(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本発明の一態様を得るに至った経緯]
以下、本発明の態様を具体的に説明するに先立ち、本発明の態様を得るに至った経緯について説明する。
まず、発明者らは、光取り出し効率を高めるため、有機発光素子に共振器(cavity)構造を採用することとした。具体的には、基板上に反射陽極、透明導電層、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層、電子注入層、透明陰極が積層された有機発光素子において、光が干渉効果により強められるように反射陽極と有機発光層との間に配置された機能層(即ち、透明導電層、正孔注入層および正孔輸送層)の厚みを調整することとした。
【0009】
図1は、有機発光層と反射陽極との間に配置された機能層の厚みL2と光取り出し効率との関係を示す図である。
図1に示すように、機能層の厚みL2を変化させると光取り出し効率が変化する。通常、共振器構造では、光取り出し効率が極大値を示すように機能層の厚みL2が調整される。本明細書では、説明の便宜上、それらの共振器構造を、機能層の厚みの小さい順に、1st cavity、2nd cavityと呼ぶこととする。なお、発明者らの研究により、少なくとも青色光では、光取り出し効率が極大値のときに色度が目標色度に近いとは限らないことが判明している。色度が目標色度から遠ければ、その分だけカラーフィルタ(CF)により色度補正をする必要があり、その結果、もともとの光取り出し効率が極大値であっても光取り出し効率が大幅に低下してしまい極大値ではなくなる場合がある。この傾向は、特に、2nd cavityで顕著に見られる。そこで、機能層の厚みを2nd cavityに合わせるのではなく、敢えて2nd cavityからずらして1st cavityと2nd cavityとの間に合わせることがある。このときの共振器構造を便宜上、1.5 cavityと呼ぶこととする。
図1の結果から、2nd cavityよりも1st cavityを採用したほうが光取り出し効率を高められることが分かる。また、CF有りの場合には、上記の理由により、2nd cavityよりも1.5 cavityを採用したほうが光取り出し効率を高めることができる。
【0010】
このように共振器構造を採用することにより、ある程度は光取り出し効率を高められるものの、青色光は緑色光や赤色光に比べて光取り出し効率が低く、有機発光素子を採用した有機表示装置を製品化するには未だ十分であるとは言えない。そのため、光取り出し効率をさらに高める必要がある。
有機発光素子の共振器構造としては、陽極と陰極の一方を反射性とし他方を透過性とする片側反射のタイプと、陽極と陰極の一方を反射性とし他方を半反射性(ハーフミラー)とする両側反射のタイプとがある。発明者らが検討している片側反射のタイプでは、光取り出し効率に主に寄与するのは、反射陽極と有機発光層との間に配置された機能層の厚みであることが知られている。そのため、従来、機能層の厚みは電気的な観点だけでなく光学的な観点からも検討されているものの、機能層以外の層の厚みは、本来の機能を発揮する観点のみから検討されていることが多い。具体的には、透明電極を覆うように配置される封止層の厚みは、封止性を確保する観点から数μmに設定され、透明陰極の厚みは導電性を確保する観点から数100nmに設定されている。
【0011】
上記の通り、従来の技術常識としては、透明陰極の厚みは導電性を確保するため比較的厚膜である数100nmにすればよいという程度の認識に留まっていた。しかしながら、発明者らが、上記技術常識にとらわれずに透明陰極の厚みについても光学的な観点から検討してみたところ、透明陰極の厚みと光取り出し効率との間に関連性があることが判明した。
図2は、透明陰極の厚みと光取り出し効率との関係を示す図である。ここでは、透明陰極としてITO(Indium Tin Oxide)が採用され、出射光のxy色度のy値が0.075になるようにカラーフィルタで色度補正をかけた場合での光取り出し効率(cd/A)がプロットされている。
図2によれば、透明陰極の厚みを変化させると、光取り出し効率が周期的に変化することが分かる。これは、透明陰極内での多重反射により光の干渉効果が現れていることを示唆している。また、透明陰極の厚みを0nmより大きく70nm以下の範囲にすると、従来の100nm程度の場合に比較して、光取り出し効率が高くなることが分かる。
【0012】
また、
図2では、透明陰極の膜厚を変化させているが、
図3では、有機発光層と反射陽極との間に配置された透明導電層の厚みを変化させている。
