(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加工時間算出部によって算出した前記主軸の指令回転速度と前記加工時間との間の対応関係を表示する表示部をさらに備える請求項1〜4のいずれか1つに記載の数値制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タップ加工の加工時間が最小になる主軸の指令回転速度を決定できる数値制御装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、タップ工具が取り付けられる主軸と、主軸を送り動作させる送り軸とによってワークのタップ加工を行う工作機械の数値制御装置であって、主軸の指令回転速度と、主軸の設定可能な最大加速度との間の対応関係を示す、予め定められた加減速特性情報を取得する加減速特性取得部と、主軸の送り動作が開始されてからタップ工具がワークの穴底に到達するまでの間の主軸の回転量を示す、予め定められた回転量情報を取得する回転量取得部と、加減速特性情報及び回転量情報に基づいて、主軸の指令回転速度と、主軸が回転量を達成するのに要する加工時間との間の対応関係を算出する加工時間算出部と、加工時間算出部によって算出した対応関係に基づいて、加工時間が最小になる主軸の指令回転速度の最適値を決定する速度決定部と、を有する数値制御装置が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様において、主軸の指令回転速度の複数の選択値を取得する指令速度取得部をさらに有し、加工時間算出部が、複数の選択値の各々と加工時間との間の対応関係を算出し、速度決定部が、主軸の指令回転速度の最適値を、複数の選択値の中から決定する、数値制御装置が提供される。
本発明の第3の態様によれば、第1又は第2の態様において、主軸の指令回転速度をvとし、最大加速度をa(v)とし、回転量をDとし、加工時間をT(v)とするときに、加工時間算出部が下記の数式(1)
【数1】
を用いて、主軸の指令回転速度と加工時間との間の対応関係を算出する、数値制御装置が提供される。
本発明の第4の態様によれば、第1〜第3の態様のいずれか1つにおいて、数値制御装置が、加減速特性情報における最大加速度を、タップ加工の負荷による主軸のトルク低下を考慮して補正する加減速特性補正部をさらに有し、加工時間算出部が、加減速特性補正部による補正後の加減速特性情報に基づいて、主軸の指令回転速度と加工時間との間の対応関係を算出する、数値制御装置が提供される。
本発明の第5の態様によれば、第1〜第4の態様のいずれか1つにおいて、加工時間算出部によって算出した主軸の指令回転速度と加工時間との間の対応関係を表示する表示部をさらに有する数値制御装置が提供される。
本発明の第6の態様によれば、第5の態様において、回転量取得部が、複数の回転量をそれぞれ示す複数の回転量情報を取得し、加工時間算出部が、複数の回転量情報の各々に基づいて、主軸の指令回転速度と加工時間との間の対応関係を算出し、表示部が、主軸の指令回転速度と加工時間との間の対応関係を、複数の回転量の各々について表示する、数値制御装置が提供される。
本発明の第7の態様によれば、第5又は第6の態様において、加減速特性取得部が、複数の主軸の各々について定められた加減速特性情報を取得し、加工時間算出部が、複数の加減速特性情報の各々に基づいて、主軸の指令回転速度と加工時間との間の対応関係を算出し、表示部が、主軸の指令回転速度と加工時間との間の対応関係を、複数の主軸の各々について表示する、数値制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、工作機械の主軸の加減速特性情報及び回転量に基づいて主軸の指令回転速度とタップ加工の加工時間との間の対応関係が算出されるので、工作機械によるタップ加工の加工時間が最小になる主軸の指令回転速度を最適値として決定できるようになる。
本発明の第2の態様によれば、主軸の指令回転速度の複数の選択値のうちの加工時間が最小になる選択値を最適値として決定できるようになる。
本発明の第3の態様によれば、主軸の指令回転速度と加工時間との間の対応関係を容易に算出できるようになる。
