特許第5778783号(P5778783)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5778783液圧車両ブレーキ装置のための内接歯車ポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778783
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】液圧車両ブレーキ装置のための内接歯車ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/10 20060101AFI20150827BHJP
   F04C 15/00 20060101ALI20150827BHJP
   B60T 17/00 20060101ALN20150827BHJP
【FI】
   F04C2/10 311B
   F04C2/10 341C
   F04C15/00 A
   !B60T17/00 D
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-550775(P2013-550775)
(86)(22)【出願日】2011年1月31日
(65)【公表番号】特表2014-505201(P2014-505201A)
(43)【公表日】2014年2月27日
(86)【国際出願番号】EP2011051310
(87)【国際公開番号】WO2012103923
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2013年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100114487
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 幸作
(72)【発明者】
【氏名】シェップ,レネ
(72)【発明者】
【氏名】アラゼ,ノルベルト
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−501023(JP,A)
【文献】 米国特許第4132514(US,A)
【文献】 独国特許出願公開第19613833(DE,A1)
【文献】 特開昭56−77587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/10
F04C 15/00
B60T 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧車両ブレーキ装置のための内接歯車ポンプであって、
内歯付きリングギア(4)と外歯付きピニオン(2)とを備え、
前記ピニオン(2)は、前記リングギア(4)の内部に偏心的に配置されており、1つの周区分において前記リングギア(4)と噛み合い、
前記ピニオン(2)が前記リングギア(4)と噛み合う前記周区分の向かい側で、前記ピニオン(2)と前記リングギア(4)との間にクレセント状の空隙(6)が生じており、
前記空隙(6)に充填部材(9)が配置されており、
前記充填部材(9)の内面に前記ピニオン(2)の歯(15)の歯先が当接しており、
前記充填部材(9)の外面に前記リングギア(4)の歯(14)の歯先が当接しており、
前記充填部材(9)は、ねじりばね(10)を備え、
前記ねじりばね(10)の脚部(12,13)は、周方向に延在し、
前記ねじりばね(10)の脚部(12,13)は、内側方向および外側方向に、前記ピニオン(2)および前記リングギア(4)の前記歯(15,14)の歯先に前記充填部材(9)を押し当て、
前記充填部材(9)は、内側部分(20)と外側部分(19)とを備え、
前記内側部分(20)の内面は、前記ピニオン(2)の前記歯(15)の歯先に当接しており、
前記外側部分(19)の外面は、前記リングギア(4)の前記歯(14)の歯先に当接しており、
前記ねじりばね(10)は、前記充填部材(9)の前記内側部分(20)と前記外側部分(19)との間に配置されており、前記内側部分(20)と前記外側部分(19)とを互いに押し離す、内接歯車ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の内接歯車ポンプであって、
前記ねじりばね(10)のヨーク(11)は、前記内接歯車ポンプ(1)の吸込み側に向けられている
内接歯車ポンプ。
【請求項3】
請求項に記載の内接歯車ポンプであって、
前記充填部材(9)の前記内側部分(20)と前記外側部分(19)との間の間隙(21)に流体が加えられ、
前記内接歯車ポンプ(1)が作動された場合に、前記流体は、前記内接歯車ポンプ(1)によって圧力を加えられる
