価として、触媒4.0gを反応管に充填し、実施例1と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0071】
[実施例16]
実施例1と同じ組成でA液とB液の両液を混合し、ホモジナイザー処理をしないで、約65℃で1時間程度マグネチックスターラーを使って撹拌を継続することによって熟成させ、原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、さらに得られた噴霧乾燥触媒前駆体を室温から昇温速度1.4℃/minで昇温し、250℃で3時間仮焼成した。得られた仮焼成触媒前駆体を530℃で8時間本焼成した。得られた酸化物触媒の組成を表1に、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
触媒の反応評価として、触媒4.0gを反応管に充填し、実施例1と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0072】
[実施例17]
実施例1と同じ組成でA液とB液の両液を混合し、ホモジナイザー処理をしないで、約65℃で24時間程度マグネチックスターラーを使って撹拌を継続することによって熟成させ、原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、さらに得られた噴霧乾燥触媒前駆体を室温から昇温速度1.4℃/minで昇温し、250℃で3時間仮焼成した。得られた仮焼成触媒前駆体を530℃で8時間本焼成した。得られた酸化物触媒の組成を表1に、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
触媒の反応評価として、触媒4.0gを反応管に充填し、実施例1と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0073】
[実施例18]
実施例1と同じ触媒を用いて、触媒の反応評価として、触媒4.5gを反応管に充填し、反応温度を350℃としたこと以外は実施例1と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0074】
[実施例19]
実施例1と同じ触媒を用いて、触媒の反応評価として、触媒4.0gを反応管に充填し、反応温度を480℃としたこと以外は実施例1と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0075】
[実施例20]
実施例1と同じ触媒を用いて、触媒の反応評価として、触媒4.0gを反応管に充填し、反応温度430℃でイソブチレン6容量%、酸素9.6容量%、水蒸気3.0容量%及び窒素容量81.4%からなる混合ガスを100mL/min(NTP)の流量で通気し、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0076】
[実施例21]
実施例1と同じ触媒を用いて、触媒の反応評価として、触媒4.0gを反応管に充填し、反応温度を350℃としたこと以外は実施例20と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0077】
[比較例1]
約90℃の温水218.4gにヘプタモリブデン酸アンモニウム72.8gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス26.8g、硝酸セリウム7.5g、硝酸鉄19.5g、硝酸セシウム2.0g、及び硝酸コバルト79.5gを18質量%の硝酸水溶液42.1gに溶解させ、約90℃の温水177.8gを添加した(B液)。A液とB液の両液を混合し、ホモジナイザーを用い、20000rpmで1時間処理した後、約65℃で約4時間程度撹拌混合して熟成し、原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、さらに得られた噴霧乾燥触媒前駆体を室温から昇温速度1.4℃/minで昇温し、250℃で3時間仮焼成した。得られた仮焼成触媒前駆体を520℃で5時間本焼成した。得られた酸化物触媒の組成を表1に、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。また、X線回折パターンを図1及び2に示す。
触媒のBiリッチ相のSTEM−EDX分析を行った結果、Bi原子比を1とすると、Ce原子比は0.07、Fe原子比は0.06、Mo原子比は1.1となり、実施例2と比較するとBiに対してCeとFeの含有量が少なく、2成分系のBi−Mo−Oが生成しており、Ce−Bi−Mo−Oの4成分系の結晶構造の生成量が少なかった。
触媒の反応評価として、触媒4.2gを反応管に充填し、実施例1と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0078】
[比較例2]
約90℃の温水197.9gにヘプタモリブデン酸アンモニウム66.0gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス39.5g、硝酸セリウム23.0g、硝酸鉄75.7g、硝酸セシウム0.54g、及び硝酸コバルト15.5gを18質量%の硝酸水溶液42.1gに溶解させ、約90℃の温水214.4gを添加した(B液)。A液とB液の両液を混合し、ホモジナイザーを用い、20000rpmで1時間処理した後、約65℃で約4時間程度撹拌混合して熟成し、原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、さらに得られた噴霧乾燥触媒前駆体を室温から昇温速度1.4℃/minで昇温し、250℃で3時間仮焼成した。得られた仮焼成触媒前駆体を540℃で5時間本焼成した。得られた酸化物触媒の組成を表1に、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
触媒の反応評価として、触媒4.3gを反応管に充填し、実施例1と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0079】
[比較例3]
約90℃の温水202.2gにヘプタモリブデン酸アンモニウム67.4gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス40.3g、硝酸セリウム23.5g、硝酸鉄55.4g、硝酸セシウム0.56g、及び硝酸コバルト24.2gを18質量%の硝酸水溶液42.9gに溶解させ、約90℃の温水202.7gを添加した(B液)。A液とB液の両液を混合し、原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、さらに得られた噴霧乾燥触媒前駆体を室温から昇温速度1.4℃/minで昇温し、250℃で3時間仮焼成した。得られた仮焼成触媒前駆体を540℃で5時間本焼成した。得られた酸化物触媒の組成を表1に、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
触媒の反応評価として、触媒4.6gを反応管に充填し、実施例1と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0080】
[比較例4]
