(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778794
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】抵抗の温度係数(TCR)補償機能/作用を備えた抵抗器
(51)【国際特許分類】
H01C 7/00 20060101AFI20150827BHJP
H01C 17/22 20060101ALI20150827BHJP
H01C 17/242 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
H01C7/00 A
H01C17/22 C
H01C17/24 L
【請求項の数】20
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-1810(P2014-1810)
(22)【出願日】2014年1月8日
(62)【分割の表示】特願2012-528034(P2012-528034)の分割
【原出願日】2010年9月2日
(65)【公開番号】特開2014-90205(P2014-90205A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2014年1月28日
(31)【優先権主張番号】61/239,962
(32)【優先日】2009年9月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/359,000
(32)【優先日】2010年6月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502021419
【氏名又は名称】ヴィシェイ デイル エレクトロニクス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VISHAY DALE ELECTRONICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ベルシュ,トーマス エル.
(72)【発明者】
【氏名】ワイアット,トッド エル.
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイク,トーマス エル.
(72)【発明者】
【氏名】スミス,クラーク エル.
【審査官】
柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−329421(JP,A)
【文献】
特開平03−025994(JP,A)
【文献】
特開2005−181056(JP,A)
【文献】
米国特許第05999085(US,A)
【文献】
特開平06−267707(JP,A)
【文献】
特開2006−112868(JP,A)
【文献】
米国特許第5953811(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/00
H01C 17/22
H01C 17/242
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗の温度係数(TCR)の補償機能/作用をもつ抵抗器において、
第1導電性ストリップと第2導電性ストリップとの間に設けられた抵抗ストリップ、
前記第1導電性ストリップに形成された第1主端子および第1電圧検出端子、
前記第2導電性ストリップに形成された第2主端子および第2電圧検出端子、
前記第1電圧検出端子と前記第1主端子との間に配置された第1の精密でないTCR較正スロットであって、この第1の精密でないTCR較正スロットが、前記抵抗ストリップから離れた位置に開口部を有し、そして、この開口部が前記抵抗ストリップに向けて延びる深さを有し、
前記第2電圧検出端子と前記第2主端子との間に配置された第2の精密でないTCR較正スロットであって、この第2の精密でないTCR較正スロットが、前記抵抗ストリップから離れた位置に別の開口部を有し、そして、この別の開口部が前記抵抗ストリップに向けて延びる深さを有し、
前記第1電圧検出端子と前記第2電圧検出端子との間に形成された精密なTCR較正スロットを有することを特徴とする抵抗器。
【請求項2】
前記第1及び第2電圧検出端子において、負の開始TCR値が観測されるようにそれぞれが選択された深さを有する前記第1及び第2の精密でないTCR較正スロットと、
前記第1及び第2電圧検出端子において、ゼロに近づくTCR値が観測されるように選択された深さをもつ精密なTCR較正スロットとを有する請求項1に記載の抵抗器。
【請求項3】
