(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1の実施形態におけるタレット駆動源とタレットとの関係を示した図である。
【
図2】第1の実施形態におけるタレット旋回中におけるタレット駆動源の負荷の変動例を示した図である。
【
図3】第1の実施形態におけるタレット旋回中のタレット駆動源の負荷の変動を検出し、タレットの割り出し基準となる位相を検出する流れを示すフローチャートである。
【
図4】第2の実施形態におけるタレット旋回中のタレット駆動源の負荷の変動を検出し、タレットの割り出し基準となる位相を検出する流れを示すフローチャートである。
【
図5】第3の実施形態におけるタレットとタレット駆動源との関係を示した図である。
【
図6】第3の実施形態におけるタレットとタレット駆動源との関係を示した図である。
【
図7】第4の実施形態におけるタレット旋回中のタレット駆動源の負荷の変動を検出し、タレットの割り出し基準となる位相を検出する流れを示すフローチャートである。
【
図8】第5の実施形態におけるタレット駆動源とタレットとの関係を示した図である。
【
図9】第5の実施形態におけるタレット旋回中におけるタレット駆動源の負荷の変動例を示した図である。
【0020】
(第1の実施形態)
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態におけるタレット駆動源とタレットとの関係を示した図であり、
図1(a)は側面図、
図1(b)はタレットをタレット駆動源側の矢印A側から見た正面図である。
図1において、1はタレットであり、2はタレット1を駆動するタレット駆動源であり、タレット1とは固定部4をはさんで伝達機構を介して接続されている。
【0021】
タレット1は、旋回中心8を中心に右方向、左方向のいずれにも回転可能であり、T1、T2、T3・・・は、主軸とタレット1との間で工具を受け渡し可能となる位相を表している。また、15はタレット1を割り出したい位相を示している。
【0022】
タレット1のタレット駆動源2側の面には、端部を固定部4に固定されたばね5によって、ボール6が押し付けられている。ボール6は位置としてはタレット1の同一箇所に押し付けられているが、タレット1が回転することにより、タレット1の点線で囲まれた二重の円周の間を、タレット1を押圧しながら移動することとなる。また、タレット1上の、ボール6が移動する円周経路を8等分するように、8つの溝3が設けられている。
【0023】
タレット駆動源2の動力によりタレット1の旋回動作が行われると、ボール6は円周経路をタレット1を押圧しながら移動し、その際に溝3上を通過する。ボール6が溝3以外の箇所を移動しているときには、ボール6とタレット1との間に働く摩擦力により、一定の負荷がタレット駆動源2にかかる。
【0024】
ボール6が溝3上を通過する際には、最初、溝3へボール6が入り込んでばね5が伸びるように変化する。ボール6が溝3に重なっているときには、溝3の形状に合わせてボール6が移動し、ばね5が伸びるように変化した後に、ばね5が縮むように変化する。溝3からボールが出るときには、ばね5が縮むように変化する。この一連の移動において、ばね5が伸びる際には、ボール6はタレット1に対して、その旋回方向と同じ向きに力を働かせる形となり、タレット駆動源2にかかる負荷は低下する。逆にばね5が縮む際には、ばね5を縮めるための力がタレット1からボール6を介してばね5に加えられるため、その反作用としての力がタレット1の旋回に対して抵抗となる向きに働くため、タレット駆動源2にかかる負荷は増加する。
【0025】
これにより、タレット駆動源2によりタレット1を旋回させると、
図2に示したように、ボール6が溝3と重なる位置において、タレット駆動源2の負荷が変動することとなる。このタレット駆動源2の負荷の変動を検出することによって、実際のタレット1の位置を検出することができる。ここで、ボール6と溝3とが重なる位置であるタレットの割り出し基準の位相10と、タレット駆動源2で認識しているタレット1を割り出したい位相15との間の差異(16)を検出することができる。
【0026】
次に、タレット駆動源2の負荷を変動させる機構によるタレット駆動源2の負荷の変動を検出し、タレットの割り出し基準の位相10を検出する方法を説明する。
【0027】
タレット駆動源2は、予め工作機械の制御装置に設定された、決められた速度でタレット1を旋回させるように、出力する動力が工作機械の制御装置によって制御されている。例えば、決められた速度より旋回が遅くなる場合には出力が大きくなり、決められた速度より旋回が速くなる場合には、出力を抑えるように制御されることで、タレット1の旋回速度が決められた速度となるように制御する。