約90℃の温水202.2gにヘプタモリブデン酸アンモニウム67.4gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス40.3g、硝酸セリウム23.5g、硝酸鉄55.4g、硝酸セシウム0.56g、及び硝酸コバルト24.2gを18質量%の硝酸水溶液42.9gに溶解させ、約90℃の温水202.7gを添加した(B液)。A液とB液の両液を混合し、ホモジナイザーを用い、20000rpmで1時間処理した後、約65℃で約4時間程度撹拌混合して熟成し、原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、さらに得られた噴霧乾燥触媒前駆体を室温から昇温速度1.4℃/minで昇温し、105℃で12時間仮焼成した。得られた仮焼成触媒前駆体を530℃で8時間本焼成した。得られた酸化物触媒の組成を表1に、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
触媒の反応評価として、触媒4.9gを反応管に充填し、実施例1と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0081】
[比較例5]
約90℃の温水202.2gにヘプタモリブデン酸アンモニウム67.4gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス40.3g、硝酸セリウム23.5g、硝酸鉄55.4g、硝酸セシウム0.56g、及び硝酸コバルト24.2gを18質量%の硝酸水溶液42.9gに溶解させ、約90℃の温水202.7gを添加した(B液)。A液とB液の両液を混合し、ホモジナイザーを用い、20000rpmで1時間処理した後、約65℃で約4時間程度撹拌混合して熟成し、原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、さらに得られた噴霧乾燥触媒前駆体を室温から昇温速度1.4℃/minで昇温し、250℃で3時間仮焼成した。得られた仮焼成触媒前駆体を720℃で30分本焼成した。得られた酸化物触媒の組成を表1に、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
触媒の反応評価として、触媒5.9gを反応管に充填し、実施例1と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0082】
[比較例6]
原料スラリーを熟成しなかったこと以外は実施例15と同様の方法により触媒を調製した。得られた酸化物触媒の組成を表1に、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
触媒の反応評価として、触媒4.5gを反応管に充填し、実施例1と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0083】
[比較例7]
原料スラリーの熟成をしなかったこと以外は実施例1と同様の方法により触媒を調製した。得られた触媒を用いて、触媒の反応評価として、触媒4.0gを反応管に充填し、実施例1と同じ反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0084】
[比較例8]
原料スラリーの熟成をしなかったこと以外は実施例1と同様の方法により触媒を調製した。得られた触媒を用いて、触媒の反応評価として、触媒5.0gを反応管に充填し、実施例18と同じ反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0085】
[比較例9]
原料スラリーの熟成をしなかったこと以外は実施例1と同様の方法により触媒を調製した。得られた触媒を用いて、触媒の反応評価として、触媒4.0gを反応管に充填し、実施例19と同じ反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0086】
[比較例10]
原料スラリーの熟成をしなかったこと以外は実施例1と同様の方法により触媒を調製した。得られた触媒を用いて、触媒の反応評価として、触媒5.0gを反応管に充填し、実施例20と同じ反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0087】
[比較例11]
原料スラリーの熟成をしなかったこと以外は実施例1と同様の方法により触媒を調製した。得られた触媒を用いて、触媒の反応評価として、触媒6.0gを反応管に充填し、実施例21と同じ反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0088】
[比較例12]
約90℃の温水213.7gにヘプタモリブデン酸アンモニウム71.2gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス32.8g、硝酸セリウム14.6g、硝酸鉄34.1g、硝酸セシウム2.6g、硝酸コバルト49.2g及び、硝酸カリウム0.35gを18質量%の硝酸水溶液37.0gに溶解させ、約90℃の温水183.2gを添加した(B液)。A液とB液の両液を混合し、原料スラリーを得た。この原料スラリーを噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、さらに得られた噴霧乾燥触媒前駆体を室温から昇温速度1.4℃/minで昇温し、250℃で3時間仮焼成した。得られた仮焼成触媒前駆体を510℃で3時間本焼成した。得られた酸化物触媒の組成を表1に、粉末X線回折の測定結果を表2に示す。
触媒の反応評価として、触媒3.8gを反応管に充填し、実施例1と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表3に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
[実施例22]
実施例1で得られた触媒を用い、触媒の反応評価として、触媒4.0gを直径14mmのジャケット付SUS製反応管に充填し、反応温度430℃でt−ブチルアルコール8容量%、酸素12.8容量%、水蒸気3.0容量%及び窒素容量76.2%からなる混合ガスを120mL/min(NTP)の流量で通気し、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表4に示す。
【0093】
[比較例12]
比較例1で得られた触媒を用いて、触媒の反応評価として、触媒4.2gを反応管に充填し、実施例22と同様の反応条件でメタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表4に示す。
【0094】
【表4】
【0095】
[実施例23]
実施例1で得られた触媒を用い、触媒20mLを内径15mmのSUS製ジャケット付反応管に充填し、プロピレン濃度10容量%、水蒸気濃度17容量%及び空気濃度73容量%の原料ガスを常圧にて接触時間2.3秒にて通過させて、反応温度430℃にてアクロレイン合成反応を実施した。反応評価結果を表5に示す。
【0096】
[比較例13]
比較例1で得られた触媒を用いて、触媒20mLを反応管に充填し、実施例23と同様の反応条件でアクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表5に示す。
【0097】
【表5】
【0098】
上記反応評価結果から明らかなように、本実施形態における酸化物触媒は、オレフィン及び/又はアルコールを酸化反応において、逐次酸化物の生成が少なく、不飽和アルデヒドの選択率を高くすることが可能であった。
【0099】
本出願は、2011年6月28日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2011−143284)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の酸化物触媒は、オレフィン及び/又はアルコールの酸化反応に用いる触媒としての産業上利用可能性を有する。
図1
図2