本発明の第4の態様によれば、タップ加工の負荷による主軸のトルク低下を考慮して補正された加減速特性情報に基づいて、主軸の指令回転速度と加工時間との間の対応関係が算出されるので、主軸のトルク低下が大きい場合であっても、加工時間が最小になる主軸の指令回転速度を正確に決定できるようになる。
本発明の第5の態様によれば、主軸の指令回転速度と加工時間との間の対応関係が表示されるので、主軸の指令回転速度と加工時間との間の対応関係を視覚的に確認できるようになる。
本発明の第6の態様によれば、主軸の指令回転速度と加工時間との間の対応関係が、複数の回転量の各々について表示されるので、回転量の変更に伴う加工時間の変化を視覚的に確認できるようになる。
本発明の第7の態様によれば、主軸の指令回転速度と加工時間との間の対応関係が、複数の主軸の各々について表示されるので、複数の主軸の各々による加工時間を視覚的に確認できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の記載は、特許請求の範囲に記載される発明の技術的範囲や用語の意義等を限定するものではない。
【0011】
図1〜
図10を参照して、本発明の第1実施形態による工作機械の数値制御装置について説明する。
図1は、本実施形態による例示的な数値制御装置1を備える加工システムの構成を示すブロック図である。本実施形態の数値制御装置1は、ワークのタップ加工を実行可能な工作機械MCを数値制御する数値制御装置である。
図1のように、本例の工作機械MCは、タップ工具が取り付けられる主軸A1と、主軸A1を送り動作させる送り軸A2と、主軸A1を回転させる主軸モータM1と、送り軸A2を回転させる送り軸モータM2と、を備えている。そして、数値制御装置1が主軸モータM1と送り軸モータM2を同期制御することによって、工作機械MCがワークのタップ加工を実行するようになっている。
【0012】
ここで、
図2を参照して、
図1の加工システムによるワークのタップ加工について説明する。
図2は、工作機械MCの主軸A1に取り付けられたタップ工具TLの近傍を概略的に示す側面図である。本例のタップ加工では、先ず、主軸A1がワークWに形成された穴Hに対して位置決めされる。これにより、
図2のように、タップ工具TLの先端部が穴Hの上方の加工開始点R1に配置される。次いで、主軸モータM1と送り軸モータM2の同期制御によって、タップ工具TLが回転しながらワークWに対して移動する。これにより、ワークWの穴Hの内周壁にねじ溝が順次形成される。そして、タップ工具TLの先端部がワークWの穴底の加工終了点R2に到達したら、タップ工具TLの先端部が再び加工開始点R1に引き戻される。この際、主軸モータM1と送り軸モータM2は、主軸A1の一回転当たりの送り軸A2による移動量p(mm/rev)が所定のねじピッチと等しくなるように同期制御される。また、
図2の加工開始点R1から加工終了点R2までの距離を主軸A1の送り動作による移動距離Lとすると、主軸A1の送り動作が開始されてからタップ工具TLがワークWの穴底に到達するまでの間の主軸A1の回転量D(rev)は、主軸A1の移動距離L及び移動量p(mm/rev)から下記の数式(2)によって算出される。主軸A1の移動距離L及び移動量pは、例えば加工プログラムから取得されうる。
【0014】
また、タップ工具TLが加工開始点R1から加工終了点R2まで移動する間の主軸A1の指令回転速度は、例えば加工プログラムから取得されうる。
図3は、
図1における工作機械MCの主軸A1の回転速度が所定の指令回転速度v
0に到達するまでの間の主軸A1の回転速度の時間変化を表すグラフである。
図3のように、主軸A1の回転速度は、指令回転速度v
0に到達するまで一定の加速度で増加するように制御される。すなわち、
図3のグラフは、主軸A1の加速度を傾きとする直線であり、主軸A1の加速度は、主軸A1の指令回転速度v
0と、主軸A1の回転速度が指令回転速度v
0に到達するまでの時定数t
aという2つのパラメータによって決定される。後述するように、主軸A1の設定可能な最大加速度は、主軸A1の指令回転速度に応じて変化しうる(
図5参照)。
【0015】
図4は、
図1における工作機械MCの主軸A1が所定の回転量Dを達成するまでの間の主軸A1の回転速度の時間変化を表すグラフである。
図4には、3つの任意の最大加速度a
1,a
2,a
3(a
1>a
2>a