内接歯車ポンプ。
【請求項4】
請求項に記載の内接歯車ポンプであって、
前記内側部分(20)と前記外側部分(19)とは、ヒンジ方式で互いに結合されている
内接歯車ポンプ。
【請求項5】
請求項に記載の内接歯車ポンプであって、
前記充填部材(9)は、シール部材(30)を備え、
前記シール部材(30)は、
前記内側部分(20)と前記外側部分(19)との間に配置されており、
前記内側部分(20)および前記外側部分(19)のうちの少なくとも一方に密封状態で当接していることと、軸線方向にシールしていることと、のうちの少なくとも一方を満たす
内接歯車ポンプ。
【請求項6】
請求項に記載の内接歯車ポンプであって、
前記充填部材(9)は、弾性的な調整部材(31)を備え、
前記調整部材(31)は、
前記内側部分(20)と前記シール部材(30)との間、または、前記外側部分(19)と前記シール部材(30)との間に配置されており、
前記シール部材(30)を、外側方向に前記外側部分(19)に押し当てるか、または、内側方向に前記内側部分(20)に押し当て、前記内側部分(20)および前記シール部材(30)、または、前記外側部分(19)および前記シール部材(30)に密封状態で当接して、軸線方向にシールしている
内接歯車ポンプ。
【請求項7】
請求項に記載の内接歯車ポンプであって、
前記調整部材(31)が前記シール部材(30)よりも大きい弾性を備えていることと、前記シール部材(30)が前記調整部材(31)よりも大きい押出抵抗を備えていることと、のうちの少なくとも一方を満たす
内接歯車ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の特徴を備える、液圧車両ブレーキ装置のための内接歯車ポンプに関する。このような内接歯車ポンプは、スリップ制御された、および/または、外部エネルギー‐車両ブレーキ装置で通常用いられるピストンポンプの代わりに使用され、必ずしも的確ではないにせよ、還流ポンプと呼ばれることも多い。
【背景技術】
【0002】
内接歯車ポンプは既知である。内接歯車ポンプは、ピニオン、すなわち、外歯付きの歯車を備え、ピニオンは、内歯付きのリングギア内に偏心的に配置されており、周の一箇所において、または、1つの周区分において、リングギアと噛み合う。ピニオンの回転駆動によりリングギアも回転駆動され、内接歯車ポンプは既知の形式で流体を圧送し、液圧車両ブレーキ装置においてブレーキ液を圧送する。
【0003】
ピニオンがリングギアと噛み合う周区分の向かい側に、内接歯車ポンプは、ピニオンとリングギアとの間にクレセント(三日月)状の空隙を備え、この空隙には充填部材が配置されている。この充填部材は、通常は内接歯車ポンプの軸線に対して平行な軸線を中心として旋回可能である。湾曲された形状に基づいて、充填部材は「クレセント」とも呼ばれ、このような充填部材を備える内接歯車ポンプは「クレセントポンプ」とも呼ばれる。充填部材の凹状の内面にはピニオンの歯の歯先が当接し、外方に湾曲された充填部材の外面にはリングギアの歯先が当接する。歯車ポンプが駆動された場合に、ピニオンおよびリングギアの歯の歯先は、充填部材の内面または外面に沿って滑動する。充填部材は、ピニオンの歯の間およびリングギアの歯の間の間隙を閉鎖し、これにより、ピニオンおよびリングギアの歯の間の間隙に流体容積が閉じ込められ、この流体容積は、ピニオンおよびリングギアの回転駆動によってポンプ入口からポンプ出口に圧送される。ポンプ入口は内接歯車ポンプの吸込み側を形成し、ポンプ出口は押出し側を形成している。
【0004】
ドイツ連邦共和国特許第19613833号明細書は、このような内接歯車ポンプを開示しており、この内接歯車ポンプの充填部材は、周方向に分割されており、セグメント支持体と呼ばれる内側部分と、セグメントと呼ばれる外側部分とを備える。内側部分と外側部分との間に配置された板ばねは、内側部分と外側部分とを互いに半径方向に押し離し、これら内側部分および外側部分をピニオンおよびリングギアの歯の歯先に押し当て、歯先に良好に当接させ、これにより良好なシール作用を達成する。このようなシール作用は内接歯車ポンプの高い効率を得るための前提となる。内接歯車ポンプが作動時に圧力を形成した場合、この圧力は、充填部材の押出し側領域において内側部分と外側部分との間の隙間または間隙を加圧する。この中間領域において、中間圧力が充填部材の内側部分と外側部分との間の間隙を加圧し、吸込み側では、内側部分と外側部分との間の間隙に内接歯車ポンプの吸込み圧が形成される。内接歯車ポンプの作動時に形成された圧力は、板ばねを互いに押し離すことに加えて、既知の内接歯車ポンプの充填部材の内側部分および外側部分を押圧し、ピニオンおよびリングギアの歯の歯先に押し当て、シール作用を改善する。