図3によれば、透明導電層の厚みが16nm(正孔注入層の厚みを5nm、正孔輸送層の厚みを10nmとしたので、機能層の厚みとしては31nmに相当)のとき、透明陰極の厚みが35nmの場合は上記の従来技術である100nmの場合と比較して、約1.6倍の光取り出し効率の向上が得られることが分かる。さらに、
図3によれば、35nmと100nmとで透明陰極の厚みを変えても、機能層の厚みの変化に対する光取り出し効率の変化の挙動(例えば、光取り出し効率のピークが周期的に現れること、ピークの位置、1st cavityの光取出し効率が2nd cavityの光取り出し効率よりも高いことなど)がほとんど変わらないことが分かる。これは、機能層の厚みと透明陰極の厚みとを別個独立して設計することができ、双方を最適に調整することで更なる光取り出し効率の向上を得られることを示唆している。
【0013】
このような知見は、従来は見落とされていた透明陰極の厚みも含めて発明者らが光学的な観点から検討して初めて得られたものである。本発明の一態様である有機発光素子の構成は、このような新たな知見に基づいて得られたものである。
[本発明の一態様の概要]
本発明の一態様である有機発光素子は、入射された光を反射する第1電極と、前記第1電極に対向して配置され、入射された光を透過する第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、青色光を出射する有機発光層と、前記第1電極と前記有機発光層との間に配置され、1または2以上の層からなる第1機能層と、前記有機発光層と前記第2電極との間に配置される1または2以上の層からなる第2機能層と、前記第2電極を覆うように配置される1または2以上の層からなる被覆層と、を備え、前記有機発光層から出射された前記青色光の一部が、前記第1機能層を通じて前記第1電極に入射され、前記第1電極により反射された後、前記第1機能層、前記有機発光層、前記第2機能層、前記第2電極および前記被覆層を通じて外部に出射される第1光路と、前記有機発光層から出射された前記青色光の残りの一部が、前記第1電極側に進行することなく、前記第2機能層を通じて前記第2電極に進行し、前記第2電極および前記被覆層を通じて外部に出射される第2光路と、が形成され、前記第1機能層は、光学的な厚みが0nmよりも大きく316nm以下であり、前記第2機能層のうち、前記第2電極に隣接する層は、前記第2電極との屈折率差が0.1以上0.7以下であり、前記第2電極は、厚みが0nmよりも大きく70nm以下であり、かつ、屈折率が2.0以上2.4以下であり、かつ、光学的な厚みが0nmよりも大きく168nm以下であり、前記被覆層のうち、前記第2電極に隣接する層は、前記第2電極との屈折率差が0.1以上0.7以下である。
【0014】
上記構成によれば、第1機能層の厚みが適切に調整されているので、有機発光層から出射されて直接に第2電極に向かう光と、有機発光層から出射されて第1電極で反射されて第2電極に向かう光との干渉効果により青色光を強め合わせることができる。その上、第2電極とこれに隣接する層との屈折率差および第2電極の厚みが適切に調整されているので、第2電極内での多重反射により青色光をさらに強め合わせることができる。これらの相乗効果により、青色光の光取り出し効率を大幅に高めることができる。
【0015】
また、前記第1機能層の厚みX3と、前記第2電極の厚みY3とが、以下[数1]の関係式で囲まれた範囲内の値を取ることとしてもよい。
[数1]
X3=Rxcosθcosφ-Rysinθsinφ+X0
Y3=Rxcosθsinφ+Rysinθcosφ+Y0
-φ≦θ≦π-φ
X0=31、Y0=35、Rx=5.2、Ry=27、φ=0.15(rad)
また、前記第1機能層の厚みX3と、前記第2電極の厚みY3とが、以下[数2]の関係式で囲まれた範囲内の値を取ることとしてもよい。
【0016】
[数2]
X3=Rxcosθcosφ-Rysinθsinφ+X0
Y3=Rxcosθsinφ+Rysinθcosφ+Y0
-φ≦θ≦π-φ
X0=130、Y0=35、Rx=8、Ry=15、φ=0.20(rad)
また、前記第2機能層のうち、前記第2電極に隣接する層は、屈折率が1.7以上2.1以下であり、前記被覆層のうち、前記第2電極に隣接する層は、屈折率が1.7以上2.1以下であることとしてもよい。
【0017】
また、前記第2電極は、厚みが30nm以上60nm以下であり、光学的な厚みが60nm以上144nm以下であることとしてもよい。
また、前記第2電極は、厚みが30nm以上70nm以下であり、光学的な厚みが60nm以上168nm以下であることとしてもよい。
また、前記第2機能層は、前記有機発光層に電子を輸送する電子輸送層を有し、前記第2電極は、陰極であり、前記被覆層は、前記陰極上に形成される第1封止層と、前記第1封止層上に形成される第2封止層を有することとしてもよい。
【0018】
