特許第5778795号(P5778795)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5778795-スケジューリングを行うシステム 図000014
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778795
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】スケジューリングを行うシステム
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/12 20090101AFI20150827BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20150827BHJP
   H04L 12/865 20130101ALI20150827BHJP
   H04L 12/867 20130101ALI20150827BHJP
【FI】
   H04W72/12 130
   H04W16/28 130
   H04L12/865
   H04L12/867
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-2226(P2014-2226)
(22)【出願日】2014年1月9日
(62)【分割の表示】特願2012-545950(P2012-545950)の分割
【原出願日】2010年11月5日
(65)【公開番号】特開2014-112890(P2014-112890A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2014年1月9日
(31)【優先権主張番号】12/653,794
(32)【優先日】2009年12月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593096712
【氏名又は名称】インテル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100112759
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ゴーン,ミシェル シヤオホーン
【審査官】 長谷川 篤男
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0101498(US,A1)
【文献】 特開2009−171535(JP,A)
【文献】 特開2009−260995(JP,A)
【文献】 特開2008−061026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00−99/00
H04L 12/00−12/955
H04J 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチユーザ複数入力複数出力(MIMO)方式のネットワークにおけるパケット配信をスケジューリングするシステムであって、
前記MIMO方式のネットワーク内にあるアクセスポイントを有し、
該アクセスポイントは、下りリンクマルチユーザMIMO送信における複数の通信局(STA)宛のトラフィックをスケジューリングする場合において、
(1)第1のアクセスカテゴリのトラフィックを、前記第1のアクセスカテゴリについて予め定められている第1の最小待ち時間以上蓄積しているN個の通信局を決定することができる場合には、前記N個の通信局を選択し、
(2)N個未満の通信局しか選択できない場合には、更に、第2のアクセスカテゴリのトラフィックを蓄積している1つ以上の未選択の通信局の中で、媒体待ち時間が最大である特定の通信局を決定し、該媒体待ち時間から、前記第2のアクセスカテゴリについて予め定められている第2の最小待ち時間をマイナスした残り時間が、所定の範囲内にある場合に、前記特定の通信局を選択する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示される発明はスケジューリングを行うシステム、スケジューリング方法及びストレージ媒体等に関連する。
【背景技術】
【0002】
複数入力複数出力(MIMO)方式の無線ネットワークは、通常、複数の受信側の通信局に通信可能に結合された複数のアンテナを有するアクセスポイントを含む通信システムである。下りリンクのマルチユーザMIMOネットワークをサポート又は実現するため、アクセスポイント(AP)は、同時に通信する複数の通信局宛の複数のパケットについてスケジューリングを行う必要がある。既存のIEEE802.11-207標準規格は下りリンクのマルチユーザMIMOをサポートしていない。従って現在のアクセスポイントはアクセスポイントの送信キューの中にある第1のパケット又は第1のアグリゲートされたパケット(aggregated packet)を選択している。