前記第1及び第2主端子間に形成され、かつ前記抵抗器の抵抗値を較正するように選択された深さをもつ抵抗較正スロットをさらに有する請求項1に記載の抵抗器。
【請求項4】
前記第1及び第2の精密でないTCR較正スロットのそれぞれが等しい深さをもつ請求項1に記載の抵抗器。
【請求項5】
前記第1及び第2の精密でないTCR較正スロットのそれぞれが異なる深さをもつ請求項1に記載の抵抗器。
【請求項6】
前記精密なTCR較正スロットが前記抵抗ストリップ内に形成された請求項1に記載の抵抗器。
【請求項7】
前記抵抗較正スロットが前記抵抗ストリップ内に形成される請求項3に記載の抵抗器。
【請求項8】
第1導電性ストリップと第2導電性ストリップとの間に抵抗ストリップを設ける工程、
前記第1導電性ストリップに第1主端子および第1電圧検出端子を形成する工程、
前記第2導電性ストリップに第2主端子および第2電圧検出端子を形成する工程、
前記第1電圧検出端子と前記第1主端子との間に第1の精密でないTCR較正スロットを形成し、この第1の精密でないTCR較正スロットが、前記抵抗ストリップから離れた位置に開口部を有し、そして、この開口部が前記抵抗ストリップに向けて延びる深さを有し、
前記第2電圧検出端子と前記第2主端子との間に第2の精密でないTCR較正スロットを形成し、この第2の精密でないTCR較正スロットが、前記抵抗ストリップから離れた位置に別の開口部を有し、そして、この別の開口部が前記抵抗ストリップに向けて延びる深さを有し、
前記第1電圧検出端子と前記第2電圧検出端子との間に精密なTCR較正スロットを形成する工程とからなる抵抗の温度係数(TCR)補償機能/作用をもつことを特徴とする抵抗器の製造方法。
【請求項9】
前記第1及び第2電圧検出端子において、負の開始TCR値が観測されるようにそれぞれが選択された深さを有する前記第1及び第2の精密でないTCR較正スロットを形成する工程と、
前記第1及び第2電圧検出端子において、ゼロに近づくTCR値が観測されるように選択された深さをもつ精密なTCR較正スロットを形成する工程とを有する請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
さらに、前記第1主端子と前記第2主端子との間に抵抗較正スロットを形成し、前記抵抗較正スロットが前記抵抗器の抵抗値を較正するように選択された深さにする工程を有する請求項8に記載の製造方法。
【請求項11】
前記第1及び第2の精密でないTCR較正スロットそれぞれに等しい深さを形成する工程を有する請求項8に記載の製造方法。
【請求項12】
前記第1及び第2の精密でないTCR較正スロットそれぞれに異なる深さを形成する工程を有する請求項8に記載の製造方法。
【請求項13】
前記精密なTCR較正スロットが前記抵抗ストリップ内に形成される請求項8に記載の製造方法。
【請求項14】
前記抵抗ストリップ内に形成された前記抵抗較正スロットである請求項10に記載の製造方法。
【請求項15】
抵抗の温度係数(TCR)の補償機能/作用をもつ抵抗器において、
それぞれが所定の内部エリアをもつ第1導電性ストリップと第2導電性ストリップとの間に設けられた抵抗ストリップと、
前記第1導電性ストリップの前記所定の内部エリア内に形成された第1主端子および第1電圧検出端子と、
前記第2導電性ストリップの前記所定の内部エリア内に形成された第2主端子および第2電圧検出端子と、
第1及び第2のTCR較正スロットを有し、それぞれが前記第1及び第2主端子の間に配置された複数のTCR較正脚部を有することを特徴とする抵抗器。
【請求項16】
複数のTCR較正脚部の少なくとも一つが、前記第1及び第2の電圧検出端子で観測される精密でないTCR値を得るために選択された長さを有し、
複数のTCR較正脚部の少なくとも一つが、前記第1及び第2電圧検出端子においてゼロに近づくTCR値が観測されるように選択された長さを有する請求項15に記載の抵抗器。
【請求項17】
前記第1及び第2導電性ストリップが主電流路を画定し、
前記複数のTCR較正脚部の少なくとも一つが前記主電流路に対して直交して配置された請求項15に記載の抵抗器。
【請求項18】
前記第1及び第2導電性ストリップが主電流路を画定し、
前記複数のTCR較正脚部の少なくとも一つが前記主電流路に対して平行して配置された請求項15に記載の抵抗器。
【請求項19】
前記第1のTCR較正スロットの複数の前記TCR較正脚部の少なくとも一つが、前記第2のTCR較正スロットの複数のTCR較正脚部の少なくとも一つと等しい長さをもつ請求項15に記載の抵抗器。
【請求項20】