【0028】
このため、タレット1の旋回動作に対する抵抗が小さくなる場合には、タレット駆動源2の出力は小さくなり、抵抗が大きくなる場合にはタレット駆動源2の出力は大きくなる。
【0029】
図1に示された機構の場合、タレット1の旋回動作中によってボール6が溝3へ出たり入ったりすることにより、タレット1の旋回動作中におけるタレット駆動源2への負荷が変動するため、この変動に従い、工作機械の制御装置からタレット駆動源2への指令値が変化し、タレット駆動源2に供給される電流値も変化する。この指令値や、タレット駆動源2に入力される電流値の変化を検出することにより、溝3によりタレット駆動源2の負荷がある値を超えた際の位相9を、タレットの割り出し基準の位相10として検出することができる。
【0030】
次に、
図3のフローチャートに基づいて、ステップごとに説明する。
・(ステップSA1)タレットの旋回動作を行う。
・(ステップSA2)タレット駆動源の負荷変動を検出したかどうかを判定する。検出した場合(YES)は、ステップSA3に進み、検出しない場合(NO)は、ステップSA1に戻る。
・(ステップSA3)タレットの割り出し基準の位相を検出する。
【0031】
なお、
図1で示された溝3のつけ方は一例にすぎず、必ずしも円周上に等間隔で溝をつける必要はなく、異なった間隔でつけることも可能である。また、
図1においては、溝3の深さや形状はいずれも同一としているが、溝3ごとに深さや形状を変更することもできる。さらに、溝3の部分の摩擦係数を他の部分と異なる値とするように、溝3の部分の面の粗さを変えたり、溝3部分と他の部分との素材を変更したり、溝3部分と他の部分との表面処理を変えることによって、タレット駆動源2にかかる負荷の変動の様子を変えることもできる。
【0032】
なお、溝3に代えて、山型のような凸形状を設けて、タレット駆動源2の負荷を変動させることもできる。また、ボール6に代えてローラーを使用したり、ばね5とボール6を用いる代わりに、固定部側に支持端を持った片持ち梁を同心円上部分に押しつけるなどの方法によって、タレット駆動源2の負荷を変動させるようにすることもできる。
【0033】
(第2の実施形態)
本実施形態においては、第1の実施形態において検出されたタレットの割り出し基準の位相を記憶しておくことを特徴とする。
まず、タレットの割り出し基準の位相10を検出する。検出方法としては、
図1に示されている機構により生じるタレット駆動源2の負荷変動を検出する。
図1に示されているような機構により生じるタレット駆動源2の負荷変動は、タレット1の位相に対して毎回ほぼ同じ位相で生じるため、その位相をタレット1の割り出しの基準として用いることができる。
【0034】
工作機械の制御装置に、工作機械が認識するタレットの位相と実際のタレットの位相に差がない状態で、タレット1の割り出し基準の位相に実際のタレットの位相が合うときのタレット駆動源の位相αと、
図1の機構で検出されたタレットの割り出し基準の位相に、実際のタレット1の位相が合うときのタレット駆動源2の位相α’とを記憶する。
また、タレット1を任意の位相θに割り出すときのタレット駆動源2の位相の目標値がβとなる場合に、工作機械の制御装置により、タレット駆動源2に、
β−α+α’
の目標値を指令するようにすることで、工作機械の制御装置が認識するタレット1の位相と実際のタレット1の位相を工作機械により自動で合わせられる。
【0035】
さらに詳細に説明すると、工作機械が認識するタレット1の位相と実際のタレット1の位相に差がない状態のときに、
α=α’
となるため、工作機械の制御装置は、タレット駆動源2に、
β
の目標値を指令する。
【0036】
工作機械の制御装置が認識するタレット1の位相と、実際のタレット1の位相がずれた後に、
図1の機構で検出されたタレットの割り出し基準の位相に、実際のタレット1の位相が合うときのタレット駆動源2の位相α’を検出すると、αとα’は等しくなくなるため、工作機械の制御装置はタレット駆動源2に
β−α+α’
の目標値を指令する。−α+α’の項により、工作機械が認識するタレットの位相と、実際のタレットの位相の差分が補正されるため、工作機械の制御装置により、自動で工作機械が認識するタレット1の位相と、実際のタレット1の位相を合わせることができる。
【0037】
次に、
図4のフローチャートに基づいて、ステップ毎に説明する。
・(ステップSB1)タレットの割り出し基準の位相を検出する。
・(ステップSB2)タレットが割り出し基準の位相となる時の、タレット駆動源の位相α’を記憶する。
