特許第5778773号(P5778773)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778773
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】電気機械のための回転子
(51)【国際特許分類】
   H02K 55/04 20060101AFI20150827BHJP
【FI】
   H02K55/04
【請求項の数】14
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-529656(P2013-529656)
(86)(22)【出願日】2011年9月22日
(65)【公表番号】特表2013-538035(P2013-538035A)
(43)【公表日】2013年10月7日
(86)【国際出願番号】EP2011066544
(87)【国際公開番号】WO2012049002
(87)【国際公開日】20120419
【審査請求日】2013年9月3日
(31)【優先権主張番号】102010041456.5
(32)【優先日】2010年9月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599078705
【氏名又は名称】シーメンス エナジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(72)【発明者】
【氏名】フランク、ミヒァエル
(72)【発明者】
【氏名】ファン ハッセルト、ペーター
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04101793(US,A)
【文献】 特表2006−515980(JP,A)
【文献】 特開平04−285463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 55/00−55/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(R)を中心に回転し超電導回転子巻線を備えた回転子体(2)と、回転子巻線(3、4)の冷却のために設けられ、回転子体(2)の内部ではなく回転子体(2)上に半径方向に対向配置された少なくとも1対の冷却管ループ(3,4)を備えた冷却装置とを有し、極低温冷却材が回転軸(R)を中心とする回転子(2)の回転時に冷却管ループ(3、4)内を軸方向に第1の回転子軸端(201)からこれに対向する第2の回転子軸端(202)に搬送されそこから戻される電気機械のための回転子において、冷却装置に1つまたは複数の接続管(6)が設けられ、この管が少なくとも1対の冷却管ループ(3、4)の一方の冷却管ループ(3)を他方の冷却管ループ(4)に接続することを特徴とする回転子。
【請求項2】
回転子(2)が1対の冷却管ループ(3、4)を備えた2極回転子巻線を有するかまたは回転子が複数の極対を備えた回転子巻線と極対の数に対応する数の冷却管ループ(3、4)の対を有することを特徴とする請求項1記載の回転子。
【請求項3】
第1の回転子軸端(201)に冷却材貯留器(5)が設けられ、冷却管ループ(3、4)と接続されることを特徴とする請求項1または2記載の回転子。
【請求項4】
少なくとも1つの接続管(6)が直線管片であり、少なくとも1対の冷却管ループ(3、4)の一方の冷却管ループ(3)から他方の冷却管ループ(4)に向かって半径方向に延びていることを特徴とする請求項1から3の1つに記載の回転子。
【請求項5】
少なくとも1つの接続管(6)が湾曲管片であることを特徴とする請求項1から3の1つに記載の回転子。
【請求項6】
1対の冷却管ループ(3、4)用に2つの湾曲管片の管片が接続管(6)として設けられ、2つの半円型の管片(6)が共同して1つの円を形成することを特徴とする請求項5記載の回転子。
【請求項7】
1つまたは複数の接続管(6)が第2の回転子軸端(202)に設けられることを特徴とする請求項1から6の1つに記載の回転子。
【請求項8】
冷却管ループ(3、4)がU字形を成し、冷却材が回転子軸(R)を中心とする回転子(1)の回転時にU字形の脚(301、401)に沿って第1の回転子軸端(201)から第2の回転子軸端(202)に搬送され、そこから中間片(303、403)を介してU字形の他方の脚(302、402)に達し、第1の回転子軸端(201)に戻されることを特徴とする請求項1から7の1つに記載の回転子。
