(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加工工程では、前記ワークの上面側の加工対象部位及び下面側の加工対象部位を同時に加工可能な両側加工工具を用いると共に、該両側加工工具をワークの加工対象部位の側方から押し当て、加工対象部位の上面及び下面に対して同時に加工を行う、
ことを特徴とする請求項7に記載の制御方法。
前記加工工程では、前記ワークの上面側の加工対象部位及び下面側の加工対象部位を同時に加工可能な両側加工工具を用いると共に、該両側加工工具をワークの加工対象部位の側方、上方、及び下方から押し当て、加工対象部位の上面及び下面に対して同時に加工を行う、
ことを特徴とする請求項7に記載の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
図1は本発明の一実施形態に係る加工システム1の平面図、
図2はその側面図である。図中、矢印X及びYは水平方向であって互いに直交する2方向を示し、矢印Zは垂直方向を示す。加工システム1は、板状のワーク2の切断縁(角部)の面取り(バリ取り)加工を行うシステムである。ワーク2は例えば鋼板である。加工システム1は、仮想的に、加工エリア3、搬出エリア4及び搬入エリア5に区分けされる。これらのエリア3〜5はY方向に並んでいる。
【0012】
加工システム1は、保持装置10と、加工ユニット20と、移動装置30と、検出装置40と、載置台50及び60と、搬送装置70と、を備える。載置台60は搬入エリア5に配置されており、未加工のワーク2が積載される。載置台50は搬出エリア4に配置されており、加工済みのワーク2が載置される。
【0013】
<保持装置10>
図1及び
図2に加えて
図3を参照して保持装置10を説明する。
図3は保持装置10、加工ユニット20及び移動装置20の斜視図である。保持装置10は、加工中、ワーク2を水平姿勢で保持する。保持装置10は、複数の保持ユニット11a〜11jと、保持ユニット11a〜11j毎に設けられた移動機構12と、を備える。以下、保持ユニット11a〜11jを総称する場合、或いは、特定の保持ユニットを意味しない場合は、単に保持ユニット11という。
【0014】
複数の保持ユニット11は、本実施形態の場合、枕木状にY方向に並べて配置されている。保持ユニット11は、X方向に延設されているユニット本体部111と、少なくとも一つの支持部材112と、少なくとも一つの吸着体113と、を備える。ユニット本体部111は、本実施形態の場合、その断面が角型の棒状の部材である。支持部材112及び吸着体113は、ユニット本体部111の上面に設けられている。
【0015】
支持部材112は、ユニット本体部111の上面から上方へ突出しており、本実施形態の場合、先端が丸められ、凸面部を有する。ワーク2はこの支持部材112の凸面部上に載置されて支持される。先端を丸めることでワーク2に傷がつくことを低減できる。吸着体113は、ワーク2を吸着する。吸着体113は本実施形態の場合、電磁石であるが、真空チャック等、他の種類の吸着体でもよい。本実施形態の場合、各吸着体113は、保持ユニット11毎に吸着及び吸着解除が制御される。
【0016】
支持部材112の先端と吸着体113の上面とは略同一水平面上(略同じ高さ)に位置しており、支持部材112上に載置されたワーク2を吸着体113で吸着することにより、ワーク2を水平姿勢で固定することができる。
【0017】
本実施形態の場合、保持ユニット11によって支持部材112及び吸着体113の数や配置が異なっている。例えば、保持ユニット11aは、3つの支持部材112と4つの吸着体113とを有しているが、保持ユニット11bは、5つの支持部材112と2つの吸着体113とを有している。このように保持ユニット11の支持部材112及び吸着体113の数や配置を、ワーク2の部位に応じて異ならせることによって、ワーク2の部位によって支持位置や吸着位置が異なることになり、ワーク2の支持と吸着とを、偏ることなく行うことができる。無論、全ての保持ユニット11について、支持部材112及び吸着体113の数や配置を同じにしてもよい。
【0018】
なお、保持ユニット11a、11d、11g、11jは支持部材112及び吸着体113の数や配置が同じである。また、保持ユニット11b、11e、11hは支持部材112及び吸着体113の数や配置が同じである。更に、保持ユニット11c、11f、11iは支持部材112及び吸着体113の数や配置が同じである。支持部材112及び吸着体113の数や配置が同じ保持ユニット11を分散的に配置することで、支持部材112及び吸着体113の数や配置が異なる保持ユニット11の種類を少なくしながら、ワーク2の支持と吸着とを、偏ることなく行うことができる。