・(ステップSB3)工作機械の制御装置のデータ格納部に予め記憶させておいた、工作機械が認識するタレットの位相と実際のタレットの位相に差がない状態で、タレットが割り出し基準の位相となるときのタレット駆動源の位相αと、タレットが割り出し基準の位相となる時のタレット駆動源の位相α’を用いて、タレットを任意の位相βへ割り出す場合のタレット駆動源の目標値を
β−α+α’
としてタレット駆動源の制御を行う。
なお、位相の記憶については、工作機械の制御装置に記憶することに代えて、工具交換装置において記憶するようにすることも可能である。
【0038】
(第3の実施形態)
本実施形態においては、工作機械が認識するタレットの位相と実際のタレットの位相に差がない状態で、タレットが割り出し基準の位相となるときのタレット駆動源の位相と、タレットが割り出し基準の位相となる時のタレット駆動源の位相に差があるときに、タレット駆動源からタレットへの出力を停止して、タレット駆動源を位相差分回転させることを特徴とする。
【0039】
まず、タレットの割り出し基準の位相10を検出する。検出方法としては、
図1に示されている機構により生じるタレット駆動源2の負荷変動を検出する。
図1に示されているような機構により生じるタレット駆動源2の負荷変動は、タレット1の位相に対して毎回ほぼ同じ位相で生じるため、その位相をタレット1の割り出しの基準として用いることができる。
【0040】
工作機械の制御装置に、工作機械が認識するタレットの位相と実際のタレットの位相に差がない状態で、タレット1の割り出し基準の位相に実際のタレットの位相が合うときのタレット駆動源の位相αと、
図1の機構で検出されたタレットの割り出し基準の位相に、実際のタレット1の位相が合うときのタレット駆動源2の位相α’とを記憶する。
【0041】
その後、実際のタレットの位相と、工作機械の制御装置が認識するタレットの位相がずれた場合に、
図1の機構で検出されたタレットの割り出し基準の位相に、実際のタレット1の位相が合うときのタレット駆動源2の位相α’を工作機械の制御装置に記憶する。
【0042】
そして、タレット1の出力がタレットの旋回の動力として伝達しない状態として、−(α’−α)だけタレット1の駆動源を変化させた後、タレット駆動源2の出力がタレット1の旋回の動力として伝達する状態とすることで、工作機械の制御装置により自動で、工作機械の制御装置が認識するタレットの位相と実際のタレットの位相を合わせることができる。
【0043】
次に、本実施形態の具体的な機構について説明する。
図5及び
図6は、本実施形態におけるタレットとタレット駆動源との関係を示す図であり、
図5はタレット駆動源の動力がタレットに伝達可能な状態であり、
図6はタレット駆動源の動力がタレットに伝達されない状態である。
図5及び
図6において、18はタレット駆動源2に設けられた歯車、19はタレット1に設けられた歯車であり、21はタレット駆動源2を駆動するボールねじ、17はボールねじ21を駆動する駆動源である。その他の構成については、
図1と同様であるので説明を省略する。
【0044】
図5に示された状態においては、駆動源17により、タレット1の歯車19と、タレット駆動源2の歯車18とが噛み合う位置に移動されており、タレット駆動源2の動力がタレット1に伝達されて、タレット1が旋回を行う。
【0045】
その後、駆動源17により、タレット駆動源2の歯車を、タレット1の歯車19と噛み合わない位置まで移動させて、タレット1の出力がタレットの旋回の動力として伝達しない状態として、−(α’−α)だけタレット1の駆動源を変化させた後、再度駆動源17によって、タレット駆動源2の歯車を、タレット1の歯車19と噛み合う位置まで移動させて、タレット駆動源2の出力がタレット1の旋回の動力として伝達する状態とする。
【0046】
なお、
図5及び
図6で示された機構は一例であり、動力伝達機構として歯車の代わりに摩擦車で動力を伝達したり、ベルトにより動力を伝達することも可能である。また、歯車列の構成についても、
図5及び
図6に示されているようなタレット1の内周で噛み合う構成に限られたものではなく、歯車列の構成については、どのような構成でも適用可能である。
【0047】
なお、歯車の形状についても、平歯車どうしである必要はなく、はずば歯車どうしや、かさ歯車どうしなど、噛み合わせ可能な歯車であれば、その種類はどのような種類のものを用いることも可能である。また、タレット駆動源2を移動させる機構についても、軸と平行な方向に限ったものではなく、軸に対して角度を有する方向に移動させるものでもよい。さらに、移動させる対象についても、タレット駆動源2を移動させることに代えて、タレット1側を移動させることによって、歯車どうしを噛み合わせたり、噛み合わせを外したりしてもよい。