【0003】
アクセスポイントは所定の限られた数のアンテナを備えているので、所定の限られた数の通信局に同時に送信する。その所定の数をNとする。アクセスポイントは、単に全ての通信局に送信を行うことでキューの中を空にすることはできないので、アクセスポイント(AP)の簡易なスケジューリング方法は、送信する最初のN個の通信局のパケットを選択することである。
【0004】
現在、連邦通信委員会は実効等方放射電力(effective isotropic radiated power:EIRP)を制限しているので、送信電力が複数の通信局の間で共有される場合、個々の通信局における受信電力は減少する。例えば、1つの下りリンクマルチユーザMIMOによる2つの同時送信がなされる場合、対応する信号対雑音比(SNR)は3dBも減少する。6つの同時送信の場合、受信SNRは約8dBも減少してしまう。同時送信の各々についてデータレートを減らす必要があるので、様々な通信局宛の信号の中で遅延時間差が大きかった場合、パフォーマンスゲインが劣化してしまう。例えば、或る通信局への送信が他の通信局よりも非常に長くかかり、最長時間の送信が最低のデータレートで送信された場合、1アンテナシステムの場合と比較して、複数アンテナを利用する場合のパフォーマンス利得は不利な影響を被ることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007−0183380号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、下りリンクのマルチユーザMIMOにおける通信効率を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態によるシステムは、
マルチユーザ複数入力複数出力(MIMO)方式のネットワークにおけるパケット配信をスケジューリングするシステムであって、
前記MIMO方式のネットワーク内にあるアクセスポイントを有し、該アクセスポイントは、下りリンクマルチユーザMIMO送信における複数の通信局(STA)宛のトラフィックをスケジューリングする、システムである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】複数のアンテナを有するアクセスポイント及び複数の通信局を有するワイヤレスマルチユーザ複数入力複数出力(MIMO)方式のネットワークの一例を示すブロック図。
図2】ワイヤレスマルチユーザ複数入力複数出力(MIMO)方式のネットワークにおけるパケット配信をスケジューリングする方法の一例を示すフローチャート。
図3】ワイヤレスマルチユーザ複数入力複数出力(MIMO)方式のネットワークに属する複数の通信局のキューの一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施形態を詳細に説明する。図中、参照番号における左側の最上位の桁は、その参照番号が最初に登場する図番号を示す。各図における同様な参照番号は類似する又は同一の要素を示すために使用されている。
【0010】
一般に、様々に記述されている図面は必ずしも寸法を描いているわけではなく、本願において特徴的な要素が強調して描かれている。明細書及び図面を通じて同様な要素は同じ参照番号で示されている。
【0011】
以下の詳細な説明において、添付図面には添付図面の一部をなすリファレンス(参照番号又は参照符号)が付されており、その図面には本発明が使用される特定の実施形態が示されている。これらの実施形態は、いわゆる当業者が本発明を実施できる程度に充分に詳細に説明されている。更に、他の実施形態が使用されてもよいこと及び本発明の精神及び範囲から逸脱することなしに、論理的な変形、構造的な変形及び電気的な変形がなされてもよいことが理解される。従って以下の詳細な説明を限定的な意味に解釈してはならず、本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等物によってのみ規定される。
【0012】
以下の説明において、スケジューリング方法を使用することが可能な例示的な環境が先ず説明され、そのスケジューリング方法は下りリンクのマルチユーザ複数入力複数出力(MIMO)方式のネットワークのパフォーマンスを改善する。そして次にそのような例示的な環境の中で使用される例示的な装置及び方法が説明されることに加えて、他の実施形態も説明される。