3)のそれぞれに対応するグラフG41,G42,G43が示されている。3つのグラフG41,G42,G43のそれぞれに対応する主軸A1の指令回転速度vはv
1,v
2,v
3であり(v
1>v
2>v
3)、3つのグラフG41,G42,G43をそれぞれ時間積分した積分値は、いずれも主軸A1の所定の回転量Dと等しくなる。3つのグラフG41,G42,G43を比較すると分かるように、主軸A1の指令回転速度vと最大加速度a(=v/t
a)を大きくするほど、主軸A1が所定の回転量Dを達成するのに要する時間Tを短くすることができる(T
1<T
2<T
3)。主軸A1が所定の回転量Dを達成するのに要する時間Tを以下では加工時間Tと称する。しかしながら、一般にモータの出力トルクは高速回転領域において低下するので、主軸A1の設定可能な最大加速度aは高速回転領域において制限されることになる。すなわち、主軸A1の指令回転速度vと最大加速度aの両方を同時に大きくすることはできないので、加工時間Tを短くするためには、主軸A1の回転速度ごとの加減速特性を考慮した上で最適な指令回転速度vを決定することが望ましい。本例の工作機械MCの主軸A1の加減速特性について以下に詳細に説明する。
【0016】
図5は、
図1における工作機械MCの主軸A1の加減速特性を示すグラフである。
図5のように、本例による主軸A1の最大加速度aは、指令回転速度vが所定値v
b未満の範囲では指令回転速度vによらず一定値(a=a
max)であるものの、指令回転速度vが所定値v
b以上の範囲では指令回転速度vに反比例して減少する。すなわち、本例による主軸A1の最大加速度aは、下記の数式(3)によって、指令回転速度vの関数a(v)で表される。
図5のグラフにおいて最大加速度aが減少し始めるときの指令回転速度v
bを以下では基底回転速度v
bと称することがある。
【0018】
図6は、
図1における工作機械MCの主軸A1が所定の回転量Dを達成するまでの間の主軸A1の回転速度の時間変化を表す、
図4と同様のグラフである。ただし、
図4には、主軸A1の加減速特性を考慮しない回転速度の時間変化が示されているのに対し、
図6には、
図5の例による主軸A1の加減速特性を考慮した回転速度の時間変化が示されている。より具体的に、
図6には、
図5のグラフにおける3つの指令回転速度v
b,v
1,v
2(v
b<v
1<v
2)のそれぞれに対応するグラフG60,G61,G62が示されている。
図4と同様に、3つのグラフG60,G61,G62をそれぞれ時間積分した積分値は、いずれも主軸A1の所定の回転量Dと等しくなる。
図5のグラフから分かるように、3つの指令回転速度v
b,v
1,v
2はそれぞれ最大加速度a
max,a
1,a
2に対応している(a
max>a
1>a
2)。そして、3つのグラフG60,G61,G62のそれぞれに対応する加工時間T
b,T
1,T
2を比較すると分かるように、主軸A1の最大加速度aが高速回転領域において減少する場合には、主軸A1の指令回転速度vを大きくしたからといって加工時間Tが短縮されるとは限らない(T
2>T
b>T
1)。特に、最大加速度a
2に対応するグラフG62では、主軸A1の回転速度が指令回転速度v
2に到達する前に減少し始めるので、加工時間Tが比較的長くなっている。そのため、本実施形態の数値制御装置1は、
図5のような主軸Aの加減速特性を考慮して、加工時間Tが最小になる主軸A1の最適な指令回転速度vを決定する機能を有している。
【0019】
再び
図1を参照して、本実施形態の数値制御装置1の構成について説明する。
図1のように、本例の数値制御装置1は、記憶部10と、加減速特性取得部11と、回転量取得部12と、加工時間算出部13と、速度決定部14と、を備えている。これら構成要素の機能について以下に詳細に説明する。本例の加減速特性取得部11は、主軸A1の指令回転速度vと、設定可能な最大加速度aとの間の対応関係を示す、予め定められた加減速特性情報I1を取得する機能を有する。本例の加減速特性情報I1によって示される対応関係の一例が、
図5のグラフに示されている。加減速特性情報I1は、例えば、主軸モータM1の出力特性の仕様値又は実測値に基づいて予め作成されて記憶部10に格納されうる。本例の回転量取得部12は、主軸A1の送り動作が開始されてからタップ工具TLがワークWの穴底に到達するまでの間の主軸A1の回転量Dを示す、予め定められた回転量情報I2を取得する機能を有する。回転量情報I2は、例えば、主軸A1の移動距離L及び移動量pに基づいて算出されて記憶部10に格納されうる(上記の数式(2)を参照)。