【0019】
移動機構12は、保持ユニット11を保持位置と退避位置との間でZ方向に移動する。移動機構12は例えば電動シリンダやエアシリンダであり、個別に制御される。保持位置は、ワーク2を保持するための位置である。
図2は全ての保持ユニット11が保持位置に位置している場合を示している。この場合、全ての支持部材112の先端と、全ての吸着体113の上面とは略同一水平面上に位置している。このため、支持部材112上に載置されたワーク2を吸着体113で吸着することにより、ワーク2を水平姿勢で固定することができる。退避位置は、保持位置から下方に離間した位置であり、加工中、加工ユニット20の工具21との干渉を避ける位置である。保持ユニット11は、通常は保持位置に位置し、加工時の必要な場合にのみ個別に退避位置に移動される。
【0020】
なお、本実施形態では、全ての保持ユニット11に移動機構12を設け、上下移動可能としたが、必ずしも全ての保持ユニットを移動可能とする必要はなく、固定された保持ユニットが存在していてもよい。例えば、保持ユニット11aや保持ユニット11jのように、端部に位置する保持ユニットを保持位置に固定としてもよい。
【0021】
<加工ユニット20>
図1〜
図3を参照して、加工ユニット20は、保持装置10に保持されたワーク2の加工対象部位に対して加工を行うユニットであり、工具21を有する。本実施形態の場合、工具21はワーク2の端縁の切削加工を行うカッター(エンドミル)であり、加工ユニット20は工具21の回転駆動を行う。加工システム1は、交換用の工具21が配置された工具ラック6を備えており、後述する移動装置30による加工ユニット20の移動によって、自動的に工具21を交換することも可能である。
【0022】
本実施形態では、上記の通り、ワーク2の切断縁の面取り加工を行うシステムであるが、切断縁以外の角部の面取り加工や、これ以外の加工にも本発明は適用可能である。例えば、孔あけ、切断等、切削加工以外の各種機械加工に適用可能である。また、レーザ加工等にも適用可能である。加工ユニット20や工具21は、その加工内容に応じたものが適宜選択されることになる。
【0023】
<移動装置30>
図1〜
図3を参照して、移動装置30は、保持装置10に保持されたワーク2の加工対象部位に加工ユニット20を移動させる。本実施形態の場合、移動装置30はワーク2上で加工ユニット20を3次元的に移動させる。
【0024】
移動装置30はY方向に延設された一対の案内部材31、31と、移動体32と、を備える。一対の案内部材31、31は、保持装置10の両側部に位置するよう、X方向に互いに離間して配設されている。本実施形態の場合、保持装置10と載置台50と載置台60とはY方向に並べて配置されており、一対の案内部材31、31はこれらに渡って、Y方向に延設されている。
【0025】
移動体32は、一対の案内部材31、31に架設されており、案内部材31に案内されてY方向に移動可能となっている。移動体32は、一対のスライダ321、321と、一対の柱部材322、322と、一対の柱部材322、322間に架設された梁部材323と、を備える。スライダ321は、案内部材31と係合して案内部材31に沿って移動可能である。柱部材322はスライダ321上に立設されている。梁部材323はX方向に延設されている。
【0026】
移動体32は不図示の駆動機構により移動される。駆動機構としては、ラック−ピニオン機構、ベルト伝動機構、ボール−ネジ機構等、各種の駆動機構が採用可能である。ラック−ピニオン機構を採用する場合、例えば、一対のスライダ321、321の一方に、ピニオン付きのモータを固定し、案内部材31に沿ってラックを設けてもよい。
【0027】
移動装置30は、移動体32に支持された移動体33を備える。移動体33は梁部材323と係合して梁部材323に沿ってX方向に移動可能である。移動体33は不図示の駆動機構により移動される。駆動機構としては、ラック−ピニオン機構、ベルト伝動機構、ボール−ネジ機構等、各種の駆動機構が採用可能である。
【0028】