【0013】
<実施形態の詳細な説明>
図1は、スケジューリング方法を使用することが可能な例示的な通信環境又はシステム100を示し、そのスケジューリング方法は下りリンクのマルチユーザ複数入力複数出力(MIMO)方式のネットワークのパフォーマンスを改善する。通信環境100はトランシーバ104を有するアクセスポイント(AP)102を含むように描かれている。トランシーバ104はプロセッサ106及びメモリ108を一部分として含む。アクセスポイント102は複数のアンテナ110(1)-110(n)を更に有する(整数nは任意のアンテナ数を表す)。図示されているように、アクセスポイント102は4つのアンテナ110(1)、110(2)、110(3)及び110(n)を少なくとも有する。他の実施形態においては異なる数のアンテナが使用されてもよい。
【0014】
プロセッサコア106は任意のタイプのアーキテクチャによる処理ユニットを表し、例えば、プライマリ論理装置、オペレーション装置、コントローラ、メモリシステム等のアクセスポイント102の構成要素を含む。例えば、プロセッサコア106は、メモリ制御、入出力制御、グラフィックス処理等の処理機能を備えた1つ以上の処理装置及びチップセットを組み込んでいてもよい。
【0015】
プロセッサコア106は更にメモリバス(図示せず)を介してメモリ108に結合され、一実施形態においてメモリはアクセスポイント102の「メイン」メモリを表し、システムコード及びデータを保存及び/又は実行するために使用される。メモリ108は、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)又はその他の任意のタイプのメモリ(リフレッシュを要しないメモリを含む)により実現されてもよい。
【0016】
メモリ108は他のストレージ装置を含んでいてもよい。そのような他のメモリ装置は取り外し可能なメディアドライブ(例えば、CD/DVDドライブ)、カードリーダ、フラッシュメモリ等を含む。メモリ108は様々な方法でプロセッサコア106に接続されてもよく、例えば、IDE(Integrated Drive Electronics)、ATA(Advanced Technology Attachment)、ASTA(Serial ATA)、USB(Universal Serial Bus)等により接続されてもよい。メモリ108は(不図示の)様々なアプリケーションモジュールを格納し、そのアプリケーションモジュールは処理コア106及びメモリ108を介して実行され、アクセスポイント102に様々な機能を提供する。
【0017】
図1は通信環境100が複数の通信局(STA)112を含むように描かれている。図示されているように通信環境100は少なくとも4つの独立した通信局112(1)、112(2)、112(3)及び112(n)を含む。通信局112の各々はアンテナ114を有する。代替実施形態において通信局112の各々は複数のアンテナ114を有していてもよい。更に、アクセスポイントに備わっているアンテナ数に合致する複数のアンテナを有する単独の通信局(STA)112が、通信環境100に含まれてよいことも、本発明は想定している。
【0018】
アクセスポイント102のアンテナ110の各々は特定の通信局112のアンテナ114に固有の信号を送信してもよいし、或いはアクセスポイントは特定の通信局112宛のデータパケットを多重化してもよい。本願における多重化(multiplexing)は、1つの信号を複数の信号に分割することと、1つの信号に合成することとを包含する概念である。データパケットが複数の信号に多重化されると、アクセスポイント102はその複数の信号を送信する。
【0019】
下りリンクのマルチユーザMIMO送信を効率的にスケジューリングするために、アクセスポイント(AP)102は、非常に相違する媒体待ち時間(medium duration time)を有する信号のスケジューリングを避けるべきである。目的は、以下の第1及び第2の制約条件の下で、送信に最長の時間を要する最初のN個の送信のスケジューリングを行うことである。第1の制約条件は、有効なデータ送信の最長時間と最短時間との間の差分が所定のパーセンテージ未満(所定の割合未満)であることである。第2の制約条件は、残りの通信局に対するアクセスカテゴリ(AC)毎の全ての待ち行列時間(queuing delay)が、アクセスカテゴリ毎の所定の遅延時間より短いことである。
【0020】