【0020】
続いて、本例の数値制御装置1の加工時間算出部13について説明する。本例の加工時間算出部13は、上述した加減速特性情報I1及び回転量情報I2に基づいて、主軸A1の指令回転速度vと、主軸A1が所定の回転量Dを達成するのに要する加工時間Tとの間の対応関係を算出する機能を有する。より具体的に、加工時間算出部13は、指令回転速度vを変数とする加工時間Tの関数T(v)を用いて、指令回転速度vと加工時間Tとの間の対応関係を算出する。この点について以下に詳細に説明する。なお、
図6に示されるように、本例のタップ加工では、主軸A1が設定可能な最大加速度で直線的に加速ないし減速されるものとする。
【0021】
先ず、加工時間算出部13は、主軸A1の所定の回転量Dと、
図5のような加減速特性が与えられたときに指令回転速度vが取りうる範囲、すなわち、関数T(v)の定義域(0≦v≦v
max)を求める。より具体的に、加工時間算出部13は、主軸A1が加速ないし減速されている間の回転数Daが所定の回転数Dと一致するときの指令回転速度vを、関数T(v)の定義域の上限値v
maxとして算出する。主軸A1が加速ないし減速されている間の回転数Daは、下記の数式(4)によって表される。式中のtaは、主軸A1の加減速時定数である。
【0023】
ここで、再び
図6を参照すると、上記の数式(4)から算出される回転量Daと主軸A1の所定の回転量Dの大小関係に応じて、主軸A1の回転速度の時間変化を示すグラフの形状が以下のように変化することが分かる。
【0024】
Da<Dの場合:主軸A1は指令回転速度vまで加速され、指令回転速度vで定速回転してから減速される。従って、この場合の時間変化のグラフは、
図6のグラフG60のような台形の形状を有する。
Da=Dの場合:主軸A1は指令回転速度vまで加速され、定速回転することなく減速される。従って、この場合の時間変化のグラフは、
図6のグラフG61のような三角形の形状を有する。
Da>Dの場合:Da=Dの場合よりも主軸A1の最大加速度aが小さいので(すなわち、加速時の傾きが小さいので)、主軸A1は指令回転速度vまで加速されることなく途中で減速される。従って、この場合の時間変化のグラフは、
図6のグラフG62のような底辺が比較的長い三角形の形状を有する。
【0025】
以上のように、Da>Dの場合には、主軸A1が指令回転速度vまで加速されることなく途中で減速されるので、Da>Dの場合の加工時間T(例えば、
図6のグラフG62に対応する加工時間T
2)がDa=Dの場合の加工時間T(例えば、
図6のグラフG61に対応する加工時間T
1)よりも短くなることはない。そのため、加工時間算出部13は、Da=Dの場合の主軸A1の指令回転速度vを、関数T(v)の定義域の上限値v
maxとして算出する。これにより、Da>Dの場合の主軸A1の指令回転速度vが関数T(v)の定義域から除外される。そして、Da=Dの場合には、上記の数式(4)並びに下記の数式(5)及び数式(6)から下記の数式(7)が導かれるので、関数T(v)の定義域の上限値v
maxは、下記の数式(8)によって表される。
【0030】
続いて、加工時間算出部13は、以下の手順に従って、主軸A1の指令回転速度vと加工時間Tとの間の対応関係を算出する。先ず、加工時間算出部13は、主軸A1の加速及び減速に要する時間である加減速時間Taを算出する。より具体的に、主軸A1の加速及び減速に要する時間はそれぞれv/a(v)であるので、主軸A1の加減速時間Taは、下記の数式(9)によって表される。
【0032】
次いで、加工時間算出部13は、主軸A1が指令回転速度vで定速回転する時間である定速回転時間Tbを算出する。より具体的に、主軸A1が定速回転する間の回転量はD−Daで表され、Daは上記の数式(4)で表されるので、主軸A1の定速回転時間Tbは、下記の数式(10)によって表される。
【0034】