移動装置30は、移動体33に支持された移動体34を備える。移動体34は移動体33と係合して移動体33に沿ってZ方向に移動可能である。移動体34は不図示の駆動機構により移動される。駆動機構としては、ラック−ピニオン機構、ベルト伝動機構、ボール−ネジ機構等、各種の駆動機構が採用可能である。
【0029】
加工ユニット20は移動体34に支持されている。そして、移動体34の移動によりZ方向に、移動体33の移動によりX方向に、移動体32の移動によりY方向に、それぞれ加工ユニット20を移動させることができる。
【0030】
<検出装置40>
検出装置40は、保持装置10に保持されたワーク2の加工対象部位の形状を検出する。本実施形態の場合、検出装置40はワーク2の形状を撮影する撮影装置である。検出装置40は、支持部材41と、支持部材41に支持されたカメラ42と、支持部材41に支持された照明装置43と、を備える。
【0031】
支持部材41は梁部材323に固定されている。つまり、移動体32には加工ユニット20に加えて検出装置40も搭載されている。したがって、検出装置40は移動装置30によってY方向に移動することができる。そして、移動装置30を加工ユニット20に加えて検出装置40の移動機構として兼用することができ、システムの簡素化を図れる。
【0032】
照明装置43はX方向に延設されており、その下方を照明する。照明装置43は例えば、LEDやレーザ装置等から構成される。カメラ42はその下方を撮影する。カメラ42は、CCDセンサ等の撮像素子と、光学系等から構成される。本実施形態では、カメラ42によりワーク2の形状を撮影する方式としたが、ワーク2の形状を検出可能であれば他の方式でもよい。
【0033】
<搬送装置70>
図1及び
図2を参照して、搬送装置70はワーク2を、保持装置10と、載置台50及び60との間で搬送する。搬送装置70は、移動体71と、昇降装置72と、搬送用の保持装置73と、を備える。本実施形態の場合、搬送装置70は、一対の案内部材31、31を移動装置30と共用している。これによりシステムの簡素化を図れる。
【0034】
移動体71は、一対の案内部材31、31に架設されており、案内部材31に案内されてY方向に移動可能となっている。移動体71は、一対のスライダ711、711と、一対の柱部材712、712と、一対の柱部材712、712間に架設された梁部材713と、を備える。スライダ711は、案内部材31と係合して案内部材31に沿って移動可能である。柱部材712はスライダ711上に立設されている。梁部材713はX方向に延設されている。
【0035】
移動体71は不図示の駆動機構により移動される。駆動機構としては、ラック−ピニオン機構、ベルト伝動機構、ボール−ネジ機構等、各種の駆動機構が採用可能である。ラック−ピニオン機構を採用する場合、例えば、一対のスライダ711、711の一方に、ピニオン付きのモータを固定し、案内部材31に沿ってラックを設けてもよい。移動装置30の移動体321の駆動機構として、ラック−ピニオン機構を採用する場合、案内部材31に沿って設けたラックを共用してもよい。
【0036】
昇降装置72は、移動体71に支持されている。本実施形態の場合、昇降装置72は梁部材713の中央部に固定されているが、梁部材713に沿ってX方向に移動可能としてもよい。昇降装置72は、移動体72aをZ方向に昇降するアクチュエータであり、例えば、電動シリンダやエアシリンダである。
【0037】
保持装置73は移動体72aの下端部に固定されている。保持装置73は、複数の吸着体731を備える。吸着体731がワーク2の表面に吸着することで、保持装置73がワーク2を保持する。本実施形態の場合、吸着体731は電磁石であるが、真空チャック等、他の種類の吸着体でもよい。また、保持装置73はワーク2を把持するクランプ式の保持装置であってもよい。
【0038】
<制御装置>
図4は加工システム1の制御を行う制御装置80のブロック図である。制御装置80は、処理部81と、記憶部82と、インターフェース部83と、を備え、これらは互いに不図示のバスにより接続されている。処理部81は記憶部82に記憶されたプログラムを実行する。処理部81は例えばCPUである。記憶部82は、例えば、RAM、ROM、ハードディスク等である。インターフェース部83は、処理部81と、外部デバイス(ホストコンピュータ86、センサ84、アクチュエータ85)と、の間に設けられ、例えば、通信インターフェースや、I/Oインターフェースである。
【0039】