【0005】
既知の内接歯車ポンプの充填部材の内側部分と外側部分との間には、板ばねが、充填部材に対して交差方向に、すなわち、内接歯車ポンプの軸線に対して平行に配置されている。顕著なばね距離をもたらすためには、板ばねは、内歯車ポンプの最小幅を決定する所定の長さを備えている必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許第19613833号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の特徴を備える本発明による内接歯車ポンプの充填部材は、ねじりばねを備え、ねじりばねの脚部は、周方向に延在しているが、この場合、正確に周方向に延在していることは重要ではない。ねじりばねの脚部は、充填部材を内側方向にピニオンの歯の歯先に押し当て、外側方向にリングギアの歯の歯先に押し当てる。本発明は、充填部材の長さの大部分にわたって内側方向および外側方向に充填部材を押圧するためには、ねじりばねがあれば十分であるという利点を有する。本発明の他の利点は、ねじりばねの幅が内接歯車ポンプの(最小‐)幅を決定することであり、したがって、本発明は狭幅な内接歯車ポンプを可能にする。液圧車両ブレーキ装置では、ピニオンおよびリングギアは、例えば、約2mmの幅を備える。本発明は、より狭幅の内接歯車ポンプを可能し、ピニオンおよびリングギアは1mm以下の幅を備えていてもよい。本発明の他の利点は、充填部材の簡単な組立ておよび内接歯車ポンプへの組込みである。本発明による内接歯車ポンプでは、ピニオンおよびリングギアの歯の間に閉じ込められた容積は高い密封性を備え、容積効率が高い。本発明による内接歯車ポンプのねじりばねは、特にU字形に湾曲した板ばねであり、板ばねの脚部は、もちろん必ずしも同じ曲率で湾曲されているわけではないが、好ましくは同じ方向に湾曲されている。もちろん、ワイヤを湾曲したねじりばねまたは固体材料から形成されたねじりばねも可能である。
【0008】
従属請求項は、請求項1に記載された本発明の有利な構成および実施形態を対象としている。
【0009】
本発明の簡単な実施形態では、ねじりばね自体が充填部材を形成しており、充填部材の外側の脚部は外側方向に弾性的にリングギアの歯先に当接しており、内側の脚部は内側方向に弾性的にピニオンの歯の歯先に当接している(請求項2)。
【0010】
好ましくは、ねじりばねのヨークは、内接歯車ポンプの入口、すなわち、吸込み側に向いている。これにより、内接歯車ポンプの押出し側からねじりばねの内側の加圧が行われるか、またはいずれにせよ可能となり、このような加圧により、ねじりばねの脚部または充填部材は、内側方向および外側方向にピニオンおよびリングギアの歯の歯先に押し当てられる。
【0011】
請求項4の対象は、内側部分および外側部分を備える複数部材からなる充填部材であり、内側部分と外側部分とは、両者の間に配置されたねじりばねによって互いに押し離され、ピニオンおよびリングギアの歯の歯先に押し当てられる。
【0012】
次に本発明を、図示の実施例に基づいて詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による内接歯車ポンプを示す端面図である。
図2】本発明による内接歯車ポンプを示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示した本発明による内接歯車ポンプ1は、液圧ポンプまたはいわゆる「循環ポンプ」として、スリップ制御部を備える液圧車両ブレーキ装置内に設けられている。内接歯車ポンプ1は、ポンプシャフト3に回動不能に配置されたピニオン2、すなわち、外歯付き歯車を備える。ピニオン2は内歯付きリングギア4の内部に偏心的に配置されており、リングギア4は、管状のポンプケーシング5の内部に回動可能に収容されている。ポンプケーシングは、例えば、四角形であってもよい(図示しない)。内接歯車ポンプ1の内部を見ることができるように、ケーシングカバーは示されていない。ピニオン2は1つの周区分でリングギア4と噛み合い、ピニオン2がポンプシャフト3と共に回転駆動されることにより、リングギア4も回転駆動され、これにより、内接歯車ポンプ1は既知の形式で流体、図示の実施例ではブレーキ液を圧送する。ピニオン2がリングギア4と噛み合う周区分の向かい側に、内接歯車ポンプ1は、ピニオン2とリングギア4との間にクレセント状の空隙を備える。空隙6の端部では、孔がポンプ入口7として軸線に対して平行に空隙6に開口しており、そのほぼ向かい側には、別の孔がポンプ出口8として空隙6に開口している。