【請求項9】
接続管(6)が対向する1対の冷却管ループ(3、4)のU字形の中間片(303、403)を接続することを特徴とする請求項8記載の回転子。
【請求項10】
少なくとも1つの冷却管ループ(3、4)に1つまたは複数の冷却材加熱手段が設けられることを特徴とする請求項1から9の1つに記載の回転子。
【請求項11】
1つまたは複数の冷却材加熱手段が1つまたは複数の加熱素子(7)を有することを特徴とする請求項10記載の回転子。
【請求項12】
1つまたは複数の冷却材加熱手段が熱絶縁内の1つまたは複数の熱漏洩箇所を有することを特徴とする請求項10または11記載の回転子。
【請求項13】
1対の冷却管ループ(3、4)に対し専らこの対の一方の冷却管ループ(3、4)に1つまたは複数の冷却材加熱手段が設けられることを特徴とする請求項10から12の1つに記載の回転子。
【請求項14】
電気機械が請求項1から13の1つに記載の回転子(1)を有することを特徴とする電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械のための回転子並びにこれに相応する電気機械に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば同期電動機や同期発電機などの電気機械のために超電導回転子巻線を備えた回転子を使用することは先行技術から知られている。とりわけこの種の回転子は電流発生のため原動所の発電機に使用されており、回転子の超電導巻線回転により高出力密度、低損失やほかの利点が達成される。この種の回転子において回転子巻線を超電導にするためには、たとえばヘリウム、水素、ネオンまたは窒素などの極低温冷却材を自動的に循環させる冷却管系が回転子に備えられる。冷却材の循環は回転子の回転時における遠心力により行われる。
【0003】
特許文献1には、超電導回転子巻線と、冷却管ループが回転子の半径方向に対向する2つの側面に設けられた冷却系とを備えた回転子が記載されている。この場合冷却管ループは冷却材貯留器に接続されている。回転子の運転時には冷却材は貯留器から冷却管ループに搬送され、そこから再び貯留器に戻される。
【0004】
超電導巻線とそれに対応する冷却系とを備えた公知の回転子では、冷却材が回転子の回転がないときに常に地形的に低い所にある冷却管に向かって流れ、したがって回転子の停止時には回転子巻線の均等な冷却が得られないということが欠点として認められている。回転子がたとえば回転子の正規運転の前に行われる冷却過程において回転なしに冷却されると、冷却管のせいぜい半分だけが冷却材で貫流されることになり、不所望な熱誘導応力を生じる結果になる。それゆえ回転子の通常運転以外でも、冷却材が冷却管系全体を貫流することが保証されなければならない。これは従来の回転子では回転子の連続的または間欠的回転によってのみ達成できるものであり、回転子に駆動機構の設置が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第10303307号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、超電導回転子巻線が回転子の停止時でも均等に冷却されるようにした電気機械のための回転子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1による回転子もしくは請求項14による電気機械により解決される。本発明の実施態様は従属請求項に規定されている。
【0008】
本発明による回転子は、特に高TC超電導材料から成る超電導回転子巻線を備え回転軸を中心に回転する回転子体と、この回転子体の上にほぼ半径方向に対向配置された少なくとも1対の冷却管ループを備えた回転子巻線の冷却用に設けられた冷却装置とを有する。この場合極低温冷却材(たとえばネオン、水素、ヘリウムまたは窒素)は冷却管ループ内を回転軸を中心とする回転子の回転時に軸方向(すなわち回転軸方向)に第1の回転子軸端からこれに対向する第2の回転子軸端に搬送されて戻される。冷却管ループという用語は広義に解釈すべきものであり、特に冷却管ループは場合によっては個々の冷却導管から構成されるだけでなく、互いに並列配置された多数の冷却導管からも構成できる。
【0009】