IEEE802.11eのEDCA(Enhanced Distributed Channel Access)はIEEE802.11のDCF(Distributed Coordination Function)のサービス品質(QoS)を拡張したものである。QoSをサポートするための主な改善点は、EDCAが個々の優先度を用いてパケットを差別化し、それらを、アクセスポイント又は通信局における個々のキューにバッファされる特定のアクセスカテゴリ(AC)に対応づけることである。自身のEDCAパラメータを有するアクセスポイント/通信局における各々のアクセスカテゴリは、互いにチャネル独立性(channel independently of others)を有すると考えられる。アクセスポイントにおけるアクセスカテゴリ各々には、アクセスポイントのパラメータに基づく優先度が指定されている。
【0021】
特定のアクセスカテゴリ(AC)が内部のEDCAの競合に勝利した場合、アクセスポイント(AP)は、そのアクセスポイント(AC)に予め定められている最小遅延時間を超える待ち時間の間バッファされたトラフィックを有するN個の通信局(STA)を選択する:
【0022】
【数1】
ただし、以下の条件を満たす必要がある。
【0023】
【数2】
ここで、jはユーザを指定し、delay[k][AC]はk番目のユーザのAC番目のキューの中にある最初のパケットの遅延時間(待ち時間)を表し、Delay_max[AC]はそのアクセスカテゴリに対する最大遅延時間(最長待ち時間)を表し、Delay_min[AC]はそのアクセスカテゴリ(AC)に対する最小遅延時間(最短待ち時間)を表す。Delay[k][AC]がDelay_max[AC]を超える場合、アクセスポイント(AP)はその最大遅延時間を超えたバッファされたパケットを破棄する。
【0024】
Nより少ない数の通信局(STA)が送信に選択された場合、アクセスポイントは、そのアクセスカテゴリ(AC)に対してバッファされているトラフィックが、他の通信局(STA)の中で最大の媒体待ち時間(medium duration)をもたらす未選択の通信局(STA)を選択する。
【0025】
【数3】
ただし、以下の数式(4)による制約がある。
【0026】
【数4】
ここで、θは下りリンクマルチユーザMIMO送信に選択されていない通信局(STA)の集合を表し、Ωは下りリンクマルチユーザMIMO送信に選択された通信局(STA)の集合を表し、aggregate_pkt_len(k)はk番目のユーザの結合パケット又はアグリゲートパケット(aggregated packet)の長さを表し、data_rate(k)は下りリンクマルチユーザMIMO送信におけるk番目のユーザのデータレートを表す。Diff_dulationは所定のパーセンテージ(割合)を表す。
【0027】
アクセスポイント(AP)(例えば、アクセスポイント102)は、アグリゲート媒体アクセス制御(MAC)プロトコルデータユニット(A-MPDU)のアグリゲーション限界(すなわち、64MPDUs)に至るまで、ユーザのアクセスカテゴリ(AC)のキューの中のパケットを結合する。ユーザのバッファされたトラフィックが全体として数式(4)で規定されている基準を超えており、かつ下りリンクマルチユーザMIMO送信にN個より少ない数の通信局(STA)が選択されていた場合、アクセスポイント(AP)は、ある特定のユーザについてバッファされているトラフィックの部分のみを結合して送信してもよい。
【0028】
図2はマルチユーザMIMOネットワークにおけるパケット配信をスケジューリングする手順を示し、そのマルチユーザMIMOネットワークは図1に示されているアーキテクチャを利用して実現されてもよいが、それは必須ではない。マルチユーザMIMOネットワークにおけるパケット配信をスケジューリングする(パケット配信の予定を立てる又は計画する)ためのプロセスは、論理的なフローチャートによるブロックのまとまりとして図示され、ハードウェア、ソフトウェア又はそれらの組み合わせにより実現可能な動作シーケンスを表現している。ソフトウェアの場合、ブロックはコンピュータが読み取ることの可能な命令を表し、その命令は1つ以上のプロセッサにより実行される場合に本願で説明される方法を実行する。概して、コンピュータで読み取ることの可能な命令は、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含み、これらは特定の機能を実行する又は特定のアブストラクトデータタイプを実行する。手順(ステップ)が説明される順番は、限定事項として解釈されてはならず、また、説明されている任意の数のブロックが任意の他の順序で及び/又は並列的にプロセスを実行するように組み合わせられてもよい。説明の便宜上、本プロセスは図1のアーキテクチャの観点から説明される。