また、前記電子輸送層は、厚みが31.5nm以上38.5nm以下であり、かつ、屈折率が1.7以上2.1以下であり、前記陰極は、厚みが31.5nm以上38.5nm以下であり、かつ、屈折率が2.0以上2.4以下であり、かつ、光学的な厚みが63nm以上92.4nm以下であり、前記第1封止層は、膜厚が558nm以上682nm以下であり、かつ、屈折率が1.7以上2.1以下であり、前記第2封止層は、厚みが5400nm以上6600nm以下であり、かつ、屈折率が1.3以上1.7以下であることとしてもよい。
【0019】
また、前記第1電極は、陽極であり、前記第1機能層は、前記陽極上に形成される透明導電層と、前記透明導電層上に形成される正孔注入層と、前記正孔注入層上に形成される正孔輸送層とを有することとしてもよい。
また、前記透明導電層は、厚みが14.4nm以上17.6nm以下であり、かつ、屈折率が1.9以上2.3以下であり、前記正孔注入層は、厚みが4.5nm以上5.5nm以下であり、かつ、屈折率が1.8以上2.2以下であり、前記正孔輸送層は、厚みが9nm以上11nm以下であり、かつ、屈折率が1.5以上1.9以下であることとしてもよい。
【0020】
また、前記透明導電層は、厚みが63nm以上77nm以下であり、かつ、屈折率が1.9以上2.3以下であり、前記正孔注入層は、厚みが36nm以上44nm以下であり、かつ、屈折率が1.8以上2.2以下であり、前記正孔輸送層は、厚みが18nm以上22nm以下であり、かつ、屈折率が1.5以上1.9以下であることとしてもよい。
また、前記第1機能層の光学的な厚みが49.0nm以上73.5nm以下であり、前記第2電極の光学的な厚みが63nm以上92.4nm以下であることとしてもよい。
【0021】
また、前記第1機能層の光学的な厚みが212nm以上316nm以下であり、前記第2電極の光学的な厚みが63nm以上92.4nm以下であることとしてもよい。
本発明の一態様である有機発光装置は、上記の有機発光素子を有する。
本発明の一態様である有機表示パネルは、上記の有機発光素子を有する。
本発明の一態様である有機表示装置は、上記の有機発光素子を有する。
【0022】
本発明の一態様である有機発光素子の製造方法は、入射された光を反射する第1電極を準備する第1工程と、前記第1電極上に、1または2以上の層からなる第1機能層を設ける第2工程と、前記第1機能層上に、青色光を出射する有機発光層を設ける第3工程と、前記有機発光層上に、前記第1機能層とは異なる1または2以上の層からなる第2機能層を設ける第4工程と、前記第2機能層上に、入射された光を透過する第2電極を設ける第5工程と、前記第2電極を覆うように、1または2以上の層からなる被覆層を設ける第6工程と、を含み、前記第2工程では、前記第1機能層が、光学的な厚みが0nmよりも大きく316nm以下となるように形成され、前記第4工程では、前記第2機能層のうち、前記第2電極に隣接する層が、前記第2電極との屈折率差が0.1以上0.7以下である材料を用いて形成され、前記第5工程では、前記第2電極が、厚みが0nmよりも大きく70nm以下であり、かつ、屈折率が2.0以上2.4以下であり、かつ、光学的な厚みが0nmよりも大きく168nm以下となるように形成され、前記第6工程では、前記被覆層のうち、前記第2電極に隣接する層が、前記第2電極との屈折率差が0.1以上0.7以下である材料を用いて形成される。
【0023】
また、前記第5工程では、前記第2電極の厚みY3が、前記第2工程において形成した第1機能層の厚みX3に対し、以下[数1]の関係式で囲まれた範囲内の値を取るように形成されることとしてもよい。
[数1]
X3=Rxcosθcosφ-Rysinθsinφ+X0
Y3=Rxcosθsinφ+Rysinθcosφ+Y0
-φ≦θ≦π-φ
X0=31、Y0=35、Rx=5.2、Ry=27、φ=0.15(rad)
また、前記第5工程では、前記第2電極の厚みY3が、前記第2工程において形成した第1機能層の厚みX3に対し、以下[数2]の関係式で囲まれた範囲内の値を取るように形成されることとしてもよい。
【0024】
[数2]
X3=Rxcosθcosφ-Rysinθsinφ+X0
Y3=Rxcosθsinφ+Rysinθcosφ+Y0
-φ≦θ≦π-φ
X0=130、Y0=35、Rx=8、Ry=15、φ=0.20(rad)
また、前記第4工程では、前記第2機能層のうち、前記第2電極に隣接する層が、屈折率が1.7以上2.1以下である材料を用いて形成され、前記第6工程では、前記被覆層のうち、前記第2電極に隣接する層が、屈折率が1.7以上2.1以下である材料を用いて形成されることとしてもよい。
【0025】