次いで、加工時間算出部13は、主軸A1の加減速時間Taと定速回転時間Tbを加算することによって加工時間Tを算出する。より具体的に、主軸A1の加減速時間Ta及び定速回転時間Tbはそれぞれ上記の数式(9)及び数式(10)によって表されるので、加工時間Tは、下記の数式(11)によって表される。すなわち、加工時間算出部13は、主軸A1の指令回転速度vを変数とする加工時間Tの関数T(v)を用いて、主軸A1の指令回転速度vと加工時間Tとの間の対応関係を算出する。
【0036】
そして、主軸A1の加減速特性が上記の数式(3)によって表される場合、関数T(v)は、0≦v≦v
maxかつv<v
bの範囲では下記の数式(12)によって表され、0≦v≦v
maxかつv≧v
bの範囲では下記の数式(13)によって表される。
【0039】
続いて、本例の数値制御装置1の速度決定部14について説明する。本例の速度決定部14は、加工時間算出部13によって算出した主軸A1の指令回転速度vと加工時間Tとの間の対応関係に基づいて、加工時間Tが最小になる主軸A1の指令回転速度vの最適値v
pを決定する機能を有する。このような指令回転速度vの最適値v
pを以下では最適回転速度v
pと称する。より具体的に、本例の速度決定部14は、上記の数式(12)及び数式(13)をそれぞれ一階微分することによって得られる下記の数式(14)及び数式(15)を用いて、関数T(v)の極小値を与える指令回転速度vを算出する。
【0042】
ここで、上記の数式(14)においてT’(v)=0とすると、下記の数式(16)が得られるとともに、下記の数式(16)から下記の数式(17)が導かれる。
【0045】
同様に、上記の数式(15)においてT’(v)=0とすると、下記の数式(18)が得られるとともに、下記の数式(18)から下記の数式(19)が導かれる。
【0048】
そして、上記の数式(17)から算出される指令回転速度vを指令回転速度v
1とすると、0≦v<v
bかつv
1<v
bであるときには、上記の数式(12)から算出される関数値T(0),T(v
1),T(v
b)のうちの最も小さい値が、関数T(v)の最小値になる。また、0≦v<v
bかつv
1>v
bであるときには、上記の数式(12)から算出される関数値T(0),T(v
b)のうちの小さい方の値が、関数T(v)の最小値になる。
【0049】
他方、上記の数式(19)から算出される指令回転速度vを指令回転速度v
2とすると、v≧v
bかつv
2>v
bであるときの関数T(v)の最小値は、上記の数式(13)から算出される関数値T(v
b),T(v
2)のうちの小さい方の値である。また、v≧v
bかつv
2=v
bであるときの関数T(v)の最小値は、上記の数式(13)から算出される関数値T(v
2)であり、v≧v
bかつv
2<v
bであるとき関数T(v)の最小値は、上記の数式(13)から算出される関数値T(v
b)である。そして、数式(12)及び数式(13)から算出される上記の関数値のうちの最も小さい値を与える指令回転速度vが、主軸A1の最適回転速度v
pとして決定される。なお、主軸A1の最適回転速度v
pに対応する加減速時定数taは、下記の数式(20)によって表される。
【0051】
続いて、主軸A1の回転量Dと加減速特性が与えられたときの加工時間Tと最適回転速度v
pの具体的な計算結果について説明する。
図7は、以下の表1に示す具体的な数値を上記の数式(12)及び数式(13)に代入したときの主軸A1の指令回転速度vと加工時間Tとの間の対応関係を示すグラフであり、
図8は、
図7の部分拡大図である。本例では、主軸A1の加減速特性として、上記の数式(3)によって表される関数a(v)を採用している(
図5も参照)。
図8から分かるように、本例による加工時間Tは、v=2800rpmの近傍で最小になっている。そして、上記の数式(17)及び数式(19)を用いて最適回転速度v
pを計算すると、数式(17)による計算結果は5480rpmであり、数式(19)による計算結果は2824rpmである。ここで、数式(17)の適用範囲は0≦v<1500rpmであり、数式(19)の適用範囲はv≧1500rpmであるので、本例による最適回転速度v
pは2824rpmであることが分かる。
【0053】
続いて、本実施形態の数値制御装置1の動作の概要について、フローチャートを参照して説明する。
図9は、
図1における数値制御装置1が主軸A1の最適回転速度v
pを決定する処理の手順を示すフローチャートである。