センサ84には、例えば、加工ユニット20の位置を検出するセンサ(例えば、移動体32、33、34の各位置を検出するセンサ)、保持装置73の位置を検出するセンサ、カメラ42の撮像素子等が含まれる。アクチュエータ85には、吸着体113、移動機構12の駆動源、移動装置30が備える各駆動源、加工ユニット20の駆動源、搬送装置70の駆動源、吸着体731等が含まれる。
【0040】
制御装置80はホストコンピュータ86の指示により、加工システム1を制御する。以下、制御例について説明する。
【0041】
<ワークの搬送>
図5及び
図6を参照してワーク2の搬送例について説明する。概説すると、まず、未加工の複数のワーク2が、不図示の搬送装置によって載置台60上に搬入されてくる。搬送装置70によって、載置台60上のワーク2を一枚ずつ保持装置10上に搬送する。保持装置10上でワーク2の加工が終了すると、その加工済みのワーク2を搬送装置70によって載置台50へ搬送する。載置台50上には加工済みのワーク2が積載されてゆく。載置台50上の加工済みのワーク2が所定数に達すると、載置台50から加工済みのワーク2を不図示の搬送装置によって外部へ搬出する。
【0042】
図5の状態ST1は搬送装置70の保持装置73によって載置台60上のワーク2を保持する状態を示している。保持装置73は、積載されているワーク2のうち、最上部のワーク2の表面上に昇降装置72によって降下される。そして、吸着体731を作動してワーク2を保持する。続いて昇降装置72により保持装置73を上昇させてワーク2を持ち上げる。
【0043】
次に、
図5の状態ST2に示すように、移動体71を保持装置10へ移動する。これによりワーク2が保持装置10上に位置する。昇降装置72により保持装置73を降下させ、ワーク2を保持装置10上に載置する。そして、吸着体731による吸着を停止してワーク2の保持を解除し、昇降装置72により保持装置73を上昇する。
【0044】
次に、
図5の状態ST3に示すように、移動体71を載置台60側へ移動する。以上により、載置台60から保持装置10への1枚のワーク2の搬送が終了する。搬送されたワーク2は保持装置10上に保持され、加工される。
【0045】
加工が終了すると、保持装置10によるワーク2の保持が解除され、保持装置10上のワーク2を載置台50へ搬送装置70により搬送する。まず、移動体71を保持装置10へ移動し、保持装置73を保持装置10上に位置させる。これによりワーク2上に保持装置73が位置する。昇降装置72により保持装置73を降下させ、吸着体731を作動してワーク2を保持する。続いて昇降装置72により保持装置73を上昇させてワーク2を持ち上げる。
【0046】
次に、
図6の状態ST4に示すように、移動体71を載置台50へ移動する。これによりワーク2が載置台50上に位置する。昇降装置72により保持装置73を降下させ、ワーク2を載置台50上(或いは、載置台50に積載されているワーク2上)に載置する。そして、吸着体731による吸着を停止してワーク2の保持を解除する。
【0047】
その後、
図6の状態ST5に示すように、移動体71を載置台60上に移動し、次のワーク2を保持装置10へ搬送することになる。
【0048】
<ワークの加工>
次に、保持装置10上に搬送されてきたワーク2の加工例について説明する。概説すると、ワーク2の形状、特に加工対象部位の形状及び位置をまず検出する。そして、その検出結果に基づいて移動機構12、移動装置30、及び、加工ユニット20を制御してワーク2に対する加工を行う。
【0049】
本実施形態の場合、これらの処理は移動体32の一回の往復移動によって行う。具体的には、ワーク2の形状検出は、移動体32の往路移動中に行い、ワーク2の加工は移動体32の復路移動中に行う。
【0050】
<形状の検出>
図7及び
図8を参照してワーク2の形状の検出例について説明する。
図7及び
図8は、加工エリア3の各状態(ST11〜ST13)を、平面視した場合(
図7)と側面視した場合(
図8)とを示す。
【0051】
状態ST11は、移動体32が初期位置にある場合を示している。カメラ42は、保持装置10に保持されたワーク2からY方向にずれた位置にある。この位置からワーク2の形状の検出を開始する。まず、照明装置43によるワーク2への照射を開始し、カメラ42によるワーク2の撮影を開始する。
【0052】