また、前記第1工程では、前記第1電極として陽極が形成され、前記第2工程は、前記第1機能層として、前記陽極上に透明導電層を形成し、前記透明導電層上に正孔注入層を形成し、前記正孔注入層上に正孔輸送層を形成する工程であって、前記透明導電層は、屈折率が1.9以上2.3以下である材料を用いて、厚みが14.4nm以上17.6nm以下に形成され、前記正孔注入層は、屈折率が1.8以上2.2以下である材料を用いて、厚みが4.5nm以上5.5nm以下に形成され、前記正孔輸送層は、屈折率が1.5以上1.9以下である材料を用いて、厚みが9nm以上11nm以下に形成され、前記第3工程では、前記有機発光層は、屈折率が1.6以上2.0以上である材料を用いて、厚みが36nm以上44nm以下に形成され、前記第4工程では、前記第2機能層として、前記有機発光層に電子を輸送する電子輸送層が、屈折率が1.7以上2.1以下である材料を用いて、厚みが31.5nm以上38.5nm以下に形成され、前記第5工程では、前記第2電極として、前記電子輸送層上に陰極が、屈折率が2.0以上2.4以下である材料を用いて、厚みが31.5nm以上38.5nm以下であって、かつ、光学的な厚みが63nm以上92.4nm以下となるように形成され、前記第6工程は、前記被覆層として、前記陰極上に第1封止層を形成し、前記第1封止層上に第2封止層を形成する工程であって、前記第1封止層は、屈折率が1.7以上2.1以下である材料を用いて、厚みが558nm以上682以下に形成され、前記第2封止層は、屈折率が1.3以上1.7以下である材料を用いて、厚みが5400nm以上6600nm以下に形成されることとしてもよい。
【0026】
また、前記第1工程では、前記第1電極として陽極が形成され、前記第2工程は、前記第1機能層として、前記陽極上に透明導電層を形成し、前記透明導電層上に正孔注入層を形成し、前記正孔注入層上に正孔輸送層を形成する工程であって、前記透明導電層は、屈折率が1.9以上2.3以下である材料を用いて、厚みが63nm以上77nm以下に形成され、前記正孔注入層は、屈折率が1.8以上2.2以下である材料を用いて、厚みが36nm以上44nm以下に形成され、前記正孔輸送層は、屈折率が1.5nm以上1.9以下である材料を用いて、厚みが18nm以上22nm以下に形成され、前記第3工程では、前記有機発光層は、屈折率が1.6nm以上2.0以上である材料を用いて、厚みが36nm以上44nm以下に形成され、前記第4工程では、前記第2機能層として、前記有機発光層に電子を輸送する電子輸送層が、屈折率が1.7以上2.1以下である材料を用いて、厚みが31.5nm以上38.5nm以下に形成され、前記第5工程では、前記第2電極として、前記電子輸送層上に陰極が、屈折率が2.0以上2.4以下である材料を用いて、厚みが31.5nm以上38.5nm以下であって、かつ、光学的な厚みが63nm以上92.4nm以下となるように形成され、前記第6工程は、前記被覆層として、前記陰極上に第1封止層を形成し、前記第1封止層上に第2封止層を形成する工程であって、前記第1封止層は、屈折率が1.7以上2.1以下である材料を用いて、厚みが558nm以上682以下に形成され、前記第2封止層は、屈折率が1.3以上1.7以下である材料を用いて、厚みが5400nm以上6600nm以下に形成されることとしてもよい。
[有機発光素子の構造]
図4は、本発明の実施形態に係る有機発光素子の構造を模式的に示す図である。
【0027】
有機発光素子は、基板1、反射陽極2、透明導電層3、正孔注入層4、正孔輸送層5、有機発光層6、電子輸送層7、透明陰極8、薄膜封止層9、樹脂封止層10および基板11を備える。以下、透明導電層3、正孔注入層4および正孔輸送層5を「第1機能層」と称し、電子輸送層7を「第2機能層」と称し、薄膜封止層9および樹脂封止層10を「被覆層」と称することがある。
【0028】
有機発光素子では、反射陽極2の存在により共振器構造が実現されている。
図5に示すように、有機発光素子には、有機発光層6から出射された青色光の一部が、第1機能層を通じて反射陽極に入射され、反射陽極により反射された後、第1機能層、有機発光層6、第2機能層、透明陰極8および被覆層を通じて外部に出射される第1光路C1と、有機発光層6から出射された青色光の残りの一部が、反射陽極2側に進行することなく、第2機能層を通じて透明陰極8に進行し、透明陰極8および被覆層を通じて外部に出射される第2光路C2とが形成される。第1光路を通る光と第2光路を通る光とが干渉効果で強め合うように第1機能層の膜厚L2を調整することで、有機発光素子の光取り出し効率を高めることができる。
【0029】
また、有機発光素子には、透明陰極8をそのまま通過して外部に出射される第3光路C3のほかに、透明陰極8内で電子輸送層7および薄膜封止層9との界面で多重反射した後、外部に出射される第4光路C4が形成される。第4光路を通る光が干渉効果で強め合うように透明陰極8の膜厚L1を調整することで、有機発光素子の光取り出し効率をさらに高めることができる。