図9のように、先ず、ステップS901では、加減速特性取得部11が主軸A1の加減速特性情報I1を記憶部10から取得する。S901で取得される加減速特性情報I1による指令回転速度vと最大加速度aとの間の対応関係は、例えば、上記の数式(3)によって表される(
図5も参照)。
【0054】
次いで、ステップS902では、回転量取得部12が主軸A1の回転量情報I2を記憶部10から取得する。次いで、ステップS903では、ステップS901で取得した加減速特性情報I1及びステップS902で取得した回転量情報I2に基づいて、加工時間算出部13が指令回転速度vと加工時間Tとの間の対応関係を算出する。例えば、加工時間算出部13は、上記の数式(11)を用いて、指令回転速度vと加工時間Tとの間の対応関係を算出する。次いで、ステップS904では、ステップS903で算出した指令回転速度vと加工時間Tとの間の対応関係に基づいて、加工時間Tが最小になる主軸A1の最適回転速度v
pを算出する。
【0055】
以上のように、本実施形態の数値制御装置1によれば、工作機械MCの主軸A1の加減速特性情報I1及び回転量情報I2に基づいて主軸A1の指令回転速度vとタップ加工の加工時間Tとの間の対応関係が算出されるので、工作機械MCによるタップ加工の加工時間Tが最小になる主軸A1の最適回転速度v
pを決定できるようになる。なお、以上の説明では、数式(14)〜数式(19)を用いて、加減速特性情報I1及び回転量情報I2のみから最適回転速度v
pを算出しているものの、本実施形態の数値制御装置1による最適回転速度v
pの決定方法はこのような例に限定されない。例えば、本実施形態の数値制御装置1は、指令回転速度vの複数の選択値を使用者から取得するとともに、それら複数の選択値の各々について上記の数式(12)ないし数式(13)を用いて加工時間Tを算出し、それら加工時間Tの最小値を与える選択値を最適回転速度v
pとして決定することもできる。
図10は、本例による数値制御装置1の構成を示すブロック図である。
【0056】
図10のように、本例の数値制御装置1は、記憶部10、加減速特性取得部11、回転量取得部12、加工時間算出部13、及び速度決定部14に加えて、指令速度取得部15及び加速度抽出部16を備えている。本例の指令速度取得部15は、主軸A1の最適回転速度v
pの候補となる、指令回転速度vの複数の選択値を取得する機能を有する。より具体的に、指令速度取得部15は、使用者によって予め選択された複数の選択値を数値制御装置から取得しうる。ただし、本例の指令速度取得部15は、専用のソフトウェアを用いて複数の選択値を使用者から直接的に取得することもできる。また、本例の加速度抽出部16は、指令回転速度vの複数の選択値の各々に対応する最大加速度を、加減速特性情報I1から取得する機能を有する。また、本例の加工時間算出部13は、指令速度取得部15が取得した複数の選択値の各々と、加速度抽出部16が抽出した最大加速度を上記の数式(12)ないし数式(13)に代入することによって、複数の選択値の各々に対応する加工時間Tを算出する。そして、本例の速度決定部14は、加工時間算出部13が算出した加工時間Tが最小になる選択値を、主軸A1の最適回転速度v
pとして決定する。このように、本例の数値制御装置1によれば、主軸A1の指令回転速度vの複数の選択値のうちの加工時間Tが最小になる選択値を最適値v
pとして決定できるようになる。
【0057】
次に、
図11及び
図12を参照して、本発明の第2実施形態の数値制御装置について説明する。本実施形態の数値制御装置は、以下に具体的に説明される部分を除いて、上述した第1実施形態の数値制御装置と同様の構成を有する。従って、第1実施形態と同様の構成を有する部分には第1実施形態と同一の符号を用いることとし、それら同様の構成を有する部分についての説明は省略する。
【0058】
図11は、本実施形態の例示的な数値制御装置1を備える加工システムの構成を示すブロック図である。
図11のように、本例の数値制御装置1は、上述した記憶部10、加減速特性取得部11、回転量取得部12、加工時間算出部13、及び速度決定部14に加えて、加減速特性補正部17を備えている。本例の数値制御装置1は、上述した指令速度取得部15及び加速度抽出部16をさらに備えていてもよい。そして、本例の加減速特性補正部17は、加減速特性情報I1における主軸A1の最大加速度aを、タップ加工の負荷による主軸A1のトルク低下を考慮して補正する機能を有する。