ポンプ入口7は内接歯車ポンプ1の吸込み側として、ポンプ出口8は押出し側として理解することもできる。空隙6には、図1ではねじりばね10として構成されている充填部材9が配置されている。図面に示して説明する本発明の実施形態では、ねじりばね10はU字形に湾曲された板ばねであり、U字形の板ばねのヨーク11は、ポンプ入口7とポンプ出口8との間のほぼ中央に位置している。ねじりばね10の脚部12,13は、リングギア4またはピニオン2の歯先円22,23に対応して湾曲されており、ヨーク11からポンプ出口8の方向に延在している。すなわち、ねじりばね10のヨーク11はポンプ入口7に向いている。脚部12,13は、弾性的に予荷重をかけられた状態で、リングギア4の歯14の歯先およびピニオン2の歯15の歯先に当接している。充填部材9を形成するねじりばね10の脚部12,13は、リングギア4の歯14の間の間隙と、ピニオン2の歯15の間の間隙と、に流体容積を閉じ込め、これにより、ピニオン2およびリングギア4の回転駆動が、ポンプ入口7からポンプ出口8への流体圧送を引き起こす。
【0015】
位置固定のために、充填部材9を形成するねじりばね10は、周方向およびポンプ入口7の方向に対向支持ピン16で支持されており、この対向支持ピン16は、軸線に対して平行にケーシング5を貫通しており、ケーシングカバー(図示しない)またはケーシング端壁(図示しない)の内部の止まり穴に収容されている。支持を改善するために、対向支持ピン16は、ねじりばね10のヨーク11が当接する面取り部17を備える。
【0016】
脚部12,13の自由端部18の間で、ねじりばね10は開放されている。自由端部18およびねじりばね10の開放端部は、内接歯車ポンプ1のポンプ出口8の領域、すなわち、押出し側に配置されている。これにより、ねじりばね10の脚部12,13の間の間隙21には、内接歯車ポンプ1が作動されている場合に、加圧下のブレーキ液が加えられ、ブレーキ液は、ねじりばね10のばね力に対して付加的に、脚部12,13を外側方向に押圧し、これにより、リングギア4の歯14およびピニオン2の歯15の歯先に対するねじりばね10の脚部12,13の当接を改善する。このようにして、リングギア4およびピニオン2の歯14,15の歯先に対する脚部12,13の当接によるシール作用は、内接歯車ポンプ1の圧送圧の上昇に伴い改善される。このことは、内接歯車ポンプ1の効率を改善する。
【0017】
図2に示す内接歯車ポンプ1は、図1に示した内接歯車ポンプと同様にピニオン2を備え、ピニオン2は、ポンプシャフト3に対して回動不能に、リングギア4の内部に偏心的に配置されており、1つの周区分でリングギア4と噛み合う。図2に示した内接歯車ポンプ1の構成および機能は、図1に示した内接歯車ポンプ1の構成および機能と一致している。繰返しを避けるために、図2の説明に補足的に図1の説明を参照されたい。図1および図2の同じ構成部材には同じ参照番号を付す。
【0018】
図1とは異なり、図2では充填部材9は複数の部分からなり、アーチ状に周方向に延在する外側部分19と内側部分20とを備え、外側部分19と内側部分20との間には、同様にアーチ状に周方向に延在する間隙21が設けられており、この間隙21にはねじりばね10が配置されている。全体として湾曲された形状により、充填部材9はクレセントと呼ぶこともでき、内側部分20はセグメント支持体、外側部分19はセグメントと呼ぶこともできる。外側部分19は、リングギア4の歯先円22に対応して円弧状に湾曲されている。内側部分20の内面は、ピニオン2の歯先円23に対応して凹状湾曲されている。リングギア4の歯14の歯先は充填部材9の外側部分19の外面に、ピニオン2の歯15の歯先は充填部材9の内側部分20の内面に、密封状態で当接している。内側部分20と外側部分19との間に配置されたねじりばね10は、内側部分20と外側部分19とを互いに押し離し、これにより、外側部分19は、外側方向にリングギア4の歯14の歯先に密封状態で当接し、内側部分20は、内側方向にピニオン2の歯15の歯先に密封状態で当接する。
【0019】