【0029】
図2はマルチユーザMIMOネットワークにおけるパケット配信をスケジューリングする一実施形態による方法をフローチャート200で示す。フローチャート200の方法を説明する際に、図1のアクセスポイント102が参照される。しかしながら、フローチャート200の方法は非常に広範囲に及ぶ装置に広く適用可能であり、図1の一実施形態のみに限定されないことが理解される。
【0030】
ステップ202において、あるアクセスカテゴリ(AC)が競合に勝利したとする。あるアクセスカテゴリに関連付けられているパラメータが最高の優先度を有することをアクセスポイント(AP)が判断した場合に、そのアクセスカテゴリが競合に勝利する。通信局の中のアクセスカテゴリ(AC)の各々は自信のEDCA(Enhanced Distribution Channel Access)パラメータを有する。
【0031】
ステップ204において、アクセスポイントは、delay[AC]を上回るdelay[i][AC]を有するN個のSTAを選択する。通信局の数Nはアクセスポイントが使用可能なアンテナ数に基づいて決定され、delay[i][AC]は特定のACのACキューにおける現在の待ち時間を表す。Delay[AC]はアクセスカテゴリ(AC)のタイプ/クラスに関連付けられている標準的な最小遅延時間(最小待ち時間)を表す。何れのACキューの現在の経過時間が特定のタイプ/クラスのアクセスカテゴリ(AC)に関連付けられている標準的な最小時間を超えているかを突き止めるために、アクセスポイント(AC)はACキューを調べる。
【0032】
ステップ206において、アクセスポイント(AP)は、下りリンクマルチユーザMIMO送信について選択された通信局(STA)の集合がN個のSTAを含んでいるか否かを判定する。N個の通信局が存在している、とアクセスポイント(AP)が判断した場合、アクセスポイント(AP)は、ステップ208において、その通信局の集合に属する通信局に下りリンクマルチユーザMIMO送信信号を送信する。
【0033】
通信局の集合がN個の通信局を含んでいなかった、とアクセスポイントが判断した場合、アクセスポイント(AP)はステップ210において、トラフィックを有する何らかの残りの通信局の存否を判断する。如何なる通信局もトラフィック送信を待機していない、とアクセスポイント(AP)が判断した場合、アクセスポイント(AP)はステップ208においてその通信局の集合に属する通信局に下りリンクマルチユーザMIMO送信信号を送信する。
【0034】
ステップ212において、アクセスポイント(AP)がトラフィックを有する通信局が残っている、と判断した場合、アクセスポイント(AP)は、関連するアクセスカテゴリについてバッファされたトラフィックが、残りの未選択通信局の最大媒体待ち時間をもたらす通信局を選択する。
【0035】
ステップ214において、選択された通信局の媒体待ち時間からそのアクセスカテゴリに関連する最小持続時間をマイナスしたものが所定のパーセンテージ以下であるか否かを、アクセスポイントが判定する。そうであった場合、ステップ216において、選択された通信局(STA)が通信局の集合に加えられる。以後、ステップ202-216は反復される。ステップ214において、選択された通信局の媒体待ち時間からそのアクセスカテゴリに関連する最小持続時間をマイナスしたものが所定のパーセンテージ以下でなかった場合、ステップ206においてアクセスポイント(AP)は説明済みの処理をやり直す。
【0036】
図3は様々な通信局についての複数のACキューが存在するアクセスポイントの一例300を示す。目下の例のアクセスポイントは1つの下りリンクマルチユーザMIMO送信において3つの同時送信を実行又はサポートすることができる。図3において、媒体待ち時間はキューの長さとして示されている。
【0037】
図3に示されている4つの通信局(STA1-STA4)のうち、STA2はDelay[AC]を超える遅延時間を経験する。アクセスポイントAPは先ずSTA2についてスケジューリングを行う(無線リソースの割り当て計画を立てる)。次に、アクセスポイント(AP)はSTA1及びSTA4を選択する。なぜなら、媒体待ち時間からアクセスカテゴリに関連する最上持続時間をマイナス(減算)したものが所定のパーセンテージ以下であること、という判断基準をSTA1及びSTA4の各々が満たし、かつそれら各々が最長の媒体待ち時間を有するからである(上記の数式(4)の条件参照)。スケジューリングアルゴリズムの結果として、APは、現在の下りリンクマルチユーザMIMO送信に対してSTA1、STA2及びSTA4を選択することになる。