【0030】
以下、各層の光学定数および厚みの好ましい範囲について、シミュレーション結果を参照しながら説明する。
[シミュレーション(1st cavity)]
<条件>
図6に、有機発光素子の各層の屈折率、消衰係数、膜厚(nm)および光学的膜厚(nm)を示す。シミュレーションは平均値(ave)で実施しているが、実際の有機発光素子では光学特性に製品誤差が生じるため、±10%程度の誤差を見込んで最小値(min)および最大値(max)を規定している。透明導電層の材料はIZO(Indium Zinc Oxide)、透明陰極の材料はITO(Indium Tin Oxide)、反射陽極の材料はアルミニウム、有機発光層の材料はサメイション(SUMATION)社製のBP105である。
<検討1>
前出の
図2の結果は、
図6のパラメータのうち透明陰極の厚みを変化させたときに得られたものである。
図2から、透明陰極の厚みが0nmよりも大きく70nm以下の範囲であれば、厚みを100nmとした場合に比較して光取り出し効率が高められることが分かる。また、前述のように、透明陰極の厚みに応じて光取り出し効率が変化するのは、透明陰極内での光の干渉効果が現れたものと考えられる。そのため、
図2の結果に見られる光取り出し効率の向上には、透明陰極とそれに隣接する層との屈折率差も寄与すると考えられる。そうすると、透明陰極については、以下の条件を満たせば、光取り出し効率が高められると言える。
(1)透明陰極の厚みL1:0nm<L1≦70nm
(2)透明陰極の屈折率n:2.0≦n≦2.4
(3)透明陰極の光学的な厚みLc1:0nm<Lc1≦168nm
(4)透明陽極と電子輸送層との屈折率差ndif:0.1≦ndif≦0.7
(5)透明陽極と薄膜封止層との屈折率差ndif:0.1≦ndif≦0.7
なお、光学的な厚みは、単層構造の場合には膜厚と屈折率の積により求められ、2以上の多層構造の場合には、層毎に膜厚と屈折率の積をとり、得られた積を合計することにより求められる。
【0031】
また、前出の
図3の結果は、
図6のパラメータのうち透明導電層の厚みを変化させたときに得られたものである。
図3から、透明導電層の厚みが16nmのときに光取り出し効率が極大値を取ることが分かる。透明導電層の厚みを変化させたときに光取り出し効率が変化するのは、有機発光層から出射されて第1光路C1を進む光と、有機発光層から出射されて第2光路C2を進む光との光の干渉効果が現れたものと考えられる。したがって、光取り出し効率の向上には、実質的には第1機能層の厚みが寄与しており、光取り出し効率を最も向上させるには、第1機能層の厚みを31nmにすればよい。なお、製品誤差を考慮すると、第1機能層については、以下の条件を満たせば、光取り出し効率が高められると言える。
(6)第1機能層の厚みL2:27.9nm≦L2≦34.1nm
(7)第1機能層の光学的な厚みLc2:49.0nm≦Lc2≦73.5nm
以上より、条件(1)〜(7)を満たすことにより、光取り出し効率を高めることができる。
<検討2>
図7は、横軸を第1機能層の厚みとし、縦軸を透明陰極の厚みとして、輝度とxy色度のy値との比をマッピングした図である。青色光では、共振器構造を採用して出射光の輝度を高めても、色度(特に、y値)が目標色度からずれてしまうことがある。そのため、出射光の色度のずれを抑えながら輝度を高める必要がある。輝度とy値との比は、色度のずれを抑える効果と輝度を高める効果のバランスを評価するのに有効な指標であり、その値が大きいほど好ましい。
図7(a)は、290〜350の範囲を幅20の等高線で区画したものであり、
図7(b)は、
図7(a)から評価が良好である335〜350の範囲を抜き出して、幅5の等高線で区画したものである。
図7(b)に示した良好な範囲を楕円でフィッティングすると、以下の[数1]の関係式が得られた。
【0032】
[数1]
X3=Rxcosθcosφ-Rysinθsinφ+X0
Y3=Rxcosθsinφ+Rysinθcosφ+Y0
-φ≦θ≦π-φ
X0=31、Y0=35、Rx=5.2、Ry=27、φ=0.15(rad)
ここでX3は第1機能層の厚みL2であり、Y3は透明陰極の厚みL1である。
【0033】
図8は、輝度とy値との比が335以上かそれ未満かの境界にあるデータと、数1から得られるデータとをプロットした図である。これによれば、数1は精度良くフィッティングできていることが分かる。
以上より、第1機能層の厚みX3と、透明陰極の厚みY3とが、数1の関係式で囲まれた範囲内の値を取ることで、青色光の出射光の色度のずれを抑えながら輝度を高めることができる。
<検討3>
カラーフィルタによる色度補正をした場合の光取り出し効率について