次に、状態ST12に示すように移動体32を移動して、ワーク2上を走査する。カメラ42によりワーク2の形状が順次撮影され、その画像データと位置情報とが記憶部82に保存される。状態ST13に示すように、移動体32がワーク2からY方向にずれた位置(折り返し位置)まで到達すると撮影を終了する。こうしてワーク2上を全面に渡って走査する。
【0053】
なお、本実施形態では検出装置40を梁部材323に固定したが、昇降装置を介して梁部材323に取り付けて、昇降可能としてもよい。そして、検出装置40とワーク2との距離を検出するセンサを設け、ワーク2の走査中、該距離が一定となるように昇降装置を制御してもよい。このような制御により、ワーク2の走査中、カメラ42の焦点がワーク2に合った状態を確実に維持することができる。
【0054】
この撮影の結果、例えば、
図8に示すワーク2の形状データ2’が得られる。この形状データ2’はワーク2の外形と、その位置情報(座標データ)を示す。同図の例では、また、ワーク2に複数の加工対象部位P1〜P8が存在することを示している。形状データ2’は、これらの加工対象部位P1〜P8の外形とその位置情報も含んでいる。
【0055】
なお、同図の例では、一つのワークに複数の加工対象部位が存する場合を例示したが、一つのワークに加工対象部位は一つであってもよい。また、どこが加工対象部位か否かは、自動判定としてもよいしオペレータが指定するようにしてもよい。
【0056】
自動判定とする場合は、加工対象部位が指定されている、ワークの設計データを準備しておき、この設計データと形状データ2’とを比較することで、加工対象部位を自動判定することができる。また、加工対象部位を、ワーク2の外周縁全部とする場合は、外周縁を認識できればよいので、設計データを準備する必要もなく自動判定することができる。
【0057】
オペレータが指定する場合は、例えば、形状データ2’をホストコンピュータ86に送信してその画像を表示させ、ホストコンピュータ86のオペレータが入力デバイスから加工対象部位を指定するようにすることもできる。
【0058】
なお、取得した形状データ2’の座標は、例えば、予め取得していた保持装置10のレイアウトを示す平面データと、移動体32を駆動するモータのエンコーダの出力信号とを照合することで認識することができる。
【0059】
<加工>
図9及び
図10を参照してワーク2の形状の検出結果に基づく加工例について説明する。
図9及び
図10は、加工エリア3の状態毎(ST21〜ST24毎)に、加工エリア3を平面視した場合と側面視した場合とを上下2段にして示している。また、保持装置10上のワーク2を透過図として示している。
【0060】
図9の状態ST21は、移動体32が折り返し位置にある場合を示している。上記の通り、本実施形態では、移動体32の往路移動中にカメラ42による撮影を行い、復路移動中に加工ユニット20によるワーク2の加工を行う。状態ST21は復路移動開始時を示している。
【0061】
本実施形態ではP1→P2→・・・→P8の順に加工対象部位の加工を行う場合を想定している。まず、移動装置30により加工対象部位P1へ加工ユニット20を接近させる(移動工程)。並行して、形状データ2’に基づき、加工対象部位P1に位置している保持ユニット11を特定する。加工対象部位P1には保持ユニット11hが位置している。したがって、保持ユニット11hの吸着体113による吸着を停止して保持を解除する。そして、保持ユニット11hを移動する移動機構12を駆動して保持ユニット11hの位置を、保持位置から退避位置へ切り替える(位置変更工程)。なお、加工ユニット20の移動と、保持ユニット11の位置の切り替えとは、並行して行う以外に、どちらかを先に行う制御であってもよく、この場合、どちらが先であってもよい。
【0062】
図9の状態ST22に示すように、加工ユニット20が加工対象部位P1の上方に到達すると、加工ユニット20を降下させると共に加工ユニット20を駆動して工具21により加工対象部位P1の加工を開始する。加工ユニット20を加工対象部位P1の形状に沿って矢印方向に移動することで、加工対象部位P1の端縁の面取りが行われる。加工ユニット20の移動は、形状データ2’に基づき移動装置30によって行うことができる。
【0063】
このとき、保持ユニット11hは退避位置にあり、工具21と干渉することはない。言い換えると、保持ユニット11hを退避位置に移動させることで、保持装置10における保持ユニット11hの部分が、ワーク2を載置、支持する台としてではなく、ワーク2における加工対象部位P1の作業エリア(作業空間)として機能することになる。したがって、保持ユニット11hが加工の邪魔となったり、工具21によって損傷されたりすることもない。また、保持ユニット11h以外の他の保持ユニット11は保持位置にあり、ワーク2を保持している。したがって、加工中にワーク2の位置がずれたりすることもない。