前記第1のTCR較正スロットの複数の前記TCR較正脚部の少なくとも一つが、前記第2のTCR較正スロットの複数のTCR較正脚部の少なくとも一つと異なる長さをもつ請求項15に記載の抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2009年9月4日に出願された米国仮特許出願第61/239,962号および2010年6月28日に出願された米国仮特許出願第61/359,000号の優先権を主張する出願であり、これら公報の内容については、あたかも本明細書に完全に開示されているように援用するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、オーム値がきわめて低く、安定性の高い4端子電流検出抵抗器に関する。
【背景技術】
【0003】
表面実装電流検出抵抗器は、長年の間電子分野において利用されてきている。これらの構成は、代表例を挙げれば、素子の主端子を形成する、導電性の高い金属端子間に結合された抵抗材料からなる平坦ストリップを有する。主端子中に一対の電圧検出端子を形成すると、4端子素子になる。主端子には、素子に流れる電流の大部分が流れる。電圧検出端子が、素子に流れる電流に比例する電圧を出力する。このような素子は、従来の電圧検出技術を利用して、所定の回路に流れる電流をモニターする機構になる。素子に実際に流れる電流については、検出された電圧およびオームの法則に従う素子の抵抗値に基づいて求めることができる。理想的な素子は、抵抗の温度係数(TCR)がゼロに近い素子と考えられるが、殆どの素子は、TCRがゼロではなく、特に素子温度が変動した場合、電圧検出端子での電圧測定値が不正確になる。
【0004】
低オーム電流検出抵抗器および高電流分流器の場合、抵抗要素の長さが短く、また抵抗器の長さは標準的な長さであり、高電流分流器の場合には、その用途の理由のために抵抗器の長さが長くなる。抵抗器が長くなり、抵抗要素が短くなると、銅端子金属のかなりの量が電流路に存在することになる。銅のTCRは3,900ppm/℃であり、一方抵抗材料のTCRは通常100ppm/℃未満である。電流路に付加された銅は、800ppm/℃かそれ以上の値まで抵抗器のTCR全体を押し上げるが、望ましいTCRは100ppm/℃未満である。
【0005】
上述したように、代表的な電流検出抵抗器は端子数が4であり、2つは主端子、2つは電圧検出端子であり、これらは2つのスロットによって分離されている。これら2つのスロットの長さに手を加えると、TCRを調節できる。この点については、USP5,999,085(Szwarc)が参考になる。この方法は、例えば、抵抗要素の幅を狭くして抵抗器の抵抗値を高くするために利用されているレーザーやその他の切断技術などの従来の抵抗器較正装置に使用するには適さない方法である。
【0006】
従来技術において求められているのは、TCR補償または調節機能を備えた電流検出抵抗器を製造する改良構成および改良方法である。また、製造時に電流検出抵抗器のTCR調節を簡略化できる改良抵抗器構成および改良抵抗器方法を実現することも望まれている。これらの態様の一つまたはそれ以上については、明細書および特許請求の範囲の記載から明らかになるはずである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】USP5,999,085(Szwarc)
【発明の概要】
【0008】
本明細書に開示するものは、抵抗の温度係数(TCR)補償機能/作用を備えた抵抗器および抵抗器の製造方法である。この抵抗器の抵抗ストリップを2つの導電性ストリップの間に設ける。これら導電性ストリップ中に一対の主端子および一対の電圧検出端子を形成する。主端子と電圧検出端子との間に精密ではない一対のTCR較正スロットを設ける。精密ではない各TCR較正スロットの深さについては、負の開始TCR値が電圧検出端子で観測されるように選択する。一対の電圧検出端子間に精密なTCR較正スロットを形成する。この精密なTCR較正スロットの深さについては、電圧検出端子でゼロに近いTCR値が観測されるように選択する。抵抗器にも、一対の主端子間に抵抗較正スロットを形成でき、そしてこの抵抗較正スロットの深さについては、抵抗器の抵抗値を較正できるように選択する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】TCRを負の開始値に調節できるように構成した一対の第1スロットを備えた4端子抵抗器を示す図である。
【
図2】TCRを最小値に一括調節できるように構成した一対の第1スロット、および第2スロットを備えた4端子抵抗器を示す図である。
【