内接歯車ポンプ1の圧送圧が上昇した場合にシール作用を改善するためには、内側部分20と外側部分19との間の間隙21に、ポンプ出口8から加圧下のブレーキ液が加えられる。このような加圧により、内側部分20および外側部分19は、ねじりばね10による作用に加えてさらに互いに押し離され、内接歯車ポンプ1の圧送圧が増大した場合に、ピニオン2およびリングギア4の歯15,14の歯先におけるシール作用を増大する。これにより、内接歯車ポンプ1の容積効率は改善される。加圧は、ポンプ出口8の近傍の間隙21の開放端部および/または圧力場24によって行われる。ねじりばね10は、充填部材9の内側部分20および外側部分19よりもわずかに狭幅である。これにより、ポンプ出口8の圧力は、以下にさらに説明するように、充填部材9の内側部分20と外側部分19との間の間隙21の、ねじりばね10のヨーク11のポンプ入口側に配置されているシール部材30および調整部材31にも作用する。圧力場24は、アキシャルディスク25の切込み状の凹部である。圧力場24は、周方向にポンプ出口8から充填部材9の内側部分20と外側部分19との間の間隙21の長手方向中央部まで延在している。内接歯車ポンプ1の両側には、リングギア4およびピニオン2の端面に沿ってシールするアキシャルディスク25が配置されている。アキシャルディスク25は、一方のケーシングカバー(図示しない)と、他方のリングギア4およびピニオン2との間に位置している。
【0020】
内側部分20および外側部分19の、ポンプ入口7に向いた吸込み側の端面26は、平坦であり、ほぼ半径方向に延在している。端面26は、対向支持ピン16の面取り部17に当接している。端面26は、空隙6のほぼ中央に、ポンプ出口8よりもポンプ入口7に幾分近く配置されている。
【0021】
ねじりばね10のヨーク11は、図2においても吸込み側、すなわちポンプ入口7に向いており、ねじりばね10の開放端部およびねじりばね10の脚部12,13の自由端部18はポンプ出口8に向いている。
【0022】
内側部分20と外側部分19とは、吸込み側端部で、ヒンジ方式で互いに結合されている。このために、内側部分20は、外側方向に突出したノーズ27を備え、ノーズ27は、外側部分19の内面の切欠部28に係合する。内側部分20はピン29によって固定されており、ピン29は吸込み側端部の近傍で内側部分20を貫通しており、ケーシングカバー(図示しない)内で保持されている。内側部分20は、ピン29を中心として旋回可能である。
【0023】
充填部材9は、吸込み側端部の領域でシール部材30および調整部材31によってシールされている。図示の本発明の実施形態では、シール部材30は四角形横断面を備え、外側部分19の切欠部28に挿入されており、切欠部28には内側部分20のノーズ27も係合している。シール部材30は、交差方向に、すなわち、軸線に対して平行に内接歯車ポンプ1の空隙6を通って延在し、端面でアキシャルディスク25に密封状態で当接しており、アキシャルディスク25は、ピニオン2およびリングギア4の端面に密封状態で当接し、空隙6を側方で閉鎖している。シール部材30は、外側部分19の内面にも当接し、内接歯車ポンプ1の吸込み側の方向に、内側部分20のノーズ27に内側で接触している。シール部材30は、極めて高い押出抵抗を備えるシール材料からなる。押出抵抗とは、高い圧力を加えられた場合の塑性変形に対するシール部材30の抵抗、特に隙間へのシール部材30の流入に対する抵抗を意味する。内接歯車ポンプ1は、シール部材30に加えられる300barまでの圧力を発生することができ、シール部材30はこの圧力に抵抗しなければならない。エラストマはそのような圧力に耐えられないので、シール部材30は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなるが、しかしながら、PTFEの弾性は制限されている。それ故、付加的に調整部材31が設けられており、この調整部材31の弾性は、シール部材30の弾性よりも大きい。調整部材31は、例えば、EPDM(エチレン‐プロピレン‐ジエン‐ゴム)などのエラストマからなる。調整部材31は円柱状であり、シール部材30の半径方向内側に、内側部分20の外面に沿ってノーズ27への移行部に設けられた溝(内側角隅)に配置されている。この領域には、調整部材31が流入することのできる隙間はない。調整部材31は、シール部材30を外側方向に外側部材19に押し当てる。調整部材31の端面はアキシャルディスク25に密封状態で当接しており、調整部材31の周は内側部分20の外面およびノーズ27に当接している。シール部材30と調整部材31とは協働して、アキシャルディスク25の側方で充填部材9の吸込み側の端部をシールし、充填部材9の内側部分20と外側部分19とを互いにシールする。
【符号の説明】
【0024】
1…内接歯車ポンプ
2…ピニオン
3…ポンプシャフト
4…リングギア
5…ポンプケーシング
6…空隙
7…ポンプ入口
8…ポンプ出口
9…充填部材
10…ばね
11…ヨーク
12…脚部
14,15…歯
16…対向支持ピン
17…面取り部
18…自由端部
19…外側部分
20…内側部分
21…間隙
22,23…歯先円
24…圧力場
25…アキシャルディスク
26…端面
27…ノーズ
28…切欠部
29…ピン
30…シール部材
31…調整部材
図1
図2