図8と同様にマッピングしたところ、
図9の結果が得られた。
図9から、透明陰極の厚みL1が60nm以下であるのがより好ましいことが分かる。また、透明陰極の厚みL1は、0nmよりも大きければよいが、本来の目的である導電性を確保するため30nm以上であるのがより好ましい。
【0034】
以上より、透明陰極の厚みL1のより好ましい範囲は30nm以上60nm以下であると言える。そのときの光学的な厚みは60nm(=30×2.0)以上144(=60×2.4)nmである。
<検討4>
また、
図2および
図3に示すように、透明陰極の厚みが35nm、第1機能層の厚みが31nmの場合に光取り出し効率の改善効果が高い。
図7を見ると、透明陰極の厚みが35nm、第1機能層の厚みが31nmの場合は、輝度とy値との比が345〜350の範囲である。そうすると、逆に、輝度とy値との比が345〜350の範囲であれば、透明陰極の厚みが35nm、第1機能層の厚みが31nmの場合と同じ効果が得られると言える。
【0035】
図7では、輝度とy値との比が345〜350の範囲内であるのは、第1機能層の厚みが27nm以上32nm以下であり、かつ、透明陰極の厚みが35nm以上53nm以下の場合である。したがって、この条件を満たしていれば、光取り出し効率の改善効果が高いと言え、より好ましい。
<検討5>
図10は、赤、緑、青の各色の光取り出し効率および色度を、透明陰極の厚みが100nmの場合と35nmの場合とで比較するための図である。
【0036】
透明陰極の厚みを35nmにすると、100nmの場合に比べて、青色光で165%、緑色光で112%の光取り出し効率の向上が見られる。一方、赤色光では、光取り出し効率が低下してしまうが、特性に問題が生じない程度である。
[シミュレーション(1.5 cavity)]
次に、共振器構造として1.5 cavityを採用した場合のシミュレーションについて説明する。
<検討6>
図11に、有機発光素子の各層の屈折率、消衰係数、膜厚(nm)および光学的膜厚(nm)を示す。1st cavityと1.5 cavityとでは、第1機能層の厚みL2が異なるだけである。すなわち、1st cavityでは、第1機能層の厚みが27.9以上34.1以下であり、光学的な厚みが49.0以上73.5nm以下であるのに対し、1.5 cavityでは第1機能層の厚みが117以上143以下であり、光学的な厚みが212以上316以下である。それ以外のパラメータについては、1st cavityと1.5 cavityとで同じである。
【0037】
前出の
図2の結果は、
図11のパラメータのうち透明陰極の厚みを変化させたときに得られたものである。
図2から明らかなように、透明陰極内での多重反射に基づく光取り出し効率の向上効果は、1st cavityと1.5 cavityとで同じである。したがって、1.5 cavityの場合でも1st cavityの場合と同様に、以下の条件を満たせば、光取り出し効率が高められると言える。
(1)透明陰極の厚みL1:0nm<L1≦70nm
(2)透明陰極の屈折率n:2.0≦n≦2.4
(3)透明陰極の光学的な厚みLc1:0nm<Lc1≦168nm
(4)透明陽極と電子輸送層との屈折率差ndif:0.1≦ndif≦0.7
(5)透明陽極と薄膜封止層との屈折率差ndif:0.1≦ndif≦0.7
<検討7>
1.5 cavityについても、輝度とxy色度のy値との比をマッピングすると
図12のようになる。また、1.5 cavityで光取り出し効率の改善効果が高くなるのは、透明陰極の厚みが35nm、第1機能層の厚みが130nmの場合である。
図12(b)に示した良好な範囲を楕円でフィッティングすると、以下の[数2]の関係式が得られた。
【0038】
[数2]
X3=Rxcosθcosφ-Rysinθsinφ+X0
Y3=Rxcosθsinφ+Rysinθcosφ+Y0
-φ≦θ≦π-φ
X0=130、Y0=35、Rx=8、Ry=15、φ=0.20(rad)
ここでX3は第1機能層の厚みL2であり、Y3は透明陰極の厚みL1である。
【0039】
図13は、輝度とy値との比が285以上かそれ未満かの境界にあるデータと、数2から得られるデータとをプロットした図である。これによれば、数2は精度良くフィッティングできていることが分かる。
以上より、第1機能層の厚みX3と、透明陰極の厚みY3とが、数2の関係式で囲まれた範囲内の値を取ることで、青色光の出射光の色度のずれを抑えながら輝度を高めることができる。
<検討8>
1.5 cavityについても、カラーフィルタによる色度補正をした場合の光取り出し効率についてマッピングすると、
図14のようになる。