【0064】
加工対象部位P1の加工が終了すると、加工対象部位P2への加工に移る。
図10の状態ST23は、加工対象部位P2の加工への移行を開始した状態を示す。まず、加工ユニット20を上昇し、移動装置30により加工対象部位P2へ加工ユニット20を接近させる。並行して、形状データ2’に基づき、加工対象部位P2に位置している保持ユニット11を特定する。加工対象部位P2には保持ユニット11gが位置している。したがって、保持ユニット11gの吸着体113による吸着を停止して保持を解除する。そして、保持ユニット11gを移動する移動機構12を駆動して保持ユニット11gの位置を、保持位置から退避位置へ切り替える(位置変更工程)。また、加工を終えた加工対象部位P1に位置する保持ユニット11hを退避位置から保持位置に切り替える。そして、保持ユニット11hの吸着体113を駆動してワーク2を保持する。
【0065】
図10の状態ST24に示すように、加工ユニット20が加工対象部位P2の上方に到達すると、加工ユニット20を降下させると共に加工ユニット20を駆動して工具21により加工対象部位P2の加工を開始する。加工ユニット20を加工対象部位P2の形状に沿って矢印方向に移動することで、加工対象部位P2の端縁の面取りが行われる。加工ユニット20の移動は、形状データ2’に基づき移動装置30によって行うことができる。
【0066】
このとき、保持ユニット11gは退避位置にあり、工具21と干渉することはない。したがって、保持ユニット11gが加工の邪魔となったり、工具21によって損傷されたりすることもない。また、保持ユニット11g以外の他の保持ユニット11は保持位置にあり、ワーク2を保持している。したがって、加工中にワーク2の位置がずれたりすることもない。
【0067】
加工対象部位P2の加工が終了すると、加工対象部位P3への加工に移る。加工対象部位P2と加工対象部位P3とでは、これらに位置している保持ユニット11が共通している(保持ユニット11g)。したがって、保持ユニット11gを退避位置に位置させたままで加工対象部位P3の加工を行うことになる。以下、同様の手順により加工作業が進行していく。
【0068】
このように本実施形態では、加工対象部位に位置している保持ユニット11を退避位置に移動させ、残りの保持ユニット11によってワーク2を保持することで、ワーク2を確実に保持しながら、工具21と保持ユニット11との干渉を回避できる。保持ユニット11を退避位置と保持位置とで移動可能にしたことで、異なる加工対象部位に対応することができる。したがって、形状や加工対象部位の異なる多種のワークに対して、一つの保持装置10で迅速に対応できる。
【0069】
全ての加工対象部位の加工が終了すると、移動体32は初期位置に戻る。こうして、移動体32の一回の往復移動の間に、ワーク2の形状検出とワーク2の加工とを行うことができる。その後、搬送装置70によって加工済みのワーク2が保持装置10から搬送され、また、新たな未加工のワーク2が保持装置10に搬送される。そして、新たな未加工のワーク2に対して同様の手順でワーク2の形状検出とワーク2の加工とを行うことになる。
【0070】
本実施形態では、ワーク2毎にその形状の検出と加工とを行う場合について説明したが、同種類のワーク2を連続的に加工する場合に、その形状の検出は最初の1回のみとしてもよい。この場合、2枚目以降のワーク2が1枚目のワーク2と同じ位置に保持されるように、保持装置10上でその位置決めを行う位置決め装置を設ければよい。また、ワーク2の形状を検出しながら、ワーク2の加工を行うことも可能である。例えば、移動体32が初期位置から折り返し位置へ移動する間に、ワーク2の形状を検出しつつ、その検出結果に基づいてワーク2の加工を行うこともできる。
【0071】
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、加工ユニット20に対して複数種類の工具21を交換可能とすることが可能であることを説明したが、面取り加工に好適な工具の構成例について説明する。ここでは、ワーク2の上面側と下面側とで面取り加工を行う工具21の種類を交換する場合について説明する。
【0072】