なお、本実施形態においても、位相の記憶については、工作機械の制御装置に記憶することに代えて、工具交換装置において記憶するようにすることも可能である。
【0048】
(第4の実施形態)
本実施形態においては、工作機械が認識するタレットの位相と実際のタレットの位相に差がない状態で、タレット駆動源からタレットへの出力を停止して、タレット駆動源をタレット駆動源基準位相に割り出すことを特徴とする。ここで、タレット駆動源からタレットへの出力を伝達するかしないかを切り換える機構としては、第3の実施形態と同様の機構を用いることができる。
【0049】
まず、タレットの割り出し基準の位相10を検出する。検出方法としては、
図1に示されている機構により生じるタレット駆動源2の負荷変動を検出する。
図1に示されているような機構により生じるタレット駆動源2の負荷変動は、タレット1の位相に対して毎回ほぼ同じ位相で生じるため、その位相をタレット1の割り出しの基準として用いることができる。
【0050】
工作機械の制御装置に、工作機械が認識するタレットの位相と実際のタレットの位相に差がない状態で、タレット1の割り出し基準の位相に実際のタレットの位相が合うときのタレット駆動源の位相αを記憶する。
【0051】
その後、実際のタレットの位相と、工作機械の制御装置が認識するタレットの位相がずれた場合に、
図1の機構で検出されたタレットの割り出し基準の位相を検出し、その位相が検出される箇所において、タレット駆動源の動作を停止させる。
【0052】
そして、タレット1の出力がタレットの旋回の動力として伝達しない状態として、タレット駆動源2を記憶しておいた位相αに変化させた後、タレット駆動源2の出力がタレット1の旋回の動力として伝達する状態とすることで、工作機械の制御装置により自動で、工作機械の制御装置が認識するタレット1の位相と実際のタレットの位相とを合わせることができる。
なお、本実施形態においても、位相の記憶については、工作機械の制御装置に記憶することに代えて、工具交換装置において記憶するようにすることも可能である。
【0053】
次に、
図7のフローチャートに基づいて、ステップ毎に説明する。
・(ステップSC1)タレットの割り出し基準の位相を検出する。
・(ステップSC2)タレットが割り出し基準の位相となる位置で、タレット駆動源を停止させる。
・(ステップSC3)タレット駆動源の出力が、タレットの旋回の動力として伝わらないようにする。
・(ステップSC4)工作機械の制御装置のデータ格納部に記憶させておいた、工作機械が認識するタレットの位相と実際のタレットの位相に差がない状態において、タレットが割り出し基準の位相となるときのタレット駆動源の位相αへタレット駆動源の位相を変化させる。
・(ステップSC5)タレット駆動源の出力がタレットの旋回の動力として伝わるようにする。
【0054】
(第5の実施形態)
図8は、本実施形態におけるタレット駆動源とタレットとの関係を示した図である。
図1に示した機構との相違点は、円周経路に設けられている溝の数が、場所に応じて変えられている点である。これにより、
図9に示されているように、ボール6が溝3と重なる位置において、タレット駆動源2の負荷が変動し、負荷の変動回数が溝3に応じて異なってくる。負荷変動をさせる位相が複数ある場合に、それぞれの位相を区別して検出することが可能となる。
【0055】
(第6の実施形態)
これまでの実施形態では、周期的に発生する変動を発生させる機構として、溝3とボール6により、タレット駆動源2の負荷を変動させて行ってきたが、タレット駆動源2の負荷を変動させる代わりに、予め決められた位相で振動を発生させるようにした点が異なっている。検出後の位相の補正等については、これまでの実施形態と同様である。振動発生機構としては、何らかの振動を発生させる機構を別途設けることもできるし、工具交換装置が有している自然の凹凸などにより発生する振動を用いることも可能である。
【0056】
具体的な振動の検出方法としては、工具交換装置に別途振動計を取り付け、計測結果を工作機械の制御装置に伝えることにより、検知した振動が所定値を超えた時のタレットの位相を検出する。また別の方法としては、工具交換装置に別途騒音計を取り付け、振動によって生じた音を計測して、その結果を工作機械の制御装置に伝えることにより、検知した振動が所定値を超えた時のタレットの位相を検出する。
【0057】
さらに別の方法としては、工具交換装置によって発生する振動による、工作機械の制御装置の指令値や、工作機械の制御装置の、駆動源へ供給する電流値の変動の検出により、振動の検出値が所定値を超えた時のタレットの位相を検出することもできる。