図12は、本例の加減速特性補正部17による補正前後の加減速特性情報I1を比較して示すグラフである。図中の実線のグラフG120は、加減速特性補正部17による補正前の加減速特性情報I1を示しており、図中の破線のグラフG121は、加減速特性補正部17による補正後の加減速特性情報I1を示している。
【0059】
本例の加減速特性補正部17は、主軸A1の最大出力トルクから切削分のトルクを除いた最大出力トルクをイナーシャで除算することによって、トルク低下を考慮した主軸A1の出力特性を算出するとともに、その出力特性に基づいて加減速特性情報I1を補正する。そして、本例の加工時間算出部13は、加減速特性補正部17による補正後の加減速特性情報I1に基づいて、主軸A1の指令回転速度vと加工時間Tとの間の対応関係を算出する。このように、本実施形態の数値制御装置1によれば、タップ加工の負荷による主軸A1のトルク低下を考慮して補正された加減速特性情報I1に基づいて、主軸A1の指令回転速度vと加工時間Tとの間の対応関係が算出されるので、主軸A1のトルク低下が大きい場合であっても、主軸A1の最適回転速度v
pを正確に決定できるようになる。
【0060】
次に、
図13及び
図14を参照して、本発明の第3実施形態の数値制御装置について説明する。本実施形態の数値制御装置は、以下に具体的に説明される部分を除いて、上述した第1実施形態の数値制御装置と同様の構成を有する。従って、第1実施形態と同様の構成を有する部分には第1実施形態と同一の符号を用いることとし、それら同様の構成を有する部分についての説明は省略する。
【0061】
図13は、本実施形態の例示的な数値制御装置1を備える加工システムの構成を示すブロック図である。
図13のように、本例の数値制御装置1は、上述した記憶部10、加減速特性取得部11、回転量取得部12、加工時間算出部13、及び速度決定部14に加えて、表示部18を備えている。本例の数値制御装置1は、上述した指令速度取得部15及び加速度抽出部16、並びに上述した加減速特性補正部17の少なくともいずれか一方をさらに備えていてもよい。本例の表示部18は、加工時間算出部13によって算出した主軸A1の指令回転速度vと加工時間Tとの間の対応関係を表示する機能を有する。そして、本例の数値制御装置1では、回転量取得部12が主軸A1の複数の回転量Dをそれぞれ示す複数の回転量情報I2を取得するとともに、加工時間算出部13が複数の回転量情報I2の各々に基づいて、主軸A1の指令回転速度vと加工時間Tとの間の対応関係を算出するようになっている。
【0062】
図14は、本例の表示部18によって表示された、主軸A1の指令回転速度vと加工時間Tとの間の対応関係を示すグラフである。
図14のように、本例の表示部18は、加工時間算出部13が算出した主軸A1の指令回転速度vと加工時間Tとの間の対応関係を、複数の回転量Dの各々について表示している。より具体的に、図中の破線のグラフG141は、或る回転量D
1に基づいて算出された指令回転速度vと加工時間Tとの間の対応関係を示しており、図中の実線のグラフG142は、回転量D
1とは異なる他の回転量D
2に基づいて算出された指令回転速度vと加工時間Tとの間の対応関係を示している。さらに、本例の表示部18は、各グラフG141,G142における加工時間Tが最小になる点を強調して表示するとともに、複数の回転量D
1,D
2の各々に基づく最適回転速度v
p1,v
p2の計算結果を表示するようになっている。
【0063】
また、本例の数値制御装置1では、加減速特性取得部11が複数の主軸の各々について定められた加減速特性情報I1を取得しうるとともに、加工時間算出部13が複数の加減速特性情報I1の各々に基づいて、主軸A1の指令回転速度vと加工時間Tとの間の対応関係を算出しうる。これにより、主軸A1の指令回転速度vと加工時間Tとの間の対応関係が、複数の主軸の各々について表示されるので、複数の工作機械MCの各々による加工時間Tを視覚的に確認できるようになる。
【0064】
本発明は、上記の実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で種々改変されうる。また、上述した各部の寸法、形状、材質等は一例にすぎず、本発明の効果を達成するために多様な寸法、形状、材質等が採用されうる。