図14から、透明陰極の厚みL1が70nm以下であるのがより好ましいことが分かる。また、透明陰極の厚みL1は、本来の目的である導電性を確保するため30nm以上であるのが好ましい。
【0040】
以上より、1.5 cavityの場合、透明陰極の厚みL1のより好ましい範囲は30nm以上70nm以下であると言える。そのときの光学的な厚みは60nm(=30×2.0)以上168(=70×2.4)nmである。
<検討9>
上記の検討4と同様の議論を適用すると、1.5 cavityでは、第1機能層の厚みが129nm以上137nm以下であり、かつ、透明陰極の厚みが35nm以上42nm以下であれば、
光取り出し効率の改善効果が高く、より好ましいと言える。
[有機表示パネル]
図15は、本発明の実施形態に係る有機表示パネルの画素構造を模式的に示す断面図である。有機表示パネルでは、赤、緑、青の各色の画素が行方向及び列方向にマトリックス状に規則的に配置されている。各画素は有機材料を用いた有機発光素子で構成されている。
【0041】
青色の有機発光素子は、基板1、反射陽極2、透明導電層3、正孔注入層4、正孔輸送層5、有機発光層6b、電子輸送層7、透明陰極8、薄膜封止層9、樹脂封止層10、基板11を含む。緑色の有機発光素子は、有機発光層6gを除き、青色の有機発光素子と同様の構成を有する。赤色の有機発光素子も、有機発光層6rを除き、青色の有機発光素子と同様の構成を有する。この例では、各色の有機発光素子において、基板1、電子輸送層7、透明陰極8、薄膜封止層9、樹脂封止層10が共通であり、それ以外の層はバンク12で区分されている。また、必要に応じて、カラーフィルタ13b、13g、13rが設けられる。
[各層の具体例]
<基板>
基板1は、例えば、TFT(Thin Film Transistor)基板である。基板1の材料は、例えば、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラスなどのガラス板及び石英板、並びに、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコーン系樹脂などのプラスチック板又はプラスチックフィルム、並びに、アルミナなどの金属板又は金属ホイルなどである。
【0042】
<バンク>
バンク12は、絶縁性材料により形成されていれば良く、有機溶剤耐性を有することが好ましい。また、バンク12はエッチング処理、ベーク処理などされることがあるので、それらの処理に対する耐性の高い材料で形成されることが好ましい。バンク12の材料は、樹脂などの有機材料であっても、ガラスなどの無機材料であっても良い。有機材料として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂などを使用することができ、無機材料として、シリコンオキサイド(SiO
2)、シリコンナイトライド(Si
3N
4)などを使用することができる。
【0043】
<反射陽極>
反射陽極2は、基板1に配されたTFTに電気的に接続されており、有機発光素子の正極として機能すると共に、有機発光層6b,6g,6rから反射陽極2に向けて出射された光を反射する機能を有する。反射機能は、反射陽極2の構成材料により発揮されるものでもよいし、反射陽極2の表面部分に反射コーティングを施すことにより発揮されるものでもよい。反射陽極2は、例えば、Ag(銀)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)等で形成されている。
<透明導電層>
透明導電層3は、製造過程において反射陽極2が自然酸化するのを防止する保護層として機能する。透明導電層3の材料は、有機発光層6b,6g,6rで発生した光に対して十分な透光性を有する導電性材料により形成されればよく、例えば、ITOやIZOなどが好ましい。室温で成膜しても良好な導電性を得ることができるからである。
<正孔注入層>
正孔注入層4は、正孔を有機発光層6b,6g,6rに注入する機能を有する。例えば、酸化タングステン(WOx)、酸化モリブデン(MoOx)、酸化モリブデンタングステン(MoxWyOz)などの遷移金属の酸化物で形成される。遷移金属の酸化物で形成することで、電圧−電流密度特性を向上させ、また、電流密度を高めて発光強度を高めることができる。なお、これ以外に、遷移金属の窒化物などの金属化合物も適用できる。
<正孔輸送層>
正孔輸送層5の材料は、例えば、特開平5−163488号に記載のトリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、ブタジエン化合物、ポリスチレン誘導体、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、テトラフェニルベンジン誘導体である。特に好ましくは、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物である。