図3】TCRを最小値に一括調節できるように構成した一対の第1スロット、および第2スロットを備え、かつ抵抗較正を行うように構成した第3スロットを備えた4端子抵抗器を示す図である。
【
図4】第2スロットの深さとTCRと抵抗値の関係を示すグラフである。
【
図5】TCR補償機能/作用を備えた4端子抵抗器の別な実施態様を示す図である。
【
図6】各種のスロット構成に伴うTCR補償特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1〜
図3に、抵抗の温度係数(TCR)の各調節段の例示的な抵抗器構成を示す。なお、本明細書に開示する技術は、膜抵抗器、金属箔抵抗器やその他のタイプの抵抗器を始めとする他のタイプの抵抗器に適用可能である。
【0011】
図1に、2つの導電性ストリップ12、14間に設けられた抵抗ストリップ13から全体を構成した抵抗器10を示す。この抵抗器10は、主端子16、18および電圧検出端子20、22を備えている。動作時には、主端子16、18には、抵抗器を通る電流の大部分が流れる。主端子と電圧検出端子との間に一対の第1スロット24、26を設ける。第1スロット24、26それぞれは、抵抗ストリップ13に向かう対応する深さを有する。全体として深さAとして図示する。なお、第1スロット24、26の各深さは同じ大きさAでもよく、あるいは異なっていてもよい。
図2および
図3に、深さBの第2スロットおよび深さCの第3スロットを示す。これらスロット間の関係については、以下に説明する。
【0012】
図1に戻って説明すると、導電性ストリップは全体として銅シート材から形成し、材厚は例えば約0.008〜0.120インチ(〜0.2から3mmまで)の範囲に設定する。銅シート材の材厚は、一般的には、素子の目的とする電力損失、および目的の機械的強度に基づいて、例えば抵抗器が製造時、取り付け時、使用時に十分な強度をもつように選択する。
【0013】
一対の第1スロット24、26が導電性ストリップ12、14の一部を区分し、4端子素子を構成する。全体として、一対の第1スロット24、26の大きさおよび位置が、主端子16、18および電圧検出端子20、22の寸法を決定する。また、全体として、一対の第1スロット24、26は、抵抗器の一縁部に向かって設けられる。この実施例では、一対の第1スロット24、26は、素子の上縁部から測って距離Y離れている。この距離Yについては、全体として電圧検出端子のサイズが適正化するように選択する。例えば、製造時にパンチ加工や機械加工に耐えることができ、かつ取り付け時および使用時に十分な強度を担保する十分な幅の電圧検出端子を提供できるように距離Yを選択すればよい。
【0014】
第1スロット24、26それぞれの深さは、全体として
図1に距離Aとして図示する。多くの用途では、第1スロット24、26の深さは同じ深さAである。なお、第1スロット24および26は、異なる深さに対処できるように構成できる。また、第1スロット24、26の深さについては、素子上の各種の点から参照できるように構成する。全体として、一対の第1スロット24、26は、主端子16、18および電圧検出端子20、22との間の厚み、即ち狭隘部を小さくするものである。これについては、
図1に全体として距離Xで示す。第1スロット深さAの決定方法について、以下説明する。
【0015】
以下の実施例では、導電性ストリップ12、14を銅で構成する。既述のように、銅のTCRは3,900ppm/℃であり、これに対して抵抗ストリップ13のTCRは100ppm/℃未満になることがある。第1スロット24、26がなければ、抵抗器10のTCRは、多量の銅が電流路に存在するため、例えばきわめて高い、正のTCR値を取ることになる。一般的には、TCRを最小限に抑えることが望ましい。即ち、絶対値がゼロに近いTCRである。所定の電流検出抵抗器の一般的な範囲は±25ppm/℃としてもよい。ここで、所定素子の目標とする抵抗値を200μΩ(即ち0.0002Ω)とし、また一対の第1スロット24、26を使用しない初期設計では、ほぼ800ppm/℃のTCRをもつ素子が得られると想定する。
【0016】
銅からなる導電性ストリップ12、14のストリップ厚については、前記のように選択し、また抵抗ストリップ13の寸法については、目標の抵抗値に近いがそれよりも小さい抵抗値が得られるように選択する。これは、最終的な抵抗値が、(抵抗器の抵抗値が高くなる)次のトリム加工によって設定されるからである。
【0017】