本発明による回転子は、冷却装置に1つまたは複数の接続管が設けられ、この管が少なくとも1対の冷却管ループの一方の冷却管ループを他方の冷却管ループに接続することを特徴とする。これにより1対の冷却管ループの互いに対向する冷却管ループ間の直接的な冷却材交換が可能となるので、冷却材は回転子の停止時でも地形的に低い所にある冷却管ループから高い所にある冷却管ループに達することができる。この場合回転子の本来の運転に先立つ冷却過程の枠内でまだ温かい回転子により地形的に低い所にある冷却管ループの冷却材の蒸発が行われるので、液状の冷却材はいわばバブルポンプ作用により1つまたは複数の接続管を介して地形的に高い所にある冷却管ループに向かって促進されるので、冷却管ループ間の冷却材の循環が行われることになる。それゆえ本発明によれば回転子の停止時でも回転子巻線の均等な冷却が達成できる。
【0010】
1つまたは複数設けられる接続管を除き本発明による回転子はそれ自体は公知の方法で構成できる。特に回転子は特許文献1に示された回転子に相当する。この文献の開示内容はすべて本願の内容に参照される。
【0011】
特に有利な実施形態では回転子は個々に1対の冷却管ループを備えた2極回転子巻線を有する。回転子に直流を供給される電気機械の運転時にはN極とS極を有する磁界が形成される。しかし場合によっては、回転子が複数の磁極対を備えた回転子巻線を有することも可能であり、この場合には冷却管ループの対数は極対の数に相当する。
【0012】
本発明による別の特に有利な実施形態では冷却材の循環は第1の回転子軸端に設けられた冷却材貯留器の使用のもとに行われる。この貯留器は1つまたは複数対の冷却管ループの相応する冷却管ループに接続される。
【0013】
本発明による特に有利な変形例では、冷却管ループを互いに接続する少なくとも1つの接続管は直線管片であり、少なくとも1対の冷却管ループの一方の冷却管ループから他方の冷却管ループに向かって半径方向に延びている。半径方向に延びる接続管の使用は、この管が回転子の運転時に冷却管ループに作用する遠心力を極めて良好に機械的に吸収し、したがって場合によっては付加的な保持装置を省略できるという利点を有する。
【0014】
直線管片の代わりにまたはこれに付加して1つまたは複数の接続管を場合によっては湾曲に、特にほぼ半円型の管片として形成することも可能である。この場合にはこの管片の直径が2つの対向配置された冷却管ループ間の間隔に相当すると有利である。冷却管ループ間の冷却材の効果的な分布のために1対の冷却管ループに対して2つの湾曲管片を接続管として設けると、特に2つのほぼ半円型の管片を設け、全体として1つの円を形成させるようにすると有利である。
【0015】
別の特に有利な実施形態では1つまたは複数の接続管が第2の回転子軸端に設けられる。この変形例は、接続管が回転子体の外側にあるようにできるので、回転子体に組み込む必要はなく、回転子の製造が簡単になるという利点を有する。
【0016】
別の特に有利な実施形態では、冷却管ループは1つおよび場合によっては複数のU字形を有し、冷却材は回転子の回転時にU字形の一方の脚に沿って第1の回転子軸端から第2の回転子軸端に向かって搬送され、そこから中管片を介してU字形の他方の脚に達し、第1の回転子軸端に戻される。この場合少なくとも1つの接続管が1対の対向配置された冷の管ループのU字形の中間片を接続すると有利である。冷却材の折り返し点を形成するこの中間片は製造技術的理由から有利なことに回転子巻線もしくは回転子体の外側にあるので、これにより冷却管ループの簡単な接続がなされる。
【0017】
別の特に有利な実施形態では少なくとも1つの冷却管ループに1つまたは複数の冷却材加熱手段が設けられる。本発明のこの変形例は、回転子巻線の全周が超電導に必要な温度に冷却される場合でも回転子の停止時における冷却材の循環が得られるという利点を有する。これは、冷却材加熱手段により冷却材の蒸発が惹起されるので、上述のバブルポンプ作用が同様に達成されることにより行われる。冷却材の1つまたは複数の加熱手段はたとえば1つまたは複数の通電可能な加熱素子として形成できるので、必要に応じて冷却材の蒸発およびこれによるバブルポンプ作用を能動的に惹起できる。
【0018】
回転子巻線および冷却管ループは一般に周囲に対して熱絶縁されているので、1つまたは複数の冷却材加熱手段は場合によっては相応する熱絶縁における1つまたは複数の熱漏洩箇所を有するようにすることもできる。熱絶縁はこの場合有利には冷却管ループ並びに回転子巻線を有するいわゆるクライオスタットにより形成される。
【0019】