【0038】
以上例示的な方法の具体的な詳細が図面及び他のフローチャートの観点から説明されてきたが、図中の所定の処理は説明された順序で実行されなければならないわけではなく、変更されてもよいし、及び/又は状況に応じて前提的に省略されてもよいことが、理解されなければならない。本願において説明されているように、モジュール及びエンジンはソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア又はそれらの任意の組み合わせにより実現されてもよい。更に、説明された処理及び方法は、メモリに保存された命令に基づいて、コンピュータ、プロセッサ又はその他のコンピュータ装置により実現されてもよい。そのメモリは1つ以上のコンピュータ読み取り可能なストレージ媒体(CRSM)を含む。
【0039】
CRSMは、保存されている命令を実行するコンピュータ装置がアクセスできる利用可能な任意の物理的な媒体であってよい。CRSMは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、電気的に消去可能なリードオンリメモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ又はその他のソリッドステートメモリ、コンパクトディスクリオードオンリメモリ(CD-ROM)、ディジタル多用途ディスク(DVD)又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージ装置、又はその他の任意の媒体(所望の情報を保存するために使用可能でありかつコンピュータ装置がアクセスできる媒体)等を含むがこれらに限定されない。
【0040】
以下、実施の形態による手段を例示的に列挙する。
【0041】
[付記1]
マルチユーザ複数入力複数出力(MIMO)方式のネットワークにおけるパケット配信をスケジューリングするシステムであって、
前記MIMO方式のネットワーク内にあるアクセスポイントを有し、該アクセスポイントは、下りリンクマルチユーザMIMO送信における複数の通信局(STA)宛のトラフィックをスケジューリングする、システム。
【0042】
[付記2]
前記トラフィックをスケジューリングする際に、EDCA(Enhanced Distributed Channel Access)の優先制御において特定のアクセスカテゴリ(AC)が勝利したことを突き止める、付記1記載のシステム。
【0043】
[付記3]
前記トラフィックをスケジューリングする際に、前記アクセスポイントが、該特定のACについて予め定められている最小待ち時間を超える待ち時間の間トラフィックを蓄積しているN個の通信局を選択する、付記2記載のシステム。
【0044】
[付記4]
前記Nは前記アクセスポイント(AP)のアンテナ数に等しい、付記3記載のシステム。
【0045】
[付記5]
前記アクセスポイント(AP)は、
【0046】
【数5】
という数式に従って、
【0047】
【数6】
という条件の下でN個の通信局を選択し、
jはユーザを指定し、delay[k][AC]はk番目のユーザのAC番目のキューの中にある最初のパケットの遅延時間を表し、Delay_max[AC]は該特定のアクセスカテゴリに対する最大遅延時間を表し、Delay_min[AC]は該特定のアクセスカテゴリ(AC)に対する最小遅延時間を表す、付記3記載のシステム。
【0048】
[付記6]
Delay[k][AC]がDelay_max[AC]を超える場合、前記アクセスポイント(AP)は前記最大遅延時間を超えて蓄積されているパケットを破棄する、付記5記載のシステム。
【0049】
[付記7]
Nより少ない数の通信局(STA)が送信に選択される場合、前記APは、特定の未選択の通信局において或るアクセスカテゴリ(AC)について蓄積されたトラフィックが、複数の未選択の通信局の中で最大の媒体待ち時間を有する特定の未選択の通信局(STA)を選択する、付記3記載のシステム。
【0050】
[付記8]
前記最大の媒体待ち時間を、
【0051】
【数7】
に従って、
【0052】
【数8】
という条件の下で判定し、
θは下りリンクマルチユーザMIMO送信に選択されていない通信局(STA)の集合を表し、Ωは下りリンクマルチユーザMIMO送信に選択された通信局(STA)の集合を表し、aggregate_pkt_len(k)はk番目のユーザの結合パケットの長さを表し、data_rate(k)は下りリンクマルチユーザMIMO送信におけるk番目のユーザのデータレートを表し、Diff_dulationは所定のパーセンテージを表す、付記7記載のシステム。