電圧検出端子の寸法の設定とは別に、一対の第1スロット24、26があると、電圧検出端子20、22におけるTCRの負特性がより強くなる。一対の第1スロット24、26が深くなる程、電圧検出端子20、22におけるTCRの負特性が強くなる。一対の第1スロット24、26は、抵抗器それ自体のTCRを有意に変えるというよりは、電圧検出端子20、22において観測されるTCRを変えるものである。
【0018】
例えば、第1スロット深さAと電圧検出端子20、22において観測されるTCRとの関係は、プロトタイププロセスによって決定できる。例えば、プロトタイプ素子を製造し、次に従来方法(即ち、所定範囲の条件で電圧、電流および温度を測定する方法)によって試験を行う。第1スロット24、26の深さは、負の開始TCR値が電圧検出端子20、22において観測されるまで、例えばほぼ−200ppm/℃が観測されるまで、連続的に深くなる。従って、第1スロット24、26は精密ではないTCR較正スロットとみなすことができる。
【0019】
この段階では、負の開始TCR値が望ましい。というのは、以下に詳しく説明するように、第2スロットを使用してTCR値を精密に調整するからである。第1スロット深さの設定を一旦適正化した後は、具体的なスタイルの製品(即ち、物理特性および電気特性をもつ抵抗器)についてはこの深さを変更する必要はない。これは、通常のパンチ加工、エンドミル加工やその他の機械加工技術を利用して、製造プロセスの初期の時点で一対の第1スロット24、26を挿入できるため、有利である。製造プロセスの次の時点でスロット加工作業を行うが、これはレーザートリム加工によって実施できる。
【0020】
次に、
図2に示すように、電圧検出端子20、22の間に深さがBの第2スロット28を設ける。一般的には、電圧検出端子20、22間にある抵抗ストリップ13に第2スロット28を形成する。なお、第2スロットを使用すると、
図2に示すように、電圧検出端子20、22の一部を取り除くことができる。第2スロット28の最終的な作用効果は、電圧検出端子20、22で検出されたTCRを正駆動することである。また、第2スロット28を設けると、
図4のグラフに示すように、抵抗値が少し大きくなる。これは
図4のグラフに示されている。この実施例では、(例えば
図1に示すように)第2スロット28を設けていない抵抗器のTCRは、−198ppm/℃である。(第2スロット28を形成してない)素子の初期抵抗は、およそ110μΩ(即ち0.00011Ω)である。第2スロットの深さを0.040インチ(〜1mm)に設定すると、TCRは−100ppm/℃まで改善する。同様に、抵抗はおよそ125μΩ(即ち0.000125Ω)まで高くなる。
【0021】
図3について説明する。第2スロット28を0.080インチ(〜2mm)に設定すると、TCRの正特性が連続的に強くなり、ゼロに近づく。抵抗は、およそ140μΩ(即ち0.00014Ω)まで高くなる。従って、第2スロット28は、精密なTCR較正スロットとして機能する。上記したように、所定の素子に対する代表的なTCR目標範囲は、およそ±25ppm/℃になると考えられる。第2スロット28は、レーザートリム加工、通常のパンチ加工、エンドミル加工や、あるいは材料を目的の深さおよび幅まで除去するその他の機械加工技術を利用して加工できる。
【0022】
図3にはまた、主端子16、18間に形成される第3スロット30(抵抗較正スロット)も示す。第3スロット30の深さについては、抵抗器値を精密に調整できるように選択される。この場合、深さCについては、目標の抵抗値が特定の許容誤差(例えば200μΩ±1%)内に入るように選択する。第3スロット30は、レーザートリム加工、通常のパンチ加工、エンドミル加工や、あるいは材料を目的の深さおよび幅まで除去するその他の機械加工技術を利用して加工できる。
【0023】
なお、第1スロット24、26、および第2スロット28の形成は同時でもよく、あるいは別々に行ってもよい。また、例えば抵抗器基準に従って抵抗器上でTCRを測定する場合、第2スロット28は、“実行中(on the fly)”に変更できる。即ち、各抵抗器のTCRを特定の値に特化できる。付加作用効果として、第2スロット28を、TCR調節プロセスを大きく簡略化できるレーザートリム加工を利用して形成できることが挙げられる。
図1および
図2に示す第1スロット24、26および第2スロット28は、全体として断面形状が矩形である。
図3に示す第3スロット30は、全体として断面形状が三角形である。なお、本発明から逸脱せずに他の単純な、あるいは複雑な幾何学的断面形状のスロットも利用可能である。
【0024】
図5に、TCR補償機能/作用をもつ別なスロット構成を示す。