本発明による回転子の別の実施形態では、1対の冷却管ループに対してこの対の専ら一方の冷却管ループに1つまたは複数の冷却材加熱手段が設けられる。このような配置は冷却材加熱手段の数を少なくすることができる。この場合注意すべきことは、既に冷却されている回転子の停止時には、1つまたは複数の冷却材加熱手段を備えた冷却管ループがこのような手段を持たない他方の冷却管ループよりも地形的に低い所にある場合にのみ冷却材の循環が行われることだけである。
【0020】
上述の回転子のほかに本発明はさらに、特に電気エネルギーを発生するための原動所発電機として形成される電気機械も対象であり、この場合電気機械は本発明による回転子もしくは本発明による有利な実施形態を有している。
【0021】
本発明の実施態様を以下に添付の図面に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は従来技術による電気機械の回転子を示す。
図2図2は異なる運転状況における従来技術による電気機械の回転子を示す。
図3図3は本発明による電気機械の回転子を示す。
図4図4は異なる運転状況における本発明による電気機械の回転子を示す。
図5図5は別の実施態様における本発明による電気機械の回転子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に述べる回転子は大形の超電導発電機、たとえば原動所発電機において100から1000MWの出力で使用される。この場合回転子は直流電流を供給され、通流の際に1つまたは複数の磁極対を形成する超電導回転子巻線を有する。この場合回転子は固定子巻線を備えた対応する(図示しない)固定子内に配置されるが、この固定子巻線は従来の金属材料からなり超電導体ではない。以下に回転子巻線が2つの磁極を形成する2極の回転子を考察する。
【0024】
図1は従来技術による2極回転子の概略を示す。この回転子は特許文献1に記載された回転子と同様に構成できる。回転子1は単に概略的に表示された円筒形回転子体2を有し、この回転子体は運転中に図示の回転軸Rを中心に回転する。概略表示のために図示しない超電導回転子巻線は、図1の回転子位置において回転子体の第1の軸端202から出発して回転子体の上側に沿って回転子体の第2の軸端201まで延び、そこから半径方向に下側に向かい、続いて回転子体の下側に沿って回転子体の第2の軸端202から第1の軸端201に戻る。
【0025】
回転子巻線を超電導にするためには、この巻線はたとえばネオンなどの極低温冷却材により適当に冷却されなければならない。このため冷却材貯留器5並びにサーモサイフォンループとも呼ばれる2つの冷却管ループ3、4を有する冷却回路が使用される。この場合冷却管ループは回転子巻線の導体に隣接して配置される。冷却管ループおよび回転子巻線は周囲に対する熱絶縁のため特許文献1に記載のクライオスタットと同様に構成可能な(図示しない)クライオスタット内に配置される。図1並びに以下の図面において液相の冷却材は冷却回路内において斜線で暗示されているのに対し、気相の冷却材は白の領域で再現されている。
【0026】
図1の冷却管ループ3、4はU字状に形成され、回転子の軸方向に延びている2つの脚301、302もしくは401、402を有しており、この場合各冷却管ループの両脚は中間管303もしくは403を介して互いに結合されている。この場合脚および中間管は、図示の都合上、同一面上にあるように示されている。
【0027】
図1は回転中の回転子1の運転中を示しており、回転は矢印Pで暗示されている。回転によって惹起される遠心力に基づき冷却材は貯留器5から両冷却管ループ3、4の対応する脚へ圧送される。これにより冷却材の循環は貯留器から脚301へおよびそこから脚302を介して貯留器へ戻り、同様に貯留器5から脚401へそしてそこから脚402を介して貯留器へ戻るようにして行われる。このような循環により回転子巻線の適切な冷却が行われる。冷却材の循環は図1および以下の全ての図において冷却管上の三角形で暗示されている。
【0028】
図1の電気機械の始動前に回転子および特にその回転子巻線は比較的長く続く冷却過程においてサーモサイフォン系の冷却材により差し当たり超電導体の臨界温度以下に冷却されなければならない。この場合、回転子が通常回転していなくて冷却材への遠心力が作用しないという問題がある。従って冷却材は地形的に低い所にある点に向かってのみ流れるので、回転子巻線の半分だけが冷却される。このような状況は図2に再現されている。遠心力がないために冷却材の循環は下側の冷却管ループ4だけで行われている。この場合循環は、冷却材が冷却過程においてまだ温かい回転子により加熱されて蒸発することにより、管内に冷却材の流れが惹起されることにより成立している。冷却過程の枠内で回転子を連続的にまたは十分に短い間隔で回転し続け、これにより両冷却管ループを均等に冷却することが実際に提案されている。これは、冷却過程の枠内で回転子の回転のための駆動機構が必要となり、高い費用を招くという欠点を有する。