【0053】
[付記9]
前記アクセスポイント(AP)は、結合された媒体アクセス制御(MAC)プロトコルデータユニット(A-MPDU)の結合限界に至るまで、ユーザのアクセスカテゴリ(AC)に属するパケットを結合する、付記2記載のシステム。
【0054】
[付記10]
マルチユーザ複数入力複数出力(MIMO)方式のネットワークにおけるパケット配信をスケジューリングする、コンピュータで実行されるスケジューリング方法であって、
前記MIMO方式のネットワーク内にあるアクセスポイントが、下りリンクマルチユーザMIMO送信における複数の通信局(STA)宛のトラフィックをスケジューリングする、スケジューリング方法。
【0055】
[付記11]
前記トラフィックをスケジューリングする際に、EDCA(Enhanced Distributed Channel Access)の優先制御において特定のアクセスカテゴリ(AC)が勝利したことを突き止める、付記10記載のスケジューリング方法。
【0056】
[付記12]
前記トラフィックをスケジューリングする際に、前記アクセスポイントが、該特定のACについて予め定められている最小待ち時間を超える待ち時間の間トラフィックを蓄積しているN個の通信局を選択する、付記11記載のスケジューリング方法。
【0057】
[付記13]
前記Nは前記アクセスポイント(AP)のアンテナ数に等しい、付記12記載のスケジューリング方法。
【0058】
[付記14]
前記アクセスポイント(AP)は、
【0059】
【数9】
という数式に従って、
【0060】
【数10】
という条件の下でN個の通信局を選択し、
jはユーザを指定し、delay[k][AC]はk番目のユーザのAC番目のキューの中にある最初のパケットの遅延時間を表し、Delay_max[AC]は該特定のアクセスカテゴリに対する最大遅延時間を表し、Delay_min[AC]は該特定のアクセスカテゴリ(AC)に対する最小遅延時間を表す、付記12記載のスケジューリング方法。
【0061】
[付記15]
Delay[k][AC]がDelay_max[AC]を超える場合、前記アクセスポイント(AP)は前記最大遅延時間を超えて蓄積されているパケットを破棄する、付記12記載のスケジューリング方法。
【0062】
[付記16]
Nより少ない数の通信局(STA)が送信に選択される場合、前記APは、特定の未選択の通信局において或るアクセスカテゴリ(AC)について蓄積されたトラフィックが、複数の未選択の通信局の中で最大の媒体待ち時間を有する特定の未選択の通信局(STA)を選択する、付記12記載のスケジューリング方法。
【0063】
[付記17]
前記最大の媒体待ち時間を、
【0064】
【数11】
に従って、
【0065】
【数12】
という条件の下で判定し、
θは下りリンクマルチユーザMIMO送信に選択されていない通信局(STA)の集合を表し、Ωは下りリンクマルチユーザMIMO送信に選択された通信局(STA)の集合を表し、aggregate_pkt_len(k)はk番目のユーザの結合パケットの長さを表し、data_rate(k)は下りリンクマルチユーザMIMO送信におけるk番目のユーザのデータレートを表し、Diff_dulationは所定のパーセンテージを表す、付記16記載のスケジューリング方法。
【0066】
[付記18]
前記アクセスポイント(AP)は、結合された媒体アクセス制御(MAC)プロトコルデータユニット(A-MPDU)の結合限界に至るまで、ユーザのアクセスカテゴリ(AC)に属するパケットを結合する、付記11記載のスケジューリング方法。
【0067】
[付記19]
スケジューリング方法をプロセッサに実行させる命令を格納する1つ以上のコンピュータ読み取り可能なストレージ媒体であって、前記スケジューリング方法は、
ネットワークにおけるパケット配信をスケジューリングする、コンピュータで実行されるスケジューリング方法であって、
アクセスポイントが、下りリンクマルチユーザ複数入力複数出力(MIMO)方式のネットワークにおける複数の通信局(STA)宛のトラフィックをスケジューリングする、ストレージ媒体。
【0068】
[付記20]
前記トラフィックをスケジューリングする際に、EDCA(Enhanced Distributed Channel Access)の優先制御において特定のアクセスカテゴリ(AC)が勝利したことを突き止める、付記19記載のストレージ媒体。
図1
図2
図3