図5に示す抵抗器100は、2つの導電性ストリップ112、114の間に抵抗ストリップ113を設けて全体を構成する。導電性ストリップは全体として銅シート材から構成し、材厚は例えば約0.008〜0.120インチ(〜0.2から3mmまで)に設定する。銅シート材の材厚は、一般的には、素子の目的とする電力損失、および目的の機械的強度に基づいて、例えば抵抗器が製造時、取り付け時、使用時に十分な強度をもつように選択する。
【0025】
抵抗器100は、主端子116、118および電圧検出端子120、122を備える。動作時、これら主端子116、118には、抵抗器に流れる電流の大部分が流れる。主端子の所定の内部エリアは、例えば、導電性ストリップ112、114の縁部から離しておく。主端子と電圧検出端子との間に、一対の第1スロット124、126を設ける。この実施態様では、主端子の所定の内部エリア内に電圧検出端子を形成する。この構成は、よりコンパクトな電圧検出端子を中心に設けることが必要な用途に好適である。第1スロット124、126に2つの脚部を形成する。第1脚部123は、“A”で示すように、主電流路の全体として直交する方向に所定の長さをもつ。また、第2脚部125は、“B”で示すように、主電流路に対して全体として平行な方向に所定の長さをもつ。なお、第1スロット124および126は、同じ脚部長さAおよびBをもつ。あるいは、第1スロットは異なる脚部長さでもよい。抵抗器100にはまた、深さCの第2スロット128も設ける。これらスロット間の関係については、以下に説明する。
【0026】
一対の第1スロット124、126が導電性ストリップ112、114の内部を区分し、4端子素子を形成する。全体として、一対の第1スロット124、126の大きさおよび位置が、電圧検出端子120、122の寸法を決定する。この実施例では、検出端子は、大体において第1脚部123および第2脚部125の間の接合部に設ける。
【0027】
既に説明したように、第1脚部123の長さはAであり、そして第2脚部125の長さBである。
図6に、第1スロット124、126を形成することによって得られるTCR補償機能/作用を表わすグラフを示す。サンプル1は、第1スロット124、126を形成せずに構成した基準抵抗器である。この構成のTCRは、+60ppm/℃である。サンプル2および3は、第1脚部123を付設した場合(サンプル2)の、そして長さを大きく取った場合(サンプル3)のTCR補償機能/作用を示すものである。グラフに示すように、TCRの負特性傾向がより強くなり、+20ppm/℃で終わる。サンプル4および5は、第2脚部125を付設した場合(サンプル4)の、そして長さを大きく取った場合(サンプル5)のTCR補償機能/作用を示すものである。サンプル4および5において、第1脚部123は一定である。グラフに示すように、TCRの負特性傾向がより強くなり、およそ−35ppm/℃で終わる。
【0028】
製造時、大体のレベルのTCR補償機能/作用が達成されるまで、第1脚部123を最初に挿入できる。第1脚部は、パンチ加工や機械加工を始めとする各種の方法で形成できる。次に、第2脚部125を挿入すると、TCR補償機能/作用を目的のレベルに精密調整できる。第2脚部は、レーザートリム加工などの各種方法によって形成できる。多くの用途では、第1スロット124、126の寸法は同じである。なお、第1スロット124、126はそれぞれ他の脚部構成に対応させることができる。第1スロット124および126を形成した後に、第2スロット128を形成すると、抵抗値を精密調整できる。
図5に示す第1スロット124、126、そして第1および第2の脚部123、125は断面形状が全体として矩形である。
図5に示す第2スロット128は、断面形状が全体として円形である。なお、本発明から逸脱せずに他の簡単な、あるいは複雑な幾何学形状の断面をもつスロットまたは脚部を使用することが可能である。
【0029】
以上の説明から、本発明の範囲から逸脱しなくても各種の変形例が可能であることを容易に理解できるはずである。例えば、第1スロット24、26、124、126の間隔および深さは変更することができる。同様に、他のスロットの位置および各種の端子の形状も変更可能である。当業者ならば、本発明の精神および範囲から逸脱しなくても上記実施態様について各種広範な変形、変更、組み合わせなどが可能であり、このような変形、変更、組み合わせなどは本発明の概念の領域内であることを認識できるはずである。即ち、本発明の真の精神および範囲内に包摂されるこれらすべての変更、変形は特許請求の範囲の対象内である。
【符号の説明】
【0030】
10:抵抗器
12、14:
導電性ストリップ
16、18:主端子
20、22:電圧検出端子
24、26:第1スロット