図11は、ワーク2の上面側を加工する片側加工工具である上加工工具21Aの説明図である。状態ST31は上加工工具21Aがワーク2の上方に位置した加工待機時、状態ST32は加工時をそれぞれ示す。
【0073】
上加工工具21Aは、回転軸211と、刃部212と、補助部材213と、軸受214、214と、を備える。回転軸211は加工ユニット20によって回転駆動される。刃部212は回転軸211に固定され、ワーク2を切削する。補助部材213は、回転軸211と同心円筒状をなしている。補助部材213は、軸受214、214を介して、回転軸211に対して回転自在に固定されている。
【0074】
状態ST32に示すように、加工時においては、刃部212が加工対象部位Pの上側の角部CRに押し当てられて、その面取り加工を行う。刃部212は、角部CRを加工対象部位Pの輪郭に沿って連続的に加工すべく、X−Y方向に順次移動される。移動中、補助部材213は、その下端面がワーク2の上面に倣うように当接される。これにより、刃部212をより安定して移動できる。
【0075】
次に、
図12は、ワーク2の下面側を加工する片側加工工具である下加工工具21Bの説明図である。状態ST41は下加工工具21Bがワーク2の上方に位置した加工待機時、状態ST42は下加工工具21Bの刃部212をワーク2の下方に位置した加工準備時、状態ST43は加工時をそれぞれ示す。
【0076】
下加工工具21Bは、回転軸211と、刃部212と、補助部材213’と、軸受214、214と、を備え、上加工工具21Aと基本的構成が類似しているが、補助部材213’の形状及び位置が異なっている。
【0077】
回転軸211は加工ユニット20によって回転駆動される。刃部212は回転軸211に固定され、ワーク2を切削する。補助部材213’は、回転軸211と同心円筒状をなしている。補助部材213’は、刃部212よりも下方において、軸受214、214を介して、回転軸211に対して回転自在に固定されている。
【0078】
状態ST42に示すように、加工を開始する前に、刃部212をワーク2の下方へ移動する必要がある。本実施形態の場合、補助部材213’は、加工対象部位Pを上から下へ通過できるように、補助部材213よりも最大外径が小径とされている。
【0079】
状態ST43に示すように、加工時においては、刃部212が加工対象部位Pの下側の角部CRに下方から押し当てられて、その面取り加工を行う。刃部212は、角部CRを加工対象部位Pの輪郭に沿って連続的に加工すべく、X−Y方向に順次移動される。移動中、補助部材213’は、その上端面がワーク2の下面に倣うように当接される。これにより、刃部212をより安定して移動できる。
【0080】
<第3実施形態>
上記第2実施形態では、ワーク2の上面側と下面側とで面取り加工を別々に行う場合の工具21について説明したが、同時に行うことも可能である。
【0081】
図13は、ワーク2の上面側及び下面側を同時に加工する両側加工工具21Cの説明図である。状態ST51は両側加工工具21Cがワーク2の側方に位置した加工待機時、状態ST52は両側加工工具21Cによる加工時をそれぞれ示す。
【0082】
両側加工工具21Cは、回転軸211と、上側刃部212Uと、下側刃部212Lと、弾性部材215と、を備える。
【0083】
回転軸211は加工ユニット20によって回転駆動される。上側刃部212Uと下側刃部212Lとは回転軸211に固定され、ワーク2を切削する。但し、上側刃部212Uと下側刃部212Lは、例えばスプライン係合により、回転軸211に固定されており、軸方向には移動可能となっている。上側刃部212Uは、下側刃部212Lよりも上方に位置し、ワーク2の上面側を切削し、下側刃部212Lはワーク2の下面側を切削する。
【0084】
弾性部材215としては、例えば、上側刃部212Uと下側刃部212Lとを、両者が近接する方向に常時付勢するひきバネが適用可能である。本実施形態の場合、弾性部材215はコイルスプリングであり、その一端が上側刃部212Uに、その他端が下側刃部212Lにそれぞれ固定される。
【0085】
状態ST52に示すように、加工時においては、工具21Cはワーク2に対して横から押しあてられ、上側刃部212Uは上側の角部CR1を、下側212Lは下側の角部CR2を、それぞれ切削する。こうして、角部CR1、CR2を同時に加工できる。
【0086】