<有機発光層>
有機発光層6b,6g,6rの材料は、例えば、特開平5−163488号公報に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属鎖体、2−ビピリジン化合物の金属鎖体、シッフ塩とIII族金属との鎖体、オキシン金属鎖体、希土類鎖体等の蛍光物質である。
<電子輸送層>
電子輸送層7の材料は、例えば、特開平5−163488号公報のニトロ置換フルオレノン誘導体、チオピランジオキサイド誘導体、ジフェキノン誘導体、ペリレンテトラカルボキシル誘導体、アントラキノジメタン誘導体、フレオレニリデンメタン誘導体、アントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリノン誘導体、キノリン錯体誘導体である。
【0044】
なお、電子注入性を更に向上させる点から、上記電子輸送層を構成する材料に、Na,Ba,Caなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属をドーピングしてもよい。
<透明陰極>
透明陰極8は、有機EL素子の負極として機能する。透明陰極8の材料は、有機発光層6b,6g,6rで発生した光に対して十分な透光性を有する導電性材料により形成されればよく、例えば、ITOやIZOなどが好ましい。
<薄膜封止層>
薄膜封止層9は、基板1との間に挟まれた各層が水分や空気に晒されることを防止する機能を有する。薄膜封止層9の材料は、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)や樹脂等である。
<樹脂封止層>
樹脂封止層10は、基板1から薄膜封止層9までの各層からなる背面パネルと、カラーフィルタ13b,13g,13rが形成された基板11とを貼り合わせるとともに、各層が水分や空気に晒されることを防止する機能を有する。樹脂封止層10の材料は、例えば、樹脂接着剤等である。
<カラーフィルタ>
カラーフィルタ13b,13g,13rは、有機発光素子から出射された光の色度を矯正する機能を有する。
[有機表示装置]
図16は、本発明の実施形態に係る有機表示装置の機能ブロックを示す図である。
図17は、本発明の実施形態に係る有機表示装置の外観を例示する図である。有機表示装置15は、有機表示パネル16と、これに電気的に接続された駆動制御部17とを備える。有機表示パネル16は、
図15に示す画素構造を有するものである。駆動制御部17は、各有機発光素子の反射陽極2と透明陰極8との間に電圧を印加する駆動回路18〜21と、駆動回路18〜21の動作を制御する制御回路22とからなる。
[有機表示パネルの製造方法]
次に、有機ELパネルの製造方法を説明する。
図18、
図19は、本発明の実施形態に係る有機表示パネルの製造方法を説明するための図である。
【0045】
まず、基板1上に反射陽極2を蒸着法やスパッタ法等によって形成する(
図18(a))。次に、反射陽極2上に、蒸着法やスパッタ法等により透明導電層3を形成する(
図18(b))。このとき、透明導電層3の厚みを上述した範囲内に適宜調整する。
次に、透明導電層3上に、例えば、スパッタ法等により正孔注入層4を形成し、バンク12を形成し、さらに、正孔注入層4上に、例えば、インクジェット法等により正孔輸送層5を形成する(
図18(c))。
【0046】
次に、正孔輸送層5上に、有機発光層6b,6g,6rを形成する(
図18(d))。
次に、有機発光層6b,6g,6r上に電子輸送層7を形成する(
図19(a))。
次に、電子輸送層7上に、透明陰極8を形成する(
図19(b))。このとき、透明陰極8の厚みを上述した範囲内に適宜調整する。
次に、透明陰極8上に薄膜封止層9を形成し、カラーフィルタ13b,13g,13rが形成された基板11を、樹脂封止層10を用いて貼り合わせる(
図19(c))。
【0047】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、以下のような変形例がある。
(1)実施形態では、第1機能層が透明導電層3、正孔注入層4および正孔輸送層5から構成されているが、本発明は、これに限らない。これらの何れかが無くてもよいし、これ以外の機能層が含まれていてもよい。
(2)実施形態では、第2機能層が電子輸送層7から構成されているが、本発明は、これに限らない。例えば、電子注入層が含まれていてもよい。
(3)シミュレーションでは、各層の屈折率、膜厚、光学的な厚みに関して、好ましい範囲が規定されているが、その中でも最適な範囲が
図6、
図11に示された数値範囲である。
図6、
図11に示された数値範囲を満たすことにより、光取り出し効率をより向上させることができる。