【0029】
図3は上述の欠点を解決した本発明による回転子の一実施例を示す。この場合回転子は図1および図2と同様に構成されるので、同一部材もしくは互いに対応する部材は同一の符号を付されており再度の説明を省略する。図1もしくは図2の回転子との相違点はサーモサイフォン系において半径方向の接続管6の形を取るもう一つの冷却管が設けられることにあり、この管は上側の冷却管ループ3を回転子体2の軸端202において下側の冷却管ループ4に接続する。この場合接続管は相応する中間管303、403を有するT字片を形成する。半径方向の接続管の代わりにたとえば湾曲した接続管および特に2つの半円型の接続管など他の形状の1つまたは複数の接続管を冷却管ループの接続に用いることも可能である。図3は回転中の回転子の定時運転を示す。接続管6がこのような運転を阻害してないことがわかる。特に遠心力により両冷却管ループ3、4における冷却材の循環が再び開始する。この場合冷却材は接続管6において液相および気相状態にある。
【0030】
図4は電気機械の始動前の冷却過程中の回転していない状態の図3の回転子の非回転モードを示す。この場合回転子は停止状態にある。それにもかかわらず冷却材の循環は、冷却材が貯留器5から冷却管ループ4の下側の脚401、402に流れ、そこから接続管6を介して上側冷却管ループ3の脚301、302へ、そして冷却材貯留器5へ戻るようにして行われる。この循環は、冷却管401、402に流れる冷却材がまだ温かい回転子により加熱されて蒸発することにより生ずる。蒸発液はこの場合管6において既に蒸発している冷却材により連行され、このようにして問題なく地形的に高い所にある管部分301、302にも達する。このような作用は「バブルポンプ」という名称でも知られている。
【0031】
バブルポンプのポンプ作用は冷却過程の枠内で暖かい回転子自体により機能する。回転子が完全に冷却されると、バブルポンプ作用はもはや生じない。しかし回転子の停止相でも運転中冷却管ループの冷却材による均等な通流を達成するためには、本発明の回転子の別の実施形態では加熱装置が使用される。この変形実施態様を図5に示す。
【0032】
図5による回転子の構造は図3および図4に示す回転子の構造にほぼ相当する。しかし付加的に2つの通電可能な電気加熱素子7が下側冷却管ループ4の冷却管401、402に取り付けられている。この場合加熱素子の1つは回転子体の第1の軸端201に、もう1つは回転子体の第2の軸端202にある。回転子が停止に至ると、加熱素子が起動し、これにより冷却管401,402における冷却材の蒸発が生じ、再び上述のバブルポンプ作用が生じるので、冷却材は均等に下側冷却管ループ4および上側冷却管ループ3中を循環する。回転子の回転が再び始まると、冷却材の循環が回転の遠心力により生じるので加熱素子は遮断される。
【0033】
本発明による回転子の上述の実施形態は一連の利点を有する。回転子の冷却管ループ間に接続管を設けることにより簡単にサーモサイフォン系がバブルポンプとして作用するので、回転子の両冷却管ループは回転なしでも均等に冷却材で通流される。冷却過程中の回転子の回転はもはや不要となる。これにより回転子の始動は著しく容易化される。さらに冷却速度は、回転子が連続的にもしくは間欠的に回転するときの冷却に比べて、多数のサーモサイフォンループが二重に作用するので約2倍高められる。対向する冷却管ループを接続管で接続することにより、サーモサイフォン系のバブルポンプとしての機能が可能となるだけでなく、回転子の回転時に生じこの範囲で巻線の外側に配置されている回転子部分に加えられる遠心力もこの接続管により吸収されるという別の利点が生じる。
【符号の説明】
【0034】
1 回転子
2 回転子体
3 冷却管ループ
4 冷却管ループ
5 冷却貯留器
6 接続管
7 加熱素子
201 第1の軸端
202 第2の軸端
301 脚
302 脚
303 中間管
401 脚
402 脚
403 中間管
R 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5