上側刃部212Uと下側刃部212Lとは、弾性部材215によって近接する方向に付勢されつつ、互いに離間する方向に変位可能である。そして、上側刃部212Uと下側刃部212Lとの間にワーク2が入り込むことで、上側刃部212Uと下側刃部212Lとが押し広げられ、ワーク2の角部CR1、CR2に上側刃部212U及び下側刃部212Lが密着して押し当てられる。このため、角部CR1、CR2に対する上側刃部212U及び下側刃部212Lのあたり具合を、より良好にすることができる。
【0087】
<第4実施形態>
面取り加工等においては、加工対象部位に対して工具21が適度な力で押圧されながら、切削を行うことが好ましい。そこで、ワーク2に対する工具21の押圧力を調整可能な押圧機構を設けてもよい。
図14はその一例を示す。
図14は、移動体34と、加工ユニット20との間に押圧機構90を設けた例を示している。
【0088】
押圧機構90は、ベース部91と、レール部92と、アクチュエータ93と、連結部材94とを備える。ベース部91は移動体34に固定されたブロック状の部材である。レール部92はベース部91の正面に設けられ、Z方向に延びている。加工ユニット20にはレール部92に係合してZ方向にスライド可能なスライダ22が設けられる。これにより、加工ユニット20はベース部91に対してZ方向に変位自在となっている。
【0089】
ベース部91の側部には押圧力を調整するアクチュエータ93が設けられている。アクチュエータ93は、例えば、電動シリンダやエアシリンダである。アクチュエータ93は連結部材94をZ方向に変位可能である。連結部材94はアクチュエータ93の出力部と加工ユニット20とを連結し、アクチュエータ93が発生する押圧力を加工ユニット20に伝達する。
【0090】
ここで、ワーク2に対する工具21の押圧力をF1、工具21が装着された状態での加工ユニット20の重量をW、押圧力F1を達成するのに必要なアクチュエータ93の出力(連結部材94を上向きに押し上げる力)をFとする。
【0091】
図11に示した上加工工具21A等を用いた加工では、ワーク2に対して工具21を上方から押しあてながら加工を行うことになる。よって、出力Fは、F=W−F1となる。例えば、重量Wが100kgf、押圧力F1=20kgfとすると、出力Fは80kgfとなる。
【0092】
一方、
図12に示した下加工工具21B等を用いた加工では、ワーク2に対して工具21を下方から押しあてながら加工を行うことになる。よって、出力Fは、F=W−F1となる。例えば、重量Wが100kgf、押圧力F1=−20kgfとすると、出力Fは120kgfとなる。
【0093】
このように、アクチュエータ93の出力の大きさを切り替えることで、ワーク2に対する工具21の押圧力を上方向と下方向とで切り替えることができる。
【0094】
本実施形態では、ワーク2に対する工具21の押圧力を上方向と下方向とで切り替えるにあたり、共通のアクチュエータ93を用いたが、上方向用のアクチュエータと、下方向用のアクチュエータとをそれぞれ設けてもよい。また、アクチュエータはシリンダである必要はなくバネ等の部材であってもよいし、種類の異なるアクチュエータ(例えば、シリンダとバネ)を組み合わせてもよい。
【0095】
<第5実施形態>
ワーク2上に塵が存在すると加工性を低下させる要因となり得る。また、加工により生じた削りかす等をワーク2上から払いたい場合もある。そこで、ワーク2表面の清掃機構を設けてもよい。ここでは、エアの噴出によりワーク2上の塵等を吹き飛ばす構成例について説明する。
【0096】
図15は、本実施形態における搬送用の保持装置73の別例を示す図である。同図の例では、保持装置73にエアーの噴出ユニット732を設けている。噴出ユニット732から矢印で示すようにエアーを噴出することでワーク2の表面の清掃を行うことができる。清掃の際には、ワーク2に対して保持装置73を移動させながらエアーを噴出することで、より広範囲に渡ってワーク2の清掃を行える。
【0097】
清掃のタイミングは、載置台60上で未加工のワーク2を保持する前、未加工のワーク2を保持装置10上に搬送した後、保持装置10上で加工済みのワーク2を保持する前、載置台50へ加工済みのワークを搬送した後、等が挙げられる。
【0098】
清掃機構の配設部位は保持装置73に限られない。しかし、保持装置73に清掃機構を設けることで、清掃機構を移動させる構成を他の構成と共用できる。
【0099】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。